説明

空気調和機

【課題】 エアフィルタ移動用のモータ停止時における歯車機構の強固なロック状態を解消するとともに、清掃ブラシの癖付きを防止する。
【解決手段】 室内機の空気吸込口21に沿って配置されるエアフィルタ30と、エアフィルタ30の一部分上に配置されるフィルタ清掃手段50と、エアフィルタ30もしくはフィルタ清掃手段50のいずれか一方を被移動体として、その被移動体をモータ41により回転−直線運動変換機構(43,31)を介して所定方向に直線的に移動させる駆動手段40と、駆動手段40を制御する制御手段とを備えている空気調和機において、制御手段は、モータ41を回転させて被移動体を所定位置にまで移動させて停止したのち、モータ41を所定量逆転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関し、さらに詳しく言えば、エアフィルタの清掃手段を備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機(エアコン)には、室内機(室内ユニット)と室外機(室外ユニット)とを分離したスプリット型と、室内機と室外機とを同一筐体内に収納した一体型とがあるが、いずれの形式においても、室内機の空気吸込口には、空気中のほこりが熱交換器のフィンなどに付着するのを防止するためにエアフィルタが設けられている。
【0003】
エアフィルタには、空気調和機の運転積算時間に比例してほこりが堆積する。これを放置しておくと、空調能力が低下するばかりでなく不衛生でもある。そのため、定期的にエアフィルタを取り外して清掃する必要があるが、この清掃はユーザーにとっては面倒な作業である。
【0004】
特に、スプリット型エアコンの場合、室内機の多くは天井付近の高所に設置されているため、エアフィルタを取り外すにしても椅子などの上に乗る必要があり、転倒などの危険性がつきまとう。このようなことから、エアフィルタの清掃はややもすると敬遠されがちとなる。
【0005】
この点を解決するため、ユーザーの手を煩わせることなく自動的にエアフィルタの清掃を可能とした空気調和機が提案されている。その一つに特許文献1がある。特許文献1に記載の空気調和機においては、空気吸込口の内面に沿って配置されるエアフィルタをモータにより往復的に移動可能にするとともに、その移動経路内にエアフィルタに接触する清掃ブラシを内蔵したダストボックスを配置し、所定の運転積算時間に達した時点もしくはリモコンからの指示信号により、モータを駆動してエアフィルタを移動させ、そのほこりを清掃ブラシにてダストボックス内に掻き落とすようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−101101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の空気調和機によれば、モータによりエアフィルタを往復動させることにより、エアフィルタに付着しているほこりが清掃ブラシにてダストボックス内に掻き落とされるため、ユーザーの手を煩わせることなく、エアフィルタを自動的に清掃することができる。
【0008】
しかしながら、エアフィルタを初期のセット位置に戻してそのままの状態で放置すると、清掃ブラシの毛先部分が戻し方向に向いたまま固定される。そうすると、エアフィルタの清掃運転は頻繁に行われるわけではないため清掃ブラシに癖がつき、次の清掃運転時にほこりが回収されにくくなることがある。
【0009】
また、エアフィルタを清掃ブラシで擦りながら移動させるため、モータにはかなりの負荷がかかる。そのため、エアフィルタを空気吸込口と対応する初期のセット位置に戻してモータを停止させた場合、モータ側の出力歯車とエアフィルタ側のラックとが強固に噛み合った状態でロックされるため、欠歯破損などの故障が起こるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、その第1の目的は、エアフィルタに対して清掃ブラシを相対的に移動させてエアフィルタに付着しているほこりを清掃ブラシにて掻き落とす場合、その移動停止時における清掃ブラシの癖付きを防止することにある。また、本発明の第2の目的は、エアフィルタ移動用のモータを停止させるときに生ずる過大負荷状態での歯車機構のロック状態を解除して歯車機構の故障原因を取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、室内機の空気吸込口に沿って配置されるエアフィルタと、上記エアフィルタの一部分上に配置されるフィルタ清掃手段と、上記エアフィルタもしくは上記フィルタ清掃手段のいずれか一方を被移動体として、その被移動体を移動させる駆動手段と、上記駆動手段を制御する制御手段とを備えている空気調和機において、上記制御手段は、上記駆動手段により上記被移動体を清掃終了時の所定位置にまで移動させて停止したのち、上記駆動手段を所定量逆転させることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記エアフィルタの一端側に上記フィルタ清掃手段が位置している状態を初期セット位置として、上記被移動体を上記初期セット位置から往路方向に移動させたのち、復路方向に移動させて上記初期セット位置に戻してから、上記駆動手段を所定量逆転させることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項2において、上記被移動体を上記初期セット位置に戻してから、上記被移動体をさらに復路方向に所定量移動させたのち、上記駆動手段を所定量逆転させて再度上記初期セット位置に戻すことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1において、上記制御手段は、上記エアフィルタの一端側に上記フィルタ清掃手段が位置している状態を初期セット位置として、上記被移動体を上記初期セット位置から往路方向に移動させたのち、復路方向に移動させ、その復路方向移動時には、上記被移動体を上記初期セット位置を越えた所定位置にまで移動させたのち、上記駆動手段を所定量逆転させて上記初期セット位置に戻すことを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1ないし4のいずれか1項において、上記駆動手段がモータであるとともに、上記フィルタ清掃手段には上記エアフィルタに所定の圧力で接触する清掃ブラシが含まれており、上記清掃ブラシの癖付きを防止するように、上記モータの逆転量が決められることを特徴としている。
【0016】
また、上記第2の目的を達成するため、請求項6に記載の発明は、室内機の空気吸込口に沿って配置されるエアフィルタと、上記エアフィルタの一部分上に配置されるフィルタ清掃手段と、上記エアフィルタもしくは上記フィルタ清掃手段のいずれか一方を被移動体として、その被移動体をモータにより回転−直線運動変換機構を介して所定方向に直線的に移動させる駆動手段と、上記駆動手段を制御する制御手段とを備えている空気調和機において、上記制御手段は、上記駆動手段により上記被移動体を移動させて停止させたのち、上記駆動手段に含まれているバックラッシ分だけ上記モータを逆転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし5に記載の発明によれば、被移動体を清掃終了時の所定位置(例えば、エアフィルタの初期位置)にまで移動させて停止したのち、駆動手段を所定量逆転させるようにしたことにより、清掃ブラシの癖付き現象を防止することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明によれば、被移動体を移動させて停止させたのち、駆動手段に含まれているバックラッシ分だけモータを逆転させるようにしたことにより、モータ側出力歯車とエアフィルタ側のラックにかかる過大な応力が緩和され、歯車機構の故障原因を取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図1ないし図5により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は本発明による空気調和機が一例として備える室内機の内部構造を概略的に示す断面図,図2は上記室内機のエアフィルタ清掃部分を示す拡大図,図3(a)は上記室内機に設けられるエアフィルタを示す斜視図,図3(b)はエアフィルタの初期セット位置検出用のリミットスイッチを示す模式図,図4は本発明による空気調和機の制御系の一例を示す概略的なブロック図,図5はこの実施形態での動作説明用のフローチャートである。
【0020】
まず、図1ないし図3を参照して、この実施形態に係る室内機は壁掛け式で、その筐体1として、図示しない室内の壁に固定されるベース板11を含む下部パネル10と、下部パネル10の上面側に取り付けられる上部パネル20とを備えている。本発明の空気調和機は一体型であってもよい。
【0021】
下部パネル10は、ベース板11に支持される左右一対の側板12(図1ではその一方のみが示されている)を有し、その側板12間に熱交換器13と送風ファン14が配置されている。この例においては、室内機のコンパクト化を図るため、熱交換器13は3つの熱交換器13a〜13cに分割されていて、そのうちの2つの熱交換器13a,13bはL字状に折り曲げられた状態で下部パネル10の前面側に配置され、残りの熱交換器13cはベース板11側の配置されている。
【0022】
そのため、下部パネル10内には、前面側と背面側とにそれぞれドレンパン15a,15bが設けられている。送風ファン14の風下側となる下部パネル10の底面側には、空気吹出口16が形成されており、空気吹出口16内には、上下風向板17aと左右風向板17bとが設けられている。また、空気吹出口16には、例えば強制暖房運転時もしくは強制冷房運転時に開かれるデフューザ板18が設けられている。
【0023】
上部パネル20は、熱交換器13b,13cの上方を覆うようにして下部パネル10に被せられる。この例において、上部パネル20は、そのほぼ全面にわたって形成された空気吸込口21を備えている。なお、空気吸込口21には、図示しない空気吸込グリルが設けられている。
【0024】
送風ファン14の運転により、空気吸込口21より室内空気が筐体1内に吸い込まれ、熱交換器13にて熱交換されたのち、空気吹出口16より室内に吹き出されるが、室内空気に含まれているほこりが筐体1内に付着するのを防止するため、空気吸込口21の内面に沿って図3に示すエアフィルタ30が配置される。
【0025】
エアフィルタ30は、一般的な目の細かなエアフィルタであってよいが、この場合、エアフィルタ30は、図1の初期セット位置から機外に向けて移動可能とされている。そのため、下部パネル10の前面側には、エアフィルタ30が機外(筐体1の外側)に向けて移動する際に開かれる開閉パネル19が設けられているとともに、上部パネル20には、エアフィルタ30の移動を案内するための図示しないガイド手段が設けられている。
【0026】
図2を参照して、下部パネル10側には、エアフィルタ30を移動させるための駆動手段40と、エアフィルタ30の移動に伴ってエアフィルタ30を清掃するフィルタ清掃手段50とが設けられている。
【0027】
駆動手段40は、モータ41により駆動される出力歯車43を備えている。この例において、出力歯車43はモータ41の出力軸41aに取り付けられている出力元歯車42に連結されている。これに対して、図3(a)に示すように、エアフィルタ30側には出力歯車43と噛み合うラック31が形成されており、この出力歯車43とラック31とによりモータ41の回転運動が直線運動に変換される。なお、この例ではモータ41に減速歯車が内蔵されているステッピングモータが用いられる。
【0028】
フィルタ清掃手段50は、エアフィルタ30の一部分の上下両面を囲む筆箱状のタストボックス51を有し、タストボックス51内には、エアフィルタ30からほこりを掻き落とす清掃ブラシ52が設けられている。
【0029】
タストボックス51は、開閉可能に組み合わされるボトムケース51aとカバーケース51bとを備え、その両ケース51a,51bの合わせ面の間を通ってエアフィルタ30が移動し、内部に清掃ブラシ52により掻き落とされたほこりを保存する。
【0030】
清掃ブラシ52は、タストボックス51内に設けられているホルダによって常時エアフィルタ30に接触するように保持される。この例では、清掃ブラシ52として3つのブラシ52a〜52cを有し、そのうちの2つのブラシ52a,52bがエアフィルタ30の前面側(風上側)に配置され、残りのブラシ52cはエアフィルタ30の裏面側(風下側)に配置されている。
【0031】
この例において、エアフィルタ30の前面側に配置されるブラシ52a,52bのうち、一方のブラシ52aはエアフィルタ30に対してほぼ直交するように植設されており、他方のブラシ52bはエアフィルタ30が機外に向けて移動する際に逆目となるように傾斜付けられている。また、エアフィルタ30の裏面側に配置されるブラシ52cは上記ブラシ52aと同じくエアフィルタ30に対してほぼ直交するように植設されているが、このブラシ52cはバネ53によってエアフィルタ30に押し付けられている。
【0032】
ここで、エアフィルタ30の上端(図1においてベース板11寄りの右側の一端部,図3(a)において上端側)を30a,エアフィルタ30の下端(図1において機外に出される左側の他端部,図3(a)において下端側)を30bとする。
【0033】
また、エアフィルタ30の移動方向については、上端30aから下端30b側に向く移動方向を往路方向(図3(a)の矢印A方向)とし、下端30bから上端30a側に向く移動方向を復路方向(図3(a)の矢印B方向)とする。
【0034】
図1におけるエアフィルタ30の初期セット位置を基準として、タストボックス51はエアフィルタ30の下端30b側に配置されるとともに、図3(a)に示すように、そのタストボックス51の近傍にエアフィルタ30の初期セット位置を検出するためのリミットスイッチ60が設けられる。この例ではリミットスイッチ60にマイクロスイッチを用いているが、ホトカプラなどであってもよい。
【0035】
これに対して、図3(b)に示すように、エアフィルタ30の外枠フレーム32には、初期セット位置でリミットスイッチ60と対向する凹部32aが形成されている。したがって、エアフィルタ30が初期セット位置にあるとき、リミットスイッチ60の出力はオフとなる。
【0036】
次に、図4によりこの実施形態に係る空気調和機の制御系について説明する。この制御系には、室内機制御部100と室外機制御部200とが含まれている。室内機制御部100には、リモコン110からの操作指示信号とフィルタ位置検出用の上記リミットスイッチ60からの検出信号が入力される。なお、図示しないが、室温センサからも温度信号が入力される。
【0037】
室内機制御部100は、主たる制御機能として、リモコン110からの操作指示信号を解析判定するリモコン信号判定部101,冷房、暖房、除湿などの各運転モードプログラムが格納される運転モードメモリ部102,運転状態判定部103,タイマー部104,エアフィルタの自動清掃を行うための運転積算時間メモリ部105およびフィルター状態判定部106を備え、これらの各制御機能により、エアフィルタ駆動用のステッピングモータ41,上下風向板17aの駆動モータ121,左右風向板17bの駆動モータ122,送風ファン14のファンモータ123および本体表示部124を制御する。
【0038】
なお、図示しないが、本体表示部124には運転状態やフィルタ清掃状態などを表示するための例えば赤色LEDと緑色LEDなどが設けられている。また、室内機制御部100は、室外機制御部200に対して圧縮機制御信号を送出する。
【0039】
室外機制御部200は、主たる制御機能として、運転モード判定部201,圧縮機制御部202および四方弁制御部203を備え、室内機制御部100からの圧縮機制御信号や図示しない外気温センサからの検出温度信号に基づいて、圧縮機211,室外ファンモータ212および四方弁213を制御する。
【0040】
室内機制御部100は、リモコン110からフィルタ清掃信号が出された場合、もしくはエアコンの運転積算時間が所定時間に達した場合、エアコンの運転を中断してエアフィルタの清掃モードに入る。これについて、図5のフローチャートにしたがって説明する。
【0041】
まず、ステップST11でエアコンの電源が投入されると、ステップST12でリモコンから運転開始が指示されたかどうかを判定し、運転開始である場合にはオートクリーン(自動清掃)動作に入る時間を判定するため、ステップST13で運転積算時間タイマーをスタートさせたのち、ステップST14でエアコンが運転停止状態になったかを判定する。ここでの運転停止状態とは、リモコンからの運転停止信号入力時のほかに,「切り」タイマーのタイムアップ時,「入り」タイマーの設定信号入力時が含まれる。
【0042】
運転停止状態でない場合には、次段のステップST15でリモコンなどによりオートクリーン動作設定がなされているかどうかを判定する。なお、このオートクリーン動作設定は、単なるON/OFF設定のみでなく、オートクリーン動作「入り」時間の設定(例えば、150時間〜300時間の間で50時間刻み)切り替えとしてもよい。
【0043】
ステップST15でオートクリーン動作設定がなされている場合には、ステップST16でオートクリーン動作「入り」時間(例えば、200時間)に達したかどうかを判定する。なお、上記ステップST15,ST16のいずれかでNO判定の場合には、ステップST17でエアコンの運転を停止する(もしくは、通常の運転モードに戻る)。
【0044】
ステップST16でオートクリーン動作「入り」時間に達している場合には、ステップST18でステッピングモータ41を駆動してエアフィルタ30を往路A方向に下降させる動作に入るとともに、本体表示部124にある例えば緑色LEDを点灯状態とする。そして、ステップST19でエアフィルタ30の下降が完了したかどうかを判定する。
【0045】
この例では、図1の初期セット位置からエアフィルタ30の下降が完了するまで(エアフィルタ30の上端30aがダストボックス51に到達するまで)、ステッピングモータ41には8000パルスを要するため、8000パルスをカウントした時点で、下降完了と判定し、ステップST20でステッピングモータ41を停止する。この下降時にエアフィルタ30に付着しているほこりが清掃ブラシ52によりダストボックス51内に掻き落とされる。
【0046】
ステップST21で2秒間マスク(2秒間モータ停止)したのち、ステップST22で今度はステッピングモータ41を逆回転させてエアフィルタ30を復路B方向に上昇させる動作に入る。そして、ステップST23でリミットスイッチ60の出力がONからOFFに転じたかを判定する。すなわち、エアフィルタ30が初期セット位置にもどったかどうかを判定する。
【0047】
リミットスイッチ60の出力がOFFであれば、ステップST24でステッピングモータ41を停止するが、エアフィルタ30は清掃ブラシ52にて擦られた状態で上昇し、ステッピングモータ41にはかなりの負荷がかけられているため、モータ停止時には、出力歯車43とラック31とが強固に噛み合った状態でロックされる。また、清掃ブラシ52もその毛先がエアフィルタ30に引きずられた状態となり、このまま長時間放置すると癖付きが生ずるおそれがある。
【0048】
これを解消するため、ステップST25でステッピングモータ41を下降方向に向けて所定量逆転させる。この逆転量は、一つの目安として出力歯車43が有するバックラッシの範囲内であることが好ましい。この例における出力歯車43は、直径26mm,バックラッシ1mm(角度にして4.4゜)であるため、ステッピングモータ41の逆転量がその範囲内に収まるように、ステッピングモータ41に下降方向への回転パルスとして20パルスを与えている。
【0049】
これによれば、出力歯車43とラック31の強固なロック状態は解消されるが、この程度のパルス数ではエアフィルタ30はほとんど移動しないため、清掃ブラシ52の癖付き解消に対しては有効と言えない。そこで、清掃ブラシ52の癖付き解消のために下降方向への回転パルスを増やしてもよい。この場合、エアフィルタ30の移動量はわずかでよいため、ステッピングモータ41には余り負荷がかからず、モータ停止時に上記のような強固なロック状態は発生しない。
【0050】
ステップST25でステッピングモータ41を所定量逆転させたのち、ステップST26でステッピングモータ41を停止してから、ステップST27で運転積算時間タイマーをリセットし、ステップST28でエアコンの運転を停止する(もしくは、通常の運転モードに戻る)。なお、リモコン110から直接的にフィルタ清掃運転が指示された場合には、運転積算時間タイマーを無視しエアコンの運転を中断してから、上記ステップST18以降を実行する。
【0051】
上記の動作例では、エアフィルタ30が初期セット位置に戻った時点(リミットスイッチ60の出力がONからOFFに転じた時点)でステッピングモータ41を所定量逆転させているが、その逆転量によってはエアフィルタ30の下端30bが機外に飛び出すおそれがある。これを防止するため、本発明には次に説明する別の態様1,2が含まれる。図3を参照して、初期セット位置におけるエアフィルタ30の上端30aの第1位置をSaとする。
【0052】
まず、態様1について説明すると、上記ステップST11〜ST24までは同じであってよい。すなわち、エアフィルタ30が復路B方向に上昇して初期セット位置に戻された時点で、ステッピングモータ41を一旦停止させるが、この態様1においては、引き続いてステッピングモータ41に上昇方向への回転パルスを例えば100パルス程度与えて、エアフィルタ30aを上記第1位置Saよりも上方の第2位置Sbまでさらに上昇させたのち、ステッピングモータ41を逆転させてエアフィルタ30を再度初期セット位置にまで戻す。
【0053】
次に、態様2においては、上記ステップST11〜ST23までが実行されるが、その後のステップが異なる。すなわち、エアフィルタ30が初期セット位置に戻されステップST23でリミットスイッチ60の出力がONからOFFに転じたとしても、それを無視してステッピングモータ41を停止させることなく、エアフィルタ30を一気に例えば上記第2位置Sbまで上昇させたのち、ステッピングモータ41を逆転させてエアフィルタ30を初期セット位置にまで戻す。
【0054】
上記した態様1,2によれば、ステッピングモータ41を逆転させたとしても、エアフィルタ30の下端30bが機外に飛び出すことはない。また、出力歯車43とラック31の強固なロック状態および清掃ブラシ52の癖付き現象をともに有効に解消することができる。
【0055】
以上、本発明を図示の例にしたがって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ダストボックス51や清掃ブラシ52の構成は、任意に変更されてよい。また、フィルタ清掃手段はブラシに限られるものではなく、例えば真空掃除機の原理を利用した負圧吸引ヘッド単体もしくはブラシ付き負圧吸引ヘッドによりエアフィルタを清掃するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、フィルタ清掃手段側を固定位置として、エアフィルタ側を移動させるようにしているが、エアフィルタに対してフィルタ清掃手段側を移動させるようにしてもよい。その移動方向は上下方向のみでなく、横方向であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、エアフィルタを有する機器、例えば除湿機,乾燥機,空気清浄機などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による空気調和機が一例として備える室内機の内部構造を概略的に示す断面図。
【図2】上記室内機のエアフィルタ清掃部分を示す拡大図。
【図3】(a)は上記室内機に設けられるエアフィルタを示す斜視図,(b)はエアフィルタの初期セット位置検出用のリミットスイッチを示す模式図。
【図4】本発明による空気調和機の制御系の一例を示す概略的なブロック図。
【図5】本発明の動作例を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
1 室内機の筐体
10 下部パネル
11 ベース板
12 側板
13 熱交換器
14 送風ファン
16 空気吹出口
17a 上下風向板
17b 左右風向板
19 開閉扉
20 上部パネル
21 空気吸込口
30 エアフィルタ
31 ラック
40 駆動手段
41 ステッピングモータ
43 出力歯車
50 フィルタ清掃手段
51 ダストボックス
52 清掃ブラシ
60 リミットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機の空気吸込口に沿って配置されるエアフィルタと、上記エアフィルタの一部分上に配置されるフィルタ清掃手段と、上記エアフィルタもしくは上記フィルタ清掃手段のいずれか一方を被移動体として、その被移動体を移動させる駆動手段と、上記駆動手段を制御する制御手段とを備えている空気調和機において、
上記制御手段は、上記駆動手段により上記被移動体を清掃終了時の所定位置にまで移動させて停止したのち、上記駆動手段を所定量逆転させることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
上記制御手段は、上記エアフィルタの一端側に上記フィルタ清掃手段が位置している状態を初期セット位置として、上記被移動体を上記初期セット位置から往路方向に移動させたのち、復路方向に移動させて上記初期セット位置に戻してから、上記駆動手段を所定量逆転させることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
上記制御手段は、上記被移動体を上記初期セット位置に戻してから、上記被移動体をさらに復路方向に所定量移動させたのち、上記駆動手段を所定量逆転させて再度上記初期セット位置に戻すことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
上記制御手段は、上記エアフィルタの一端側に上記フィルタ清掃手段が位置している状態を初期セット位置として、上記被移動体を上記初期セット位置から往路方向に移動させたのち、復路方向に移動させ、その復路方向移動時には、上記被移動体を上記初期セット位置を越えた所定位置にまで移動させたのち、上記駆動手段を所定量逆転させて上記初期セット位置に戻すことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
上記駆動手段がモータであるとともに、上記フィルタ清掃手段には上記エアフィルタに所定の圧力で接触する清掃ブラシが含まれており、上記清掃ブラシの癖付きを防止するように、上記モータの逆転量が決められることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
室内機の空気吸込口に沿って配置されるエアフィルタと、上記エアフィルタの一部分上に配置されるフィルタ清掃手段と、上記エアフィルタもしくは上記フィルタ清掃手段のいずれか一方を被移動体として、その被移動体をモータにより回転−直線運動変換機構を介して所定方向に直線的に移動させる駆動手段と、上記駆動手段を制御する制御手段とを備えている空気調和機において、
上記制御手段は、上記駆動手段により上記被移動体を移動させて停止させたのち、上記駆動手段に含まれているバックラッシ分だけ上記モータを逆転させることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−194562(P2006−194562A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9208(P2005−9208)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】