説明

空気調和機

【課題】室内機のコンパクト化を実現する。
【解決手段】本体ケーシングと前面カバー3とオープンパネル4で筐体を構成する室内機の、上面に備えた吸込口から吸い込んだ室内空気を、前記吸込口6の内面側に沿って設けられたフイルタ11を通過した後、熱交換器で熱交換して下部に備えた吹出口7から室内へ吹き出す空気調和機に於いて、前記フィルタを移動させる移動経路14と、この移動経路の途中に配され前記フィルタを清掃するダストボックス12とを備え、前記移動経路は前面カバーとその内部に配置される熱交換器9との間にS字状に屈曲して形成され、前記熱交換器は、その前後方向の中間部を頂部として側面視で逆V字状に配置され、その前面側で前面カバーとの間に、前記移動経路のS字状屈曲部14aが配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機に関するもので、特にエアフィルタの自動清掃機能を供えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機に於いては、送風ファンにより吸い込んだ室内空気を、熱交換器を通過させることにより冷却または加熱して室内へと返流させるが、空気中に浮遊する塵埃が熱交換器を汚染するのを防止するため、熱交換器の前面側にエアフィルタが設けられている。このフィルタに塵埃が付着して目詰まりが生じて通風抵抗が増大すると、熱交換が妨げられるために空気調和機の空調能力が低下すると共に、消費電力が増大する。このような不都合を解消するため、フィルタの自動清掃機能を供えた空気調和機が種々提案されている。
【0003】
また、フィルタを自動的に清掃する場合、フィルタの全面を清掃ブラシで掃除するため、フィルタと清掃ブラシとの少なくともいずれか一方を移動させる必要がある。フィルタを移動させる方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、フィルタを移動させる移送手段と、この移動過程においてフィルタに付着した塵埃を除去する清掃手段とを備えて成り、更に、フィルタを通常使用位置に保持する通常ガイド部と、この通常ガイド部の一端部に連なると共に、湾曲部に対向して接触する回転ブラシを備え、前記フィルタを移動させることによって、通常ガイド部の一端部に位置するフィルタの先端部が、通常ガイド部から湾曲部でU字状に折返されて前記ブラシによって自動清掃を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4175409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来例の空気調和機ではフィルタの移動経路がU字状に形成され、フイルタの移動を折り返えして行う構造であるために、空気調和機の奥行き寸法が大きくなり、空気調和機のコンパクト化の妨げとなるものであった。
また、湾曲部先端のみでブラシと接触しているために、接触面積が小さくなりフイルタに張り付いたゴミを掻き落とす能力が低いために頻繁にフィルタの掃除を行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明はこの点に着目し上記欠点を解決する為、特にその構成を、本体ケーシングと前面カバーとオープンパネルで筐体を構成する室内機の、上面に備えた吸込口から吸い込んだ室内空気を、前記吸込口の内面側に沿って設けられたフイルタを通過した後、熱交換器で熱交換して下部に備えた吹出口から室内へ吹き出す空気調和機に於いて、前記フィルタを移動させる移動経路と、この移動経路の途中に配され前記フィルタを清掃するダストボックスとを備え、前記移動経路は前面カバーとその内部に配置される熱交換器との間にS字状に屈曲して形成され、前記熱交換器は、その前後方向の中間部を頂部として側面視で逆V字状に配置され、その前面側で前面カバーとの間に、前記移動経路のS字状屈曲部が配置されたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、フィルタの自動清掃を行うためのフイルタ移動経路をS字状に形成することで、空気調和機の奥行き寸法を小さくコンパクトにすることができた。
また、S字状屈曲部にてブラシとフィルタの接触をブラシ外周の1/4以上とすることで、ブラシとフィルタの接触面積を大きく取ることができ効率的にゴミを掻き落とすことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明一実施例の斜視図。
【図2】同展開図。
【図3】同断面図。
【図4】同開蓋状態のダストボックス斜視図。
【図5】同中央を省略したダストボックス正面図。
【図6】同フィルタの斜視図。
【図7】同フィルタ回転軸の斜視図。
【図8】同フイルタ押えの斜視図。
【図9】同前面カバーの内側の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、この発明の空気調和機の実施の形態について、図面を基に説明する。1はセパレート式空気調和機の室内機で、本体ケーシング2と前面カバー3とオープンパネル4で筐体を形成し、前記前面カバー3の更に前面に位置する前記オープンパネル4上部左右に設けた取付軸5を支点として前面カバー3前方へ開閉自在に取付られる。前記前面カバー3上面には横長格子状の吸込口6を備え、前記前面カバー3下方から底面には斜め前方に温度調節された空気を吹き出す横長の吹出口7を設け、吸込口6から吹出口7の間に送風経路8を形成している。この送風経路8の前記吸込口6内側には横長のフィンチューブ式の熱交換器9を、その前後方向の中間部を頂部として側面視で逆V字状に配置されている。また前記熱交換器9は本体ケーシング2に対向する後側熱交換器9aと前面カバー3に対向する前側熱交換器9bを形成し、この熱交換器9の下方には横長のクロスフローファンから成る送風ファン10を配置している。
【0010】
前記吹出口7には運転時に上下方向の吹出風の風向を調整し、停止時には自動的に吹出口7を閉じる上下風向板7aと左右方向の吹出風の風向を調整する左右風向板7bを設けている。
前記吸込口6の内側には、空気中に浮遊する塵埃が前記室内熱交換器9を汚染するのを防止するために樹脂製網から形成される左右一対のフイルタ11が設けられている。
前記前面カバー3とオープンパネル4の間には、空間3aが設けられダストボックス12を着脱自在に取り付けられるように、前記空間3aの左側壁3bには上下に長い左長穴3cを、右側壁3dにも同様に右長穴3eを設けている。
前記ダストボックス12は、内部に集められたゴミを貯蔵するダストボックス本体12aと、前面から上面を覆う蓋12bと、フイルタ11に張り付いたゴミを掻き落とすブラシ12cで構成し、前記蓋12bの端部にはブラシ12cに絡みついたゴミを落とす櫛部12dを設けている。
前記フィルタ11は吸込口6からオープンパネル4の内側の左右及び中央に形成された溝部13に沿って移動経路14を移動する。
【0011】
15は回転によりフィルタ11を移動させるフイルタ回転軸で、円柱の中央と左右にフィルタ11の縦枠11aに係合する突起15aと、右端に駆動部16と係合する歯車部15bを備えている。前記駆動部16は前記前面カバー3の右側壁3dの内側に取り付けられ、フイルタ回転軸15とブラシ12cをそれぞれ回転する2個のステップモータ16aと、このモータ16aの回転を伝達する多数の歯車を備えている。
【0012】
前記吸込口6は縦桟6aと横桟6bによって格子状に多数の横長穴6cを形成し、前記縦桟6aの内側にはフィルタ11側にレール状凸部6dを設け、フィルタ11移動時にフィルタ11の横枠11bや横桟11eが吸込口6の横桟6bに引っかかってフィルタ11の移動を妨げない様にするものであり、フィルタ11の縦桟11dとレール状凸部6dを対向する位置関係で、且つレール状凸部6dの厚さを前側に近いほど厚くすることで、フィルタ11が上溝部13a側からS字状屈曲部14a側へよりスムーズに移動できる様に配慮している。
【0013】
前記フィルタ11は前記左右の片面を凹凸状に形成した前記縦枠11aと上下の横枠11bで外枠11cを形成し、この外枠内を2本の縦桟11dと2本の横桟11eで区画した中に柔軟な薄網11fを一体成型して作られる。また、フイルタ11は通常状態では吸込口6内側の上溝部13a側に位置し、フィルタ清掃を開始するとフィルタ回転軸15とブラシ12cが回転し、フイルタ11が下溝部13b側に移動しながらブラシ12cによってフィルタ11表面に堆積したゴミが剥ぎ取られダストボックス本体12a内に蓄えられるものであり、前記移動経路14の上溝部13a側と下溝部13b側の間をS字状に屈曲して(前記S字状屈曲部14a)ブラシ12cとフイルタ回転軸15を設けることで室内機1の奥行き寸法を小さくすることができ、コンパクト化をすることができるものである。また、S字状屈曲部14aにてブラシ12cとフィルタ11の接触をブラシ12cの外周の1/4以上とすることで、ブラシ12cとフィルタ11の接触面積を大きく取ることができ効率的にゴミを掻き落とすことができるものである。
【0014】
17はフイルタ押えで、前記フィルタ回転軸15と下溝部13bの前方に設けられ、フィルタ回転軸15との間にフイルタ11を挟んで、フィルタ回転軸15の回転によってフィルタ11のS字状屈曲部14aでの移動がスムーズに行われるようにするものであり、左右側端に一対備えた回動軸17aによって前記前面カバー3に回動自在に取り付けられる。
【0015】
18は前記熱交換器9の前側で発生する結露水を受ける前部ドレンパンで、前記吹出口7の上面の壁と一体に形成している。19は前記熱交換器9の背面側で発生する結露水を受ける後部ドレンパンで、前記本体ケーシング2と一体に形成している。20は内部に制御基板(図示せず)等の電子部品を収納する電装ボックスで、前記本体ケーシング2の右前方に取り付けられている。21は表示部で、運転ランプやタイマランプ等のランプ類(図示せず)によって運転状態を表示するものである。
【0016】
前記ダストボックス本体12aの左右の側壁12eには上下方向に長い長丸状突起12fを設け、一方蓋12b左右に下方に延出した端部12gには下部が円形で上部が細長い穴12hを設け、閉蓋時には前記突起12fが穴12hの上部に係合することで開蓋を防止するものであり、ダストボックス本体12aから蓋12bを上方に引き上げて、突起12fが穴12hの円形の下部に達すれば、穴12h下部を中心に蓋12bを回動して開くことができ、ダストボックス本体12a内に集められたゴミを捨てることができる。蓋12bを閉じるにはこの逆をすれば良く、極めて簡単に蓋の開閉ができると共に、蓋12bを閉じて前面カバー3にセットすれば突起12fと穴12hの上部が係合して蓋12bが勝手に開くようなことはないものである。
【0017】
また、前記ダストボックス本体12aの左の側壁12e中央には縦長板状の突起12iを設け、右の側壁12eに突出し左右方向に摺動自在のスライドレバー12jを設けている。前記前面カバー3の空間3aへダストボックス12を取付け手順について説明すれば、ダストボックス本体12aに蓋12bがセットされていることを確認後、前記左の側壁12eの突起12iを前面カバー3の長穴3cに挿入し、右の側壁12eのスライドレバー12jを前面カバー3aの係止爪3eに係止すればブラシ12c右端に備えたブラシ歯車12kが駆動部16の歯車16bと噛み合い取付が完了する。また、取外しは前記の取付手順の逆を行えば良いものであり、極めて簡単にダストボックス12の着脱をすることができるものである。
【0018】
また、前記フィルタ11の着脱について説明すれば、前記オープンパネル4の下部を手前に引けば前面カバー3への係止が外れ取付軸5を中心に回転すればダストボックス12が現れる、これを前記の手順で取り外せば、S字状屈曲部14aの部分に左右一対のフィルタ押え17が現れ、このフィル押え17の回転軸17aを中心にフィルタ押え17を手前に引けば、フィルタ11の先端が開放されるのでフィルタ11を引き抜くことができるものである。もちろん、これとは逆の手順を行えば、通り外したフイルタ11を簡単にセットすることができるものであり、特に上溝部13a側への挿入はフイルタ回転軸15の突起15aにフィルタ11の縦桟11d位置を合わせて行うことができるので、フイルタ11の位置がずれたり、曲がったりして正常にセットできないような事を防止している。
【0019】
フィルタ11の自動掃除運転は、室内機1の運転終了後や運転前に毎回行う方法や、室内機の積算運転時間に応じて定期的に行うものであり、ダストボックス本体12aに溜まったゴミ捨ては室内に漂う塵埃の量やダストボックス本体12aの容量等の条件によって異なり1年1回から10年1回適宜行われるものである。
【0020】
室内機1の運転終了後に行われた場合の自動掃除運転について説明すれば、まず室内機1の運転が終了し冷凍サイクルが停止すると共に送風ファン10が停止すれば、駆動部16の2つのモータ16aが回転を開始し、この回転がフイルタ回転軸15とブラシ12cに伝わり、このフイルタ回転軸15の回転でフイルタ回転軸15とフイルタ押え17の間に挟まれた部分のフイルタ11からS字状屈曲部14aを通過しながらブラシ12cにてフィルタ11表面に付着したゴミを剥ぎ取ってダストボックス本体12a導き、フィルタ11全体がS字状屈曲部14aを通過して下溝部13b側へ移動後、モータ16aの逆回転により、もう1回フイルタ11の表面を掃除しながら上溝部13a側の通常位置へ戻って自動掃除を終了する。
【0021】
このように、フイルタ11の移動経路14をS字状に形成することで、空気調和機の奥行き寸法を小さくコンパクトにすることができる。
また、S字状屈曲部14aの下方にフイルタ11から取り除かれたゴミを収納するダストボックス12を設けることで、フィルタ11のに付着したゴミを重力方向に効率よく集めることができるものである。
また、S字状屈曲部14aにてブラシ12cとフィルタ11の接触をブラシ12cの外周の1/4以上とすることで、ブラシ12cとフィルタ11の接触面積を大きく取ることができ効率的にゴミを掻き落とすことができるようになるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 室内機
3 前面カバー
4 オープンパネル
6 吸込口
7 吹出口
9 熱交換器
11 フィルタ
12 ダストボックス
12a ダストボックス本体
12b 蓋
12c ブラシ
13 溝部
14 移動経路
14a S字状屈曲部
15 フィルタ回転軸
17 フィルタ押え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケーシングと前面カバーとオープンパネルで筐体を構成する室内機の、上面に備えた吸込口から吸い込んだ室内空気を、前記吸込口の内面側に沿って設けられたフイルタを通過した後、熱交換器で熱交換して下部に備えた吹出口から室内へ吹き出す空気調和機に於いて、
前記フィルタを移動させる移動経路と、この移動経路の途中に配され前記フィルタを清掃するダストボックスとを備え、
前記移動経路は前面カバーとその内部に配置される熱交換器との間にS字状に屈曲して形成され、
前記熱交換器は、その前後方向の中間部を頂部として側面視で逆V字状に配置され、その前面側で前面カバーとの間に、前記移動経路のS字状屈曲部が配置されたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記S字状屈曲部の下方にフイルタから取り除かれたゴミを収納するダストボックスを配置したことを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記ダストボックスはフィルタのゴミを取り除くブラシとダストボックス本体と蓋等から構成し、前記ブラシとフィルタの接触をブラシ外周の1/4以上とすること特徴とする請求項1又は請求項2記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−78042(P2012−78042A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225382(P2010−225382)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】