説明

空気調和機

【課題】
本発明は、冷房運転時と暖房運転時とで送風方向が切替わる天井吊下げ型空気調和機に係り、吸込口として機能する通気口にフィルタを配置することで、空気中のホコリなどを取除き、本体内の熱交換器のフィン部でホコリがつまるおそれを解消するようにした天井吊下げ型空気調和機を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、本体と、前記本体の前面に設けられた前面通気口と、前記本体の下面後部に設けられた下面通気口と、前記前面通気口と前記下面通気口を繋ぐ通風路と、前記通風路に設けられ、送風方向を前記前面通気口側と前記下面通気口側とに切り換える送風機と、フィルタと、前記フィルタを、冷房運転時には前記下面通気口に配置し、暖房運転時には前記前面通気口に配置するように移動させるフィルタ移動手段とを備えてなる天井吊下げ型空気調和機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷房運転時と暖房運転時とで送風方向が切替わる天井吊下げ型空気調和機に係り、冷房運転時は前面通気口から調和空気を水平方向に吹出し、暖房運転時は下面通気口から調和空気を垂直方向に吹出す天井吊下げ型空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機として、特許文献1に示すようなものがある。この特許文献1に開示されている天井吊下げ型空気調和機では、図6に示すように、本体内に熱交換器と送風機とを備え、送風機を駆動することによって、本体の下面後方に形成した下面通気口から室内空気を吸込み、熱交換器で調和された調和空気を本体の前面に形成した前面通気口より吹出すようにしている。
【0003】
そして、前面通気口には風向板が設けられ、吹出される調和空気を冷房運転時には水平方向に偏向する一方、暖房運転時には垂直方向に偏向するようにしている。特に、暖房運転時には、風向板によって調和空気が強制的に偏向されるため風向板が抵抗となって吹出風量が減る。また、暖房運転時の調和空気は比重が室内空気よりも軽い。そのため、暖房運転時の調和空気は直ぐに上昇してしまい、床面まで届きにくい。
【0004】
暖房運転時、床面まで調和空気を届けるためには、垂直方向に偏向される調和空気の風量を多くする必要がある。風向板を用いずに調和空気を垂直方向に送出するためには、送風機の送風方向を切替えて吹出口の位置を変える必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11-72265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
送風機の送風方向を切替えた場合、吸込口の位置も切替えられるため、吸込口にフィルタを配置する必要がある。従来技術と同様に下面通気口のみにフィルタを配置していた場合、送風機の送風方向を垂直方向に切替えると、フィルタが配置されていない前面通気口から室内空気を吸込むため、本体内にホコリなどを取込んでしまい、本体内の熱交換器のフィン部がつまるおそれがある。また、下面通気口から調和空気を吹出す際にフィルタが空気抵抗となり、調和空気の風量が少なくなるおそれもある。フィルタで捕捉したホコリを室内に放出し、室内を汚すおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、送風方向が切替可能な送風機を用いた天井吊下げ型空気調和機において、吸込口として機能する通気口にのみフィルタを配置する構成とすることにより、本体内にホコリなどを取込んでしまい本体内の熱交換器のフィン部がつまるおそれと、調和空気の風量が少なくなるおそれと、室内が汚れるおそれを解消する天井吊下げ型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に、本発明の天井吊下げ型空気調和機は、天井に吊下げられる箱形状の本体と、前記本体の前面に設けられた前面通気口と、前記本体の下面後部に設けられた下面通気口と、前記前面通気口と前記下面通気口を繋ぐ通風路と、前記通風路に設けられた熱交換器と、前記通風路に設けられ、送風方向を前記前面通気口側と前記下面通気口側とに切り換える送風機と、前記送風機によって前記前面通気口又は前記下面通気口から吸込まれる空気中のゴミやホコリを取り除くフィルタと、前記フィルタを、冷房運転時には前記下面通気口に配置し、暖房運転時には前記前面通気口に配置するように移動させるフィルタ移動手段とを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の天井吊下げ型空気調和機において、吸込口として機能する通気口にフィルタを配置することで、空気中のホコリなどを取除き、本体内の熱交換器のフィン部がホコリでつまるおそれを解消することができる。また、吹出口として機能する通気口を開放状態にすることで空気抵抗を小さくすることで、床面まで暖気を送出することができる。さらに、室内を汚すおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における空気調和機の斜視図である。
【図2】本発明における冷房運転時の空気調和機の断面図である。
【図3】本発明における暖房運転時の空気調和機の断面図である。
【図4】本発明における空気調和機の要部拡大断面図である。
【図5】本発明における空気調和機のフィルタの平面図である。
【図6】従来発明における空気調和機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態における空気調和機について、図1ないし図5を基に説明する。
【0012】
初めに、本実施例の空気調和機における各構成について説明する。図1に示すように、本体1は、前面に前面通気口2と、下面後部に下面通気口3を備えている。
【0013】
前面通気口2には、図2に示すように、前面開閉板(2a、2b)が備えられ、運転時は開くことで空気が流通することができ、運転停止時は閉じることで前記通気口2を閉じるようになっている。同様に、下面通気口3にも、下面開閉板(3a、3b)が備えられ、運転時は開くことで空気が流通することができ、運転停止時は閉じることで下面通気口3を閉じるようになっている。
【0014】
前面通気口2は、冷房運転時は吹出口として機能し、暖房運転時は吸込口として機能する。一方、下面通気口3は、冷房運転時は吸込口として機能し、暖房運転時は吹出口として機能する。このように、本実施例の空気調和機は、冷房運転時と暖房運転時とで吸込口と吹出口が切替わるようになっている。なお、この前面開閉板(2a、2b)、下面開閉板(3a、3b)の傾きを調整することで、送風方向を偏向することができる。
【0015】
次に、本体1内部の構成について、図2から図4を基に説明する。本実施例の空気調和機の本体1の内部には、図2に示すように、仕切板4が設けられ、この仕切板4によって本体1内部は熱交換室1aと機械室1bとに仕切られている。この仕切板4には、熱交換室1aと機械室1bとの間で空気を流通させるための通気孔4aが設けられている。熱交換室1aには、熱交換器6と、ドレンパン7とが配置されている。機械室1bには、送風機5が配置されている。また、両室にまたがって、フィルタ8とガイドレール9とが配置されている。
【0016】
送風機5は、前面通気口2と下面通気口3とを繋ぐ通風路の下面通気口3に面して配置されている。この送風機5は、シロッコファン5aと回動可能なファンケーシング5bを備えている。このファンケーシング5bを回動させ、その吹出口5baを下面通気口3と連通させるか、仕切板4の通気孔4aに連通させることで、送風方向を、前面通気口2側と下面通気口3側とに切替えることができる。これにより、冷房運転時は前面通気口2を吹出口とすることができ、暖房運転時は下面通気口3を吹出口とすることができる。なお、本発明の送風機5はシロッコファン5aとファンケーシング5bとによるものであるが、これに限定したものではなく、送風方向を切替えることができる送風機であればプロペラファンなど他の型のものでも良い。
【0017】
熱交換器6は、室内空気が冷媒と熱交換し、調和空気を生成するものであり、通風路上の前面通気口2側に配置されている。冷房運転時は、送風機5から吹出された空気は熱交換器6に吹きつけられる。吹きつけられた空気は、熱交換器6で冷媒と熱交換することで冷却され、冷却された調和空気は前面通気口2から室内に吹出される。一方、暖房運転時は、前面通気口2より吸込まれた室内空気は、熱交換器6で冷媒と熱交換することで加熱され、加熱された調和空気は送風機5によって、下面通気口3から室内に吹出される。
【0018】
ドレンパン7は、熱交換器6の直下に配置されている。このドレンパン7は、冷房運転時、熱交換器6で発生する結露によるドレン水を受け止めるためのものである。受け止めたドレン水は、図示しない配管を介して室外に排出される。
【0019】
フィルタ8は、室内空気を本体1内に吸込む時に、室内空気に含まれるホコリやチリなどを取除くためのものであり、吸込口として機能する通気口に配置されるようになっている。このフィルタ8は、図5に示すように、長手方向の一端に形成される前面フィルタ部8aと、長手方向の他端に形成される下面フィルタ部8bと、前面フィルタ部8aと下面フィルタ部8bとを連結するための連結部8cとにより構成されており、その両側部にはギア10と噛み合うラック8dが一体に形成されている。後述するように、冷房運転時に下面フィルタ部8bが下面通気口3に配置されるように、暖房運転時に前面フィルタ部8aが前面通気口2に配置されるように、フィルタ8を移動させる。また、本体1内の両側にはガイドレール9が、前面通気口2の上端から下面通気口3の後端まで配置されている。このガイドレール9に挟まれるように、フィルタ8が前後方向に移動可能な状態で配置されている。なお、本実施例では、フィルタ8は、前面フィルタ部8aと下面フィルタ部8bと連結部8cとにより構成されているが、これに限定したものではなく、前面フィルタ部8aと下面フィルタ部8bを一体に成型して、一つのフィルタ部としても良い。
【0020】
フィルタ8の長手方向の長さは、前面通気口2の上端からギア10までフィルタ8を這わせることができる長さであって、かつ、下面通気口3の後端からギア10までフィルタ8を這わせることができる長さを満たすものであれば良い。
【0021】
ギア10は、フィルタ8を前後に移動させるためのものであり、フィルタ清掃部11の上方、かつ、ドレンパン7とフィルタ8の間に位置しており、本体1の両側に一対で配置されている。このギア10は、フィルタ8に形成されているラック8dと噛み合うように歯車構造となっている。図示しないモータによって、ギア10は回転する。ギア10が回転することで、フィルタ8を本体1に対して前方もしくは後方に移動させることができる。なお、本実施例では、前面通気口2からギア10までフィルタ8を這わせることができる長さと、下面通気口3からギア10までフィルタ8を這わせることができる長さが等しくなるような位置にギア10を配置しているが、これに限定したものではなく、設計仕様に応じて、ギア10の配置を本体1内のガイドレール9に対して前後に適宜変更しても良い。
【0022】
フィルタ清掃部11は、フィルタ8の前面フィルタ部8aと下面フィルタ部8bに付着したホコリやチリなどを取除くためのもので、前面通気口2と下面通気口3の間、かつ、フィルタ8と接する位置に配置されている。このフィルタ清掃部11は、フィルタ8に付着したホコリを掃き取るブラシ11aと、ブラシ11aで掃き取ったホコリを溜めこむことができるダストボックス11bを備えている。
【0023】
フィルタ8を本体1に対して前後に移動させることで、フィルタ8とブラシ11aの接触する領域が移動する。これにより、前面フィルタ部8aと下面フィルタ部8bの表面全体のホコリをブラシ11aで掃き取ることができる。ブラシ11aで掃き取ったホコリは、ブラシ11aが回転しダストボックス11b内に収納された時に、ダストボックス11b内に落とされ、溜めこまれる。溜めこまれたホコリは、使用者がフィルタ清掃部11を本体1から取り出し、ダストボックス11bを開けて廃棄される。
【0024】
次に、本実施例の空気調和機の動作について説明する。
【0025】
冷房運転時について、図2を基に説明する。図2に示すように、空気を流通させるために、前面開閉板(2a、2b)および下面開閉板(3a、3b)を開放する。送風機5が本体1の前面通気口2に向けて送風するために、ファンケーシング5bを回動して吹出口5baを仕切板4の通気孔4aに連通させる。これにより、前面通気口2は吹出口として機能し、下面通気口3は吸込口として機能する。また、ギア10を用いて、下面フィルタ部8bを下面通気口3まで移動させる。これにより、下面通気口3には下面フィルタ部8bが配置され、同時に前面フィルタ部8aはフィルタ清掃部11の近傍にまで移動し、前面通気口2は開放状態になる。そこで、送風機5を駆動し、下面通気口3より室内空気を吸込み、吸込まれた室内空気を熱交換器6で冷却し、冷却された調和空気を前面通気口2から水平方向に吹出す。
【0026】
暖房運転時について、図3を基に説明する。図3に示すように、空気を流通させるために、前面開閉板(2a、2b)および下面開閉板(3a、3b)を開放する。送風機5が本体1の下面通気口3に向けて送風するために、ファンケーシング5bを回動して吹出口5baを下面通気口3に連通させる。これにより、下面通気口3は吹出口として機能し、前面通気口2は吸込口として機能する。また、ギア10を用いて、前面フィルタ部8aを前面通気口2まで移動させる。これにより、前面通気口2には前面フィルタ部8aが配置され、同時に、下面フィルタ部8bはフィルタ清掃部11の近傍にまで移動し、下面通気口3は開放状態になる。そこで、送風機5を駆動し、前面通気口2より室内空気を吸込み、吸込まれた室内空気を熱交換器6で加熱し、加熱された調和空気を下面通気口3から垂直方向に吹出す。
【0027】
以上より、本発明の空気調和機は、送風機の送風方向に応じて、吸込口として機能する通気口にはフィルタ8を配置することで、本体内にホコリなどを取込んでしまい、本体内の熱交換器6のフィン部でつまるおそれを解消することができる。また、吹出口として機能する通気口を開放状態にすることで空気抵抗を小さくすることで、床面まで床面まで暖気を送出することができる。さらに、室内を汚すおそれがなくなる。
【符号の説明】
【0028】
1 本体
1a 熱交換室
1b 機械室
2 前面通気口
3 下面通気口
4 仕切板
4a 通気孔
5 送風機
5a シロッコファン
5b ファンケーシング
5ba 吹出口
6 熱交換器
7 ドレンパン
8 フィルタ
8a 前面フィルタ部
8b 下面フィルタ部
8c 連結部
8d ラック
9 ガイドレール
10 ギア
11 フィルタ清掃部
11a ブラシ
11b ダストボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に吊下げられる箱形状の本体と、
前記本体の前面に設けられた前面通気口と、
前記本体の下面後部に設けられた下面通気口と、
前記前面通気口と前記下面通気口を繋ぐ通風路と、
前記通風路に設けられた熱交換器と、
前記通風路に設けられ、送風方向を前記前面通気口側と前記下面通気口側とに切り換える送風機と、
前記送風機によって前記前面通気口又は前記下面通気口から吸込まれる空気中のゴミやホコリを取り除くフィルタと、
前記フィルタを、冷房運転時には前記下面通気口に配置し、暖房運転時には前記前面通気口に配置するように移動させるフィルタ移動手段とを備えてなることを特徴とする天井吊下げ型空気調和機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate