説明

空気調和装置の熱源ユニット及びその制御方法

【課題】停止中の圧縮機の駆動基板において消費される待機電力を削減する。
【解決手段】熱源ユニットは、冷媒を圧縮する複数の能力可変型の圧縮機A,Bと、電源30から電力が供給され、各圧縮機A,Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動基板41,42と、駆動基板41,42に対する電力の供給・遮断を切り換える複数のスイッチ411,421と、各スイッチ411,421に電力の供給・遮断を切り換えるための制御信号を与える給電制御手段40とを備える。給電制御手段40は、少なくとも一つの圧縮機Aが作動し他の圧縮機Bが停止しているときに、所定の電力遮断条件に基づき、停止中の圧縮機Bを駆動するための駆動基板42への電力を遮断する遮断制御信号をスイッチ421に与え、さらに、所定の電力供給条件を満たしたとき、電力が遮断された駆動基板42へ再度電力を供給するための供給制御信号を前記スイッチ421に与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の圧縮機を備えた空気調和装置の熱源ユニット及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルや大店舗等の比較的大規模な施設には、大容量化した室外側ユニットに複数の室内側ユニットを冷媒配管で接続した冷媒回路を有する空気調和装置が用いられている。この種の室外側ユニットには複数台の圧縮機が内蔵され、この複数台の圧縮機を運転制御することによって高い空調負荷にも対応することができるように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、室外側ユニットに可変容量型(能力可変型)の圧縮機と一定容量型の圧縮機とを内蔵した空気調和装置が開示されている。この室外側ユニットは、通常、空調負荷が小さいときは一定容量型の圧縮機を停止して可変容量型の圧縮機を単独で運転し、空調負荷が大きくなると2台の圧縮機を同時に運転する。また、特許文献1記載の室外側ユニットは、室内側ユニットが動作していないとき(空調運転を行っていないとき)に、可変容量型の圧縮機を駆動するインバータ回路への電力を遮断することで待機電力を削減するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−271248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年においては、より高効率の運転を可能にするため、複数の可変容量型の圧縮機を搭載した室外側ユニットが使用されつつある。そして、かかる室外側ユニットにおいても待機電力の削減、特に空調運転中に作動していない圧縮機についての待機電力の削減が望まれる。
【0006】
特許文献1記載の室外側ユニットは、1台の可変容量型の圧縮機を搭載するのみであり、空調運転中は、常にこの圧縮機が作動するので、当該圧縮機のインバータ回路への電力を遮断して待機電力を削減することができるのは、室内側ユニットが動作していない間に限られる。
【0007】
本発明は、複数台の能力可変型の圧縮機を備えている熱源ユニットにおいて、空調運転中に作動していない圧縮機についての待機電力の削減を行うことができる空気調和装置の熱源ユニット及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和装置の熱源ユニットは、冷媒を圧縮する複数の能力可変型の圧縮機と、電源から電力が供給され、前記各圧縮機をそれぞれ駆動するための複数の駆動基板と、前記複数の駆動基板に対する電力の供給・遮断を切り換える複数のスイッチと、前記各スイッチに電力の供給・遮断を切り換えるための制御信号を与える給電制御手段と、を備えており、前記給電制御手段は、少なくとも一つの圧縮機が作動し他の圧縮機が停止しているときに、所定の電力遮断条件に基づき、停止中の圧縮機を駆動するための前記駆動基板への電力を遮断する遮断制御信号を前記スイッチに与え、さらに、前記給電制御手段は、所定の電力供給条件を満たしたとき、電力が遮断された前記駆動基板へ再度電力を供給するための供給制御信号を前記スイッチに与えることを特徴とする。
【0009】
本発明の空気調和装置の熱源ユニットは、例えば、空調負荷が大きい場合等には、複数の能力可変型の圧縮機を同時に作動させて空調能力を高め、空調負荷が小さい場合等には、一部の圧縮機を作動させて空調能力を低下させ、いずれの場合も、空調負荷の変動等に応じて一又は複数の圧縮機の能力を可変制御することができる。そして、空調負荷が小さい場合等において、停止中の圧縮機は、空調負荷が増大したときに即座に作動する必要があるため、その駆動基板に電力が供給された状態で待機するが、この待機状態が長時間続くと無駄な電力を消費することになる。そのため、本発明では、所定の条件を満たす場合に限り、当該圧縮機を駆動する駆動基板への電力を遮断することによって、待機電力の削減を行う。
【0010】
前記給電制御手段は、前記電力遮断条件として、空調負荷が所定よりも小さい状態が所定時間以上継続したときに、前記遮断制御信号を前記スイッチに与えることができる。
空調負荷が所定よりも低い状態、例えば、外気温度と室内温度(室内設定温度)との差が所定よりも小さい場合は、停止中の圧縮機を作動させる必要性は低く、また、その状態が安定して長く続くほど、停止中の圧縮機を作動させる必要性はより低くなると推測できる。そのため、本発明では、空調負荷が所定よりも低い状態が所定時間以上継続すると、給電制御手段が遮断制御信号をスイッチに与え、停止中の圧縮機を駆動する駆動基板への電力を遮断する。
【0011】
前記給電制御手段は、前記電力供給条件として、空調負荷が所定よりも大きくなったときに、前記供給制御信号を前記スイッチに与えることができる。
空調負荷が所定よりも大きくなると、停止中の圧縮機を作動させる必要性が高くなると考えられるので、このような条件で駆動基板への電力の供給を再開することで、即座に停止中の圧縮機を作動させることが可能となる。
【0012】
前記給電制御手段は、利用ユニットに通信可能に接続されるとともに、この利用ユニットとの通信結果に基づいて前記駆動基板の動作を制御する制御基板により構成されていることが好ましい。
空気調和装置は、利用ユニット側に設けられた温度センサ等の出力が通信によって熱源ユニットの制御基板に入力され、制御基板はその通信結果に応じて圧縮機の運転・停止制御や運転周波数の調整制御等を駆動基板に行わせる。したがって、この熱源ユニットの制御基板に、駆動基板への電力の供給・遮断の切り換えを制御する給電制御手段の機能をも持たせることによって、圧縮機の運転状態に応じた電力の供給・遮断の制御を効率よく行うことができる。
【0013】
本発明の空気調和装置は、電源から電力が供給され、いずれかの前記駆動基板とともに動作する他の基板を備えており、当該他の基板は、前記給電制御手段によって当該いずれかの駆動基板への電力の供給・遮断を切り換えるスイッチに与えられる制御信号に基づいて、電力の供給・遮断が切り換えられることが好ましい。
いずれかの駆動基板とともに動作する他の基板を備えている場合、この他の基板への電力の供給・遮断を、当該いずれかの駆動基板への電力の供給・遮断と合わせて行うこができ、より待機電力の削減に寄与することができる。なお、他の基板は、当該駆動基板への電力の供給・遮断を切り換えるスイッチと共通のスイッチにより電力の供給・遮断が切り換えられてもよいし、異なるスイッチによって電力の供給・遮断が切り換えられてもよい。
【0014】
前記他の基板は、能力可変型の送風装置を駆動するための駆動基板であってもよい。
この場合、前記複数の圧縮機は、作動優先順位が定められており、前記送風装置の駆動基板は、より作動優先順位の高い圧縮機を駆動する駆動基板とともに動作することが好ましい。
このような構成によって、一部の圧縮機が作動している状態、すなわち、より作動優先順位の高い圧縮機が作動している状態では、送風装置を駆動する駆動基板への電力が遮断されることはなく、送風装置を継続して駆動することができる。
【0015】
本発明は、複数の能力可変型の圧縮機をそれぞれ複数の駆動基板によって駆動する空気調和装置における熱源ユニットの制御方法であって、少なくとも一つの圧縮機が作動し他の圧縮機が停止しているときに、所定の電力遮断条件に基づき、停止中の圧縮機を駆動するための前記駆動基板への電力を遮断し、さらに、所定の電力供給条件を満たしたとき、電力が遮断された前記駆動基板へ再度電力を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、停止中の圧縮機の駆動基板において消費される待機電力を適切に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気調和装置の冷媒回路を示す図である。
【図2】室外側ユニットにおける制御部の電力供給系を示す図である。
【図3】第1、第3、第4駆動基板の電力供給系を示す図である。
【図4】第2駆動基板の電力供給系を示す図である。
【図5】室外側ユニットの運転状態を示す遷移図である。
【図6】第2駆動基板への電力の供給/遮断の手順を示すフローチャートである。
【図7】制御基板及び第1〜第4駆動基板への電力の供給形態を概略的に示す図である。
【図8】他の実施の形態における制御基板40及び第1〜第4駆動基板41〜44への電力の供給形態を概略的に示す図である。
【図9】他の実施の形態における室外側ユニットの運転状態を示す遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る空気調和装置10の冷媒回路を示す図である。
本実施の形態の空気調和装置10は、冷媒の循環により蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路を備えている。冷媒回路は、室外側ユニット(熱源ユニット)11と、室内側ユニット(利用ユニット)12と、これらを接続する冷媒配管13とを備えている。
【0019】
室内側ユニット12は、膨張機構15と、室内側熱交換器16と、ファン(送風装置)17と、制御部14と、吸込温度センサ33と、を備えている。膨張機構15は、冷媒圧力の調節や冷媒流量の調節を行うことが可能な電動膨張弁が用いられている。
室内側熱交換器16は、例えばクロスフィンチューブ式の熱交換器とされており、室内の空気と熱交換するために用いられる。
【0020】
ファン17は、室内の空気を室内側ユニット12の内部に取り込み、室内側熱交換器16との間で熱交換を行った後に室内に吹き出すように構成されている。
吸込温度検出センサ33は、ファン17によって室内側ユニット12内に取り込んだ空気の温度を検出する。吸込温度センサ33によって検出された温度は、制御部14に入力される。
【0021】
膨張機構15やファン17は、空気調和装置10の運転スイッチのオンオフ操作や、吸込温度センサ33等のセンサ出力に応じて制御部14により動作制御される。
なお、本実施の形態の空気調和装置10では、室内側ユニット12が1台とされているが、2台以上の室内側ユニット12が並列に接続されていてもよい。
【0022】
室外側ユニット11は、圧縮機A,Bと、室外側熱交換器18と、四路切換弁19と、ファン(送風装置)20と、制御部21と、外気温度センサ32と、を備えている。室外側ユニット11には、2台の圧縮機A,Bが設けられており、これら2台の圧縮機A,Bは並列に接続されている。2台の圧縮機A,Bは、いずれも可変容量型(能力可変型)の圧縮機であり、内蔵されているモータ(又は別体として備わったモータ)をインバータ制御することによって、このモータの運転回転数を段階的又は連続的に変更することが可能である。
【0023】
室外側熱交換器18は、例えばクロスフィンチューブ式の熱交換器であり、空気を熱源として冷媒と熱交換するために用いられる。
ファン20は、インバータ制御によって運転回転数が段階的又は連続的に変更されるモータを備えている。ファン20は、外気を室外側ユニット11の内部に取り込み、室外側熱交換器18との間で熱交換を行った後に空気を外部に吹き出すように構成されている。また、ファン20は、圧縮機A,Bを空冷する機能をも有していてもよい。
【0024】
四路切換弁19は、冷媒配管13における冷媒の流れを反転させ、圧縮機A,Bから吐出される冷媒を室外側熱交換器18と室内側熱交換器16とに切り換えて供給し、冷房運転と暖房運転とを切り換えることが可能となっている。
具体的に、冷房運転時には、四路切換弁19を実線のように切り換えることによって、冷媒を実線矢印で示す方向に流し、これによって圧縮機A,Bから吐出された冷媒を室外側熱交換器18に供給し、膨張機構15を通過した冷媒を室内側熱交換器16に供給する。この際、室外側熱交換器18は凝縮器とし機能し、圧縮機A,Bによって圧縮された高温高圧のガス状冷媒を凝縮・液化させ、室内側熱交換器16は蒸発器として機能し、膨張機構15を通過した後の低温低圧の液状冷媒を蒸発・気化させる。
【0025】
暖房運転時には、四路切換弁19を点線のように切り換えることによって冷媒の流れを反転させ、点線矢印で示す方向に冷媒を流す。これにより、室外側熱交換器18は蒸発器として機能して膨張機構15を通過した後の低温低圧の液状冷媒を蒸発・気化させ、室内側熱交換器16は凝縮器として機能して圧縮機A,Bによって圧縮された高温高圧のガス状冷媒を凝縮・液化させる。
【0026】
四路切換弁19、圧縮機A,B、ファン20等は、空気調和装置10の運転スイッチのオンオフ操作や、外気温度センサ32、圧力センサ等のセンサ出力に応じて制御部21により動作制御される。特に、圧縮機A,Bは、室内の空調負荷に応じた要求能力を満たすように、制御部21によって運転制御される。空調負荷は、例えば、外気や室内の空気の状態(温度、湿度)に応じて変動する。また、圧縮機A,Bへの要求能力は、複数の室内側ユニット12が接続されている場合には、いずれかの室内側ユニット12の運転が開始された場合や停止された場合にも変動する。
【0027】
〔圧縮機A,Bの構成〕
前述のように本実施の形態の室外側ユニット11には、2台の能力可変型の圧縮機A,Bが内蔵されている。各圧縮機A,Bは、互いに同一の能力を具備するものであってもよいし、異なる能力を具備するものであってもよい。本実施の形態では、Aで示す圧縮機を小能力(小容量)の圧縮機とし、Bで示す圧縮機を大能力(大容量)の圧縮機とする。
また、本実施の形態の空気調和装置10では、2台の圧縮機A,Bに対して作動優先順位が設定されており、制御部21は、作動優先順位の高い圧縮機から順に作動させ、作動優先順位の低い圧縮機から停止させるように運転制御を行う。そして、この作動優先順位は、より能力が小さい圧縮機Aが上位となるように設定されている。したがって、本実施の形態では、小能力の圧縮機Aの作動優先順位が高く、大能力の圧縮機Bの作動優先順位が低くなっている。
【0028】
このように、より能力(容量)の小さい圧縮機Aを圧縮機Bに優先して作動することによって、より小さい空調負荷に対応して室外側ユニット11を運転することが可能となっている。つまり、圧縮機は、能力(容量)の大きいものほど冷媒の押しのけ量が大きく、低回転数での運転が困難となるので、より能力の小さい圧縮機Aを優先して作動することによって低回転数での運転を良好に行え、より小さい空調負荷にも対応することができる。また、圧縮機は、能力の小さいものほど小さい負荷変動にも応答性よく対応することができるので、圧縮機Bよりも優先して能力の小さい圧縮機Aを起動させることによって、より小さい負荷変動にも対応することができる。
【0029】
〔室外側ユニット11の制御部21の構成〕
図2は、室外側ユニットにおける制御部の電力供給系を示す図である。
制御部21は、制御基板40と、第1〜第4駆動基板41〜44とを有している。制御基板40は、CPUやメモリを有する制御回路を含み、第1〜第4駆動基板41〜44に制御信号を与えることによってこれらを動作制御する。第1,第2駆動基板41,42は、それぞれ圧縮機A,Bを駆動するためのものであり、第3,第4駆動基板43,44は、それぞれファン20,20を駆動するためのものである。制御基板40、第1〜第4駆動基板41〜44は、それぞれ個別のプリント基板に形成され、三相電源30の電力が電源スイッチ31を介して供給される。
【0030】
図7は、制御基板40及び第1〜第4駆動基板41〜44への電力の供給形態を概略的に示す図である。三相電源30の電力は第1電力線L1を介して第1駆動基板41,第3駆動基板43、第4駆動基板44に供給され、第2電力線L2を介して第2駆動基板42に供給される。第1電力線L1及び第2電力線L2には、それぞれ電力の供給と遮断とを切り換えるスイッチ411,421が設けられ、これらスイッチ411,421は、電源管理線L3,L4を介して制御基板40から送られる給電制御用の制御信号によって切り換えられる。したがって、制御基板40は、第1〜第4駆動基板41〜44に対する電力の供給・遮断を制御する給電制御手段として機能する。また、制御基板40と各駆動基板41〜44とは通信線L5によって接続され、この通信線L5を介して制御基板40の制御回路が各駆動基板41〜44に対して圧縮機A,Bやファン20を運転等させるための制御信号を与える。なお、スイッチ411,421は、いずれかの基板41〜44上に設けられていてもよい。以下の説明では、スイッチ411が第1駆動基板41上に設けられ、スイッチ421が第2駆動基板42上に設けられたものとする。また、第1電力線L1は、第1駆動基板41を経た電力を第3,第4駆動基板43,44に供給するものとする。
【0031】
図3は、第1、第3、第4駆動基板の電力供給系を示す図である。
第1駆動基板41は、スイッチ411と、インバータ回路412と、インバータ制御回路413とを備えている。三相電源30は、スイッチ411を介してインバータ回路412とインバータ制御回路413とのそれぞれに接続されている。スイッチ411は、第1スイッチ411aと、第2スイッチ411bとからなり、第1スイッチ411aは、インバータ制御回路413への電力の供給と遮断とを切り換え、第2スイッチ411bは、インバータ回路412への電力の供給と遮断とを切り換える。第1スイッチ411a及び第2スイッチ411bは、それぞれ制御基板40から与えられた制御信号s1によって電力の供給/遮断の切り換え動作を行う。
【0032】
インバータ回路412は、整流平滑回路412aと、スイッチング回路412bとを備えている。整流平滑回路412aは、三相電源30の交流電圧を直流電圧に変換する。スイッチング回路412bは、整流平滑回路412aから供給された直流電圧をスイッチの切り換えによって交流電圧に変換し、圧縮機Aのモータに出力する。インバータ制御回路413は、マイクロプロセッサ等からなり、制御基板40から与えられたスイッチング制御指令(始動指令、周波数指令等)s2に基づき、インバータ回路412のスイッチング回路に与えるスイッチング信号s3を生成する。
【0033】
第3,第4駆動基板43,44は、それぞれ第1駆動基板41のインバータ回路412に接続され、インバータ回路412から電力が供給される。より具体的には、第3,第4駆動基板43,44は、インバータ回路412の整流平滑回路412aによって変換された直流電圧が供給され、この直流電圧をスイッチング回路431,441によって交流電圧に変換し、ファン20のモータに出力する。第3,第4駆動基板43,44は、制御基板40から与えられた制御信号s4により制御基板40によって制御される。
【0034】
図4は、第2駆動基板の電力供給系を示す図である。
第2駆動基板42は、第1駆動基板42と同様に、スイッチ421と、インバータ回路422と、インバータ制御回路423とを備えている。三相電源30は、スイッチ421を介してインバータ回路422とインバータ制御回路423とのそれぞれに接続されている。スイッチ421は、第1スイッチ421aと、第2スイッチ421bとからなり、第1スイッチ421aは、インバータ制御回路423への電力の供給と遮断とを切り換え、第2スイッチ421bは、インバータ回路422への電力の供給と遮断とを切り換える。第1スイッチ421a及び第2スイッチ421bは、それぞれ制御基板40から与えられた制御信号s1によって電力の供給/遮断の切り換え動作を行う。
【0035】
インバータ回路422は、整流平滑回路422aと、スイッチング回路422bとを備えている。整流平滑回路422aは、三相電源30の交流電圧を直流電圧に変換する。スイッチング回路422bは、整流平滑回路422aから供給された直流電圧をスイッチの切り換えによって交流電圧に変換し、圧縮機Bのモータに出力する。インバータ制御回路423は、マイクロプロセッサ等からなり、制御基板40から与えられたスイッチング制御指令(始動指令、周波数指令等)s2に基づき、インバータ回路422のスイッチング回路422bに与えるスイッチング信号s3を生成する。
【0036】
〔圧縮機の運転制御〕
次に圧縮機の運転制御について説明する。図5は、室外側ユニット11の運転状態を示す遷移図である。室外側ユニット11は、スイッチのオンオフ等により運転状態と停止状態との間で状態が遷移する。また、室外側ユニット11が運転状態にあるとき、双方の圧縮機A,Bが運転している状態と、より作動優先順位の高い圧縮機Aのみが運転している状態との間で状態が遷移する。
【0037】
室内の空調負荷が大きい場合、室外側ユニット11には高い能力が要求されるため、双方の圧縮機A,Bを起動する。そして、空調負荷が小さいと、圧縮機Bを停止し、圧縮機Aのみが単独運転を行う。圧縮機Aのみが単独で運転している間、通常、圧縮機Bを駆動する第2駆動基板42には三相電源30から電力が供給されており、室外側ユニット11への要求能力が増大すれば、即座に圧縮機Bを作動させることが可能となっている。
【0038】
一方、本実施の形態の室外側ユニット11は、省エネルギーの観点から、所定の条件(電力遮断条件)を満たす場合に限り、空調運転が行われている間でも、第2駆動基板42への電力を遮断し、待機電力を削減する省電力運転を行うように構成されている。以下、この省電力運転について詳細に説明する。
【0039】
本実施の形態では、第2駆動基板42への電力を遮断する所定の条件として次の2点を採用している。
条件1:空調負荷が所定よりも小さいこと
条件2:条件1を満たす状態が所定時間継続していること
【0040】
条件1は、外気温度センサ32の検出値T1と、吸込温度センサ33の検出値T2との差(絶対値)ΔT(ΔT=|T1−T2|)が所定の閾値未満であるか否かによって判断される。外気温度T1と吸込温度T2(室内設定温度)との差が小さいと空調負荷が小さくなり、室外側ユニット11に要求される能力も小さくなる。
【0041】
本実施の形態では、所定の閾値として2つの値α1、α2(但し、α1<α2)を採用している。第1の閾値α1は、所定の条件を満たすか否かの初期判断を行うための閾値として用いられ、第2の閾値α2は、初期判断後、所定の条件を満たさなくなるか否かの判断を行うための閾値として用いられる。第1,第2の閾値α1,α2は、例えば、α1=2.0℃、α2=3.0℃とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0042】
条件2は、条件1を満たした状態が所定時間継続することを条件とする。このような条件を設定したのは、条件1を満たすような空調負荷の小さい状態が所定時間継続すると、圧縮機への要求能力は今後しばらくは増大しないと推測することができ、第2駆動基板42への電力を遮断しても、その後即座に圧縮機Bを作動する状況にはならないと考えられるからである。また、条件1を満たした後、即座に第2駆動基板42への電力を遮断したとすると、第2駆動基板42における内部処理、例えば、インバータ回路422の整流平滑回路422aに備わったコンデンサの強制放電が適切になされず、長時間の自然放電を要することになり、コンデンサ等の部品の寿命を低下させる原因になるからである。条件2の継続時間は、例えば10分とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
図6は、第2駆動基板42への電力の供給/遮断の手順を示すフローチャートである。以下、図5及び図6を参照して、第2駆動基板42への電力の供給/遮断の流れについて説明する。
【0044】
室外側ユニット11の制御基板40には、外気温度センサ32の検出値T1が常時入力されている。また、制御基板40は、室内側ユニット12の制御部14との間で通信し、制御部14から吸込温度センサ33の検出値T2を常時受信している。そして、制御基板40は、外気温度センサ32の検出値T1と、吸込温度センサ33の検出値T2との差ΔTを計算により求める。
【0045】
制御基板40は、圧縮機Aが単独で運転し、かつ第2駆動基板42へ電力が供給されている状態(図6のステップS1)で、検出値T1,T2の差ΔTが、第1の閾値α1未満であるか否か、すなわち、[ΔT<α1]を満たすか否かを判断する(ステップS2)。制御基板40は、差ΔTが第1の閾値α1以上であると判断した場合には、第2駆動基板42への電力の供給を維持し(ステップS1)、差ΔTが第1の閾値α1未満であると判断した場合には、ステップS3へ処理を進める。
【0046】
ステップS3において、制御基板40は、タイマーをセットし、[ΔT<α1]を満たした時点からの継続時間を計測する。
次いで、ステップS4において、制御基板40は、差ΔTが第2の閾値α2未満であるか否か、すなわち、[ΔT<α2]を満たすか否かを判断する。制御基板40は、差ΔTが第2の閾値α2以上であると判断した場合には、タイマーをリセットし(ステップS5)、第2駆動基板42への電力の供給を維持する(ステップS1)。
【0047】
制御基板40は、差ΔTが第2の閾値α2未満であると判断した場合には、更に、継続時間が10分を経過したか否かを判断し(ステップS6)、10分を経過したと判断した場合にはステップS7に処理を進め、10分を経過していないと判断した場合にはステップS4に処理を戻す。
【0048】
ステップS7において、制御基板40は、第2駆動基板42の第1,第2スイッチ421a,421bに電力の遮断制御信号s1を与える(図4参照)。第1,第2スイッチ421a,421bは、この遮断制御信号s1に基づいて第2駆動基板42のインバータ制御回路423及びインバータ回路422への電力を遮断する。
【0049】
次いで、制御基板40は、図6のステップS8において、差ΔTが第2の閾値α2以上であるか否かを判断し、差ΔTが第2の閾値α2以上であると判断した場合には、所定の電力供給条件を満たすので、処理をステップS9に進め、第2の閾値α2以上ではないと判断した場合には第2駆動基板42への電力の遮断状態を維持する。
【0050】
ステップS9において、制御基板40は、第1,第2スイッチ421a,421bに電力の供給制御信号s1を与える。第1,第2スイッチ421a,421bは、この供給制御信号s1に基づいて、第2駆動基板42のインバータ制御回路423及びインバータ回路422と三相電源30とを接続し、第2駆動基板42へ電力を供給する。
【0051】
第2駆動基板42への電力の供給がなされると、制御基板40は、空調負荷の増大等により、圧縮機Bの運転が必要か否かを判断し(ステップS10)、運転が必要であると判断した場合には、第2駆動基板42のインバータ制御回路423にスイッチング制御指令s2を与え、圧縮機Bを運転させる。
【0052】
以上、説明したように、本実施の形態の空気調和装置10の室外側ユニット11は、一つの圧縮機Aが作動し他の圧縮機Bが停止しているときに、所定の条件1,2に基づき、制御基板40が、停止中の圧縮機Bを駆動する第2駆動基板42への電力を遮断する遮断制御信号をスイッチ421に与え、第2駆動基板42への電力を遮断するので、適切に待機電力を削減することができる。
【0053】
また、ファン20の駆動基板43,44には、作動優先順位が互い圧縮機Aの第1駆動基板41を経た電力が供給されるので、圧縮機Aが作動している間はファン20への電力が遮断されることはなく、室外側熱交換器18による熱交換のため、又は圧縮機A,Bの空冷のために適切にファン20を作動させることができる。
【0054】
上記実施の形態において、第1の閾値α1と第2の閾値α2との2つの閾値を設定したのは次の理由による。例えば、第2の閾値α2を設定せず、第1の閾値α1のみを設定した場合、外気温度T1と吸込温度T2との差ΔTが、第1の閾値αを跨いで上下に変動するような状態にあると、タイマーのセットとリセットとが頻繁になされてしまうことになる。また、差ΔTが第1の閾値α1未満である状態が10分継続して、第2駆動基板42への電力が遮断されたとしても、その後、すぐに差ΔTが第1の閾値α1以上になると、第2駆動基板42への電力の供給をすぐに回復しなければならず、第1,第2スイッチ421a,421bの切り換えを頻繁に行わなければならない。そのため、本実施の形態では、第1の閾値α1に加えて、これよりも大きい第2の閾値α2を設定し、タイマーセット後、及び第2駆動基板42への電力の遮断後は、第2の閾値α2を超えない限り、タイマーリセット、及び第2駆動基板42への電力供給の回復がなされないようにしているのである。なお、第2の閾値α2があまりに大きすぎると、圧縮機Bの作動が必要な状態になっても第2駆動基板42へ電力が供給されていないという状況が発生しうるため、第2の閾値α2は、第1の閾値α1よりも1〜2℃程度の高い温度とするのが好ましい。
【0055】
上記実施の形態では、スイッチ421の第1スイッチ421a及び第2スイッチ421bの双方を切断してインバータ制御回路423とインバータ回路422との双方への電力を遮断している。特に、第1スイッチ421aを切断してインバータ制御回路423への電力を遮断することにより、インバータ制御回路423のマイクロプロセッサ等で消費される電力を削減することができる。また、第2スイッチ421bを切断してインバータ回路422への電力を遮断することにより、インバータ回路422における消費電力、例えば整流平滑回路422aのコンデンサへの蓄電によって消費される電力を削減することができる。
【0056】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更することができる。
例えば、上記実施の形態では、図7に示すように第1,第3,及び第4駆動基板41,43,44への電力の供給・遮断の切り換えが一つのスイッチ411によって行われていたが、図8に示すように、第1,第3,及び第4駆動基板41,43,44のそれぞれに対する電力の供給・遮断を切り換える個別のスイッチ411a,411b,411cが設けられていてもよい。また、図8に示すように、各スイッチ411a〜411c,421に制御信号を与える給電制御手段として、制御基板40とは別の給電用制御基板40aを設けてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、圧縮機A用の第1駆動基板41と、2つのファン20用の第3,第4駆動基板43,43とが同一の電力線L1によって電力が供給されていたが、2つのファン20のうち一方の駆動基板は、第2駆動基板42と同一の電力線L2によって電力が供給されてもよい。
【0058】
上記実施の形態では、第2駆動基板42への電力を遮断するための条件1として空調負荷が小さいことを採用し、そのために、外気温度センサ32の検出値T1と吸込温度センサ33の検出値T2との差ΔTと、所定の閾値α1,α2とを比較しているが、この手法に限定されず、他の手法を用いてもよい。
【0059】
例えば、閾値として、α1とα2との間の値α3(α1<α3<α2)を設定し、条件1を満たす初期判断を行うための閾値として、α1だけでなくα3を採用してもよい。この場合、図9に示すように、ΔT<α1(例えば、2.0℃)の条件を満たしてからΔT<α2(例えば、3.0℃)の状態が10分継続するという条件に加えて、ΔT<α3(例えば、2.5℃)の条件を満たしてからΔT<α2の状態が、例えば20分継続するという条件で、第2駆動基板42への電力を遮断するようにしてもよい。このような複数段階の条件を設定することによって、より待機電力の削減効果を高めることができる。
【0060】
室外側ユニット11に搭載する圧縮機の数は、3台以上であってもよい。3台以上の圧縮機を備える場合、最も作動優先順位の高い1つの圧縮機を予め定めておき、他の圧縮機をそれぞれの稼働時間等に基づいたローテーションで作動させてもよい。さらに、3台以上の圧縮機を備える場合は、2台以上が能力可変型の圧縮機であれば、一部が能力一定型の圧縮機であってもよい。
また、室外側ユニットに搭載される複数の圧縮機は、互いに同一の能力を具備するものであってもよい。
【0061】
3台以上の圧縮機を備える場合、それぞれを駆動するための3つ以上の駆動基板を備えることになるが、これらの駆動基板に対する電力の供給・遮断を切り換えるスイッチは、必ずしも3つ以上備えていなくてもよい。例えば、3台の圧縮機を備える場合に、作動優先順位の低い2台の圧縮機を駆動するための各駆動基板に対する電力の供給・遮断を1つのスイッチによって行ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 空気調和装置
11 室外側ユニット(熱源ユニット)
12 室内側ユニット(利用ユニット)
20 ファン
21 制御部
30 三相電源
40 制御基板
41 第1駆動基板
42 第2駆動基板
43 第3駆動基板
44 第4駆動基板
421 スイッチ
421a 第1スイッチ
421b 第2スイッチ
422 インバータ回路
423 インバータ制御回路
A,B 圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する複数の能力可変型の圧縮機(A,B)と、
電源(30)から電力が供給され、前記各圧縮機(A,B)をそれぞれ駆動するための複数の駆動基板(41,42)と、
前記複数の駆動基板(41,42)に対する電力の供給・遮断を切り換える複数のスイッチ(411,421)と、
前記各スイッチ(411,421)に電力の供給・遮断を切り換えるための制御信号を与える給電制御手段(40)と、を備えており、
前記給電制御手段(40)は、少なくとも一つの圧縮機(A)が作動し他の圧縮機(B)が停止しているときに、所定の電力遮断条件に基づき、停止中の圧縮機(B)を駆動するための前記駆動基板(42)への電力を遮断する遮断制御信号を前記スイッチ(421)に与え、
さらに、前記給電制御手段(40)は、所定の電力供給条件を満たしたとき、電力が遮断された前記駆動基板(42)へ再度電力を供給するための供給制御信号を前記スイッチ(421)に与えることを特徴とする空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項2】
前記給電制御手段(40)は、前記電力遮断条件として、空調負荷が所定よりも小さい状態が所定時間以上継続したときに、前記遮断制御信号を前記スイッチ(421)に与える、請求項1に記載の空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項3】
前記給電制御手段(40)は、前記電力供給条件として、空調負荷が所定よりも大きくなったときに、前記供給制御信号を前記スイッチ(421)に与える、請求項1又は2に記載の空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項4】
前記給電制御手段(40)は、利用ユニットに通信可能に接続されるとともに、この利用ユニットとの通信結果に基づいて前記駆動基板(41)の動作を制御する制御基板により構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項5】
電源(30)から電力が供給され、いずれかの前記駆動基板(41)とともに動作する他の基板(43,44)を備えており、
当該他の基板(43,44)は、前記給電制御手段(40)によって当該いずれかの駆動基板(41)への電力の供給・遮断を切り換えるスイッチ(411)に与えられる制御信号に基づいて、電力の供給・遮断が切り換えられる請求項1〜4のいずれかに記載の空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項6】
前記他の基板(43,44)は、能力可変型の送風装置(20)を駆動するための駆動基板(43,44)であり、
前記複数の圧縮機(A,B)は、作動優先順位が定められており、
前記送風装置(20)の駆動基板(43,44)は、より作動優先順位の高い圧縮機(A)を駆動する駆動基板(41)とともに動作する請求項5に記載の空気調和装置の熱源ユニット。
【請求項7】
複数の能力可変型の圧縮機(A,B)をそれぞれ複数の駆動基板(41,42)によって駆動する空気調和装置における熱源ユニットの制御方法であって、
少なくとも一つの圧縮機(A)が作動し他の圧縮機(B)が停止しているときに、所定の電力遮断条件に基づき、停止中の圧縮機(B)を駆動するための前記駆動基板(42)への電力を遮断し、さらに、所定の電力供給条件を満たしたとき、電力が遮断された前記駆動基板(42)へ再度電力を供給することを特徴とする空気調和装置における熱源ユニットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−97966(P2012−97966A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246171(P2010−246171)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】