説明

空気調和装置

【課題】冷房運転時におけるAPFを高めるのに有利な空気調和装置を提供する。
【解決手段】室外熱交換器7は第1熱交換器71および第2熱交換器72に分割されている。吸着式ヒートポンプ用熱交換器50,52は、第2熱交換器72を冷却する冷却風が通過する送風通路部分に設けられている。冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のとき、吸着式ヒートポンプ2を運転させ、且つ、室内機8から吐出された冷媒を第1熱交換器71へ供給させて冷媒の凝縮を進行させると共に冷媒を第2熱交換器72に供給することを抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は室内の空気の温度を調整する空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置においては、消費電力1kWあたりの冷暖房効率を示すCOP(Coefficient Of Performance,成績係数)を高めることが要請されている。そこで、空気調和装置として、水等の作動流体を吸着可能なシリカゲル等の吸着剤を有する吸着式ヒートポンプを搭載したものが知られている(特許文献1,2)。このものによれば、吸着式ヒートポンプで得られた冷却作用により、室内機の冷房運転時において室内機から吐出されコンプレッサで圧縮された冷媒を予備的に冷却させることにより、冷房運転時のCOPを向上させることを意図する。
【0003】
このような吸着式ヒートポンプを搭載する空気調和装置は、水などの作動流体を吸着可能なシリカゲル等の吸着剤を有する吸着部の他に、吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる吸着用凝縮器と、吸着用凝縮器で凝縮された作動流体を気化させて気化潜熱により冷却作用を発生させる冷却部と、吸着モードの実行により昇温した吸着部を冷却させることにより昇温された吸着式ヒートポンプ用冷却流体を外気との熱交換により冷却させる中間冷却熱交換器とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195184号公報
【特許文献2】特開平11−23093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したCOPは空気調和装置の定格負荷運転の状態に影響され易い。定格負荷運転は、空気調和装置を始動させるときに実行されることが多い。空気調和装置の実際の運転状態としては、定格負荷運転ではなく、中間負荷またはそれ以下で運転されることが多い。特に室内の断熱性が高い構造であるときには、中間負荷以下で運転されることが多い。従って、空気調和装置のCOPが高いからといって、空気調和装置の効率が高いとは必ずしもいえないのが実状である。そこで、近年、空気調和装置の実際の使用効率を表し易いAPF(Annual Performance Factor,通年年間エネルギ消費効率)が指標として設けられ、空気調和装置のAPFを高めることが要請されている。
【0006】
しかし吸着式ヒートポンプを搭載した空気調和装置では、APFが思ったほど向上しないことが判明した。すなわち、吸着式ヒートポンプを搭載しない空気調和装置に比較して、吸着式ヒートポンプを搭載した空気調和装置では、吸着式ヒートポンプに使用される吸着用凝縮器および中間冷却熱交換器といった熱交換器が増加する。このため、これらの熱交換器を冷却させる送風面積および送風量を増加しなければならない。この場合、それだけ補機である送風ファンの大型化を招き、補機の動力コストが増加する。このため、吸着式ヒートポンプの冷却作用により冷媒を予備的に冷却させたとしても、空気調和装置のAPFが思ったほど向上しない。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、冷房運転時におけるAPF(通年エネルギ消費効率)を高めるのに有利な空気調和装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気調和装置は、室内を少なくとも冷房させる空気調和装置であって、(a)作動流体を吸着剤に吸着させる吸着モードと、吸着剤に吸着された作動流体を吸着剤から脱離させる脱離モードとを交互に実行可能な吸着部を有すると共に、吸着モードおよび脱離モードの実行に伴い作動流体の気化潜熱により冷却作用を発生させる冷却部を有する吸着式ヒートポンプと、(b)吸着式ヒートポンプの運転時に使用される吸着式ヒートポンプ用熱交換器と、(c)室内機の冷房運転時において室内機から吐出された冷媒を圧縮させるコンプレッサと、(d)コンプレッサで圧縮された冷媒を熱交換させて凝縮させる室外熱交換器と、(e)冷却風を室外熱交換器および吸着式ヒートポンプ用熱交換器に供給させる送風通路を形成する送風要素と、(f)制御部とを具備しており、(e)室外熱交換器は、送風通路の冷却風と接触するように設けられ、且つ、コンプレッサで圧縮された冷媒が供給され得る第1熱交換器および第2熱交換器に分割されており、(f)冷房運転時の冷房負荷の無負荷と定格負荷との間における中間値を中間負荷とするとき、制御部は、(i)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき、吸着式ヒートポンプの運転を停止し、且つ、コンプレッサで圧縮させた冷媒を第1熱交換器および第2熱交換器の双方へ供給させて冷媒の凝縮を進行させ、(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のとき、吸着式ヒートポンプを運転させつつ吸着式ヒートポンプ用熱交換器を冷却風で冷却させ、且つ、コンプレッサで圧縮させた冷媒を、第1熱交換器および第2熱交換器のうち吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側の熱交換器に供給すると共に、第1熱交換器および第2熱交換器のうち、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れる側の熱交換器に供給することを抑止する。
【0008】
本発明によれば、室内機の冷房運転時において、コンプレッサは、室内機から吐出された冷媒を圧縮させる。コンプレッサで圧縮された冷媒は、凝縮器として機能できる室外熱交換器において熱交換されて凝縮される。室外熱交換器は凝縮熱を放出させる。ここで、室外熱交換器は、送風通路に設けられた第1熱交換器および第2熱交換器に分割されている。冷房運転時の冷房負荷の無負荷と定格負荷との間における中間値を中間負荷とする。中間負荷は、冷房運転時の冷房負荷が無負荷を0とし、定格負荷を100とするとき、45〜55のうちの任意値とすることができる。例えば50とすることができる。定格負荷とは、連続運転が可能な最大負荷を意味し、一般的には、銘板、カタログ、説明書等に明示されている。
【0009】
上記した(i)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転時)には、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を充分に凝縮させる必要がある。そこで、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を第1熱交換器および第2熱交換器の双方へ供給させ、これにより、第1熱交換器および第2熱交換器の双方において冷媒の凝縮を進行させるため、冷媒の凝縮量が確保される。この場合、送風要素が作動するため、空気による冷却風が送風通路を通過し、第1熱交換器および第2熱交換器を冷却させて凝縮作用を発揮させ、冷媒の凝縮を進行させる。これにより第1熱交換器および第2熱交換器凝縮熱は凝縮熱を放熱させる。この放熱の影響で、吸着式ヒートポンプ用熱交換器の熱交換作用(冷却作用)は極端に低下され、吸着式ヒートポンプによって冷媒を予備的に冷却させる機能が充分に発揮されないおそれがある。この場合、COPを低下させる要因となる。そこで本発明によれば、冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき、制御部は、吸着式ヒートポンプの運転を停止させ、吸着式ヒートポンプ用熱交換器における熱交換作用を停止させる。この場合、吸着式ヒートポンプの運転が停止されるため、消費電力が節約され、空気調和装置の定格負荷運転時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。吸着式ヒートポンプの運転が停止されたとしても、第1熱交換器および第2熱交換器の双方において冷媒を凝縮させるため、室内の冷房能力は充分に得られる。
【0010】
これに対して、冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、室外熱交換器で凝縮させる冷媒量は(i)の場合ほど必要とされないので、第1熱交換器および第2熱交換器のうちのいずれか一方を凝縮器として使用すれば足りる。また冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、制御部は吸着式ヒートポンプを運転させる。このため吸着式ヒートポンプにより冷却部の冷却作用が良好に得られる。よって、コンプレッサで圧縮された冷媒を冷却部の冷却作用で予備的に冷却させることができ、冷房効率を高めることができ、中間負荷時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0011】
ここで、冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、吸着式ヒートポンプを運転させるため、吸着式ヒートポンプ用熱交換器から放熱される。もし、第1熱交換器および第2熱交換器のうち、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を冷却風が通過する側の熱交換器が放熱されると、吸着式ヒートポンプ用熱交換器が昇温し、これの熱交換作用が低下してしまうおそれがあり、ひいては吸着式ヒートポンプの能力が低下してしまうおそれがある。そこで本発明によれば、(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を、第1熱交換器および第2熱交換器のうち、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側の熱交換器に供給する。更に、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を、第1熱交換器および第2熱交換器のうち、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れる側の熱交換器に供給することを抑止する。このため、吸着式ヒートポンプ用熱交換器は第1熱交換器および第2熱交換器の放熱の影響を避けつつ、良好に熱交換作用を発揮でき、吸着式ヒートポンプの能力が良好に確保される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気調和装置の冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転時)には、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を第1熱交換器および第2熱交換器の双方へ供給させ、これにより第1熱交換器および第2熱交換器の双方において冷媒の凝縮を進行させ、冷媒の凝縮量を確保させる。この場合、第2熱交換器が凝縮熱を放熱させると、吸着式ヒートポンプ用熱交換器が加熱されて吸着式ヒートポンプ用熱交換器の熱交換機能が低下するおそれがある。この場合、空気調和装置のCOPが低下するおそれがある。しかし本発明によれば、この場合には吸着式ヒートポンプの運転は停止されているため、吸着式ヒートポンプ用熱交換器は非作動状態である。このため吸着式ヒートポンプ用熱交換器が第2熱交換器からの放熱により影響されたとしても、支障がない。このため空気調和装置のCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0013】
これに対して、空気調和装置の冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、吸着式ヒートポンプを運転させるため、吸着式ヒートポンプによる予備冷却機能が得られる。この結果、室内機から吐出されコンプレッサで圧縮された冷媒を、吸着式ヒートポンプによる予備冷却機能によって効率よく冷却させることができ、空気調和装置のCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。この場合、制御部は、コンプレッサで圧縮された冷媒を、第1熱交換器および第2熱交換器のうち、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側の熱交換器に供給する。更に、コンプレッサで圧縮された冷媒を、第1熱交換器および第2熱交換器のうち吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れる側の熱交換器に供給することを抑止する。このため、吸着式ヒートポンプ用熱交換器は良好に熱交換作用が発揮でき、吸着式ヒートポンプの運転は良好に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係り、室外機を示す概念図である。
【図2】実施形態2に係り、室外機を示す概念図である。
【図3】実施形態3に係り、室外機を示す概念図である。
【図4】実施形態4に係り、室外機の吸着用凝縮器および中間冷却熱交換器付近を示す概念図である。
【図5】実施形態5に係り、室外機を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましくは、吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる吸着用凝縮器と、吸着モードの実行により昇温した吸着部を冷却させることにより昇温された吸着式ヒートポンプ用冷却流体を冷却風との熱交換により冷却させる中間冷却熱交換器とを備えている。これにより吸着式ヒートポンプが良好に運転される。好ましくは、吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、送風通路において第2熱交換器に対面しつつ、第2熱交換器の下流または上流に設けられている。この場合小型化に貢献できる。好ましくは、エンジンと、エンジンを冷却させるエンジン冷却水が流れる水路と、水路に連通可能でありエンジン冷却水が過熱されたときにおいてエンジン冷却水を冷却させるラジエータとが設けられている。この場合、好ましくは、ラジエータは、吸着式ヒートポンプ用熱交換器に対して独立して設けられている。好ましくは、ラジエータは、送風通路のうち、第1熱交換器を冷却風が流れる通風部分において第1熱交換器の下流に位置するように設けられている。この場合、第1熱交換器およびラジエータの放熱性が良好に維持される。好ましくは、吸着式ヒートポンプ用熱交換器はラジエータを兼用している。この場合、部品が共用されるため、小型化に有利である。好ましくは、ラジエータは、吸着式ヒートポンプ用熱交換器を構成する中間冷却熱交換器を兼用する。この場合、好ましくは、第1熱交換器は、ラジエータに対面する熱交換器と、ラジエータに対面しない熱交換器とに分割されている。
【0016】
(実施形態1)
図1は実施形態1の室外機1の概念を示す。空気調和装置は室内の空気の温度を調整する。空気調和装置は吸着式ヒートポンプ2をもつ室外機1を有する。吸着式ヒートポンプ2は、ケース20と、ケース20内に設けられた第1吸着部21および第2吸着部22と、気化潜熱を発生させる冷却部23と、第1四方弁24と、第2四方弁25と、ケース20に設けられた第1ポート31〜第8ポート38を有する。第1吸着部21および第2吸着部22は、水等の作動流体を吸着可能なシリカゲル、活性炭、活性アルミナ等の多孔質の吸着剤を有する。第1四方弁24は、第1吸着部21側の第1通路26と、第2吸着部22側の第2通路27とを切り替える。第2四方弁25は、第1吸着部21側の第1通路26と、第2吸着部22側の第2通路27とを切り替える。
【0017】
更に、図1に示すように、吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる通風可能な吸着用凝縮器50が吸着式ヒートポンプ用熱交換器としてケース20の外方に設けられている。冷却部23は、吸着用凝縮器50で凝縮された液相状の作動流体を連通路45を介して受けると共に、液相状の作動流体を気化させて気化潜熱により冷却作用を発生させる。吸着式ヒートポンプ2には作動流体を循環させる作動流体通路40が設けられている。図1に示すように、吸着式ヒートポンプ2内の作動流体通路40は、冷却部23、第1弁41、第1吸着部21、第2弁42、第8ポート38、吸着用凝縮器50、第7ポート37、第3弁43、第2吸着部22、第4弁44、冷却部23を順に連通させると共に、吸着用凝縮器50と冷却部23とを連通させる連通路45を有する。
【0018】
冷却水通路6(吸着式ヒートポンプ用冷却流体通路)は、冷却水(吸着式ヒートポンプ用冷却流体)により吸着式ヒートポンプ2の第1吸着部21および第2吸着部22を交互に冷却させるものであり、吸着式ヒートポンプ2の第1ポート31、通風可能な中間冷却熱交換器52、冷却水ポンプ60(吸着式ヒートポンプ用冷却流体搬送源)、第2ポート32を介して、吸着式ヒートポンプ2内の第1通路26または第2通路27に繋がる。図1に示すように、空気調和装置の室外熱交換器7は、互いに独立するように分離された通風可能な第1熱交換器71および第2熱交換器72に分割されている。分割形態は特に限定されず、両者が分離されていても良いし、一体的に形成されているものの、冷媒流路が異なる形態でも良い。室外熱交換器7の容量および形状は定格負荷運転に基づいて設定されている。第1熱交換器71および第2熱交換器72の容量および形状は同一であっても良いし、異なっていても良い。室内機8に繋がる冷媒通路74は、室内機8から冷媒を室外熱交換器7に帰還させる復路74yと、室外熱交換器7から冷媒を室内機8に向けて移動させる往路74xとをもつ。冷媒通路74において、第1熱交換器71および第2熱交換器72の上流には、コンプレッサ83が設けられている。コンプレッサ83は、室内機8から吐出された冷媒を圧縮させて高温高圧化させる。
【0019】
送風要素としての送風ファン10が駆動すると、冷却風を通過させる送風通路11が形成される。第1熱交換器71を通過してこれを冷却させる冷却風を第1冷却風17とする。第2熱交換器72を通過してこれを冷却させる冷却風を第2冷却風19とする。なお、吸着式ヒートポンプ2の運転に用いられる吸着用凝縮器50および中間冷却熱交換器52の熱交換機能を良好に得るためには、これらに供給される第2冷却風19は35℃以下が好ましく、25℃以下が更に好ましい。室内の冷房時には、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出された冷媒は、コンプレッサ83で圧縮されて高温高圧となり、室外熱交換器7に供給される。室外熱交換器7は送風通路11に設けられており、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を冷却させて凝縮させ、冷媒の液相化を進行させる。このように冷媒の凝縮が行われると、室外熱交換器7は凝縮熱を放出する。
【0020】
冷媒通路74のうち室外熱交換器7から室内機8に向かう往路74xは、吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に連通する迂回路76をもつ。迂回路76は、往路74xから冷却部23に向かう往路76xと、冷却部23から帰還する復路76yと、冷媒を迂回路76に迂回させる迂回弁(三方弁)75とを有する。迂回弁75は迂回路76側に連通するよう切り換えられている。第2熱交換器72とコンプレッサ83との間には、第2熱交換器72に供給する冷媒量を制御する冷媒弁73が設けられている。冷媒通路74のうち往路74xは、第1熱交換器71の出口71pおよび第2熱交換器72の出口72pから導出されており、迂回弁75、迂回路76の往路76x、第5ポート35を経て吸着式ヒートポンプ2の冷却部23を通過し、復路76y,第6ポート36,往路74xを経て室内機8に繋がるようにされている。室内機8は、冷房時において室外熱交換器7で凝縮された冷媒を膨張させ得る室内膨張弁80と、冷房時において蒸発器として機能できる室内熱交換器82とを有する。すなわち、室内の冷房時に吸着式ヒートポンプ2が運転されるときには、室外熱交換器7で凝縮された冷媒は、冷媒通路74の往路74xを流れ、迂回弁75、迂回路76および第5ポート35を介して吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に供給されて、冷却部23により予備冷却され、その後、第6ポート36から吐出されて室内機8に供給され、室内膨張弁80で膨張され、更に、室内熱交換器82で低温低圧化されて蒸発され、室内の冷房作用を発生させる。このように室内熱交換器82で蒸発された気相状の冷媒は、冷媒通路74の復路74yを流れ、コンプレッサ83で再び圧縮されて高温高圧とされた後、室外熱交換器7で再び凝縮されて液相化される。吸着式ヒートポンプ2が運転されるときには、このようにして室内の冷房運転が実行される。なお、室外熱交換器7で凝縮された冷媒を吸着式ヒートポンプ2の冷却部23に供給させないときには、迂回弁75を通過した冷媒は、迂回路76に迂回せずに、往路74xを直進して室内機8に冷媒が供給されるように切り替えられ、結果として、室外熱交換器7(往路74x)と冷却部23との連通を迂回弁75により遮断させ、室外熱交換器7の冷媒を冷却部23に流すことなく、つまり予冷させることなく、迂回弁75を介して室内機8に直接供給させる。
【0021】
制御部100は、第1弁41、第2弁42、第3弁43、第4弁44、第1四方弁24、第2四方弁25、冷媒弁73、迂回弁75といった弁要素、エンジン冷却水ポンプ90、冷却水ポンプ60、コンプレッサ83等といった駆動要素を制御する。コンプレッサ83はエンジン14で駆動させることが好ましいが、場合によってはモータで駆動させても良い。図1に示すように、エンジン14を冷却させるエンジン冷却水が循環して流れる水路9が設けられている。水路9は、吸着式ヒートポンプ2の第1吸着部21および第2吸着部22を交互にエンジン冷却水により加熱させる。水路9は、エンジン冷却水ポンプ90(エンジン冷却水搬送源)の駆動により、エンジン14で加熱されたエンジン冷却水をエンジン14の出口14pから吐出させ、第3ポート33から吸着式ヒートポンプ2内の第1通路26または第2通路27に供給させ、更に、吸着式ヒートポンプ2の第4ポート34から吐出させ、エンジン三方弁92、エンジン冷却水ポンプ90を介してエンジン14の入口14iに帰還させる。ラジエータ91は入口ポートA,出口ポートBをもつ。
【0022】
エンジン冷却水の水温が過剰に高いときには、第4ポート34から吐出されたエンジン冷却水をラジエータ通路93、ラジエータ91に供給するようにエンジン三方弁92を制御する。この結果、第4ポート34から吐出されたエンジン冷却水は、ラジエータ通路93を介してラジエータ91の入口ポートAに供給され、ラジエータ91の放熱で冷却された後、ラジエータ91の出口ポートBから吐出され、エンジン三方弁92、エンジン冷却水ポンプ90および入口14iを介してエンジン14に帰還される。なおエンジン冷却水の水温が適温域であるときには、エンジン冷却水の過冷を防止すべく、エンジン冷却水をラジエータ91に供給させないように、制御部100は、エンジン三方弁92を作動させる。
【0023】
(第1モード)
次に吸着式ヒートポンプ2の作動について説明する。まず、第1吸着部21が脱離モードを第2吸着部22が吸着モードを実行させる第1モードについて説明する。第1モードでは、第1弁41および第3弁43が閉鎖し、第2弁42および第4弁44が開放される。この状態で、制御部100は第1四方弁24および第2四方弁25を制御する。この状態で、エンジン冷却水ポンプ90が作動すると、エンジン14で加熱された高温のエンジン冷却水は、出口14p、水路9の往路9x、第3ポート33、第1四方弁24、第1通路26を介して第1吸着部21に供給されて第1吸着部21を加熱させ、更に第2四方弁25、第4ポート34、水路9の復路9y、通路9u、エンジン三方弁92、エンジン冷却水ポンプ90を介してエンジン14に帰還する。このように高温のエンジン冷却水で第1吸着部21が加熱されて脱離モードを行う。更に、冷却水ポンプ60が作動するため、中間冷却熱交換器52で冷却された冷却水通路6の低温の冷却水は、中間冷却熱交換器52の出口52pから吐出され、冷却水通路6の往路6x、冷却水ポンプ60、第2ポート32、第1四方弁24、第2通路27を介して第2吸着部22に供給されて、第2吸着部22を冷却させる。このとき第2吸着部22の熱により冷却水は加熱され、更に、第2通路27,第2四方弁25、第1ポート31、冷却水通路6の復路6yを介して入口52iから中間冷却熱交換器52に帰還し、中間冷却熱交換器52で第2冷却風19により冷却される。このように冷却水で第2吸着部22が冷却されて吸着モードを行うため、第2吸着部22の過熱が抑えられ、第2吸着部22における気相状の作動流体の吸着が継続して進行する。
【0024】
第1モードでは、前述したように第1吸着部21が加熱されるため、第1吸着部21の吸着剤に吸着されていた作動流体(一般的には水)が第1吸着部21から脱離されて気相状となり、第2弁42および第1通路28fを介して、ポート50fから吸着用凝縮器50に移動し、吸着用凝縮器50において第2冷却風19により冷却されて凝縮する。これにより液相状の作動流体が吸着用凝縮器50において生成される。凝縮熱は吸着用凝縮器50から放出される。この場合、第1弁41および第3弁43は閉鎖されているため、第1吸着部21から脱離された気相状の作動流体(一般的には水蒸気)は、冷却部23および第2吸着部22に移動しない。吸着用凝縮器50において凝縮された液相状の作動流体(一般的には水)は、重力により、連通路45を介して冷却部23に移動される。
【0025】
また第1モードでは、冷却水通路6から第2通路27を流れる冷却水により第2吸着部22が冷却されるため、第2吸着部22の圧力が低下する。ここで、第1弁41および第3弁43は閉鎖され、第4弁44は開放されるため、第2吸着部22の圧力低下に伴い、冷却部23の圧力が低下し、よって、冷却部23に収容されている液相状の作動流体の気化が進行する。冷却部23における気相状の作動流体(一般的には水)は、開放する第4弁44を介して第2吸着部22に移動し、第2吸着部22に吸着される。このとき第1弁41および第3弁43は閉鎖されるため、冷却部23における気相状の作動流体は、第1吸着部21および吸着用凝縮器50には移動しない。吸着は発熱を誘発する。この結果、気相状の作動流体を吸着した第2吸着部22は、加熱される。この場合、第2通路27を流れる冷却水により第2吸着部22は冷却され、第2吸着部22の過剰昇温は防止され、第2吸着部22の吸着性能が維持される。
【0026】
(第2モード)
次に、第2吸着部22が脱離モードを実行し、第1吸着部21が吸着モードを実行させる第2モードについて説明する。第2モードでは、第1モードとは逆に、第2弁42および第4弁44が閉鎖し、第1弁41および第3弁43が開放される。この状態で、制御部100は、水路9が第2通路27に連通し、冷却水通路6が第1通路26に連通するように、第1四方弁24および第2四方弁25を制御する。この結果、エンジン14で加熱された高温のエンジン冷却水は、エンジン冷却水ポンプ90の作動により、エンジン14の出口14p、水路9の往路9x、第3ポート33、第1四方弁24および第2通路27を介して、第2吸着部22に供給され、第2吸着部22を加熱させ、その後、第2通路27、第2四方弁25、第4ポート34を介して水路9の復路9yに帰還され、通路9u、エンジン三方弁92、エンジン冷却水ポンプ90を流れ、エンジン14の内部に帰還する。更に、冷却水ポンプ60が作動するため、中間冷却熱交換器52で冷却された低温の冷却水は、中間冷却熱交換器52の出口52pから吐出され、冷却水通路6の往路6x、第2ポート32、第1四方弁24および第1通路26を介して第1吸着部21に供給され、第1吸着部21を冷却し、第2四方弁25、第1ポート31、冷却水通路6の復路6yを流れ、入口52iから中間冷却熱交換器52に帰還され、中間冷却熱交換器52で冷却される。このとき気相状の作動流体は中間冷却熱交換器52により冷却されて凝縮し、中間冷却熱交換器52は凝縮熱を放出する。このように第2モードでは、高温のエンジン冷却水により第2吸着部22が加熱されるため、第2吸着部22に吸着されていた作動流体が第2吸着部22から脱離されて気相状となり、開放状態の第3弁43、第2通路28s、ポート50sを介して吸着用凝縮器50に移動し、吸着用凝縮器50で冷却されて凝縮し、液相状とされる。これにより液相状の作動流体が吸着用凝縮器50において生成される。このとき吸着用凝縮器50は凝縮熱を放出させる。この場合、第4弁44および第2弁42は閉鎖されているため、第2吸着部22で発生した気相状の作動流体は、冷却部23には移動しない。
【0027】
また、第2モードでは、冷却水ポンプ60が作動し、冷却水(吸着式ヒートポンプ用冷却流体)により第1吸着部21が冷却されるため、第1吸着部21の圧力が低下する。この場合、第2弁42は閉鎖され、第1弁41は開放するため、冷却部23の圧力が低下し、冷却部23の作動流体の気化が進行する。これにより冷却部23は気化潜熱により冷却される。冷却部23の気相状の作動流体は、第1弁41を介して第1吸着部21に移動し、第1吸着部21に吸着される。このとき第1吸着部21は吸着熱により発熱する。この場合、第1通路26には冷却水が流れるため、第1吸着部21は冷却され、第1吸着部21の過剰昇温は抑えられる。このように吸着式ヒートポンプ2によれば、第1吸着部21および第2吸着部22は、作動流体を吸着剤に吸着させて発熱させる吸着モードと、吸着剤に吸着された作動流体を吸着剤から脱離させる脱離モードとを所定時間毎に交互に実行させる。所定時間は吸着剤、作動流体などに応じて設定される。上記したように吸着式ヒートポンプ2が運転されるときには、第1モードおよび第2モードにおいて冷却部23は冷却される。
【0028】
(要部構成)
さて本実施形態によれば、図1に示すように、冷房運転時においてコンプレッサ83で圧縮された冷媒を凝縮させるための室外熱交換器7は、互いに流路が独立する第1熱交換器71および第2熱交換器72に分離されている。室内機8に繋がる冷媒通路74の復路74yは、第1熱交換器71に向かう第1分岐路741と、冷媒弁73を介して第2熱交換器72に向かう第2分岐路742とを有する。送風ファン10が作動すると、室外熱交換器7と熱交換する空気による冷却風が生成され、室外熱交換器7に供給させる送風通路11が形成される。この送風通路11は、前述から理解できるように、第1熱交換器71を冷却させる第1冷却風17が流れる第1送風通路16と、第2熱交換器72を冷却させる第2冷却風19が流れる第2送風通路18とに分かれている。
【0029】
図1はあくまでも概念図を示す。吸着式ヒートポンプ2で用いられる吸着式ヒートポンプ用熱交換器として中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が設けられている。図1から理解できるように、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50は、第2熱交換器72に対面しつつ第2熱交換器72に隣設されており、第2熱交換器72を冷却する第2冷却風19が通過する第2送風通路18に設けられている。ここで、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50は、第2送風通路18において第2熱交換器72の下流に位置しているため、第2熱交換器72の放熱の影響を受け易いが、これに限定されるものではなく、場合によっては第2熱交換器72の上流に位置していても良い。なお、図1に示すように、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50は、第1熱交換器71に対面しておらず、第1熱交換器71を冷却する第1冷却風17が通過する第1送風通路16には設けられていない。
【0030】
冷房運転時の冷房負荷が無負荷と定格負荷との間における中間値を中間負荷とする。中間負荷は、冷房運転時の冷房負荷が無負荷を0とし、定格負荷を100とするとき、45〜55のうちの任意値とすることができる。例えば50とすることができる。本実施形態によれば、制御部100は、空気調和装置の冷房負荷に応じて、次の(i)および(ii)の制御を行うように、第1四方弁24、第2四方弁25、迂回弁75といった弁要素を制御する。
【0031】
(i)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転のとき)
この場合、制御部100は吸着式ヒートポンプ2の運転を停止させる。これにより制御部100は第1吸着部21および第2吸着部22の吸着モードおよび脱離モードの双方を実行せず、吸着式ヒートポンプ2の運転は停止される。このとき冷却水ポンプ60は停止される。更にエンジン冷却水ポンプ90を作動させつつ、エンジン冷却水を吸着式ヒートポンプ2の第3ポート33に供給させないように、制御部100は、三方弁92h,92fを制御し、エンジン14の出口14pから吐出されたエンジン冷却水を、水9の往路9x、三方弁92h,迂回通路33p、三方弁92fを通過させエンジンの入口14iに帰還させる。
【0032】
上記したように冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転時)には、制御部100は、室内機8から吐出された冷媒を充分に凝縮させる必要がある。そこで、制御部100は、コンプレッサ83で圧縮させた冷媒を、第1分岐路741から第1熱交換器71へ供給させるとともに、冷媒弁73を開放させて第2分岐路742から第2熱交換器72へも供給させる。これにより、第1熱交換器71および第2熱交換器72の双方において冷媒の凝縮を進行させる。この場合、送風ファン10が作動するため、第1冷却風17が第1送風通路16を通過して第1熱交換器71を冷却させ、第2冷却風19が第2送風通路18を通過して第2熱交換器72を冷却させる。このため、第1熱交換器71および第2熱交換器72を冷却させて凝縮作用を発揮させ、冷媒の凝縮を進行させる。この場合、第2送風通路18(第2熱交換器72)を通過して第2熱交換器72から放出される凝縮熱で加熱された第2冷却風19は、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50を通過する。
【0033】
この場合、第2熱交換器72から放熱により中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換作用(冷却作用)は、極端に低下されるおそれがある。この場合、吸着式ヒートポンプ2の冷却部23による冷却作用が得られず、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却機能が充分に発揮されないおそれがある。この場合、吸着式ヒートポンプ2を運転させても、中間負荷時におけるCOPを低下させる要因となる。そこで本実施形態によれば、上記した(i)の場合には、制御部100は、前述したように吸着式ヒートポンプ2の運転を停止させ、且つ、第2熱交換器72からの放熱の影響を受ける中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50における熱交換作用を停止させる。この場合、吸着式ヒートポンプ2の運転を実行するための消費電力が節約され、空気調和装置の定格負荷運転時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0034】
更に吸着式ヒートポンプ2の運転が停止されているため、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50からの放熱が抑えられている。このため冷却風の風量が抑えられているときであっても、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50からの放熱が第2熱交換器72に影響を与えることが抑えられ、第2熱交換器72による熱交換が良好に実行される。この場合、空気調和装置の冷房負荷が(ii)の場合に比較して大きいものの、第1熱交換器71および第2熱交換器72の双方は、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を良好に凝縮させることができる。この場合、吸着式ヒートポンプ2の運転は停止されているため、冷却部23による予備冷却は得られないため、室外熱交換器7と冷却部23との連通性を遮断させ、迂回弁75を介して室内機8に冷媒を直接供給させるように、制御部100は迂回弁75を制御する。
【0035】
(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のとき
この場合、制御部100は、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出された冷媒をコンプレッサ83で圧縮させ、その後、その冷媒を第1熱交換器71へ供給させて冷媒の凝縮を進行させる。しかし制御部100は、冷媒弁73を閉鎖し、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を、第2熱交換器72(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)に供給させない。上記したように冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、冷房負荷が小さいため、室外熱交換器7において凝縮させる冷媒量は少なくて済むためである。従って第1熱交換器71を凝縮器として使用するものの、第2熱交換器72を凝縮器として使用しない。
【0036】
更に(ii)においては、制御部100は吸着式ヒートポンプ2を運転させる。このため吸着式ヒートポンプ2における冷却部23の作動流体の気化が進行し、よって、冷却部23は気化潜熱により予備冷却作用を発生させる。この場合、制御部100は迂回弁75を開放させ、第1熱交換器71から吐出された冷媒を冷媒通路74の往路74x、迂回弁75,第5ポート35、迂回路76の往路76xを介して冷媒を冷却部23に流し、冷却部23の冷却作用で予備的に冷却させ、復路76y、第6ポート36を介して室内機8に供給させる。これにより室内機8における冷房効率を高めることができ、中間負荷時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0037】
ここで、第2送風通路18には、第2熱交換器72が設けられているほかに、吸着式ヒートポンプ2で用いられる中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が設けられている。このため、もし第2熱交換器72から凝縮熱が放出されると、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が過剰に昇温し、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換機能が過剰に低下してしまうおそれがある。そこで本実施形態によれば、(ii)の場合には、制御部100は、前述したように室内機8から吐出されコンプレッサ83で圧縮された冷媒を、第1熱交換器71(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側)へ供給させるものの、第2熱交換器72(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)へは供給させない。すなわち、室内機8から吐出された冷媒は第2熱交換器72へ供給されない。このため第2熱交換器72から冷媒の凝縮熱が放出されることが抑えられる。このため、夏季等のように外気温度が高いときであっても、第2熱交換器72を通過する第2冷却風19の昇温が抑えられ、吸着式ヒートポンプ2で用いられる中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の過剰昇温が防止され、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換機能が正常に維持される。この結果、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却機能が正常に働き、空気調和装置の定格負荷運転時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0038】
このように本実施形態によれば、冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときであっても、第1冷却風17が第1熱交換器71(第1送風通路16)を通過する。よって、第1熱交換器71を冷却させて凝縮作用を発揮させ、第1熱交換器71において冷媒の凝縮を進行させる。この場合、第1熱交換器71から凝縮熱が放出されるが、第1送風通路16の第1冷却風17により冷却される。更に、(ii)の場合には、吸着式ヒートポンプ2が運転されるため、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50から放熱されるが、第2送風通路18を通過する第2冷却風19により中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50を効果的に冷却させることができる。この場合、吸着式ヒートポンプ2を良好に運転することができる。本実施形態によれば、前述したように、吸着式ヒートポンプ用熱交換器として機能する中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50は、空気調和装置の冷房運転時の冷房負荷が定格負荷のとき使用せず、中間負荷以下のみにしか使用しないため、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換能力およびサイズを小型化でき、補機である送風ファン10のファン風量の増加が抑えられ、補機動力の増加を抑えられ、COP低下、APF低下が抑制できる。
【0039】
(実施形態2)
図2は実施形態2の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。実施形態1と共通する部位には、共通の符号を付する。図2は主として空気調和装置の室外機1を示す。室外機1は、吸着式ヒートポンプ2を搭載する基体15を有する。吸着式ヒートポンプ2は、第1吸着部および第2吸着部を有するケース20と、ケース20に設けられた第1ポート31〜第8ポート38を有する。図2に示すように、吸着用凝縮器50および中間冷却熱交換器52が吸着式ヒートポンプ用熱交換器としてケース20の外方に設けられている。図2に示すように、室外熱交換器7は、第1熱交換器71f,71sと、第2熱交換器72f,72sとに分割されている。第1熱交換器71f,71sは吸着式ヒートポンプ2を介して互いに対向するように基体15に合計2個設けられている。第2熱交換器72f,72sは第1熱交換器71f,71sの上方に位置しつつ、吸着式ヒートポンプ2を介して互いに対向するように基体15に合計2個設けられている。従って、基体15の外面には、互いに同サイズ(同熱交換量)の2個の第1熱交換器71f,71sと、互いに同サイズ(同熱交換量)の2個の第2熱交換器72f,72sとが露出するため、室外機1の外観意匠性が確保されている。
【0040】
なお、第1熱交換器71f,71sのサイズ(熱交換量)は、第2熱交換器72f,72sのサイズとほぼ同一でも良いし、異なっていても良い。また第1熱交換器71f,71sのサイズ(熱交換量)は互いにほぼ同一でも異なっていても良い。第2熱交換器72f,72sのサイズ(熱交換量)は互いにほぼ同一でも異なっていても良い。ここで、第1熱交換器71fおよびラジエータ91の輪郭投影形状はほぼ同一にしても良いし、異なっていても良い。第2熱交換器72fおよび中間冷却熱交換器52の輪郭投影形状はほぼ同一にしても良いし、異なっていても良い。第2熱交換器72sおよび吸着用凝縮器50の輪郭投影形状はほぼ同一にしても良いし、異なっていても良い。
【0041】
図2に示すように、基体15の上面には送風ファン10が送風要素として設けられている。送風ファン10が作動すると、第1冷却風17f,17sと第2冷却風19f,19sとが流れる送風通路11が形成される。図2に示すように、送風通路11は、第1冷却風17fが下側の第1熱交換器71fを流れる第1送風通路16fと、第1冷却風17sが下側の第1熱交換器71sを流れる第1送風通路16sと、第2冷却風19fが上側の第2熱交換器72fを流れる第2送風通路18fと、第2冷却風19sが上側の第2熱交換器72sを流れる第2送風通路18sとで形成される。なお、エンジン冷却水は高温(例えば70〜90℃)でも良いため、ラジエータ91に供給される第1冷却風17fが高温(例えば70〜90℃)となっても、ラジエータ91による冷却機能は維持される。
【0042】
図2に示すように、ラジエータ91は第1熱交換器71sには対面していないものの、第1熱交換器71fに接近しつつ対面し、第1通風通路16fにおいて第1熱交換器71fの内側つまり下流に位置する。中間冷却熱交換器52は下側の第1熱交換器71f,71sには対面していないものの、上側の第2熱交換器72fに接近しつつ対面し、第2通風通路18fにおいて第2熱交換器72fの内側つまり下流に位置する。また吸着用凝縮器50は下側の第1熱交換器71f,71sに対面していないものの、上側の第2熱交換器72sに接近しつつ対面し、第2通風通路18sにおいて第2熱交換器72sの内側つまり下流に位置する。なお、吸着用凝縮器50および中間冷却熱交換器52の熱交換機能を良好に得るためには、これらに供給される第2冷却風19f,19sは45℃以下、40℃以下であることが好ましい。
【0043】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、制御部100は、空気調和装置の冷房負荷に応じて、次の(i)〜(iii)の制御を行う。
【0044】
(i)室内の冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転のとき)
この場合、制御部100は吸着式ヒートポンプ2の運転を停止させるものの、冷房負荷が大きいため、室内における冷房能力を高めるため、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出された気相状の冷媒をコンプレッサ83で圧縮させ、更に、その冷媒を第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sの双方に供給する。この場合、冷却水通路6の冷却水が吸着式ヒートポンプ23の第2ポート32に流れないように、制御部100は冷却水ポンプ60を停止させる。更に、エンジン14で加熱された水路9のエンジン冷却水を、エンジン冷却水ポンプ90の作動によりラジエータ通路93を介してラジエータ91に流すものの、吸着式ヒートポンプ2の第3ポート33,第4ポート34に流さないように、制御部100はエンジン三方弁92f,92s,92hを制御する。これにより吸着式ヒートポンプ2は吸着モードおよび脱離モードの双方を実行しないため、吸着式ヒートポンプ2の運転は停止される。なお、210はエンジン冷却水と冷媒とを熱交換させる補助熱交換器を示し、220はエンジン冷却水とエンジン排気ガスとを熱交換させる排気熱交換器を示す。
【0045】
更に説明を加える。室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出された冷媒(気相状)は、コンプレッサ83で圧縮されて高温高圧の冷媒(気相状)となる。このようにコンプレッサ83で圧縮された冷媒を分岐部77a、第1分岐路741fから第1熱交換器71fに供給させると共に、分岐部77a、第1分岐路741sを介して第1熱交換器71sに供給させる。
【0046】
更に、制御部100は、冷媒弁73fを開放させて、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を第2分岐路742fを介して第2熱交換器72fに供給させると共に、冷媒弁73sを開放させて、第2分岐路742sを介して第2熱交換器72sに供給させる。この結果、冷媒の凝縮を第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sの全部において進行させる。これにより定格負荷運転であっても、冷媒の必要凝縮量が確保される。第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sは、凝縮熱を放出させる。
【0047】
この場合、送風ファン10が作動するため、図2から理解できるように、第1冷却風17fが第1送風通路16f(第1熱交換器71f)を通過し、第1冷却風17sが第1送風通路16s(第1熱交換器71s)を通過する。更に、第2冷却風19fが第2送風通路18f(第2熱交換器72fおよび中間冷却熱交換器52)を通過し、第2冷却風19sが第2送風通路18s(第2熱交換器72sおよび吸着用凝縮器50)を通過する。このため、凝縮熱を放出している第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sを冷却させ、凝縮作用を発揮させ、冷媒の凝縮を進行させる。
【0048】
この場合、凝縮熱を放出させる第2熱交換器72f,72sからの放熱により中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が過剰に加熱され、これらの熱交換作用(冷却作用)が極端に低下されるおそれがある。この場合、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却機能が充分に発揮されないおそれがある。この場合、COPを低下させる要因となる。そこで本実施形態によれば、(i)の場合には、制御部100は、前述したように吸着式ヒートポンプ2の運転を停止させ、第2熱交換器72fからの放熱の影響を受ける中間冷却交換器52における熱交換作用を停止させ、且つ、第2熱交換器72sからの放熱の影響を受ける吸着用凝縮器50における熱交換作用を停止させる。この結果、吸着式ヒートポンプ2の運転を実行するための消費電力が節約され、空気調和装置の定格負荷運転時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。このように吸着式ヒートポンプ2の運転が停止されたとしても、全部の第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sによる冷媒の凝縮量が確保されるため、室内冷房能力は維持される。
【0049】
更に(i)では、吸着式ヒートポンプ2の運転が停止されているため、中間冷却交換器52および吸着用凝縮器50からの凝縮熱の放出が抑えられている。このため中間冷却交換器52および吸着用凝縮器50からの放熱が第2熱交換器72f,72s(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)の熱交換作用に悪影響を与えることが阻止される。よって、第2熱交換器72f,72sによる熱交換量が良好に確保される。このため図2に示すように、中間冷却熱交換器52および第2熱交換器72fを対面させつつ接近でき、吸着用凝縮器50を第2熱交換器72sに対面させつつ接近でき、小型化を一層図り得る。
【0050】
(i)の場合、前述したように吸着式ヒートポンプ2の運転は停止されているため、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却は得られない。このため、室外熱交換器7と吸着式ヒートポンプ2との連通性を遮断させるように、制御部100は、迂回弁75fおよび開閉弁75tを閉鎖し、迂回弁75sを開放される。このように迂回弁75f,開閉弁75tが閉鎖されているため、冷媒通路74の往路74xの冷媒が吸着式ヒートポンプ2の第5ポート35および第6ポート36に流入することは防止される。
【0051】
このように(i)では、第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sから吐出された冷媒は、冷媒通路74の往路74x、迂回弁75s、分岐部77h,77i,77cを介して室内機8に流れ、そして、室内機8の室内膨張弁80で膨張されて低温低圧化され、その後、室内熱交換器82において蒸発される。このように室内熱交換器82は蒸発潜熱により室内を吸熱させて室内の冷房運転を行う。このような(i)の場合、前述から理解できるように、冷媒弁73f,73s,迂回弁75sは開放され、迂回弁75f,開閉弁75t、冷媒弁93wは閉鎖される。なお開閉弁75tは冷媒運転時には常に閉鎖されている。
【0052】
(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のとき
この場合、室内機8において冷房運転に使用された冷媒(気相状)は、冷媒通路74の復路74yに吐出されてコンプレッサ83で圧縮されて高温高圧となる。このように圧縮された気相状の冷媒を、分岐部77a、第1分岐路741f,741sを介して第1熱交換器71f,71s(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側)へ供給させ、第1熱交換器71f,71sにおいて冷媒の凝縮を進行させる。しかし、冷媒弁73fが閉鎖して第2分岐路742fが遮断されるため、冷媒は、中間冷却熱交換器52に対面する第2熱交換器72f(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)に供給されない。同様に、冷媒弁73sが閉鎖して第2分岐路742sが遮断されるため、冷媒は、吸着用凝縮器50に対面する第2熱交換器72s(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)に供給されない。上記したように冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のときには、冷房負荷が小さいため、室外熱交換器7において凝縮させる冷媒量は少なくて済むため、第1熱交換器71f,71sのみを凝縮器として用いる。
【0053】
更に、(ii)では、制御部100は実施形態1と同様に吸着式ヒートポンプ2を運転させる。このため吸着式ヒートポンプ2の冷却部は気化潜熱により、予備冷却作用を発生させる。よって、迂回弁75s,開放弁75tが閉鎖されつつ、迂回弁75fが開放される。この結果、第1熱交換器71f,71sから吐出された冷媒を、迂回弁75fを介して、第5ポート35から吸着式ヒートポンプ2の冷却部に供給させて予備的に冷却させ、その後、第6ポート36,分岐部77i,77cを介して室内機8に帰還させることができる。このように室内機8における冷房効率を高めることができる。よって、中間負荷時におけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。ここで、図2に示すように、第2送風通路18fには、第2熱交換器72fが設けられているほかに、吸着式ヒートポンプ2で用いられる中間冷却熱交換器52が第2熱交換器72fに接近して対面しつつ隣設されている。同様に、第2送風通路18sには、第2熱交換器72sが設けられているほかに、吸着式ヒートポンプ2で用いられる吸着用凝縮器50が第2熱交換器72sに接近して対面しつつ隣設されている。このため、もし第2熱交換器72f,72sから凝縮熱が放出されると、第2熱交換器72f,72sに接近しつつ隣設する中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が過剰に昇温するおそれがある。この場合、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換機能が過剰に低下してしまい、吸着式ヒートポンプ2の能力が低下してしまうおそれがある。そこで本実施形態によれば、(ii)の場合には、実施形態1と同様に、制御部100は、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出されコンプレッサ83で圧縮された冷媒を、第1熱交換器71f,71s(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側)へ供給させるものの、第2熱交換器72f,72s(吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に多く流れる側)へは供給させない。
【0054】
このため第2熱交換器72f,72sから冷媒の凝縮熱が放出されることが抑えられる。この結果、夏季等のように外気温度が高いときであっても、第2熱交換器72f,72sを通過する第2冷却風19f,19sの昇温が抑えられ、このため、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の過剰昇温が防止され、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の熱交換機能が正常に維持される。この結果、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却機能が正常に働き、空気調和装置が中間負荷以下のときにおけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。このような(ii)の場合、迂回弁75fは開放され、冷媒弁73s,73f,93w,迂回弁75s,開放弁75tは閉鎖される。
【0055】
(iii)暖房運転時
この場合、実施形態1と同様に、室内機8において暖房運転に使用された冷媒は、液相状または気液二相状として、室内機8から、冷媒通路74の復路74yではなく往路74xに吐出され、更に室外膨張弁99aで膨張され、その後、分岐部77eを介して第1熱交換器71f,71sに供給されるとともに分岐部77k,77uを介して第2熱交換器72f,72sに供給される。このため暖房時には第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sは、冷媒を気化させる蒸発器として機能する。第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sから吐出された気相状の冷媒は、分岐部77aを介してコンプレッサ83に流れ、コンプレッサ83で圧縮されて高温高圧となり、冷媒通路74の復路74yから室内機8に流れ、室内熱交換器82において凝縮されて凝縮熱を発生させる。この結果、室内が暖房される。このような暖房運転時においても、送風ファン10が作動するため、冷却風17f,17s,19f,19sが第1熱交換器71f,71s,第2熱交換器72f,72s,ラジエータ91を冷却させる。
【0056】
このような暖房運転時には、前述から理解できるように、制御部100は、吸着式ヒートポンプ2を運転させず、且つ、室内機8から帰還する冷媒を全部の第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sの双方に供給させて蒸発させる。このため暖房能力が確保される。このような暖房運転の場合、冷媒弁73f,73s,開閉弁75t、冷媒弁93wは開放され、迂回弁75f,75sは閉鎖される。
【0057】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態によれば、エンジン冷却水を冷却させるラジエータ91は、中間冷却熱交換器52を兼用しており、第1熱交換器71fに対面する。ラジエータ91および中間冷却熱交換器52は、共に水を流して冷却させるものであり、互いに兼用できる。換言すれば、エンジン冷却水を冷却させるラジエータ91は、吸着式ヒートポンプ用の中間冷却熱交換器52を兼用することができる。同様に中間冷却熱交換器52はラジエータ91を兼用できる。
【0058】
本実施形態においても次のように制御される。
【0059】
(i)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転のとき)
この場合、実施形態1,2と同様に吸着式ヒートポンプ2の運転は停止されるものの、冷媒が第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sの全部に供給される。従って第1熱交換器71f,71sおよび第2熱交換器72f,72sは凝縮器として働き、凝縮熱を放出させる。
【0060】
(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下(中間負荷時)のとき
この場合、実施形態1,2と同様に、制御部100は吸着式ヒートポンプ2を運転させ、吸着用凝縮器50および中間冷却熱交換器52の双方を熱交換器として使用する。よって、吸着式ヒートポンプ2は気化潜熱により予備冷却作用を発生させる。すなわち、実施形態1,2と同様に、(ii)の場合には、室内機8から冷媒通路74の復路74yに吐出されてコンプレッサ83で圧縮された冷媒を、分岐部77aを介して第1熱交換器71s(放熱するラジエータ91に対面しない)に供給させてこれを凝縮器として使用するものの、冷媒弁73sを閉鎖させて冷媒を第2熱交換器72s(放熱する吸着用凝縮器50に対面している)へは供給させない。このため第2熱交換器72sは凝縮器として働かず、第2熱交換器72sから凝縮熱が放出することが抑えられる。よって、第2熱交換器72sに対面しつつ隣設する吸着用凝縮器50の過剰昇温が防止され、吸着用凝縮器50の熱交換機能が正常に維持される。この結果、吸着式ヒートポンプ2による予備冷却機能が正常に働き、空気調和装置が中間負荷以下のときにおけるCOPが向上し、ひいてはAPFが向上する。
【0061】
また(ii)では、前述したように吸着式ヒートポンプ2が運転されるため、吸着式ヒートポンプ2の第2ポート32に冷却水を供給させる必要がある。そこで、冷却水通路6の冷却水ポンプ60が作動すると、ラジエータ91の水は冷却水通路6の往路6xおよび分岐部6rに流れ、冷却水ポンプ60を介して第2ポート32から吸着式ヒートポンプ2に流入し、更に第1ポート31から吐出され、冷却水通路6の復路6yに流れ、三方弁92mのポート92m1,92m2を介して再びラジエータ91に帰還され、ラジエータ91で冷却される。この場合、ラジエータ91が放熱するため、ラジエータ91は中間冷却熱交換器を兼用できる。このようにラジエータ91が放熱するとき、ラジエータ91に対面しつつ隣設する第1熱交換器71fが放熱の影響を受ける。このため(ii)では第1熱交換器71fを凝縮器として使用することを廃止している。故に、制御部100は、第1熱交換器71に連通する停止弁98aを閉鎖し、コンプレッサ83で圧縮した冷媒を第1熱交換器71f(ラジエータ91に対面する)には供給させない。
【0062】
換言すると、制御部100は、冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下のとき、ラジエータ91で冷却水を放熱させつつ、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を、下側の第1熱交換器71f,71sのうちラジエータ91に対面しない熱交換器71sと、上側の第2熱交換器72f,72sのうち吸着用凝縮器50(他方)に対面しない熱交換器72fに供給する。この場合、制御部100は、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を、第1熱交換器71f,71sのうちラジエータ91に対面する熱交換器71fと、第2熱交換器72f,72sのうち吸着用凝縮器50に対面する熱交換器72sとに供給しない。この場合、中間冷却熱交換器を兼用するラジエータ91,吸着用凝縮器50の熱交換作用が良好に確保される。
【0063】
また(ii)では、吸着式ヒートポンプ2が運転されるため、水路9の往路9xの高温のエンジン冷却水を吸着式ヒートポンプ2の第3ポート33に供給させ、第4ポート34から吐出させる必要がある。そこで水路9の往路9xは、吸着式ヒートポンプ2の第3ポート33に連通し、水路9の復路9yは第4ポート34に連通される。この状態で、水路9のエンジン冷却水ポンプ90が作動すると、エンジン14で加熱された高温のエンジン冷却水は、出口14pから水路9の往路9xに流れ、エンジン三方弁92hを介して第3ポート33から吸着式ヒートポンプ2に流入し、更に第4ポート34から復路9yに流れ、エンジン三方弁92fのポート92f1,92f2、更には、エンジン三方弁92sのポート92s1,92s2を介してエンジン冷却水ポンプ90に流れ、更に、入口14iから排気熱交換器220を介してエンジン14に帰還される。この場合、吸着式ヒートポンプ2内に供給された高温のエンジン冷却水により第1吸着部または第2吸着部が加熱され、水蒸気が脱着されるため、吸着式ヒートポンプ2は良好に運転される。この場合、エンジン冷却水が流れる水路9は、エンジン三方弁92f,92sの遮断作用によりラジエータ91に非連通とされ、ラジエータ91に供給されない。
【0064】
また本実施形態によれば、(ii)では、ラジエータ91に対面しつつ隣設する第1熱交換器71fを凝縮器として使用することを廃止する。その理由としては、吸着式ヒートポンプ2の運転に伴い、中間冷却熱交換器52を兼用するラジエータ91が放熱するため、その放熱の影響で第1熱交換器71f(ラジエータ91に対面する)が加熱されて熱交換機能が低下するためである。故に、制御部100は、第1熱交換器71fの上流に位置する停止弁98aを閉鎖する。よって、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を第1熱交換器71fには供給させない。その代替として、第1熱交換器71fの上方に配置されている第2熱交換器72fを凝縮器として使用するように、コンプレッサ83で圧縮された冷媒を、分岐部77a,77m,分岐路742fを介して第2熱交換器72f(ラジエータ91および吸着用凝縮器50に対面していない)に供給させる。
【0065】
(実施形態4)
図4は実施形態4の要部を示す。本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。前記した実施形態2では、図2に示すように、第2熱交換器72fの内側(下流側)に中間冷却熱交換器52が配置され、第2熱交換器72sの内側(下流側)に吸着用凝縮器50が配置されている。前述した記載から理解できるように、第2熱交換器72f,72sが凝縮器として働いて放熱するときには、吸着式ヒートポンプ2の運転が停止されるため、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50は熱交換器として働かないため、放熱しない。また実施形態2では、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が熱交換器として働いて放熱するときには、第2熱交換器72f,72sは凝縮器として働かないため、放熱しない。このように(i)(ii)の双方の場合において、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の組と、第2熱交換器72f,72sの組とは、互いの熱交換機能に影響を与えない。そこで本実施形態によれば、図4に示すように、第2熱交換器72fの外側(上流)に中間冷却熱交換器52が対面するように配置され、第2熱交換器72sの外側(上流)に吸着用凝縮器50が対面するように配置されている。
【0066】
一般的には、空気調和装置は定格負荷で運転する時間よりも、中間負荷以下で運転する時間が長い。前述したように、中間負荷以下で運転されるときには、第2熱交換器72f,72sは、熱交換器として使用されず、第2冷却風19f,19sの風抵抗体として作用するおそれがある。そこで本実施形態によれば、図4に示すように、中間冷却熱交換器52が第2熱交換器72fの上流に配置され、吸着用凝縮器50が第2熱交換器72sの上流に配置されている。この場合には、吸着式ヒートポンプ2が運転されて中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が熱交換作用を果たすとき、第2熱交換器72f,72sは中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50の下流に配置されているため、第2熱交換器72f,72sが風抵抗体とならない。従って、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50に供給する第2冷却風19f,19sの風量が確保され易い利点が得られ、中間冷却熱交換器52および吸着用凝縮器50が良好に冷却される。
【0067】
(実施形態5)
図5は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態3と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図5に示すように、第1熱交換器71および第2熱交換器72は、ヒートポンプ2を挟むように互いに対向するように基体15に配置されている。エンジン冷却水を冷却させるラジエータ91は、実施形態3と同様に、中間冷却熱交換器52を兼用しており、第1熱交換器71にこれの下流に位置するように対面する。このようにラジエータ91および中間冷却熱交換器52は、共に水を流して冷却させるものであり、互いに兼用できる。更に、吸着用凝縮器50は第1熱交換器71にこれの下流に位置するように対面する。
【0068】
本実施形態においても、(i)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷よりも定格負荷側に超えるとき(例えば定格負荷運転のとき)には、制御部100は吸着式ヒートポンプ2の運転を停止させつつ、コンプレッサ83で圧縮させた冷媒を第1熱交換器71および第2熱交換器72の双方に供給させ、冷媒凝縮量を確保させる。
【0069】
(ii)冷房運転時の冷房負荷が中間負荷以下(中間負荷時)のときには、制御部100は、吸着式ヒートポンプ2を運転させ、中間冷却熱交換器52(ラジエータ91兼用)および吸着用凝縮器50から放熱させる。このため、コンプレッサ83で圧縮させた冷媒を第1熱交換器71(中間冷却熱交換器52を兼用するラジエータ91および吸着用凝縮器50に対面している熱交換器)に供給させないものの、第2熱交換器72(中間冷却熱交換器52を兼用するラジエータ91および吸着用凝縮器50に対面していない熱交換器)に供給させる。
【0070】
(その他)前述したように(i)(ii)の場合において、中間冷却熱交換器52,吸着用凝縮器50の組と、第2熱交換器72f,72sの組とは、互いの熱交換機能に影響を与えない。このため、互いに対面する中間冷却熱交換器52および第2熱交換器72fは、第2通風通路18fにおいてどちらが上流でも下流でも良い。また、互いに対面する吸着用凝縮器50および第2熱交換器72sは、第2通風通路18sにおいてどちらが上流でも下流でも良い。第1弁41、第2弁42、第3弁43、第4弁44は、一方向のみ流れを許容するが他方向の流れを遮断させる逆止弁とされていても良い。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0071】
1は室外器、10は送風ファン(送風要素)、11は送風通路、11fは第1送風通路、11sは第2送風通路、2は吸着式ヒートポンプ、21は第1吸着部、22は第2吸着部、23は冷却部、14はエンジン、15は基体、50は吸着用凝縮器(吸着式ヒートポンプ用熱交換器)、52は中間冷却熱交換器(吸着式ヒートポンプ用熱交換器)、40は作動流体通路、6は冷却水通路、60は冷却水ポンプ、7は室外熱交換器、71は第1熱交換器、72は第2熱交換器、73は冷媒弁、74は冷媒通路、76は迂回路、8は室内機、80は室内膨張弁、82は室内熱交換器、83はコンプレッサ、9は水路、90はエンジン冷却水ポンプ、91はラジエータ、92はエンジン三方弁、100は制御部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を少なくとも冷房させる空気調和装置であって、
作動流体を吸着剤に吸着させる吸着モードと、前記吸着剤に吸着された前記作動流体を前記吸着剤から脱離させる脱離モードとを交互に実行可能な吸着部を有すると共に、前記吸着モードおよび前記脱離モードの実行に伴い前記作動流体の気化潜熱により冷却作用を発生させる冷却部を有する吸着式ヒートポンプと、
前記吸着式ヒートポンプの運転時に使用される吸着式ヒートポンプ用熱交換器と、
室内機の冷房運転時において前記室内機から吐出された冷媒を圧縮させるコンプレッサと、
前記コンプレッサで圧縮された冷媒を熱交換させて凝縮させる室外熱交換器と、
冷却風を前記室外熱交換器および前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器に供給させる送風通路を形成する送風要素と、
制御部とを具備しており、
前記室外熱交換器は、前記送風通路の冷却風と接触し得るように設けられ、且つ、前記室内機から吐出され前記コンプレッサで圧縮された冷媒が供給され得る第1熱交換器および第2熱交換器に分割されており、
冷房運転時の冷房負荷の無負荷と定格負荷との間における中間値を中間負荷とするとき、
前記制御部は、
(i)冷房運転時の冷房負荷が前記中間負荷よりも前記定格負荷側に超えるとき、前記吸着式ヒートポンプの運転を停止し、且つ、前記コンプレッサで圧縮させた冷媒を前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の双方へ供給させて前記冷媒の凝縮を進行させ、
(ii)冷房運転時の冷房負荷が前記中間負荷以下のとき、前記吸着式ヒートポンプを運転させつつ前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器を前記冷却風で冷却させ、且つ、前記コンプレッサで圧縮させた前記冷媒を、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のうち、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れない側の熱交換器に供給すると共に、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のうち、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器を通過する冷却風が相対的に流れる側の熱交換器に供給することを抑止する空気調和装置。
【請求項2】
請求項1において、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、前記吸着剤から脱離させたガス状の作動流体を凝縮させる吸着用凝縮器と、前記吸着モードの実行により昇温した前記吸着部を冷却させることにより昇温された吸着式ヒートポンプ用冷却流体を前記冷却風との熱交換により冷却させる中間冷却熱交換器とを備えている空気調和装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器は、前記送風通路において前記第2熱交換器に対面しつつ、前記第2熱交換器の下流または上流に設けられている空気調和装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、エンジンと、前記エンジンを冷却させるエンジン冷却水が流れる水路と、前記水路に連通可能でありエンジン冷却水が過熱されたときにおいてエンジン冷却水を冷却させるラジエータとが設けられており、
前記ラジエータは、前記送風通路のうち、前記第1熱交換器を冷却風が流れる通風部分において前記第1熱交換器の下流に位置するように設けられている空気調和装置。
【請求項5】
請求項4において、前記ラジエータは、前記吸着式ヒートポンプ用熱交換器を構成する前記中間冷却熱交換器を兼用している空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−174679(P2011−174679A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40336(P2010−40336)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【Fターム(参考)】