説明

空気調和装置

【課題】空気浄化用の洗浄水に含まれる塩素濃度に関わらず洗浄水における菌の発生を抑制でき、かつ従来技術よりも電気費用を低減できる空気調和装置を提供する。
【解決手段】この空気調和装置は、筐体1と、筐体1の内部に取り込んだ空気に洗浄水を散布して接触させる気液接触手段3と、気液接触手段3の下方にて洗浄水を受け入れる水槽2と、水槽2内の洗浄水を気液接触手段3へ送る循環ラインを構成するポンプ7及び配管8と、循環ラインにおける洗浄水の流れを利用して電力を発生させ、この電力でオゾンを生成して洗浄水の中に溶解させるオゾン生成装置9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関し、特に、洗浄水を用いて空気を浄化する手段を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅用などの空気調和装置は、空気内の粉塵や臭気や不快なガス成分等などを除去するため、フィルタなどの浄化手段が使用されている。しかし、フィルタの目詰まり等が発生し、浄化能力が損なわれる。
【0003】
そこで、特許文献1に開示されているような、洗浄水と空気とを接触させることで空気を浄化する空気洗浄手段を備えた空気調和装置が提案されている。この空気調和装置では、装置内に洗浄水を散布するシャワーを設け、外部から装置内に取り込んだ空気を該洗浄水に通過させ、これによって浄化された空気を装置外に送出している。
【0004】
上記シャワーからの洗浄水は節水のために循環利用されているが、洗浄水中に菌が発生する恐れがある。そのため、特許文献2に開示されているように、水の電解を行って菌の発生を抑えることも実施されている。
【0005】
図4はこのような従来の空気調和装置の構成を模式的に示したものである。この図に示すように、筐体51の空気取込み口52から外の空気が主送風機(F)53の吸い込み力によって筐体51内部に取り込まれ、筐体51内部を空気吐出口54に向かって流れる。この過程にシャワー等の散水手段55が配置され、筐体51内部に取り込まれた外気が散水手段55からの水で浄化される。散水手段55からの水は筐体51の下部のタンク56で受け、再び散水手段55にポンプ(P)57で送られる。タンク56内には、直流電源58と接続された一対の電極板59が収容されており、これにより、タンク56内の洗浄水を電解して塩素成分(次亜塩素酸)等を発生させて水中における菌の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2008−053871号公報
【特許文献2】特開2007−151750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、洗浄水を電解することで菌の発生を抑制する手法では、次のような課題があった。
【0008】
地域ごとに水道水にもともとに含まれている塩素(次亜塩素酸)の量が異なっており、このような水道水を装置の運転コスト低減の為に洗浄水として使用すると、使用する水中の塩素濃度が低い場合や、運転途中に除菌に必要な塩素量が不足してしまう場合に塩素の補充が必要になる。
【0009】
さらに、電解のための電力および電解用の直流電源装置も必要であることから電気費用も高くなる。
【0010】
そこで本発明は、上述したような課題に鑑み、空気浄化用の洗浄水に含まれる塩素濃度に関わらず洗浄水における菌の発生を抑制でき、かつ従来技術よりも電気費用を低減できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、筐体と、筐体の内部に取り込んだ空気に洗浄水を散布して接触させる気液接触手段と、気液接触手段の下方にて前記洗浄水を受け入れる水槽と、水槽内の洗浄水を気液接触手段へ送る循環ラインと、を有する空気調和装置に係る。この態様において本発明は、洗浄水の流れを利用して電力を発生させ、この電力でオゾンを生成して洗浄水の中に溶解させるオゾン生成装置をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄水における菌の発生をオゾンによって抑えるものであるため、空気浄化用の洗浄水に含まれる塩素濃度に関わらず洗浄水の除菌が可能となる。また、オゾン生成の電力を洗浄水の水流により自己発電で賄うため、従来技術よりも電気費用を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による第1の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図。
【図2】本発明による第2の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明による第3の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図。
【図4】気液接触式空気浄化機能と電解式除菌機能を有する従来の空気調和装置の構成を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明による第1の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図である。
【0016】
本実施形態の空気調和装置は、図1で示すように筐体1の内部に以下に述べる構成を有する。筐体1内の下部に水槽2を有し、その上方に、空気を浄化する気液接触手段3と、主送風機4とが、この順で設置されている。水槽2と気液接触手段3との間で、筐体1の側壁には空気取込み口5が設けられ、また、気液接触手段3の上方には空気吐出口6が設けられており、空気取込み口5から筐体1外の空気が主送風機(F)4の吸い込み力によって筐体1内部に取り込まれ、筐体1内部を空気吐出口6に向かって流れる。
【0017】
主送風機4は、空気吐出口6の手前に設置され、気液接触手段3によって浄化された空気を空気吐出口6から筐体1の外へ供給する。
【0018】
気液接触手段3は、空気取込み口5から筐体1内部に取り込まれた空気を洗浄水と接触させることで浄化する。このため、気液接触手段3は、気液接触部31と、気液接触部31の上方に設けられた洗浄水を散布する散水手段32とを有している。気液接触部31には、支持体(不図示)が備えられ、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、サドル、スルザーパッキン等の充填材が充填されている。なお、気液接触部31は、充填材がハニカム状や繊維を編んだようなもので、気液接触部31と一体型となっていてもよい。この気液接触部31では、散水手段32から散布された洗浄水が充填材の表面に付着し、充填材の表面で、筐体1内部に取り込まれた空気との気液接触が行われる。
【0019】
水槽2は気液接触部31の下側に設けられており、配管を介してポンプ(P)7に接続されている。ポンプ7の吐水側は配管8を介して散水手段32に接続されている。こうして洗浄水が循環するようになっている。散水手段32は例えば、多数の孔の開けられた配管であり、これらの孔から洗浄水が散布される。散水手段32に設けられた孔の数や形状、位置は特に限定されないが、洗浄水をほぼ均一に散布できるように設けられることが好ましい。しかし充填材の構造や、空気の流れに拠っては、気液接触部31に対する散水量に偏りを持たせても構わない。また、洗浄水が散布される孔には、洗浄水をより微細な液滴として噴霧されるような形状を有したノズルを設けるのが好ましい。
【0020】
水槽2内の洗浄水を散水手段32より散布して再び水槽2で受容するように配管8及びポンプ7で循環させていると、洗浄水の水質が低下して洗浄水中に菌が発生する恐れがある。こうした菌の発生を抑制するために、本発明は細菌やウィルスに対して殺菌力及び除菌力を持つオゾンを洗浄水中に溶解させる機構を備える。具体的には、水槽2と散水手段32の間を接続する配管8(即ち洗浄水の循環ライン)の途中に、水流発電式オゾン生成装置9が設けられている。
【0021】
この水流発電式オゾン生成装置9は、水流タービン91と、水流タービン91の回転によって電力を発生する誘導式の発電機構92と、発電機構92で発生した電力で配管8中にオゾンを発生するオゾン発生手段93とを有する。水流タービン91及びオゾン発生手段93はこの順番に配管8の水流方向に沿って直列接続されて、配管8の途中に配設されている。
【0022】
水流発電式オゾン生成装置9では配管8を流れる循環流の力により水流タービン91が回転し、この回転で発電機構92が電力(誘導電力)を発生する。発生した電力を使ってオゾン発生手段93は配管8中にオゾンを連続的に発生させ、配管8を通る洗浄水にオゾンを溶解させる。オゾンにより洗浄水における菌の発生が抑制される。オゾンの発生機構(オゾナイザ)としては電気分解式(電極式)、無声放電式もしくは回転電極式などが適用可能である。
【0023】
さらに、従来の電解方式の除菌機構では水中の塩素量を考慮する必要があるが、オゾンは発生時に塩素を必要としないため、水中の塩素量に関係無く安定してオゾン供給を行うことができる。
【0024】
なお、本装置のオゾン生成装置9はオゾン生成の電力を水流を利用して自己発電で賄うが、その水流はポンプ7によって作っている。このため、ポンプ7の駆動電力が水流タービン91を回せるような循環流エネルギーになるように大きくされるとエネルギー的なメリットはない。しかし実際には吐水ポンプの選定に当たって、最適な定格電力を選定できることは少なく、多くの場合は循環流エネルギーに対して余剰の電力を持つ。そこで、この余剰電力を、水流タービン91を回す分のエネルギー(即ちオゾン発生用の電力)に当てれば、オゾン生成装置9を備えても電気費用は上がらない。従来技術では除菌のための電解に使用する電力が循環ポンプの駆動電力とは別に必要であったが、本発明はこのような従来技術と比べて電気費用を低減できる。
【0025】
オゾン発生機構として電気分解式を用いた場合に使用する電極の材質としては、例えば、陽極にはTiをベースとした白金タンタル又は2酸化鉛を使用することができ、陰極にはTiをベースとした白金を使用することができる。なお、陰極にスケールが堆積して電気伝導性が低下する恐れがある場合には両電極の極性を反転させることが効果的である。つまり、陰極を陽極に切替えることで陰極上に堆積したスケールを取り除くことができる。こうした反転操作を必要とする場合は陰極材料に陽極と同様の素材を用いることがある。
【0026】
(第2の実施形態)
図2は本発明による第2の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図である。この図において第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を用いており、第1の実施形態と同じ構成要素の説明については、省略する。また、オゾン生成装置9についてはその構成要素を省略して図示した。以下、第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0027】
第1の実施形態と異なる構成としては、洗浄水中のオゾン濃度を測り、一定のオゾン濃度を超えている場合は洗浄水がオゾン生成装置9を通らない経路に、一定のオゾン濃度以下の場合は洗浄水がオゾン生成装置9を通る経路に洗浄水循環ラインを切替えられる点にある。そのため本実施形態の装置は、図2に示すように、第1の実施形態の空気調和装置の構成に加え、水槽2内の洗浄水中のオゾン濃度を監視するオゾン濃度計10と、オゾン濃度計10で検出されたオゾン濃度に応じて、ポンプ7から散水手段32への洗浄水の循環ラインを、洗浄水がオゾン生成装置9を通過する経路とそれを通過しない経路に切替える3方バルブ11とを有している。
【0028】
このような構成によれば、第1の実施形態による装置の効果に加えて、洗浄水中のオゾンの不足や過剰供給を最小限にできるため、オゾン濃度を一定の範囲に正確に維持することができる。
【0029】
(第3の実施形態)
図3は本発明による第3の実施形態の空気調和装置の構成を示す模式図である。この図において第1の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を用いており、第1の実施形態と同じ構成要素の説明は省略する。また、オゾン生成装置9についてはその構成要素を省略して図示した。以下、第1の実施形態とは異なる点について説明する。
【0030】
第1の実施形態と異なる構成としては、オゾン生成装置9を洗浄水の循環ラインの配管8ではなく、水道水を水槽2へ供給する給水ライン上に設けた点にある。本実施形態では、図3に示すように、循環ラインの一部を構成する散水手段32への給水管13に水道水の給水ライン12が直結されており、その給水ライン12上にオゾン生成装置9が設置されている。なお、オゾン生成装置9の図示しない水流タービン及びオゾン発生手段は、この順番で給水ライン12の水流方向に沿って直列接続されている。
【0031】
オゾン生成装置9を備えた給水ライン12は図3では循環ラインの一部である供給管13に直結されているが、水槽2に接続されていてもよい。
【0032】
図3の構成によれば、給水ライン12より散水手段32へ水道水が供給されたとき、第1の実施形態(図1参照)と同じように水流タービンが回って発電機構が電力を発生し、この発生した電力を使ってオゾン発生手段がオゾンを連続的に発生させて、給水ライン12を通る水道水中にオゾンが溶解する。給水ライン12は散水手段32の給水管13に直結されているため、水槽2及び配管8等を含む循環ラインにオゾン水が侵入することとなる。これにより洗浄水における菌の発生が抑制される。
【0033】
この構成では水道水の供給時のみオゾンが生成されるため、しばらく洗浄水を循環使用してオゾンが少なくなってきた頃に洗浄水を交換の為に排出して水道水を再供給すると、その水道水にオゾンを付加することができる。このため、塩素の含有量が比較的少ない水道水であっても、交換時にオゾンを含む洗浄水に変えることができる。また、水道水の供給時の水流でオゾン生成用の電力を得ているため、オゾン生成装置9を備えても電気費用が増すことはない。むしろ、電解によって水の除菌を行う従来技術と比べると、電気費用を低減できる。
【0034】
また本装置は、洗浄水の循環使用によって洗浄水中のオゾン濃度が所定の値以下になったか否かを検知し、この検知結果が所定の値以下であるときに水道水の供給を行うものであるとよい。このため本装置には、第2の実施形態のような水槽2内の洗浄水中のオゾン濃度を監視するオゾン濃度計(不図示)と、給水ライン12のオゾン生成装置9よりも上流側に設置され、オゾン濃度計の検出値が所定の値以下になると開いて水道水を給水する給水バルブ(不図示)とを追加することが好ましい。この追加の構成により、洗浄水中のオゾン濃度を一定の範囲に正確に維持することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 筐体
2 水槽
3 気液接触手段
31 気液接触部
32 散水手段
4 主送風機
5 空気取込み口
6 空気吐出口
7 ポンプ
8 配管
9 オゾン生成装置
91 水流タービン
92 発電機構
93 オゾン発生手段
10 オゾン濃度計
11 3方バルブ
12 水道水の給水ライン
13 散水手段の給水菅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に取り込んだ空気に洗浄水を散布して接触させる気液接触手段と、
前記気液接触手段の下方にて前記洗浄水を受け入れる水槽と、
前記水槽内の前記洗浄水を前記気液接触手段へ送る循環ラインと、
を有し、
前記洗浄水の流れを利用して電力を発生させ、この電力でオゾンを生成して前記洗浄水の中に溶解させるオゾン生成装置をさらに備えたことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記オゾン生成装置は、水流で回転する水流タービンと、該水流タービンの回転によって電力を発生する誘導式の発電機構と、該発電機構で発生した電力でオゾンを発生するオゾン発生手段とを有し、
前記水流タービン及び前記オゾン発生手段が、前記循環ライン上に配設されており、前記水流タービン及び前記オゾン発生手段はこの順番に前記循環ラインの水流方向に沿って直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記オゾン生成装置は、水流で回転する水流タービンと、該水流タービンの回転によって電力を発生する誘導式の発電機構と、該発電機構で発生した電力でオゾンを発生するオゾン発生手段と、前記気液接触手段または前記水槽に前記洗浄水として水道水を供給する給水ラインとを有し、
前記水流タービン及び前記オゾン発生手段が、前記給水ライン上に配設されており、前記水流タービン及び前記オゾン発生手段はこの順番に前記給水ラインの水流方向に沿って直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記水槽内の洗浄水中のオゾン濃度を監視するオゾン濃度計と、
前記オゾン濃度計によるオゾン濃度が一定の値以下である場合は前記循環ラインを、前記洗浄水が前記オゾン生成装置を通過する経路に切替え、前記オゾン濃度計によるオゾン濃度が一定の値を超えている場合は前記循環ラインを、前記洗浄水が前記オゾン生成装置を通過しない経路に切替える3方バルブと、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記水槽内の洗浄水中のオゾン濃度を監視するオゾン濃度計と、
前記オゾン濃度計によるオゾン濃度が一定の値以下である場合は前記給水ラインを開けて給水し、前記オゾン濃度計によるオゾン濃度が一定の値を超えている場合は前記給水ラインを閉じる給水バルブと、を有することを特徴とする請求項1又は3に記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記オゾン発生手段が無声放電式または電極式のイオナイザであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72940(P2012−72940A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216858(P2010−216858)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】