説明

空気除菌装置

【課題】利用者の煩わしさを感じさせることがなく、かつ、電気分解可能な塩素濃度を確保可能な空気除菌装置を提供する。
【解決手段】空気除菌装置は、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンク95と、この食塩水タンク95から水受け皿42に飽和食塩水を供給する供給管97と、供給した飽和食塩水の量の電解水を水受け皿42から食塩水タンク95に取り入れる取入管99とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物(以下、単に「ウィルス等」という)の除去が可能な空気除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水を電気分解して次亜塩素酸を含む電解水を生成させ、この電解水を用いて空気中に浮遊するウィルス等の除去を図った空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この空気除菌装置は、不織布等からなる加湿エレメントに電解水を供給して、加湿エレメント上で空気中のウィルス等を電解水に接触し、ウィルス等を不活化することにより、空気を除菌しようとするものである。
【特許文献1】特開2002−181358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した電気分解は、水道水中に含まれる塩素イオンを利用して行う。しかしながら、空気除菌装置の使用地域によっては水道水中の塩素濃度が低く、電気分解が困難な場合がある。従来では、より大きな電流を電解ユニットに流して電気分解を行う方法があるが、電極に生じる負荷が大きく、メンテナンスで電極を交換する頻度が多くなるという問題があった。また、供給する水道水に塩を供給して電気分解する方法もあるが、利用者が運転の度に塩を供給するのも煩わしい。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、かつ、電気分解可能な塩素濃度を確保可能な空気除菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、筐体内に、電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水が供給される気液接触部材と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留すると共に前記気液接触部材から流下する電解水を受ける水受け皿と、前記水受け皿に貯留した電解水を汲み上げて再び前記気液接触部材に供給する循環ポンプと、前記気液接触部材に室内空気を送る送風ファンを備えた空気除菌装置において、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクと、この食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管と、供給した飽和食塩水の量の電解水を前記水受け皿から前記食塩水タンクに取り入れる取入管とを備えたことを特徴とする。
【0005】
また、本発明は、筐体内を支持板で上下に区分けし、前記筐体の上側の室に、電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水が供給される気液接触部材と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留すると共に前記気液接触部材から流下する電解水を受ける水受け皿と、前記水受け皿に貯留した電解水を汲み上げて再び前記気液接触部材に供給する循環ポンプとを備え、前記筐体の下側の室に、前記気液接触部材に室内空気を送る送風ファンを備えた空気除菌装置において、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクを前記下側の室に配置し、この食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管と、供給した飽和食塩水の量の電解水を前記水受け皿から前記食塩水タンクに取り入れる取入管とを備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクと、この食塩水タンクから水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管とを備えたため、水受け皿内の電解水に飽和食塩水が自動的に供給されるので、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。また、食塩水タンクには、飽和食塩水の水分に未溶解の食塩が入っており、供給した飽和食塩水の量の電解水を水受け皿から食塩水タンクに取り入れる取入管が備えられるため、食塩水タンク内の食塩と食塩水タンクに取り入れた電解水とによって飽和食塩水を生成できるので、食塩水タンク内の飽和食塩水の量を略一定に維持し、その結果、長期に亘って飽和食塩水を水受け皿に供給できる。
【0006】
上記構成において、前記食塩水タンクは密閉型のタンクであり、前記食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を汲み上げるポンプを設け、このポンプを運転することで生じた負圧によって、電解水が前記水受け皿から前記食塩水タンクに供給されてもよい。
上記構成によれば、食塩水タンクは密閉型のタンクであり、食塩水タンクから水受け皿に飽和食塩水を汲み上げるポンプを設け、このポンプを運転することで生じた負圧によって、電解水が水受け皿から食塩水タンクに供給されるため、水受け皿から食塩水タンクに電解水を取り入れるためのポンプを必要としないので、部品点数を削減して製造工程を簡略化できる。
【0007】
上記構成において、前記供給管の出口と、前記取入管の入口とを離間させてもよい。
上記構成によれば、水受け皿内で供給管の出口と取入管の入口を離間させたため、供給管の出口から水受け皿に供給された飽和食塩水が取入管の入口から吸い込まれることが防止されるので、飽和食塩水が水受け皿内の電解水に十分に拡散する。
【0008】
上記構成において、前記供給管の入口と、前記取入管の出口とを離間させてもよい。
上記構成によれば、食塩水タンク内で供給管の入口と取入管の出口を離間させたため、取入管の出口から食塩水タンク内に取り入れられた塩素濃度の低い電解水が供給管の入口から吸い込まれることが防止されるので、塩素濃度の高い飽和食塩水を水受け皿に供給できる。
【0009】
上記構成において、前記水受け皿に水を供給するための給水タンクを前記上側の室に配置し、前記給水タンクが設置された際に、前記ポンプを運転してもよい。
上記構成によれば、水受け皿に水を供給するための給水タンクを上側の室に配置し、給水タンクが設置された際に、ポンプを運転するため、水受け皿に供給された新たな水に食塩水が自動的に供給されるので、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクと、この食塩水タンクから水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管とを備えたため、水受け皿内の電解水に飽和食塩水が自動的に供給されるので、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。また、食塩水タンクには、飽和食塩水の水分に未溶解の食塩が入っており、供給した飽和食塩水の量の電解水を水受け皿から食塩水タンクに取り入れる取入管が備えられるため、食塩水タンク内の食塩と食塩水タンクに取り入れた電解水とによって飽和食塩水を生成できるので、食塩水タンク内の飽和食塩水の量を略一定に維持し、その結果、長期に亘って飽和食塩水を水受け皿に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る空気除菌装置1の外観斜視図であり、図2は、空気除菌装置1の内部構成を示す斜視図である。
図1に示すように、空気除菌装置1は縦長に形成された箱形の筐体11を有し、例えば床置き設置される。筐体11には、筐体11の両側面の下部に吸込グリル12が形成されるとともに、筐体11の前面の下端部に吸込口15が形成されている。
また、筐体11の上面には吹出口13が形成され、吹出口13には空気を吹き出す方向を変化させるためのルーバー20が設けられている。ルーバー20は、運転停止時には上記吹出口13を閉塞するように構成されている。
空気除菌装置1は、吸込グリル12及び吸込口15を介して設置室内の空気を吸い込んで除菌し、この除菌された空気を吹出口13から排出することで、室内空気を清浄化させる装置である。
【0012】
筐体11の上面には、図2に示すように、吹出口13の前面側に配置された操作蓋16Aと、この操作蓋16Aに横並びに配置されたタンク用開閉蓋14Aとが形成されている。操作蓋16Aを開くと、空気除菌装置1の各種操作を行う操作パネル16が露出し、タンク用開閉蓋14Aを開くと、タンク取出口14を介して後述する給水タンク60及び排水タンク80を出し入れ可能となっている。
また、図1に示すように、筐体11の両側面の上部にはそれぞれ把持部17が形成されている。これら把持部17は筐体11を手持ちする際に手を掛けるための凹部であり、運搬時に空気除菌装置1を一人で持ち上げて移動できるようになっている。
また、筐体11の前面(一側面)には、上下方向に並べられた上側カバー部材18及び下側カバー部材19がそれぞれ着脱自在に配置されており、これら上側カバー部材18及び下側カバー部材19を取り外すと筐体11の内部構成が露出するようになっている。また、下側カバー部材19は、この下側カバー部材19の下端部に、筐体11の背面側に向けて湾曲した円弧部19Aを備え、この円弧部19Aに上記吸込口15が形成されている。
【0013】
筐体11には、図2に示すように、この筐体11の内部を上下に仕切る支持板21が設けられ、上側の室22と下側の室23とに区分けされている。この下側の室23には、送風ファン31及びファンモータ32が配置されるとともに、仕切板24を介して、食塩水タンク95が収容されている。これら送風ファン31及びファンモータ32と食塩水タンク95とは横並びに配置されている。
また、送風ファン31と吸込口15との間、すなわち、下側の室23における下側カバー部材19(図1)と対向する位置にプレフィルタ34が着脱自在に配置されている。このプレフィルタ34は、吸込グリル12及び吸込口15を通じて吸い込まれた空気中の塵埃など粒径の大きなものを捕集する第1フィルタ25と、この第1フィルタ25を通過する、例えば粒径10(μm)以上の物を捕集する第2フィルタ26とを備えて構成される。このプレフィルタ34によって空気中に浮遊する花粉や塵埃等が除去され、この除去された空気が送風ファン31を介して上側の室22に供給される。
【0014】
一方、上側の室22には、送風ファン31及びファンモータ32の上方に電装ボックス39が配置され、電装ボックス39には、空気除菌装置1を制御する制御部(図示略)を構成する各種デバイスが実装された制御基板や、ファンモータ32に電源電圧を供給する電源回路等の各種電装部品が収容されている。
電装ボックス39の上方には、通過する空気を電解水に接触させて空気を除菌する気液接触部材53が配置されている。気液接触部材53の下方には、気液接触部材53から滴下した電解水を受ける水受け部42Aを備えた水受け皿42が配置されている。水受け皿42は、上記水受け部42Aよりも深底に形成された貯留部42Bを備え、貯留部42Bは多量の電解水を貯留できる。この貯留部42Bには、水受け部42Aに滴下した電解水が流入するように構成され、電解水が貯留部42Bに貯留される。また、貯留部42Bは上記食塩水タンク95の上方に延在している。貯留部42Bには、水受け部42Aよりも深底の深底部42B1と、この深底部42B1よりも浅底の浅底部42B2とが形成されている。
【0015】
貯留部42Bの上には、排水タンク80が配設されており、貯留部42Bに貯留された電解水を適宜排水可能に構成されている。
また、貯留部42Bの上には、排水タンク80に隣接して給水タンク60が配設され、給水タンク60から貯留部42Bに水を供給可能な構成となっている。この給水タンク60に貯留される水は、水道水等のように塩化物イオン等のイオン種が予め含有されている水であってもよいし、井戸水等の塩化物イオンの濃度の希薄な水であってもよい。本実施形態では、これらを総称して水という。
【0016】
上側の室22は、水受け皿42及び板状部材27によってさらに上下に仕切られ、水受け皿42の上方であって湿度の比較的高い高湿空間22Aと、水受け皿42の下方であって湿度の比較的低い低湿空間22Bとを有している。低湿空間22Bには、上述した電装ボックス39が配置されている。高湿空間22Aには、高湿空間22Aを左右に仕切る隔壁30Aが設けられ、高湿空間22Aは、気液接触部材53を収容する除菌空間22A1と、貯留部42Bの上方の水回り空間22A2とに仕切られている。水回り空間22A2は、これらの水受け皿42及び隔壁30Aと、水回り空間22A2の側面を覆う水回りカバー30B〜30Dとによって隔離されおり、空気が送風される除菌空間22A1と比較して湿度が高くなっている。
【0017】
次に、空気除菌装置1における空気の流れを説明する。
図3は、空気除菌装置1の内部構成を示す右側断面視図である。
上述のように、筐体11の下側の室23には送風ファン31が設けられている。送風ファン31の送風口31Aは、図3に示すように、筐体11の背面側部分において上向きに設けられ、上側の室22の背面側において上下に延びる風路としての空間1Aに連通する。空間1Aは、筐体11の背面側に配置される第1導風部材91と、この第1導風部材91に対向配置され、支持板21から水受け皿42まで延在する導風板94とにより形成されている。送風ファン31の送風口31Aから吹き出された空気は、図3中に矢印で示すように空間1Aを通り、気液接触部材53の背面に吹き付けられる。
【0018】
一方、気液接触部材53を介して、上記空間1Aと反対側(本実施形態では筐体11の前面側)の空間1Bには、図3に示すように、気液接触部材53を通過した空気を吹出口13に導く第2導風部材93が配置されている。第2導風部材93は、上面部と背面部とを開口された略箱状に形成されている。
この第2導風部材93は、空間1B内の空気を吹出口13に導く機能に加えて、気液接触部材53から空気とともにこの空間1Bに吹き出された水(いわゆる飛び水)を受ける機能を有する。具体的には、第2導風部材93の内側の底面93Aは、気液接触部材53に向けて傾斜しており、第2導風部材93に飛び出した水を水受け皿42に導くように形成されている。そして、気液接触部材53を通過した空気は、第2導風部材93の内側の面93Bに導かれて吹出口13の下方に配設された吹出口フィルタ36を通って排気される。
【0019】
図4は、電解水を生成し循環させる要部の構成を示す斜視図である。
本実施の形態では、空気を除菌する電解水は、循環されて繰り返し使用される。循環の概略を説明すると、電解水の原料として貯留部42Bに供給された水は、電解水を循環させるための循環ポンプ44により電解槽46に供給され、電解槽46により水が電解されて生成された電解水は、貯留部42Bに再び戻り貯留され、その後、循環ポンプ44により気液接触部材53に供給され、次いで、除菌に使用された電解水が水受け部42Aに流下し、水受け部42Aから貯留部42Bに流れた電解水が再び循環ポンプ44により電解槽46に供給されて電解水の循環が繰り返されるというものである。このように、本実施形態における構成では電解水が循環式となっており、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率良く空気の除菌ができる。
【0020】
水受け皿42は、水受け部42Aと貯留部42Bとが一体に成形されて構成される。水受け部42Aは貯留部42Bより一段高く形成されており、気液接触部材53から水受け部42Aに流下した電解水は、貯留部42Bに流れるようになっている。また、水受け部42Aから貯留部42Bに至る電解水の流路には、気液接触部材53から流れ落ちた水に含まれる固形物(スケール)を捕集するフィルタ74が配設されている。
【0021】
循環ポンプ44は、その吸入口が貯留部42Bの水面より下になるように配設され、循環ポンプ44の吐出口に接続された配水管71を通じて電解水を吐出する。配水管71は、2つの経路に分岐し、一の経路では、循環ポンプ44は、配水管71と分岐して接続される分岐管72を介して電解槽46に接続され、他方の経路では、配水管71が水受け部42Aの側に延びた終端に位置する気液接触部材53に接続される。
【0022】
一の経路において、分岐管72を通って電解槽46に供給された電解水は、電解槽46により電解される。この電解槽46は、後述するように複数の電極を内蔵し、これら電極間に制御部から供給される電圧を印加することにより、水を電解して電解水を生成する。本実施の形態では、塩化物イオンを含む水が電解されることで、除菌成分としての次亜塩素酸を含む電解水が生成される。電解槽46の上面には、この電解槽46で生成した電解水を排出する排出口46Aが形成され、この排出口46Aには電解水を貯留部42Bに送出する返送管73が接続されている。返送管73は、排出口46Aから横方向に延びた後、下方向に向きを変え、返送管73の下端は、フィルタ74の上方に位置している。電解水は、返送管73の下端から直接、フィルタ74に注がれるようにして還流され、フィルタ74を通過する際にスケール等を取り除かれて、貯留部42Bに貯留される。なお、返送管73から流れ出る電解水が、フィルタ74の上流である水受け部42Aに還流される構成としても良い。この場合、返送管73から水受け部42Aに注がれた電解水は、上述の場合と同様に、フィルタ74を介して貯留部42Bに流れるため、スケールを取り除くことができる。
【0023】
気液接触部材53の上部には、気液接触部材53上に均一に電解水を分散させるための散水ボックス51が組み付けられている。この散水ボックス51は、電解水を一時的に貯留するトレー部材(図示略)を備え、このトレー部材の側面に複数の散水孔(図示略)が開口しており、配水管71により供給される電解水は、この散水孔から気液接触部材53に対して滴下されるようになっている。
【0024】
そして、次亜塩素酸を含んだ電解水が供給された気液接触部材53が送風により空気を送られると、空気が気液接触部材53を通過する際に、空気中に浮遊するウィルス等と電解水とが接触してウィルス等が不活化されるため、空気を除菌することができ、さらに気液接触部材53自体における雑菌の繁殖を防止できる。また、臭気が気液接触部材53を通過する際に、電解水中の次亜塩素酸と反応し、イオン化して電解水に溶解することにより、空気中から除去されるため、脱臭をすることもできる。
【0025】
気液接触部材53は、ハニカム構造を持ったフィルタである。詳細には、気液接触部材53は、気体に接触するエレメント部をフレームにより支持する構造を有する。エレメント部は、波板部材と平板部材とが積層されて構成され、これら波板部材と平板部材との間に略三角状の多数の開口が形成されている。従って、エレメント部に空気を通過させる際の気体接触面積が広く確保され、電解水の滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。
【0026】
また、気液接触部材53の上面には、散水ボックス51から滴下される電解水をエレメント部に効率よく分散させるため、分流シート(図示略)が配設されている。この分流シートは、液体の浸透性を有する繊維材料からなるシート(織物、不織布等)であり、気液接触部材53の厚み方向断面に沿って一または複数設けられる。
ここで、気液接触部材53の各部(フレーム、エレメント部、及び分流シートを含む)には、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)又はセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂を用いるものとする。
また、気液接触部材53の各部には親水性処理が施され、電解水に対する親和性が高められており、これによって、気液接触部材53の電解水の保水性(湿潤性)が保たれ、後述する活性酸素種(活性酸素物質)と室内空気との接触が長時間持続される。
【0027】
そして、返送管73には排水管55(図6)が接続され、排水管55の先端はノズル57(図6)を介して上記排水タンク80(図6)の下部に接続されており、電解槽46内の電解水が排水タンク80に排水されるようになっている。
【0028】
次に、水受け皿42に水を供給する給水タンク60、及び、水受け皿42に貯留された電解水が排水される排水タンク80について説明する。
図5は、給水タンク60及び排水タンク80を後方から示す断面図である。図6は、図2の空気除菌装置1を示す右側面図である。
図5に示すように、給水タンク60は給水タンク本体61を備え、この給水タンク本体61は、上面61A、下面61B、前面61C、後面、左側面61E、及び右側面61Fを備えて構成されている。上面61Aには把手62が設けられている。
【0029】
下面61Bの略中央部には、給水口63が形成されており、この給水口63には給水口63のキャップを兼ねたフロートバルブ63Aが設けられている。貯留部42B(図2参照)の水面が給水口63よりも下になると、このフロートバルブ63Aが開放されることにより、給水タンク本体61から必要量の水が供給され、貯留部42Bの水位が一定に保たれる仕組みとなっている。
右側面61Fには、上半分の上下方向略中央部に、内側に窪んだ窪み部64が形成されている。窪み部64は、側面視で略矩形状に形成されており、窪み部64の平面部64Aには、面ファスナー65が取り付けられている。また、右側面61Fには、下半分の上下方向略中央部に、外側に突出する凸部66が形成されている。凸部66は、斜め上方に延出しており、前面視で略台形状に形成されている。
【0030】
排水タンク80は、排水タンク本体81を備え、この排水タンク本体81は、上面81A、下面81B、前面81C、後面81D(図6)、左側面81E、及び右側面81Fを備えて構成されている。排水タンク本体81は、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)又はセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂を用いるものとする。
【0031】
上面81Aの後部には、排水タンク本体81内の電解水を排出する排出孔82(図6参照)が形成されている。左側面81Eには、給水タンク60の面ファスナー65に対応する位置に、面ファスナー83が取り付けられている。また、左側面81Eには、給水タンク60の凸部67と嵌め合うように、内側に凹んだ凹部84が形成されている。
給水タンク60の右側面61Fと排水タンク80の左側面81Eとを対向させて当接させると、給水タンク60の凸部66が排水タンク80の凹部84に嵌め合わされるとともに、給水タンク60の面ファスナー65が排水タンク80の面ファスナー83に接着して、給水タンク60と排水タンク80とが一体になる。ここで、面ファスナー65及び面ファスナー83が上係合部65Aを構成し、凸部66及び凹部84が下係合部66Aを構成している。なお、給水タンク60及び排水タンク80は、一体形成されてもよい。
【0032】
図6に示すように、排水タンク本体81の下面81Bには、前後方向略中央部よりやや前方に、電解水を排水タンク本体81内に流入させるための流入口85が形成されている。流入口85の前方には、排水タンク本体81内の電解水を貯留部42Bに流出させる流出口86が形成されている。流入口85及び流出口86には、流入パイプ87及び流出パイプ88の下端が連結され、流入パイプ87及び流出パイプ88が排水タンク本体81内に配置される。
【0033】
流入パイプ87は、流出パイプ88より長く形成され、流入パイプ87の出口87Aが流出パイプ88の入口88Aより上方に位置している。
流出口86には弁棒89Aを有する開閉弁89が設けられており、この開閉弁89は、弁棒89Aが下方から押されると開き、弁棒89Aが放されると閉じるように構成されている。排水タンク80が空気除菌装置1に設置されると、弁棒89Aが貯留部42Bの浅底部42B2に当接して押されて開閉弁89が開く。
【0034】
浅底部42B2には、流入口85に対応する位置に、流入口85に水を導くノズル57を挿通可能なノズル受け部43が形成されている。ノズル57の上端部には、O−リング57Aが取り付けられている。したがって、テーパ部87Bにノズル57を挿入するように、排水タンク80を空気除菌装置1に設置すると、テーパ部87Bとノズル57とがO−リング57Aを介して連結される。すなわち、このノズル57は、水を流入口85に導く機能に加え、排水タンク80の位置決めをする機能を有している。
なお、給水タンク60が空気除菌装置1に設置されたことは図示しない検知手段によって検知可能に構成されている。
【0035】
次に、図2、図7、及び図8を参照し、食塩水タンク95について説明する。
図7は、食塩水タンク95を示す断面図である。図8は、電解水の循環経路を示す模式図である。
食塩水タンク95は、食塩水による劣化が少ない素材、例えば、ポリプロピレン樹脂等を用いて形成されている。食塩水タンク95の上面には、略中央部に投入口95Aが形成され、この投入口95Aから食塩水タンク95内に水と、この水に未溶解で堆積する程の量の食塩とが入れられる。したがって、食塩水タンク95には、その下部に食塩が堆積するとともに、飽和食塩水が貯留される。食塩水タンク95に入れられる食塩の量は、空気除菌装置1のメンテナンス期間(例えば、1年)に対して、十分長い期間飽和食塩水を生成可能な量に設定される。投入口95Aには、キャップ96Aが取り付けられる。
【0036】
また、食塩水タンク95の上面には、前側に供給口95Bが形成され、この供給口95Bに、水受け皿42に飽和食塩水を供給する供給管97が接続されている。供給管97には、制御部により制御される食塩水供給ポンプ(ポンプ)98が設けられており、この食塩水供給ポンプ98によって、食塩水タンク95に貯留された飽和食塩水が供給管97を通って水受け皿42に汲み上げられるようになっている。食塩水供給ポンプ98は、比較的湿度の低い低湿空間22Bに配置されるため、食塩水供給ポンプ98には、防湿処理等が施されていないポンプを用いることができる。
【0037】
供給管97は、供給口95Bから食塩水タンク95内に延びる吸込みノズル97Aと、一端がワンタッチ継ぎ手96Bを介して吸込みノズル97Aに接続され、他端が食塩水供給ポンプ98の吸込口に接続されるチューブ97Bと、食塩水供給ポンプ98の吐出口から水回りカバー30Bを貫通して水受け皿42の上方に延びるチューブ97Cと、このチューブ97Cに接続されて水受け皿42の上方に配置される供給ノズル97Dとを備えて構成されている。
吸込みノズル97Aは、供給口95Bから飽和食塩水の水面の下方まで延びており、吸込みノズル97Aの入口97A1は、飽和食塩水の水面の下方であって、堆積した食塩から離れた位置に設けられている。
【0038】
供給ノズル97Dは、逆流を防止する逆止弁97Eを備え、供給ノズル97Dの出口97D1は、水受け皿42に貯留された電解水の水面から、この水面に触れることのない十分な距離を離して配置されている。これにより、水受け皿42に貯留された電解水が、供給管97を通じて食塩水タンク95内に逆流することが確実に防止される。
また、供給ノズル97Dは、高湿な水回り空間22A2内であって、水受け皿42に貯留された電解水の上方に配置されているので、常に湿度の高い状態に置かれることになり、供給ノズル97Dに食塩が析出することが防止されるようになっている。
さらに、供給ノズル97Dは、水受け皿42の浅底部42B2よりも深底の深底部42B1の上方に配置されている。このため、水受け皿42の貯留部42Bの水位が所定の下限水位になっても、食塩水が貯留部42Bの電解水に直接供給されることになり、水受け皿42上で食塩が析出することが防止される。
【0039】
また、食塩水タンク95の上面には、後側に取入口95Cが形成され、この取入口95Cに、水受け皿42から電解水を取り入れる取入管99が接続されている。取入管99は、取入口95Cから食塩水タンク95内に延びる取入ノズル99Aと、一端がワンタッチ継ぎ手96Cを介して取入ノズル99Aに接続され、他端が水受け皿42に接続されるチューブ99Bとを備えて構成されている。
取入ノズル99Aは、取入口95Cから飽和食塩水の水面の下方まで延びており、取入ノズル99Aの出口99A1は、飽和食塩水の水面より下方に設けられている。一方、チューブ99Bの入口99B1は、浅底部42B2の底部近傍に設けられている。
【0040】
食塩水タンク95は、筐体11に対してボルト締めなどによって固定されることなく、単に下側の室23に置かれて、ワンタッチ継ぎ手96B,96Cに、例えばポリウレタン製のチューブ97B,99Bがそれぞれ接続される。食塩水タンク95を取り出す場合には、これらのチューブ97B,99Bをワンタッチ継ぎ手96B,96Cから手指で容易に取り外すことができるため、工具等を使用することなく、メンテナンスを簡単に行うことができる。
また、食塩水タンク95は、このキャップ96Aとワンタッチ継ぎ手96B,96Cとによって密閉されている。
【0041】
図8及び図9を参照して、気液接触部材53に対する電解水の供給について説明する。
図9は電解槽46の構成を詳細に示す図である。なお、本実施の形態では、給水タンク60に水道水を入れて空気除菌装置1を動作させる場合について説明する。
【0042】
水道水を入れた給水タンク60が空気除菌装置1に設置されると、上述のように、給水タンク60から水受け皿42の貯留部42Bに水道水が供給され、貯留部42Bの水位が所定のレベルに達する。貯留部42B内の水は循環ポンプ44によって汲み上げられて、その一部が電解槽46に供給される。この電解槽46には、図9に示すように、一方が正、他方が負となる対の電極47、48を備え、これら電極47、48間に電圧を印加することにより、電解槽46に流入した水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水が生成される。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。
【0043】
電極47、48は、例えばベースがチタン(Ti)で皮膜層がイリジウム(Ir)、白金(Pt)から構成された電極板であり、この電極47、48に流れる電流値は、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
【0044】
詳述すると、上記電極47、48により水道水に通電すると、カソード電極としての電極48では、水中の水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)とが下記式(1)に示すように反応する。
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-) ・・・(1)
【0045】
一方、アノード電極(陽極)としての電極47では、下記式(2)に示すように水が電気分解される。
2H2O→4H++O2+4e- ・・・(2)
とともに、電極47においては、水に含まれる塩素イオン(塩化物イオン:Cl-)が下記式(3)に示すように反応し、塩素(Cl2)が発生する。
2Cl-→Cl2+2e- ・・・(3)
さらに、この塩素は下記式(4)に示すように水と反応し、次亜塩素酸(HClO)と塩化水素(HCl)が発生する。
Cl2+H2O→HClO+HCl ・・・(4)
【0046】
電極47で発生した次亜塩素酸は広義の活性酸素種に含まれるもので、強力な酸化作用や漂白作用を有する。次亜塩素酸が溶解した水溶液、すなわち空気除菌装置1により生成される電解水は、ウィルス等の不活化、殺菌、有機化合物の分解等、種々の空気清浄効果を発揮する。このように、次亜塩素酸を含む電解水が散水ボックス51から気液接触部材53に滴下されると、送風ファン31(図2参照)により吹き出された空気が気液接触部材53において次亜塩素酸と接触する。これにより、空気中に浮遊するウィルス等が不活化されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質が次亜塩素酸と反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。従って、空気の除菌及び脱臭がなされ、清浄化された空気が気液接触部材53から排出される。
【0047】
活性酸素種によるウィルス等の不活化の作用機序として、インフルエンザウィルスの例を挙げる。上述した活性酸素種は、インフルエンザの感染に必須とされるインフルエンザウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する作用を有する。この表面蛋白が破壊された場合、インフルエンザウィルスと、インフルエンザウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、感染が阻止される。このため、空気中に浮遊するインフルエンザウィルスは、気液接触部材53において活性酸素種を含む電解水に接触することにより、いわば感染力を失うこととなり、感染が阻止される。
【0048】
従って、この空気除菌装置1が、例えば幼稚園や小・中・高等学校、介護保険施設、病院等のいわゆる大空間に設置された場合であっても、電解水により清浄化(除菌、脱臭等)された空気を大空間内で広く行き渡らせることが可能になり、大空間での空気除菌及び脱臭を効率よく行うことができる。
【0049】
また、散水ボックス51から気液接触部材53に滴下された電解水は気液接触部材53を伝って下方に移動し、水受け皿42の水受け部42Aに落ちる。この水受け部42Aに落ちた電解水は貯留部42Bに流れ込み、再び循環ポンプ44によって汲み上げられ、電解槽46を経て気液接触部材53に供給される。また、蒸発等により貯留部42Bに貯留される水量が減った場合には、給水タンク60内の水道水が貯留部42Bに適量供給される。
【0050】
給水タンク60から給水が開始されると、循環ポンプ44の運転によって、電解槽46内の電解水が排水される。このとき、電解槽46内の電解水は、循環ポンプ44によって汲み上げられ、排水管55及びノズル57を介して排水タンク80に導かれる。この電解水は、図6に矢印Aで示すように、排水タンク本体81内で流入パイプ87を流れ、排水タンク本体81の上部の入口88Aから排水タンク本体81に流入して、排水タンク本体81の下部に溜まる。排水タンク本体81の上部に位置する流出パイプ88の入口88Aまで電解水が溜まり満水になると、この電解水は、図6に矢印Bで示すように、入口88Aから流出パイプ88を流れ、水受け皿42に供給される。
【0051】
ここで、流出パイプ88の入口88Aは、排水タンク本体81の上部に位置するので、電解水より重いスケール等の汚れは排水タンク本体81の下部に沈殿し、汚れが取り除かれた電解水が水受け皿42に供給される。すなわち、排水タンク80は、汚れを取り除くフィルタとしての機能も有している。このように、本実施の形態の空気除菌装置1は、電解水が一時的に排水タンク80に貯留され、汚れが取り除かれて循環利用されるように構成されるので、少量の水を有効に利用することで、長時間にわたって効率良く空気の除菌ができる。
【0052】
給水タンク60の水道水がなくなると、空気除菌装置1が停止する。排水タンク80は、図2に示すように、上側の室22に配置された給水タンク60に隣接して配置されており、筐体11には、給水タンク60及び排水タンク80を取り出し可能なタンク用開閉蓋14Aが設けられているので、給水タンク60及び排水タンク80を1つのタンク用開閉蓋14Aから取り出すことができる。排水タンク80内の電解水及び沈殿していた汚れは、排水タンク本体81の上面81Aに設けられた排出孔82(図6参照)から排出できる。そして、水道水が供給された給水タンク60及び空になった排水タンク80は、空気除菌装置1に再び設置される。
【0053】
検知手段によって空気除菌装置1に給水タンク60が設置されたことが検知されると、食塩水供給ポンプ98が駆動され、食塩水タンク95に貯留された飽和食塩水が供給管97を通って水受け皿42に自動で供給される。このとき、吸込みノズル97Aの入口97A1は、堆積した食塩から離れた位置に設けられているので、食塩を吸い込むことはなく、供給管97及び食塩水供給ポンプ98の食塩詰まり等を防止できる。なお、食塩水供給ポンプ98は、飽和食塩水を供給する際、飽和食塩水の1回あたりの滴下量が所定量、例えば約5mlとなるように制御部によって制御されている。供給ノズル97Dには、逆止弁97Eが設けられているため、飽和食塩水が切れよく滴下され、適当な量の食塩水が供給される。
【0054】
食塩水タンク95は密閉されているため、食塩水供給ポンプ98によって食塩水タンク95から飽和食塩水が汲み上げられると、食塩水タンク95内は負圧になる。また、取入管99の入口99B1は、水受け皿42内の電解水の水面より下方に位置しているので、水受け皿42内の電解水は、負圧によって取入管99から食塩水タンク95に取り入れられる。このように、食塩水供給ポンプ98を運転することで生じた負圧によって、電解水が水受け皿42から食塩水タンク95に供給されるので、水受け皿42から食塩水タンク95に電解水を取り入れるためのポンプを設ける必要がなく、部品点数を削減して製造工程を簡略化できる。
【0055】
食塩水タンク95内において、供給管97の入口97A1を前側に配置し、取入管99の出口99A1を後側に配置して、供給管97の入口97A1と、取入管99の出口99A1とを離間させたため、取入管99の出口99A1から食塩水タンク95内に入った塩素濃度の低い電解水は、供給管97の入口97A1から吸い込まれることがなく、飽和食塩水の生成に使用される。したがって、水受け皿42には、常に塩素濃度の高い飽和食塩水が供給される。
また、水受け皿42内において、供給管97の出口97D1を深底部42B1に配置し、取入管99の入口99B1を浅底部42B2に配置して、供給管97の出口97D1と、取入管99の入口99B1とを離間させたため、供給管97の出口97D1から水受け皿42に供給された飽和食塩水は、取入管99の入口99B1から吸い込まれることがなく、水受け皿42内の電解水に拡散する。
【0056】
電解槽46に供給される水は、塩素イオンを含む飽和食塩水が供給されることで、塩素イオンが増加するので、電気分解されると、この塩素イオンが上記式(3)及び(4)に示すように反応し、次亜塩素酸及び塩酸が生成される。このため、空気除菌装置1は、水道水の塩素濃度が低い地域で使用されても、安定して活性酸素種を生成し、十分な空気清浄効果(ウィルス等の不活化、殺菌、脱臭)を発揮することができる。
本実施の形態の空気除菌装置1は、電気分解する水の塩素イオンを増加させることで、電気分解時に電極47及び電極48の間に流す電流が小さくて済むので、効率的に活性酸素種を生成することができるとともに、電極47、48に生じる負荷が小さくなり、電極47、48を交換する頻度を少なくすることができる。
【0057】
受け皿42から食塩水タンク95に取り入れられる電解水の量は、食塩水タンク95から水受け皿42に供給した飽和食塩水の量と略同一であり、食塩水タンク95内の水面の高さは略一定に保持される。食塩水タンク95の下部には大量の食塩が堆積しているので、食塩水タンク95内に取り入れられた電解水を利用して飽和食塩水が生成され、食塩水タンク95内には、略一定量の飽和食塩水が貯留されることとなる。したがって、例えば利用者が給水タンク60に水道水を頻繁に供給し、飽和食塩水が頻繁に水受け皿42に供給される場合でも、空気除菌装置1のメンテナンス期間の間、飽和食塩水がなくなることはない。この飽和食塩水は、塩分濃度(重量パーセント)が約26%であり、菌の繁殖が抑制される濃度である20%より高いので、長期間保存されても菌の繁殖を防止できる。
【0058】
ところで、食塩水タンク95内に所定の濃度の食塩水を貯留する場合、その濃度を維持するためには、食塩水タンク95内の水分の蒸発を完全に防止する必要があり、食塩水タンク95を湿度の高い場所、例えば水回り空間22A2に配置しなければならない。本実施の形態の空気除菌装置1は、食塩が未溶解の状態の飽和食塩水を食塩水タンク95に貯留する構成としたことで、食塩水を所定の濃度に維持する必要がなく、食塩水タンク95を比較的湿度の低い下側の室23に配置できる。したがって、水回り空間22A2(上側の室22)に給水タンク60及び排水タンク80を配置できる。なお、食塩水タンク95は、密閉されているので、下側の室23に配置されても、食塩水タンク95内の水分の蒸発を抑制できる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンク95と、この食塩水タンク95から水受け皿42に飽和食塩水を供給する供給管97とを備えたため、水受け皿42内の電解水に飽和食塩水が自動的に供給されるので、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。また、食塩水タンク95には、飽和食塩水の水分に未溶解の食塩が入っており、供給した飽和食塩水の量の電解水を水受け皿42から食塩水タンク95に取り入れる取入管99が備えられるため、食塩水タンク95内の食塩と食塩水タンク95に取り入れた電解水とによって飽和食塩水を生成できるので、食塩水タンク95内の飽和食塩水の量を略一定に維持し、その結果、長期に亘って飽和食塩水を水受け皿42に供給できる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、食塩水タンク95は密閉型のタンクであり、食塩水タンク95から水受け皿42に飽和食塩水を汲み上げる食塩水供給ポンプ98を設け、この食塩水供給ポンプ98を運転することで生じた負圧によって、電解水が水受け皿42から食塩水タンク95に供給されるため、水受け皿42から食塩水タンク95に電解水を取り入れるためのポンプを必要としないので、部品点数を削減して製造工程を簡略化できる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、水受け皿42内で供給管97の出口97D1と取入管99の入口99B1を離間させたため、供給管97の出口97D1から水受け皿42に供給された飽和食塩水が取入管99の入口99B1から吸い込まれることが防止されるので、飽和食塩水が水受け皿42内の電解水に十分に拡散する。
【0062】
また、本実施の形態によれば、食塩水タンク95内で供給管97の入口97A1と取入管99の出口99A1を離間させたため、取入管99の出口99A1から食塩水タンク95内に取り入れられた塩素濃度の低い電解水が供給管97の入口97A1から吸い込まれることが防止されるので、塩素濃度の高い飽和食塩水を水受け皿42に供給できる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、水受け皿42に水を供給するための給水タンク60を上側の室22に配置し、給水タンク60が設置された際に、食塩水供給ポンプ98を運転するため、水受け皿42に供給された新たな水に食塩水が自動的に供給されるので、利用者の煩わしさを感じさせることがなく、電気分解が可能な塩素濃度を確保することができる。
【0064】
但し、上記実施の形態は本発明の一態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、空気除菌装置1は、給水タンク60が設置された際に飽和食塩水を水受け皿42に供給するように構成されていたが、これに限定されず、例えば所定の運転時間毎に飽和食塩水を水受け皿42に供給するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係る空気除菌装置の外観斜視図である。
【図2】空気除菌装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】空気除菌装置の内部構成を示す右側断面視図である。
【図4】電解水を生成し循環させる要部の構成を示す斜視図である。
【図5】給水タンク及び排水タンクを後方から示す断面図である。
【図6】図2の空気除菌装置を示す右側面図である。
【図7】食塩水タンクを示す断面図である。
【図8】電解水の循環経路を示す模式図である。
【図9】電解槽の構成を詳細に示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 空気除菌装置
11 筐体
21 支持板
22 上側の室
23 下側の室
31 送風ファン
42 水受け皿
44 循環ポンプ
46 電解槽
53 気液接触部材
60 給水タンク
95 食塩水タンク
97 供給管
97A1 入口
97D1 出口
98 食塩水供給ポンプ(ポンプ)
99 取入管
99A1 出口
99B1 入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水が供給される気液接触部材と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留すると共に前記気液接触部材から流下する電解水を受ける水受け皿と、前記水受け皿に貯留した電解水を汲み上げて再び前記気液接触部材に供給する循環ポンプと、前記気液接触部材に室内空気を送る送風ファンを備えた空気除菌装置において、
飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクと、この食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管と、供給した飽和食塩水の量の電解水を前記水受け皿から前記食塩水タンクに取り入れる取入管とを備えたことを特徴とする空気除菌装置。
【請求項2】
筐体内を支持板で上下に区分けし、前記筐体の上側の室に、電解槽と、前記電解槽によって生成された電解水が供給される気液接触部材と、前記電解槽によって生成された電解水を貯留すると共に前記気液接触部材から流下する電解水を受ける水受け皿と、前記水受け皿に貯留した電解水を汲み上げて再び前記気液接触部材に供給する循環ポンプとを備え、前記筐体の下側の室に、前記気液接触部材に室内空気を送る送風ファンを備えた空気除菌装置において、
飽和食塩水及び食塩を入れた食塩水タンクを前記下側の室に配置し、この食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を供給する供給管と、供給した飽和食塩水の量の電解水を前記水受け皿から前記食塩水タンクに取り入れる取入管とを備えたことを特徴とする空気除菌装置。
【請求項3】
前記食塩水タンクは密閉型のタンクであり、前記食塩水タンクから前記水受け皿に飽和食塩水を汲み上げるポンプを設け、このポンプを運転することで生じた負圧によって、電解水が前記水受け皿から前記食塩水タンクに供給されることを特徴とする請求項2に記載の空気除菌装置。
【請求項4】
前記供給管の出口と、前記取入管の入口とを離間させたことを特徴とする請求項2又は3に記載の空気除菌装置。
【請求項5】
前記供給管の入口と、前記取入管の出口とを離間させたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項6】
前記水受け皿に水を供給するための給水タンクを前記上側の室に配置し、前記給水タンクが設置された際に、前記ポンプを運転することを特徴とする請求項3に記載の空気除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−45564(P2011−45564A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197160(P2009−197160)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】