説明

空洞の充填方法

【課題】 トンネル背面に存在する空洞が大きく拡がっている場合に、空洞の所定範囲を限定的に充填することが可能な充填方法を提供する。
【解決手段】トンネルTを適宜の工法で掘削し、坑内に支保工5を架設する。次いで、空洞Vの底付近に位置する矢板3に孔をあける等して、支保工5背面の空洞Vに向けて所定長さの帯状の袋体10を突出させ、袋体10の口元部を支保工5に固定する。そして、袋体10内に発泡ウレタンを注入して発泡膨脹させ、所定長・所定径を有する緩衝体1を空洞Vの所定範囲Rに形成する。引き続き、トンネルTの両側壁部から天端部に向けて空洞Vの所定範囲Rに緩衝体1を形成していき、緩衝体1の束からなる緩衝ゾーンを空洞Vの所定範囲Rに構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞の充填方法に関し、特に、トンネル背面に存在する空洞を限定的に充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、 トンネル掘削工事あるいは既設トンネルの補修工事では、 トンネル背面に存在する空洞 に充填材 を充填して トンネル背面 の地山 の強化を図ることが行われている(例えば、特許文献1〜3参照) 。
【特許文献1】特許第3447529号公報
【特許文献2】特許第3447530号公報
【特許文献3】特許第3492501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
旧鉱山地域のトンネル掘削では、採鉱跡である廃止坑道と遭遇したり、廃止坑道の近傍を掘削することがある。このような場合、廃止坑道のような大きな空洞を完全に充填すると工期および工費が掛かるため、空洞の所定範囲について限定的に充填することが望まれる。しかし、空洞が大きく拡がっている場合、特許文献1〜3に記載されているような従来の充填方法では充填材が逸散し、空洞の所定範囲を限定的に充填することは難しい。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、 トンネル背面に存在する空洞が大きく拡がっている場合に、空洞の所定範囲を限定的に充填することが可能な充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、 トンネル背面に存在する空洞を限定的に充填する方法であって、トンネル支保工から前記空洞に向けて突出させた所定長さを有する袋体の内部に充填材を充填して緩衝体を形成する作業を、トンネル側壁部から天端部に向けて順次実施し、前記空洞の所定範囲に前記緩衝体の束からなる緩衝ゾーンを形成することを特徴とする。
本発明では、所定長さを有する袋体内に充填材を充填して形成した緩衝体を空洞の所定範囲に束状に配設するので、空洞内に隔壁などを構築しないと空洞内の充填ができないような、空洞が大きく拡がっているような場合でも、空洞の所定範囲を限定的に充填することが可能である。しかも、緩衝体の束が空洞上部からの落石を受け止めるので落石防護工としても機能する。
【0006】
また、本発明では、前記充填材が発泡ウレタンとされていることを好適とする。
発泡ウレタンは、降伏後の変形量が非常に大きく、耐衝撃性に優れている。また、耐久性にも優れているうえ、注入管を用いて袋体内に注入することができるので施工も容易である。
【0007】
また、本発明では、前記袋体は当該袋体内に芯材を備えることを好適とする。
袋体内に芯材を配設しておくことにより袋体同士が絡み合わず、充填材の充填作業が容易となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空洞の充填方法では、所定長さを有する袋体内に充填材を充填して形成した緩衝体を空洞の所定範囲に束状に配設するので、空洞が大きく拡がっている場合でも空洞の所定範囲を限定的に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る空洞の充填方法について図面に基づいて説明する。
図1〜図3に、本充填方法を説明するためのトンネル軸直交方向の平断面図を示す。ここでは、廃止坑道と交差するように廃止坑道の下部にトンネルが築造される場合について説明する。
【0010】
先ず、トンネルTを適宜の工法で掘削し、坑内に支保工5を架設する。支保工5は、トンネル軸方向に所定の間隔をおいてトンネル軸直交方向に配設されるアーチ状の鋼製支保工2と、吹付けコンクリート4とから構成される。
廃止坑道(以下、空洞Vと呼ぶ。)部分では、トンネルTの上方に地山Gが無いので支保工5を設置しなくてもよいのであるが、後で充填作業を行う際に袋体10を支保工5に固定する必要があるため、また空洞V上部からの落石防護のため、アーチ状の鋼製支保工2と、鋼製支保工2、2間に架け渡される帯状の矢板3とからなる支保工5を設置しておく。
【0011】
次いで、空洞Vの底付近に位置する矢板3に孔をあける等して、支保工5背面の空洞Vに向けて所定長さの帯状の袋体10を突出させ、袋体10の口元部を支保工5に固定する。
ここで、袋体10としては、布パッカー(グラウトジャケット)や布製型枠(コンクリートマット)などを利用することができる。
【0012】
そして、袋体10内に発泡ウレタンを注入して発泡膨脹させ、所定長・所定径を有する緩衝体1を空洞Vの所定範囲Rに形成する。因みに、本実施形態における緩衝体1は直径600mm、長さ3000mm程度の円柱状とされている。
【0013】
図4は、袋体10内に発泡ウレタン14を注入する方法を示したものである。
袋体10内には、袋体10とほぼ同じ長さを有する棒状の芯材12が挿入されており、芯材12の一端は口元部11で固定され、他端には拡径部12aが形成されている。このような袋体10内に口元部11から注入管13を差し込み、注入管13から発泡ウレタン14を吐出して袋体10内に発泡ウレタン14を充填する。
【0014】
発泡ウレタン14の発泡倍率は30〜50倍、ゲルタイム(流動性が無くなるまでの時間)は1〜2分程度であり、空洞V内で急速に発泡硬化する。また、降伏後の歪は約5〜80%と非常に大きく、空洞V上部からの落石による衝撃を容易に吸収することができる。加えて、耐久性にも優れているうえ、注入管13を用いて袋体10内に注入することができるので施工も容易である。
【0015】
さて、空洞Vの底付近に緩衝体1が形成されると、その上部の矢板3に孔をあける等して、支保工5背面の空洞Vに向けて袋体10を突出させ、袋体10の口元部を支保工5に固定する。そして、袋体10内に発泡ウレタンを注入して発泡膨脹させ、既に形成された緩衝体1の上方に所定長・所定径を有する緩衝体1を新たに形成する。
【0016】
以上の手順をトンネルTの両側壁部から天端部に向けて順次実施し、空洞Vの所定範囲Rに緩衝体1の束からなる緩衝ゾーンを形成するのである。
【0017】
本実施形態による空洞の充填方法では、所定長さの帯状の袋体10内に発泡ウレタン14を注入して形成した緩衝体1を空洞Vの所定範囲Rに束状に配設するので、空洞V内に隔壁などを構築しないと空洞V内の充填ができないような、空洞Vが大きく拡がっているような場合でも、空洞Vの所定範囲Rを限定的に充填することが可能である。しかも、緩衝体1の束が空洞V上部からの落石を受け止めるので落石防護工としても機能する。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、芯材は棒状部材としたがこれに限定されるものではなく、螺旋状など他の形状をしたものでもよい。要は、本発明において所期の機能が得られればよいのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る空洞の充填方法を説明するためのトンネル軸直交方向の平断面図である。
【図2】本発明に係る空洞の充填方法を説明するためのトンネル軸直交方向の平断面図である。
【図3】図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】袋体内に発泡ウレタンを注入する方法を示した説明図であり、(a)は発泡ウレタン注入前、(b)は発泡ウレタン注入時の状態である。
【符号の説明】
【0020】
1 緩衝体
2 鋼製支保工
3 矢板
4 吹付けコンクリート
5 支保工
10 袋体
11 口元部
12 芯材
12a 拡径部
13 注入管
14 発泡ウレタン
T トンネル
V 空洞
R 所定範囲
G 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル背面に存在する空洞を限定的に充填する方法であって、
トンネル支保工から前記空洞に向けて突出させた所定長さを有する袋体の内部に充填材を充填して緩衝体を形成する作業を、トンネル側壁部から天端部に向けて順次実施し、前記空洞の所定範囲に前記緩衝体の束からなる緩衝ゾーンを形成することを特徴とする空洞の充填方法。
【請求項2】
前記充填材が発泡ウレタンとされていることを特徴とする請求項1に記載の空洞の充填方法。
【請求項3】
前記袋体は当該袋体内に芯材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の空洞の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−146522(P2007−146522A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343393(P2005−343393)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000230788)日本基礎技術株式会社 (15)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】