空洞共振器
【課題】分散補償効果の向上あるいはアライメント性の向上を図ることができる空洞共振器を提供する。
【解決手段】空洞共振器10は、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、平板150とを備え、前記第1のプリズム110の主面111と、前記第2のプリズム120の主面121とは、略平行である。前記第1のプリズム110と前記第2のプリズム120と前記平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されいる。
【解決手段】空洞共振器10は、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、平板150とを備え、前記第1のプリズム110の主面111と、前記第2のプリズム120の主面121とは、略平行である。前記第1のプリズム110と前記第2のプリズム120と前記平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空洞共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、互いに対向して配置された一対のプリズムを有するリング型の空洞共振器が知られている。空洞共振器では、光源へ戻る光の影響が比較的少ない。また、空洞共振器内への光の入射率がブリュースター角(Brewster's angle)近傍の角度調整によって行われ、空洞共振器内に入射した光は、プリズムの反射面において全反射される。これにより、空洞共振器は、共振器内部損失を抑えることができる。
ここで、空洞共振器に対しては、光の波長に応じて光路が分散することを抑える分散補償効果の向上が望まれている。あるいは、プリズムへの入射角度をブリュースター角近傍に調整する場合におけるプリズムなどのアライメントの容易性が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4195551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、分散補償効果の向上あるいはアライメント性の向上を図ることができる空洞共振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、第1のプリズムと、第2のプリズムと、平板と、を備えた空洞共振器が提供される。前記第1のプリズムは、光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する。前記第2のプリズムは、前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する。前記平板は、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能である。前記第1の主面と前記第2の主面とは、互いに平行に対向して配置されている。前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記平板とは、ブリュースター角で光路が合うように配置されて相対的に固定されている。外部から入射され前記平板で反射された光は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図2】入射角度とp偏光の強度反射率との関係の一例を例示するグラフ図である。
【図3】共振器内部損失とエンハンス率(増幅率)との関係の一例を例示するグラフ図である。
【図4】本実施形態の比較例にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図7】本実施形態の比較例にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【図8】本実施形態にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
また、図2は、入射角度とp偏光の強度反射率との関係の一例を例示するグラフ図である。
また、図3は、共振器内部損失とエンハンス率(増幅率)との関係の一例を例示するグラフ図である。
なお、図1(a)は、空洞共振器10内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図1(b)は、空洞共振器10内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0008】
本実施形態にかかる空洞共振器10は、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、第1の平板150と、共振器長調整部180と、を備える。第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、互いに対向して配置され対をなしている。
【0009】
第1のプリズム110は、主面111と、第1の反射面113と、第2の反射面115と、稜線117と、を有する。空洞共振器10内に入射した光は、第1のプリズム110の主面111を介して第1のプリズム110の内部に入射したり、あるいは第1のプリズム110の外部に出射したりする。第1の反射面113と第2の反射面115とは、互いに直角に配置されている。言い換えれば、第1の反射面113と、第2の反射面115と、がなす角度は、90度である。稜線117は、第1の反射面113と第2の反射面115とが交わることで形成される線(交線)である。
【0010】
第2のプリズム120は、主面121と、第1の反射面123と、第2の反射面125と、稜線127と、を有する。空洞共振器10内に入射した光は、第2のプリズム120の主面121を介して第2のプリズム120の内部に入射したり、あるいは第2のプリズム120の外部に出射したりする。第1の反射面123と第2の反射面125とは、互いに直角に配置されている。言い換えれば、第2の反射面123と、第2の反射面125と、がなす角度は、90度である。稜線127は、第1の反射面123と第2の反射面125とが交わることで形成される線(交線)である。
【0011】
第1の反射面113、第2の反射面115、第1の反射面123、および第2の反射面125の少なくともいずれかは、空洞共振器10が安定共振器となるような所定の曲率半径を有する曲面である。一般的に、空洞共振器内における1周分の光路長(共振器長)を「L」、空洞共振器が有するミラーの曲率半径を「R1」および「R2」とするとき、空洞共振器は、次の式を満たすと安定共振器となる。
0<(1−L/R1)×(1−L/R2)<1
本実施形態では、例えば、空洞共振器10の共振器長Lが約1m(メートル)程度である場合に、第1の反射面113に約5m(メートル)程度の曲率半径を形成することで空洞共振器10を安定化させることができる。あるいは、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路にレンズを配置することで、空洞共振器10を安定化させることもできる。これらは、図4〜図6および図9〜図12に関して後述する実施形態の空洞共振器においても同様である。
【0012】
第1の平板150は、第1の主面151と、第1の主面151に対向する第2の主面152と、を有する。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光(入力光)A1の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10内に入射させることができる。共振器長調整部180は、第1のプリズム110の位置の調整(アライメント)を行い、共振器長を調整することができる。
【0013】
本実施形態にかかる空洞共振器10では、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121とは、略平行である。図1(a)に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されている。つまり、第1のプリズム110の主面111と、第2のプリズム120の主面121と、第1の平板150の第1の主面151と、は、空洞共振器10内の光路に対してブリュースター角θbとなるように配置されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、相対的に固定されている。
【0014】
図2に表したように、光が屈折率の異なる物質の界面にブリュースター角θbで入射すると、p偏光の強度反射率は、略ゼロとなる。一方、光が屈折率の異なる物質の界面にブリュースター角θbとは異なる角度で入射すると、p偏光の強度反射率は、ゼロとはならない。そして、光の入射角度がブリュースター角θbから外れるほど、p偏光の強度反射率は増加していく。ここで、本願明細書において「p偏光」とは、反射面(境界面)に垂直な面であって入射光および反射光を含む面(入射面)に平行に振動する偏光成分をいうものとする。また、本願明細書において「s偏光」とは、反射面(境界面)に垂直な面であって入射光および反射光を含む面(入射面)に垂直に振動する偏光成分をいうものとする。
【0015】
そのため、図1(a)に表した状態では、図示しない光源から照射された光A1が第1の平板150で反射された光A2は、p偏光をほとんど含まない。第1の平板150で反射された光A2は、第1のプリズム110の主面111を透過し、第1のプリズム110の内部に入射する。このとき、光A2は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A2は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。そのため、第1の反射面113および第2の反射面115において、光A2の損失は、ほとんど生じない。
【0016】
第2の反射面115で全反射された光A2は、第1のプリズム110に入射した光A2に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A3)。このとき、光A3は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0017】
第1のプリズム110の外部に出射した光A3は、第2のプリズム120の主面121を透過し、第2のプリズム120の内部に入射する。このとき、光A3は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A3は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。そのため、第1の反射面123および第2の反射面125において、光A3の損失は、ほとんど生じない。
【0018】
第2の反射面125で全反射された光A3は、第2のプリズム120に入射した光A3に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A4)。このとき、光A4は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0019】
第2のプリズム120の外部に出射した光A4の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10の外部に出力される(出力光A5)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A4の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A1の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10内に入射した光は、空洞共振器10内を周回することで干渉し増幅される。言い換えれば、空洞共振器10内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。すなわち、第1のプリズム110および第2のプリズム120により空洞共振器10の内部に閉じ込められた光は、空洞共振器10の内部において増幅される。
【0020】
ここで、空洞共振器10内への光の入射率の調整について説明する。
例えば、図1(a)に表した状態よりも空洞共振器10内への光の入射率を増加させる場合には、光が空洞共振器10内に入射する角度をブリュースター角θbからずらす。光が空洞共振器10内に入射する角度をブリュースター角θbからずらすと、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する(図2参照)。これにより、空洞共振器10内への光の入射率を増加させることができる。
【0021】
図3に例示したグラフ図のように、空洞共振器10のエンハンス率は、空洞共振器10の内部損失αに応じて変化する。また、p偏光の強度反射率に応じて、内部損失αとエンハンス率との関係は異なる。なお、内部損失αとエンハンス率との関係は、図3に例示したグラフ図に限定されるわけではない。
【0022】
そのため、空洞共振器10内への光の入射率を調整する場合には、空洞共振器10の内部損失αに応じて光の入射角度をブリュースター角θbからずらす必要がある。このとき、第1のプリズム110および第2のプリズム120の少なくともいずれかのアライメントが困難となる場合がある。これについて、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図4は、本実施形態の比較例にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図4(a)は、空洞共振器10a内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図4(b)は、空洞共振器10a内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0024】
本比較例にかかる空洞共振器10aは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して第1の平板150を備えていない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0025】
図示しない光源から照射された光A11の一部は、第2のプリズム120の主面121で反射される。このとき、光A11は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。第2のプリズム120の主面121で反射された光A12は、図1(a)に関して前述したように、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射し、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A12は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する(光A13)。第1のプリズム110の外部に出射した光A13は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。このとき、光A13の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10aの外部に出力される(光A14)。
【0026】
一方、光A13の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10a内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0027】
ここで、図4(b)に表したように、本比較例にかかる空洞共振器10a内への光の入射率を調整するために、第2のプリズム120を矢印B2の方向に回転させ、光A11が空洞共振器10a内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、第2のプリズム120を矢印B2の方向に回転させることで、空洞共振器10a内への光の入射率を増加させることができる。
【0028】
しかしながら、第2のプリズム120の主面121における反射角度がブリュースター角θbからずれるため、図4(b)に表した状態における空洞共振器10a内の光路は、図4(a)に表した状態における空洞共振器10a内の光路からずれる。そのため、空洞共振器10a内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10aの内部において増幅させるためには、共振器長調整部180により第1のプリズム110の位置を調整する必要がある。
【0029】
例えば、図4(b)に表したX方向、Y方向、ならびにX方向およびY方向に垂直な方向(Z方向)の軸を中心とした回転方向の調整が、第1のプリズム110において必要となる場合がある。つまり、調整を必要とする方向が比較的多い。なお、本願明細書において「X方向」とは、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を進行する光の光路(例えば図4では光12および光13の光路)と平行な方向をいうものとする。また、本願明細書において「Y方向」とは、X方向に垂直な方向であって入射面に含まれる方向をいうものとする。
【0030】
また、空洞共振器10aの内部において光を増幅させるためには、より高い精度のアライメントが求められる。そのため、本比較例にかかる空洞共振器10a内への光の入射率を調整すると、第1のプリズム110および第2のプリズム120の少なくともいずれかのアライメントが困難となる場合がある。
【0031】
これに対して、本実施形態にかかる空洞共振器10は、図1に関して前述したように、第1の平板150を備える。第1の平板150は、図示しない光源から照射された光A1の一部を第1の主面151において反射し、空洞共振器10内に入射させることができる。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置され、相対的に固定されている。そのため、図1(b)に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150との相対的な位置を維持しつつ、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させることができる。
【0032】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111および第2のプリズム120の主面121における入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A1が空洞共振器10内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させることで、空洞共振器10内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10内への光の入射率を調整することができる。
【0033】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150との相対的な位置が維持されるため、矢印B1の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10の内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0034】
図5は、本発明の他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図5(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図5(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図5(a)は、図5(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0035】
本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交するように、第1のプリズム110および第2のプリズム120が配置されている。また、図5(a)に表した空洞共振器10bの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、上方である。図5(b)に表した空洞共振器10bの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。
【0036】
本実施形態にかかる空洞共振器10bは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して1/2波長板160をさらに備える。1/2波長板160は、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置され、透過する光の偏光方向を任意の角度に回転させることができる。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0037】
図5(b)に表した矢印B7のように、Z方向を軸として第1の平板150を回転させ、図示しない光源から照射された光A21が空洞共振器10b内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第1の平板150を回転させることで、空洞共振器10b内への光の入射率を増加させることができる。
【0038】
第1の平板150で反射された光A22は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A22の偏光方向が回転する。そのため、第1の平板150で反射された光A22のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A22は、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A22は、第1のプリズム110に入射した光A22に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A23)。このとき、光A22は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0039】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A22および光A23は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A23は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A22と重複した光路を進行する。
【0040】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A23は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A23の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A23のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A23は、第2の反射面125および第1の反射面123で順次に全反射される。続いて、第1の反射面123で全反射された光A23は、第2のプリズム120に入射した光A23に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A24)。このとき、光A23は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0041】
なお、説明の便宜上、図5(a)に表した光A23および光A24は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A24は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A23と重複した光路を進行する。
【0042】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A24は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A24の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121から出射した光A24のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A24は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A24は、第1のプリズム110に入射した光A24に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A25)。このとき、光A24は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0043】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A24および光A25は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A25は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A24と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図5(a)に表した光A22および光A25は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A25は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A22と重複した光路を進行する。
【0044】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A25は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A25の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A25のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A25は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。続いて、第2の反射面125で全反射された光A25は、第2のプリズム120に入射した光A25に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A26)。このとき、光A25は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0045】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A23および光A26は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A26は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A23と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図5(a)に表した光A25および光A26は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A26は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A25と重複した光路を進行する。
【0046】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A26の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10bの外部に出力される(光A26)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A26の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A21の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10b内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10b内を周回することで干渉し増幅される。
【0047】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のそれぞれが直交する方向の光軸ずれを補償することができる。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第1の平板150を矢印B7の方向に調整するだけで、空洞共振器10b内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、偏光方向を任意の角度に回転させる一例として1/2波長板160を挙げたが、これだけに限定されるわけではない。1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0049】
図6は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。 本実施形態にかかる空洞共振器10cは、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、共振器長調整部180と、を備える。一方、本実施形態にかかる空洞共振器10cは、図1に関して前述した第1の平板150を備えていない。図6に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。つまり、本実施形態にかかる空洞共振器10cでは、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121とは、平行ではない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0050】
図6に表した矢印B3のように、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させ、図示しない光源から照射された光A31が空洞共振器10c内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させることで、空洞共振器10c内への光の入射率を増加させることができる。この際、第1のプリズム110の位置を調整する必要がある。
【0051】
図示しない光源から照射された光A31の一部は、第2のプリズム120の主面121で反射される。このとき、光A31は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。第2のプリズム120の主面121で反射された光A32は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射し、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A32は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する(光A33)。第1のプリズム110の外部に出射した光A33は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。このとき、光A33の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10cの外部に出力される(光A34)。
【0052】
一方、光A33の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10c内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0053】
本実施形態によれば、第1のプリズム110と第2のプリズム120とがX方向に垂直な面に対して対称となるように配置されているため、空洞共振器10c内の光路が光の波長に応じて分散することを抑えることができる(分散補償効果)。これについて、図面を参照しつつさらに説明する。
【0054】
図7は、本実施形態の比較例にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
また、図8は、本実施形態にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【0055】
なお、図7(a)は、設計波長を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。図7(b)は、設計波長とは異なる波長を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。
また、図8(a)は、設計波長を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。図8(b)は、設計波長とは異なる波長を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。
また、図7および図8に表した空洞共振器10a、10cでは、共振器長調整部180を省略している。
【0056】
例えば、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率が変わると、空洞共振器内における光路が変わる。また、空洞共振器内に入射する光の波長に対する屈折率の変化がより大きい場合には、空洞共振器内における光路の変化がより大きい。そのため、より広いスペクトル幅を有する光が空洞共振器に入射すると、その光は空洞共振器内で分散する場合がある。これにより、共振が生じにくくなる場合がある。
【0057】
第1のプリズム110と第2のプリズム120との配置関係がX方向に垂直な面に対して対称でない場合には(図4参照)、分散補償効果は、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率に依存する。そのため、図7(a)に表したように、設計波長(例えば約7μm程度)を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射すると、その光はほとんど分散しない。一方、図7(b)に表したように、設計波長とは異なる波長(例えば約8μm程度)を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射すると、その光は分散する。これにより、共振が生じにくくなる。
【0058】
これに対して、第1のプリズム110と第2のプリズム120とがX方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている場合には、分散補償効果は、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率にほとんど影響されない。そのため、図8(b)に表したように、設計波長とは異なる波長(例えば約8μm程度)を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射した場合でも、その光はほとんど分散しない。図8(a)に表したように、設計波長(例えば約7μm程度)を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射した場合でも同様である。
【0059】
本実施形態によれば、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0060】
図9は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。 なお、図9(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図9(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図9(a)は、図9(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0061】
本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交するように、第1のプリズム110および第2のプリズム120が配置されている。また、図9(a)に表した空洞共振器10dの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。図9(b)に表した空洞共振器10dの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。本実施形態にかかる空洞共振器10dは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して1/2波長板160をさらに備える。一方、本実施形態にかかる空洞共振器10dは、図1に関して前述した第1の平板150を備えていない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0062】
図9(b)に表した矢印B4のように、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させ、図示しない光源から照射された光A41が空洞共振器10d内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させることで、空洞共振器10d内への光の入射率を増加させることができる。
【0063】
第2のプリズム120の主面121で反射された光A42は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A42の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121で反射された光A42のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A42は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A42は、第1のプリズム110に入射した光A42に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A43)。このとき、光A42は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0064】
なお、説明の便宜上、図9(b)に表した光A42および光A43は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A43は、空洞共振器10dをZ方向にみたときに光A42と重複した光路を進行する。
【0065】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A43は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A43の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A43のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A43は、第2の反射面125および第1の反射面123で順次に全反射される。続いて、第1の反射面123で全反射された光A43は、第2のプリズム120に入射した光A43に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A44)。このとき、光A43は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0066】
なお、説明の便宜上、図9(a)に表した光A43および光A44は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A44は、空洞共振器10dをY方向にみたときに光A43と重複した光路を進行する。
【0067】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A44は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A44の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121から出射した光A44のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A44は、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A44は、第1のプリズム110に入射した光A44に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A45)。このとき、光A44は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0068】
なお、説明の便宜上、図9(b)に表した光A44および光A45は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A45は、空洞共振器10dをZ方向にみたときに光A44と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図9(a)に表した光A42および光A45は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A45は、空洞共振器10dをY方向にみたときに光A42と重複した光路を進行する。
【0069】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A45は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A45の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A45のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、光A45の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10dの外部に出力される(光A46)。
【0070】
一方、光A45の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10d内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10d内を周回することで干渉し増幅される。
【0071】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、図5に関して前述したように、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第2のプリズム120を矢印B4の方向に調整するだけで、空洞共振器10d内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0072】
前述したように、図9(a)に表した空洞共振器10dの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。また、図9(b)に表した空洞共振器10dの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0073】
なお、図5に関して前述したように、1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0074】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図10(a)は、空洞共振器10e内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図10(b)は、空洞共振器10e内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0075】
本実施形態にかかる空洞共振器10eは、図6に関して前述した空洞共振器10cと比較して第1の平板150をさらに備える。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光A51の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10e内に入射させることができる。本実施形態にかかる空洞共振器10eでは、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、相対的に固定されている。つまり、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して、第1のプリズム110および第2のプリズム120と、第1の平板150と、が相対的に固定されているわけではない。その他の構造は、図6に関して前述した空洞共振器10cの構造と同様である。
【0076】
第1の平板150で反射された光A52は、第1のプリズム110の主面111を透過し、第1のプリズム110の内部に入射する。このとき、光A52は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A52が光A53として第1のプリズム110の主面111から出射し、第2のプリズム120の主面121に入射するまでの光路は、図6に関して前述した光A32および光A33の光路と同様である。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A53が光A54として第2のプリズム120の主面121から出射し、第1の平板150の第2の主面152に入射するまでの光路は、図1に関して前述した光A3および光A4の光路と同様である。
【0077】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A54の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10eの外部に出力される(光A55)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A54の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A51の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10e内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0078】
前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、相対的に固定されている。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120との相対的な位置を維持しつつ、図10(b)に表した矢印B5のように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とをZ方向を軸として回転させることができる。
【0079】
本実施形態にかかる空洞共振器10e内への光の入射率を調整するために、第1のプリズム110と第2のプリズム120を矢印B5の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111および第2のプリズム120の主面121における入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A51が空洞共振器10e内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120とを矢印B5の方向に回転させることで、空洞共振器10e内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10e内への光の入射率を調整することができる。
【0080】
第1のプリズム110と第2のプリズム120との相対的な位置が維持されるため、矢印B5の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10e内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10e内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10eの内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10e内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0081】
図11は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図11(a)は、空洞共振器10f内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図11(b)は、空洞共振器10f内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0082】
本実施形態にかかる空洞共振器10fは、図10に関して前述した空洞共振器10eと比較して第2の平板170をさらに備える。第2の平板170は、第1の主面171と、第1の主面171に対向する第2の主面172と、を有する。第2の平板170は、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置されている。第1の平板150と第2の平板170とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。
【0083】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150と第2の平板170とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されている。つまり、第1のプリズム110の主面111と、第2のプリズム120の主面121と、第1の平板150の第1の主面151と、第2の平板170の第1の主面171と、は、空洞共振器10f内の光路に対してブリュースター角θbとなるように配置されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とは、相対的に固定されている。その他の構造は、図10に関して前述した空洞共振器10eの構造と同様である。
【0084】
一般的に、光は、異なる媒質の境界で屈折する。そのため、空洞共振器内に入射した光は、第1の平板150を透過すると屈折する。そのため、第1の平板150を備える空洞共振器10e(図10参照)の内部における光路は、第1の平板150を備えていない空洞共振器10c(図6参照)の内部における光路からずれている。
【0085】
これに対して、本実施形態にかかる空洞共振器10fは、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置された第2の平板170を備える。第1の平板150と第2の平板170とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。そのため、第2の平板170は、第2の平板170に入射する光(例えば、図11(a)に表した光A62)を屈折させ、第1の平板150に入射する光(例えば、図11(a)に表した光A64)の光路に戻すことができる。
【0086】
図示しない光源から照射された光A61の一部は、第1の平板150の第1の主面151において反射して空洞共振器10f内に入射する。第1の平板150で反射された光A62は、第2の平板170の第1の主面171にブリュースター角θbで入射する。第2の平板170を透過する光A62は、第1の主面171および第2の主面172において屈折し、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、光A62〜光A64の光路は、図10に関して前述した光A52〜光A54の光路と同様である。
【0087】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A64の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10fの外部に出力される(光A65)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A64の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A61の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10f内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0088】
ここで、本実施形態にかかる空洞共振器10fは、第2の平板170を備える。そのため、第2のプリズム120の外部に出射した光A64は、第1の平板150を透過することで屈折し光路が移動しても、第2の平板170を透過することで屈折し第1の平板150を透過する前の光A64の光路に戻る。これにより、ブリュースター角θbが比較的大きく、また第1の平板150による光路のずれ(光路の移動)が比較的大きい場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0089】
前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とは、相対的に固定されている。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170との相対的な位置を維持しつつ、図11(b)に表した矢印B6のように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とをZ方向を軸として回転させることができる。
【0090】
本実施形態にかかる空洞共振器10f内への光の入射率を調整するために、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とを矢印B6の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121と第2の平板170の第1の主面171とにおける入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A61が空洞共振器10f内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とを矢印B6の方向に回転させることで、空洞共振器10f内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10f内への光の入射率を調整することができる。
【0091】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170との相対的な位置が維持されるため、矢印B6の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10f内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10f内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10fの内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10f内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0092】
なお、本実施形態の第2の平板170は、本実施形態にかかる空洞共振器10fだけに限定されず、第1の平板150を備える空洞共振器10、10b、10e(図1、図5、図10参照)に設けられてもよい。また、第2の平板170は、図12に関して後述する空洞共振器10gに設けられてもよい。図1に関して前述した空洞共振器10が第2の平板170を備える場合には、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150と第2の平板170とが相対的に固定される。これらの場合においても、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0093】
図12は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図12(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図12(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図12(a)は、図12(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0094】
本実施形態にかかる空洞共振器10gは、図9に関して前述した空洞共振器10dと比較して第1の平板150をさらに備える。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光A71の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10g内に入射させることができる。その他の構造は、図9に関して前述した空洞共振器10dの構造と同様である。
【0095】
図12(b)に表した矢印B8のように、Z方向を軸として第1の平板150を回転させ、図示しない光源から照射された光A71が空洞共振器10g内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第1の平板150を回転させることで、空洞共振器10g内への光の入射率を増加させることができる。
【0096】
第1の平板150で反射された光A72は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A72の偏光方向が回転する。そのため、第1の平板150で反射された光A72のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、光A72〜光A75の光路は、図9に関して前述した光A42〜A45の光路と同様である。
【0097】
続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A75は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。続いて、第2の反射面125で全反射された光A75は、第2のプリズム120に入射した光A75に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A76)。このとき、光A75は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0098】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A76の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10gの外部に出力される(光A76)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A76の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A71の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10g内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10g内を周回することで干渉し増幅される。
【0099】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のそれぞれが直交する方向の光軸ずれを補償することができる。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第1の平板150を矢印B8の方向に調整するだけで、空洞共振器10g内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、空洞共振器10g内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0100】
また、図12(a)に表した空洞共振器10gの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。図12(b)に表した空洞共振器10gの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。そのため、図9に関して前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0101】
なお、図5に関して前述したように、1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g 空洞共振器、 110 第1のプリズム、 111 主面、 113 第1の反射面、 115 第2の反射面、 117 稜線、 120 第2のプリズム、 121 主面、 123 第1の反射面、 125 第2の反射面、 127 稜線、 150 第1の平板、 151 第1の主面、 152 第2の主面、 160 1/2波長板、 170 第2の平板、 171 第1の主面、 172 第2の主面、 180 共振器長調整部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空洞共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、互いに対向して配置された一対のプリズムを有するリング型の空洞共振器が知られている。空洞共振器では、光源へ戻る光の影響が比較的少ない。また、空洞共振器内への光の入射率がブリュースター角(Brewster's angle)近傍の角度調整によって行われ、空洞共振器内に入射した光は、プリズムの反射面において全反射される。これにより、空洞共振器は、共振器内部損失を抑えることができる。
ここで、空洞共振器に対しては、光の波長に応じて光路が分散することを抑える分散補償効果の向上が望まれている。あるいは、プリズムへの入射角度をブリュースター角近傍に調整する場合におけるプリズムなどのアライメントの容易性が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4195551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、分散補償効果の向上あるいはアライメント性の向上を図ることができる空洞共振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様によれば、第1のプリズムと、第2のプリズムと、平板と、を備えた空洞共振器が提供される。前記第1のプリズムは、光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する。前記第2のプリズムは、前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する。前記平板は、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能である。前記第1の主面と前記第2の主面とは、互いに平行に対向して配置されている。前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記平板とは、ブリュースター角で光路が合うように配置されて相対的に固定されている。外部から入射され前記平板で反射された光は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図2】入射角度とp偏光の強度反射率との関係の一例を例示するグラフ図である。
【図3】共振器内部損失とエンハンス率(増幅率)との関係の一例を例示するグラフ図である。
【図4】本実施形態の比較例にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図7】本実施形態の比較例にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【図8】本実施形態にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【図12】本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
また、図2は、入射角度とp偏光の強度反射率との関係の一例を例示するグラフ図である。
また、図3は、共振器内部損失とエンハンス率(増幅率)との関係の一例を例示するグラフ図である。
なお、図1(a)は、空洞共振器10内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図1(b)は、空洞共振器10内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0008】
本実施形態にかかる空洞共振器10は、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、第1の平板150と、共振器長調整部180と、を備える。第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、互いに対向して配置され対をなしている。
【0009】
第1のプリズム110は、主面111と、第1の反射面113と、第2の反射面115と、稜線117と、を有する。空洞共振器10内に入射した光は、第1のプリズム110の主面111を介して第1のプリズム110の内部に入射したり、あるいは第1のプリズム110の外部に出射したりする。第1の反射面113と第2の反射面115とは、互いに直角に配置されている。言い換えれば、第1の反射面113と、第2の反射面115と、がなす角度は、90度である。稜線117は、第1の反射面113と第2の反射面115とが交わることで形成される線(交線)である。
【0010】
第2のプリズム120は、主面121と、第1の反射面123と、第2の反射面125と、稜線127と、を有する。空洞共振器10内に入射した光は、第2のプリズム120の主面121を介して第2のプリズム120の内部に入射したり、あるいは第2のプリズム120の外部に出射したりする。第1の反射面123と第2の反射面125とは、互いに直角に配置されている。言い換えれば、第2の反射面123と、第2の反射面125と、がなす角度は、90度である。稜線127は、第1の反射面123と第2の反射面125とが交わることで形成される線(交線)である。
【0011】
第1の反射面113、第2の反射面115、第1の反射面123、および第2の反射面125の少なくともいずれかは、空洞共振器10が安定共振器となるような所定の曲率半径を有する曲面である。一般的に、空洞共振器内における1周分の光路長(共振器長)を「L」、空洞共振器が有するミラーの曲率半径を「R1」および「R2」とするとき、空洞共振器は、次の式を満たすと安定共振器となる。
0<(1−L/R1)×(1−L/R2)<1
本実施形態では、例えば、空洞共振器10の共振器長Lが約1m(メートル)程度である場合に、第1の反射面113に約5m(メートル)程度の曲率半径を形成することで空洞共振器10を安定化させることができる。あるいは、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路にレンズを配置することで、空洞共振器10を安定化させることもできる。これらは、図4〜図6および図9〜図12に関して後述する実施形態の空洞共振器においても同様である。
【0012】
第1の平板150は、第1の主面151と、第1の主面151に対向する第2の主面152と、を有する。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光(入力光)A1の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10内に入射させることができる。共振器長調整部180は、第1のプリズム110の位置の調整(アライメント)を行い、共振器長を調整することができる。
【0013】
本実施形態にかかる空洞共振器10では、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121とは、略平行である。図1(a)に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されている。つまり、第1のプリズム110の主面111と、第2のプリズム120の主面121と、第1の平板150の第1の主面151と、は、空洞共振器10内の光路に対してブリュースター角θbとなるように配置されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、相対的に固定されている。
【0014】
図2に表したように、光が屈折率の異なる物質の界面にブリュースター角θbで入射すると、p偏光の強度反射率は、略ゼロとなる。一方、光が屈折率の異なる物質の界面にブリュースター角θbとは異なる角度で入射すると、p偏光の強度反射率は、ゼロとはならない。そして、光の入射角度がブリュースター角θbから外れるほど、p偏光の強度反射率は増加していく。ここで、本願明細書において「p偏光」とは、反射面(境界面)に垂直な面であって入射光および反射光を含む面(入射面)に平行に振動する偏光成分をいうものとする。また、本願明細書において「s偏光」とは、反射面(境界面)に垂直な面であって入射光および反射光を含む面(入射面)に垂直に振動する偏光成分をいうものとする。
【0015】
そのため、図1(a)に表した状態では、図示しない光源から照射された光A1が第1の平板150で反射された光A2は、p偏光をほとんど含まない。第1の平板150で反射された光A2は、第1のプリズム110の主面111を透過し、第1のプリズム110の内部に入射する。このとき、光A2は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A2は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。そのため、第1の反射面113および第2の反射面115において、光A2の損失は、ほとんど生じない。
【0016】
第2の反射面115で全反射された光A2は、第1のプリズム110に入射した光A2に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A3)。このとき、光A3は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0017】
第1のプリズム110の外部に出射した光A3は、第2のプリズム120の主面121を透過し、第2のプリズム120の内部に入射する。このとき、光A3は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A3は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。そのため、第1の反射面123および第2の反射面125において、光A3の損失は、ほとんど生じない。
【0018】
第2の反射面125で全反射された光A3は、第2のプリズム120に入射した光A3に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A4)。このとき、光A4は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0019】
第2のプリズム120の外部に出射した光A4の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10の外部に出力される(出力光A5)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A4の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A1の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10内に入射した光は、空洞共振器10内を周回することで干渉し増幅される。言い換えれば、空洞共振器10内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。すなわち、第1のプリズム110および第2のプリズム120により空洞共振器10の内部に閉じ込められた光は、空洞共振器10の内部において増幅される。
【0020】
ここで、空洞共振器10内への光の入射率の調整について説明する。
例えば、図1(a)に表した状態よりも空洞共振器10内への光の入射率を増加させる場合には、光が空洞共振器10内に入射する角度をブリュースター角θbからずらす。光が空洞共振器10内に入射する角度をブリュースター角θbからずらすと、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する(図2参照)。これにより、空洞共振器10内への光の入射率を増加させることができる。
【0021】
図3に例示したグラフ図のように、空洞共振器10のエンハンス率は、空洞共振器10の内部損失αに応じて変化する。また、p偏光の強度反射率に応じて、内部損失αとエンハンス率との関係は異なる。なお、内部損失αとエンハンス率との関係は、図3に例示したグラフ図に限定されるわけではない。
【0022】
そのため、空洞共振器10内への光の入射率を調整する場合には、空洞共振器10の内部損失αに応じて光の入射角度をブリュースター角θbからずらす必要がある。このとき、第1のプリズム110および第2のプリズム120の少なくともいずれかのアライメントが困難となる場合がある。これについて、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図4は、本実施形態の比較例にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図4(a)は、空洞共振器10a内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図4(b)は、空洞共振器10a内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0024】
本比較例にかかる空洞共振器10aは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して第1の平板150を備えていない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0025】
図示しない光源から照射された光A11の一部は、第2のプリズム120の主面121で反射される。このとき、光A11は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。第2のプリズム120の主面121で反射された光A12は、図1(a)に関して前述したように、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射し、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A12は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する(光A13)。第1のプリズム110の外部に出射した光A13は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。このとき、光A13の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10aの外部に出力される(光A14)。
【0026】
一方、光A13の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10a内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0027】
ここで、図4(b)に表したように、本比較例にかかる空洞共振器10a内への光の入射率を調整するために、第2のプリズム120を矢印B2の方向に回転させ、光A11が空洞共振器10a内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、第2のプリズム120を矢印B2の方向に回転させることで、空洞共振器10a内への光の入射率を増加させることができる。
【0028】
しかしながら、第2のプリズム120の主面121における反射角度がブリュースター角θbからずれるため、図4(b)に表した状態における空洞共振器10a内の光路は、図4(a)に表した状態における空洞共振器10a内の光路からずれる。そのため、空洞共振器10a内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10aの内部において増幅させるためには、共振器長調整部180により第1のプリズム110の位置を調整する必要がある。
【0029】
例えば、図4(b)に表したX方向、Y方向、ならびにX方向およびY方向に垂直な方向(Z方向)の軸を中心とした回転方向の調整が、第1のプリズム110において必要となる場合がある。つまり、調整を必要とする方向が比較的多い。なお、本願明細書において「X方向」とは、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を進行する光の光路(例えば図4では光12および光13の光路)と平行な方向をいうものとする。また、本願明細書において「Y方向」とは、X方向に垂直な方向であって入射面に含まれる方向をいうものとする。
【0030】
また、空洞共振器10aの内部において光を増幅させるためには、より高い精度のアライメントが求められる。そのため、本比較例にかかる空洞共振器10a内への光の入射率を調整すると、第1のプリズム110および第2のプリズム120の少なくともいずれかのアライメントが困難となる場合がある。
【0031】
これに対して、本実施形態にかかる空洞共振器10は、図1に関して前述したように、第1の平板150を備える。第1の平板150は、図示しない光源から照射された光A1の一部を第1の主面151において反射し、空洞共振器10内に入射させることができる。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置され、相対的に固定されている。そのため、図1(b)に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150との相対的な位置を維持しつつ、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させることができる。
【0032】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111および第2のプリズム120の主面121における入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A1が空洞共振器10内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150とを矢印B1の方向に回転させることで、空洞共振器10内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10内への光の入射率を調整することができる。
【0033】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150との相対的な位置が維持されるため、矢印B1の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10の内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0034】
図5は、本発明の他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図5(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図5(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図5(a)は、図5(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0035】
本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交するように、第1のプリズム110および第2のプリズム120が配置されている。また、図5(a)に表した空洞共振器10bの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、上方である。図5(b)に表した空洞共振器10bの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。
【0036】
本実施形態にかかる空洞共振器10bは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して1/2波長板160をさらに備える。1/2波長板160は、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置され、透過する光の偏光方向を任意の角度に回転させることができる。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0037】
図5(b)に表した矢印B7のように、Z方向を軸として第1の平板150を回転させ、図示しない光源から照射された光A21が空洞共振器10b内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第1の平板150を回転させることで、空洞共振器10b内への光の入射率を増加させることができる。
【0038】
第1の平板150で反射された光A22は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A22の偏光方向が回転する。そのため、第1の平板150で反射された光A22のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A22は、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A22は、第1のプリズム110に入射した光A22に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A23)。このとき、光A22は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0039】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A22および光A23は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A23は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A22と重複した光路を進行する。
【0040】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A23は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A23の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A23のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A23は、第2の反射面125および第1の反射面123で順次に全反射される。続いて、第1の反射面123で全反射された光A23は、第2のプリズム120に入射した光A23に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A24)。このとき、光A23は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0041】
なお、説明の便宜上、図5(a)に表した光A23および光A24は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A24は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A23と重複した光路を進行する。
【0042】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A24は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A24の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121から出射した光A24のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A24は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A24は、第1のプリズム110に入射した光A24に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A25)。このとき、光A24は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0043】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A24および光A25は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A25は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A24と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図5(a)に表した光A22および光A25は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A25は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A22と重複した光路を進行する。
【0044】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A25は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A25の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A25のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A25は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。続いて、第2の反射面125で全反射された光A25は、第2のプリズム120に入射した光A25に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A26)。このとき、光A25は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0045】
なお、説明の便宜上、図5(b)に表した光A23および光A26は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A26は、空洞共振器10bをZ方向にみたときに光A23と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図5(a)に表した光A25および光A26は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10bでは、光A26は、空洞共振器10bをY方向にみたときに光A25と重複した光路を進行する。
【0046】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A26の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10bの外部に出力される(光A26)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A26の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A21の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10b内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10b内を周回することで干渉し増幅される。
【0047】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のそれぞれが直交する方向の光軸ずれを補償することができる。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第1の平板150を矢印B7の方向に調整するだけで、空洞共振器10b内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、偏光方向を任意の角度に回転させる一例として1/2波長板160を挙げたが、これだけに限定されるわけではない。1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0049】
図6は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。 本実施形態にかかる空洞共振器10cは、第1のプリズム110と、第2のプリズム120と、共振器長調整部180と、を備える。一方、本実施形態にかかる空洞共振器10cは、図1に関して前述した第1の平板150を備えていない。図6に表したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。つまり、本実施形態にかかる空洞共振器10cでは、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121とは、平行ではない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0050】
図6に表した矢印B3のように、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させ、図示しない光源から照射された光A31が空洞共振器10c内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させることで、空洞共振器10c内への光の入射率を増加させることができる。この際、第1のプリズム110の位置を調整する必要がある。
【0051】
図示しない光源から照射された光A31の一部は、第2のプリズム120の主面121で反射される。このとき、光A31は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。第2のプリズム120の主面121で反射された光A32は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射し、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A32は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する(光A33)。第1のプリズム110の外部に出射した光A33は、第2のプリズム120の主面121にブリュースター角θbで入射する。このとき、光A33の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10cの外部に出力される(光A34)。
【0052】
一方、光A33の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10c内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0053】
本実施形態によれば、第1のプリズム110と第2のプリズム120とがX方向に垂直な面に対して対称となるように配置されているため、空洞共振器10c内の光路が光の波長に応じて分散することを抑えることができる(分散補償効果)。これについて、図面を参照しつつさらに説明する。
【0054】
図7は、本実施形態の比較例にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
また、図8は、本実施形態にかかる空洞共振器における分散補償効果のシミュレーション結果の一例を例示する平面模式図である。
【0055】
なお、図7(a)は、設計波長を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。図7(b)は、設計波長とは異なる波長を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。
また、図8(a)は、設計波長を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。図8(b)は、設計波長とは異なる波長を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射したときの光路の一例を例示する平面模式図である。
また、図7および図8に表した空洞共振器10a、10cでは、共振器長調整部180を省略している。
【0056】
例えば、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率が変わると、空洞共振器内における光路が変わる。また、空洞共振器内に入射する光の波長に対する屈折率の変化がより大きい場合には、空洞共振器内における光路の変化がより大きい。そのため、より広いスペクトル幅を有する光が空洞共振器に入射すると、その光は空洞共振器内で分散する場合がある。これにより、共振が生じにくくなる場合がある。
【0057】
第1のプリズム110と第2のプリズム120との配置関係がX方向に垂直な面に対して対称でない場合には(図4参照)、分散補償効果は、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率に依存する。そのため、図7(a)に表したように、設計波長(例えば約7μm程度)を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射すると、その光はほとんど分散しない。一方、図7(b)に表したように、設計波長とは異なる波長(例えば約8μm程度)を有する光が本比較例にかかる空洞共振器10aに入射すると、その光は分散する。これにより、共振が生じにくくなる。
【0058】
これに対して、第1のプリズム110と第2のプリズム120とがX方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている場合には、分散補償効果は、第1のプリズム110および第2のプリズム120の屈折率にほとんど影響されない。そのため、図8(b)に表したように、設計波長とは異なる波長(例えば約8μm程度)を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射した場合でも、その光はほとんど分散しない。図8(a)に表したように、設計波長(例えば約7μm程度)を有する光が本実施形態にかかる空洞共振器10cに入射した場合でも同様である。
【0059】
本実施形態によれば、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0060】
図9は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。 なお、図9(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図9(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図9(a)は、図9(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0061】
本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交するように、第1のプリズム110および第2のプリズム120が配置されている。また、図9(a)に表した空洞共振器10dの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。図9(b)に表した空洞共振器10dの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。本実施形態にかかる空洞共振器10dは、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して1/2波長板160をさらに備える。一方、本実施形態にかかる空洞共振器10dは、図1に関して前述した第1の平板150を備えていない。その他の構造は、図1に関して前述した空洞共振器10の構造と同様である。
【0062】
図9(b)に表した矢印B4のように、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させ、図示しない光源から照射された光A41が空洞共振器10d内(第2のプリズム120の主面121)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第2のプリズム120の主面121で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第2のプリズム120を回転させることで、空洞共振器10d内への光の入射率を増加させることができる。
【0063】
第2のプリズム120の主面121で反射された光A42は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A42の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121で反射された光A42のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A42は、第1の反射面113および第2の反射面115で順次に全反射される。続いて、第2の反射面115で全反射された光A42は、第1のプリズム110に入射した光A42に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A43)。このとき、光A42は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0064】
なお、説明の便宜上、図9(b)に表した光A42および光A43は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A43は、空洞共振器10dをZ方向にみたときに光A42と重複した光路を進行する。
【0065】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A43は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A43の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A43のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A43は、第2の反射面125および第1の反射面123で順次に全反射される。続いて、第1の反射面123で全反射された光A43は、第2のプリズム120に入射した光A43に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A44)。このとき、光A43は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0066】
なお、説明の便宜上、図9(a)に表した光A43および光A44は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A44は、空洞共振器10dをY方向にみたときに光A43と重複した光路を進行する。
【0067】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A44は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A44の偏光方向が回転する。そのため、第2のプリズム120の主面121から出射した光A44のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A44は、第2の反射面115および第1の反射面113で順次に全反射される。続いて、第1の反射面113で全反射された光A44は、第1のプリズム110に入射した光A44に平行であって反対方向に第1のプリズム110の主面111から外部に出射する(光A45)。このとき、光A44は、第1のプリズム110の主面111からブリュースター角θbで出射する。
【0068】
なお、説明の便宜上、図9(b)に表した光A44および光A45は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A45は、空洞共振器10dをZ方向にみたときに光A44と重複した光路を進行する。また、説明の便宜上、図9(a)に表した光A42および光A45は、互いに離れているが、本実施形態にかかる空洞共振器10dでは、光A45は、空洞共振器10dをY方向にみたときに光A42と重複した光路を進行する。
【0069】
続いて、第1のプリズム110の外部に出射した光A45は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A45の偏光方向が回転する。そのため、第1のプリズム110の主面111から出射した光A45のうちのp偏光は、第2のプリズム120の主面121に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、光A45の一部は、第2のプリズム120の主面121において反射され、空洞共振器10dの外部に出力される(光A46)。
【0070】
一方、光A45の他の一部は、第2のプリズム120の内部に入射し、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射されて第2のプリズム120の主面121における入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10d内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10d内を周回することで干渉し増幅される。
【0071】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、図5に関して前述したように、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第2のプリズム120を矢印B4の方向に調整するだけで、空洞共振器10d内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0072】
前述したように、図9(a)に表した空洞共振器10dの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。また、図9(b)に表した空洞共振器10dの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0073】
なお、図5に関して前述したように、1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0074】
図10は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図10(a)は、空洞共振器10e内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図10(b)は、空洞共振器10e内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0075】
本実施形態にかかる空洞共振器10eは、図6に関して前述した空洞共振器10cと比較して第1の平板150をさらに備える。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光A51の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10e内に入射させることができる。本実施形態にかかる空洞共振器10eでは、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、相対的に固定されている。つまり、図1に関して前述した空洞共振器10と比較して、第1のプリズム110および第2のプリズム120と、第1の平板150と、が相対的に固定されているわけではない。その他の構造は、図6に関して前述した空洞共振器10cの構造と同様である。
【0076】
第1の平板150で反射された光A52は、第1のプリズム110の主面111を透過し、第1のプリズム110の内部に入射する。このとき、光A52は、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、第1のプリズム110の内部に入射した光A52が光A53として第1のプリズム110の主面111から出射し、第2のプリズム120の主面121に入射するまでの光路は、図6に関して前述した光A32および光A33の光路と同様である。続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A53が光A54として第2のプリズム120の主面121から出射し、第1の平板150の第2の主面152に入射するまでの光路は、図1に関して前述した光A3および光A4の光路と同様である。
【0077】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A54の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10eの外部に出力される(光A55)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A54の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A51の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10e内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0078】
前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とは、相対的に固定されている。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120との相対的な位置を維持しつつ、図10(b)に表した矢印B5のように、第1のプリズム110と第2のプリズム120とをZ方向を軸として回転させることができる。
【0079】
本実施形態にかかる空洞共振器10e内への光の入射率を調整するために、第1のプリズム110と第2のプリズム120を矢印B5の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111および第2のプリズム120の主面121における入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A51が空洞共振器10e内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120とを矢印B5の方向に回転させることで、空洞共振器10e内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10e内への光の入射率を調整することができる。
【0080】
第1のプリズム110と第2のプリズム120との相対的な位置が維持されるため、矢印B5の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10e内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10e内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10eの内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10e内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0081】
図11は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図11(a)は、空洞共振器10f内への光の入射率を調整する前の状態を例示する平面模式図であり、図11(b)は、空洞共振器10f内への光の入射率を調整した後の状態を例示する平面模式図である。
【0082】
本実施形態にかかる空洞共振器10fは、図10に関して前述した空洞共振器10eと比較して第2の平板170をさらに備える。第2の平板170は、第1の主面171と、第1の主面171に対向する第2の主面172と、を有する。第2の平板170は、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置されている。第1の平板150と第2の平板170とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。
【0083】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150と第2の平板170とは、ブリュースター角θbで光路が合うように配置されている。つまり、第1のプリズム110の主面111と、第2のプリズム120の主面121と、第1の平板150の第1の主面151と、第2の平板170の第1の主面171と、は、空洞共振器10f内の光路に対してブリュースター角θbとなるように配置されている。第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とは、相対的に固定されている。その他の構造は、図10に関して前述した空洞共振器10eの構造と同様である。
【0084】
一般的に、光は、異なる媒質の境界で屈折する。そのため、空洞共振器内に入射した光は、第1の平板150を透過すると屈折する。そのため、第1の平板150を備える空洞共振器10e(図10参照)の内部における光路は、第1の平板150を備えていない空洞共振器10c(図6参照)の内部における光路からずれている。
【0085】
これに対して、本実施形態にかかる空洞共振器10fは、第1の平板150と第1のプリズム110との間の光路に配置された第2の平板170を備える。第1の平板150と第2の平板170とは、X方向に垂直な面に対して対称となるように配置されている。そのため、第2の平板170は、第2の平板170に入射する光(例えば、図11(a)に表した光A62)を屈折させ、第1の平板150に入射する光(例えば、図11(a)に表した光A64)の光路に戻すことができる。
【0086】
図示しない光源から照射された光A61の一部は、第1の平板150の第1の主面151において反射して空洞共振器10f内に入射する。第1の平板150で反射された光A62は、第2の平板170の第1の主面171にブリュースター角θbで入射する。第2の平板170を透過する光A62は、第1の主面171および第2の主面172において屈折し、第1のプリズム110の主面111にブリュースター角θbで入射する。続いて、光A62〜光A64の光路は、図10に関して前述した光A52〜光A54の光路と同様である。
【0087】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A64の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10fの外部に出力される(光A65)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A64の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A61の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10f内に入射した光は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間を往復することで干渉し増幅される。
【0088】
ここで、本実施形態にかかる空洞共振器10fは、第2の平板170を備える。そのため、第2のプリズム120の外部に出射した光A64は、第1の平板150を透過することで屈折し光路が移動しても、第2の平板170を透過することで屈折し第1の平板150を透過する前の光A64の光路に戻る。これにより、ブリュースター角θbが比較的大きく、また第1の平板150による光路のずれ(光路の移動)が比較的大きい場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。これにより、第1のプリズム110および第2のプリズム120のアライメント性を向上させることができる。
【0089】
前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とは、相対的に固定されている。そのため、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170との相対的な位置を維持しつつ、図11(b)に表した矢印B6のように、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とをZ方向を軸として回転させることができる。
【0090】
本実施形態にかかる空洞共振器10f内への光の入射率を調整するために、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とを矢印B6の方向に回転させると、第1のプリズム110の主面111と第2のプリズム120の主面121と第2の平板170の第1の主面171とにおける入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、光A61が空洞共振器10f内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度を例えばθb+αとすることができる。つまり、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170とを矢印B6の方向に回転させることで、空洞共振器10f内の光路の入射角度をブリュースター角θbに維持しつつ、空洞共振器10f内への光の入射率を調整することができる。
【0091】
第1のプリズム110と第2のプリズム120と第2の平板170との相対的な位置が維持されるため、矢印B6の方向の調整を行うだけで、空洞共振器10f内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。そして、空洞共振器10f内に入射した光を閉じ込め、空洞共振器10fの内部において増幅させることができる。これにより、空洞共振器10f内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0092】
なお、本実施形態の第2の平板170は、本実施形態にかかる空洞共振器10fだけに限定されず、第1の平板150を備える空洞共振器10、10b、10e(図1、図5、図10参照)に設けられてもよい。また、第2の平板170は、図12に関して後述する空洞共振器10gに設けられてもよい。図1に関して前述した空洞共振器10が第2の平板170を備える場合には、第1のプリズム110と第2のプリズム120と第1の平板150と第2の平板170とが相対的に固定される。これらの場合においても、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0093】
図12は、本発明のさらに他の実施の形態にかかる空洞共振器を表す平面模式図である。
なお、図12(a)は、本実施形態にかかる空洞共振器をY方向にみたときの平面模式図であり、図12(b)は、本実施形態にかかる空洞共振器をZ方向にみたときの平面模式図である。すなわち、図12(a)は、図12(b)に表した空洞共振器を上方からみたときの上面模式図である。
【0094】
本実施形態にかかる空洞共振器10gは、図9に関して前述した空洞共振器10dと比較して第1の平板150をさらに備える。第1の平板150は、第1のプリズム110と第2のプリズム120との間の光路に配置され、図示しない光源から照射された光A71の一部を第1の主面151において反射して空洞共振器10g内に入射させることができる。その他の構造は、図9に関して前述した空洞共振器10dの構造と同様である。
【0095】
図12(b)に表した矢印B8のように、Z方向を軸として第1の平板150を回転させ、図示しない光源から照射された光A71が空洞共振器10g内(第1の平板150の第1の主面151)に入射する角度をブリュースター角θbからずらして例えばθb+αとする。そうすると、第1の平板150の第1の主面151で反射されるp偏光の強度反射率が増加する。つまり、Z方向を軸として第1の平板150を回転させることで、空洞共振器10g内への光の入射率を増加させることができる。
【0096】
第1の平板150で反射された光A72は、1/2波長板160を透過する。これにより、光A72の偏光方向が回転する。そのため、第1の平板150で反射された光A72のうちのp偏光は、第1のプリズム110の主面111に対してp偏光としてブリュースター角θbで入射する。続いて、光A72〜光A75の光路は、図9に関して前述した光A42〜A45の光路と同様である。
【0097】
続いて、第2のプリズム120の内部に入射した光A75は、第1の反射面123および第2の反射面125で順次に全反射される。続いて、第2の反射面125で全反射された光A75は、第2のプリズム120に入射した光A75に平行であって反対方向に第2のプリズム120の主面121から外部に出射する(光A76)。このとき、光A75は、第2のプリズム120の主面121からブリュースター角θbで出射する。
【0098】
続いて、第2のプリズム120の外部に出射した光A76の一部は、第1の平板150の第2の主面152において反射され、空洞共振器10gの外部に出力される(光A76)。一方、第2のプリズム120の外部に出射した光A76の他の一部は、第1の平板150を透過し屈折して、第1の平板150における光A71の入射位置に戻る。このようにして、空洞共振器10g内に入射した光は、Z方向に垂直な面内およびY方向に垂直な面内において反射され、空洞共振器10g内を周回することで干渉し増幅される。
【0099】
本実施形態によれば、第1のプリズム110の稜線117と、第2のプリズム120の稜線127と、が互いに直交している。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のそれぞれが直交する方向の光軸ずれを補償することができる。そのため、第1のプリズム110および第2のプリズム120のいずれかの位置がずれた場合でも、共振の妨げとなることを抑えることができる。つまり、第1の平板150を矢印B8の方向に調整するだけで、空洞共振器10g内への光の入射率を調整することができる。図4(b)に関して前述したようには、X方向、Y方向、および回転方向の調整を行う必要はない。これにより、空洞共振器10g内への光の入射率を調整しつつ、アライメント性の向上を図ることができる。
【0100】
また、図12(a)に表した空洞共振器10gの状態において、第1のプリズム110の主面111の法線方向は、下方である。図12(b)に表した空洞共振器10gの状態において、第2のプリズム120の主面121の法線方向は、上方である。そのため、図9に関して前述したように、第1のプリズム110と第2のプリズム120の材質の屈折率特性によらず、分散補償効果の確保あるいは向上を図ることができる。
【0101】
なお、図5に関して前述したように、1/2波長板160の代わりに、例えば、複屈折効果により偏光方向を回転させる複屈折素子(90度ローテータ)や、磁界により偏光方向を回転させるファラデーローテータなどが用いられてもよい。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g 空洞共振器、 110 第1のプリズム、 111 主面、 113 第1の反射面、 115 第2の反射面、 117 稜線、 120 第2のプリズム、 121 主面、 123 第1の反射面、 125 第2の反射面、 127 稜線、 150 第1の平板、 151 第1の主面、 152 第2の主面、 160 1/2波長板、 170 第2の平板、 171 第1の主面、 172 第2の主面、 180 共振器長調整部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な平板と、
を備え、
前記第1の主面と前記第2の主面とは、互いに平行に対向して配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記平板とは、ブリュースター角で光路が合うように配置されて相対的に固定され、
外部から入射され前記平板で反射された光は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項2】
前記外部から入射される光のうち前記平板で反射される光の割合は、前記平板へ前記入射される光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項1記載の空洞共振器。
【請求項3】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
を備え、
前記第1の主面と前記第2の主面とは、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間を進行する前記光の光路に垂直な面に対して対称に配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、ブリュースター角で光路が合うように配置され、
前記第1及び第2の主面の少なくともいずれかに入射した光の少なくとも一部は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項4】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
を備え、
前記第1のプリズムの前記第1の反射面と前記第2の反射面との交線と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面と前記第2の反射面との交線と、は、直交し、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、ブリュースター角で光路が合うように配置され、
前記第1及び第2の主面の少なくともいずれかに入射した光の少なくとも一部は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項5】
前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかは、前記入射した光の少なくとも一部を反射可能であり、
前記入射した光のうち前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかで反射される光の確率は、前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかへの前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項3または4に記載の空洞共振器。
【請求項6】
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な第1の平板をさらに備え、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、相対的に固定され、
外部から入射される光のうち前記第1の平板で反射される光の割合は、前記第1の平板への前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項3記載の空洞共振器。
【請求項7】
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な第1の平板をさらに備え、
外部から入射される光のうち前記第1の平板で反射される光の割合は、前記第1の平板への前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項4記載の空洞共振器。
【請求項8】
光が透過可能な第2の平板をさらに備え、
前記第1の平板と前記第2の平板とは、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間を進行する前記光の光路に垂直な面に対して対称に配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記第2の平板とは、相対的に固定されたことを特徴とする請求項6または7に記載の空洞共振器。
【請求項1】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な平板と、
を備え、
前記第1の主面と前記第2の主面とは、互いに平行に対向して配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記平板とは、ブリュースター角で光路が合うように配置されて相対的に固定され、
外部から入射され前記平板で反射された光は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項2】
前記外部から入射される光のうち前記平板で反射される光の割合は、前記平板へ前記入射される光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項1記載の空洞共振器。
【請求項3】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
を備え、
前記第1の主面と前記第2の主面とは、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間を進行する前記光の光路に垂直な面に対して対称に配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、ブリュースター角で光路が合うように配置され、
前記第1及び第2の主面の少なくともいずれかに入射した光の少なくとも一部は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項4】
光が透過可能な第1の主面と、互いに直角に配置され前記第1の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第1のプリズムと、
前記第1のプリズムと対向して配置され、前記光が透過可能な第2の主面と、互いに直角に配置され前記第2の主面を介して入射した光を反射可能な第1の反射面および第2の反射面と、を有する第2のプリズムと、
を備え、
前記第1のプリズムの前記第1の反射面と前記第2の反射面との交線と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面と前記第2の反射面との交線と、は、直交し、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、ブリュースター角で光路が合うように配置され、
前記第1及び第2の主面の少なくともいずれかに入射した光の少なくとも一部は、前記第1プリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、前記第2のプリズムの前記第1の反射面および前記第2の反射面と、において反射され往復することを特徴とする空洞共振器。
【請求項5】
前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかは、前記入射した光の少なくとも一部を反射可能であり、
前記入射した光のうち前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかで反射される光の確率は、前記第1の主面および前記第2の主面の少なくともいずれかへの前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項3または4に記載の空洞共振器。
【請求項6】
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な第1の平板をさらに備え、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとは、相対的に固定され、
外部から入射される光のうち前記第1の平板で反射される光の割合は、前記第1の平板への前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項3記載の空洞共振器。
【請求項7】
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置され、入射する光の少なくとも一部を反射可能な第1の平板をさらに備え、
外部から入射される光のうち前記第1の平板で反射される光の割合は、前記第1の平板への前記光の入射角度を調整することにより調整可能であることを特徴とする請求項4記載の空洞共振器。
【請求項8】
光が透過可能な第2の平板をさらに備え、
前記第1の平板と前記第2の平板とは、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間を進行する前記光の光路に垂直な面に対して対称に配置され、
前記第1のプリズムと前記第2のプリズムと前記第2の平板とは、相対的に固定されたことを特徴とする請求項6または7に記載の空洞共振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−181305(P2012−181305A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43552(P2011−43552)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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