説明

空港灯火電源システムの事故点特定装置及びその事故点特定方法

【課題】 作業員の負担を軽減し、地絡位置の特定精度を高め、速やかに事故復旧を行う。
【解決手段】 交流電源にケーブルがループ状に接続され、当該ケーブルに直列に灯火に関する複数の負荷機器を備えた灯火回路部5が接続された空港灯火電源システムにおいて、事故発生時に交流電源に代えて灯火回路部5に直流電圧を印加する直流電源11と、フイルタを通してケーブル各端部の対地電圧を計測する電圧計測部13と、ケーブルを含む灯火回路部5の属性・回路構成情報を保存する記憶部15と、計測された複数の対地電圧及び記憶部に保存された属性・回路構成情報を用いて、事故点の負荷機器位置を特定する事故位置判定部14と、前記回路構成情報から得られるケーブルを含む灯火回路部を構成する画像データに存在する前記特定された負荷機器の位置に事故点を表示する外部出力装置16とを備えた空港灯火電源システムの事故点特定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空港灯火電源システムの事故点特定装置及びその事故点特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港には、航空機を安全に誘導するために、滑走路や誘導路に滑走路灯,誘導路灯、誘導路中心線灯その他多くの種類の灯火が設置されている。
【0003】
これらの灯火の電源システムは、定電流電源から出力される電力が地中に埋設される地中ケーブルに送られ、当該地中ケーブルに直列に接続された灯火対応のゴムトランスを通して各灯火に供給される。
【0004】
地中ケーブルは、導体の周りが絶縁部材で被覆され、地中との間で対地絶縁がとられている。しかし、絶縁部材は、経年使用や周囲環境の影響を受けて絶縁劣化が起こり、その絶縁耐力が大きく低下すると、最終的に地絡事故に至る。
【0005】
そこで、空港灯火電源システムに地絡事故が発生した場合、航空機の安全走行を確保する観点から、速やかに回復処置を講じる必要がある。
【0006】
ところで、一般的な電力系統(送・配電系統)に適用されている電力ケーブルの事故点特定装置は、地絡事故ケーブル導体と併設される健全ケーブル導体との各始端部側に直流電源を接続し、当該両ケーブル導体の終端部側をジャンパー線で接続する。そして、両ケーブル導体の各始端部側に生じる対地電圧V1,V2に含まれる高圧ノイズ成分をフイルタで抑制し、ノイズ成分抑制後の対地電圧V1,V2を計測する。引き続き、直流電源の極性を反転させて同様にフイルタを通して対地電圧V1´,V2´を計測する。
【0007】
ここで、地絡位置(%)は、ケーブル導体の長さをl、直流電源と接続されるケーブル導体の始端部(接続点)から地絡事故点までの距離をxとすると、以下の演算式から求められる。
【0008】
(x/l)={2(V1−V2´)/(V1−V1´+V2´−V2)}・100(%)
……(1)
従って、この事故点特定装置は、事故ケーブル導体と併設される健全ケーブル導体とを用い、これらケーブル導体の各始端部側2箇所の対地電圧を同時に計測し、2箇所の対地電圧をキャンセルし、かつフイルタを通すことで、両ケーブル導体と併設する他の地中ケーブル導体からの高圧誘導ノイズを抑制する対策をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−170905号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】山田 浩之他 新しいケーブル事故点測定器の開発 平成18年電気学会電力・エネルギー部門大会 p.14−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、一般的な電力系統の事故点特定装置は従来から実施されているが、空港灯火電源システムでは、以下のような特殊なシステム構成を採っていることから、一般的な電力系統に適用される事故点特定装置は使用されていない。
【0012】
(1) すなわち、空港灯火電源システムは、前述したように定電流電源から導出される地中ケーブルがループ状に配置され、当該地中ケーブルにはグループ灯火数に相当する数のゴムトランスが直列に接続され、これらゴムトランスの2次巻線側に子局を介して灯火が接続されている。つまり、ループ状の地中ケーブルに多数の負荷機器が直列に連なった特殊なシステム構成となっている。
【0013】
(2) また、空港灯火電源システムは、管制官の操作指示に従って各灯火の調光操作を行っている。具体的には、管制官は、(イ)航空機の着陸時の運用方向、(ロ)昼間・夕暮れ・夜間などの背景輝度、(ハ)雲の高さが例えば1000m以上、以下の雲底高、(ニ)低視程時(夜間、降雨、濃霧等の視界不良時)よりなる4条件を判断しながら、操作スイッチを操作して電源システムを制御し、現在の環境状況にとって最適な明るさとなるように灯火の調光操作を行っている。
【0014】
その結果、この調光操作に伴って定電流電源から地中ケーブルに流れる正弦波の電流波形に多量の歪成分が重畳された状態となる。
【0015】
(3) さらに、空港に設置される灯火の数は、飛行場の規模によって異なるが、数百から数万にも及ぶ。これらの灯火は、種類ごと、同一種類であっても所定個数ごとにグループ化され、これら多数のグループに属する地中ケーブルが地中に併設され、かつ各地中ケーブルに直列に連なるゴムトランスに電力が供給されている。
【0016】
従って、地絡事故によるケーブルの事故点を特定するための計測時、他の多数のグループの地中ケーブルから誘導されるノイズ成分を受け、計測値に影響を与える問題がある。
【0017】
そこで、従来、空港灯火電源システムに地絡事故が発生した場合、経験・熟練を有する作業員が地中ケーブルの取替やケーブル接続部の設置個所等に対応して設置される点検用マンホールに入り、持ち込んだ測定器の測定用クリップをケーブル接続部などに取り付け、必要な計測を実施し、その計測結果に基づいて地絡位置を特定する為の演算を実施する。この計測作業は、従来から知り得る周知の複数の測定法を使用しながら、かつ複数個所の点検用マンホールに入って、繰り返し計測し、演算を実施している。
【0018】
その結果、地絡位置を特定するまでの作業は、非常に煩雑であるとともに、作業時間が長くかかる問題がある。特に、この地絡特定作業は、地絡位置を特定した後、現場に出向いて事故点を確認するが、地絡位置の特定精度が低いために特定された地絡位置を含む広い範囲にわたって事故点を確認しなければならない。さらに、必要に応じてケーブルやゴムトランスの交換作業を行う必要がある。
【0019】
しかも、これらの一連の作業は、灯火の電源を停止した状態で行うことから、速やかに復旧させる必要があるが、作業時間の短縮が難しく、作業員の負担が大きい。
【0020】
また、前記(2),(3)項にて説明したように、特殊な電源システム構成から、誘導ノイズの影響を受け易い状況にあり、ひいては地絡位置の特定精度を改善することが難しい状況にある。
【0021】
そこで、本空港灯火電源システムの事故点特定装置及びその事故点特定方法は、作業員の負担を軽減し、システム特有のノイズ成分を確実に抑制して地絡位置の特定精度を向上するとともに、速やかに復旧作業を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
実施形態によれば、定電流電源にループ状をなすようにケーブルが配置され、当該ケーブルに直列に灯火に関する複数の負荷機器を備えた灯火回路部が接続され、前記ケーブルを含む灯火回路部に事故が発生したとき、その事故点を特定する空港灯火電源システムの事故点特定装置であって、
前記事故発生時に前記交流電源に代えてケーブルの両端部に接続され、灯火回路部に直流電圧を印加する直流電圧印加手段と、ケーブルの両端部に接続され、フイルタを通して当該ケーブル各端部の対地電圧を計測する電圧計測手段と、ケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報を保存する情報保存手段と、前記電圧計測手段で計測された複数の対地電圧及び前記情報保存手段に保存された属性・回路構成情報を用いて、事故点となった負荷機器位置を特定する事故位置判定手段と、この事故位置判定手段で特定された負荷機器位置に基づき、情報保存手段に保存された回路構成情報から得られるケーブルを含む灯火回路部を構成する画像データに存在する前記特定された負荷機器の位置に事故点を表すマーキングを施して表示する外部出力装置とを備えた構成である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る空港灯火電源システムの事故点特定装置を示す構成図。
【図2】従来の一般的な空港灯火電源システムの構成図。
【図3】地絡事故位置を特定する際に地中ケーブルの両端部に接続する機器(直流電源,電圧計測部)を示す図。
【図4】図1に示す地絡事故位置判定部を構成する機能ブロック図。
【図5】地中ケーブルに接続されるゴムトランスを抵抗に置き換えたときの等価回路図。
【図6】実施形態1における地絡事故位置判定部及び空港灯火電源システムの事故点特定方法を説明する一連の処理手順を説明する図。
【図7】図4に示す機器必要情報算出手段で作成される機器管理テーブルのデータ配列例図。
【図8】事故点となる負荷機器位置に事故点を表すマーキングを施した図。
【図9】機器取付位置と地絡抵抗とに応じて変化する推定位置のずれ範囲を示す図。
【図10】実施形態2における地絡事故位置判定部及び空港灯火電源システムの事故点特定方法を説明する一連の処理手順を説明する図。
【図11】実施形態3に係る空港灯火電源システムの事故点特定装置を示す構成図。
【図12】実施形態4に係る空港灯火電源システムの事故点特定装置を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は空港灯火電源システムの事故点特定装置の実施形態1を示す構成図である。
空港灯火電源システムは、常時は所要の定電流波形の電力を接続点2,3に供給する定電流電源1と、これら接続点2,3にループ状をなすように接続される地中ケーブル4と、この地中ケーブル4に直列に接続される灯火回路部5と、事故点特定装置10とを含む構成である。
【0025】
定電流電源1は、商用交流電源から所要の定電流の交流電源波形を生成し、接続点2,3及び地中ケーブル4を通して灯火回路部5に供給する。
【0026】
灯火回路部5は、図2に示すように地中ケーブル4に直列にグループ灯火数に相当するゴムトランス6,…が接続され、これらゴムトランス6の2次巻線側にそれぞれ子局(図示せず)を介して灯火7が接続される。すなわち、灯火回路部5は、地中ケーブル4に直列に多数のゴムトランス6,…が接続され、定電流電源1に対して、ループ状を成すように接続されている。
【0027】
ここで、灯火7とは、空港の滑走路や誘導路などに設置される滑走路灯,誘導路灯、誘導路中心線灯その他多くの種類の灯火だけでなく、空港内のループ状をなす地中ケーブル4に直列に一般の照明(照明器具など)が接続されている場合、それらの照明(照明器具など)も含むものである。
【0028】
事故点特定装置10は、直流電源11、極性切替部12、電圧計測部13、地絡事故位置判定部14、情報保存記憶部15及び外部出力装置16を含むものである。
【0029】
直流電源11は、地絡事故等の発生対象となっている地中ケーブル4に接続される灯火回路部5に直流電圧を印加する。極性切替部12は、直流電源11の出力端側に設けられ、地絡位置の特定時に直流電源11の極性を反転させて灯火回路部5に印加する機能を有する。
【0030】
電圧計測部13は、地絡事故等の発生対象となる灯火回路部5の端子電圧を検出するものであって、図3に示すように少なくともフイルタ部13−1及び複数の対地電圧計測部13−2,13−3が含まれる。
【0031】
フイルタ部13−1は、各接続点2,3に現れる対地電圧に含む誘導ノイズ成分を抑制するものであって、ノイズ成分の除去された対地電圧が複数の対地電圧計測部13−2,13−3に印加される。対地電圧計測部13−2,13−3は、接続点2及び接続点3に現れる対地電圧を計測し、その計測値を地絡事故位置判定部14に送出する。具体的には、対地電圧計測部13−2は接続点2に現れる対地電圧V1を、対地電圧計測部13−3は接続点3に現れる対地電圧V2をそれぞれ計測し、それぞれ地絡事故位置判定部14に送出する。
【0032】
地絡事故位置判定部14は、各対地電圧計測部13−2,13−3から受け取った対地電圧と情報保存記憶部15に保存される地中ケーブル4を含む灯火回路部5に関係する情報,つまりゴムトランス6,…の個数や抵抗値などの属性データとを用いて、地絡事故点となっている機器(何番目のゴムトランス)位置を特定する機能を有する。
【0033】
地絡事故位置判定部14は、機能的には、図4に示すように機器必要情報,例えば各機器(例えばゴムトランス)までの直流抵抗や距離(機器位置)を算出する機器必要情報算出手段14Aと、対地電圧計測部13−2,13−3で計測された対地電圧V1,V2及び直流電源11の極性を反転された後に対地電圧計測部13−2,13−3で計測される対地電圧V1´,V2´などのデータを用いて、接続点2から地絡事故点までの機器個数や加算抵抗などの属性値を推定する地絡属性値推定手段14Bと、地絡属性値推定手段14Bで推定された属性値と機器必要情報算出手段14Aで得られた各機器(例えばゴムトランス)までの距離(位置)から地絡事故点に近い機器位置を特定する地絡機器位置特定手段14Cとを含む構成である。
【0034】
情報保存記憶部15は、後記する図6に示すように、ケーブル情報保存部15a、ゴムトランス情報保存部15b及び回路構成情報保存部15cを備える。
【0035】
ケーブル情報保存部15aには少なくとも線種データ及び当該線種のm当りあるいはkm当りの抵抗データなどが保存される。ゴムトランス情報保存部15bには少なくともトランス型式及び抵抗データなどが保存されている。なお、1種類だけでなく、複数の線種,トランス型式の場合でも同様にそれぞれkm当りの抵抗データ、ゴムトランスの抵抗データが保存される。
【0036】
回路構成情報保存部15cとしては、定電流電源1に連なる地中ケーブル4を含む灯火回路部5を構築するための回路構成要素データ、あるいはフレーム画像データ、ビットマップ方式でデジタルデータ化及びファイル化した画像ファイルの他、各機器(例えば各ゴムトランス)までの直流抵抗や距離(位置)等のデータが保存される。
【0037】
外部出力装置16は、地絡事故点の特定位置を外部に出力するものであって、データ加工部16−1と表示部16−2とを含む。
【0038】
データ加工部16−1は、回路構成情報保存部15cに保存される地中ケーブル4を含む灯火回路部5に関係する情報を読み出して地絡事故等の発生対象となるケーブル4を含む灯火回路部5に相当する回路構成画像データを生成するとともに、当該画像データ中の地絡事故位置判定部14で特定された機器特定位置(個所)に、ユーザが把握し易い所要とする図形のマーキングを施し、地絡事故の生じた位置を表すように加工する。
【0039】
表示部16−2は、データ加工部16−1で加工されたマーキングを施した灯火回路部5の回路構成画像データを表示する。
【0040】
次に、以上のように構成された空港灯火電源システムの事故点特定装置の作用及び事故点特定方法について、図面を参照して説明する。
【0041】
今、図3に示す空港灯火電源システムにおいて、保護継電器などの動作により灯火回路部5から地絡事故の発生を検出すると、接続点2,3から定電流電源1を切り離す。
【0042】
この定電流電源1の切り離し時、併設される他の多数のグループに属する灯火電源システムは活線状態となっており、かつ、管制官による灯火の調光操作により、他の多数のグループケーブル4から誘導ノイズの影響を受け、誤差要因となる。
【0043】
そこで、定電流電源1に代えて、接続点2,3には図1に示す事故点特定装置10の一部を構成する極性切替部12及び電圧計測部13を接続し、直流電源11から所定の直流電圧を極性切替部12を通して灯火回路部5に印加するとともに、電圧計測部13にて灯火回路部5に接続される地中ケーブル4の両端部に現れる対地電圧V1,V2を計測する(計測ステップ)。
【0044】
ここで、電圧計測部13では、対地電圧V1,V2だけでなく、管制官による調光操作により定電流波形に重畳される多量の歪成分や併設される活線状態にある他の地中ケーブルからの誘導ノイズ成分を含んだ状態で計測される。
【0045】
そこで、電圧計測部13にはフイルタ部13−1が設けられている。このフイルタ部13−1は、定電流波形に重畳される多量の歪成分(誘導ノイズの一種)や活線状態にある他の地中ケーブルから入り込む誘導ノイズ成分のうち、比較的小刻みな変化をもった誘導ノイズ成分を除去した後、対地電圧計測部13−2,13−3に送出する。
【0046】
その結果、各対地電圧計測部13−2,13−3は、比較的小さな変化をもった誘導ノイズ成分を除去した後のケーブル4両端部に現れる対地電圧V1,V2を計測し、地絡事故位置判定部14または適宜なバッフアメモリ(図示せず)に一時的に保存される。
【0047】
なお、定電流波形に重畳される歪成分及び活線状態にある他の地中ケーブルから入り込む誘導ノイズ成分のうち、比較的大きなレベル変化をもつノイズ成分は後記する式(3)及び式(4)による対地電圧の差分,例えばV1−V2をとることにより、該当誘導ノイズ成分が互いに打ち消し合い、誤差要因の発生を抑制できる。
【0048】
引き続き、電圧計測部13からの切替指示または人為的に極性切替部12を切替え、直流電源11から極性反転された所定の直流電圧を灯火回路部5に印加し、電圧計測部13にて灯火回路部5両端子に現れる誘導ノイズ除去後の対地電圧V1´,V2´を計測し、地絡事故位置判定部14または適宜なバッフアメモリ(図示せず)に保存する(計測ステップ)。
【0049】
次に、地絡事故位置判定部14による地絡事故点の特定(事故位置判定ステップ)について、図5及び図6を参照して説明する。なお、図5は、地絡事故時における灯火回路部5を構成するゴムトランス6を抵抗に置き換えた等価回路を示す図であって、Rtrは1個のゴムトランス6の抵抗値、8は地絡事故点、9は地絡抵抗を示す。
【0050】
地絡事故位置判定部14は、地絡事故の位置を特定するに先立ち、機器必要情報算出手段14Aを実行する。機器必要情報算出手段14Aは、情報保存記憶部15を構成するケーブル情報保存部15a、ゴムトランス情報保存部15b及び回路構成情報保存部15cに記憶される情報を用いて、接続点2から灯火回路部5を構成する各機器(例えば各ゴムトランス6,…)までの直流抵抗及び距離(機器位置)を算出する(S1)。
【0051】
機器必要情報算出手段14Aは、具体的には、回路構成情報保存部15cの回路構成情報から、例えば接続点2から最も近い配列位置にある機器番号「1」の機器(ゴムトランス6)に接続されるケーブル4の線種の抵抗及び当該機器の抵抗とを加算した加算抵抗(直流抵抗)、接続点2から機器番号「1」の機器に接続されるケーブル4の長さから機器番号「1」の機器の距離(機器位置)を算出し、回路構成情報保存部15c上に例えば図7に示すような機器管理テーブル15c1を作成する。
【0052】
すなわち、機器必要情報算出手段14Aは、接続点2から各機器までの加算抵抗及び各機器までの距離(機器位置)を算出し、回路構成情報保存部15cから得られる各機器の機器番号及び機器名称に対応付けた状態で機器管理テーブル15c1に書き込む。
【0053】
引き続き、地絡事故位置判定部14は地絡属性値推定手段14Bを実行する。地絡属性値推定手段14Bは、電圧計測部13の各対地電圧計測部13−2,13−3で計測された対地電圧V1,V2及び極性反転された後に得られた対地電圧V1´,V2´を受け取るか、あるいは計測完了信号のもとに適宜な記憶手段に記憶されている対地電圧V1,V2及び対地電圧V1´,V2´を読み出すことで取得すると(S2)、接続点2から地絡事故点8までの機器個数を推定する(S3)。
【0054】
具体的には、接続点2から接続点3までの地中ケーブル4の抵抗とゴムトランス6,…全部の抵抗とを加算した全回路抵抗をRall、接続点2から地絡事故点8までの地中ケーブル4の抵抗とゴムトランス6,…の抵抗を全て加算した抵抗をRxとすると、接続点2の対地電圧V1と、接続点3の対地電圧V2との間には、次のような関係式が成立する。
【0055】
V1=(Rx/Rall)・(V1−V2) ……(2)
V2=−{(Rall−Rx)/Rall}・(V1−V2)……(3)
また、直流電源11の極性を反転させた後に計測される対地電圧V1´,V2´の間には、次のような関係式が成立する。
V1´=(Rx/Rall)・(V1´−V2´) ……(4)
V2´=−(Rx/Rall)・(V1´−V2´) ……(5)
そこで、式(2)、式(4)から、以下のような関係式(6)が導かれる。
Rx(V1−V2)−V1・Rall=Rx(V1´−V2´)−V1´・Rall
……(6)
この関係式(6)をRxについて整理すると、接続点2から地絡事故点8までの抵抗Rxと全回路抵抗をRallとの間に次のような演算式を導くことができる。
Rx={(V1−V1´)/(V1−V1´−V2+V2´)}・Rall…(7)
ここで、一般に、ゴムトランス6の抵抗≫地中ケーブル4の抵抗であることから、空港灯火電源システムの抵抗分≒全体のゴムトランス6の抵抗分合計であると考えると、空港灯火電源システムのゴムトランス6の全個数をNtr、接続点2から地絡事故点8までのゴムトランス6の個数(属性値)をNflとすると、以下のような式が得られる。
【0056】
Rall≒Rtr×Ntr ……(8)
Rx≒Rtr×Nfl ……(9)
Nfl={(V1−V1´)/(V1−V1´−V2+V2´)}・Ntr…(10)
すなわち、各対地電圧計測部13−2,13−3で計測された対地電圧V1,V2,V1´,V2´と灯火回路部5を構成するゴムトランス6の全個数Ntrから、式(10)に従って、接続点2から地絡事故点8までのゴムトランス6の個数(地絡属性値)を求めることができる(S3)。
【0057】
なお、地絡属性値推定手段14Bによって地絡属性値を推定するに際し、例えば図5の回路構成において、接続点2から1つ目のゴムトランス6(1)までのケーブル4が長く、ゴムトランス6の抵抗≫地中ケーブル4の抵抗の関係が成り立たない場合が有り得る。
【0058】
このとき、接続点2から接続点3までのケーブル4の抵抗とゴムトランス6,…の抵抗を全て加算した回路抵抗をRall、接続点2から1つ目のゴムトランス6(1)までのケーブル抵抗をRpri、各ゴムトランス6の抵抗をRtrとすると、上記式(10)は下記式(11)のように表すことができる。
【0059】
Nfl=[{(V1−V1´)/(V1−V1´−V2+V2´)}・Rall
−Rpri]÷Rtr ……(11)
よって、接続点2から1つ目のゴムトランス6(1)までのケーブル4が長い場合でも、式(11)を用いて、接続点2から地絡事故点8までのゴムトランス6の個数を求めることができる(S3)。
【0060】
次に、地絡事故点8までのゴムトランス6の個数Nflを算出した後、地絡事故位置判定部14は地絡機器位置特定手段14Cを実行する。
【0061】
地絡機器位置特定手段14Cは、接続点2から地絡事故点8までのゴムトランス6の個数Nflと機器管理テーブル15c1に格納される機器番号(ゴムトランス番号)とを比較する(S4)。
【0062】
そして、機器管理テーブル15c1からゴムトランス6の個数Nflに相当する接続点2からのNfl番目の機器番号を特定し、当該機器番号に対応する機器名称及び機器位置(機器までの距離)を特定し(S5)、データ加工部16−1に送出する。
【0063】
ここで、データ加工部16−1は、回路構成情報保存部15cから例えば地絡事故等の発生対象となる灯火回路部5のフレーム画像データまたはビットマップ方式でデジタルデータ化された画像ファイルデータ、あるいは灯火回路部5を構築するための回路構成要素データを取り出し、特に回路構成要素データの場合には予め定める編集手順ソフトに従って灯火回路部5の回路構成画像データを作成する。
【0064】
データ加工部16−1は、回路構成画像データ(画像ファイル,画像ファイルを含む)を作成した後、地絡事故位置判定部14から機器名称及び機器位置(距離)を受け取ると、回路構成画像データ上に連なる機器画像のうち、機器名称及び該当機器位置(距離)に対応する機器画像部分に、ユーザが地絡事故点を把握し易い所要とする図形、例えば×印のマーキングデータ21を付与し、表示部16−2に表示する(事故点表示ステップ)。
【0065】
図8は表示部16−2に表示された画面表示例を示す図である。すなわち、表示画面には、ループ状に配列されたケーブルライン4´上に灯火回路部5を構成するゴムトランス6´,…の画像が所定の順序で配置され、最後尾から3つ目のゴムトランス6´の位置に地絡事故点が存在することを表している。なお、22は機器位置と地絡抵抗とから定まる機器の位置ずれ範囲を表す。
【0066】
通常、地絡事故点8の地絡抵抗9の大きさに応じて機器位置に多少のずれが生じる(図9参照)。そこで、該当する推定機器位置(距離)に例えば×印のマーキングデータ21を付与するが、同時に表示部16−2の表示画面に推定機器位置に応じて地絡事故点8のずれ範囲22を例えば実線枠で明示することにより、地絡事故点の確認範囲が明確になり、ひいては、ケーブルやゴムトランスを含む機器交換の有無を迅速に判断できる。
【0067】
なお、極端な大きさの地絡抵抗23を除けば、該当機器位置(距離)が中央の機器番号例えば「99」を挟んで例えば「49」から「149」の位置であれば、非常に少ないずれ範囲で機器位置を特定することができる。
【0068】
従って、以上のような実施の形態によれば、地絡事故等の発生対象となっている地中ケーブル4に接続される灯火回路部5に定電流電源1に代えて、直流電源11の直流電圧を印加し、灯火回路部5の両端部からフイルタ部13−1を通して対地電圧V1,V2及び極性反転後の対地電圧V1´,V2´を取り出す。そして、空港灯火電源システムに特有の誘導ノイズ成分のうち、比較的小刻みな誘導ノイズ成分をフイルタ部13−1で抑制し、比較的大きなレベル変化を伴うノイズ成分は、対地電圧V1,V2の差分をとることで互いに打ち消し、誘導ノイズ成分の影響を大幅に低減でき、地絡位置の特定精度を高めることができる。
【0069】
また、従来の地絡事故点8の特定方法は、従来周知の幾つかの測定法を組合せながら大雑把に地絡位置を推定していたが、ケーブル4やゴムトランス6の抵抗、灯火回路部5の回路構成情報等を用いて、前記式(10)や式(11)のようにケーブル4に直列に接続される何番目のゴムトランス5を地絡事故点とする地絡位置を特定し、灯火回路部5の回路構成画像データの中の該当ゴムトランス5などの機器にマーキング21を付加し表示するので、作業員は何れの機器(個所)に地絡事故が発生したかが直ちに認識でき、かつ、一連の処理手順に従って自動的に機器位置を特定でき、作業員の負担を大幅に軽減でき、精度の高い地絡位置から容易に事故点の確認や機器交換作業を実施でき、ひいては迅速に復旧作業を進めることが可能である。
【0070】
なお、上記実施形態では、便宜上,ケーブル4を含む灯火回路部5の事故の一例として地絡事故を上げて説明したが、作業員による定期点検時、例えば地絡事故が発生する前の段階である絶縁抵抗が大きく低下している事故予兆時、接続点2から絶縁抵抗が大きく低下している部分までの加算抵抗をRxとすれば、ケーブル4を含む灯火回路部5などの絶縁耐力が低下している該当部位を容易に特定できる。
【0071】
(実施形態2)
図10は空港灯火電源システムの事故点特定装置の実施形態2を説明する図である。
実施形態2は、地絡機器位置を特定する地絡事故位置判定部14のうち、特に地絡属性値推定手段14B及び地絡機器位置特定手段14Cの一部の処理に変更を加えたものである。
【0072】
すなわち、実施形態1の地絡属性値推定手段14Bは、図6に示すように対地電圧V1,V2,V1´,V2´を用いて、式(10)、式(11)に従って接続点2から地絡事故点8までのゴムトランス6の個数Nflを算出したが(S3)、実施形態2の地絡属性値推定手段14Bでは、ゴムトランス6の個数Nflではなく、図10に示すように接続点2から地絡事故点8までの地中ケーブル4及びゴムトランス6の加算抵抗(抵抗合計)Rxを算出するものである(S3´)。
【0073】
以上のように地絡事故点8までの加算抵抗(抵抗合計)Rxを算出した後、地絡事故位置判定部14は地絡機器位置特定手段14Cを実行する。
【0074】
地絡機器位置特定手段14Cでは、接続点2から地絡事故点8までの加算抵抗(属性値)Rxと図7に示す機器管理テーブル15c1に格納される接続点2から各機器までの加算抵抗とを比較し、Rxに最も近い加算抵抗を推定する(S4´)。
【0075】
そして、推定された加算抵抗に対応付けられた機器番号に基づき、機器管理テーブル15c1から当該機器番号に対応する機器名称及び地絡機器位置(距離)を特定し(S5)、データ加工部16−1に送出する。データ加工部16−1は、地絡事故位置判定部14から少なくとも地絡機器位置(距離)データを受け取ると、地中ケーブル4を含む灯火回路部5の構成を表す回路構成画像データ上に連なる機器画像のうち、該当機器位置(距離)に対応する機器画像に、地絡事故点として把握し易い所定図形、例えば×印のマーキングデータ21を付与し、表示部16−2に表示する。
【0076】
従って、実施形態2によれば、前述した実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0077】
(実施形態3)
図11は空港灯火電源システムの事故点特定装置の実施形態3を示す構成図であって、図1と比較して特に異なるところは、地絡事故位置判定部14と情報保存記憶部15の間に新たに情報選択部31を追加した構成である。その他の構成は図1と同様であるので、同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0078】
この空港灯火電源システムは、前述したように灯火の種類ごと、同一種類の灯火であっても所定個数ごとにグループ化され、多数のグループごとの地中ケーブル4が地中に併設され、各地中ケーブル4にそれぞれ直列に多数のゴムトランス6,…が接続されている。
【0079】
そこで、情報保存記憶部15には、グループ番号ごと、あるいは所定の識別番号(灯火の種類と設置個所・区域など)に対応付けて複数のケーブル4を含む灯火回路部5に関する属性・構成回路情報が保存されている。
【0080】
そこで、本実施形態における空港灯火電源システムでは、新たに情報選択部31を設け、あるケーブル4を含む灯火回路部5に地絡事故が発生したとき、情報保存記憶部15から地絡事故の発生対象となった地中ケーブル4を含む灯火回路部5のグループ番号を選定し、該当する地中ケーブルを含む灯火回路部5に属する属性・回路構成情報を選択し、地絡事故位置の特定処理のために後続の地絡事故位置判定部14及びデータ加工部16−1に提供するものである。
【0081】
情報選択部31としては、人為的に選択操作する少なくとも1個のロータリスイッチ、グループ数に応じた押しボタンスイッチ、あるいは事故点特定装置10にパーソナルコンピュータが使用されている場合にはキーボード、表示画面にグループ番号がメニュー表示されている場合にはグループ番号を選択するポインティングデバイスが用いられる。
【0082】
従って、以上のような実施形態によれば、事故点を特定するためのケーブル4を含む灯火回路部5が複数存在する場合でも、実際に地絡事故または事故予兆状態にある1つのケーブル4を含む灯火回路部5に属する属性・回路構成情報を選択し、地絡機器位置を特定できる。
【0083】
(実施形態4)
図12は空港灯火電源システムの事故点特定装置の実施形態4を示す構成図である。
この実施形態4において、図11と比較して特に異なるところは、新たに回路切替選択部32及び回路切替部33−1,33−2,33−3,…を追加した構成である。
【0084】
従って、その他の構成は図1,図11と同様であるので、同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0085】
回路切替選択部32としては、地絡事故が発生したケーブル4を含む灯火回路部例えば5−1に接続される回路切替部33−1に対して切替指令を送出するものであって、前述した情報選択部31で説明したスイッチなどが用いられる。
【0086】
回路切替部32−1,32−2,32−3,…は、各定電流電源1−1,1−2,…と各ケーブル4を含む灯火回路部5−1,5−2,…の間に個別に設けられ、回路切替選択部32から例えば回路切替部32−1が切替指令を受けると、定電流電源1−1に代えて、ケーブル4の両端部(接続点2,3)に直流電源11及び電圧計測部13を接続し、ケーブル4の両端部に所定の直流電圧を印加し、地絡事故点を特定するために必要な対地電圧の計測準備を整える。すなわち、ケーブル4の両端部に所定の直流電圧を印加するとともに、電圧計測部13にて当該ケーブル4の両端部に現れる対地電圧を計測する。
【0087】
一方、情報選択部31は、回路切替選択部32から送られてくるスイッチ信号から何れのケーブルを含む灯火回路部例えば5−1を選択したかを認識し、情報保存記憶部15から該当するケーブルを含む灯火回路部例えば5−1に属する属性・回路構成情報を選択し、地絡事故位置判定部14及びデータ加工部16−1に提供する。
【0088】
従って、以上のような実施形態によれば、例えば4つのケーブル4を含む灯火回路部5−1〜5−4の中から、地絡事故の発生したケーブル4を含む灯火回路部5−1に対応する回路切替部33−1に切替指令を送出し、自動的に地絡事故位置を特定するための計測準備を整えるので、現場に出向いて回路の繋ぎかえなどの作業が不要となって作業員の負担が大幅に軽減でき、速やかに地絡事故位置を特定でき、迅速に復旧作業を進めることが可能である。
【0089】
(その他の実施形態)
(1) 上記実施形態では、各ゴムトランス6,…に接続される灯火7の例について説明したが、ゴムトランス6を使用せずに例えばLED灯火を使用する灯火電源システムの場合でも同様に適用できる。すなわち、ループ状に配置されるケーブル4に直列に複数のLED灯火を接続し、前述した各ゴムトランス6の抵抗(インピーダンス)を各LED灯火の抵抗(インピーダンス)に置き換えれば、容易に地絡機器(LED灯火)位置を特定できる。
【0090】
(2) また、空港灯火電源システムは、空港に設置される灯火7に限るものでなく、ループ状をなすケーブルに直列に一般の照明が接続されている電源システムも含むものであり、同様に適用可能である。
【0091】
(3) 実施形態4では、対象となる灯火回路部として、4つの灯火回路部5−1〜5−4を例に上げて説明したが、灯火回路部の数に限定されるものでなく、灯火回路部ごとに回路切替部を設けることにより、任意の灯火回路部数に対応することが可能である。
【0092】
(4) また、上記実施形態では、地中ケーブル4に直列に接続される複数のゴムトランス6について説明したが、例えば地中に埋設せずに例えば断面凹状の蓋付き溝などに敷設されるケーブルに直列に複数のゴムトランス6が接続された構成のものでも同様に適用できるものである。
【0093】
(5) 上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1,1−1,1−2,……定電流電源、2,3…接続点、4…地中ケーブル、5,5−1,5−2,……灯火回路部、6、6(1)…ゴムトランス、7…灯火、8…地絡事故点、10…事故点特定装置、11…直流電源、12…極性切替部、13…電圧計測部、13−1…フイルタ部、13−2,13−3…対地電圧計測部、14…地絡事故位置判定部、14A…機器必要情報算出手段、14B…地絡属性値推定手段、14C…地絡機器位置特定手段、15…情報保存記憶部、16…外部出力装置、16−1…データ加工部、16−2…表示部、31…情報選択部、32…回路切替選択部、33−1,33−2,…回路切替部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の出力側にループ状をなすようにケーブルが配置され、当該ケーブルに直列に複数の灯火に関する負荷機器を備えた灯火回路部が接続され、前記ケーブルを含む灯火回路部に事故が発生したとき、その事故点を特定する空港灯火電源システムの事故点特定装置であって、
前記事故発生時に前記交流電源に代えて前記ケーブルの両端部に接続され、前記灯火回路部に直流電圧を印加する直流電圧印加手段と、
前記ケーブルの両端部に接続され、フイルタ部を通して当該ケーブル各端部の対地電圧を計測する電圧計測手段と、
前記ケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報を保存する情報保存手段と、
前記電圧計測手段で計測された複数の対地電圧及び前記情報保存手段に保存された属性・回路構成情報を用いて、事故点である前記負荷機器位置を特定する事故位置判定手段と、
この事故位置判定手段で特定された負荷機器位置に基づき、前記情報保存手段に保存された回路構成情報から得られる前記ケーブルを含む灯火回路部を構成する回路構成画像データに存在する前記特定された負荷機器位置に事故点を表すマーキングを施して表示する外部出力装置と
を備えたことを特徴とする空港灯火電源システムの事故点特定装置。
【請求項2】
前記ケーブルを含む灯火回路部に発生する事故には、少なくとも地絡事故の他、当該地絡事故が発生する前の段階である前記ケーブルの絶縁抵抗が所定値以下となる事故予兆を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の空港灯火電源システムの事故点特定装置。
【請求項3】
前記事故位置判定手段は、前記情報保存手段に保存された前記ケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報から前記ケーブルの一方端部から前記各負荷機器までの加算距離(機器位置)及び加算抵抗を順次算出し保存する機器必要情報算出手段と、前記直流電圧印加手段から所定極性及び極性反転された直流電圧の印加後、前記電圧計測手段で計測された各対地電圧と前記負荷機器の全個数または少なくとも前記灯火回路部を構成する全負荷機器の加算抵抗とを用いて、前記ケーブルの一方端部から前記事故点までの負荷機器の個数または加算抵抗を推定する地絡属性値推定手段と、この地絡属性値推定手段で推定された負荷機器の個数または加算抵抗と前記機器必要情報算出手段で算出された前記各負荷機器までの加算距離(機器位置)または加算抵抗とを比較し、事故点となった前記負荷機器位置を特定する地絡機器位置特定手段とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空港灯火電源システムの事故点特定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の空港灯火電源システムの事故点特定装置において、
前記情報保存手段に保存された複数のケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報の中から、事故点を特定するためのケーブルを含む灯火回路部に関する属性・回路構成情報を選択し、前記事故位置判定手段や前記外部出力装置に提供する情報選択手段をさらに設けたことを特徴とする空港灯火電源システムの事故点特定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の空港灯火電源システムの事故点特定装置において、
複数のケーブルを含む灯火回路部のうち、事故が発生された前記ケーブルを含む灯火回路部を選択するための切替指令を出力する回路切替選択手段と、
前記各灯火回路部のケーブル両端部にそれぞれ接続され、前記回路切替選択手段から切替指令を受けたとき、前記交流電源に代えて前記事故点を特定するためのケーブルを含む灯火回路部に前記直流電圧印加手段からの直流電圧を印加し、かつ当該ケーブル両端部に前記電圧計測手段を接続する回路切替手段と、
前記回路切替選択手段から回路選択に関する前記切替指令を受けたとき、前記情報保存手段に保存される複数のケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報の中から、前記事故点を特定するためのケーブルを含む灯火回路部を認識し、当該ケーブルを含む灯火回路部に関する属性・回路構成情報を選択し、前記事故位置判定手段や前記外部出力装置に提供する情報選択手段をさらに設けたことを特徴とする空港灯火電源システムの事故点特定装置。
【請求項6】
交流電源の出力側にループ状をなすようにケーブルが配置され、当該ケーブルに直列に複数の灯火に関する負荷機器を備えた灯火回路部が接続され、前記ケーブルを含む灯火回路部に事故が発生したとき、その事故点を特定する空港灯火電源システムの事故点特定方法であって、
前記事故発生時に前記交流電源に代えて前記ケーブルを含む灯火回路部に直流電圧を印加するとともに、前記ケーブルの両端部の対地電圧を計測する計測ステップと、
この計測された複数の対地電圧及び予め記憶される前記ケーブルを含む灯火回路部の属性・回路構成情報を用いて、事故点となる負荷機器位置を特定する事故位置判定ステップと、
この特定された負荷機器位置に基づき、前記記憶された回路構成情報から得られる前記ケーブルを含む灯火回路部を構成する回路構成画像データ上に存在する前記負荷機器位置の機器画像に事故点マークを付して表示する事故点表示ステップと
を備えたことを特徴とする空港灯火電源システムの事故点特定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−122752(P2012−122752A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271507(P2010−271507)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】