説明

空調システム

【課題】 室内の温度上昇を効果的に抑制することができる空調システムを提供すること。
【解決手段】 室外と室内空間とを隔てる窓と、上記室内空間を、上記窓に近い側に位置するペリメータ空間と上記窓に遠い側に位置する生活空間とに隔てるシールド材と、からなる空調システムであって、上記シールド材は、枠体と、上記枠体の第1面に設けられた第1の熱遮蔽部材と、上記枠体の第2面に設けられた第2の熱遮蔽部材とからなり、上記枠体、上記第1の熱遮蔽部材及び上記第2の熱遮蔽部材に囲まれた領域には中空層が形成されており、上記シールド材の第1面側が上記窓側に配置され、上記シールド材の第2面側が上記生活空間側に配置され、上記シールド材の第1面と前記窓との間の距離は、50cm以下であることを特徴とする空調システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野、業種において、COの削減や省エネが要請されている。家庭で使用される電力のうち、エアコンの消費電力はその約1/4を占めるという統計があり、エアコンを効率よく稼働させて、その消費電力を少なくすることが望まれている。
近年、夏場の温度上昇が著しく、温度上昇に伴いエアコンの稼働率が高くなることから夏場における消費電力が上昇している。そのため、夏場においてエアコンを効率よく稼働させることが特に望まれている。
【0003】
これまで、エアコンを効率よく稼働させるために、窓の内側にブラインドを設けることによって室内に太陽光が直接到達することを防止して室内の温度上昇を抑制することが行われている。
また、ブラインドを設けるとともに、窓とブラインドとの間のペリメータ空間において送風機により天井方向に風を送り、ペリメータ空間内の熱を天井方向のダクト内に送り込ませることでペリメータ空間の温度上昇を緩和させて、冷房負荷を低減させる技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−14616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、窓の内側にブラインドを設けることによって、窓とブラインドとの間のペリメータ空間内に熱が蓄積されて、ペリメータ空間よりも室内側(窓よりも遠い側)に位置する空間の温度上昇を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、ブラインドは主にアルミニウム等の金属からなるため、ペリメータ空間の温度上昇に伴いブラインド自体の温度が高くなり、さらに、ブラインド内部の熱伝導率が高いためにブラインドの表面、裏面の温度が共に高くなる。すなわち、ブラインドの室内側の面の温度も高くなる。そして、高温となったブラインドの表面から室内に熱が放出されるために室内の温度が上昇してしまう。
【0007】
上記現象のため、窓の内側にブラインドを設けることによって達成される室内の温度上昇の抑制効果は不充分であり、室内の温度上昇を抑制するためのさらなる対策が望まれていた。
【0008】
本発明は、室内の温度上昇を効果的に抑制することができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、窓の内側に、中空層を有するシールド材を設けることによって、室内に流入する熱を少なくすることができ、その結果、室内の温度上昇を効果的に抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の空調システムは、
室外と室内空間とを隔てる窓と、
上記室内空間を、上記窓に近い側に位置するペリメータ空間と上記窓に遠い側に位置する生活空間とに隔てるシールド材と、からなる空調システムであって、
上記シールド材は、枠体と、上記枠体の第1面に設けられた第1の熱遮蔽部材と、上記枠体の第2面に設けられた第2の熱遮蔽部材とからなり、上記枠体、上記第1の熱遮蔽部材及び上記第2の熱遮蔽部材に囲まれた領域には中空層が形成されており、
上記シールド材の第1面側が上記窓側に配置され、上記シールド材の第2面側が上記生活空間側に配置され、
上記シールド材の第1面と前記窓との間の距離は、50cm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の空調システムでは、室内空間にシールド材が設けられており、シールド材が室内空間をペリメータ空間と生活空間とに隔てている。
そして、本発明の空調システムを用いると、ペリメータ空間内の温度が上昇した場合において、生活空間の温度上昇を抑制することができる。以下、その仕組みについて図1(a)及び図1(b)を用いて説明する。
【0012】
図1(a)は、本発明の空調システムの一例を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)において点線で囲んだ領域Aを拡大して示す部分拡大断面図である。
図1(a)に示す空調システム1では、室外2と室内空間3を隔てる窓20と、室内空間3をペリメータ空間4と生活空間5とに隔てるシールド材30が設けられている。
【0013】
シールド材30は、枠体33と、枠体33の第1面(窓20の側に配置された面)に設けられた第1の熱遮蔽部材31と、第2面(生活空間5の側に配置された面)に設けられた第2の熱遮蔽部材32とからなる。そして、枠体33、第1の熱遮蔽部材31及び第2の熱遮蔽部材32に囲まれた領域には中空層34が形成されている。
図1(a)においては、シールド材30の第1面と窓20との距離を両矢印Bで示している。以下、本明細書においてこの距離を「ペリメータ空間の奥行き」ともいう。
また、図1(b)においては、中空層の厚さを両矢印Cで示している。
【0014】
以下、窓から入射した太陽光が生活空間に伝わる機構について説明する。図1(a)及び図1(b)では、赤外線や可視光線の量を矢印の太さで模式的に示しており、矢印が太いほど光線の量が大きい(又は光線の強さが強い)ことを示している。
通常、窓から入射した太陽光100は、ペリメータ空間4に達し、窓側に配置された第1の熱遮蔽部材31に衝突する。第1の熱遮蔽部材31は、太陽光100に含まれる赤外線や可視光線の一部110を反射、拡散させて、太陽光100に含まれる赤外線や可視光線の全てが生活空間5に到達することを防止する。
まず、この作用により、生活空間5の温度上昇が抑制される。
【0015】
一方、ペリメータ空間4の温度は、第1の熱遮蔽部材31に反射された赤外線や可視光線110の影響によって上昇する。そして、ペリメータ空間4の温度上昇に伴い、第1の熱遮蔽部材31の表面温度も上昇することになる。
ここで、第1の熱遮蔽部材31に隣接している中空層34は、気体からなる部位であるため、その熱伝導率が低い。そのため、中空層34が存在すると、窓20の側に配置された第1の熱遮蔽部材31の温度が上昇しても、その熱は、生活空間5の側に配置された第2の熱遮蔽部材32に伝わりにくく、第2の熱遮蔽部材32の温度は、第1の熱遮蔽部材31の温度よりも低くなる。
【0016】
第2の熱遮蔽部材32の温度が上昇すると、第2の熱遮蔽部材32の表面からの輻射によって生活空間5の温度上昇が生じるが、本発明の空調システムでは、第2の熱遮蔽部材32の温度上昇が抑制されるため、生活空間5の温度上昇も抑制されることとなる。
【0017】
また、第2の熱遮蔽部材32も、太陽光に含まれる赤外線や可視光線の一部を反射、拡散させる部材である。そのため、第1の熱遮蔽部材31を透過した赤外線や可視光線の一部120のうち、さらにその一部の赤外線や可視光線130が、第2の熱遮蔽部材32によって反射、拡散される。そのため、生活空間5に到達する赤外線や可視光線140はさらに少なくなる。
この点からも、生活空間5の温度上昇が抑制される。
【0018】
そして、中空層34の温度は、第2の熱遮蔽部材32に反射された赤外線や可視光線130の影響によって上昇する。すなわち、中空層34には熱が蓄積されることとなるが、中空層34に蓄積した熱は生活空間5に流入しないこととなるため、生活空間5の温度上昇が抑制されることになる。
【0019】
このように、窓から太陽光が入射することによってペリメータ空間の温度は上昇するが、本発明の空調システムを用いた場合、ペリメータ空間の温度は、室外の温度よりも高くなる。すなわち、ペリメータ空間には、熱が蓄積される。
【0020】
また、本発明の空調システムが設けられていると、空調システムが設けられていない場合に生活空間に流入するであろう熱の多くがペリメータ空間に蓄積し、さらに中空層にも熱が蓄積するため、生活空間に実際に流入する熱が少なくなる。そのため、生活空間(すなわち、室内)の温度上昇を抑制することができる。
【0021】
本発明の空調システムでは、上記シールド材の第1面と上記窓との間の距離(図1(a)において両矢印Bで示す距離)が、50cm以下である。
シールド材の第1面と窓との間の距離が50cm以下であると、ペリメータ空間内で熱の輻射、対流が適度に作用し、その相乗効果により、ペリメータ空間に熱が蓄積されやすくなる。その結果、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができる。
シールド材の第1面と窓との間の距離が50cmを超えると、ペリメータ空間内での対流の影響が大きくなることがあり、そのために、熱が蓄積されにくくなる。また、室内空間における生活空間の割合が相対的に小さくなるため好ましくない。
【0022】
本発明の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材及び/又は第2の熱遮蔽部材が、障子紙からなることが望ましい。
障子紙は、太陽光に含まれる赤外線や可視光線の一部を好適に反射、拡散させることができることから望ましい。
また、障子紙は、ブラインドと異なり、太陽光に含まれる可視光線を適度に透過するため、生活空間を明るい状態に保ちつつ、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0023】
本発明の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材及び/又は第2の熱遮蔽部材が、和紙からなっていてもよい。
和紙は、太陽光に含まれる赤外線及び可視光線の一部を反射、拡散させる性質に優れているため、生活空間に流入する熱を少なくすることができる。
【0024】
また、本発明の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材及び/又は第2の熱遮蔽部材が、プラスチック、布、及び、合成樹脂のいずれかからなっていてもよい。
これらの材料を第1の熱遮蔽部材及び/又は第2の熱遮蔽部材として用いても、太陽光に含まれる赤外線及び可視光線の一部を反射、拡散させることができる。
【0025】
本発明の空調システムでは、中空層の厚さが、20cm以下であることが望ましい。
中空層の厚さが20cm以下であると、中空層内で輻射、対流とが適度に作用し、その作用により、中空層内に熱が蓄積されやすくなる。その結果、中空層内に蓄積された熱の一部がペリメータ空間へ逆流することがある。その結果として、ペリメータ空間に熱が蓄積されやすくなり、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができる。
【0026】
本発明の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材の色が、白色であってもよい。
第1の熱遮蔽部材が白色であると、生活空間を明るい状態に保ちつつ、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0027】
また、本発明の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材の色が、黒色であってもよい。
第1の熱遮蔽部材が黒色であると、第1の熱遮蔽部材に多くの熱が吸収されるため、中空層に流入する熱をより少なくすることができ、その結果、生活空間の温度上昇をより抑制することができる。
【0028】
本発明の空調システムでは、枠体で囲まれた空間が、枠体と接合された少なくとも一の桟材によって区画されていることが望ましい。枠体で囲まれた空間を、枠体と接合された少なくとも一の桟材によって区画することにより、枠体の強度を向上させることができる。
【0029】
本発明の空調システムにおいては、ペリメータ空間が、ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口を有していることが望ましい。
【0030】
上述したように、本発明の空調システムを用いた場合、窓から太陽光が入射することによってペリメータ空間の温度は上昇し、ペリメータ空間の温度は、室外の温度よりも高くなる。すなわち、ペリメータ空間には、熱が蓄積されて、いわゆる熱のカーテンが形成されることとなる。そのため、室外からペリメータ空間に伝わる熱の一部が、熱のカーテンにより、ペリメータ空間から室外側へ逆流するため、生活空間への流入する熱の総量が抑制されることとなる。その結果として、生活空間の温度上昇が抑制される。
本発明の空調システムに、ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口が設けられていると、ペリメータ空間の高温の気体を通気口を介して室外に排出することができる。すなわち、ペリメータ空間に蓄積した熱の一部を、通気口を介して室外に排出することができる。これにより、熱のカーテンの形成で蓄積された熱が通気口からも排出されることから、生活空間へ流入する熱の総量が抑制されることとなる。
【0031】
すなわち、本発明の空調システムに上記通気口が設けられていると、ペリメータ空間に蓄積した熱の一部を、通気口を介して室外に排出することができるため、ペリメータ空間の温度が過度に上昇することがない。その結果、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
本発明の空調システムにおいては、通気口が、ペリメータ空間の天井部分に設けられていることが望ましい。
ペリメータ空間に蓄積された熱によって温度が上昇した気体は、密度が小さくなるため、ペリメータ空間の下方から上方へ移動する。そのため、通気口がペリメータ空間の天井部分に設けられていると、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、通気口を介して効果的に室外に排出することができる。
【0033】
また、ペリメータ空間の天井部分に設けられている通気口の上部には、ファンが設けられていることが望ましい。
ペリメータ空間の気体が室外に排出されるようにファンを稼動させることにより、ペリメータ空間に下方から上方への対流を強制的に生じさせることができるため、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、通気口を介してより効果的に室外に排出することができる。この場合、熱の排出効果を一定にすることができ、生活空間への熱の流入の総量を定常的に抑制させることができる。
【0034】
本発明の空調システムにおいては、通気口が、ペリメータ空間の底部に設けられていてもよい。
また、ペリメータ空間の底部には、ペリメータ空間の底部に設けられている通気口に隣接してファンが設けられていてもよい。
これらの場合も、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、通気口を介して室外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1(a)は、本発明の空調システムの一例を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)において点線で囲んだ領域Aを拡大して示す部分拡大断面図である。
【図2】図2は、第一実施形態の空調システムに用いられるシールド材の一例を模式的に示す一部切欠斜視図である。
【図3】図3は、実施例1で作製されたシールド材を模式的に示す正面図である。
【図4】図4は、空調システム評価装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、各実施例及び各比較例において外部空間の温度を一定とした場合における熱照射時間と生活空間温度差Δtとの関係を示すグラフである。
【図6】図6は、各実施例及び各比較例において外部空間を一定とした場合における熱照射時間とシールド材表面温度差Δtとの関係を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1及び実施例7〜11並びに検討例2の結果から作成した、中空層の厚さとシールド材表面温度差Δtとの関係を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の空調システムの別の一例を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、空調システム評価装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第一実施形態)
以下、本発明の空調システムの一実施形態である第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の空調システムの一例を模式的に示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)において点線で囲んだ領域Aを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0037】
本実施形態の空調システム1においては、室外2と室内空間3とを隔てる窓20が設けられている。
【0038】
また、本実施形態の空調システム1では、室内空間3にシールド材30が設けられており、シールド材30により、室内空間3が、ペリメータ空間4と生活空間5とに隔てられている。
すなわち、ペリメータ空間4は、窓20とシールド材30との間に形成されている、室内空間の一部の空間である。
なお、シールド材30の第1面側は窓20の側に配置され、シールド材30の第2面側は生活空間5の側に配置されている。
【0039】
まず、本実施形態の空調システム1を構成する窓20について説明する。
窓20は、建築物に用いられる窓であれば特に限定されるものではないが、窓枠(サッシ)とガラスからなり、ガラスから太陽光が入射されるようになっている形態のものが好適に用いられる。
【0040】
次に、本実施形態の空調システム1を構成するシールド材30について説明する。
図2は、本実施形態の空調システムに用いられるシールド材の一例を模式的に示す一部切欠斜視図である。
シールド材30は、外枠である枠体33と、枠体33の第1面に設けられた第1の熱遮蔽部材31と、枠体33の第2面に設けられた第2の熱遮蔽部材32を有しており、枠体33、第1の熱遮蔽部材31及び第2の熱遮蔽部材32に囲まれた領域には中空層34が形成されている。
【0041】
本実施形態で用いられるシールド材30では、枠体33は矩形形状を有し、枠体33には桟材35が格子状に接合されており、枠体33で囲まれた空間が桟材35によって複数の領域に区画されている。
本実施形態では、矩形形状の枠体33で囲まれた空間を桟材35によってさらに細かい矩形形状に区画した態様の障子枠が用いられている。
【0042】
本実施形態においては、第1の熱遮蔽部材31及び第2の熱遮蔽部材32として和紙からなる障子紙が用いられている。
和紙からなる障子紙は、太陽光に含まれる赤外線や可視光線の一部を好適に反射、拡散させることができる。また、和紙からなる障子紙は、ブラインドと異なり、太陽光に含まれる可視光線を適度に透過するため、生活空間を明るい状態に保ちつつ、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
また、和紙からなる障子紙はアルミ等の金属からなるブラインドに比べて熱伝導率が低いため、熱遮蔽部材自体の温度上昇が抑制される。
【0044】
第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を構成する障子紙の色は特に限定されるものではないが、特に第1の熱遮蔽部材として白色又は黒色の障子紙を用いることができる。
【0045】
熱遮蔽部材として障子紙を用いる場合、その厚さは0.05mm〜5mmであることが望ましい。
厚さが0.05mm未満であると障子紙を障子枠に貼ることが困難である。また、厚さが5mmを超えると、シールド材が重くなり過ぎて実用的ではない。
【0046】
本実施形態のシールド材30における、中空層34の厚さ(図2中、両矢印Cで表される長さ)の好ましい下限は0.5cmである。また、中空層の厚さの好ましい上限は20cmであり、より好ましい上限は5cmであり、さらに好ましい上限は3cmである。
中空層の厚さが0.5cm未満であると、熱を蓄積させるための容積が相対的に小さいために、蓄積される熱がそれほど多くなく、生活空間の温度上昇を抑制する効果が充分に得られない場合がある。また、中空層の厚さが20cmを超えると、中空層内で対流の影響が大きくなることがあり、熱が生活空間側へ流出しやすくなり、その結果、生活空間の温度を抑制する効果を相殺してしまうことがある。また、中空層の厚さが厚くなることにより、生活空間の面積が小さくなってしまうといった設計上の制限を受けてしまうこともある。
【0047】
本実施形態の空調システム1においては、シールド材の第1面と窓との間の距離(図1(a)中、両矢印Bで表される長さ)が50cm以下であり、具体的には0.5〜50cmとなっている。
この距離は20cm以下であることが望ましく、特に0.5〜20cmであることが望ましい。
シールド材の第1面と窓との間の距離が0.5cm未満であると、ペリメータ空間が形成されない状態(窓とシールド材が接触してしまうことを意味する。)となることがある。そうなると、ペリメータ空間としての空間の役目を果たさなくなることがある。また、窓とシールド材が接触してしまうことによって熱伝導が引き起こされてしまうために、熱が蓄積されにくくなることがある。その結果、生活空間の温度上昇を抑制する効果が充分に得られない場合がある。
この距離が0.5〜50cmであると、ペリメータ空間内で熱の輻射、対流が適度に作用し、その相乗効果により、ペリメータ空間に熱が蓄積されやすくなり、その結果、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができる。
また、この距離が0.5〜20cmであると、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができるとともに、生活空間の設計に制限を与えない範囲であるともいえるために好ましい。
【0048】
以下、本実施形態の空調システムに用いられるシールド材を作製する方法、及び、作製したシールド材を用いて空調システムとする方法について説明する。
シールド材の作製においては、図2に示す枠体33及び桟材35を有する障子枠を準備し、この障子枠の第1面及び第2面に障子紙を貼り付ける。
障子紙を貼り付ける方法は特に限定されるものではなく、水糊、両面テープ、アイロン貼り等の方法を用いることができる。
第1面に貼り付けた障子紙が第1の熱遮蔽部材となり、第2面に貼り付けた障子紙が第2の熱遮蔽部材となる。
【0049】
上記方法で作製したシールド材を、シールド材の第1面と窓と間の距離が0.5〜50cmとなるように、室内空間に配置することによって、本実施形態の空調システムとすることができる。
例えば、シールド材の第1面と窓との間の距離が0.5〜50cmとなる位置に、シールド材の幅に合わせた幅を有する敷居を設け、敷居にシールド材を嵌め込むことによってシールド材を配置して本実施形態の空調システムとすることができる。
【0050】
以下、本実施形態の空調システムの作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の空調システムは、室外と室内空間とを隔てる窓と、室内空間を、窓に近い側に位置するペリメータ空間と窓に遠い側に位置する生活空間とに隔てるシールド材と、からなる。
そのため、窓から入射した太陽光に含まれる赤外線や可視光線の一部を、シールド材により反射、拡散させることができる。その結果、空調システムが設けられていない場合に生活空間に流入するであろう熱をペリメータ空間に蓄積することができる。従って、生活空間に実際に流入する熱を少なくすることができるため、生活空間(すなわち、室内)の温度上昇を抑制することができる。
【0051】
(2)本実施形態の空調システムに用いられるシールド材は、枠体と、枠体の第1面に設けられた第1の熱遮蔽部材と、枠体の第2面に設けられた第2の熱遮蔽部材とからなり、枠体、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材に囲まれた領域には中空層が形成されている。
実施形態の空調システムにおいては、シールド材に中空層が存在するため、ペリメータ空間に熱が蓄積されることにより第1の熱遮蔽部材の温度が上昇しても、その熱は、生活空間側に配置された第2の熱遮蔽部材に伝わりにくくなる。従って、本実施形態の空調システムでは、第2の熱遮蔽部材の温度上昇を抑制することができるため、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0052】
(3)本実施形態の空調システムにおいては、中空層の厚さが0.5〜20cmとなっている。
中空層の厚さが0.5〜20cmであると、中空層内で輻射、対流とが適度に作用し、その作用により、中空層内に熱が蓄積されやすくなる。その結果、中空層内に蓄積された熱の一部がペリメータ空間へ逆流することがある。その結果として、ペリメータ空間に熱が蓄積されやすくなり、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができる。
中空層の厚さが0.5cm未満であると、熱を蓄積させるための容積が相対的に小さいために、蓄積される熱がそれほど多くなく、生活空間の温度上昇を抑制する効果が充分に得られない場合がある。また、中空層の厚さが20cmを超えると、中空層内で対流の影響が大きくなることがあり、熱が生活空間側へ流出しやすくなり、その結果、生活空間の温度を抑制する効果を相殺してしまうことがある。また、中空層の厚さが厚くなることにより、生活空間の面積が小さくなってしまうといった設計上の制限を受けてしまうこともある。
【0053】
(4)本実施形態の空調システムにおいては、シールド材を構成する第2の熱遮蔽部材により、第1の熱遮蔽部材を透過した赤外線や可視光線の一部を、反射、拡散させることができる。その結果、ペリメータ空間だけでなく、中空層にも熱を蓄積することができる。従って、生活空間に実際に流入する熱の総量をより少なくすることができるため、生活空間(すなわち、室内)の温度上昇を抑制することができる。
【0054】
(5)本実施形態の空調システムでは、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材として和紙からなる障子紙を用いている。和紙は、太陽光に含まれる赤外線及び可視光線の一部を反射、拡散させる性質に優れているため、生活空間に流入する熱を少なくすることができる。また、和紙からなる障子紙は、ブラインドと異なり、太陽光に含まれる可視光線を適度に透過するため、生活空間を明るい状態に保ちつつ、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0055】
(6)本実施形態の空調システムにおいては、シールド材の第1面と窓との間の距離は0.5〜50cmである。そのため、ペリメータ空間に熱を効果的に蓄積することができ、生活空間の温度上昇を抑制する効果を充分に得ることができる。
【0056】
(7)本実施形態の空調システムにおいては、第1の熱遮蔽部材として、白色の障子紙を用いることができる。
第1の熱遮蔽部材が白色の障子紙からなると、生活空間を明るい状態に保ちつつ、生活空間の温度上昇を抑制することができる。
【0057】
(8)本実施形態の空調システムにおいては、第1の熱遮蔽部材として、黒色の障子紙を用いることができる。
第1の熱遮蔽部材が黒色の障子紙からなると、第1の熱遮蔽部材に多くの熱が吸収されるため、中空層に流入する熱をより少なくすることができ、その結果、生活空間の温度上昇をより抑制することができる。
【0058】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
以下の各実施例及び各比較例では、窓とシールド材とが設けられてなる空調システムについて、以下の方法により評価を行った。
まず、シールド材を作製し、得られたシールド材を用いて空調システム評価装置を作製した。そして、この空調システム評価装置を使用して空調システムの各評価を行った。
【0060】
(実施例1)
(1)シールド材の作製
以下の手順により、シールド材を作製した。
図3は、実施例1で作製されたシールド材を模式的に示す正面図である。
【0061】
まず、図3に示すシールド材40を構成する枠体43を準備した。
枠体43は外周に位置する外枠43aと縦方向に伸びる3本の縦桟43bとからなる木材であり、枠体43は4ヶ所に区画された空間を有する。そして、4ヶ所に区画された空間が、桟材44によってさらに区画されている。枠体43の外形寸法は、高さ200cm、幅170cmである。
【0062】
次に、枠体43の第1面に、白色の和紙からなる障子紙41(厚さ0.15mm)を貼り、第1の熱遮蔽部材41を形成した。続いて、枠体43の第2面にも第1面に貼ったものと同じ白色の障子紙を貼り、第2の熱遮蔽部材42を形成し、シールド材40を作製した。
このとき、シールド材40に形成された中空層の厚さは2.5cmであった。
【0063】
(2)空調システム評価装置の作製
以下の手順により、空調システム評価装置を作製した。
図4は、空調システム評価装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0064】
まず、木材を用いて、内寸が幅178cm×奥行き209cm×高さ231cmである木枠211を作製し、空調システム評価装置200の骨組みを作製した。
この骨組みにより形成される形状は略直方体形状である。
次に、厚さ3cmのスチレンボード212を木枠211に埋設し、空調システム評価装置200の天井部分213、床部分214及び壁部分215を形成した。
この際、骨組みにより形成される略直方体形状の4つの側面のうち3つの側面にはスチレンボードを埋設して壁部分215を形成し、1つの側面にはスチレンボードを埋設せずに開放面216とした。
そして、上記開放面216(以下、入口部分ともいう)にはビニールシート217を貼った。
【0065】
そして、入口部分216から109cm隔てた位置に、上記(1)で作製したシールド材40を、シールド材40の第1面側が入口部分216の側に配置されるように設置した。また、入口部分216から100cm隔てた位置に、ガラスが設けられた高さ210cm×幅180cmのサッシ(新日軽社製 ALITS)を窓20として設置した。
以上により、空調システム評価装置200には、シールド材40の第1面と窓20との間の距離が9cmであるペリメータ空間204が形成された。なお、本実施例では、シールド材の第1面と窓との間の距離を、ペリメータ空間の奥行きともいうこととする。
また、空調システム評価装置200において、ビニールシート217と窓20とに囲まれた空間を外部空間202とする。また、ビニールシート217と対向する壁部分215とシールド材40とに囲まれた空間を生活空間205とする。
【0066】
また、外部空間202には、熱源220を設置した。熱源220には、白熱電球221(消費電力60W パナソニック社製 レフ電球 RF100V54W)が縦4列×横5列に等間隔に配列されている。
熱源を配置する位置は、空調システム評価装置200の奥行き方向(図3における左右方向)において、白熱電球221の先端と窓20との距離が30cmとなる位置とした。
以上の手順により、空調システム評価装置200を作製した。
【0067】
(3)外部空間からの熱照射による断熱性評価
上記空調システム評価装置において、外部空間からの熱照射による断熱性評価を以下に示す手順で行った。
(3−1)空間温度測定
まず、空調システム評価装置に形成された各空間の温度を測定した。
具体的には、空調システム評価装置200の外部空間202、生活空間205、及び、ペリメータ空間204において、天井部分からの距離が80cmとなる位置に熱電対(T型熱電対)を設置した。そして、熱源220に設けられた白熱電球221を点灯することにより熱を照射した。このとき、外部空間202の温度が一定となるように熱照射量を調整した。
なお、熱電対を設ける位置は、空調システム評価装置200の奥行き方向(図3における左右方向)において、外部空間202においては窓20からの距離が5〜10cmとなる位置であって、白熱電球からの光が直射されない位置とし、ペリメータ空間204においては窓20とシールド材40の第1面の中間点となる位置とし、生活空間205においてはシールド材の第2面からの距離が50cmとなる位置とした。
【0068】
熱電対を設けた各測定点の温度を、熱源から熱を照射し始めたときから1分間隔で測定して、外部空間、生活空間、及び、ペリメータ空間の温度をそれぞれT、T、Tとした。そして、ペリメータ空間の温度Tから外部空間の温度Tを引いたペリメータ空間温度差Δt、及び、外部空間の温度Tから生活空間の温度Tを引いた生活空間温度差Δtを求めた。
【0069】
図5は、各実施例及び各比較例において外部空間の温度を一定とした場合における熱照射時間と生活空間温度差Δtとの関係を示すグラフである。図5に示すように、生活空間温度差Δtは、一定時間熱を照射すると一定の値を示していた。
なお、図5には実施例1の結果に加えて、後述する実施例2、比較例1〜4の結果を合わせて示している。
外部空間の温度を35℃又は38℃に設定した場合において、Δt及びΔtが一定の値を示したときの値を求めた。外部空間の温度が35℃の場合はΔt=2.2℃、Δt=11.3℃であり、外部空間の温度が38℃の場合はΔt=2.5℃、Δt=11.8℃であった。
【0070】
(3−2)シールド材の表面温度測定
また、上記(3−1)の空間温度測定と同時に、シールド材の表面温度として、シールド材を構成する第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材の温度を測定した。
具体的には、天井部分からの距離が80cmとなる位置で、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材の表面のうちシールド材の外側の表面に熱電対を接触させて設置し、各測定点での温度を求めた。
なお、各実施例では、第1の熱遮蔽部材の温度をシールド材第1面温度T、第2の熱遮蔽部材の温度をシールド材第2面温度Tとした。
そして、シールド材第1面温度Tからシールド材第2面温度Tを引いたシールド材表面温度差Δtを求めた。
【0071】
図6は、各実施例及び各比較例において外部空間の温度を一定とした場合における熱照射時間とシールド材表面温度差Δtとの関係を示すグラフである。図6に示すように、シールド材表面温度差Δtは、一定時間熱を照射すると一定の値を示していた。
なお、図6には実施例1の結果に加えて、後述する実施例2、比較例2〜4の結果を合わせて示している。
外部空間の温度を35℃及び38℃に設定した場合において、Δtが一定の値を示したときの値を求めた。外部空間の温度が35℃の場合はΔt=6.7℃であり、外部空間の温度が38℃の場合はΔt=7.6℃であった。
【0072】
実施例1において用いたシールド材の構成、及び、シールド材に形成された中空層の厚さ並びにペリメータ空間の奥行きを表1に示した。また、空間温度測定の結果求めたΔt及びΔtの値を表2に、シールド材の表面温度測定の結果求めたΔtの値を表3に、それぞれ示した。
【0073】
(実施例2)
枠体の第1面に黒色の和紙からなる障子紙を貼った他は、実施例1と同様にしてシールド材を作製した。そして、このシールド材を用いて空調システム評価装置を作製し、実施例1と同様にして空間温度測定及びシールド材の表面温度測定を行った。
【0074】
(実施例3〜6及び検討例1)
実施例1で作製したシールド材を用いて、ペリメータ空間の奥行きを表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にして空調システム評価装置を作製した。そして、実施例1と同様にして空間温度測定を行い、外部空間の温度を35℃又は38℃に設定した場合におけるΔt及びΔtを求めた。各測定条件及び各測定結果を表1及び2に示した。
【0075】
(実施例7〜11及び検討例2)
中空層の厚さを表1に示すように変更した他は、実施例1と同様にしてシールド材を作製した。そして、このシールド材を用いて空調システム評価装置を作製し、実施例1と同様にしてシールド材の表面温度測定を行い、外部空間の温度を35℃又は38℃に設定した場合におけるΔtを求めた。各測定条件及び各測定結果を表1及び3に示した。
【0076】
(比較例1)
シールド材を設置しなかった他は、実施例1と同様にして空調システム評価装置を作製した。そして、実施例1と同様にして空間温度測定を実施した。測定条件及び測定結果を表1〜3に示した。なお、この場合ペリメータ空間が存在しないためにΔtは測定しておらず、Δtは、生活空間の温度を窓からの距離が生活空間側において59cmとなる位置としてTを求めることによって算出した。
測定条件及び測定結果を表1及び2に示した。
【0077】
(比較例2)
シールド材の代わりに緑色のブラインド(アルミブラインド カリーノ25、高さ183cm×幅175cm、羽根幅25mm)を設置した他は、実施例1と同様にして空調システム評価装置を作製した。なお、ブラインドは、羽根を閉じた状態で設置した。そして、実施例1と同様にして空間温度測定及びシールド材の表面温度測定を行った。測定条件及び測定結果を表1〜3に示した。
【0078】
(比較例3)
枠体の第2面に障子紙を貼らなかった他は、実施例1と同様にしてシールド材を作製した。そして、このシールド材を用いて空調システム評価装置を作製し、実施例1と同様にして空間温度測定及びシールド材の表面温度測定を行った。測定条件及び測定結果を表1〜3に示した。
【0079】
(比較例4)
枠体の第1面に黒色の和紙からなる障子紙を貼り、枠体の第2面に障子紙を貼らなかった他は、実施例1と同様にしてシールド材を作製した。そして、このシールド材を用いて空調システム評価装置を作製し、実施例1と同様にして空間温度測定、シールド材の表面温度測定を行った。測定条件及び測定結果を表1〜3に示した。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
まず、空間温度測定の結果について述べる。
表2より、シールド材が第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有する実施例1及び2では、ペリメータ空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときはそれぞれ2.2℃及び3.4℃であり、外部空間の温度が38℃のときはそれぞれ2.5℃及び4.1℃であった。ペリメータ空間温度差Δtがプラスの値を示すということは、ペリメータ空間の温度が外部空間の温度よりも高いことを意味する。すなわち、実施例1及び2では、ペリメータ空間に熱が蓄積されていると考えられる。
【0084】
一方、シールド材が第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していない比較例2〜4では、ペリメータ空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときは−4.9〜−0.7℃、外部空間の温度が38℃のときは−4.6〜−0.9℃であり、すべてマイナスの値であった。ペリメータ空間温度差Δtがマイナスの値を示すということは、ペリメータ空間の温度が外部空間の温度よりも低いことを意味する。従って、比較例2〜4では、ペリメータ空間に熱が蓄積されていないと考えられる。
【0085】
次に、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有するシールド材を用いた空調システム評価装置に形成したペリメータ空間の奥行きの違いによるペリメータ空間温度差Δtの影響について評価した。
ペリメータ空間の奥行きを0.5〜50cmとした実施例1、3〜6では、ペリメータ空間温度差Δtはプラスの値を示した。
これに対し、シペリメータ空間の奥行きを60cmとした検討例1では、ペリメータ空間温度差Δtは外部空間の温度が35℃のときは、0.0℃であり、外部空間の温度が38℃のときは、−0.1℃であった。
この結果は、ペリメータ空間の奥行きが50cm以下であるとペリメータ空間に熱が蓄積されるが、ペリメータ空間の奥行きが50cmを超えるとペリメータ空間に熱が蓄積されにくいことを示していると考えられる。
【0086】
また、シールド材が第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有する実施例1及び2では、生活空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときはそれぞれ11.3℃及び14.4℃であり、外部空間の温度が38℃のときはそれぞれ11.8℃及び15.1℃であった。外部空間の温度が一定である場合には、生活空間温度差Δtはその値が大きいほど生活空間の温度が低いことを意味する。すなわち、実施例1及び2では、生活空間の温度上昇が抑制されていると考えられる。
そして、実施例1と実施例2の比較から、第1の熱遮蔽部材である障子紙の色が黒色である場合には生活空間の温度上昇がより効果的に抑制されていることがわかる。
【0087】
一方、シールド材が第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していない比較例2〜4、並びに、空調システム評価装置にシールド材が設置されていない比較例1では、生活空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときは3.5〜7.8℃、外部空間の温度が38℃のときは3.4〜8.0℃であった。これらの値はいずれも実施例1及び2における値よりも低くなっていた。この結果は、これら比較例においては生活空間の温度上昇があまり抑制されていなかったことを示している。
【0088】
以上より、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有するシールド材を用い、空調システムに形成するペリメータ空間の奥行きを50cm以下とすることにより、ペリメータ空間に熱を蓄積することができ、その結果、生活空間の温度上昇を抑制することができると考えられる。
【0089】
次に、シールド材の表面温度測定の結果について述べる。
表3より、シールド材が第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有する実施例1及び2では、シールド材表面温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときはそれぞれ6.7℃及び12.9℃であり、外部空間の温度が38℃のときはそれぞれ7.6℃及び14.0℃であった。
シールド材表面温度差Δtが大きいほど、シールド材及びシールド材に形成された中空層により多くの熱が蓄積されていることを意味する。その結果、実施例1及び2では、生活空間に流通する熱が少なく、生活空間の温度上昇が抑制されていると考えられる。
【0090】
一方、シールド材が第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していない比較例2〜4では、シールド材表面温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときは0.0〜3.6℃、外部空間の温度が38℃のときは0.2〜3.9℃であり、これらの値はいずれも実施例1及び2における値よりも低かった。
【0091】
次に、シールド材に形成された中空層の厚さの違いによるシールド材表面温度差Δtの影響について評価した。
実施例1及び実施例7〜11において、シールド材に形成された中空層の厚さが0.5〜20cmであるとき、外部空間の温度が35℃のときのシールド材表面温度差Δtは6.0〜6.7℃であり、外部空間の温度が38℃のときのシールド材表面温度差Δtは6.1〜7.6℃であった。
また、検討例2では中空層の厚さが25cmであり、外部空間の温度が35℃のときのシールド材表面温度差Δtは4.9℃であり、外部空間の温度が38℃のときのシールド材表面温度差Δtは5.0℃であった。
この結果から、実施例1及び実施例7〜11並びに検討例2では、中空層に熱が蓄積されていると考えられる。特に、中空層の厚さが20cm以下であると効果的に熱が蓄積されていることがわかる。
図7は、実施例1及び実施例7〜11並びに検討例2の結果から作成した、中空層の厚さとシールド材表面温度差Δtとの関係を示すグラフである。
この結果から、中空層に蓄積される熱は中空層の厚さが2.5cmであるときに最大となることがわかる。
また、中空層の厚さが大きくなるにつれシールド材表面温度差Δtが小さくなっている。これは、中空層の厚さが大きくなるにつれ、中空層に熱が蓄積されにくくなるためと考えられる。
【0092】
以上より、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有するシールド材を用い、ペリメータ空間の奥行きを50cm以下とすることにより、ペリメータ空間及びシールド材に形成された中空層に熱を蓄積することができ、その結果、生活空間の温度上昇を抑制することができると考えられる。
【0093】
(第二実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本実施形態では、第一実施形態の空調システムにおいて、ペリメータ空間の天井部分に、ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口を有しており、上記通気口の上部に、さらにファンが設けられている。
【0094】
図8は、本発明の空調システムの別の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示す空調システム400では、ペリメータ空間404の天井部分に設けられている通気口410の上部に、ファン420が設けられている。また、図8には、ペリメータ空間404における気体の流れを矢印で示している。
【0095】
本実施形態の空調システム400では、ペリメータ空間404に、ペリメータ空間404の気体と室外402の気体とが相互に流通可能な通気口410が設けられているため、ペリメータ空間404の高温の気体を通気口410を介して室外402に排出することができる。特に、ペリメータ空間404の気体を室外に排出するようにファン420を稼動させることにより、ペリメータ空間404に下方から上方への対流を強制的に生じさせることができるため、ペリメータ空間404に蓄積された熱の一部を、通気口410を介して効果的に排出することができる。
【0096】
なお、本実施形態の空調システムでは、ペリメータ空間の底部に室外及び/又は室内空間の気体とが相互に流通可能な通気口がさらに設けられていてもよい。
【0097】
本実施形態では、第一実施形態において説明した効果(1)〜(8)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(9)本実施形態の空調システムでは、ペリメータ空間の天井部分に、ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口が設けられている。ペリメータ空間に蓄積された熱によって温度が上昇した気体は、密度が小さくなるため、ペリメータ空間の下方から上方へ移動する。そのため、本実施形態では、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、通気口を介して効果的に室外に排出することができる。
(10)本実施形態の空調システムでは、ペリメータ空間の天井部分に設けられている通気口の上部に、ファンが設けられている。ペリメータ空間の気体を室外に排出するようにファンを稼動させることにより、ペリメータ空間に下方から上方への対流を強制的に生じさせることができるため、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、通気口を介してより効果的に室外に排出することができる。
【0098】
以下、本発明の第二実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0099】
以下の各実施例及び各比較例では、第一実施形態の実施例1、実施例2、比較例2、比較例3及び比較例4で作製したシールド材を用いて、空調システム評価装置を作製した。そして、この空調システム評価装置を使用して空調システムの評価を行った。
【0100】
(実施例12)
図9は、空調システム評価装置の別の一例を模式的に示す断面図である。
第一実施形態の実施例1で使用した空調システム評価装置を作製した後、ペリメータ空間204の天井部分中央に、ペリメータ空間の気体と装置外の気体とが相互に流通可能な通気口510(幅3cm×長さ15cm)を4個作製した。
さらに、通気口510の上部には、ファン520(カワムラ社製 VP23−D)を設置した。
【0101】
また、実施例1で作製したシールド材40の下部中央に、開閉可能な通気口530(幅3cm×長さ15cm)を作製した。
以上により、空調システム評価装置500を作製した。
【0102】
上記空調システム評価装置を用いて、第一実施形態の実施例1と同様に、空間温度測定及びシールド材の表面温度測定を行った。
なお、実施例12では、空間温度測定及びシールド材の表面温度測定中に、2.4〜2.6m/秒の風量でファンを稼動させた。
【0103】
(実施例13、比較例5〜7)
設置するシールド材を実施例2、比較例2、比較例3又は比較例4で作製したものとした以外は実施例12と同様にして空調システム評価装置を作製し、実施例12と同様にファンを稼働させて空間温度測定及びシールド材の表面温度測定を行った。
【0104】
各実施例及び各比較例における空間温度測定の結果及びシールド材の表面温度測定の結果を表4及び表5にそれぞれまとめて示した。
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
まず、空間温度測定の結果について述べる。
表4より、シールド材が第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有する実施例12及び13では、生活空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときはそれぞれ12.3℃及び16.9℃であり、外部空間の温度が38℃のときはそれぞれ12.5℃及び18.6℃であった。
一方、シールド材が第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していない比較例5、6及び7では、生活空間温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときは8.0〜9.9℃、外部空間の温度が38℃のときは8.1〜10.3℃であった。これらの値はいずれも実施例12及び13における値よりも低かった。
従って、実施例12及び13では、第一実施形態の実施例と同様、ペリメータ空間及びシールド材に形成された中空層に熱が蓄積されており、その結果、生活空間の温度上昇が抑制されていると考えられる。
【0108】
また、ファンを稼動させた本実施形態の実施例12と、ファンを稼働させていない第一実施形態の実施例1につき、外部空間の温度を38℃とした場合のΔtの値を比較すると、実施例12の方がΔtの値が0.7℃大きくなっていた。
同様に、実施例13と実施例2、比較例5〜7と比較例2〜4についてもそれぞれΔtの値を比較したところ、ファンを稼動させた場合にΔtの値が大きくなることが確認できた。その結果を表4にまとめて示した。
【0109】
これらの実施例の結果から、ファンを稼動させることにより、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を室外に排出することができると考えられる。従って、ファンを稼動させることにより、ファンを稼動させない場合よりも生活空間の温度をより低くすることができると考えられる。
【0110】
次に、シールド材の表面温度測定の結果について述べる。
表5より、シールド材が第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有する実施例12及び13では、シールド材表面温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときはそれぞれ5.9℃及び10.1℃であり、外部空間の温度が38℃のときはそれぞれ5.9℃及び10.5℃であった。
一方、シールド材が第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していない比較例5、6及び7では、シールド材表面温度差Δtは、外部空間の温度が35℃のときは2.7〜3.1℃、外部空間の温度が38℃のときは2.7〜3.4℃であり、いずれも実施例12及び13における値よりも低くなっていた。
従って、実施例12及び13では、第一実施形態の実施例と同様、シールド材に形成された中空層に熱が蓄積されており、その結果、生活空間の温度上昇が抑制されていると考えられる。
【0111】
次に、シールド材の表面温度測定において、ファンを稼動させた本実施形態の実施例12、13及び比較例5〜7と、ファンを稼働させていない第一実施形態の実施例1、2及び比較例2〜4につき、外部空間の温度を38℃とした場合のΔtの値を比較すると、Δtの値にはばらつきが大きく、ファンの稼動の有無とΔtとの間に相関関係は見られなかった。これは、ファンを稼動させることにより、ペリメータ空間に蓄積される熱を室外に排出させることはできるが、中空層に蓄積される熱を排出させることはできず、結果として、ファン稼働の有無がシールド材表面温度差Δtに影響を与えないためと考えられる。
【0112】
本実施例の結果より、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有するシールド材を用いることにより、第一実施形態の実施例と同様、ペリメータ空間及びシールド材に形成された中空層に熱を蓄積することができ、その結果、生活空間の温度上昇を抑制することができると考えられる。
また、ファンを稼動することにより、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を室外に排出することができ、その結果、生活空間の温度上昇をより抑制することができると考えられる。
【0113】
(その他の実施形態)
第一実施形態及び第二実施形態に示した空調システムでは、シールド材を構成する枠体として障子枠を用いているが、枠体として用いるものは特に限定されない。
また、枠体の材料についても上述した木に限られず、例えば、プラスチック、金属、セラミック等が挙げられる。
さらに、枠体の形状も上述した矩形形状に限られず、例えば、矩形形状以外の多角形状、円形や楕円形状等の曲線を含む形状等、任意の形状とすることができる。
【0114】
また、第一実施形態及び第二実施形態に示した空調システムでは、枠体で囲まれた空間は複数の桟材によって格子状に区画されているが、桟材の配置及び数量は特に限定されない。また、枠体で囲まれた空間は、桟材によって区画されていなくてもよい。
【0115】
また、枠体として障子枠を用いる場合においては、雪見障子のようにその一部が開閉可能な機構となっていてもよい。
【0116】
第一実施形態及び第二実施形態に示した空調システムでは、シールド材を構成する第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材として和紙からなる障子紙を用いているが、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材として用いるものは特に限定されない。
また、第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材の材料としては、例えば、プラスチック、布、合成樹脂等が挙げられる。
【0117】
本発明の空調システムでは、窓及びシールド材の数量は特に限定されるものではなく、建物の大きさや設計によって任意に変更することができる。
例えば、複数枚のシールド材を引違いとなるように設けておき、シールド材を開閉可能にしてもよい。空調システムとして使用する場合にはシールド材を「閉」の状態とすることで、ペリメータ空間内に熱を蓄積させることができる。
【0118】
本発明の空調システムにおいて、シールド材を構成する第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材の色は上述した白色及び黒色に限られず、赤色、青色、緑色、黄色、灰色等、任意の色とすることができる。
【0119】
第二実施形態に示した空調システムでは、ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口が、ペリメータ空間の天井部分に設けられているが、通気口が設けられる位置及び数量は特に限定されない。
例えば、ペリメータ空間の天井部分及び底部に上記通気口を設けた場合、ペリメータ空間の底部に設けられた通気口を介して室外の気体がペリメータ空間に流入し、ペリメータ空間の天井部分に設けられた通気口を介してペリメータ空間の気体が室外に排出される。従って、ペリメータ空間に下方から上方への対流が生じやすくなる。その結果、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、ペリメータ空間の天井部分に設けられた通気口を介して効果的に室外に排出することができる。
【0120】
第二実施形態に示した空調システムでは、ペリメータ空間の天井部分に設けられた上記通気口の上部に、ファンが設けられているが、ファンが設けられる位置及び数量は特に限定されない。
例えば、ペリメータ空間の天井部分及び底部に上記通気口を設け、さらに、ペリメータ空間の底部に設けられた通気口に隣接してファンを設けた場合、ペリメータ空間に下方から上方への対流をより生じやすくすることができる。その結果、ペリメータ空間に蓄積された熱の一部を、ペリメータ空間の天井部分に設けられた通気口を介してより効果的に室外に排出することができる。
【0121】
本明細書では、主に、室外の温度が生活空間の温度よりも高い場合(主に夏季)に本発明の空調システムを使用する場合の効果について説明したが、室外の温度が生活空間の温度よりも低い場合(主に冬季)に、本発明の空調システムを使用する場合は、生活空間の温度低下を抑制することができるという効果を得ることができる。
【0122】
冬季において本発明の空調システムが設けられていると、空調システムが設けられていない場合に室外へ流出するであろう生活空間の熱の多くが、シールド材に形成された中空層に蓄積し、さらにペリメータ空間にも熱が蓄積するため、室外へ流出する熱が少なくなる。そのため、生活空間の温度低下を抑制することができる。
このように、本発明の空調システムは、使用する季節に限定されることなく生活空間の温度を快適な状態に維持することができる。
【0123】
このような効果は、以下の結果からも確認される。
まず、第一実施形態の実施例1で作製したシールド材(第1の熱遮蔽部材及び第2の熱遮蔽部材を有するシールド材)を用いて、実施例1と同様の空調システムを作製した。そして、生活空間に熱源を設置し、生活空間から熱を照射した場合のシールド材の表面温度測定を行った。
具体的には、熱源として暖房装置(ナショナル社製 INVERTER2400/900)を使用し、暖房装置の設定温度を12℃として暖房装置を一定時間作動させたときのシールド材の表面温度を測定した。その結果、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後におけるシールド材表面温度差Δtは、それぞれ3.8℃、2.8℃、2.6℃であった。これは、生活空間に設置された熱源によって発生した熱が、シールド材に形成された中空層に蓄積されていることを意味している。すなわち、生活空間の熱がペリメータ空間ひいては外部空間に流出されにくくなっていると考えられる。
【0124】
一方、設置するシールド材を比較例2で用いたもの(ブラインド)とした場合において、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後におけるシールド材表面温度差Δtは、それぞれ−2.2℃、−2.4℃、−2.0℃であった。また、設置するシールド材を比較例3で作製したもの(第1の熱遮蔽部材のみを有し、第2の熱遮蔽部材を有していないシールド材)とした場合において、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後におけるシールド材表面温度差Δtは、それぞれ2.7℃、1.5℃、1.1℃であった。これらの値はいずれも実施例1で作製したシールド材を用いた場合における値よりも低かった。
【0125】
また、シールド材の表面温度測定と同時に、窓から外部空間に放出される熱の熱流量測定を行った。
具体的には、窓の両面に熱流量計(英弘精機社製 MF−180)を設置し、暖房装置を一定時間作動させたときの熱流量を測定した。
外部空間側の窓の熱流量Q及びペリメータ空間側の窓の熱流量Qを測定し、Q−Qの値を窓表面の放出熱流量Qとした。
設置するシールド材を実施例1で作製したものとした場合において、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後における窓表面の放出熱流量Qは、それぞれ10.2W/m、12.2W/m、12.5W/mであった。これは、外部空間に流出する熱が少ないことを意味する。すなわち、生活空間で発生した熱が外部空間に流出されにくくなっていると考えられる。
【0126】
一方、設置するシールド材を比較例2で用いたものとした場合において、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後における窓表面の放出熱流量Qは、それぞれ42.5W/m、48.6W/m、48.2W/mであった。また、設置するシールド材を比較例3で作製したものとした場合において、暖房装置を作動させてから50分後、100分後、150分後における窓表面の放出熱流量Qは、それぞれ26.1W/m、29.6W/m、23.0W/mであった。これらの値はいずれも実施例1で作製したシールド材を用いた場合における値よりも大きかった。
【符号の説明】
【0127】
1、400 空調システム
2、402 室外
3 室内空間
4、204、404 ペリメータ空間
5、205、405 生活空間
20 窓
30、40 シールド材
31、41 第1の熱遮蔽部材
32、42 第2の熱遮蔽部材
33、43 枠体
34、44 中空層
35、44 桟材
410、510、530 通気口
420、520 ファン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外と室内空間とを隔てる窓と、
前記室内空間を、前記窓に近い側に位置するペリメータ空間と前記窓に遠い側に位置する生活空間とに隔てるシールド材と、からなる空調システムであって、
前記シールド材は、枠体と、前記枠体の第1面に設けられた第1の熱遮蔽部材と、前記枠体の第2面に設けられた第2の熱遮蔽部材とからなり、前記枠体、前記第1の熱遮蔽部材及び前記第2の熱遮蔽部材に囲まれた領域には中空層が形成されており、
前記シールド材の第1面側が前記窓側に配置され、前記シールド材の第2面側が前記生活空間側に配置され、
前記シールド材の第1面と前記窓との間の距離は、50cm以下であることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記第1の熱遮蔽部材及び/又は前記第2の熱遮蔽部材は、障子紙からなる請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第1の熱遮蔽部材及び/又は前記第2の熱遮蔽部材は、和紙からなる請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第1の熱遮蔽部材及び/又は前記第2の熱遮蔽部材は、プラスチック、布、及び、合成樹脂のいずれかからなる請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記中空層の厚さは、20cm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記第1の熱遮蔽部材の色は、白色である請求項1〜5のいずれかに記載の空調システム。
【請求項7】
前記第1の熱遮蔽部材の色は、黒色である請求項1〜5のいずれかに記載の空調システム。
【請求項8】
前記枠体で囲まれた空間は、前記枠体と接合された少なくとも一の桟材によって区画されている請求項1〜7のいずれかに記載の空調システム。
【請求項9】
前記ペリメータ空間は、前記ペリメータ空間の気体と室外の気体とが相互に流通可能な通気口を有している請求項1〜8のいずれかに記載の空調システム。
【請求項10】
前記通気口は、前記ペリメータ空間の天井部分に設けられている請求項9に記載の空調システム。
【請求項11】
前記ペリメータ空間の天井部分に設けられている前記通気口の上部には、ファンが設けられている請求項10に記載の空調システム。
【請求項12】
前記通気口は、前記ペリメータ空間の底部に設けられている請求項9〜11のいずれかに記載の空調システム。
【請求項13】
前記ペリメータ空間の底部には、前記ペリメータ空間の底部に設けられている通気口に隣接してファンが設けられている請求項12に記載の空調システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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