説明

空調ユニット並びにこれに用いられる空調ドア及び空調ドアの構成部品

【課題】クーラーオンリー仕様、ヒータオンリー仕様及び通常のエアコン仕様に対応可能な空調ユニットについて、各仕様で用いる場合の不必要な空調部品や無駄なスペースを排除してコストダウンを図る。
【解決手段】クーラーオンリー仕様の空調ユニット27に用いられる空調ドア1がヒータオンリー仕様及び通常のエアコン仕様の空調ユニット27に用いられる空調ドア2の本体部分を構成するようにして部品の共通化を図ると共に、クーラーオンリー仕様の空調ユニット27のケース32と、ヒータオンリー仕様の空調ユニット27のケース32と、通常のエアコン仕様の空調ユニット27のケース32とを共通化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吹出モード切換機能のみを備えた空調ドアと、この空調ドアを本体部分として加熱用熱交換器を通過した空気とバイパスした空気との割合を調整するための機能を付加する構成部品を追加部分とした空調ドアとを用いる例えば車両用の空調ユニット、並びにこの空調ユニットに用いられる空調ドア、空調ドアの構成部品の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調分野においては、近年における空調性能の向上、コンパクト化、多機能化のいずれにも適するものとして、空調ケース内を空気が略U字状に流れるような空気流路を当該空調ケースに画成し、送風機、冷却用熱交換器、及び加熱用熱交換器を、送風機が冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器に対し相対的に上方になるように前記空気流路上に配置した縦置き形式のフル一体型の空調ユニット(例えば、特許文献1を参照。)が主流になってきている。
【0003】
そして、コストダウン等の観点から、例えば、特許文献2の特に図1に示されるように、ヒータコアとエバポレータとの双方を備えて冷暖房を行うことが可能な、縦置き形式のフル一体型の車両用空調装置の構成を基本としつつ、そのバリエーションとして、ヒータコアを空調ケース内の空気流路上に配置しない、クーラーオンリー仕様の設定の要望に応えた車両用空調装置が開発されている。尚、コストダウン等の観点から、上記特許文献2とは逆に、ヒータオンリー仕様の設定要望に応えた車両用空調装置も考えることが可能である。
【0004】
一方、エアミックスドアの機能と吹出モード切換ドアの機能とを備えた円筒状のロータリダンパが収納されたヒータユニットは、例えば特許文献3に示されるように、既に公知となっている。また、2つの半円筒状のロータリダンパを組み合わせることで、エアミックスドアの機能と吹出モード切換ドアの機能とを備えるようにした車両用空気調和装置も、例えば特許文献4に示されるように、既に公知となっている。
【特許文献1】特開2003−54242号公報
【特許文献2】特開2005−306302号公報
【特許文献3】特開平9−104218号公報
【特許文献4】実開平3−15208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示す車両用空調装置では、ヒータコアを空調ケースに収納するための専用のスペースを常に必要とすると共に、クーラーオンリー仕様であるにも関わらずエアミックスドアを用いるものであり、コストダウンを図った空調装置であるにも関わらず、不必要なスペースの確保や不要な空調部品でも搭載させるので、かえって部品点数の増加や空調装置としての車体への搭載スペースが拡大してしまい、コストダウンの利点が減少しているという不具合を有する。
【0006】
また、特許文献3に示すヒータユニット及びこのヒータユニットのロータリダンパは、通常のエアコン仕様に対応したエアミックス機能と吹出モード切換機能との双方を有するものであり、クーラーオンリー仕様とヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様とのそれぞれ異なる仕様に対応しながら、コストダウンを図りつつケースや空調部品の共通化を図ったものではない。
【0007】
さらに、特許文献4に示す車両用空気調和装置のロータリダンパも、温度コントロールダンパと吹出口コントロールダンパとを組み合わせたもので、それぞれが別個に回動してエアミックスと吹出モードの切り換えとを行うものであり、特許文献3と同様に、クーラーオンリー仕様とヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様とのそれぞれ異なる仕様に対応しながら、コストダウンを図りつつケースや空調部品の共通化を図ったものではない。
【0008】
そこで、本発明は、クーラーオンリー仕様、ヒータオンリー仕様及び通常のエアコン仕様に対応可能としつつ、他の仕様では不必要な空調部品や無駄なスペースを排除し、更には構成部品等の共通化を行うことで、コストダウンを図った空調ユニット、並びにこの空調ユニットに用いられる空調ドア及び空調ドアの構成部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空調ユニットは、ケース内に、空気入口と、送風機で前記空気入口から取り込まれた空気が流れる空気流路と、この空気路上に選択的に設置される冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器と、前記空気流路のうち冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器よりも風下側部位の一部を構成する吹出流路とを有し、前記吹出流路の空気の最も風下側は前記ケースの外面に開口した吹出用開口部が形成されていると共に、前記空気流路のうち前記冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器が設置される部位より風下側で且つ前記吹出流路よりも風上側において、前記冷却用熱交換器が設置される場合には吹出モード機能を有する第1の空調ドアが配置され、前記加熱用熱交換器が設置される場合には吹出モード機能及び前記加熱用熱交換器を通過した空気とバイパスした空気との割合調整機能を有する第2の空調ドアが設置されることを特徴としている(請求項1)。送風機は、例えばケース内において空気流路の最も風上側に配置されている。吹出流路は、例えばベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれか1つ、いずれか2つ又はその全ての組合せが挙げられる。また、空気入口は、外気導入口のみでも内気導入口と外気導入口との双方でも良い。
【0010】
そして、前記第1の空調ドアは、空調ユニットの吹出用流路の風上側と接続可能な開口部と前記吹出用流路の風上側を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されて開口部となっており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより吹出モードの切り換えが行われる(請求項2)。また、前記第2の空調ドアは、前記第1の空調ドアを本体部分とし、空調ユニットの加熱用熱交換器をバイパスした空気が流れる第1の流路の風下側と接続可能な開口部、前記加熱用熱交換器を通過した空気が流れる第2の流路の風下側と接続可能な開口部、及び前記第1の流路の風下側と前記第2の流路の風下側の全部又は一部を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放された構成部品を追加部分としたもので、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより第1の流路からの空気量と第2の流路からの空気量との割合の調整が行われる(請求項3)。
【0011】
このような構成によれば、吹出流路として、ベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれもを有する場合で、冷却用熱交換器を設置するときには、上記構成の第1の空調ドアを用いるので、クーラーオンリー仕様としつつ、空調ドアを適宜な角度に回転させることにより、以下の5つの吹出モードに切り換えることができる。すなわち、冷却用熱交換器を通過して来た冷風は、周面部とは反対側の開口部から空調ドア内に流入すると共に、空調ドアの周面部の開口部がベント用吹出流路の風上側とのみ接続してベント用吹出流路に送られるのでベントモードを形成する。また、冷却用熱交換器を通過して来た冷風は、周面部とは反対側の開口部から空調ドア内に流入すると共に、空調ドアの周面部の開口部がベント用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してベント用吹出流路とフット用吹出流路とに送られるのでバイレベルモードを形成する。更に、冷却用熱交換器を通過して来た冷風は、周面部とは反対側の開口部から空調ドア内に流入すると共に、空調ドアの周面部の開口部がフット用吹出流路の風上側とのみ接続してフット用吹出流路に送られるのでフットモードを形成する。更にまた、冷却用熱交換器を通過して来た冷風は、周面部とは反対側の開口部から空調ドア内に流入すると共に、空調ドアの周面部の開口部がデフ用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してデフ用吹出流路及びフット用吹出流路に送られるのでデフフットモードを形成する。そして、冷却用熱交換器を通過して来た冷風は、空調ドア1内を通過せずともデフ用吹出流路に送られるのでデフモードを形成する。
【0012】
また、吹出流路として、ベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれもを有する場合で、加熱用熱交換器を設置するときには、上記構成の第2の空調ドアを用いるので、ヒータオンリー仕様としつつ、空調ドアを適宜な角度に回転させることにより、以下の5つの吹出モードを形成することができる。すなわち、追加した空調ドアの構成部品側の開口部が第2の流路とのみ接続されて、加熱用熱交換器をバイパスして来た非加熱空気は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の空調ドアの開口部がベント用吹出流路の風上側とのみ接続してベント用吹出流路に送られるのでベントモードを形成する。また、追加した空調ドアの構成部品側の開口部が第1及び第2の流路の双方と接続されて、加熱用熱交換器をバイパスして来た非加熱空気と加熱用熱交換器を通過して来た加熱空気とは、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の空調ドアの開口部がベント用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してベント用吹出流路とフット用吹出流路とに送られるのでバイレベルモードを形成する。更に、追加した空調ドアの構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、加熱用熱交換器を通過して来た加熱空気は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の空調ドアの開口部がフット用吹出流路の風上側とのみ接続してフット用吹出流路に送られるのでフットモードを形成する。更にまた、追加した空調ドアの構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、加熱用熱交換器を通過して来た加熱空気は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の空調ドアの開口部がデフ用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してデフ用吹出流路及びフット用吹出流路に送られるのでデフフットモードを形成する。そして、追加した空調ドアの構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、加熱用熱交換器を通過して来た加熱空気は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の空調ドアの開口部がデフ用吹出流路の風上側とのみ接続してデフ用吹出流路に送られるのでデフモードを形成する。
【0013】
本発明に係る空調ユニットは、空気入口を有するインテークユニット部と、この空気入口から取り込まれた空気を冷却することが可能なクーリングユニット部と、前記クーリングユニット部で冷却された空気を加熱することが可能なヒータユニット部とから構成され、前記クーリングユニット部のケース内に冷却用熱交換器が収納され、前記ヒータユニット部のケース内に、送風機で前記空気入口から取り込まれた空気が流れる空気流路と、この空気路上に設置された加熱用熱交換器と、前記空気流路の加熱用熱交換器よりも風下側部位の一部を構成する吹出流路とを有し、前記吹出流路の空気の最も風下側は前記ケースの外面に開口した吹出用開口部が形成されていると共に、前記空気流路のうち前記加熱用熱交換器が設置される部位より風下側で前記吹出流路よりも風上側において、前記請求項3に記載の第2の空調ドアが設置されることを特徴としている(請求項4)。送風機は、例えばヒータユニット部のケース内において空気流路の最上流側に配置されている。吹出流路は、例えばベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれか1つ、いずれか2つ又はその全ての組合せが挙げられる。また、空気入口は、外気導入口のみでも内気導入口と外気導入口との双方でも良い。尚、ヒータユニット部のケースは、クーラーオンリー仕様とする場合のケース並びにヒータオンリー仕様とする場合のケースと共通である。
【0014】
このような構成によれば、第2の空調ドアを用いるので、通常のエアコン仕様としつつ、空調ドアを適宜な角度に回転させることにより、以下の5つの吹出モードに切り換えることができる。すなわち、追加した構成部品側の開口部が第2の流路とのみ接続されて、クーリングユニット部で冷却用熱交換器により冷却されて加熱用熱交換器をバイパスした冷風は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の開口部がベント用吹出流路の風上側とのみ接続してベント用吹出流路に送られるのでベントモードを形成する。また、追加した構成部品側の開口部が第1及び第2の流路の双方と接続されて、クーリングユニット部で冷却用熱交換器により冷却されて加熱用熱交換器をバイパスした冷風と加熱用熱交換器を通過した温風とは、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の開口部がベント用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してベント用吹出流路とフット用吹出流路とに送られるのでバイレベルモードを形成する。更に、追加した構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、クーリングユニット部で冷却用熱交換器により冷却されて加熱用熱交換器を通過した温風は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の開口部がフット用吹出流路の風上側とのみ接続してフット用吹出流路に送られるのでフットモードを形成する。更にまた、追加した構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、クーリングユニット部で冷却用熱交換器により冷却されて加熱用熱交換器を通過した温風は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の開口部がデフ用吹出流路の風上側及びフット用吹出流路の風上側と接続してデフ用吹出流路及びフット用吹出流路に送られるのでデフフットモードを形成する。そして、追加した構成部品側の開口部が第1の流路とのみ接続されて、クーリングユニット部で冷却用熱交換器により冷却されて加熱用熱交換器を通過した温風は、空調ドア内に流入すると共に、本体部分側の開口部がデフ用吹出流路の風上側とのみ接続してデフ用吹出流路に送られるのでデフモードを形成する。
【0015】
本発明に係る空調ドアは、空調ユニットの吹出流路の風上側と接続可能な開口部と前記吹出流路の風上側を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されて開口部となっており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより吹出モードの切り換えが行われることを特徴としている(請求項5)。吹出流路は、例えばベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれか1つ、いずれか2つ又はその全ての組合せが挙げられる。このような構成とすることにより、空調ドアは、クーラーオンリー仕様の車両用空調ユニットに用いることができる。
【0016】
また、本発明に係る空調ドアの構成部品として、空調ユニットの加熱用熱交換器をバイパスした空気が流れる第1の流路の風下側と接続可能な開口部、前記加熱用熱交換器を通過した空気が流れる第2の流路の風下側と接続可能な開口部、及び前記第1の流路の風下側と前記第2の流路の風下側の全部又は一部を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより第1の流路からの空気量と第2の流路からの空気量との割合の調整が行われるものが用いられる(請求項6)。この吹出流路も、例えばベント用吹出流路、デフロスト用吹出流路、フット用吹出流路のいずれか1つ、いずれか2つ又はその全ての組合せが挙げられる。このような構成の空調ドアの構成部品とすることにより、空調ドアは、請求項1に記載の空調ドアを本体部分とし、請求項2に記載の空調ドアの構成部品を追加部分として、前記空調ドアの本体部分の開放された側と前記空調ドアの構成部品の開放された側とを合わせるように組み付けることで(請求項7)、ヒータオンリー仕様又は通常のエアコン仕様の車両用空調ユニットに用いることができる。そして、このヒータオンリー仕様又は通常のエアコン仕様に対応した空調ドアの本体部分は、クーラーオンリー仕様に対応した空調ドアと共通化されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、空調ユニットについて、ヒータオンリー仕様、クーラーオンリー仕様、及び通常のエアコン仕様と、異なる仕様に対応させることが、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器との入れ替え、空調ドアに対する構成部品の追加と取り外し、更にはインテークユニット部、クーリングユニット部の追加等の僅かな変更で可能である。しかも、このような複数の仕様に対応可能とする場合でも、クーラーオンリー仕様の空調ドアとヒータオンリー仕様及び通常のエアコン仕様の空調ドアの本体部分との共通化、ケースの共通化を図っており、空調ユニットを構成する部品点数の増加を招くこともない。このため、空調ユニットの全体的な製造コスト、開発コストの削減を図ることができる。
【0018】
また、本発明によれば、ヒータオンリー仕様の空調ユニットにおいては、無駄なスペースを作らずに冷却用熱交換器を省略すことができ、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおいては、無駄なスペースを作らずに加熱用熱交換器を省略することができ、しかも、ユニット外から空気を取り入れるための空気入口についても外気導入口のみを選択することができるので、低価格な空調ユニットを提供することができる。また、冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器の一方を省略することができるので、空調ユニット全体としての軽量化を図ることができる。しかも、クーラーオンリー仕様では空調ドアはヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ドアにおける追加部分となる構成部品を有しないので、更に空調ユニット全体としての軽量化を図ることができる。
【0019】
更に、本発明によれば、空調ドアの本体部分に対し当該空調ドアを回動するための駆動機構を取り付けることにより、空調ドアの駆動機構は、ヒータオンリー仕様、クーラーオンリー仕様、及び通常のエアコン仕様のいずれでも共通化することができるので、この点からも、低価格な車両用空調ユニットを提供することができる。更に、この駆動機構の制御について、単一のダイヤルの手動回転による各モードの切り換えという簡素化を図り、このダイヤルから駆動機構への伝達機構として一本のケーブルのみを用いるという簡素化を図ることにより、更に低価格な車両用空調ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面により説明する。
【0021】
本発明に係る空調ユニット27(詳細は後述する。)に用いられる空調ドアとして、図1及び図2において空調ドア1とその駆動機構3とが示されていると共に、図3及び図4において前記空調ドア1を本体部分とする空調ドア2とその駆動機構3とが示されている。
【0022】
このうち、空調ドア1は、例えばロータリドア等と称されるもので、吹出モード切換機能のみを有し、略半円状の側板5、5と、この側板5、5間に配置される円弧形状のもので閉塞部6、7及び開口部8を有する周面部9とで基本的に構成されており、周面部9の反対側は開放されて開口部1aを形成している。
【0023】
双方の側板5は、中央部から周面部9の頂側とは反対側に突起部5aが形成され、この側板5の中央部と突起部5aとで形成された領域に下記する駆動機構3の一部を形成する歯車10が形成されている。この歯車10は、図1(A)に示されるように、この実施形態では側板5及び突起部5aに一体成形されており、歯車10と空調ドア1とが一体に回動するようになっている。
【0024】
また、双方の側板5は、歯車10の両側に下記する構成部品4の係合雄部18と係合するための係合雌部12が形成されている。係合雌部12は、この実施形態では、特に図1に示されるように、略U字状の溝部12aとその溝部12aの中央に形成されて当該溝部12aの底面よりも隆起した突出部12bとで構成されている。
【0025】
周面部9は、外側周面と内側周面とが半円の薄板状のもので、閉塞部6は、下記するデフ用吹出流路21の風上側と下記するベント用吹出流路22の風上側との双方、又はベント用吹出流路22の風上側と下記するフット用吹出流路23の風上側との双方を閉塞可能な幅を有しており、この実施形態では、図1(A)に示されるように、周面部9に対し端から端までを4等分した場合に、I線からIII 線までの4分の1円を占める幅を有している。また、閉塞部7は、フット用吹出流路23の入口23aを閉塞可能な幅を有しているもので、この実施形態では、図1(A)に示されるように、周面部9に対し端から端までを4等分した場合に、IV 線からV線までの8分の1円を占める幅を有している。開口部8は、ベント用吹出流路22の風上側の開口又はフット用吹出流路23の風上側の開口と略同じ開口幅を有しており、ベント用吹出流路22の風上側又はフット用吹出流路23の風上側と接続可能となっている。そして、この実施形態では、開口部8は、周面部9に対し端から端までを4等分した場合に、III 線からIV線までの8分の1円を占める幅を有している。
【0026】
空調ドア2は、例えばロータリドア等と称されるもので、吹出モード切換機能と加熱用熱交換器を通過した空気とバイパスした空気との割合調整機能とを有し、これまで説明した空調ドア1を本体部分とし、これに構成部品4を追加部分とすることで構成されている。従って、空調ドア1に相当する本体部分については先述の実施形態と同一の符号を付してその説明を省略し、構成部品4について以下に説明する。
【0027】
構成部品4は、略半円状の側板13、13と、この側板13、13間に配置される円弧形状のもので閉塞部14及び開口部15、16を有する周面部17とで基本的に構成されている。双方の側板13は、中央部から周面部17の頂側とは反対側に空調ドア1の突起部5aと係合可能な窪み部13aが形成されている。また、双方の側板13は、係合雌部12の溝部12aと略同じ形状のU字状をなすと共に係合雌部12側に向けて回動可能な係合片からなる係合雄部18を有している。
【0028】
周面部17は、外側周面と内側周面とが半円の薄板状のもので、閉塞部14は、下記する第1の流路19の風上側の全て、下記する第2の流路20の風上側の全て、及び第1の流路19の風上側と第2の流路20の風上側との双方の一部分を閉塞可能な幅を有しており、この実施形態では、図3(A)に示されるように、周面部17に対し端から端までを4等分した場合に、VIII線からVI線までの4分の1円を占める幅を有している。開口部15は、第1の流路20の風下側と接続可能な幅を有しており、この実施形態では、図3(A)に示されるように、周面部17に対し端から端までを4等分した場合に、I線からVIII線までの8分の1円を占める幅を有している。開口部16は、第2の流路21の風下側と接続可能な幅を有しており、この実施形態では、図3(A)に示されるように、周面部17に対し端から端までを4等分した場合に、V線からVI線までの8分の1円を占める幅を有している。
【0029】
しかるに、空調ドア1と構成部品4とから空調ドア2を構成するには、側板5の突起部5aに側板13の窪み部13aを外挿した後、係合雄部18を係合雌部12側に回動させて係合雄部18を溝部12a内に嵌合させる作業を行えば良く、これにより、係合雄部18と係合雌部12とが確実に係合されて、空調ドア1に構成部品4が組み付けられる。
【0030】
これらの空調ドア1又は空調ドア2が収納される空調ユニット27は、図2(A)及び図4(A)において示されている。この空調ユニット27は、例えば車両用空調ユニットとして、しかも極暑地用又は極寒地用として用いることが可能な縦置き形式のフル一体型のもので、インテークユニット部28と空調ユニット本体29とで基本的に構成されている。もっとも、後述する送風機33も別体のユニットに収納したセミ一体型のものでも良いことはもちろんである。
【0031】
インテークユニット部28は、図2(A)及び図4(A)とで共通のものであり、この実施形態では、空気入口としてエンジンルーム側に向いた外気導入口30のみがケース31に開口していると共に空調ユニット本体29と接続するための開口部が図示しないが形成されている。但し、この外気導入口30の他に車室側に向いた内気導入口(図示せず)がケース31に設けられていると共に、これらの外気導入口30と内外気導入口とを適宜選択するための内外気切換ドア(図示せず)がこのケース31内に収納されたものとしても良い。また、インテークユニット部28は、空調ユニット本体29と一体でも別体でも良い。
【0032】
空調ユニット本体29も、その大部分において、図2(A)及び図4(A)とで共通のものであり、その構成について説明すると、前記インテークユニット部28とオフセット状態で連接されているもので、ケース32内には、外気導入口30から取り込まれた空気が流れる空気流路24が画成されている。そして、この空気流路24の最も風上側には送風機33が収納されている。送風機33は、例えばシロッコファンとモータとから成っており、車両左右方向に略沿って横倒しの状態で配置されているものであるが、特にこの構成に限定されない。
【0033】
そして、空気流路24のうち送風機33の車両上下方向の略下方となる風下側には、略直方体状の熱交換器用設置スペースが画成されており、例えばエバポレータ等の冷却用熱交換器34と、ヒータコア等の加熱用熱交換器35とのいずれ一方が選択的に設置可能となっている。すなわち、冷却用熱交換器34を設置した場合には、空調ユニット27は例えば極暑地用のクーラーオンリー仕様のものとなり、空調ユニット本体29はクーリングユニット部となる。また、加熱用熱交換器35を設置した場合には、空調ユニット27は例えば極寒地用のヒータオンリー仕様のものとなり、空調ユニット本体29はヒータユニット部となる。
【0034】
ここで、加熱用熱交換器35を設置する場合には、加熱用熱交換器35よりも車両の上下方向の上方において、図4(A)等に示されるように、空気流路24に対し、加熱用熱交換器35をバイパスした空気が流れる第1の流路19と加熱用熱交換器35を通過して加熱された空気が流れる第2の流路20とに仕切るために、取り外し可能な仕切壁部36も取り付けられる。第1の流路20及び第2の流路19の風下側口は、空調ドア2の回転する円軌道上に位置している。尚、図2(A)に示される25は、冷凍サイクルを構成する膨張弁である。
【0035】
更に、空気流路24のうち熱交換器設置スペースよりも風下側において、車両左右方向側から見て少なくとも横倒しの略円筒分のスペース37が確保されており、このスペース37が空調ドア1又は空調ドア2の設置場所及び回動許容領域となる。
【0036】
更にまた、空気流路24のうち上記スペース37よりも更に風下側において、この実施形態では、デフ用吹出流路21、ベント用吹出流路22及びフット用吹出流路23が形成されており、これらのデフ用吹出流路21、ベント用吹出流路22及びフット用吹出流路23の風上側口は、空調ドア1又は空調ドア2の回転する円軌道上に位置している。そして、デフ用吹出流路21、ベント用吹出流路22及びフット用吹出流路23の風下側は、ケース32の外面に開口して、それぞれデフ用開口部38、ベント用開口部39、フット用開口部40を形成している。
【0037】
図2(B)及び図4(B)において、空調ドア1又は空調ドア2を回転させるための共通の駆動機構3が示されている。この駆動機構3は、空調ドア1に固定された歯車10と、この歯車10と噛み合う歯を有すると共に回転軸42により回動可能なカム43と、このカム43のうち歯を有する側の反対側において連結されたケーブル44と、このケーブル44のカム43側と反対側端が接続されたモード切換用ダイヤル45とを有して構成され、モード切換用ダイヤル45を回動させると、ケーブル45を介してカム44に吹出モード切換用ダイヤル45から駆動力が伝達され、このカム44が回動することで歯車10ひいては空調ドア1又は空調ドア2が回動するようになっている。
【0038】
上記の構成に基づき、空気流路24内に冷却用熱交換器34を設置すると共に、スペース37に空調ドア1を設置してクーラーオンリー仕様の空調ユニット27とした場合の、ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフフットモード、デフモードの各吹出モードについて、図5から図9に基づいて説明する。図5(A)、図6(A)、図7(A)、図8(A)及び図9(A)で示される46は、送風機33の回転速度を調整する送風機用ダイヤルであり、この実施形態では回転速度が最大の状態でのみ示されているが、各モードで吹出口からの風量が多いと判断する場合には、送風機用ダイヤル46を回し、送風機33の回転速度を下げ、ひいては送風機33を停止することとなる。
【0039】
図5では、ベントモードが示されている。すなわち、図5(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図5(B)に示されるように、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞し、閉塞部7がフット用吹出流路23の風上側を全て閉塞すると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図5(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、全て冷却用熱交換器34で冷却され、この冷風は、空調ドア1内に開口部1aから流入して、開口部8からベント用吹出流路22内に入り、ベント用開口部39から図示しないダクト等を介して車室内に送出される。
【0040】
また、図6では、バイレベルモードが示されている。すなわち、図6(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図6(B)に示されるように、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞すると共にベント用吹出流路22の風上側の一部にかかり、閉塞部7がフット用吹出流路23の風上側の一部にかかると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図6(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、全て冷却用熱交換器34で冷却され、この冷風は、空調ドア1内に開口部1aから流入して、開口部8からベント用吹出流路22内及びフット用吹出流路23内に入り、ベント用開口部39及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介し、或いは直接的に車室内に送出される。
【0041】
更に、図7では、フットモードが示されている。すなわち、図7(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図7(B)に示されるように、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側及びベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、閉塞部7はフット用吹出流路23の風上側よりも冷却用熱交換器34側にずれて、開口部8がフット用吹出流路23の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図7(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、全て冷却用熱交換器34で冷却され、この冷風は、空調ドア1内に開口部1aから流入して、開口部8からフット用吹出流路23内に入り、フット用開口部40から例えば直接的に車室内に送出される。
【0042】
更にまた、図8では、デフフットモードが示されている。すなわち、図8(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図8(B)に示されるように、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部にかかりつつベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、閉塞部7はフット用吹出流路23の風上側よりも冷却用熱交換器34側にずれて、開口部8がフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図8(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、全て冷却用熱交換器34で冷却され、この冷風は、空調ドア1内に開口部1aから流入して開口部8からフット用吹出流路23内に入ると共に空調ドア1の外側を回って直接にデフ用吹出流路21内に入り、デフ用開口部38及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介して、或いは直接的に車室内に送出される。
【0043】
そして、図9では、デフモードが示されている。すなわち、図9(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図9(B)に示されるように、閉塞部7がデフ用吹出流路21の風上側よりも反冷却用熱交換器34側にずれ、閉塞部6がベント用吹出流路22の風上側の全て及びフット用吹出流路23の風上側の全てを閉塞する。これにより、図9(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、全て冷却用熱交換器34で冷却され、この冷風は、空調ドア1の外側を回って直接にデフ用吹出流路21内に入り、デフ用開口部38から図示しないダクト等を介して車室内に送出される。
【0044】
上記の空調ドア2及び空調ユニット27の構成に基づき、空気流路24内に加熱用熱交換器35を設置すると共に、スペース37に空調ドア2を設置してヒータオンリー仕様の空調ユニット27とした場合の、ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフフットモード、デフモードの各吹出モードについて、図10から図14に基づいて説明する。
【0045】
図10では、ベントモードが示されている。すなわち、図10(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア2は、図10(B)に示されるように、閉塞部14が第2の流路20の風下側を全て閉塞し、開口部15が第1の流路19の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞し、閉塞部7がフット用吹出流路23の風上側を全て閉塞すると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図10(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気の全ては、加熱用熱交換器35で加熱されず、この非加熱空気は、空調ドア2内に開口部15から流入して、開口部8からベント用吹出流路22内に入り、ベント用開口部39から図示しないダクト等を介して車室内に送出される。
【0046】
また、図11では、バイレベルモードが示されている。すなわち、図11(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア2は、図11(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側の一部と第2の流路20の風下側の一部とにかかり、開口部15が第1の流路19の風下側の一部と接続され、開口部16が第2の流路20の風下側の一部と接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞すると共にベント用吹出流路22の風上側の一部にかかり、閉塞部7がフット用吹出流路23の風上側の一部にかかると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図11(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気は、第1の流路19を流れるものは加熱用熱交換器35で加熱されずに、非加熱空気として開口部15から空調ドア2内に流入されると共に、第2の流路20を流れるものは加熱用熱交換器35で加熱されて、加熱空気として開口部16から空調ドア2内に流入される。そして、非加熱空気と加熱空気とは、空調ドア2内で混合され又はそのままの状態で、ベント用開口部39及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介し、或いは直接的に車室内に送出される。
【0047】
更に、図12では、フットモードが示されている。すなわち、図12(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、図12(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、開口部16が第1の流路20の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側及びベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、閉塞部7はフット用吹出流路23の風上側よりも冷却用熱交換器34側にずれて、開口部8がフット用吹出流路23の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図12(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気の全ては、加熱用熱交換器35で加熱され、この加熱空気は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部8からフット用吹出流路23内に入り、フット用開口部40から例えば直接的に車室内に送出される。
【0048】
更にまた、図13では、デフフットモードが示されている。すなわち、図13(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図13(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、開口部16が第2の流路20の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部にかかりつつベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、開口部15がデフ用吹出流路21の風上側の一部と接続され、開口部8がフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図13(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気の全ては、加熱用熱交換器35で加熱され、この加熱空気は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部15からデフ用吹出流路21内に入ると共に開口部8からフット用吹出流路23内に入り、デフ用開口部38及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介して、或いは直接的に車室内に送出される。
【0049】
そして、図14では、デフモードが示されている。すなわち、図14(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図14(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、閉塞部15が第2の流路20の風下側の一部にかかりつつ、開口部16が第2の流路20の風下側と接続される。そして、閉塞部6がベント用吹出流路22の風上側の全て及びフット用吹出流路23の風上側の全てを閉塞すると共に、開口部15がデフ用吹出流路21の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図14(B)の矢印に示されるように、送風機33で空気流路24内に取り込まれた空気の全ては、加熱用熱交換器35で加熱され、この加熱空気は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部15からデフ用吹出流路21内に入り、デフ用開口部38から図示しないダクト等を介して車室内に送出される。
【0050】
ところで、本発明について、これまで空調ユニット1をクーラーオンリー仕様とする場合とヒータオンリー仕様とする場合とで説明してきたが必ずしもこれに限定されない。図15に示されるように、ケース31に外気導入口30が開口したインテークユニット部28と、冷却用熱交換器34と、その風上側にフィルタ48とがケース49に収納されたクーリングユニット部50と、送風機33及び加熱用熱交換器35がケース32に収納されてヒータユニット部として機能する空調ユニット本体29とで成る、通常のエアコン仕様の空調ユニット1でも用いることができる。
【0051】
この空調ユニット1は、空調ユニット本体29の送風機33を駆動することで、インテークユニット部28の外気導入口30から空気が当該インテークユニット部28内に導入された後、この空気はクーリングユニット部50に送られて冷却用熱交換器34で冷却され、空調ユニット本体29内で加熱用熱交換器35で再加熱されるようになっているが、空調ユニット本体29は、先の実施形態のうちのヒータオンリー仕様のものと共通のものが用いられる。すなわち、図15で示される通常のエアコン仕様の空調ユニット27は、ベントモード、バイレベルモード、フットモード、デフフットモード、デフモードの各吹出モードについては、先述の図10から図14に示される空調ドア2の配置と同じであり、第1の流路19を外気導入口30から取り込まれた空気がそのまま流れるのではなく、冷却用熱交換器34で冷却された冷風が流れるという差異のみを有するものである。
【0052】
しかるに、図10(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア2は、図10(B)に示されるように、閉塞部14が第2の流路20の風下側を全て閉塞し、開口部15が第1の流路19の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞し、閉塞部7でフット用吹出流路23の風上側を全て閉塞すると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図10(B)の矢印に示されるように、クーリングユニット部50からの冷風の全ては、加熱用熱交換器35をバイパスして、空調ドア2内に開口部15から流入して、開口部8からベント用吹出流路22内に入り、ベント用開口部39から図示しないダクト等を介して車室内に送出されるので、ベントモードを形成する。
【0053】
また、図11(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア2は、図11(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側の一部と第2の流路20の風下側の一部とにかかり、開口部15が第1の流路19の風下側の一部と接続され、開口部16が第2の流路20の風下側の一部と接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側を全て閉塞すると共にベント用吹出流路22の風上側の一部にかかり、閉塞部7でフット用吹出流路23の風上側の一部にかかると共に、開口部8がベント用吹出流路22の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図11(B)の矢印に示されるように、クーリングユニット部50からの冷風は、第1の流路19を流れて加熱用熱交換器35をバイパスし、そのまま冷風として開口部15から空調ドア2内に流入されるものと、第2の流路20を流れて加熱用熱交換器35で加熱されて、温風として開口部16から空調ドア2内に流入されるものとに分かれる。そして、冷風と温風とは、空調ドア2内で混合され又はそのままの状態で、ベント用開口部39及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介し、或いは直接的に車室内に送出されるので、バイレベルモードを形成する。
【0054】
更に、図12(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、図12(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、開口部16が第1の流路20の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側及びベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、閉塞部7はフット用吹出流路23の風上側よりも冷却用熱交換器34側にずれて、開口部8がフット用吹出流路23の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図12(B)の矢印に示されるように、クーリングユニット部50からの冷風の全ては、加熱用熱交換器35で加熱されて温風となり、この温風は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部8からフット用吹出流路23内に入り、フット用開口部40から例えば直接的に車室内に送出されるので、フットモードを形成する。
【0055】
更にまた、図13(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図13(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、開口部16が第2の流路20の風下側と全開状態で接続される。そして、閉塞部6がデフ用吹出流路21の風上側の一部及びフット用吹出流路23の風上側の一部にかかりつつベント用吹出流路22の風上側を全て閉塞するのに対し、開口部15がデフ用吹出流路21の風上側の一部と接続され、開口部8がフット用吹出流路23の風上側の一部と接続される。これにより、図13(B)の矢印に示されるように、クーリングユニット部50からの冷風の全ては、加熱用熱交換器35で加熱されて温風となり、この温風は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部15からデフ用吹出流路21内に入ると共に開口部8からフット用吹出流路23内に入り、デフ用開口部38及びフット用開口部40から図示しないダクト等を介して、或いは直接的に車室内に送出されるので、デフフットモードを形成する。
【0056】
そして、図14(A)に示される位置に吹出モード切換用ダイヤル45を回動させると、空調ドア1は、図14(B)に示されるように、閉塞部14が第1の流路19の風下側を全て閉塞し、閉塞部15が第2の流路20の風下側の一部にかかりつつ、開口部16が第2の流路20の風下側と接続される。そして、閉塞部6がベント用吹出流路22の風上側の全て及びフット用吹出流路23の風上側の全てを閉塞すると共に、開口部15がデフ用吹出流路21の風上側と全開状態にて接続される。これにより、図14(B)の矢印に示されるように、クーリングユニット部50からの冷風の全ては、加熱用熱交換器35で加熱されて温風となり、この温風は、空調ドア2内に開口部16から流入して、開口部15からデフ用吹出流路21内に入り、デフ用開口部38から図示しないダクト等を介して車室内に送出されるので、デフモードを形成する。
【0057】
以上によれば、空調ユニット27を、クーラーオンリー仕様、ヒータオンリー仕様、通常のエアコン仕様のいずれに用いる場合でも、空調ユニット本体29のケース32は共通のものが用いられ、ヒータオンリー仕様と通常のエアコン仕様とで、加熱用熱交換器35、空調ドア2について共通のものが用いられ、更に、クーラーオンリー仕様、ヒータオンリー仕様、通常のエアコン仕様とで、空調ドア1は、空調ドア2においてもその本体部分として共通化されている。しかも、いずれの仕様の空調ユニット27についても、各モードの切り換えは、単一の吹出モード切換用ダイヤル45の回転による制御のみで行うことができ、しかも吹出モード切換用ダイヤル45からカム43等の駆動機構3への駆動力の提供も一本のケーブル44のみで行うことができるので、駆動機構3の簡素化が図られている。更に、空気入口を外気導入口30のみとすることで、空調ユニット27としての簡素化がされている。よって、空調ユニット27の低下価格化を十分に図ることが可能である。
【0058】
そして、本発明は、図示しないが、空気流路24を車両の前後方向に沿って延びる仕切り壁により車両左右方向に分けた、左右配風型又は前席側と後席側との配風型の空調ユニットにも用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1(A)は、本発明に係る空調ユニットのうちのクーラーオンリー仕様のものに対応した空調ドアの正面図であり、図1(B)は、同上の空調ドアの斜視図である。
【図2】図2(A)は、図1の空調ドアを空調ユニットに搭載した状態を示す断面図であり、図2(B)は、同上の空調ドアを回転させる駆動機構及び伝達機構の構成を示す説明図である。
【図3】図3(A)は、本発明に係る空調ユニットのうちのヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様のものに対応した空調ドアの正面図であり、図3(B)は、同上の空調ドアの斜視図である。
【図4】図4(A)は、図3の空調ドアを空調ユニットに搭載した状態を示す断面図であり、図4(B)は、同上の空調ドアを回転させる駆動機構及び伝達機構の構成を示す説明図である。
【図5】図5は、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおけるベントモードが示されており、図5(A)は、当該ベントモードにおけるダイヤルの位置を示し、図5(B)は、当該ベントモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図6】図6は、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおけるバイレベルモードが示されており、図6(A)は、当該バイレベルモードにおけるダイヤルの位置を示し、図6(B)は、当該バイレベルモードにおける空調ドアの位置と空気の流れを示している。
【図7】図7は、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおけるフットモードが示されており、図7(A)は、当該フットモードにおけるダイヤルの位置を示し、図7(B)は、当該フットモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図8】図8は、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおけるデフフットモードが示されており、図8(A)は、当該デフフットモードにおけるダイヤルの位置を示し、図8(B)は、当該デフフットモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図9】図9は、クーラーオンリー仕様の空調ユニットにおけるデフモードが示されており、図9(A)は、当該デフモードにおけるダイヤルの位置を示し、図9(B)は、当該デフモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図10】図10は、ヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ユニットにおけるベントモードが示されており、図10(A)は、当該ベントモードにおけるダイヤルの位置を示し、図10(B)は、当該ベントモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図11】図11は、ヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ユニットにおけるバイレベルモードが示されており、図11(A)は、当該バイレベルモードにおけるダイヤルの位置を示し、図11(B)は、当該バイレベルモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図12】図12は、ヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ユニットにおけるフットモードが示されており、図12(A)は、当該フットモードにおけるダイヤルの位置を示し、図12(B)は、当該フットモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図13】図13は、ヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ユニットにおけるデフフットモードが示されており、図13(A)は、当該デフフットモードにおけるダイヤルの位置を示し、図13(B)は、当該デフフットモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図14】図14は、ヒータオンリー仕様若しくは通常のエアコン仕様の空調ユニットにおけるデフモードが示されており、図14(A)は、当該デフモードにおけるダイヤルの位置を示し、図14(B)は、当該デフモードにおける空調ドアの位置と空気の流れとを示している。
【図15】図15は、インテークユニット部とクーリングユニット部とヒータユニット部とで構成された空調ユニットが示されている。
【符号の説明】
【0060】
1 空調ドア(第1の空調ドア、第2の空調ドアの本体部分)
1a 開口部
2 空調ドア(第2の空調ドア)
3 駆動機構
4 第2の空調ドアの構成部品
6 閉塞部
7 閉塞部
8 開口部
9 周面部
10 歯車
14 閉塞部
15 開口部
16 開口部
17 周面部
19 第1の流路
20 第2の流路
21 デフ用吹出流路
22 ベント用吹出流路
23 フット用吹出流路
24 空気流路
27 空調ユニット(車両用空調ユニット)
28 インテークユニット部
29 空調ユニット本体
30 外気導入口(空気入口)
31 インテークユニット部のケース
32 空調ユニット本体のケース
33 送風機
34 冷却用熱交換器
35 加熱用熱交換器
36 仕切壁部
37 スペース
38 デフ用開口部
39 ベント用開口部
40 フット用開口部
43 カム
44 ケーブル
45 吹出モード切換用ダイヤル
46 送風機用ダイヤル
49 ケース(クーリングユニット部のケース)
50 クーリングユニット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、空気入口と、送風機で前記空気入口から取り込まれた空気が流れる空気流路と、この空気路上に選択的に設置される冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器と、前記空気流路のうち冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器よりも風下側部位の一部を構成する吹出流路とを有し、前記吹出流路の空気の最も風下側は前記ケースの外面に開口した吹出用開口部が形成されていると共に、
前記空気流路のうち前記冷却用熱交換器又は加熱用熱交換器が設置される部位より風下側で且つ前記吹出流路よりも風上側において、前記冷却用熱交換器が設置される場合には吹出モード機能を有する第1の空調ドアが配置され、前記加熱用熱交換器が設置される場合には吹出モード機能及び前記加熱用熱交換器を通過した空気とバイパスした空気との割合調整機能を有する第2の空調ドアが設置されることを特徴とする空調ユニット。
【請求項2】
前記第1の空調ドアは、空調ユニットの吹出用流路の風上側と接続可能な開口部と前記吹出用流路の風上側を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されて開口部となっており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより吹出モードの切り換えが行われることを特徴とする請求項1に記載の空調ユニット。
【請求項3】
前記第2の空調ドアは、前記第1の空調ドアを本体部分とし、空調ユニットの加熱用熱交換器をバイパスした空気が流れる第1の流路の風下側と接続可能な開口部、前記加熱用熱交換器を通過した空気が流れる第2の流路の風下側と接続可能な開口部、及び前記第1の流路の風下側と前記第2の流路の風下側の全部又は一部を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放された構成部品を追加部分としたもので、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより第1の流路からの空気量と第2の流路からの空気量との割合の調整が行われることを特徴とする請求項2に記載の空調ユニット。
【請求項4】
空気入口を有するインテークユニット部と、この空気入口から取り込まれた空気を冷却することが可能なクーリングユニット部と、前記クーリングユニット部で冷却された空気を加熱することが可能なヒータユニット部とから構成され、
前記クーリングユニット部のケース内に冷却用熱交換器が収納され、前記ヒータユニット部のケース内に、送風機で前記空気入口から取り込まれた空気が流れる空気流路と、この空気路上に設置された加熱用熱交換器と、前記空気流路の加熱用熱交換器よりも風下側部位の一部を構成する吹出流路とを有し、前記吹出流路の空気の最も風下側は前記ケースの外面に開口した吹出用開口部が形成されていると共に、
前記空気流路のうち前記加熱用熱交換器が設置される部位より風下側で前記吹出流路よりも風上側において、請求項3に記載の第2の空調ドアが設置されることを特徴とする空調ユニット。
【請求項5】
空調ユニットの吹出用流路の風上側と接続可能な開口部と前記吹出用流路の風上側を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されて開口部となっており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより吹出モードの切り換えが行われることを特徴とする空調ドア。
【請求項6】
空調ユニットの加熱用熱交換器をバイパスした空気が流れる第1の流路の風下側と接続可能な開口部、前記加熱用熱交換器を通過した空気が流れる第2の流路の風下側と接続可能な開口部、及び前記第1の流路の風下側と前記第2の流路の風下側の全部又は一部を閉塞可能な閉塞部とが形成された周面部を有すると共にこの周面部を有する側と反対側は開放されており、前記周面部が円軌道を描いて回動することにより第1の流路からの空気量と第2の流路からの空気量との割合の調整が行われることを特徴とする空調ドアの構成部品。
【請求項7】
請求項5に記載の空調ドアを本体部分とし、請求項6に記載の空調ドアの構成部品を追加部分として、前記空調ドアの本体部分の開放された側と前記空調ドアの構成部品の開放された側とを合わせるように組み付けることで構成されることを特徴とする空調ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−296596(P2008−296596A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141205(P2007−141205)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】