説明

空調用ドアの駆動機構

【課題】空調用ドアの省スペース化を図りつつ、空調用ドアをスムーズに駆動することができる空調用ドアの駆動機構を提供する。
【解決手段】エアミックスドア8の駆動機構9は、ガイド空間91と、伝達駆動手段92と、回動規制手段93とを備えている。伝達駆動手段92は、エアミックスドア8を左右側部8a,8aで前後にスライド可能に支持し、駆動源を利用して上下に回動させる。回動規制手段93は、エアミックスドア8の回動時に、エアミックスドア8を伝達駆動手段92を利用して前後にスライドさせながら前端部8bを上下に直線状に移動させる。ここで、伝達駆動手段9の駆動部材921,921は丸型のパイプ状に形成されており、エアミックスドア8との接触面が曲面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、自動車の車室内の冷暖房を行う自動車用空気調和装置において、エアミックスドア等の空調用ドアに用いられる駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車には、車室内の冷暖房を行う自動車用空気調和装置が装備されている。自動車用空気調和装置には、特許文献1にも示されるように、ケース2内にエアミックスドア(空調用ドア)13が設けられている。このエアミックスドア13は、エバポレータ4とヒータコア5との間に配置されており、上下に回動してヒータコア5に送る空気量を調整するものである。
【0003】
また、ケース2内には、エアミックスドア13の駆動機構が設けられている。この駆動機構は、モータ等の駆動源から発生される回転駆動力を利用してエアミックスドア13を上下に回動させるものである。この駆動機構は、支持部材14a,14bと、回転位置規制突起15,15およびスライド溝18,18とを備えている。
【0004】
支持部材14a,14bは、エアミックスドア13の回動中心Cの両端側に位置する左右側部A、Bを保持溝16,16で挟持して、エアミックスドア13をその前後にスライド可能に支持している。一方の支持部材14aには、駆動源が接続されている。
【0005】
回転位置規制突起15,15は、エアミックスドア13の前端部の左右側に突出して形成されている。スライド溝18,18は、エバポレータ4の空気の吹き出し口に沿って直線状に配置されており、回転位置規制突起15,15を介してエアミックスドア13の前端部を上下に直線状に移動可能に支持している。
【0006】
駆動機構は、駆動源から回転駆動力が発せられると、支持部材14a,14bが回転してエアミックスドア13を上下に回動させる。このときにエアミックスドア13は、前端部がスライド溝18,18により支持されているため、支持部材14a,14bを利用して前後にスライドしながら、前端部がスライド溝18,18に沿って上下に直線状に移動する。
【0007】
このように、従来の駆動機構は、エアミックスドア13が回動しても、エアミックスドア13の前端部の移動軌跡が円弧状にならないようにエアミックスドア13の回動を規制しているので、エアミックスドア13の省スペース化を図ることが可能になっている。
【特許文献1】特許第3838762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の駆動機構では、エアミックスドア13の左右側部A、Bを支持部材14a,14bの保持溝16,16に面接させてエアミックスドア13をスライドさせている。このため、保持溝16,16とエアミックスドア13との間の摺動抵抗が必要以上に大きくなる。したがって、エアミックスドア13がスムーズに駆動しなかった。
【0009】
本件発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、空調用ドアの省スペース化を図りつつ、空調用ドアをスムーズに駆動することができる空調用ドアの駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本件発明の請求項1に記載の空調用ドアの駆動機構は、自動車用空気調和装置のケース内に設置され、当該ケース内に配置される空調用ドアを駆動源による回転駆動力を利用して上下に回動させる空調用ドアの駆動機構であって、この駆動機構は、前記駆動源に接続されると共に、前記空調用ドアの回動中心の両端側に位置する左右側部の少なくとも一方で前記空調用ドアをその前後にスライド可能に支持し、前記駆動源の回転駆動力を利用して回転することにより前記空調用ドアを上下に回動させる伝達駆動手段と、前記空調用ドアの前端部を上下に直線状に移動可能に支持し、前記空調用ドアの回動時に前記空調用ドアを前記伝達駆動手段を利用して前後にスライドさせながらその前端部を上下に直線状に移動させる回動規制手段とを備え、前記伝達駆動手段は、前記空調用ドアとの接触面が曲面状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、本件発明の請求項2に記載の空調用ドアの駆動機構は、請求項1に記載の空調用ドアの駆動機構が、さらに、前記空調用ドアの左右側部の少なくとも一方に前後に延設されたガイド手段を備え、前記伝達駆動手段は、このガイド手段を利用して前記空調用ドアを前後にスライド可能に支持することを特徴としている。
【0012】
また、本件発明の請求項3に記載の空調用ドアの駆動機構は、請求項2に記載の空調用ドアの駆動機構において、前記ガイド手段は、前記空調用ドアの左右側部の少なくとも一方の端面上に設けられたガイド空間により構成され、前記伝達駆動手段は、このガイド空間に挿入されて前記空調用ドアを前後にスライド可能に支持していることを特徴としている。
【0013】
また、本件発明の請求項4に記載の空調用ドアの駆動機構は、請求項3に記載の空調用ドアの駆動機構において、前記ガイド空間は、前記空調用ドアの左右側部の両端面を貫通して設けられ、前記伝達駆動手段は、前記ガイド空間を挿通して前記空調用ドアをその左右側部の両方で前後にスライド可能に支持していることを特徴としている。
【0014】
また、本件発明の請求項5に記載の空調用ドアの駆動機構は、請求項4に記載の空調用ドアの駆動機構において、前記伝達駆動手段の左右側部の両方が前記ケースに回転可能に支持されて、一方が前記駆動源に接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本件発明の請求項1に記載の空調用ドアの駆動機構では、従来と同様に、空調用ドアの前端部の移動軌跡が円弧状にならないように空調用ドアの回動を規制する一方、伝達駆動手段は、空調用ドアとの接触面が曲面状になるように形成した。このため、伝達駆動手段と空調用ドアとの間の接触面積が従来よりも小さくなるので、空調用ドアの回動時において伝達駆動手段と空調用ドアとの間の摺動抵抗も従来より小さくなる。よって、請求項1に記載の空調用ドアの駆動機構は、空調用ドアの省スペース化を図りつつ、空調用ドアをスムーズに駆動することができる。
【0016】
また、本件発明の請求項2に記載の空調用ドアの駆動機構では、空調用ドアの左右側部の少なくとも一方にガイド手段を延設し、伝達駆動手段は、このガイド手段を利用して空調用ドアを前後にスライド移動可能に支持するようにした。このため、空調用ドアの前後の移動は、ガイド手段がない場合に比べてスムーズになる。よって、請求項2に記載の空調用ドアの駆動機構は、空調ドアをさらにスムーズに駆動することができる。
【0017】
また、本件発明の請求項3に記載の空調用ドアの駆動機構では、空調用ドアの左右側部の少なくとも一方の端面上にガイド空間を設け、伝達駆動手段はこのガイド空間に挿入されて空調用ドアを前後にスライド可能に支持するようにした。このため、ケース内における伝達駆動手段の占有スペースは、伝達駆動手段が空調用ドアの外面側に設置される場合に比べて抑えられる。よって、請求項3に記載の空調用ドアの駆動機構は、省スペース化を図ることができる。
【0018】
さらに、本件発明の請求項4に記載の空調用ドアの駆動機構では、ガイド空間を、空調用ドアの左右側部の両端面を貫通するように設け、伝達駆動手段は、このガイド空間を挿通して空調用ドアを左右側部の両方で前後にスライド可能に支持するようにした。このため、空調用ドアの前後の移動は、伝達駆動手段が空調用ドアの左右側部の一方で支持する場合に比べてスムーズになる。よって、請求項4に記載の空調用ドアの駆動機構は、省スペース化を図りつつ、空調用ドアをさらにスムーズに駆動することができる。
【0019】
さらに、本件発明の請求項5に記載の空調用ドアの駆動機構では、伝達駆動手段の左右側部の両方がケースに回転可能に支持されて、一方が駆動源に接続するようにした。これにより、伝達駆動手段は安定して回転することが可能になる。よって、請求項5に記載の空調用ドアの駆動機構は、省スペース化を図りつつ、空調用ドアをさらにスムーズに駆動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本件発明の一実施の形態を示す自動車用空気調和装置1の縦断面図である。この自動車用空気調和装置1は、空気調和装置本体2と、制御装置(図示せず)とを備えている。
【0022】
空気調和装置本体2は、ケース3を備えている。ケース3の上流端には、空気吸入口31が設けられている。この空気吸入口31は、車室内の空気や車室外の空気を取り込むものである。また、ケース3内には、空気吸入口31に近い方からインテークドア(図示せず)、ファン(図示せず)、冷房用熱交換器4、暖房用熱交換器5等が配置されている。
【0023】
上記の機器を簡単に説明すると、まず、インテークドアは、空気吸入口31を車室内側または車室外側に切り替えるものである。ファンは、空気吸入口31から空気を取り込んで下流側に送るものである。冷房用熱交換器4は、ファンから送られてきた空気を冷媒を利用して冷却するものである。暖房用熱交換器5は、冷房用熱交換器4を通過した空気をエンジン冷却水(温水)を利用して暖めるものである。
【0024】
また、ケース3の下流端には、ベント吹出口32、デフ吹出口33、フット吹出口34が設けられている。ベント吹出口32は、ベントダクト(図示せず)を介して、インストルメントパネル上で前席に向けて配置されている。デフ吹出口33は、デフノズル(図示せず)を介して、インストルメントパネル上でフロントガラスに向けて配置されている。フット吹出口34は、フットダクト(図示せず)を介して、前席乗員の足元に向けて配置されている。
【0025】
また、ケース3内には、ベント吹出口32を開閉するベントドア6、デフ吹出口33を開閉するデフドア7、フット吹出口34を開閉するフットドア(図示せず)が設けられている。さらに、ケース3内には、冷房用熱交換器4と暖房用熱交換器5との間にエアミックスドア8が設けられている。このエアミックスドア8は、上下に回動して暖房用熱交換器5に送る空気量を調整するものである。
【0026】
また、ケース3内には、エアミックスドア8の駆動機構が設けられている。この駆動機構は、モータ等の駆動源(図示せず)から発生される回転駆動力を利用してエアミックスドア8を上下に回動させるものである。図2に示すように、この駆動機構9は、ガイド空間91と、伝達駆動手段92と、回動規制手段93とを備えている。
【0027】
ガイド空間91は、エアミックスドア8の後半部81の左右側部8a,8aの両端面を貫通して設けられており、前後に延設されている。
【0028】
伝達駆動手段92は、エアミックスドア8の左右側部8a,8aでエアミックスドア8をその前後(図2中のX方向)にスライド可能に支持し、駆動源を利用してエアミックスドア8を上下に回動させるものである。なお、エアミックスドア8の左右側部8a,8aとは、エアミックスドア8の回動中心8cの両端側に位置して回動中心8cと直交する方向で対向している部分である。
【0029】
また、この伝達駆動手段92は、駆動部材921,921と、スライドレバー922,923と、回転レバー924とを備えている。
【0030】
駆動部材921,921は、それぞれ丸型のパイプ状に形成されている。この駆動部材921,921は、ガイド空間91に嵌め込んで挿通されている。さらに、この駆動部材921,921は、ガイド空間91に挿通された状態で前後にスライド可能で、且つ、回転可能になるように、後半部81の内面81aに接触している。
【0031】
左側のスライドレバー922は、基部922aと、駆動ピン922b,922bと、伝達軸922cとを備えている。
【0032】
基部922aは平板状に形成されている。駆動ピン922b,922bは、基部922aの右側面(内面)の前後側部にそれぞれ設けられている。この駆動ピン922b,922bは、駆動部材921,921に内嵌して連結されている。伝達軸922cは、基部922aの左側面(外面)の中央部分に設けられている。この伝達軸922cは、図3に示すように、ケース3内に設けられた軸受け部925に回転自在に支持されている。
【0033】
右側のスライドレバー923は、基部923aと、駆動ピン923b,923bと、支持軸923cとを備えている。基部923a、駆動ピン923b,923b、支持軸923cは、それぞれ、左側のスライドレバー922の基部922a、駆動ピン922b,922b、伝達軸922cと同じものである。支持軸923cは、図3に示すように、ケース3内に設けられた軸受け部926に回転自在に支持されている。
【0034】
回転レバー924は、基部924aと、軸受け穴924bと、伝達軸924cとを備えている。
【0035】
基部924aは平板状に形成されている。軸受け穴924bは、基部924aの基端側に設けられている。この軸受け穴924bには、左側のスライドレバー922の伝達軸922cが嵌合されている。回転レバー924の方の伝達軸924cは、基部924aの先端側に設けられている。この伝達軸924cは、ケース3の外に配置された駆動源(図示せず)の駆動軸に接続されている。
【0036】
以上のように構成されている伝達駆動手段92は、駆動源が駆動することにより、その回転駆動力が回転レバー924の伝達軸924cに伝えられて回転レバー924が前後に回転する。これに伴い、左側のスライドレバー922は、伝達軸922cに回転駆動力が伝えられて前後に回転する。これにより、駆動部材921,921も前後に回転して、エアミックスドア8が上下に回動する。
【0037】
一方、回動規制手段93は、エアミックスドア8の前端部8bを直線状に移動可能に支持するものである。この回動規制手段93は、規制突起931,931と、ガイド溝932,932とを備えている。
【0038】
規制突起931,931は、エアミックスドア8の前端部8bの左右端にそれぞれ突出して設けられている。ガイド溝932は、図1に示すように、冷房用熱交換器4の空気の吹出口に沿うようにして直線状に設けられている。さらに、ガイド溝932は、図3に示すように、規制突起931,931を移動可能に支持している。
【0039】
以上のように構成されている回動規制手段93は、ガイド溝932,932が規制突起931,931を介してエアミックスドア8の前端部8bを支持している。したがって、図1に示すように、伝達駆動手段92によってエアミックスドア8が上下に回動するときに、エアミックスドア8は伝達駆動手段92を利用して前後にスライドしながら、前端部8bが、ガイド溝932,932に沿って上下に直線状に移動する。
【0040】
このように、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、従来の駆動機構と同様に、エアミックスドア8が上下に回動しても、前端部8bの移動軌跡が円弧状にならないようにエアミックスドア8の回動を規制するので、エアミックスドア8の省スペース化を図ることが可能になっている。
【0041】
さらに、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、駆動部材921,921の形状を丸型のパイプ状にしたことにより、駆動部材921,921とエアミックスドア8との接触面が曲面状に形成されている。これにより、駆動部材921,921とエアミックスドア8との間の接触面積が従来よりも小さくなる。したがって、エアミックスドア8の回動時において駆動部材921,921とエアミックスドア8との間の摺動抵抗も従来より小さくなる。よって、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、エアミックスドア8の省スペース化を図りつつ、エアミックスドア8をスムーズに駆動することができる。
【0042】
また、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構は、伝達駆動手段92が、ガイド空間91を利用してエアミックスドア8を前後にスライド移動可能に支持している。このため、エアミックスドア8は、ガイド空間91がない場合に比べて、前後の移動がスムーズになる。
【0043】
さらに、伝達駆動手段92は、駆動部材921,921をガイド空間91に挿通して、エアミックスドア8を左右側部8a,8aの両方で前後にスライド可能に支持している。このため、エアミックスドア8は、伝達駆動手段がエアミックスドア8の左右側部8a,8aの一方で支持する場合に比べて、前後の移動がスムーズになる。
【0044】
また、伝達駆動手段92(駆動部材921,921)とエアミックスドア8との接触箇所が4箇所になっていることにより、エアミックスドア8にかかる回転駆動力が1箇所に集中せずに2箇所に分散される。このため、エアミックスドア8はスムーズに回動することが可能になる。
【0045】
また、伝達駆動手段92は、左右のスライドレバー922,923が、それぞれ軸受け部925,926に回転可能に支持されていると共に、左側のスライドレバー922が駆動源に接続されている。このため、伝達駆動手段92は安定して回転することが可能になるので、エアミックスドア8もスムーズに回動することが可能になる。
【0046】
したがって、以上のことから、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、エアミックスドア8をさらにスムーズに駆動することができる。なお、本実施の形態では、ガイド手段としてエアミックスドアの左右側部8a、8aにガイド空間91を設けたが、ガイド手段はこのガイド空間91に限定しなくても良く、この他に例えば、左右側部8a、8aにガイド溝やガイドレール等を設けても良い。
【0047】
また、ガイド手段側において、駆動部材921,921との接触面も曲面状に形成しても良く、その場合には、双方の接触面積および摺動抵抗がさらに小さくなるので、エアミックスドア8をさらにスムーズに駆動することが可能になる。また、本実施の形態では、駆動部材921,921とエアミックスドア8との接触箇所を4箇所にしたが、この接触箇所の個数は特に限定されず、接触箇所が多くなればエアミックスドア8にかかる回転駆動力がさらに分散されるので、エアミックスドア8の回動がさらにスムーズになる。
【0048】
また、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、駆動部材921,921をガイド空間91に挿通していることにより、ケース3内における伝達駆動手段92の占有スペースが、伝達駆動手段がエアミックスドア8の外面側に設置される場合に比べて抑えられる。よって、本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9は、省スペース化を図ることができる。
【0049】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0050】
本実施の形態のエアミックスドア8の駆動機構9では、伝達駆動手段92の駆動部材921,921を丸型のパイプ材で構成した。しかし、駆動部材は、本実施の形態のような駆動部材921,921に限定される必要はない。例えば、図4に示すように、伝達駆動手段950の駆動部材951を1枚の板状に形成しても良い。ここで、この駆動部材951は、前端部951aと後端部951bとが断面円形状に形成されている。これに対応して、左右のスライドレバー952,952(右側のスライドレバー952のみ図示)の内面には、駆動部材951が内嵌するように保持穴952aが設けられている。
【0051】
したがって、駆動部材951とエアミックスドア8(図2参照)との接触面は曲面状になるので、双方の間の摺動抵抗が従来よりも小さくなる。よって、この伝達駆動手段950を備えた駆動機構の場合でも、本実施の形態と同様にエアミックスドア8をスムーズに駆動することができる。
【0052】
また、上記で説明した2つの駆動機構では、いずれも駆動部材を使用したが、必ずしも駆動部材を使用しなくても良い。その場合には、例えば、図5に示すようにスライドレバー962の駆動ピン962b,962bをエアミックスドア8のガイド空間91に嵌め込んで挿入して、エアミックスドア8を左側部8aで前後にスライド可能に支持する。したがって、ケース内における伝達駆動手段960の占有スペースは、伝達駆動手段がエアミックスドア8の外面側に設置される場合に比べて抑えられる。よって、この伝達駆動手段960を備えた駆動機構の場合でも、本実施の形態と同様に省スペース化を図ることができる。
【0053】
また、駆動部材を使用しない伝達駆動手段としては、スライドレバーを、エアミックスドア8の左右側部8a,8aの少なくとも一方を挟持した状態でエアミックスドア8を前後にスライド可能に支持するように構成しても良い。その場合には、スライドレバーにおいてエアミックスドア8を挟持している部分のエアミックスドア8との接触面を曲面状に形成すれば、本実施の形態と同様に、エアミックスドア8をスムーズに駆動することができる。
【0054】
また、以上説明した実施の形態では、本件発明をエアミックスドアの駆動機構に適用した場合について説明したが、図1で説明した他の空調用ドア(ベントドア6、デフドア7、フットドア等)に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明したように本件発明の空調用ドアの駆動機構は、空調用ドアの省スペース化を図りつつ、空調用ドアをスムーズに駆動することができる。したがって、本件発明の空調用ドアの駆動機構を、その技術分野で十分に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本件発明の一実施の形態を示す自動車用空気調和装置の縦断面図である。
【図2】同実施の形態においてエアミックスドアとその駆動機構との関係を示す分解斜視図である。
【図3】同実施の形態においてエアミックスドアの駆動機構がケース内に設置された状態を示す横断面図である。
【図4】本件発明の他の実施の形態を示すエアミックスドアの駆動機構の伝達駆動手段の分解斜視図である。
【図5】本件発明の他の実施の形態を示すエアミックスドアの駆動機構の伝達駆動手段を含む要部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 自動車用空気調和装置
3 ケース
8 エアミックスドア
8a,8a 左右側部
8b 前端部
8c 回動中心
9 駆動機構
91 ガイド空間
92 伝達駆動手段
93 回動規制手段
950 伝達駆動手段
960 伝達駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用空気調和装置のケース内に設置され、当該ケース内に配置される空調用ドアを駆動源による回転駆動力を利用して上下に回動させる空調用ドアの駆動機構であって、
この駆動機構は、
前記駆動源に接続されると共に、前記空調用ドアの回動中心の両端側に位置する左右側部の少なくとも一方で前記空調用ドアをその前後にスライド可能に支持し、前記駆動源の回転駆動力を利用して回転することにより前記空調用ドアを上下に回動させる伝達駆動手段と、
前記空調用ドアの前端部を上下に直線状に移動可能に支持し、前記空調用ドアの回動時に前記空調用ドアを前記伝達駆動手段を利用して前後にスライドさせながらその前端部を上下に直線状に移動させる回動規制手段とを備え、
前記伝達駆動手段は、前記空調用ドアとの接触面が曲面状に形成されていることを特徴とする空調用ドアの駆動機構。
【請求項2】
請求項1に記載の空調用ドアの駆動機構は、さらに、前記空調用ドアの左右側部の少なくとも一方に前後に延設されたガイド手段を備え、
前記伝達駆動手段は、このガイド手段を利用して前記空調用ドアを前後にスライド可能に支持することを特徴とする空調用ドアの駆動機構。
【請求項3】
請求項2に記載の空調用ドアの駆動機構において、
前記ガイド手段は、前記空調用ドアの左右側部の少なくとも一方の端面上に設けられたガイド空間により構成され、
前記伝達駆動手段は、このガイド空間に挿入されて前記空調用ドアを前後にスライド可能に支持していることを特徴とする空調用ドアの駆動機構。
【請求項4】
請求項3に記載の空調用ドアの駆動機構において、
前記ガイド空間は、前記空調用ドアの左右側部の両端面を貫通して設けられ、
前記伝達駆動手段は、前記ガイド空間を挿通して前記空調用ドアをその左右側部の両方で前後にスライド可能に支持していることを特徴とする空調用ドアの駆動機構。
【請求項5】
請求項4に記載の空調用ドアの駆動機構において、
前記伝達駆動手段の左右側部の両方が前記ケースに回転可能に支持されて、一方が前記駆動源に接続されていることを特徴とする空調用ドアの駆動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−120440(P2010−120440A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293976(P2008−293976)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】