説明

空調用フィルタ濾材

【課題】 近年、フィルタ業界においても産業廃棄物を減らし自然環境を良くし、且つコストを低減する観点から、フィルタ濾材を交換する濾材交換型空調用フィルタが採用されてきているが、構造及び操作簡単にしてフィルタ枠に取り替え自在で気密性の高いジグザグ状エアフィルタのフィルタ濾材はなかった。そこで本発明はこれらの要求を解決しょうとしたものである。
【解決手段】 濾材2の両面あるいは片面に複数本の樹脂ビード3を一定の厚さに塗布して樹脂層を形成した後ジグザグ状に折り畳んで樹脂層を固化して濾材の折り畳み幅を一定間隔としたジグザグ状エアフィルタにおいて、濾材の上端及び下端にそれぞれ所定幅の端部6、7を残して樹脂ビード3’、3”を施し、前記それぞれの端部6、7にシール機能を持たせ、フィルタ枠に簡単に取り替え自在となした空調用フィルタ濾材を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、フィルタ業界においても産業廃棄物を減らし自然環境を良くし、且つコストを低減する観点から、フィルタ濾材を交換する濾材交換型空調用フィルタが採用されてきている。そこで本発明はフィルタ枠に取り替え自在になしたジグザグ状エアフィルタのフィルタ濾材に関するものである。
【技術背景】
【0002】
従来、濾材の両面あるいは片面に樹脂ビードを一定の厚さに塗布して樹脂層を形成した後樹脂層を固化して濾材の折り畳み幅を一定間隔としたジグザグ状エアフィルタについてもフィルタ濾材を取り替え自在に装着する試みがなされている。例えば、特許文献1にはプリーツ折り加工された圧縮弾性を有する濾材を長手方向に圧縮させた状態で前記濾材の幅方向両端部にテープを貼りつけ、フィルタ枠に装着後、テープを剥がして圧縮弾性による復元力でフィルタ枠両側内面にシールするようにした発明が開示されている。しかしながら、この発明では横から出し入れするタイプのフィルタ枠には適応できない上、テープを使用して濾材の形状を圧縮維持するため、テープを所定寸法及び所定位置に確実に貼り付ける必要があり、製作に工数がかかる上、時間経過によるフィルタ自身の型崩れや現場で使用するまでの形状維持が難しく実用的でなかった。
【0003】
また、特許文献2にはプリーツ折りした濾材の表裏面に、プリーツと直行方向に延びる樹脂ビードを付着させて、プリーツの折り山間隔を保持し、エアフィルタ濾材の左右両側面間の寸法を、フィルタ枠左右の側板間の寸法よりも大きくし、このエアフィルタ用濾材の左右両側面がフィルタ枠左右の側板の内面に押圧されて、前記フィルタ枠に収納されるようにした発明が開示されているが、この発明ではエアフィルタ濾材の左右の側面のみで、エアフィルタ濾材の上下端については従来通りで何ら工夫されておらず特に横から出し入れするタイプのフィルタ枠に対しては十分でなかった。
【0004】
しかしながら、いずれも濾材の折り込みと共に部分的に濾材同士を波形に形成した後、濾材外周にシール用のパッキン材を接着材で貼付しなければならなかった。この製造方法では、波形に形成後の後加工を人的作業により行なうため相応のコストが掛かってしまい。また、接着材やパッキン材を使用することは、空調用フィルタの使用材料製造のエネルギを消費し、廃棄処理に際しさらにエネルギを消費することになる等の問題があり、コスト低減にも限界があった。
【特許文献1】 特開2004−89758号公報
【特許文献2】 特開2003−93823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の課題を解決するためのものであり、フィルタ枠に対して簡単に装着可能になすと共に、特に横から出し入れするタイプに対してもエアーリークを生じないようにした空調用フィルタ濾材を提供することを目的とする。
【発明が解決するための手段】
【0006】
本発明の解決手段は濾材の両面あるいは片面に複数本の樹脂ビードを一定の厚さに塗布して樹脂層を形成した後ジグザグ状に折り畳んで樹脂層を固化して濾材の折り畳み幅を一定間隔としたジグザグ状エアフィルタにおいて、濾材の上端及び下端にそれぞれ所定幅の端部を残して樹脂ビードを施し、前記それぞれの端部にシール機能を持たせ、フィルタ枠に簡単に取り替え自在となした空調用フィルタ濾材を提供するものである。
【0007】
次に、空調用フィルタ濾材の製造方法を述べると、まず所定の幅に裁断された濾材の長手方向に一定間隔の折り筋を設ける。
【0008】
折リ筋をつけた濾材の上端及び下端にそれぞれ所定幅の端部を残して両面あるいは片面に所定間隔の樹脂ビードを塗布する。
【0009】
樹脂ビードを塗布した濾材を前記折り筋に向かって押圧しジグザグ状に折り畳む。
【0010】
折り畳まれた濾材は両面あるいは片面に塗布された樹脂ビードによって結合され一定の間隔でジグザグ状に折り畳まれたジグザグ状エアフィルタが出来あがる。
【0011】
ここで濾材の上端及び下端に形成した端部は空調用フィルタ濾材の構成上重要な部分を担うもので、すなはち濾材の上端及び下端に形成した端部は種々の材質のフィルタ枠とのエアーシール用パッキン材としての機能を担うものである。したがって濾材の上端及び下端に形成した端部の寸法はフィルタ枠の材質、構造、寸法並びに濾材自身の素材の持つ剛性により決定されるもので、フィルタ枠の材質、構造、寸法更に高い圧力損失でも変形破損しないフィルタの耐圧などの剛性も考慮した任意の寸法とする。
【0012】
そして濾材の材質は不織布やガラス繊維、紙など、折り加工後の形状が容易に崩れない程度の伸度と強度とを兼ね備えたものであればなんでも良く、要求性能に応じ適宜選択可能である。
【0013】
また、樹脂ビードの本数は濾材自身の素材の持つ剛性により適宜決定されるが、最低2本すなわち濾材の上端及び下端に所定幅の端部を残して樹脂ビードが施される。
【0014】
さらに、樹脂ビードの材質は合成樹脂が使用されるが製造工程中に固化させる点を考慮するとポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などのようなホットメルトタイプのものが好ましい。
【0015】
また、上記課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、空調用フィルタ濾材に施した両サイドの樹脂ビードから濾材の上端及び下端までにそれぞれ所定幅の端部を形成しているので、押圧により僅かに撓む。一方、両サイドの樹脂ビードに挟まれた濾材中央部は樹脂ビードにより固定されており、形状が安定に維持されている為変形することなく、ある程度の硬度がたもたれている。このため、空調用フィルタ濾材をフィルタ枠に装着すると、濾材の端部が折れ曲がり、その反発力(弾性)によりフイルタ枠と密着しシールされる。一方前記の端部に対し空調用フィルタ濾材の左右の側面は濾材切断面が気流の一次側となるよう設置することで、濾材切断面ならびに濾材側面がフィルタ枠と接触しシールされる。これにより、空調用フィルタ濾材はフィルタ枠の全周で確実に保持されるので、空調用フィルタ濾材がフィルタ枠からずれたり、外れたりすることがなく、気密性が向上すると共に保持が確実となる。さらに、自動車などの車両の揺れや衝撃又は外的な力や振動などによってもフィルタ濾材がフィルタ枠からずれたり外れたりすることのない空調用フィルタ濾材が得られる。
【発明の効果】
【00016】
上述したように、本発明の空調用フィルタ濾材は次のような効果が得られる。
(1)濾材の上端及び下端の端部にフィルタ枠とのエアーシール用パッキン材としての機能をもたせたので、取り付け取り外しが簡単で気密性を向上させるという効果を持つものである。
(2)濾材と樹脂ビードの2種類の材料からのみで空調用フィルタ濾材を構成したので、部品点数の低減が図られ製造エネルギや産廃量の低減にもつながるものである。
(3)空調用フィルタ濾材の構成部品点数を最少に抑え製品化までの人的作業を排除することで安価な空調用フィルタ濾材を提供するものである。
(4)空調用フィルタ濾材は、不織布などの濾材と、濾材を要求形状に保持する接着材であるメルト樹脂からなり、濾材の周囲にエアーシール用のパッキン材を必要としない。
(5)製品化までの人的工程が殆どないため、極めて安価且つ全自動化ラインの自動化率をほぼ100%に出来るので安価な空調用フィルタ濾材を提供可能とした。
(6)使用材料を低減できるため製造及び廃棄に要する消費エネルギを最低限とすることを可能とした。
【発明の実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る空調用フィルタ濾材を添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では、図1について説明する。1は空調用フィルタ濾材で一定の間隔でジグザグ状に折り畳まれた濾材2と樹脂ビード3、3’、3”とから構成されている。濾材2は一定間隔で折り畳まれているので、濾材2の一方から入った空気は濾材2の他方の側から排出されるようになっている。濾材2の両面にはそれぞれ濾材2間の間隙保持部材となる樹脂ビード3、3’、3”が同一対称で塗布形成されている。そして同一対称で塗布された樹脂ビード3、3’、3”の頂部同士が固化結合し気流の流れに対して隣接する濾材2同士がくっ付きあって気流の流れを阻害しないようになっている。両サイドの樹脂ビード3’、3”から濾材の上端及び下端までにはそれぞれ所定幅の端部6、7が形成され、その寸法はフィルタ枠の材質、構造、寸法並びに濾材自身の素材の持つ剛性により決定されるが、少なくともフィルタ枠の上下寸法より若干長めになってい
【0018】
る。図2はフィルタ枠8に空調用フィルタ濾材1をセットした状態を示す一部破断したところを示す図で、空調用フィルタ濾材1を持ち、フィルタ枠8の片側開口面よりフィルタ枠8内に挿入する、この時、濾材の端部6,7はフィルタ枠8上下内面に僅かに撓みながら折れ曲がり、その反発力(弾性)によりフィルタ枠8内面と密着シールされる。一方濾材2の両側端9、10はある程度の硬度を有しているのでフィルタ枠8の両側板によって押圧され密着シールされる。
【0019】
その際には、空調用フィルタ濾材1はフィルタ枠8の両面全周に形成した縁11によって抑止されるので、車両用フィルタの場合は使用中に車体の揺れや衝撃を受けたとしても空調用フィルタ濾材1はフィルタ枠8からずれ出たり外れたりすることはない。
【0020】
また、所定の使用期間が経過した際にはフィルタ枠8から空調用フィルタ濾材1を取り出し、清掃するかまたは新しいものと交換し、再び使用に供される。このように容易に取り替え自在に出来るものである。
【0021】
(第2実施形態)
本実施形態では、図3について説明する。図3はもう一つのフィルタ枠12を使用したもので、気流の二次側からみた図である。この場合は空調用フィルタ濾材1をフィルタ枠12の開口面より濾材1の両側面を手で押圧して変形した状態でフィルタ枠12に挿入して装着する。この際、濾材の端部6、7は折れ曲がり、その反発力(弾性)によりフィルタ枠と密着シールする。一方、濾材の左右の側面は元の形状に復元するのでフィルタ枠の両側面に圧着した状態でシールされる。これにより、濾材をフィルタ枠全周で確実に保持でき、濾材がフィルタ枠からずれたり、外れたりすることがなく、気密性が向上すると共に保持が確実になる。さらに、自動車などの車両の揺れや衝撃又は外的な力や振動などによっても濾材がフィルタ枠からずれたり外れたりすることのない空調用フィルタ濾材がえられる。
【0022】
尚、上記実施形態では1実施例を述べただけで、種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、フィルタ枠に簡単に取り替え自在としながら、高い気密性を持たせたもので、濾材交換型一般空調用のフィルタ濾材としても最適であるが、特に、揺れや、衝撃または対外的な力や振動を受け易い自動車など車両の空調フィルタの交換用フィルタ濾材としても最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の1実施例を示す空調用フィルタ濾材の斜視図である。
【図2】空調用フィルタ濾材をフィルタ枠に装着した状態を示したもので、一部破断した図である。
【図3】もう1つのフィルタ枠に空調用フィルタ濾材を装着した状態を示した図で気流の二次側からみたものである。
【符号の説明】
【0025】
1・・・空調用フィルタ濾材 2・・・濾材
3、3’、3”・・・樹脂ビード 6、7・・・端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材の両面あるいは片面に複数本の樹脂ビードを一定の厚さに塗布して樹脂層を形成した後、この濾材をジグザグ状に折り畳んで樹脂層を固化してなるエアフィルタにおいて、濾材の上端及び下端にそれぞれ所定幅の端部を残して樹脂ビードを施し、前記それぞれの端部にシール機能を持たせ、フィルタ枠に簡単に取り替え自在になした空調用フィルタ濾材。
【請求項2】
前記濾材の上下寸法をフィルタ枠の上下寸法よりも若干長めにしたことを特徴とする請求項1記載の空調用フィルタ濾材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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