説明

空調能力算出システム

【課題】構成や設定が簡便であり、空調能力を算出するためのシステム構築のコストを抑制することが可能な空調能力算出システムに関する。
【解決手段】本発明の空調能力算出システムは、室外ユニットAと、前記室外ユニットAに投入される電力を計測する電力計32と、前記室外ユニットAと冷媒配管で接続されると共に、開閉により冷媒の流量を制御する膨張弁と、前記膨張弁に対して前記膨張弁の開度に係る制御指令を出力し、前記膨張弁の開度を制御する弁制御部31と、を有する室内ユニットa(a1,a2,…a4)と、前記電力計32によって計測された電力と、前記弁制御部31によって出力された制御指令を取得すると共に、取得された電力と、取得された制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出する外部情報処理装置30と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオフィスビルディングに適用されるマルチ型パッケージ空調機器などの冷暖房を行う空調システムの空調能力を算出する空調能力算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の空調システムである、いわゆるビル用マルチは、低価格、設計施工、個別制御や操作の容易さから、広く利用されている。最近ではビル用マルチの大容量化や省エネ化の進展にともなって、従来からの小規模建物だけでなく大規模建物においても採用されている。このビル用マルチは、空調システムの能力アップを機械室の増床なく簡便に行なえるため、新設の建物のみならず既設の建物における空調負荷の増強対策としても多用されている。
【0003】
ここで、昨今の省エネルギー対策のため、建物の管理者等から、稼動中の建物での空調システムの空調能力の評価要請が強まっている。
【0004】
そこで、従来、これまで空調システムの空調能力を評価するための技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1(特開2009−150640号公報)には、容量制御型の圧縮機と室外側熱交換器を備えた室外機と、室内側熱交換器を備えた室内機を冷媒配管で接続してなるパッケージ型空調機を用いた空調能力算出システムの冷房能力を測定する方法であって、室外機から室内機に冷媒が送られる送液管を加熱または冷却し、それに応じた前記圧縮機の消費電力、凝縮圧力および蒸発圧力の変化のデータに基づいて、冷房能力を推定することを特徴とする、パッケージ型空調機による空調能力算出システムの冷房能力測定方法が開示されている。
【特許文献1】特開2009−150640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1記載の技術においては、空調能力を算出するために、室外機から室内機に冷媒が送られる送液管を加熱または冷却するハードウエアが必要であり、さらに、加熱または冷却に応じた圧縮機の消費電力、凝縮圧力および蒸発圧力の変化のデータを取得するための各種センサが必要であるので、構成や設定が複雑であり、空調能力を算出するためのシステム構築のコストが上昇する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、室外ユニットと、前記室外ユニットに投入される電力を計測する電力計と、前記室外ユニットと冷媒配管で接続されると共に、開閉により冷媒の流量を制御する膨張弁と、前記膨張弁に対して前記膨張弁の開度に係る制御指令を出力し、前記膨張弁の開度を制御する弁制御部と、を有する室内ユニットと、前記電力計によって計測された電力と、前記弁制御部によって出力された制御指令を取得すると共に、取得された電力と、取得された制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出する演算部と、を有することを特徴とする空調能力算出システムである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空調能力算出システムにおいて、前記室外ユニットには、複数の前記室内ユニットが接続されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の空調能力算出システムに
おいて、エネルギー消費効率が冷房に係るものであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の空調能力算出システムにおいて、エネルギー消費効率が暖房に係るものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る空調能力算出システムによれば、電力計による計測値と、膨張弁の開度に係る制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出するので、構成や設定が簡便であり、空調能力を算出するためのシステム構築のコストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る空調能力算出システムにより能力算出が行われる空調システム構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る空調能力算出システムにより能力算出が行われる空調システムの制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る空調能力算出システムにより能力算出が行われる空調システムの適用例を示す図である。
【図4】室外ユニットの負荷率と効率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態に係る空調能力算出システムにより能力算出が行われる空調システムの制御ブロック図の一例を示すである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る空調能力算出システムが適用されたマルチ型パッケージ空調機器(マルチ形の空気調和装置)の冷熱サイクル構成図である。
【0013】
マルチ型パッケージ空調機器は、1台の室外ユニットA、複数台の室内ユニットa(a1,a2,…a4)及び、各ユニットを接続する冷媒配管D1、D2で構成されている。冷媒配管D1、D2は、ガス側分岐管8および液側分岐管9で分岐接続され、室内ユニットa1,a2,…a4に分配して冷媒を供給する。室外ユニットAのガス側阻止弁1に冷媒配管D1を接続し、液側阻止弁2に冷媒配管D2を接続することで、一つの冷熱サイクル系統を構成している。
【0014】
室内ユニットa(a1,a2,…a4)は、機内に室内膨張弁(減圧装置)5を有する室内ユニットであり、その他に室内送風機3と室内熱交換器4を有している。
【0015】
室外ユニットAにおいて、10は圧縮機、11は四方弁、12は室外送風機、13は室外熱交換器、14は室外膨張弁、15は冷媒タンク、16はアキュミュレータである。矢印は冷媒配管を流れる冷媒の方向を示し、実線矢印が冷房運転時で、逆向きの破線矢印が暖房運転時を示す。この冷媒の流れ方向は、室外ユニットA内の四方弁11の切り換えにより決められる。
【0016】
図2は本発明実施例の制御ブロック図である。17は室内ユニットa(a1,a2,…a4)に動作指令(運転、停止、運転モード、風量・風向設定、温度設定など)を与えるリモコン、18はリモコン線である。20はマルチ型パッケージ空調機器全体の動作を制御する集中管理制御部、23は室外ユニットAの制御器、24は室内ユニットaの制御器、25は室内ユニットbの制御器である。21は前記制御部20と制御器23を接続する集中管理制御伝送線、19は室外ユニットAと室内ユニットa、bを接続する室内外伝送線、30は前記集中管理制御部20から空調システムの運転状況に係るデータを取得したり、前記集中管理制御部20に対して制御指令を出力したりするパーソナルコンピュータ
ーなどの外部情報処理装置、29は前記集中管理制御部20と外部コントローラーとして機能する前記部情報処理装置30とを接続する外部インターフェイス線、31は室内膨張弁5に対して室内膨張弁5の開度に係る制御指令を出力する弁制御部、32は前記室外ユニットAに投入される電力を計測する電力計である。
【0017】
外部情報処理装置30としては、演算部、記憶部、インターフェイス部などを有し、ウインドウズ(登録商標)などのオペレーティングシステムが組み込まれた一般的なパーソナルコンピューターを利用することができる。
【0018】
室内ユニットaの制御器24は、リモコン17による昇温指令・降温指令などの設定に応じて、弁制御部31に対する指令を行う。弁制御部31は、制御器24からの指令に基づいて、室内膨張弁5に対して室内膨張弁5の開度に係る制御指令を出力する。室内膨張弁5の開度に応じて、例えば冷房運転の場合には、冷媒の気化熱が制御され、これにより、室内ユニットaによる空調コントロールが行われるようになっている。
【0019】
それぞれの室内ユニットa(a1,a2,…a4)で、室内膨張弁5に対して出力された室内膨張弁5の開度に係る制御指令は、それぞれの制御器24から、室外ユニットAの制御器23を経て、集中管理制御部20で収集される。さらに、室内膨張弁5の開度に係る制御指令データは、集中管理制御部20から外部情報処理装置30に転送されて、外部情報処理装置30において、エネルギー消費効率を算出するために利用される。
【0020】
また、商用電源から室外ユニットAに投入される電力は電力計32によって計測され、室外ユニットAの制御部23によって取得される。電力計32により計測された電力値データは、制御部23から集中管理制御部20に転送され、さらに、集中管理制御部20から外部情報処理装置30に取り込まれるようになっている。電力計32により計測された電力値データは、外部情報処理装置30において、エネルギー消費効率を算出するために利用される。
【0021】
次に、以上のように構成される空調システムを2系統用いて、1つの空間Rの空調を行
う事例について検討し、このような事例で、本発明の実施形態に係る空調能力算出システムを有効に活用する方法について説明する。
【0022】
図3には、1つの空間Rを、室外ユニットAとこれに接続された室内ユニットa(a1,a2,…a4)とからなる系統の空調システム(以下、系統Aの空調システムともいう)と、室外ユニットBとこれに接続された室内ユニットb(b1,b2,…b4)とからなる系統の空調システム(以下、系統Bの空調システムともいう)とにより、空調を行う事例が示されている。
【0023】
また、図4は室外ユニットA及び室外ユニットBの負荷率と効率との関係を示すグラフである。いずれの室外ユニットも負荷率がLoより低くなると、効率の低下率が著しくなることが分かる。図3に示すように系統A及び系統Bの2つ以上の系統の空調システムで1つの空間Rの空調を行う場合で、空調の運転水準が低くても良いときには、室外ユニットA及び室外ユニットBの双方を負荷率Loより低い負荷率で利用するのではなく、室外ユニットA又は室外ユニットBのいずれか一方を負荷率Loより高い負荷率で利用し、他方の室外ユニットは停止してしまった方が、全体としてより効率的な運転を行うことが可能になるものと考えられる。系統A及び系統Bの2つ以上の系統の空調システムで、このような運転方法を実行させるためには、例えば、外部情報処理装置30によって集中管理制御部20を制御することで、これを行うようにすることができる。
【0024】
ところで、上記のように外部情報処理装置30によって集中管理制御部20を制御する
ことで、全体として効率がよいことを立証するためには、空調能力を算出する必要がある。本発明の実施形態に係る空調能力算出システムは、このようなニーズに応えるために、空調能力を簡便に算出するものである。
【0025】
本実施形態に係る空調能力算出システムにおいては、外部情報処理装置30が、電力計32によって計測された電力値と、弁制御部31によって出力された制御指令を取得する。
【0026】
外部情報処理装置30は、取得された電力値と、取得された制御指令とに基づいて、下式(1)により、空調システムのエネルギー消費効率(COP:Coefficient
of Performance)を演算する。なお、式(1)は冷房に関するエネルギー消費効率を算出するための算出式である。
【0027】
【数1】

ここで、Rは個々の室内ユニットから取得された室内膨張弁5の開度に係る制御指令データであり、α1は冷房時における室内膨張弁5の開度を冷媒流量に変換する変換係数で
あり、β1は冷房時における冷媒流量を製造熱量に変換する変換係数であり、Wは個々の
室外ユニットに投入された電力値を示している。
【0028】
また、外部情報処理装置30は、取得された電力値と、取得された制御指令とに基づいて、下式(2)により、空調システムの暖房に関するエネルギー消費効率(COP:Coefficient of Performance)を演算する。
【0029】
【数2】

ここで、Rは個々の室内ユニットから取得された室内膨張弁5の開度に係る制御指令データであり、α2は暖房時における室内膨張弁5の開度を冷媒流量に変換する変換係数で
あり、β2は暖房時における冷媒流量を製造熱量に変換する変換係数であり、Wは個々の
室外ユニットに投入された電力値を示している。
【0030】
外部情報処理装置30は、取得された電力値データと、取得された室内膨張弁5に対する制御指令とに基づいて、上記のように、冷房時には式(1)を適用し、暖房時には式(2)を適用することで、エネルギー消費効率を算出する演算を実行する。演算されたエネルギー消費効率は、外部情報処理装置30に設けられているディスプレイなどのインターフェイス部によりユーザーに提示される。
【0031】
従来の技術においては、空調能力を算出するために、室外機から室内機に冷媒が送られる送液管を加熱または冷却するハードウエアが必要であり、さらに、加熱または冷却に応じた圧縮機の消費電力、凝縮圧力および蒸発圧力の変化のデータを取得するための各種センサが必要であったが、上記のように、本発明に係る空調能力算出システムによれば、電力計32による計測値と、室内膨張弁5の開度に係る制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出するので、構成や設定が簡便であり、空調能力を算出するためのシステム構築のコストを抑制することが可能となる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る空調能力算出システムにより能力算出が行われる空調システムの制御ブロック図の一例を示すである。先の実施形態においては、集中管理制御部20に接続された外部情報処理装置30が、電力計32による計測値と、室内膨張弁5の開度に係る制御指令とを取得して、外部情報処理装置30がその演算部によりエネルギー消費効率を算出する構成であったが、他の実施形態においては、集中管理制御部20が電力計32による計測値と、室内膨張弁5の開度に係る制御指令とを取得して、外部情報処理装置30がその演算部41によりエネルギー消費効率を算出する構成となっている。
【0033】
本実施形態においては、集中管理制御部20は演算を行い得るマイクロコンピューターなどの演算部41と、表示装置などのUI部(ユーザーインターフェイス部)42とを備えており、演算部41により算出されたエネルギー消費効率はUI部42によりユーザーに示されるようになっている。
【0034】
上記のような他の実施形態に係る空調能力算出システムによっても、電力計32による計測値と、室内膨張弁5の開度に係る制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出するので、構成や設定が簡便であり、空調能力を算出するためのシステム構築のコストを抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・ガス側阻止弁
2・・・液側阻止弁
3・・・室内送風機
4・・・室内熱交換器
5・・・室内膨張弁(減圧装置)
8・・・ガス側分岐管
9・・・液側分岐管
10・・・圧縮機
11・・・四方弁
12・・・室外送風機
13・・・室外熱交換器
14・・・室外膨張弁
15・・・冷媒タンク
16・・・アキュミュレータ
17・・・リモコン
18・・・リモコン線
19・・・室内外伝送線
21・・・集中管理制御伝送線
20・・・集中管理制御部
23・・・室外ユニット制御器
24・・・室内ユニッ制御器
25・・・室内ユニット制御器
29・・・外部インターフェイス線
30・・・外部情報処理装置
31・・・弁制御部
32・・・電力計
41・・・演算部
42・・・UI部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外ユニットと、
前記室外ユニットに投入される電力を計測する電力計と、
前記室外ユニットと冷媒配管で接続されると共に、開閉により冷媒の流量を制御する膨張弁と、前記膨張弁に対して前記膨張弁の開度に係る制御指令を出力し、前記膨張弁の開度を制御する弁制御部と、を有する室内ユニットと、
前記電力計によって計測された電力と、前記弁制御部によって出力された制御指令を取得すると共に、取得された電力と、取得された制御指令とに基づいて、エネルギー消費効率を算出する演算部と、を有することを特徴とする空調能力算出システム。
【請求項2】
前記室外ユニットには、複数の前記室内ユニットが接続されることを特徴とする請求項1に記載の空調能力算出システム。
【請求項3】
エネルギー消費効率が冷房に係るものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調能力算出システム。
【請求項4】
エネルギー消費効率が暖房に係るものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調能力算出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−255570(P2012−255570A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127608(P2011−127608)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】