説明

空調装置

【課題】 温度の異なる複数の部屋において、互いに温度の影響をうけることなく一つの熱交換ユニットにより効果的に換気を行なえるようにした空調装置を提供する。
【解決手段】 全熱交換素子と、給気ファンおよび排気ファンとを備えた熱交換ユニット4に、吸気路5および分岐された供給路6からなる給気経路と、分岐された排出路8および排気路9からなる排気経路とを接続し、前記熱交換ユニット4を、第一断熱区画体11により、前記吸気路5から前記供給路6に連なる給気通路7と、前記排出路8から前記排気路9に連なる排気通路10とに区画すると共に、第二断熱区画体14により、前記給気通路7と前記排気通路10とを前記分岐した供給路6に対応するように区画した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関わり、より詳細には、温度の異なる複数の部屋において、室温の影響を互いにうけることなく一つの熱交換ユニットにより効果的に換気を行なえるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調装置として、各部屋の大きさや使用条件に応じた換気能力を設定すると共に希望の換気量に自由に変化させることにより、室内環境を常に快適に維持することが出来ると共に換気装置の設置計画の自由度を高め、高気密および高断熱住宅など気密性が高く換気の不可欠な住宅に最適な住宅用熱交換式換気装置が開示されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
熱交換ユニットと、各給気端末毎の給気ユニットとを組み合わせたことにより、従来では住宅用換気装置において殆んど考慮されていなかった各吹出口毎の細やかな風量調節ができるようになっており、また、喫煙時などの急速限定換気や多人数在室時の重点換気が可能となり、また、給気風量が個別に調整可能なため、快適性の向上・冷暖房機の負荷低減につながって、例えば給気吹出口の近くにいる場合、暑い/寒いを感じることがあるが好みの風量・風向に変更して改善をはかることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、例えばビル用の空調装置として、室温が異なる複数の部屋を熱交換および換気するような場合、一つの熱交換ユニットによって、互いに異なる室内温度の影響をうけることなく熱交換および換気を行なえるようには構成されていないことから、各部屋とも同じ温度で給気されるようになるため、各部屋の空調負荷を最適に軽減できることにはならず、部屋によっては、時として不快な温度で供給をすることになってしまうという問題点を有していた。
【0005】
そこで、室温が異なる複数の部屋を熱交換および換気する際、図3および図5に示すように、例えば室温が25℃に調節された一室Aと、室温が5℃に調節された他室Bとに、全熱交換素子1と、給気ファン2および排気ファン3とを備えた熱交換ユニット4に、矢印aのように外気を吸入する吸気路5、および吸入され熱交換された空気を矢印bのように複数の部屋AおよびBに供給する供給路6からなる給気経路と、前記複数の部屋AおよびBから矢印cのように空気を排出する排出路8、および排出され熱交換された空気を矢印dのように室外に排気する排気路9からなる排気経路とを備えた空調装置を夫々設置するようにしていた。
【0006】
しかしながら、この場合は、前記熱交換ユニット4を部屋数に応じて設置するようにした構成であることから、初期投資によるコストが甚大になってしまうと共に、前記熱交換ユニット4には換気のためのダクトが夫々4本(吸気路5、供給路6、排出路8および排気路9)は必要となり、天井裏のダクトの配回しやスペースに制限ができたり、また、前記熱交換ユニット4一台に対し給排気用の孔を最低2ケ所づつ壁に貫通させなければならないことから、作業が大掛かりになってしまうという問題点を有していた。
【0007】
そのため、図4および図5に示すように、全熱交換素子1と、給気ファン2および排気ファン3とを備えた熱交換ユニット4に、外気を吸入する吸気路5、および吸入され熱交換された空気を複数の部屋AおよびB毎に分岐して供給する供給路6からなる給気経路と、例えば室温が25℃に調節された一室Aおよび室温が5℃に調節された他室Bから分岐して空気を排出する排出路8、および排出され熱交換された空気を室外に排気する排気路9からなる排気経路とを夫々備えた空調装置を設置するようにしていた。
【0008】
この場合、前記熱交換ユニット4を部屋数に応じて設置しない構成であることから、初期投資によるコストを抑え、作業が大掛かりになってしまわないという効果を奏することになるが、例えば矢印cのように一室Aから25℃の空気が、他室Bからは5℃の空気が夫々排出され混合することにより約15℃の空気になって前記熱交換ユニット4に流入する一方、同熱交換ユニット4に0℃の外気が流入して約15℃の空気と熱交換したのち、室温25℃の一室Aおよび室温5℃の他室Bに対し、吸入され熱交換されて約10.5℃になった外気が矢印bのように前記供給路6によって供給され、排出され熱交換されて約4.5℃になった一室Aおよび他室Bの空気が、矢印dのように前記排気路9によって室外に排気される。
【0009】
その際、熱交換されて約10.5℃になった外気が、室温25℃の一室Aおよび室温5℃の他室Bに供給されることになるが、この場合、室温が異なる一室Aおよび他室Bに対し同じ温度に熱交換された外気が供給されることで、上述したように、各部屋の空調負荷を最適に軽減できることにはならず、また部屋によっては、時として不快な温度で供給をすることになってしまうという問題点を有していた。
【0010】
【特許文献1】特開平8−178386公報(第1頁〜第6頁、第1図〜第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、温度の異なる複数の部屋において、室温の影響を互いにうけることなく一つの熱交換ユニットにより効果的に換気を行なえるようにした空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するため、全熱交換素子と、給気ファンおよび排気ファンとを備えた熱交換ユニットに、外気を吸入する吸気路および吸入され熱交換された空気を複数の部屋毎に分岐して供給する供給路からなる給気経路と、前記複数の部屋毎に分岐した排出路から排出され熱交換された空気を室外に排気する排気路からなる排気経路とを接続し、
前記熱交換ユニットが、第一断熱区画体により、前記吸気路から前記供給路に連なる給気通路と、前記排出路から前記排気路に連なる排気通路とに区画されると共に、第二断熱区画体により、前記給気通路と前記排気通路とを前記分岐した供給路に対応するように区画されてなる構成となっている。
【0013】
また、前記第二断熱区画体が、前記全熱交換素子に沿って移動可能である構成となっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度の異なる複数の部屋において、室温の影響を互いにうけることなく一つの熱交換ユニットにより効果的に換気を行なえるようになるので、初期投資によるコストを抑えることができるようになり、作業が大掛かりにならないように簡略化できるようにした空調装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
図1は本発明による空調装置を示す斜視図であり、図2は本発明による空調装置の要部斜視図である。
【実施例1】
【0016】
本発明による空調装置は、実施例1として図1および図2に示すように、全熱交換素子1と、給気ファン2および排気ファン3とを夫々備えた一つの熱交換ユニット4に、外気を矢印aのように吸入する吸気路5、および吸入され前記熱交換ユニット4で熱交換された空気を、室温の異なる複数の部屋AおよびB毎に矢印bのように分岐して供給する供給路6からなる給気経路7と、前記複数の部屋AおよびB毎に分岐した排出路8から矢印cのように排出され前記熱交換ユニット4で熱交換された空気を、室外に向けて矢印dのように排気する排気路9からなる排気経路10とが接続されてなる構成になっている。
【0017】
前記一つの熱交換ユニット4は、前記全熱交換素子1と、前記給気ファン2および前記排気ファン3とを備えると共に、前記給気経路7と前記排気経路10とを接続してなる構成によって、室温が互いに異なる一室Aおよび他室Bの温度変化を抑えながら換気を行なえるようになっている。
【0018】
前記熱交換ユニット4は、その内部の空気通路が、図2に示す実線の矢印のように、同空気通路を上下に区画する第一断熱区画体11により、前記吸気路5から前記全熱交換素子1を流通して前記分岐した供給路6に連なる給気通路12と、破線の矢印のように、前記分岐した排出路8から前記全熱交換素子1を流通して前記排気路9に連なる排気通路13とに(上下に)区画され、互いに隣接した前記全熱交換素子1の空気流路を流通する外気と室内空気との間において熱交換が行なわれるようになっている。
【0019】
また、前記熱交換ユニット4内の空気通路は、(上下に区画された)同空気通路を更に左右に区画する第二断熱区画体14により、前記給気通路と前記排気通路とを前記分岐した供給路6に対応するように、一方が前記吸気路5から前記給気通路12を流通したのち、前記全熱交換素子1の一部領域を流通して前記一室Aに連なる前記供給路6に連通すると共に、他方が前記吸気路5から前記給気通路12を流通したのち、前記全熱交換素子1の残り領域を流通して前記他室Bに連なる前記供給路6に連通するように区画されている。
【0020】
その際、前記第二断熱区画体14によって、前記一室Aに連通する前記全熱交換素子1の一部領域が、残り領域に対して広範となるように区画されることにより、前記一室Aに連通する前記給気通路12内の空気量が、前記他室Bに連通する前記給気通路12内の空気量よりも多量になる。
【0021】
これにより、給排気間で熱交換を行なうことによって、室内温度とできるだけ温度差のない外気を供給できるようにすることで、空調損失を抑え、室内の空調負荷を軽減できるようになり、部屋によっては、時として不快な温度で供給をすることになってしまうということがなくなり、且つ、前記一つの熱交換ユニット4を備えるようにしたことで、初期投資によるコストを抑え、作業が大掛かりにならないように簡略化した構成でなる空調装置となり、室温が互いに異なる一室Aおよび他室Bに対応して、これら一室Aおよび他室Bの温度変化を抑えながら快適な換気を行なえるようになる。
【0022】
次に、上記構成でなる空調装置により、図に示すように、前記第二断熱区画体14が前記全熱交換素子1の略中央に設置された場合、前記一つの熱交換ユニット4によって給排気間で行なわれる熱交換について説明する。
【0023】
例えば、前記一室Aの室温が25℃、前記他室Bの室温が5℃であって、外気温度が0℃である場合、前記吸気路5から吸入された0℃の外気の一部は、前記熱交換ユニット4によって、前記一室Aに連通する前記排出路8で排出された25℃の空気と熱交換され、約17.5℃の温度に高められて前記一室Aに連通する前記給気通路12によって供給される。
【0024】
一方、前記吸気路5から吸入された0℃の残りの外気は、前記熱交換ユニット4によって、前記他室Bに連通する前記排出路8で排出された5℃の空気と熱交換され、約3.5℃の温度に高められて前記他室Bに連通する前記給気通路12によって供給される。
【0025】
なお、前記一室Aから排出された25℃の空気、および前記他室Bから排出された5℃の空気は、混合され0℃の外気と熱交換されて約7.5℃になったのち、前記排気路9に連通する前記排気通路13によって排気される。
【0026】
これによって、前記一室Aには、25℃の室温に対し0℃から約17.5℃に高められた外気が供給されることになり、また前記他室Bには、5℃の室温に対し約3.5℃に熱交換された外気が供給されることになり、前記一つの熱交換ユニット4によって、前記一室Aと前記他室Bとを同時に、互いに室温の影響をうけることなく快適に換気できるようになる。
【0027】
なお、前記第二断熱区画体14は、前記全熱交換素子1の略中央に設置するのではなく、前記一室Aおよび前記他室Bの広さなどに対応して、例えば広い側の部屋に連通する前記給気通路12側を広く確保できるようにした位置に設置してもよい。
【0028】
その際、前記第二断熱区画体14と、前記全熱交換素子1との間に生じる隙間は、シール部材によってシールされることにより、区画効果を高めることができて、例えば一方の前記給気通路12や前記排気通路13を流通する空気と、他方の前記給気通路12や前記排気通路13を流通する空気とが互いに混じらないようになり、該箇所で騒音が発生するおそれがなくなる。
【0029】
また、前記給気ファン2および前記排気ファン3は、図2では給気通路の前記全熱交換素子1より風上、排気通路の前記全熱交換素子1より風下に夫々一つづつ配置されているが、前記給気ファン2および前記排気ファン3の配置はこれに限らない。
【0030】
例えば、給気通路の前記全熱交換素子1より風下、排気通路の前記全熱交換素子1より風上に夫々配置してもよい。
この場合、排気通路の前記全熱交換素子1より風上側、給気通路の前記全熱交換素子1より風下側は、前記第二断熱区画体14により区画されているので、その区画毎にファンが必要になり、図2の場合は4つのファンが必要になる。このように配置することで、適宜個別に送風量を設定することができるようになる。
【実施例2】
【0031】
次に、実施例2として、図2に示す矢印eまたは矢印fのように、前記第二断熱区画体14が前記全熱交換素子1に沿って移動可能にした構成について説明する。
前記第二断熱区画体14を移動させるための移動手段は、例えば、同第二断熱区画体14に一体的に設けられたラック15と、同ラック15に歯合するピニオン16とからなる連係機構と、同連係機構に連係する駆動モータ17からなる駆動装置とで構成されている。
【0032】
室温が25℃である前記一室Aの容積が大きく、室温が5℃である前記他室Bの容積が小さいような場合、前記第二断熱区画体14を移動させて、例えば前記一室Aに連通する前記給気通路12および前記排気通路13を、前記他室Bに連通する前記給気通路12および前記排気通路13の容積よりも大きく確保できるようにすればよい。
【0033】
これにより、前記一室Aに連通する前記給気通路12および前記排気通路13と共に、これらの通路に連なる前記全熱交換素子1の熱交換領域も拡がって、前記他室Bに連通する熱交換領域よりも大きい熱交換領域で熱交換された多量の外気を、前記一室Aに対して安定的に供給できるようになり、部屋毎の空調負荷を軽減することができるようになる。
【0034】
また、室温や容積が異なる前記一室Aおよび前記他室Bに対応して、寸法や容量が異なる前記熱交換ユニット4を何種類もラインアップすることなく、必要最小限の前記熱交換ユニット4によって様々な換気設計に対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による空調装置を示す斜視図である。
【図2】本発明による空調装置の要部説明図である。
【図3】従来技術による空調装置の一例を示す斜視図である。
【図4】従来技術による空調装置の他の例を示す斜視図である。
【図5】従来技術による空調装置の要部説明図である。
【符号の説明】
【0036】
A 一室
B 他室
1 全熱交換素子
2 給気ファン
3 排気ファン
4 熱交換ユニット
5 吸気路
6 供給路
7 給気経路
8 排出路
9 排気路
10 排気経路
11 第一断熱区画体
12 給気通路
13 排気通路
14 第二断熱区画体
15 ラック
16 ピニオン
17 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全熱交換素子と、給気ファンおよび排気ファンとを備えた熱交換ユニットに、外気を吸入する吸気路および吸入され熱交換された空気を複数の部屋毎に分岐して供給する供給路からなる給気経路と、前記複数の部屋毎に分岐した排出路から排出され熱交換された空気を室外に排気する排気路からなる排気経路とを接続し、
前記熱交換ユニットが、第一断熱区画体により、前記吸気路から前記供給路に連なる給気通路と、前記排出路から前記排気路に連なる排気通路とに区画されると共に、第二断熱区画体により、前記給気通路と前記排気通路とを前記分岐した供給路に対応するように区画されてなることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記第二断熱区画体が、前記全熱交換素子に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−207940(P2006−207940A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20870(P2005−20870)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)