説明

空調設備用デマンド制御システム

【課題】空調設備用デマンド制御システムにおいて、電力制限レベルが小さいときから、快適性を損なわずに、電力抑制に影響がある空調設備を制御して、デマンド超過のリスク上昇を遅らせる。
【解決手段】空調設備用デマンド制御システム10は、ゾーンごとに配置され、ゾーンが予め設定された設定温度になるように動作する空調機14と、各ゾーンの室内温度を検出する温度検出部28と、デマンドの予測に基づいて電力制限レベルを設定する電力制限レベル設定部26と、電力制限レベルに基づいて空調機14を制御する制御部32と、を有する。ゾーンは、各方位にそれぞれ対応するペリメータゾーンを含む。制御部32は、電力制限レベルが第1レベルである場合、室内温度が設定温度の条件を満たしているペリメータゾーンの空調機を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンドの予測に基づいて空調設備を制御する空調設備用デマンド制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力需要家の電力需要であるデマンドが、契約電力に基づく最大デマンドを超えないように設備を制御するデマンド制御システムが知られている。このシステムにおいては、デマンドの予測値が最大デマンドを超える可能性がある場合、予め、負荷である設備を停止させる、あるいは低い消費電力で運転させることで、デマンドの削減を図っている。
【0003】
下記特許文献1には、デマンドの予測に基づいて電力制限レベルを設定するデマンドコントローラと、このデマンドコントローラにより設定されたレベルに基づいて、空調優先運転と発電優先運転とを切り換えるガスエンジン駆動式の空調機とを有する空調システムが記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、インテリアゾーンとペリメータゾーンなどの各ゾーンに配置された空調機を制御する制御装置が記載されている。この制御装置においては、空調機の予備運転の開始時間を、空調機に対応するゾーン別にずらすことにより、ビル全体のデマンド値の上昇を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−274918号公報
【特許文献2】特開2002−13776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のデマンド制御システムにおいては、契約電力に基づく最大デマンドを超える可能性が大きくなるにつれて、電力制御レベルが大きくなるように設定し、この設定された電力制限レベルが大きくなるにつれて、より多くの、そしてより快適性に寄与する空調設備を停止させ、最大デマンドの超過を防止する。
【0007】
具体的には、電力制限レベルが最も低い第1レベルである場合、廊下の排気ファンなどの軽計装に相当する空調設備を停止させる。そして、電力制限レベルが第1レベルより高い第2レベルである場合、給湯の排気ファンなどの中計装に相当する空調設備を停止させる。さらに、電力制限レベルが第2レベルより高い第3レベルである場合、便所の排気ファン及び空調機などの重計装に相当する空調設備を停止させる。
【0008】
しかしながら、電力制限レベルが第1レベルである場合において、デマンド制御システムにより停止される空調設備は上述のように廊下の排気ファンであり、このファンの消費電力と台数がともに少ないので、電力抑制に大きく寄与はしていない。このため、第1レベルにおいて電力抑制の対策が実施されたにもかかわらず、短時間で容易に、電力制限レベルが次のレベルに上がる、言い換えれば最大デマンド超過のリスクが高まってしまうという問題がある。このように、短時間で電力制限レベルが上がってしまうと、当然に、建物の管理者にかかるプレッシャーも大きくなり、その間に実施可能な対策の判断が難しくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、電力制限レベルが小さいときから、快適性を損なわずに、電力抑制に影響がある空調設備を制御して、デマンド超過のリスク上昇を確実に遅らせることができる空調設備用デマンド制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ゾーンごとに配置され、ゾーンが予め設定された設定温度になるように動作する空調機と、各ゾーンの室内温度を検出する温度検出部と、デマンドの予測に基づいて電力制限レベルを設定する電力制限レベル設定部と、電力制限レベルに基づいて空調機を制御する制御部と、を有し、ゾーンは、各方位にそれぞれ対応するペリメータゾーンを含み、制御部は、電力制限レベルが最高レベルより小さい第1レベルである場合、室内温度が設定温度の条件を満たしているペリメータゾーンの空調機を停止させることを特徴とする。
【0011】
また、制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が冷房運転である場合、室内温度が設定温度より低いペリメータゾーンの空調機を停止させることができる。
【0012】
また、制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が冷房運転である場合、室内温度が設定温度より所定温度高いペリメータゾーンの空調機をさらに停止させることができる。
【0013】
また、制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が暖房運転である場合、室内温度が設定温度より高いペリメータゾーンの空調機を停止させることができる。
【0014】
また、制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が暖房運転である場合、室内温度が設定温度より所定温度低いペリメータゾーンの空調機をさらに停止させることができる。
【0015】
また、制御部は、電力制限レベルが最高レベルより小さく、かつ第1レベルより大きい第2レベルである場合、インバータに接続される空調機の出力上限を抑制するように、インバータを介して制御することができる。
【0016】
また、熱源から空調機に熱媒体を搬送する搬送機器と、熱媒体の流量を検出する流量検出部と、を有し、制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、流量検出部より検出された流量に基づいて搬送機器を制御することができる。
【0017】
また、制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、検出された流量とこの流量より低い値に基づいて、搬送機器の運転台数を削減するように制御することができる。
【0018】
また、制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、前記流量から前記低い値まで徐々に変化させ、その変化に基づいて搬送機器の運転台数を削減するように制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の空調設備用デマンド制御システムによれば、電力制限レベルが小さいときから、快適性を損なわずに、電力抑制に影響がある空調設備を制御して、デマンド超過のリスク上昇を確実に遅らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る空調設備用デマンド制御システムの構成を示す図である。
【図2】室内の平面図である。
【図3】空調設備用デマンド制御システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る空調設備用デマンド制御システムの実施形態について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る空調設備用デマンド制御システムの構成を示す図である。
【0022】
空調設備用デマンド制御システム(以下、単に「システム」と記す)10は、建物の電力需要であるデマンドが契約電力に基づく最大デマンドを超えないように空調設備を制御するシステムであり、デマンドの予測に基づいて空調設備を制御するシステムである。
【0023】
建物は、例えば事務所ビルであり、室内12を有する。室内12は、例えば事務室であり、ビルの1つのフロアまたは区画である。
【0024】
空調設備は、室内12に対して冷房及び暖房を行なう設備であり、空調機14と、熱源機器16と、搬送機器18とを有する。空調機14と熱源機器16と搬送機器18は、熱媒体(例えば水)が流れる配管20により接続される。なお、空調設備の機器は一例であって、さらに、建物を換気する給排気ファンを含むこともできる。
【0025】
空調機14は、室内12に複数台設置される。具体的には、空調機14は、室内12の各ゾーンに対応するようにそれぞれ配置される。ゾーンとは、室内12の熱負荷特性が似ている領域のことであり、例えば外皮負荷の影響が大きいペリメータゾーンと、内部負荷の影響が大きいインテリアゾーンとを含む。また、ペリメータゾーンは、後述のように、方位によりさらに細分化される。
【0026】
空調機14は、ファン及びコイル(図示せず)を内蔵している。コイルで冷却または加熱された空気をファンが室内12に送り出すことにより、空調機14は室内12の冷房または暖房を行う。具体的には、各空調機14は、配置されるゾーンに対応する空間が予め設定された設定温度になるように冷房または暖房をそれぞれ行う。空調機14が室内12の冷房を行う運転を、以降、冷房運転と記す。そして、空調機14が室内12の暖房を行う運転を、以降、暖房運転と記す。
【0027】
空調機14には、室内12に設けられた温度計22と、空調機14を制御するコントローラ(図示せず)とが接続される。このコントローラは、例えばリモコンであり、このリモコンの操作により、空調機14の運転及び停止の切り替え、運転モード(冷房、暖房、除湿または送風)の切り替え、または室内の温度を設定することができる。コントローラは、操作部により設定された設定温度になるように、温度計22からの検出結果に基づいて空調機14を制御する。なお、本実施形態においては、温度計22が室内12に設けられている場合について説明したが、この構成に限定されない。室内12の温度、特に空調機14に対応するゾーンの温度を検出することができるのであれば、空調機14またはリモコンに内蔵されても、空調機14に接続される吸込側のダクトに配置されていてもよい。
【0028】
熱源機器16は、建物の機械室に設置される。熱源機器16は、冷熱源と温熱源の少なくとも一方を空調機14に供給する装置である。搬送機器18は、ポンプであり、建物の機械室に複数設置される。搬送機器18の動作により、熱源機器16からの熱媒体が、配管20を介して空調機14に搬送される。熱源機器16と搬送機器18には、これらを制御するコントローラが接続されている。コントローラは、配管20に設けられた流量計24などの各種センサの検出結果に基づいて熱源機器16と搬送機器18の容量及び台数が適正になるように制御する。
【0029】
本実施形態のシステム10は、電力制限レベル設定部26と温度検出部28と流量検出部30と制御部32とを有する。
【0030】
電力制限レベル設定部26は、電力計34に接続される。電力計34は、建物に設けられた電力会社の取引メータであり、例えばパルス検出器を介して電力制限レベル設定部26に電力量を出力する。電力制限レベル設定部26は、電力計34により測定される電力量に基づいて、所定のデマンド時限の最終時点におけるデマンドの予測値を算出する。そして、電力制限レベル設定部26は、その予測値と最大デマンドとに基づいて電力制限レベルを設定する。この電力制限レベルは、複数の段階に設定され、予測値と最大デマンドの差が小さくなるにつれて、レベルが大きくなるように電力制限レベルを設定する。本実施形態の電力制限レベルは、第1レベルと、第1レベルより大きい第2レベルと、そして第2レベルより大きい第3レベルとを含む。
【0031】
温度検出部28は、各温度計22にそれぞれ接続され、各ゾーンの室内温度を検出する。流量検出部30は、流量計24に接続され、配管20を流れる熱媒体の流量を検出する。
【0032】
本実施形態の制御部32は、電力制限レベル設定部26により設定された電力制限レベルに基づいて空調機14を制御する。具体的には、制御部32は、電力制限レベルが最も小さい第1レベルである場合、室内温度が設定温度の条件を満たしているペリメータゾーンの空調機を停止させるように制御する。室内温度が設定温度の条件を満たす状態とは、室内温度が設定温度と同じ温度になっており、そのゾーンの快適性が確保されている状態のことである。
【0033】
従来技術においては、電力制限レベルが第1レベルである場合、廊下の排気ファンなどの軽計装に相当する空調設備を制御するだけであった。しかし、本発明によれば、上述のように、電力制限レベルが第1レベルであっても、重計装に相当する空調設備である空調機14を停止させる。このような空調機の停止制御により、従来技術のものに比べ、第1レベルの対策が電力抑制に寄与するので、デマンド超過のリスク上昇を確実に遅らせることができる。また、本発明によれば、建物の利用者の快適性を損なわずに、電力抑制のための空調機14の制御を実施することができる。以下、空調機14の制御について、図2を用いて具体的に説明する。
【0034】
図2は、室内12の平面図である。室内12は、例えば、建物の一部の中間階である。図2には、建物の方位が示されている。すなわち、図中の上方が北、下方が南、右側が東、左側が西であることが示されている。また、図に示される破線は、室内12のインテリアゾーンとペリメータゾーンとの境界線である。インテリアゾーンは、日射や外気温度の変化などの自然条件の影響を受けにくく、内部負荷の影響が大きい建物の内周部であり、ペリメータゾーンは、上記自然条件の影響を大きく受け、外皮負荷の影響が大きい建物の外周部である。本実施形態におけるペリメータゾーンは、さらに東西北の3つの方位に対応するゾーンに分けられる。なお、建物の南側は、図示しないが、建物の共用部(例えば廊下)とする。
【0035】
室内12には、インテリアゾーンに対応する空調機14が2台と、ペリメータゾーンに対応する空調機14が11台とが配置されている。なお、空調機14の数は一例であって、本発明は空調機14の数13台に限定されない。
【0036】
インテリアゾーン対応の空調機14は、室内12付近の機械室などに設けられ、室内12に対してダクト(図示せず)により接続される。この空調機14は、インテリアゾーンが予め設定された設定温度になるように、検出されるインテリアゾーンの室内温度に基づいて動作する。また、この空調機14は、ファンがインバータに接続され、インバータ制御される。図2におけるインテリアゾーン対応の空調機14を、以降、空調機I1,I2と記す。なお、本発明は、この構成に限定されず、空調機14を、室内12の天井または天井裏に設けることもできる。
【0037】
ペリメータゾーン対応の空調機14は、例えばファンコイルユニットであり、外壁付近の床に設けられる。この空調機14は、ペリメータゾーンであって東西北の3ゾーンがそれぞれ予め設定された設定温度になるように、検出される各ゾーンの室内温度に基づいてそれぞれ動作する。なお、これらの空調機14は、ファンがインバータに接続され、インバータ制御されてもよい。図2におけるペリメータゾーン対応の空調機14を、以降、東側対応のものを空調機E1,E2,E3と、北側対応のものを空調機N1,N2,N3,N4,N5と、西側対応のものを空調機W1,W2,W3とそれぞれ記す。
【0038】
制御部32の機能について、各電力制限レベルに分けて説明する。まず、電力制限レベルが第1レベルの場合について説明する。このレベルにおいては、空調機14が冷房運転である場合と、暖房運転である場合とにそれぞれ分けて説明する。
【0039】
まず、空調機14が冷房運転である場合について説明する。この場合、制御部32は、第1レベルの設定により、室内温度が設定温度より低いペリメータゾーンの空調機14を停止させる。例えば、夏期における建物の北側ペリメータゾーンは、外皮負荷が小さい。そうすると、そのペリメータゾーンの室内温度が設定温度より低く、空調機N1,N2,N3,N4,N5が単に送風状態になっている場合がある。このような条件の場合、制御部32は、第1レベルの設定により、それらの空調機N1,N2,N3,N4,N5を停止させる。この停止により、当該空調機14のファン動力を削減することができる。なお、室内温度を検出する温度計22が各空調機14にそれぞれ設けられている場合、1台ごとの停止制御が可能になる。また、夏期における建物のペリメータゾーンの外皮負荷は、方位ごと、日中の時間ごとに異なる。よって、北側ペリメータゾーンに限らず、他の方位のペリメータゾーンの空調機14に対しても同様の制御が可能になる。
【0040】
また、制御部32は、第1レベルの設定により、室内温度が設定温度より所定温度αだけ高いペリメータゾーンの空調機14をさらに停止させることも好適である。このように室内温度が、設定温度より所定温度α(例えば1から2℃)だけ高くても、快適性が損なわれない。このような条件、すなわち室内温度が、設定温度+αの温度より低ければ、その室内温度に対応するゾーンにおいても、空調機14を停止させる。この制御により、より多くの空調機14のファン動力を削減することができる。
【0041】
一方、空調機14が暖房運転である場合、制御部32は、第1レベルの設定により、室内温度が設定温度より高いペリメータゾーンの空調機14を停止させる。例えば、冬期で夕方における建物の西側ペリメータゾーンは、日射の影響で、外皮負荷が小さい。そうすると、そのペリメータゾーンの室内温度が設定温度より高く、空調機W1,W2,W3が単に送風状態になっている場合がある。このような条件の場合、制御部32は、第1レベルの設定により、それらの空調機W1,W2,W3を停止させる。この停止により、当該空調機14のファン動力を削減することができる。なお、室内温度を検出する温度計22が各空調機14にそれぞれ設けられている場合、1台ごとの停止制御が可能になる。また、冬期における建物のペリメータゾーンの外皮負荷は、方位ごと、日中の時間ごとに異なる。よって、西側ペリメータゾーンに限らず、他の方位のペリメータゾーンの空調機14に対しても同様の制御が可能になる。
【0042】
また、制御部32は、第1レベルの設定により、室内温度が設定温度より所定温度αだけ低いペリメータゾーンの空調機14をさらに停止させることも好適である。このように室内温度が、設定温度より所定温度α(例えば1から2℃)だけ低くても、快適性が損なわれない。このような条件、すなわち室内温度が、設定温度−αの温度より高ければ、その室内温度に対応するゾーンにおいても、空調機14を停止させる。この制御により、より多くの空調機14のファン動力を削減することができる。
【0043】
このような制御により、電力制限レベルが第1レベルであっても、快適性を損なうことなく、空調機14を停止させることができる。また、一つの方位のペリメータゾーンの空調機14を停止させた場合であっても、室内12が高層ビルの基準階のように複数階あることにより、空調機14の停止台数が大きくなるので、電力抑制の効果が大きくなる。
【0044】
次に、電力制限レベルが第2レベルに設定された場合について説明する。制御部32は、第2レベルの設定により、インバータに接続される空調機I1,I2の出力上限を抑制するように、インバータを介して制御する。例えば、出力上限を、100%(50Hz)から75%(37.5Hz)に変更し抑制する。この場合、空調機I1,I2のファン動力を最大約58%削減することができる。なお、インバータに接続される空調機14であれば、制御部32は、ペリメータゾーンに対応する空調機14もインバータ制御することができる。
【0045】
続いて、電力制限レベルが第3レベルに設定された場合について説明する。制御部32は、第3レベルの設定により、流量検出部30より検出された流量に基づいて搬送機器18を制御する。具体的には、制御部32は、検出された流量とこの流量より低い値に基づいて、搬送機器18の運転台数を削減するように制御する。
【0046】
例えば、図1に示されるように搬送機器18が4台あり、1台あたりの搬送流量が20m3/hとする。第3レベルの設定前、流量計24により検出される流量が60m3/hである場合、コントローラにより、搬送機器18の運転台数は3台になるように制御される。このような状態で第3レベルが設定されると、制御部32は、検出される流量60m3/hより20m3/h低い流量40m3/hを、コントローラに入力し、搬送機器18の運転台数を3台から2台に削減するように制御する。この制御により、搬送機器18の動力を削減することができる。
【0047】
さらに、制御部32は、第3レベルの設定により、検出された流量から、その流量より低い値まで徐々に変化するように、その値をコントローラに入力し、その変化に基づいて搬送機器18の運転台数を削減するように制御することが好適である。変化の期間は、例えば60秒である。この制御により、空調機14側へ搬送される熱媒体の急激な減少が抑制されるので、建物の利用者の快適性が著しく損なわれてしまうことを抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、制御部32は、検出された流量とこの流量より低い値に基づいて、搬送機器18の運転台数を削減するように制御する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。搬送機器18がインバータに接続されているのであれば、制御部32は、検出された流量より低い値に基づいて、搬送機器18の容量を抑制するように、インバータを介して制御することもできる。
【0049】
次に、本実施形態のシステム10の制御動作について、図3を用いて説明する。図3は、本システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、所定の間隔で繰り返し行われる。なお、この制御動作においては、一例として、あるゾーンに対応する空調機14が冷房運転である場合について説明する。
【0050】
まず、ステップS101において、電力制限レベル設定部26により、電力計34からの電力量に基づいて電力制限レベルが第1レベルであるか否かが判断される。電力制限レベルが第1レベルである場合、ステップS102に進み、制御部32により、温度検出部28からの室内温度と設定温度とが比較される。一方、電力制限レベルが第1レベルではない場合、電力量が最大デマンドを超える可能性がないと判断し、本制御動作が終了する。
【0051】
ステップS102では、制御部32により、室内温度が設定温度+αより高い温度であるか否かが判断される。室内温度のほうが高い場合、ステップS103で、制御部32により、該当する空調機14が停止するよう制御され、ステップS104に進む。一方、室内温度のほうが低い場合、停止すべき空調機14は無いと判断し、そのままステップS104に進む。
【0052】
そして、ステップS104において、電力制限レベル設定部26により、電力制限レベルが第2レベルであるか否かが判断される。電力制限レベルが第2レベルである場合、ステップS105に進み、制御部32により、空調機14の出力上限が制限される。一方、電力制限レベルが第2レベルではない場合、本制御動作が終了する。
【0053】
そして、ステップS106では、電力制限レベル設定部26により、電力制限レベルが第3レベルであるか否かが判断される。電力制限レベルが第3レベルである場合、ステップS107に進み、制御部32により、搬送機器18の運転台数を削減するよう制御する。一方、電力制限レベルが第3レベルではない場合、本制御動作が終了する。
【0054】
本実施形態のシステム10によれば、電力制限レベルが第1レベルである場合において、所定の条件を満たせば、重計装に相当する空調設備である、ペリメータゾーンの空調機14を停止するように制御する。この制御により、空調機14のファン動力を削減することができ、電力抑制に寄与することができる。そして、このような対策により、電力制限レベルが次のレベルに上がってしまう時間を、従来技術より長くすることができる。このように、電力制限レベルの上昇が抑制されるので、最大デマンド超過のリスクを抑制することができ、その結果、建物の管理者にかかるプレッシャーも小さくなり、その間に実施可能な対策の判断が容易になる。
【符号の説明】
【0055】
10 空調設備用デマンド制御システム、14 空調機、16 熱源機器、18 搬送機器、20 配管、22 温度計、24 流量計、26 電力制限レベル設定部、28 温度検出部、30 流量検出部、32 制御部、34 電力計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾーンごとに配置され、ゾーンが予め設定された設定温度になるように動作する空調機と、
各ゾーンの室内温度を検出する温度検出部と、
デマンドの予測に基づいて電力制限レベルを設定する電力制限レベル設定部と、
電力制限レベルに基づいて空調機を制御する制御部と、
を有し、
ゾーンは、各方位にそれぞれ対応するペリメータゾーンを含み、
制御部は、電力制限レベルが最高レベルより小さい第1レベルである場合、室内温度が設定温度の条件を満たしているペリメータゾーンの空調機を停止させる、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が冷房運転である場合、室内温度が設定温度より低いペリメータゾーンの空調機を停止させる、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が冷房運転である場合、室内温度が設定温度より所定温度高いペリメータゾーンの空調機をさらに停止させる、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が暖房運転である場合、室内温度が設定温度より高いペリメータゾーンの空調機を停止させる、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第1レベルであり、空調機が暖房運転である場合、室内温度が設定温度より所定温度低いペリメータゾーンの空調機をさらに停止させる、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが最高レベルより小さく、かつ第1レベルより大きい第2レベルである場合、インバータに接続される空調機の出力上限を抑制するように、インバータを介して制御する、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項7】
請求項6に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
熱源から空調機に熱媒体を搬送する搬送機器と、
熱媒体の流量を検出する流量検出部と、
を有し、
制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、流量検出部より検出された流量に基づいて搬送機器を制御する、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、検出された流量とこの流量より低い値に基づいて、搬送機器の運転台数を削減するように制御する、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。
【請求項9】
請求項8に記載の空調設備用デマンド制御システムにおいて、
制御部は、電力制限レベルが第2レベルより大きい場合、前記流量から前記低い値まで徐々に変化させ、その変化に基づいて搬送機器の運転台数を削減するように制御する、
ことを特徴とする空調設備用デマンド制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−211732(P2012−211732A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77736(P2011−77736)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】