説明

空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造

【課題】本発明は、ジンバルの内面に設けたシャフトモータ兼ウェイトのウェイトを移動させることにより、ジンバルの動作バランスを容易に調整することを目的とする。
【解決手段】本発明による空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造は、シャフトモータ兼ウェイト(23,24)のシャフトモータ(28)を駆動することにより、前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)は、シャフト(26,27)上を軸方向に沿って移動し、ジンバル(1)の動作バランスを調整する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造に関し、特に、ジンバルの内面に設けたシャフトモータ兼ウェイトのウェイトを移動させることにより、ジンバルの動作バランスを容易に調整するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の空間安定装置のジンバル機構としては、例えば、特許文献1及び2に開示されているジンバル機構は、検出軸数により種々あるが、一例として図3に示される構成を挙げることができる。
【0003】
すなわち、図3において符号1で示されるものは全体形状がコ字型をなすアウタAZジンバルであり、このアウタAZジンバル1には、一対のアウタEL軸2を介して枠状のアウタELジンバル3が回動自在に設けられている。
【0004】
前記アウタELジンバル3の内面には、一対のインナAZ軸4を介して枠状のインナAZジンバル5が回動自在に設けられ、このインナAZジンバル5の内面には、一対のインナEL軸6を介してコ字型のインナELジンバル7が回動自在に設けられている。
【0005】
前記インナELジンバル7の内面には、搭載物であるカメラ8が設けられており、各軸2、4及び6に設けられたトルカ(図示せず)を介して前記カメラ8を常に一定方向に向けることができるように、空間安定制御ができるように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−213438号公報
【特許文献2】特開2002−22462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の空間安定装置のジンバル機構は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、各ジンバルは、各軸を介して互いに直交する異なる方向に所定角度回動するように構成されているが、各ジンバルは、その回動動作にバランスがとれていないと、迅速な回動動作が得られなくなる。
そのために、各ジンバルを組立て後に、作動させて動作バランスが悪い場合は、ジンバルを分解してその内面にバランス用の所要の重さを有する質量体を貼着して再駆動し、バランスがとれた状態で、再び、質量体の削減又は追加を行わなければならず、そのバランス調整作業は極めて困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造は、空間安定装置に設けられたジンバルと、前記ジンバルに設けられたシャフトと、前記シャフト上に設けられたシャフトモータとウェイとを合体させてなるシャフトモータ兼ウェイトと、を備え、前記シャフトモータ兼ウェイトのシャフトモータを駆動することにより、前記シャフトモータ兼ウェイトは前記シャフト上を軸方向に沿って移動し、前記ジンバルの動作バランスを調整する構成であり、また、前記シャフトモータ兼ウェイトは、1個の前記ジンバルの内面に1個設けられ、前記シャフトモータ兼ウェイトのシャフトの軸方向は、前記ジンバルの鉛直方向又は前記鉛直方向と直交する方向に設定されている構成であり、また、前記シャフトモータ兼ウェイトは1個の前記ジンバルの内面に一対設けられ、前記各シャフトモータ兼ウェイトのシャフトの軸方向は互いに直交している構成であり、また、前記ジンバルは、前記空間安定装置を形成するアウタAZジンバル、アウタELジンバル、インナAZジンバル及びインナELジンバルの何れか1個又は全部である構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、空間安定装置に設けられたジンバルと、前記ジンバルに設けられたシャフトと、前記シャフト上に設けられたシャフトモータとウェイとを合体させてなるシャフトモータ兼ウェイトと、を備え、前記シャフトモータ兼ウェイトのシャフトモータを駆動することにより、前記シャフトモータ兼ウェイトは前記シャフト上を軸方向に沿って移動し、前記ジンバルの動作バランスを調整することにより、ジンバルを分解しなくても外部から自在にウェイトを移動させ、ジンバルの動作バランスを行うことができ、従来の調整方法は不要となった。
また、前記シャフトモータ兼ウェイトは、1個の前記ジンバルの内面に1個設けられ、前記シャフトモータ兼ウェイトのシャフトの軸方向は、前記ジンバルの鉛直方向又は前記鉛直方向と直交する方向に設定されていることにより、1個のウェイトのみを用いて、自在にジンバルのバランス調整を行うことができる。
また、前記シャフトモータ兼ウェイトは1個の前記ジンバルの内面に一対設けられ、前記各シャフトモータ兼ウェイトのシャフトの軸方向は互いに直交していることにより、2軸方向のウェイトを自在に移動させることができ、2個のウェイトを用いて迅速にバランス調整を行うことができる。
また、前記ジンバルは、前記空間安定装置を形成するアウタAZジンバル、アウタELジンバル、インナAZジンバル及びインナELジンバルの何れか1個又は全部であることにより、ジンバルのバランス調整が大幅に容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ジンバルの内面に設けたシャフトモータ兼ウェイトのウェイトを移動させることにより、ジンバルの動作バランスを容易に調整するようにした空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
また、空間安定装置10としては、その軸数及びジンバルの数については種々あるため、その構造については、何れの構造に対しても本発明を適用することができるため、一例として、図3に示す従来構成の空間安定装置10を本発明の形態に援用し、必要とするジンバルについてのみ説明する。
【0012】
図1及び図2は、図3の空間安定装置10のアウタAZジンバル1の第1、第2側壁20、21の内面22に第1、第2シャフトモータ兼ウェイト23、24が設けられている。
前記各シャフトモータ兼ウェイト23、24は、前記内面22に保持体25を介して片持式に固定して設けられたねじ又はボールねじ等からなる第1、第2シャフト26、27と、前記第1、第2シャフト26、27上に移動自在に設けられ互いに一体又は合体状のシャフトモータ28とウェイト29と、から構成されている。
【0013】
前記シャフトモータ28は、周知のように、回転モータのロータがナットを形成し、このナットが各シャフト26、27に螺合していることにより、シャフトモータ28自体が各シャフト26、27上を移動できるように構成されている。
【0014】
前記ウェイト29は、各シャフトモータ28と一体又は合体であるため、例えば、各シャフトモータ28のケース28aがウェイト29を兼ねている場合、又は、各シャフトモータ28自体がウェイト29を兼ねている場合、又は、各シャフトモータ28に図示しない重りを取付けている場合等が採用されている。
【0015】
前記第1、第2側壁20、21は、図1に示されるように、曲面で形成された曲面部22aの両側に形成された直立面22bで形成され、この直立面22bに各シャフトモータ兼ウェイト23、24が設けられている。
【0016】
前記各ジンバル1、3、5、7等の1個又は全部の内面22に設けられるシャフトモータ兼ウェイト23、24は、例えば、内面22に1個設けられ、そのシャフト26又は27の軸方向はジンバル1、3、5、7の鉛直方向又はこの鉛直方向と直交する方向に設定した場合、また、1個の前記ジンバル1、3、5、7等の1個又は全部の内面22に、各々シャフトモータ兼ウェイト23、24を一対設け、各シャフトモータ兼ウェイト23、24のシャフト26、27の軸方向を互いに直交させている場合、等を用いることができる。
【0017】
従って、前述の構成において、例えば、図3で示される各ジンバル1、3、5、7を有する空間安定装置10を組立てた後、何れか1個又は複数又は全部のジンバル1、3、5、7に設けられている1個又は一対のシャフトモータ兼ウェイト23、24の一方又は両方を、図示しないリード線等を介してシャフトモータ28を駆動することにより、ウェイト27がシャフト26又は27に沿って移動し、調整した後に、再度、各ジンバル1、3、5、7を駆動して動作バランス状態を確認し、バランスの調整を自在に行うことができる。
すなわち、本発明におけるジンバルの動作バランスとは、組立後にジンバルを駆動させた際、その回動動作が円滑になされるように、例えば、周知のホイールバランスの調整と類似のことである。
【0018】
従って、前述のバランス調整は、従来のように、各ジンバル1、3、5、7等を分解する必要がなく、組立てた状態でバランス調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による空間安定装置のジンバルの一部の動作バランス調整構造を示すジンバルの斜視図である。
【図2】図1のジンバルの一部を用いたアウタAZジンバルを示す斜視図である。
【図3】従来及び本発明に適用する空間安定装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 アウタAZジンバル
2 アウタEL軸
3 アウタELジンバル
4 インナAZ軸
5 インナAZジンバル
6 インナEL軸
7 インナELジンバル
8 カメラ
10 空間安定装置
20 第1側壁
21 第2側壁
22 内面
22a 曲面部
22b 直立面
23、24 第1、第2シャフトモータ兼ウェイト
25 保持体
26、27 第1、第2シャフト
26a、27a ストッパ
28 シャフトモータ
29 ウェイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間安定装置(10)に設けられたジンバル(1,3,5,7)と、前記ジンバル(1,3,5,7)に設けられたシャフト(26,27)と、前記シャフト(26,27)上に設けられたシャフトモータ(28)とウェイト(29)を合体させてなるシャフトモータ兼ウェイト(23,24)と、を備え、
前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)のシャフトモータ(28)を駆動することにより、前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)は前記シャフト(26,27)上を軸方向に沿って移動し、前記ジンバル(1,3,5,7)の動作バランスを調整することを特徴とする空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造。
【請求項2】
前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)は、1個の前記ジンバル(1,3,5,7の何れか)の内面(22)に1個設けられ、前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)のシャフト(26,27)の軸方向(A,B)は、前記ジンバル(1)の鉛直方向又は前記鉛直方向と直交する方向に設定されていることを特徴とする請求項1記載の空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造。
【請求項3】
前記シャフトモータ兼ウェイト(23,24)は1個の前記ジンバル(1,3,5,7の何れか)の内面(22)に一対設けられ、前記各シャフトモータ兼ウェイト(23,24)のシャフト(26,27)の軸方向(A,B)は互いに直交していることを特徴とする請求項1記載の空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造。
【請求項4】
前記ジンバル(1,3,5,7)は、前記空間安定装置(10)を形成するアウタAZジンバル(1)、アウタELジンバル(3)、インナAZジンバル(5)及びインナELジンバル(7)の何れか1個又は全部であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の空間安定装置のジンバルの動作バランス調整構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−39351(P2010−39351A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204152(P2008−204152)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】