説明

穿孔方法及び穿孔装置並びにピアスバー

【課題】ロボット先端ツールに高温にできるテーパー外形のピアスバーを固定し、前記高温にできるピアスバーを材料または製品(以下「ワーク」という。)の穿孔位置において昇降させることにより、直径1mm〜15mmの孔を高精度で容易に穿孔する。
【解決手段】可動部材に固定した高温ピアスバー5をワーク8に刺突し、前記高温ピアスバーの接触部最大径と同一直径の孔を溶融穿孔した。ピアスバーは、200℃〜700℃に加熱した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種材料又は製品に穿孔することを目的とした穿孔方法及び穿孔装置並びにピアスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種シート状の材料又は製品に穿孔するには、型抜き、切断又は尖頭針による刺突などが知られている。また、外周に多数の熱針を植設した開孔機を用いて自動車用内装材に穿孔する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4022568号公報
【特許文献2】特開2005−297703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来知られている穿孔装置は、打ち抜き、針による刺突、切断刃による切断又は熱針による開孔であって、孔径に制約があったり(例えば切断刃を用いる穿孔)、孔径精度が悪かったり、穿孔効率が悪かったり、あるいは器具の耐用年限が短いなど、幾多の問題点があった。
【0005】
例えば、自動車用内装材(カーペット類)の穿孔(例えばボルト孔用)は、切断刃により切断し、又は針で刺突穿孔している。
【0006】
前記切断刃による切断は、円形孔を設けることが困難であったり、精度が不十分であったり、あるいは効率が悪く、切断刃の耐用時間が短いなどの問題点があった。また、刺突針を用いた場合には、穿孔精度が悪い問題点がある。更に、前記穿孔方法の場合には、設けるべき孔の孔径が変わる毎に、切断工具を換えることが必須要件となっており、同一工具で異なる孔径の穿孔は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ロボット先端ツールに高温にできるテーパー外形のピアスバーを固定し、前記高温にできるピアスバーを材料又は製品(以下、「ワーク」という。)の穿孔位置において、昇降(又は離接)させることにより、高温のピアスバーを用いて直径1mm〜15mmの孔を高精度で容易に穿孔することに成功したのである。
【0008】
この発明のピアスバーは、テーパー外形(θ=0°〜150°)であって、加熱温度は100℃〜700℃の範囲で任意に設定できる。
【0009】
前記ピアスバーの材質は、金属又はセラミックスであって、熱特性に優れ、かつ強度のある材質が好ましい。例えば、合成樹脂製カーペット類の穿孔については、300℃〜500℃に加熱したピアスバーを用いるが、穿孔に要する時間が極めて短いので(例えば1秒〜10秒)、材料が溶融滴下するおそれはない。従って、ピアスバーの温度と穿孔時間はワークの材質によりそれぞれ選定するのが好ましい。
【0010】
この発明を用いることのできるワークは、例えば自動車の内装材、建造物の内装材、その他200℃〜700℃で溶融可能な材質(例えば合成樹脂製品)のシート状の材料、板状の材料又は製品である。また、加工できる厚さは、5mm以下が好ましく15mmであっても可能であるが、厚さを増すことにより穿孔効率が低下するおそれがある。
【0011】
この発明のピアスバーをロボット連結軸に固定すれば、多種多様のワークが作られてもその穿孔に総て対応することができる。例えば、ワークの形状、穿孔位置、孔径、その他が相違していてもロボットに予め学習させておけば正確かつ確実に穿孔することができる。また、同一ピアスバーで異なる径の穿孔もできる(例えば直径差5mm位まで)。この点が従来の穿孔方法と異なる。
【0012】
即ち、この発明によりピアスバーの外形をテーパーに形成しておけば、ピアスバーのワークへの貫通長さを変化させることにより、同一ピアスバーで異なる直径の穿孔を達成することができる。また、ワークの材質が異なる場合には、ピアスバーの加熱温度を変えることによって目的を達成することができる。前記ピアスバーの加熱温度は200℃乃至700℃の範囲内で容易に設定することができる。
【0013】
前記はピアスバーの固定をロボット連結軸としたけれども、穿孔工程で可動ロボットを使用しない場合には、通常の加工機における穿孔と同様に、ピアスバーの固定盤をワークに向かって離接させることも考えられる。つまり、ピアスバーをワークに向かって往復離接すれば穿孔の目的を達成することができる。この場合にピアスバーの外形をテーパーにしておけば、同一距離の離接によって同一内径の穿孔ができ、異なる距離の離接により、異なる内径の穿孔ができる。即ち、ピアスバーのストロークの可変により、同一ピアスバーで異なる孔径に穿孔することができる点に特徴がある。
【0014】
前記従来の技術(特許文献1)によれば、熱針の外形が一定しているので、穿孔すべき孔径が異なる毎に熱針を取り換えなければならないことになる。
【0015】
この発明におけるワークとしては、合成樹脂シート、合成樹脂カーペット、不織布、合成樹脂板などが考えられるが、原則的に熱溶融する材料ならば何れも穿孔可能である。
【0016】
即ち、方法の発明は、可動部材に固定した高温に加熱したピアスバーをワークに刺突し、前記高温ピアスバーの接触部最大径と同一直径の孔を溶融穿孔することを特徴としたワークの穿孔方法であり、ピアスバーは、ワーク面に対して直角方向から刺突し、往復動、回転又は振動を単独又は複合して行い穿孔することを特徴としたワークの穿孔方法である。また、可動部材は、ロボット先端ツール又はピアスバーとしたことを特徴としたワークの穿孔方法であり、ピアスバーは、200℃〜700℃に加熱することを特徴としたワークの穿孔方法である。
【0017】
次に、装置の発明は、ワークに離接できるようにしたロボット先端ツール又はピアスバー固定盤にピアスバーの基部を固定し、前記ピアスバーの加熱装置及び温度制御用のセンサーを設置したことを特徴とするワークの穿孔装置であり、ロボット先端ツールにピアスバーの回転装置又は振動装置を付設したことを特徴とするワークの穿孔装置である。
【0018】
また、ピアスバーの発明は、一端部を尖頭とし、他端部を円筒とし、中間部をテーパー筒とした本体に電熱材を内装したことを特徴とするピアスバーであり、電熱材をインナーとし、該インナーの外側にセラミックスアウターを装着し、セラミックスアウターの外側に超硬の保護筒を嵌装したことを特徴とするピアスバーである。また、尖頭部の角度θは5°〜150°のテーパー角度とし、中間部の角度θは0°〜150°のテーパー角度としたことを特徴とするピアスバーであり、次に外壁は超硬材としたことを特徴とするピアスバーである。
【0019】
この発明におけるピアスバーは、熱源体であるインナーと、インナーの発生熱を高効率で表面に伝えるアウター及びアウターの温度上昇に対し、十分な耐熱性を有するスリーブ並びに割り構造により、インナー、アウター、スリーブを保持し、ロボットツールに取り付けるようにしたブラケットにより構成されている。
【0020】
前記ピアスバーを使用するには、例えばトリム用ロボットの先端ツールに、該ツールの先端方向と直角方向(又は平行方向)に設置させる。その設置位置はツールトリミング時にワークとの干渉から回避されており(例えばツール先端から180mm以上離れた位置)、穿孔時にピアスバーの先端をツール先端として切替え使用する。
【0021】
前記ピアスバーの組み立て時の全長は、先端ツールの中から相当の距離(例えば250mm以内)に収まるようにして、ロボット動作の干渉を回避するようにしてある。
【0022】
前記ピアスバーは、固定してあるが、これに動力(空圧駆動又は電動)を連結して駆動することもできる。更に、ロボット先端ツールがロボット制御の追加回転軸を具備する場合には、ロボット先端ツールの反対側を先端方向として取り付けることもできる。前記のように、ピアスバーの取り付け姿勢については、一つに限定されていないが、ロボットの構造及びピアスバーによる穿孔作業方法に最も好ましい形態に固定する。ピアスバーの移動は、ワークに対し、直角方向からの往復移動であることを考慮してピアスバーを固定することになる。
【0023】
前記ピアスバーのインナーは、カートリッジヒーター、セラミックスヒーター、面状熱源体、その他電気式加熱機器のように、連続的に電気を供給することによって、インナー自身が発熱する。またマイクロ波による発熱においては、マイクロ波を発振し、ピアスバーのアウターの一部又は全部を加熱する。前記における温度は200℃〜700℃であって、ワークの材質に応じ適宜選定する。前記における温度制御は、温度センサーにより所定の温度を設定し、当該温度に自動制御する。例えば、センサーによりインナー送電における電圧を制御し、これにより電流を制御すれば発熱量を制御できる。また、マイクロ波を発振して発熱する場合には、センサーによってその発振量を制御し、温度(発熱)を制御する。
【0024】
前記ピアスバーのアウターはインナーの発熱により加熱され、対象ワークの融点以上の温度に到達した後、ワークに対し突き刺し動作で接触し、ワークを融解しながら貫通し、小孔を加工する。
【0025】
また、ピアスバーのアウターは、高い熱伝導率と、耐磨耗性を有する素材を用い、小孔加工時に表面に付着した融解樹脂を除去しやすいように、加工使用面全体に物理蒸着処理(PVD処理)を施す。ピアスバーのアウターに適した素材は、100W/m・K以上の高い熱伝導率を有し、かつ硬度強化を施した物を用いる。例えば超硬(焼結材、100〜120W/m・K)や、真鍮(106W/m・K)に硬質クロムメッキを施した物である。
【0026】
前記物理蒸着処理は、主にCr−N処理(クロムー窒化処理)を用いるが、加工するワークの融点が低い場合には、DLC処理やチタンコートに代えることができる。
【0027】
前記アウターの外形は、突き刺し用先端部、小孔形状を確定するテーパー部及び部品取り付けを行うストレート部を一体的に加工して製作する。従って、ピアスバーによって加工される孔の径は、ワークに対するピアスバーの挿入深さで決定され、同一ピアスバーで小径(例えば5mm)から大径(例えば10mm)の範囲まで加工できる。従って、アウターテーパーの最小径、最大径及びテーパー部の全長は、ピアスバーが対象とするワークに要求される加工孔径によって任意に変更製作可能である。アウター先端部の角度は対象ワークによって決まる。図4中θは5°〜150°の間で材料特性毎に任意に選定し作成される。また、テーパー部の角度は、ワーク側の特性に加え、加工孔径の種類によってθは5°〜150°の間で任意に選定できるが、テーパー部のない場合(図1中θは0°〜150°)もこの発明のピアスバーである。
【0028】
この発明のピアスバーの固定に用いるスリーブは、アウター加熱温度が最大値に到達しても顕著な熱変化や燃焼しない十分な耐熱性を有し、ツール本体への熱伝導を遮断し、ピアスバーの連続使用を可能にする。スリーブは高温使用域の場合には、カーボン素材を用いるが、アウターからの到達温度が200℃未満の使用条件では、素材をベークライト等の耐熱度の低い材料にすることもできる。
【0029】
前記スリーブを装着するためのブラケットは、スリーブ挿入部のスリットを具備した割構造を用い、ボルト締め付けで固定するが、他の固定装置を用いることもできる。即ち、ピアスバー特有の固定装置でなくても用いることができる。
【0030】
前記ブラケットに回転機構を具備させて、ピアスバーを回転(例えば10rpm〜100rpm)させながら小孔加工することにより、ワーク融解時の熱変換効率を向上させ、加工速度を短縮することができる。また、ピアスバーを中心軸と平行に高速、若しくは低速(例えば10mm/sec〜100mm/sec)で上下運動を繰り返しながら突き刺し動作を行えば、ピアスバーからワークへの熱伝達効果を助長することができる。また、前記ブラケットに超音波振動子を具備させ、ピアスバーに超音波振動を付加しながら小孔加工をすることにより、ピアスバーの貫通後、孔抜き時の融解樹脂剥離を助長させれば、加工速度を短縮することができる。
【0031】
また、ピアスバー加工時に、ワークに熱風(例えば100℃)を供給し続け、貫通前にはワークへの熱伝達を補助して貫通時間を短縮し、貫通後は融解樹脂の硬化を遅延させ、融解樹脂を吸引若しくはエアー吹き付けにより除去する。前記ワークへの熱風は、ワーク設置治具側へヒーターを具備させることにより、容易に実現できるが、その具体的方法に限定はない。
【0032】
また、対象ワークを液体窒素などの冷媒を用いて急速に冷却し、ワークをガラス転移点以下の温度で冷却することにより、ワークの組成特性が変化した条件で加工部のみを急速加熱することにより、加工精度を向上させることができる。
【0033】
前記ピアスバーの取り付けに際し、ピアスバーの基端をピストンロッドに連結し、ピストンロッドのシリンダーをロボット連結軸のブラケットに固定すると、ロボット連結軸は、ピアスバーとワークの対面まで移動し、穿孔の際はピストンロッドを往復動させることにより目的を達成することができる。この場合には、穿孔時の移動質量が小さくなる(例えばピアスバーと、ピストンロッドの和)ので、精度を向上することができる。
【0034】
具体的には、ロボット連結軸のブラケットに、ピアスバーをロッドに連結し、このロッドを給排気付きのシリンダーに摺動自在に装着したことになる。
【0035】
前記におけるピアスバーを設置した製造設備が非常停止された場合に、ピアスバーの余熱によりワークが燃焼するのを避けるために、ピアスバーを急速冷却するように、常温若しくは低温(例えば0℃)エアーをピアスバーに連続して吹きつけるようにすることもできるが、斯かる動作はセンサーにより異常を検出し、その出力によって緊急処理装置を自動的かつ即時に始動させるようにする。
【発明の効果】
【0036】
この発明によれば、加熱したピアスバーをワークに刺突するので、急速かつ正確に穿孔することができる効果がある。
【0037】
また、ピアスバーの外形は通常テーパー状に形成してあるので、ピアスバーのストロークによって、同一ピアスバーで異なる孔径の孔を選択穿孔することができる効果がある。
【0038】
更に、加熱ピアスバーの刺突による穿孔であるから、ピアスバー壁の損耗がなく、長期間使用し得る効果がある。また、穿孔時間が短縮し、かつ精度が良好となる効果がある。
【0039】
次に、ピアスバーの取り付けは極めて簡単かつ確実であって、従来使用しているロボット先端ツールなどをそのまま使用し得る効果がある。
【0040】
本願発明による穿孔時間は従来使用されている穿孔方法より処理時間が短くなることが確認された(表1)。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施例であって、ロボット先端ツールに固定した切断刃と直角の方向へピアスバーを固定した状態を示す正面図。
【図2】同じくロボット先端ツールに固定した切断刃と、反対の方向へピアスバーを固定した状態を示す断面図。
【図3】同じくロボット先端ツールに固定した切断刃と反対の方向へ、ピアスバーを摺動自在に固定した状態を示す正面図。
【図4】(a)この発明のピアスバーの正面拡大図、(b)同じく断面拡大図、(c)同じく他の実施例の断面拡大図。
【図5】同じく図1中A−A断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明により、ポリプロピレン製の不織布(厚さ3mm)に直径3mmの穿孔をする際には、先端部に120°の角度を付与し、中間部を80°のテーパーとし、基端部(取り付け部)10mmの円筒としたピアスバーを400℃に加熱して、刺突したところ、3秒間で所定の穿孔を完了した。前記時間はワークの厚さと材質により異なるが、前記のように材質がポリプロピレン製の不織布で厚さ3mmの場合にはほぼ3秒で所定の穿孔ができたのである。但し、ピアスバーは回転も振動もしていないが、回転(100rpm)又は振動を加味すれば、時間を1.5秒〜2秒に短縮することができる(表2)。
【表2】

【0043】
この発明の実施に使用する装置は、ロボット連結軸の工具固定用ブラケットに、スリーブを介してピアスバーの円筒部を挟着し、挟着板とボルトで固定する。従って、取り付け、取り外しはきわめて容易であり、実質的にはナットの締め付け時間を要するのみである。
【0044】
この発明に用いるピアスバーは、超硬アウターの内側に電気発熱するインナーを収容し、先端部の角度を60°程度に尖頭化し、中間部は2.5°程度に傾斜させたものである。このピアスバーをロボット連結軸に固定するには、前記のようにスリーブと挟着板とを用いて、ボルトとナットでブラケットに固定する。
【0045】
前記ピアスバーは、ワークに対し、直角(中心線)に固定し、ワークに離接して穿孔する。前記ブラケットにモータを固定してピアスバーを回転すれば、ピアスバーを回転させつつ穿孔することができる。また、発振器を固定してピアスバーを振動すれば、ピアスバーを振動させつつ穿孔することができる。
【実施例1】
【0046】
この発明の実施例を図1に基づいて説明する。
【0047】
ロボット先端ツール1の先端に切断刃2を固定し、前記ロボット先端ツール1の側面に前記切断刃2の軸2aに対し、ほぼ直角にブラケット3を固定する。該ブラケット3にピアスバー5の基部に嵌装したスリーブ4をセットして、該スリーブ4を挟着板6により挟着固定する。
【0048】
前記ピアスバー5の中心線が前記ロボット先端ツール1の中心線(前記軸2aの中心線と平行)と直角になるようにピアスバー5を固定し、穿孔装置10を構成してある。図中15は熱電対などのセンサーである。
【0049】
前記穿孔装置10は、ロボット先端ツール1により駆動され、図1中矢示9、9aのようにロボット先端ツール1を直線往復移動させてワーク8を刺突して穿孔する。
【0050】
前記ワーク8に設けられる孔径は、ピアスバー5の挿入部の直径によって定まる。従って、ピアスバー5の挿入深さにより孔径を調節し、又は孔径を決めることができる。
【0051】
前記ワーク8の材質及び厚さによってピアスバー5の加熱状態を異にする。ワーク8の材質が例えばポリプロピレン製の不織布の場合には、300℃〜400℃に加熱して、3〜4秒間で穿孔を完了する。また、ポリエチレン製の不織布の場合には、200℃〜300℃の温度で1秒〜2秒間で穿孔を完了する。(ワークの厚さ3mm〜5mm)。前記において、ピアスバー5の温度が200℃未満では穿孔付近の付着樹脂が溶けないが、500℃では融解樹脂が流れ落ちる。従って、ワークの材質と厚さによって、ワークとピアスバーとの接触時間を決める。
【0052】
ワークの材質がポリエチレン、ポリプロピレン、PET樹脂などの場合に、加工面が熱により融解するが、融解深度は加工面の表面より0.1mm〜1mm程度である。また前記各ワークに、ピアスバーを1分以上留めた状態でのワークの変化は、ピアスバーの表面温度300℃〜500℃の範囲では、5秒〜10秒で加工面は溶けるが、融解により穴が広がりピアスバーとの接触がなくなった段階で、ワーク変化は平衡状態となり、その後時間経過に関わらず、ワークが変化することはない。
【実施例2】
【0053】
この発明の他の実施例を図2に基づいて説明する。
【0054】
ロボット先端ツール1に固定した切断刃2の反対側(ロボット連結軸16に対し、図2中上下方向)にブラケット3を介してピアスバー5の基部を固定する。図2の実施例においては、ロボット先端ツール1の中心線と、ピアスバー5の中心線は平行である。従って図2の実施例においては、ロボット先端ツール1を矢示9、9aの方向へ直線往復移動させることによりワーク8に穿孔することができる。
【0055】
次に図3に基づいて他の実施例を説明する。前記図1、2の実施例は、ロボット先端ツール1を移動させることにより穿孔作業を進行するが、図3の実施例はロボット先端ツール1を停止した状態でピアスバー5のみを往復移動させるものである。
【0056】
即ち、ブラケット3をシリンダー18のロッド(図示してない)へ固定し、ロッドに固定したピストンの前後へ加圧空気を送排することにより、ロッドを矢示17、17aの方向へ移動させ、ロッドに固定したブラケット3を同方向へ移動させて、ピアスバー5を同方向へ移動させる。
【0057】
前記実施例によれば、ロボット連結軸16を移動させることなく、ピアスバー5を往復移動させて穿孔することができるとともに、ピアスバーのストロークの選定が容易であり、ピアスバー5の往復移動、移動速度の調製その他の自動制御をきわめて容易にすることができる。また、ロボット連結軸16を移動させることなく、ピアスバー5の往復移動がきわめて容易となり、制御の簡易化をすることができる。
【0058】
即ち、ピアスバー5を固定したブラケット3を移動させるロッド(図示してない)のシリンダー18の給排管19、19aにより、シリンダー18内へ加圧空気を給排し、これにより、ピアスバー5を固定したブラケット3を矢示17、17aのように往復移動させることができる。
【0059】
前記のように、ロボット先端ツール1を移動させることなく、ブラケット3及びピアスバー5を移動させることにより、移動対象物の重量が小さくなるので、ピアスバー5の動作を正確かつ迅速に操作することが可能となり、結果的に作業性の改善と、精度の向上を期待することができる。
【0060】
前記実施例では、ロボット先端ツール1の中心線と、ピアスバー5の中心線を平行にしたが、ピアスバー5のみを往復移動させる装置にあっては、必ずしも前記条件の許にピアスバー5を設置しなくてもよいことになる。
【0061】
また、ピアスバー5自体に往復移動をさせることにより、切断刃を用いる時には、ピアスバー5がロボット先端ツール1側に収納されるので、固定式ピアスバーと比べ、切断刃の可動刃の可動範囲が広くなる。
【実施例3】
【0062】
この発明のピアスバーを図4(b)に基づいて説明する。このピアスバー5は、先端が充実した中空尖頭バーであって、中空部14にカートリッジヒーター又はセラミックスヒーターよりなるインナー11が内装されており、アウター12は、超硬材(例えば焼結金属)よりなっている。
【0063】
また、図4(c)は、他の実施例を示すもので、インナー11の外側にセラミックスアウター12aが外装され、セラミックスアウター12aの外側に超硬材よりなる補強アウター13が被着してある。前記セラミックスアウター12aは熱伝導度が良好で、熱経済上有力な一実施形態を示すものである。
【0064】
前記図4(b)、(c)は、ピアスバーの具体的構造を示すものである。前記ピアスバーの材質については、耐熱性、耐久性、及び耐磨耗性があれば採用することができる。
【0065】
前記ピアスバーの尖頭角度θは0°〜150°であり、テーパー角度θは0°〜150°であり、通常θは40°〜50°、θは5°〜10°を用いる。
【0066】
図5は、ピアスバー5の固定部(図中A−A断面)の断面拡大図である。即ち、ピアスバー5の基部円筒部12bの外側へスリーブ4を嵌装し、スリーブ4の外側へ挟着板6を被着し、挟着板6の締付板6a、6aをボルト20で締め付けて、ピアスバー5を固定する。図中21はスプリングワッシャーである(図5)。
【符号の説明】
【0067】
1 ロボット先端ツール
2 切断刃
3 ブラケット
4 スリーブ
5 ピアスバー
6 挟着板
7 穿孔装置
8 ワーク
11 インナー
12 アウター
12a セラミックスアウター
13 補強アウター
15 センサー
16 ロボット連結軸
18 シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材に固定した高温ピアスバーをワークに刺突し、前記高温ピアスバーの接触部最大径と同一直径の孔を溶融穿孔することを特徴としたワークの穿孔方法。
【請求項2】
ピアスバーは、ワーク面に対して直角方向から刺突し、往復動、回転又は振動を単独又は複合して行い穿孔することを特徴とした請求項1記載のワークの穿孔方法。
【請求項3】
可動部材は、ロボット先端ツール又はピアスバーとしたことを特徴とした請求項1記載のワークの穿孔方法。
【請求項4】
ピアスバーは、200℃〜700℃に加熱することを特徴とした請求項1記載のワークの穿孔方法。
【請求項5】
ワークに離接できるようにしたロボット先端ツールにピアスバーの基部を固定し、前記ピアスバーの加熱装置及び温度制御用のセンサーを設置したことを特徴とするワークの穿孔装置。
【請求項6】
ロボット先端ツールにピアスバーの回転装置又は振動装置を付設したことを特徴とする請求項5記載のワークの穿孔装置。
【請求項7】
一端部を尖頭とし、他端部を円筒とし、中間部をテーパー筒とした本体に電熱材を内装したことを特徴とするピアスバー。
【請求項8】
電熱材をインナーとし、該インナーの外側にセラミックスアウターを装着し、セラミックスアウターの外側に超硬材よりなる保護筒を嵌装したことを特徴とする請求項7記載のピアスバー。
【請求項9】
尖頭部は5°〜150°のテーパー角度とし、中間部は0°〜150°のテーパー角度としたことを特徴とする請求項7記載のピアスバー。
【請求項10】
外壁は超硬材としたことを特徴とする請求項7記載のピアスバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230262(P2011−230262A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104814(P2010−104814)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(396018726)株式会社ROSECC (7)
【Fターム(参考)】