説明

突沸防止具

【課題】一般的な気密シールでシールしてある飲食品入り密閉容器であっても、突沸を防止して安全に加熱することができるようにする。
【解決手段】液状飲食品5を容器1内に収容した状態で容器1の上部開口部を気密シート2でシールしてある飲食品入り密閉容器3に対し、先端部を気密シート2に突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を気密シート2に突き刺すことで、収容した液状飲食品5に先端部側が浸漬可能な突起部6を設け、突起部6に気体保持部7を設け、突起部6の先端部側を液状飲食品5に浸漬させた状態で、液状飲食品5に気体保持部7内の気体保持空間を液状飲食品5内に連通する連通口8を設け、突起部6を気密シート2に突き刺した状態で密閉容器内の空間と外部空間とを連通するガス抜き部9を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突沸防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容した飲料を、電子レンジなどの加熱機器で温める際には、電子レンジから出される超マイクロ波の電磁波により発生する微小な気泡が液中に拡散して、目に見える状態の気泡にはならずに液中に混在していたり、また、他の加熱機器により特に短時間で温度を上げた場合には、液中に溶けていた気体が過飽和のまま微小気泡が発生せず過熱状態となる。このような状態で、過熱状態の容器は、少しの衝撃によっても一気に液体の気化する蒸気と共に突沸を起こす虞があった。
そこで、突沸を防止するために、沸騰石やセラミックス等の多孔質物体を予め液中に配置しておくことが考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−15452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし一般に、液状飲食品を容器内に収容した状態で前記容器の上部開口部を気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器は、前述の予め前記突沸を防止する多孔質物質などを容器内に配置したものは無く、その飲食品入り密閉容器を電子レンジ等の加熱機器により加熱すると突沸して危険な場合があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、一般的な気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器であっても、突沸を防止して安全に加熱することができる突沸防止具を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、液状飲食品を容器内に収容した状態で前記容器の上部開口部を気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器に対し、先端部を前記気密シートに突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を前記気密シートに突き刺すことで、収容した液状飲食品に先端部側が浸漬可能な突起部を設け、前記突起部に気体保持部を設け、前記突起部の先端部側を液状飲食品に浸漬させた状態で、前記液状飲食品に前記気体保持部内の気体保持空間を液状飲食品内に連通する連通口を設け、前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記密閉容器内の空間と外部空間とを連通するガス抜き部を設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、一般的な気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器であっても、加熱する前に本発明の突沸防止具を気密シートに突き刺して先端部が液状飲食品に浸漬させた状態にして、電子レンジなどの加熱機器で加熱すると、突起部に設けた気体保持部内の気体に液中から発生する蒸気が加わって泡となって連通口から液中に放出され、定常的な沸騰が起こり、突沸が避けられる。
しかも、密閉容器内の沸騰に伴う蒸気は、ガス抜き部を介して外部空間に排気され、容器内の内圧の上昇が抑えられる。そのために、容器の上部開口部に取り付けられている気密シートが、破裂することは防止される。
従って、飲食品入り密閉容器を安全に電子レンジなどで加熱することができるようになった。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記気体保持部を、その先端部に前記連通口を設けると共に、基端部を閉塞した筒体から形成して、その筒体内には前記気体保持空間を形成してあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、気体保持部は単に筒体から形成されることにより、製作容易で安価な製品に成形できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記気体保持空間を多数設けた多孔質材料で前記気体保持部を形成してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、多孔質材料で形成された気体保持部が容器内の液中に浸漬されることにより、加熱に伴って液中に多数の気泡が放出されやすくなり、突沸防止効果がより向上する。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記容器内の液状飲食品を外部空間に流出可能な内容物取出し口を設けてあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、本発明の突沸防止具を容器に取り付けた気密シートに突き刺して安全に加熱した後、突沸防止具を抜き取らなくとも内容物取出し口に口をつけることにより、容器内の液状食品を直接飲食することができる。
従って、飲食にも便利な物を提供できる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記内容物取出し口を前記ガス抜き部に兼用構成してあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、内容物取出し口がガス抜き部にも兼用構成してあることにより、単純な構造に成型することができ、より安価で製造し易い突沸防止具を提供できる。
【0016】
本発明の第6の特徴構成は、前記容器及び前記気密シートは、マイクロ波を透過する材料で形成してあるものであるところにある。
【0017】
本発明の第6の特徴構成によれば、容器内の液状飲食品が電子レンジなどから発生する超マイクロ波により加熱されやすくなると同時に、それに伴って増加する突沸発生率も、本発明の突沸防止具を使用することにより、抑えることができる。
【0018】
本発明の第7の特徴構成は、液状飲食品を容器内に収容した状態で前記容器の上部開口部を気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器に対し、先端部を前記気密シートに突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を前記気密シートに突き刺すことで、収容した液状飲食品に先端部側が浸漬可能であり、且つ、気体保持空間を多数設けた多孔質材料からなる気体保持部を有する突起部と、前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記密閉容器内の空間と外部空間を連通するガス抜き部とを設けてあるところにある。
【0019】
本発明の第7の特徴構成によれば、気体保持部が多孔質材料から形成してあるために、容器内の内容物の加熱の際に、その多孔質材料の多数の気体保持空間から多数の気体が出易く、突沸現象をより抑えやすくなり、しかも、液状の内容物から気泡となって発生して容器内に充満する気体は、ガス抜き部を通して簡単に外部空間に放出され、安全性を確保できる。
【0020】
本発明の第8の特徴構成は、前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記容器内の液状飲食品を外部空間に流出可能な内容物取出し口を設けてあるところにある。
【0021】
本発明の第8の特徴構成によれば、加熱時の突沸防止と、内容物取出し口から加熱後の容器からの内容物の取り出しをスムーズに行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の突沸防止具の全体斜視図である。
【図2】(a)は突沸防止具の使用状態の縦断面図、(b)は平面図である。
【図3】突沸防止具による内容物取り出し時の状態縦断面図である。
【図4】(a)は別実施形態の突沸防止具の使用状態の縦断面図、(b)は同状態の平面図である。
【図5】(a)は別実施形態の突沸防止具の使用状態の縦断面図、(b)は同状態の平面図である。
【図6】別実施形態の突沸防止具による内容物取り出し時の状態縦断面図である。
【図7】(a)は別実施形態の突沸防止具の使用状態の縦断面図、(b)は同状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、例えばコーヒーやスープ等の液状飲食品5をプラスチック製や防水加工した紙製の容器1内に収容した状態で、その容器1の上部開口部を例えば樹脂フィルムと紙などを積層したラミネート状の、あるいは、樹脂フィルム単層の気密シート2でシールして容器1内に電子レンジのマイクロ波が透過侵入できる飲食品入り密閉容器3を示してある。
【0024】
そして、この飲食品入り密閉容器3を、電子レンジなどの加熱機器により安全に加熱するために、次の本発明の突沸防止具4が示されている。
【0025】
図1、図2、図3に示すように、先端部を気密シート2に突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を気密シート2に突き刺すことで、収容した液状飲食品5に先端部側が浸漬可能な突起部6を設け、突起部6に気体保持部7を設け、突起部6の先端部側を液状飲食品5に浸漬させた状態で、液状飲食品5に気体保持部7内の気体保持空間Sを液状飲食品5内に連通する連通口8を設け、突起部6を気密シート2に突き刺した状態で密閉容器内の空間と外部空間とを連通するガス抜き部9を設けて、本発明の突沸防止具4を構成してある。
【0026】
前記突起部6は、その先端部を先尖り形状にして気密シート2に突き刺し易くしてあり、その先端に連通口8が設けてあると共に、長手方向の中間部を閉塞した筒体10から形成してあり、その筒体10内に気体保持空間Sを形成してある。また、基端部には、筒体10の外径よりも大きい径の鍔部11を設け、気密シート2に突き刺した時に基端部が全て容器1内に落ち込まないようにしてあると共に、容器1の内部空間に向けて開口した内容物の流入孔12と外部空間に向けて開口した内容物取出し口13とを連通させて、突起部6を気密シート2に突き刺した状態で容器1内の液状飲食品5を外部空間に流出可能にする取り出し流路部14を筒体10の基端側に形成してある。即ち、図1〜図3においては、突起部6は筒体10からなるものであり、取り出し流路部14と、内側に気体保持空間Sを有する気体保持部7とを備える。ここで気体保持部7は基端部が閉塞した筒体からなっている。
従って、前記鍔部11が飲み口になる。
前記筒体10の周部に設けた流入孔12とは径方向の反対側に、空気孔15が形成してあり、取り出し流路部14を介して内容物を取り出して飲食する際に、外部空間の空気を容器1内に流入するのを許容して、スムーズに液状の飲食品を飲食できるように構成してある。
つまり、内容物取出し口13は、流入孔12及び空気孔15と連通することにより、容器1内の内容物の加熱の際に発生する気体の出口として、ガス抜き部9を兼用構成してある。
【0027】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0028】
〈1〉 前記容器1は、金属製の物であっても良く、この場合には、内容物を加熱するのに電子レンジ以外の例えば、ガスコンロなどの加熱機器を使用する物であってもよく、この場合も火力が強ければ、やはり突沸現象が起こる可能性があるために、本発明の突沸防止具4が役に立つ。
〈2〉 本発明の突沸防止具4には、必ずしも内容物取出し口13を設けなくともよく、この場合、加熱後に容器1内の液状飲食品5を取り出すときには、気密シート2を上部開口部から取り外せばよい。
〈3〉 本発明の突沸防止具4に内容物取出し口13を設けない場合には、図4(a)、(b)に示すように、内容物の加熱時に発生する蒸気を外部空間に排気する専用のガス抜き部9を設けなければならない。
〈4〉 突沸防止具4に内容物取出し口13を設ける場合にも、図5(a)、(b)、図6に示すように、専用のガス抜き部9を設けてあっても良い。
〈5〉 突起部6に設ける気体保持部7は、図7(a)、(b)に示すように、発泡材料などの多孔質材料で形成してあっても良く、この場合の多孔質材料は、有底の穴が多数表面に存在する物が良く、その上、撥水性の材料で形成してあればなお良い。この表面の有底の穴が気体保持空間として、穴の入口が連通口として機能する。また、多孔質材料で図2(a)に示すような筒体10を構成しても良い。あるいは、気体保持部7を、多孔質材料で形成しつつ、その上部には、図2(a)に示すような取り出し流路部14を形成してもよい。この場合、気体保持部7は筒形状にせず、棒状形としてもよい。
〈6〉 前記飲食品入り密閉容器3には、液体以外に、コーンや野菜入りのスープなどの固液混合物や、でんぷん糊状の高粘性の飲食物等を収容したものであっても良い。
〈7〉 前記突沸防止具4は、鍔部11と突起部6を別部材で形成して、連結分離自在に構成してあっても良い。その上、鍔部11には、容器1に対する気密蓋の機能を具備させてあれば、気密シート2を外しても、容器1に対する密封と、内容物取り出しの両方が可能になる。
【0029】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 容器
2 気密シート
3 飲食品入り密閉容器
5 液状飲食品
6 突起部
7 気体保持部
8 連通口
9 ガス抜き部
10 筒体
13 内容物取出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状飲食品を容器内に収容した状態で前記容器の上部開口部を気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器に対し、
先端部を前記気密シートに突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を前記気密シートに突き刺すことで、収容した液状飲食品に先端部側が浸漬可能な突起部を設け、
前記突起部に気体保持部を設け、
前記突起部の先端部側を液状飲食品に浸漬させた状態で、前記液状飲食品に前記気体保持部内の気体保持空間を液状飲食品内に連通する連通口を設け、
前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記密閉容器内の空間と外部空間とを連通するガス抜き部を設けてある突沸防止具。
【請求項2】
前記気体保持部を、その先端部に前記連通口を設けると共に、基端部を閉塞した筒体から形成して、その筒体内には前記気体保持空間を形成してある請求項1に記載の突沸防止具。
【請求項3】
前記気体保持空間を多数設けた多孔質材料で前記気体保持部を形成してある請求項1に記載の突沸防止具。
【請求項4】
前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記容器内の液状飲食品を外部空間に流出可能な内容物取出し口を設けてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の突沸防止具。
【請求項5】
前記内容物取出し口を前記ガス抜き部に兼用構成してある請求項4に記載の突沸防止具。
【請求項6】
前記容器及び前記気密シートは、マイクロ波を透過する材料で形成してあるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の突沸防止具。
【請求項7】
液状飲食品を容器内に収容した状態で前記容器の上部開口部を気密シートでシールしてある飲食品入り密閉容器に対し、
先端部を前記気密シートに突き刺し可能に形成すると共に、その先端部を前記気密シートに突き刺すことで、収容した液状飲食品に先端部側が浸漬可能であり、且つ、気体保持空間を多数設けた多孔質材料からなる気体保持部を有する突起部と、
前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記密閉容器内の空間と外部空間とを連通するガス抜き部とを設けてある突沸防止具。
【請求項8】
前記突起部を前記気密シートに突き刺した状態で前記容器内の液状飲食品を外部空間に流出可能な内容物取出し口を設けてある請求項7に記載の突沸防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−170553(P2012−170553A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33623(P2011−33623)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】