説明

突然変異型アルファ2/デルタ遺伝子を含有する非ヒト哺乳動物、及び動物細胞

本発明は、α2/δ1遺伝子及び/又はα2/δ2遺伝子の標的破壊形を含有する非ヒト哺乳動物、及び動物細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、突然変異型α2/δ1-又はα2/δ2-サブユニット遺伝子又はその両方の遺伝子を含有するものを含む、1つ以上の突然変異型α2/δ-サブユニット遺伝子を含有する遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
α2/δ1は、電圧感受性カルシウム・チャネルの補助サブユニットである。このサブユニットは、これらのチャネルの適正な機能のために必要とされる。α2/δ1は、癲癇、不安、疼痛、無痛覚、耳鳴り、片頭痛の予防、及びのぼせにおいて所定の役割を有することが知られている。McLean MJ他(1993) Neurol. 43:2292-2298; Field他(2001), Br. J. Pharmacol 132(1月):1-4; Mauri MC他 (2001) Clin Drug Invest, 21(3): 169-74; Takasaki I他 (2001) Pharmacol Exp Ther, 296(2)(2月): 270-5; Bauer Ca及びBrozoski TJ(2001) JARO 2(1)(3月): 54-64; Mathew NT他 (2001) Headache 41(2月): 119-28; 及びLoprinzi他(2002) Mayo Clin Proc, 77(11)(11月):1159-63を参照されたい。しかしこれらの疾患におけるタンパク質の病態生理学的役割はまだ明らかではない。
【0003】
このタンパク質は、目下4つの構成員α2/δ1〜α2/δ4を含む群の一員である。例えば国際公開第00/20450号パンフレットを参照されたい。このパンフレットでは、α2/δ1〜α2/δ4はそれぞれα2δ-A、α2δ-B、α2δ-C、α2δ-Dと呼ばれている。α2/δ1サブユニットのGenbank 受託番号は、M76559(ヒト); U73483, U73484, U73485, U73486及びU73487(マウス); M86621(ラット);及びAF077665(ブタ)を含む。また、Brown及びN. Gee(1998) J. Biol. Chem. 273:25458-25465も参照されたい。α2/δ2サブユニットの受託番号は、AJ251368, AJ251367.1, Abo11130.1, NM-006030.1, AF040709, AF042792, AF042793(ヒト); AF247139, NM-02063.2, AF247141, AB093246.1, AK044603.1(マウス);及びAF486277.1及びNM-175592.2(ラット)を含む。
【0004】
組織特異的発現、及び種々のα2/δサブユニット・サブタイプと抗けいれん性ギャバペンチン(gabapentin)との結合が報告されている。例えば、Gong他(2001) J. Membrane Biol. 184: 35-43を参照されたい。加えて、しばしばDucky及びEntlaと呼ばれる2つのα2/δ2-サブユニット突然変異体も報告されている。例えば、Brodbeck他(2002) J. Biol. Chem. 277(10); 7684-7693; 及びBrill他(2002) Society for Neuroscience, Abstract,プログラム番号619.3を参照されたい。Ducky及びEntla突然変異を有するマウスは、或る特定の病理学的特徴、例えば運動失調、発作性運動障害、小脳の大きさ減少、体重及び身体の大きさの減少、発育不全、欠神発作の特徴である皮質スパイク波発作、及び/又は脾臓形成不全によって特徴付けられる。
【0005】
α2/δ1及びα2/δ2タンパク質は、抗けいれん性1-(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸(ギャバペンチン)と高い親和性をもって結合することが判っている。in vitro機能アッセイは、ギャバペンチン及び他のα2/δ1リガンドがチャネル活性に対して機能効果をもたらす能力に関して、相反する結果を示した。Stefani A他(2001) Elilepsy Res; 43(3):239-48;及びNg GY他(2001) Mol Pharmacol Jan:50(1):144-52を参照されたい。ギャバペンチンとブタα2/δ1サブユニットとの結合は、R217A突然変異によって大きく排除することができる。この突然変異は、位置217(そのリーダー配列を有するポリペプチドにおける位置241)において、単一のアミノ酸をアルギニンからアラニンへ突然変異させることによるものである。Wang, M他(1999)、Biochem. J. 342: 313-320を参照されたい。
【0006】
研究ツール、例えばR217A及びR217A様突然変異を含むα2/δ1突然変異型マウスを含む遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物は、α2/δ1作用の生理学的役割をさらに定義すること;α2/δ1リガンドとその結合部位との結合に関連した治療の影響をさらに定義すること;これらの突然変異型動物をリガンドで処理し、そして化合物がまだ有効であるかどうか、且つ/又は同じ特徴を維持しているかどうかを決定することにより、in vivoでのα2/δリガンドの作用メカニズムをさらに試験すること;α2/δリガンドの効果を媒介することへのα2/δ1ポリペプチドの相対的な関与を決定すること;化合物のα2/δサブタイプ選択性を決定するために化合物をプロファイルすること;α2/δリガンドが関与するシグナル伝達経路を同定すること;不安、鬱、統合失調症、双極性疾患及びその他の疾患を含む疾患過程におけるα2/δの役割を試験すること;心臓血管疾患過程におけるα2/δの役割を試験すること;及び、突然変異型トランスジェニック動物を他の動物と、好ましくはα2/δ2突然変異体を含むその他のα2/δ突然変異型動物と交配させることにより、これらの突然変異型トランスジェニック動物を育種中間体として使用すること;そして、α2/δ活性に影響を及ぼす上でのロイシンの役割を決定すること、に関して有用である(Brown JP他(1998) Anal Biochem. Jan 15; 255(2):236-43)。
【0007】
研究ツール、例えばR290A及びR290A様突然変異を含むα2/δ2突然変異型マウスを含む遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物は、α2/δ2作用の生理学的役割をさらに定義すること;α2/δ2リガンドとその結合部位との結合に関連した治療の影響をさらに定義すること;これらの突然変異型動物をリガンドで処理し、そして化合物がまだ有効であるかどうか、且つ/又は同じ特徴を維持しているかどうかを決定することにより、in vivoでのα2/δリガンドの作用メカニズムをさらに試験すること;α2/δリガンドの効果を媒介することへのα2/δ2ポリペプチドの相対的な関与を決定すること;化合物のα2/δサブタイプ選択性を決定するために化合物をプロファイルすること;α2/δリガンドが関与するシグナル伝達経路を同定すること;運動失調及びてんかんを含む疾患過程におけるα2/δ2の役割を試験すること;及び、突然変異型トランスジェニック動物を他の動物と、好ましくはα2/δ1突然変異体を含むその他のα2/δ突然変異型動物と交配させることにより、これらの突然変異型トランスジェニック動物を育種中間体として使用すること;そして、α2/δ活性に影響を及ぼす上でのロイシンの役割を決定すること、に関して有用である(Brown JP他(1998) Anal Biochem. Jan 15; 255(2):236-43)。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
上述のように、α2/δ1ポリペプチドは、障害、例えばてんかん、不安、疼痛及び無痛覚、耳鳴り、片頭痛の予防、及びのぼせにおいて所定の役割を有することが知られており、α2/δ2ポリペプチドは、運動失調、てんかん、及び発育不全のような障害に関連する。しかし、これらの障害におけるタンパク質の病態生理学的役割はまだ明らかではない。
【0009】
ノックアウト動物が、特定のタンパク質の生理学的及び病理学的な役割を研究するための貴重な研究ツールであることもよく知られている。例えば、Steele PM他(1998) Cell 95(7):879-882を参照されたい。
【0010】
しかし、α2/δ1の場合、完全なα2/δ1ノックアウト動物を作り出そうという試みは失敗した。なぜならばα2/δ1ポリペプチド/機能のこのような完全な根絶は死を招くからである。これに関連して、本明細書中に記載されたようにエクソン8(例えば図1)を欠失させると、内生的エクソン8が除去され、そしてカルシウム・チャネル機能に関して無機能性であるα2/δ1タンパク質が発生した。4世代におけるヘテロ接合性 X ヘテロ接合性の交配から生まれた動物のうち、ヌル(エクソン8の欠失に関してホモ接合性)の遺伝子型を示すものはなかった。
【0011】
α2/δ2の場合、既知のα2/δ2突然変異Ducky及びEntlaを有するマウスは、或る特定の病理学的特徴、例えば運動失調、発作性運動障害、小脳の大きさ減少、体重及び身体の大きさの減少、発育不全、欠神発作の特徴である皮質スパイク波発作、及び/又は脾臓形成不全によって特徴付けられる。
【0012】
本発明は、突然変異型α2/δ-サブユニット遺伝子を含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を包含する。1実施態様の場合、本発明は、1種以上の突然変異型α2/δ-サブユニット遺伝子を含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、前記遺伝子によってコードされたポリペプチドが、前記突然変異を有さない同一のポリペプチドと比べて、ギャパペンチンとの結合性を低減又は排除されているものを包含する。ギャパペンチンに加えて、1種以上の他のα2/δリガンドとの結合性もこのように低減又は排除できることが認識されている。例えば、プレギャバリン(pregabalin)との結合性をこのように低減又は排除できることが認識されている。
【0013】
突然変異型α2/δ-サブユニット遺伝子は、α2/δ1ポリペプチドに関してはR217A様突然変異を、そしてα2/δ2ポリペプチドに関してはR290様突然変異を包含する。こうして1実施態様の場合、本発明は、R217A様突然変異を含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を包含する。好ましくは、哺乳動物は齧歯類、より好ましくはマウスであり、且つ/又は、哺乳動物は改変に関してホモ接合性である。「R217A様突然変異」とは、α2/δ1ポリペプチドをコードする哺乳動物遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの置換又は欠失を意味するものとし、前記置換又は欠失を有し前記ポリペプチドを発現させる前記遺伝子を含む遺伝子改変型の動物又は動物細胞は、生存能力があり、そしてギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。
【0014】
別の実施態様の場合、突然変異型遺伝子は、位置217(そのリーダー配列を有するポリペプチドにおける位置241)にアラニンを有するα2/δ1ポリペプチドをコードする。位置217における対応する野生型残基はアルギニンであることが認識されている。別の実施態様の場合、突然変異型遺伝子は、位置215(そのリーダー配列を有するポリペプチドにおける位置239)にアラニンを有するα2/δ1ポリペプチドをコードする。好ましい実施態様において、この哺乳動物はマウスである。本発明は特定のメカニズムによって制限されるものではないが、位置217(R217A)又は215(R215A)又はその両方における、アルギニンからアラニンへのこの突然変異によって作り出されたトランスジェニック動物が生成するα2/δ1ポリペプチドは、ギャバペンチン結合活性が低減又は排除される一方、生存に明らかに必要な機能性カルシウムチャネルの形成に関与する能力を維持すると考えられる。この突然変異は、組織特異的又は遍在的に行うことができる。
【0015】
従って、本発明は、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、改変の結果、突然変異型α2/δ1遺伝子をもたらし、突然変異の結果、位置217及び/又は215のアルギニンからその位置のアラニンへの変更を生じさせる。この哺乳動物は、ギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。1実施態様の場合、哺乳動物は齧歯類であり、別の実施態様の場合、マウスであり、また別の実施態様の場合、改変に関してホモ接合性である。
【0016】
別の実施態様の場合、R217A様突然変異は、アルギニン-アルギニン-アルギニン(RRR)モチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含む。典型的には、このRRRモチーフは、野生型α2/δ1全体における唯1つのRRRモチーフである。例えば、Genbank受託番号:M76559(ヒト); U73483; U73484; U73485; U73486、及びU73487(マウス); M86621(ラット); 及びAF077665(ブタ)を参照されたい。典型的には、このRRRモチーフは、フォン・ヴィレブラント(Von Willebrandt)ドメインに対してN末端側の10番目から12番目の残基に見いだされる(Anantharaman V及びAravind L(2000) Trends Biochem Sci. 25(11):535-7; Bork P及びRohde K(1991) Biochem J. 279(3): 908-10)。例えば、Genbank受託番号U73487に示されたマウスα2/δ1ポリペプチドの場合、フォン・ヴィレブラント・ドメインは、残基227-411(そのリーダー配列を有するポリペプチドにおける位置251-435)に見いだされるのに対し、RRRモチーフは、残基R215-R217(そのリーダー配列を有するポリペプチドにおける位置239-241)に見いだされる。例えばα2/δ1サブユニットに関するGenbank参考資料、例えばM76559(ヒト); U73483; U73484; U73485; U73486、及びU73487(マウス); M86621(ラット); 及びAF077665(ブタ)を参照されたい。
【0017】
別の実施態様の場合、RRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方におけるアルギニンから非アルギニンへの置換は、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換である。別の実施態様の場合、この突然変異はアルギニンからアラニンへの置換である。別の実施態様の場合、この突然変異はアルギニンからリシンへの置換である。
【0018】
別の実施態様の場合、R217A様突然変異は、α2/δ1ポリペプチドから、RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン残基のうちの少なくとも1つを欠失させることを含む。例えば、本発明は、Genbank受託番号U73487に示されたα2/δ1ポリペプチドから、R215; R217; R215及びR217; 又はR215, R216及びR217を欠失させることを含む。別の実施態様の場合、R217A様突然変異はさらに、α2/δ1ポリペプチドからRRRモチーフ内のフランキング・アルギニン残基のうちの少なくとも1つを欠失させることに加えて、RRR残基に対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失、及び/又はRRR残基に対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失とを含む。すなわち、R217A様突然変異は、α2/δ1ポリペプチドから最大17個の隣接残基を欠失させることを含み、10番目から12番目の残基は、本明細書中に記載されたRRR残基から成っており、欠失は、RRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも1つを含む。例えば、R217A様突然変異は、Genbank受託番号U73487に示されたマウスα2/δ1ポリペプチドから、残基PNKIDLYDVRRRPWYIQを欠失させることを含む。
【0019】
本発明のR217A様突然変異は、本明細書に述べたGenbank参考資料に示されたα2/δ1サブユニットのそれぞれに容易に当てはめることができる。
【0020】
本発明はさらに、1つ又は2つ以上のR217様突然変異に加えて、1つ以上保存的アミノ酸置換を含むα2/δ1ポリペプチドを含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、前記保存的アミノ酸置換が、1つ又は2つ以上のR217様突然変異を含むα2/δ1ポリペプチドの生体機能を著しくは変化させないものを含む。すなわち、前記R217様突然変異(複数)及び前記保存的アミノ酸置換(複数)を含む遺伝子改変型の動物又は動物細胞は、生存能力があり、そして、対応する野生型細胞又は動物と比較して、ギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。
【0021】
別の実施態様の場合、本発明は、R290A様突然変異を含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を含む。R290A様突然変異を含む本発明の非ヒト哺乳動物は、運動失調、発作性運動障害、小脳の大きさ減少、体重及び身体の大きさの減少、発育不全、欠神発作の特徴である皮質スパイク波発作、及び/又は脾臓形成不全によっては特徴付けられないと考えられる。1実施態様の場合、本発明の哺乳動物は齧歯類、別の実施態様の場合、マウスであり、また別の実施態様の場合、哺乳動物は改変に関してホモ接合性である。「R290A様突然変異」とは、α2/δ2ポリペプチドをコードする哺乳動物遺伝子における1つ以上のヌクレオチドの置換又は欠失を意味するものとし、前記置換又は欠失を有し前記ポリペプチドを発現させる前記遺伝子を含む遺伝子改変型の動物又は動物細胞は、生存能力があり、そしてギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。
【0022】
1実施態様の場合、突然変異型遺伝子は、位置290、214、又は236にアルギニンからアラニンへの置換を有するα2/δ2ポリペプチドをコードし、それぞれの野生型アルギニンは、野生型RRRモチーフ内の3番目(最もC末端寄り)のアルギニンである。これらの位置は、リーダー配列を有するポリペプチドを基準とする。別の実施態様の場合、突然変異型遺伝子は、位置288、212、又は234にアルギニンからアラニンへの置換を有するα2/δ2ポリペプチドをコードし、前記位置におけるそれぞれの野生型アルギニンは、野生型RRRモチーフ内の1番目(最もN末端寄り)のアルギニンである。これらの位置は、リーダー配列を有するポリペプチドを基準とする。本明細書中に記載された突然変異のそれぞれを、組織特異的又は遍在的に行うことができることが認識されている。
【0023】
従って、本発明は、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、改変の結果、突然変異型α2/δ2遺伝子をもたらし、突然変異の結果、野生型RRRモチーフの1番目及び/又は3番目のアルギニンにおける、アルギニンからアラニンへの置換をもたらすものを含む。この哺乳動物は、ギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。1実施態様の場合、哺乳動物は齧歯類であり、別の実施態様の場合、マウスであり、また別の実施態様の場合、改変に関してホモ接合性である。
【0024】
別の実施態様の場合、R290様突然変異は、RRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含む。典型的には、このRRRモチーフは、野生型α2/δ2全体における唯1つのRRRモチーフである。例えば、Genbank受託番号:AF247139、AB093246.1、AK044603.1、AF486277.1及びNM-175592.2を参照されたい。別の実施態様の場合、RRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方における、アルギニンから非アルギニンへの置換は、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換である。別の実施態様の場合、この突然変異はアルギニンからアラニンへの置換である。別の実施態様の場合、この突然変異はアルギニンからリシンへの置換である。
【0025】
別の実施態様の場合、R290A様突然変異は、α2/δ2ポリペプチドから、RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン残基のうちの少なくとも1つを欠失させることを含む。例えば、本発明は、Genbank受託番号AF247139に示されたα2/δ2ポリペプチドから、R288; R290; R288及びR290; 又はR288, R289及びR290を欠失させることを含む。別の実施態様の場合、R290A様突然変異はさらに、α2/δ2ポリペプチドからRRRモチーフ内のフランキング・アルギニン残基のうちの少なくとも1つを欠失させることに加えて、RRR残基に対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失、及び/又はRRR残基に対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失とを含む。すなわち、R290A様突然変異は、α2/δ2ポリペプチドから最大17個の隣接残基を欠失させることを含み、10番目から12番目の残基は、本明細書中に記載されたRRR残基から成っており、欠失は、RRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも1つを含む。例えば、R217A様突然変異は、Genbank受託番号AF247139に示されたマウスα2/δ2ポリペプチドから、残基PKKIDLYDVRRRPWYを欠失させることを含む。
【0026】
本発明のR290A様突然変異は、本明細書に述べたGenbank参考資料に示されたα2/δ2サブユニットのそれぞれに容易に当てはめることができる。
【0027】
本発明はさらに、1つ又は2つ以上のR290A様突然変異に加えて、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含むα2/δ2ポリペプチドを含む、生存能力のある、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、前記保存的アミノ酸置換が、1つ又は2つ以上のR290様突然変異を含むα2/δ2ポリペプチドの生体機能を著しくは変化させないものを含む。すなわち、前記R290様突然変異及び前記保存的アミノ酸置換を含む遺伝子改変型の動物又は動物細胞は、生存能力があり、そして、対応する野生型細胞又は動物と比較して、ギャバペンチンとの結合性、又はギャバペンチン及び1つ以上の他のα2/δリガンドとの結合性が低減又は排除された表現型を示す。
【0028】
保存的アミノ酸置換は当業者によく知られている。例えば、保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間での相互の置換;ヒドロキシル残基Ser及びThrの相互交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGln間の置換、塩基性残基Lys及びArgの交換、及び芳香族残基Phe, Tyr間の置換がある。どのアミノ酸変化が表現型の上でサイレントに見られるかに関する指針は、Bowie他、Science 247: 1306-1310(1990)に見いだされる。保存的アミノ酸置換は、1つの群内の構成員を同じ群内の別の構成員と交換することを伴う。群は下記のような芳香族、疎水性、極性、塩基性、酸性及び小型基:
芳香族:フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン;
疎水性:ロイシン、イソロイシン、バリン;
極性:グルタミン、アスパラギン;
塩基性:アルギニン、リシン、ヒスチジン;
酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;
小型:アラニン、セリン、トレオニン、メチオニン、グリシン
を含む。
【0029】
特定の実施態様の場合、本発明は、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物であって、該改変の結果、
a) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含むα2/δポリペプチド;
b) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換を含むα2/δポリペプチド;
c) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンからアラニンへの置換を含むα2/δポリペプチド;
d) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失を含むα2/δポリペプチド;
e) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含むα2/δポリペプチド;
f) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含むα2/δポリペプチド;
g) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5個の残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含むα2/δポリペプチド;及び
h) 前記RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン以外の位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、a)〜g)に従うα2/δポリペプチド
から成る群から選択されたポリペプチドをコードする突然変異型α2/δ遺伝子をもたらす、哺乳動物を含む。
【0030】
1実施態様の場合、上記遺伝子はα2/δ1遺伝子であり、上記α2/δポリペプチドは、α2/δ1ポリペプチドである。別の実施態様の場合、上記遺伝子はα2/δ2遺伝子であり、上記α2/δポリペプチドは、α2/δ2ポリペプチドである。
【0031】
別の実施態様の場合、本発明は遺伝子改変型の動物細胞であって、該改変が突然変異型α2/δ1及び/又は突然変異型α2/δ2遺伝子を含む。別の実施態様の場合、細胞は胚幹(ES)細胞又はES様細胞であり、別の実施態様の場合、細胞はマウス又はヒトであり、別の実施態様の場合、細胞は改変に関してホモ接合性である。
【0032】
さらに別の実施態様の場合、細胞は、結果として突然変異型α2/δ1遺伝子及び/又は突然変異型α2/δ2遺伝子をもたらす改変形を含む、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物から分離される。特定の実施態様の場合、細胞は胚線維芽細胞、幹細胞、ニューロン、骨格筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、褐色又は白色脂肪細胞、肝細胞、又は膵臓β細胞である。
【0033】
本発明はまた、てんかん、神経障害性疼痛、又は不安のための治療薬を同定する方法であって、本明細書中に記載された本発明の遺伝子改変型哺乳動物に物質を投与し、そして前記物質に対する哺乳動物の応答を分析することを含む方法を含む。1実施態様の場合、この哺乳動物は、突然変異型α2/δ1遺伝子及び突然変異型α2/δ2遺伝子に関してホモ接合性の非ヒト哺乳動物である。てんかん治療薬を同定する方法を含む別の実施態様の場合、この非ヒト哺乳動物はα2/δ2突然変異に関してホモ接合性である。特定の実施態様の場合、この非ヒト哺乳動物はマウスである。てんかん、神経障害性疼痛、又は不安の評価方法が当業者に知られており、且つ/又は、一例として本明細書に別に記載されている。
【0034】
本発明はまた、動物細胞中のα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子活性が低減された結果として、改変された発現を示す遺伝子を同定する方法であって、突然変異型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を含有する動物細胞の発現プロフィールを評価し、そして該プロフィールを、野生型細胞に由来するプロフィールと比較することを含む、方法を特徴とする。1実施態様の場合、細胞は突然変異型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子に関してホモ接合性である。
【0035】
別の実施態様の場合、本発明は、動物細胞中のα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子活性が低減された結果として、改変された発現又は翻訳後改変を示すタンパク質を同定する方法であって、突然変異型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を含有する動物細胞のプロテオミック・プロフィールを評価し、そして該プロフィールを、野生型細胞に由来するプロフィールと比較することを含む、方法を特徴とする。1実施態様の場合、細胞は突然変異に関してホモ接合性である。
【0036】
本明細書中に記載された突然変異を含有する本発明の哺乳動物又は細胞が、前記哺乳動物又は細胞に対して内生的なα2/δ1遺伝子内に前記突然変異を含有できること、或いは、突然変異を含有する遺伝子が、前記哺乳動物又は細胞に対して部分的又は完全に異種であり得ることが認識されている。従って本発明のこの観点において、哺乳動物又は細胞は、哺乳動物又は細胞に対して部分的又は完全に異種であるポリペプチドをコードするα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を含有し、そしてR217様及び/又はR290様突然変異を含有する。例えば、本発明は、本明細書中に記載されたR290様突然変異を含有するマウスであって、前記R290様突然変異が、マウス以外のα2/δ1及び/又はα2/δ2哺乳動物遺伝子内又はその一部内に含有されるものを含む。
【0037】
或いは、哺乳動物又は細胞は、哺乳動物又は細胞に対して内生的ではあるがしかしR217様及び/又はR290様突然変異を含有するポリペプチドをコードするα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を含有する。
【0038】
「遺伝子改変型」の非ヒト哺乳動物又は動物細胞は、ヒト以外の哺乳動物又は動物細胞中に、又はヒト以外の先祖哺乳動物又は先祖動物細胞中に遺伝子工学によって導入された改変に関してヘテロ接合性又はホモ接合性である。改変を導入するのに利用可能な遺伝子工学の標準法は、相同的組換え、ウィルスベクター遺伝子トラッピング、放射線照射、化学的突然変異誘発、及びアンチセンスRNAを単独で又は触媒リボザイムとの組み合わせでコードするヌクレオチド配列のトランスジェニック発現を含む。
【0039】
遺伝子を破壊するための好ましい遺伝子改変法は、「外来核酸配列」を遺伝子座中に挿入することにより、例えば相同的組換え又はウィルスベクター遺伝子トラッピングによって、内生的遺伝子を改変する方法である。「外来核酸配列」は、遺伝子中に非天然発生する外生的配列である。外来DNAのこのような挿入は、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子の任意の領域内、例えばエンハンサー、プロモーター、調節領域、非コーディング領域、コーディング領域、イントロン、又はエクソン内で生じることができる。遺伝子破壊のための最も好ましい遺伝子工学法は、相同的組換えである。相同的組換えにおいて、外来核酸配列は単独で、又は内生的遺伝子配列の一部の欠失との組み合わせで、標的を定めて挿入される。
【0040】
「突然変異型」のα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子は、遺伝子改変されることにより、それぞれのα2/δ遺伝子の野生型を通常の場合には発現させる細胞中で、突然変異型遺伝子によってコードされたα2/δ1及び/又はα2/δ2ポリペプチドの細胞活性が変更、低減又は排除されるようになっているα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を意味する(例えば上述のR217様及び/又はR290様突然変異)。遺伝子改変が細胞中のそれぞれのα2/δ遺伝子の全ての野生型コピーを効果的に排除する(例えば、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物又は動物細胞が、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子破壊に関してホモ接合性であるか、又は元から存在するα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子の野生型コピーだけが今や突然変異させられる)と、遺伝子改変の結果、野生型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を発現させる対照細胞と比較して、それぞれのポリペプチド活性が変更、低減又は排除されることになる。
【0041】
1実施態様の場合、この改変の結果、野生型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を発現させる対照細胞と比較して、α2/δ1及び/又はα2/δ2ポリペプチド活性が低減又は排除される。本発明はいずれの特定のメカニズムにも縛られないが、α2/δ1及び/又はα2/δ2ポリペプチド活性のこのような排除、低減又は変更が結果として生じるのは、突然変異型α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子が、それぞれの野生型ポリペプチドと比較して変更された、例えば低減又は排除された機能を有する突然変異型ポリペプチドをコードするからである。このような観点において、活性の低減は任意の量で生じる。この量は、突然変異型ポリペプチドを発現させる遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物又は動物細胞中のα2/δ1及び/又はα2/δ2ポリペプチド活性と、対応する野生型の活性とを比較することにより、検出可能である。
【0042】
1実施態様の場合、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物又は動物細胞中のα2/δ1及び/又はα2/δ2ポリペプチドのそれぞれの活性は、野生型レベルの50%以下まで低減され、別の実施態様の場合、野生型レベルの25%以下まで、また別の実施態様の場合、野生型レベルの10%以下まで低減される。
【0043】
特定の実施態様の場合、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子突然変異の結果、野生型と比較して、α2/δ1及び/又はα2/δ2活性を検出不能にする。α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子突然変異の双方を含む本発明の哺乳動物において、それぞれのポリペプチド活性は、突然変異のうちの1つだけを有する哺乳動物よりも低いことが認識されている。
【0044】
1実施態様の場合、本発明の哺乳動物は両突然変異に関してホモ接合性である。
【0045】
1実施態様の場合、前段落で言及した活性は、リガンド結合活性である。タンパク質と結合するリガンドの測定法、例えば結合アッセイが当業者に知られている。1実施態様の場合、前段落で言及した活性は、ギャバペンチン結合活性である。ギャバペンチン結合測定法は当業者に知られているか、又は本明細書中に開示される。例えばWang, M; Offord, J; Oxender DL;及びSU T-Z(1999), Biochem. J. 342:313-320を参照されたい。その他のα2/δリガンドの結合を、結合アッセイによって測定できることが認識されている。
【0046】
「突然変異型α2/δ1遺伝子を含有する遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物」は、突然変異型α2/δ1遺伝子を含有するように遺伝子工学によって作り出されたヒト以外の哺乳動物、並びに、突然変異型α2/δ1遺伝子を受け継いだこのようなヒト以外の哺乳動物の子孫を意味する。「突然変異型α2/δ2遺伝子を含有する遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物」は、突然変異型α2/δ2遺伝子を含有するように遺伝子工学によって作り出されたヒト以外の哺乳動物、並びに、突然変異型α2/δ2遺伝子を受け継いだこのようなヒト以外の哺乳動物の子孫を意味する。例えば、所望の遺伝子改変形を担持する胚盤胞又は胚を形成し、次いでこの胚盤胞又は胚を養母内に子宮内発育のために移植することにより、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を作り出すことができる。遺伝子改変された胚盤胞又は胚は、マウスの場合、遺伝子改変型の胚幹(ES)細胞をマウスの胚盤胞内に移植することにより、又はES細胞を4倍体胚とともに凝集することにより形成することができる。或いは、遺伝子改変された胚の様々な種を、核移植によって得ることができる。核移植の場合、ドナー細胞は体細胞又は多能性幹細胞であり、これは、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子突然変異を破壊する所望の遺伝子改変形を含有するように遺伝子工学的に作り出される。この細胞の核は次いで、除核された受精卵母細胞又は単為生殖卵母細胞内に移される。その結果生じた胚を胚盤胞内に戻して発育させる。次いで、上記方法のいずれかによって生成された遺伝子改変型の胚盤胞を、当業者によく知られた標準法に従って、養母内に移植する。「遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物」は、上述の方法によって作り出されたヒト以外の哺乳動物の全ての子孫を含むが、ただしこの場合、子孫は、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子の突然変異遺伝子を破壊する遺伝子改変形の1つ以上のコピーを受け継ぐものとする。遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物の全ての体細胞及び生殖系列細胞が改変を含有することが好ましい。突然変異させられたα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子突然変異を含有するように遺伝子改変される本発明の非ヒト哺乳動物は、齧歯類、例えばマウス及びラット、ネコ、イヌ、ウサギ、テンジクネズミ、ハムスター、ヒツジ、ブタ及びフェレットを含む。
【0047】
「突然変異型α2/δ1遺伝子を含有する遺伝子改変型の動物細胞」は、突然変異型α2/δ1遺伝子を含有するように遺伝子工学によって形成されたヒト細胞を含む動物細胞、並びに、突然変異型α2/δ1遺伝子を受け継いだ娘細胞を意味する。「突然変異型α2/δ2遺伝子を含有する遺伝子改変型の動物細胞」は、突然変異型α2/δ2遺伝子を含有するように遺伝子工学によって形成されたヒト細胞を含む動物細胞、並びに、突然変異型α2/δ2遺伝子を受け継いだ娘細胞を意味する。これらの細胞は、当業者に知られた任意の標準法に従って、培養中で遺伝子改変することができる。培養における遺伝子改変とは別に、α2/δ1遺伝子破壊形を含有する遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物から分離することもできる。本発明の動物細胞は、一次細胞又は組織調製物、並びに培養適合型の発癌性又は形質転換済細胞系から得ることができる。これらの細胞及び細胞系は、内皮細胞、上皮細胞、島細胞、ニューロン、及び他の神経組織由来の細胞、中皮細胞、骨細胞、リンパ球、軟骨細胞、造血性細胞、免疫細胞、主要な腺又は器官(例えば睾丸、肝臓、肺、心臓、胃、脾臓、腎臓及び皮膚)の細胞、筋細胞(骨格筋、平滑筋、及び心筋に由来する細胞を含む)、外分泌細胞又は内分泌細胞、線維芽細胞、及び胚幹細胞、及びその他の全能性又は多能性幹細胞(例えばES細胞、ES様細胞、及び胚生殖系列(EG)細胞、及びその他の幹細胞、例えば前駆細胞及び組織由来幹細胞)に由来する。好ましい遺伝子改変型細胞は、ES細胞、より好ましくはマウス又はラットES細胞、最も好ましくはヒトES細胞である。
【0048】
「α2/δ1活性の低減」とは、細胞内の機能性α2/δ1ポリペプチドのレベルの低減を引き起こすα2/δ1遺伝子の遺伝子操作の結果として、α2/δ1タンパク質のα2/δリガンド結合活性が減少することを意味する。「α2/δ2活性の低減」とは、細胞内の機能性α2/δ2ポリペプチドのレベルの低減を引き起こすα2/δ2遺伝子の遺伝子操作の結果として、α2/δ2タンパク質のα2/δリガンド結合活性が減少することを意味する。1実施態様の場合、α2/δ1及び/又はα2/δ2活性の低減は、R217A又はR290A突然変異の結果として、ギャバペンチン結合活性が低減することに関連する。
【0049】
「ES細胞」又は「ES様細胞」は、胚、始原生殖細胞、又は奇形癌に由来する多能性幹細胞であって、無限の自己再生が可能なもの、並びに3つの全ての胚細胞層を表す細胞タイプへの分化が可能なものを意味する。
【0050】
下記詳細な説明、及び特許請求の範囲から、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。本発明を特定の実施態様に関連して説明するが、言うまでもなく、実施可能な他の変化及び改変も本発明の一部であり、また添付の特許請求の範囲内に含まれる。この出願の範囲は、本発明の原理に概ね従った本発明の任意の等価、変更、使用又は適応に及ぶものとし、このような等価、変更、使用又は適応は、当業者に周知又は習慣的な実施範囲にあり、過度の試験なしに確認することができる、本開示内容から出発するものを含む。核酸及びポリペプチドの形成及び使用に関する付加的な指針は、分子生物学、タンパク質科学、及び免疫学の標準的テキストに見いだされる(例えば、Davis他、Basic Methods in Molecular Biology, Elsevir Sciences Pulishing, Inc., New York, NY, 1986; Hames他、Nucleic Acid Hybridization, IL Press, 1985; Molecular Cloning, Sambrook他、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel他編、John Wiley and Sons; Current Protocols in Human Genetics, Dracopoli他編、John Wiley and Sons; Current Protocols in Protein Science, John E. Coligan他編、John Wiley and Sons; 及びCurrent Protocols in Immunology, John E. Coligan他編、John Wiley and Sons参照)。本明細書中に言及された特許出願公開明細書及び特許明細書を含む全ての刊行物全体を、参考のため本明細書中に引用する。
【0051】
発明の詳細な説明
破壊されたα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を含有する、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、又は動物細胞が提供される。遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及びヒト細胞を含む本発明の遺伝子改変型の動物細胞は、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を破壊する改変に関してヘテロ接合性又はホモ接合性である。動物細胞は、培養において遺伝子工学により細胞を作り出すことにより誘導することができ、或いは、非ヒト哺乳動物細胞の場合、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物から細胞を分離することができる。
【0052】
本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞は、α2/δ1作用の生理学的役割をさらに定義すること;α2/δ1リガンドとその結合部位との結合に関連した治療の影響をさらに定義すること;これらの突然変異型動物をリガンドで処理し、そして化合物がまだ有効であるかどうか、且つ/又は同じ特徴を維持しているかどうかを決定することにより、in vivoでのα2/δリガンドの作用メカニズムをさらに試験すること;α2/δリガンドの効果を媒介することへのα2/δ1ポリペプチドの相対的な関与を決定すること;化合物のα2/δサブタイプ選択性を決定するために化合物をプロファイルすること;α2/δリガンドが関与するシグナル伝達経路を同定すること;神経障害性疼痛、不安、鬱、統合失調症、双極性疾患及びその他の疾患を含む疾患過程におけるα2/δの役割を試験すること;心臓血管疾患過程におけるα2/δの役割を試験すること;及び、突然変異型トランスジェニック動物を他の動物と、好ましくはその他のα2/δ突然変異型動物と交配させることにより、これらの突然変異型トランスジェニック動物を育種中間体として使用すること;そして、α2/δ活性に影響を及ぼす上でのロイシンの役割を決定すること、に関して有用である(Brown JP他, Dissanayake VU, Briggs AR, Milic MR, Gee NS(1998) Anal Biochem. Jan 15; 255(2):236-43)。
【0053】
本発明の哺乳動物及び動物細胞はさらに、動物細胞中のα2/δ1活性が低減された結果として、改変された発現を示す1つ又は2つ以上の遺伝子を同定すること、動物細胞中のα2/δ1活性が低減された結果として、改変された発現又は翻訳後改変を示す1つ又は2つ以上のタンパク質を同定すること、野生型動物に対して、α2/δ1媒介性障害又は活性における応答が改変されたトランスジェニック動物を作り出すこと、疾患又は活性に対する化合物の生理的効果が、α2/δリガンドの生理学的効果を媒介するα2/δ1サブユニット・ポリペプチド残基に関与するかどうかを決定すること、化合物が、ギャバペンチンと同じα2/δ1サブユニット・ポリペプチド残基を介して疾患又は活性にその生理学的効果を与えるかどうかを決定すること、α2/δ1サブユニット・ポリペプチド残基を通して疾患又は活性にその生理学的効果を与える化合物を同定すること、及び活性又は疾患におけるα2/δ1ポリペプチドの1つ又は2つ以上の役割を決定すること、に関して有用である。
【0054】
R290A様突然変異を含む本発明の哺乳動物及び動物細胞はさらに、α2/δ2作用の生理学的役割をさらに定義すること;α2/δ2リガンドとその結合部位との結合に関連した治療の影響をさらに定義すること;α2/δリガンドの効果を媒介することへのα2/δ2ポリペプチドの相対的な関与を決定すること;運動失調及びてんかんを含む疾患過程におけるα2/δ2の役割を試験すること;及び、突然変異型トランスジェニック動物を他の動物と、好ましくはα2/δ1突然変異体を含むその他のα2/δ突然変異型動物と交配させることにより、これらの突然変異型トランスジェニック動物を育種中間体として使用すること;そして、α2/δ活性に影響を及ぼす上でのロイシンの役割を決定すること、に関して有用である(Brown JP他(1998) Anal Biochem. Jan 15; 255(2):236-43)。
【0055】
本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出すために、当業者に知られた遺伝子改変技術を用いて、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子座を突然変異させることができる。これらの技術は化学的突然変異誘発(Rinchik, Trends in Genetics 7: 15-21, 1991, Russell, Environmental & Molecular Mutagenesis 23(Suppl. 24): 23-29, 1994)、放射線照射(Russell、前出)、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子アンチセンスRNAの単独、又は触媒RNAリボザイム配列との組み合わせにおけるトランスジェニック発現(Luyckx他、Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 12174-79, 1999; Sokol他、Transgenic Research 5: 363-71, 1996; Efrat他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 2051-55, 1994; Larsson他、Nucleic Research 22: 2242-48, 1994)及び、さらに下で論じるような、α2/δ1遺伝子座内に外来核酸配列を挿入することによりα2/δ1遺伝子を破壊すること(Wattler他、BioTechniques 26:1150-1160, 1999)を含む。1実施態様の場合、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子は、外来核酸配列の挿入によって、より好ましくは相同的組換えによって、又はウィルス・ベクターの挿入によって突然変異される。別の実施態様の場合、遺伝子破壊は相同的組換えであり、内生的α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子配列の一部を欠失させることを含む。
【0056】
外来配列の組込みは、下記メカニズム:それぞれの遺伝子転写又は翻訳プロセスを妨害すること(例えばプロモーター認識を妨害すること、又はα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子中に転写終止部位又は翻訳終止コドンを導入すること);それぞれの遺伝子コーディング配列を、これが正常な機能を有するα2/δポリペプチドをもはやコードしないように歪めること(例えばα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子コーディング配列内に外来コーディング配列を挿入すること、フレームシフト突然変異又はアミノ酸置換を導入すること、又は二重クロスオーバー事象の場合、機能性タンパク質の発現に必要なそれぞれの遺伝子コーディング配列の一部を欠失させること)、のうちの1つ又は2つ以上によって、α2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子を破壊する。
【0057】
この説明に基づいて本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出すために、細胞のゲノム中のα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子座内に外来配列を挿入する際には、外来DNA配列は、当業者に知られた標準的な方法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈澱、レトロウィルス感染、マイクロインジェクション、バイオリスティクス、リポソーム・トランスフェクション、DEAE-デキストラン・トランスフェクション、又はトランスファーインフェクションに従って、細胞内に導入される(例えばNeumann他、EMBO J. 1:841-845, 1982; Potter他、Proc. Natl. Acad. Sci USA 81: 7161-65, 1984; Chu他、Nucleic Acids Res. 15: 1311-26, 1987; Thomas及びCapecchi, Cell 51; 503-12, 1987; Baum他、Biotechniques 17: 1058-62, 1994; Biewenga他、J. Neuroscience Methods 71; 67-75, 1997; Zhang 他、Biotechniques 15: 868-72, 1993; Ray及びGage, Biotechniques 13: 598-603, 1992; Lo, Mol. Cell. Biol. 3: 1803-14, 1983; Nickoloff他、Mol. Biotech. 10:93-101, 1998; Linney他、Dev. Biol. (Orlando)213: 207-16, 1999; Zimmer及びGruss, Nature 338: 150-153, 1989; 及びRobertson他(Nature 323:445-48, 1986参照)。細胞内への外来DNAの好ましい導入法は、エレクトロポレーションである。
【0058】
1. 相同的組換え
相同的組換え法は、α2/δ遺伝子を含有する細胞中にα2/δ遺伝子標的ベクターを導入することにより、α2/δ遺伝子を破壊の標的とする。ベクターは、それぞれに遺伝子に対して相同のベクター内のヌクレオチド配列を使用して、α2/δ1又はα2/δ2遺伝子を標的とする。この相同領域は、ベクターとα2/δ遺伝子の内生的配列とのハイブリッド形成を容易にする。ハイブリッド形成時には、標的ベクターとゲノム配列との間のクロスオーバー事象の確率が大幅に増大する。このようなクロスオーバー事象は結果として、α2/δ1又はα2/δ2遺伝子座内にベクター配列を組込み、そしてそれぞれの遺伝子を適切に機能破壊する。
【0059】
標的を定めるために使用されるベクターの構造に関する一般原理は、Bradley他(Biotechnol. 10:534, 1992)及びWattler他(BioTechniques 26:1150-1160, 1999)に概説されている。相同的組換えによってDNAを挿入するように使用することができる2つのタイプのベクターは、挿入ベクター及び置換ベクターである。相同的組換えによって本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を調製するための好ましいベクターは、置換ベクターである。
【0060】
挿入ベクターは、二本鎖切断部位を有するα2/δ遺伝子相同領域を含む環状DNA分子である。相同領域と内生的α2/δ遺伝子とのハイブリッド形成に続いて、二本鎖切断部位における単一のクロスオーバー事象の結果、クロスオーバー部位で、内生的遺伝子内にベクター配列全体が挿入されることになる。
【0061】
置換ベクターは環状ではなく線状である。α2/δ遺伝子内への置換ベクターの組込みは、二重クロスオーバー事象、すなわち、標的ベクターとα2/δ遺伝子との2つのハイブリッド形成部位でクロスオーバーすることを必要とする。この二重クロスオーバー事象の結果、2つのクロスオーバー部位間にサンドイッチされたベクター配列がα2/δ遺伝子内に組込まれ、そして元は2つのクロスオーバー間にまたがっていた対応する内生的α2/δ遺伝子配列が欠失させられる(例えば、Thomas及びCapecchi他、Cell 51: 503-12, 1987; Mansour他、Nature 336: 348-52, 1988; Mansour他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 7688-7692, 1990;及びMansour, GATA 7:219-227, 1990参照)。
【0062】
本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出すために使用される標的ベクター内の相同領域は、一般に最小100ヌクレオチド長である。より好ましくは、相同領域は、最小1〜5キロベース長である。相同領域のために必要な最小長さ又は最小類似度は立証されていないが、相同的組換えのための標的効率は、標的ベクターとα2/δ1遺伝子座との間の長さ及び類似度と合致する。置換ベクターが使用され、また内生的α2/δ1遺伝子の一部が相同的組換え時に欠失させられる場合、内生的α2/δ1遺伝子の欠失部分のサイズが付加的に考慮される。内生的α2/δ1遺伝子のこの欠失部分が1 kb長よりも大きい場合、1 kbよりも長い相同領域を有する標的カセットが、組換え効率を高めるために推奨される。この説明に基づいた、相同的組換えに効果的な配列の選択及び使用に関する更なる指針は、文献に記載されている(例えばDeng及びCapecchi, Mol. Cell. Biol. 12: 3365-3371, 1992; Bollag他、Annu. Rev. Genet. 23: 199-225, 1989;及びWaldman及びLiskay, Mol. Cell. Biol. 8:5350-5357, 1988参照)。
【0063】
本発明に基づいて当業者には明らかなように、本発明のα2/δ1及び/又はα2/δ2遺伝子の構造内のベクター・バックボーンとして、種々多様なクローニング・ベクターを使用することができる。これらのベクターは、pブルースクリプト関連プラスミド(例えばブルースクリプトKS+11)、pQE70、pQE60、pQE-9、pBS、pD10、ファージスクリプト、phiX174、pBKファージミド、pNH8A、pNH16A、pNH18Z、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、及びpRIT5 PWLNEO、pSV2CAT、pXT1、pSG(Stratagene)、pSVK3、PBPV、PMSG及びpSVL、pBR322及びpBR322系ベクター、pMB9、pBR325、pKH47、pBR328、pHC79、ファージCharon 28, pKB11、pKSV-10、pK19関連プラスミド、pUCプラスミド、及びプラスミドのpGEMシリーズを含む。これらのベクターは、種々の商業的供給元から入手可能である(例えばBoehringer Mannheim Biochemicals, Indianapolis, IN; Qiagen, Valencia, CA; Stratagene, La Jolla, CA; Promega, Madison, WI;及びNew England Biolabs, Beverly, MA)。しかし、任意のその他のベクター、例えばプラスミド、ウィルス、又はこれらの一部を、これらが所望の宿主中で複製可能且つ生存可能である限り使用することもできる。ベクターは、改変されるべきゲノムを有する宿主中でベクターを複製することができる配列を含んでいてもよい。このようなベクターの使用は、組換えが発生し得る相互作用時間を延長し、標的効率を増大させることができる(Molecular Biology、Ausubel他、ユニット9.16、図9.16.1参照)。
【0064】
本発明の標的ベクターを増殖させるために、どのような具体的な宿主を採用するかはさほど重大ではない。一例としては、E.coli K12 RR1(Bolivar他、Gene 2:95, 1977)、E.coli K12 HB101(ATCC No. 33694)、E.coli MM21(ATCC No. 336780)、E.coli DH1(ATCC No. 33849)、E.coli株DH5α、及びE.coli STBL2が挙げられる。或いは、宿主、例えばC. cerevisiae又はB. subtilisを使用することもできる。上述の宿主は商業的に入手可能である(例えばStratagene, La Jolla, CA;及びLife Technologies, Rockville, MD)。
【0065】
標的ベクターを形成するために、α2/δ遺伝子標的構造をベクター・バックボーン、例えば上述のようなベクター・バックボーンに加える。本発明のα2/δ遺伝子標的構造は、1つ以上のα2/δ遺伝子相同領域を有する。α2/δ遺伝子相同領域を形成するために、α2/δゲノム配列又はcDNA配列が、PCRプライマーを生成するための基礎として使用される。これらのプライマーは、高忠実度PCR増幅によってα2/δ1又はα2/δ2配列の所望の領域を増幅するために使用される(Mattila他、Nucleic Acids Res. 19: 4967, 1991; Eckert及びKunkel 1: 17, 1991;及び米国特許第4,683,202号明細書)。ゲノム配列は、ゲノム・クローン・ライブラリから、又はゲノムDNAの調製から得られ、好ましくは、α2/δ1遺伝子破壊のための標的にされるべき動物種から得られる。それぞれの標的ベクターを形成する上で、α2/δ1又はα2/δ2 cDNA配列を使用することができる(例えばGenbank U22445(マウス)、Genbank M95936(ヒト)、Genbank D30041(ラット)、Genbank AF181260(メンドリ)、BG410200(ゼノパス))。
【0066】
1実施態様の場合、本発明の標的構造はまた、正のマーカータンパク質をコードする外生的ヌクレオチド配列を含む。ベクター組込み後に正のマーカーが安定的に発現されることにより、理想的には細胞生存可能性を犠牲にすることなしに、細胞に同定可能な特徴が付与される。従って、置換ベクターの場合、マーカー遺伝子は2つのフランキング相同領域の間に位置決めされる。この位置決めは、マーカー遺伝子を二重クロスオーバー事象に続いてα2/δ遺伝子内に組込むことにより、マーカー遺伝子が組込み後に発現するように位置するように行われる。
【0067】
別の実施態様の場合、正のマーカータンパク質は、選択可能な表現型特徴、例えば他の致死的条件下で細胞の生き残りを促進する特徴を付与する。こうして、選択可能な条件を課すことにより、生存可能性に基づくベクター配列をうまく組込んでいない他の細胞から、正の選択可能マーカーをコードするベクター配列を安定して発現させる細胞を分離することができる。正の選択可能マーカータンパク質(及びこれらの選択物質)の例は、neo(G418又はカノマイシン)、hyg(ヒグロマイシン)、hisD(ヒスチジノール)、gpt(キサンチン)、ble(ブレオマイシン)、及びhprt(ヒポキサンチン)を含む(例えばCapecchi及びThomas、米国特許第5,464,764号明細書、及びCapecchi, Science 244: 1288-92, 1989参照)。選択可能マーカーの代替物として使用可能な他の正のマーカーは、レポータータンパク質、例えばβ-ガラクトシダーゼ、蛍光発光、又はGFPを含む(例えばCurrent Protocols in Cytometry、ユニット9.5、及びCurrent Protocols in Molecular Biology、ユニット9.6、John Wiley & Sons, New York, NY, 2000参照)。
【0068】
上述の正の選択ステップは、任意の染色体位置内へのベクター配列のランダムな非相同的組込みと対比して、α2/δ遺伝子座に標的を定めた相同的組換えによってベクターを組込んだ細胞相互間を区別することはない。従って、本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出す相同的組換えのために置換ベクターを使用する場合、負の選択可能マーカータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むことも好ましい。負の選択可能マーカーの発現により、マーカーを発現させる細胞は、或る特定の物質に晒されたときに生存可能性を失うことになる(すなわち、マーカータンパク質は、その細胞に対して致死的なものになる)。負の選択可能マーカー(及びこれらの致死性物質)の例は、単純ヘルペスウィルス・チミジンキナーゼ(ガンシクロビル又は1,2-デオキシ-2-フルオロ-α-d-アラビノフラノシル-5-ヨードウラシル)、Hprt(6-チオグアニン又は6-チオキサンチン)、及びジフテリア毒素、リシン毒素、及びシトシンデアミナーゼ(5-フルオロシトシン)を含む。
【0069】
負の選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列は、置換ベクターの2つの相同領域の外側に位置決めされる。この位置決めを前提とすると、組込みがランダムな非相同的組換えによって生じる場合、細胞は負の選択可能マーカーを組込み、これを安定的に発現させるだけとなり、α2/δ遺伝子と、標的構造内の2つの相同領域との間の相同的組換えは、組込みから負の選択可能マーカーをコードする配列を排除する。従って負の条件を課すことにより、ランダムな非相同的組換えによって標的ベクターを組込んだ細胞は、生存能力を失う。
【0070】
正及び負の選択可能マーカーの上述の組み合わせは、本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出すために使用される標的構造において好ましい。なぜならば、相同的組換えによってベクターを組込まれた細胞だけをより効率的に選択し、ひいては、潜在的に突然変異型のα2/δ遺伝子を有するように、一連の正及び負の選択ステップを設計することができるからである。正-負選択スキーム、選択マーカー、及び標的コンストラクトの更なる例が、米国特許第5,464,764号明細書、国際公開第94/06908号パンフレット(米国特許第5,859,312号明細書として米国内で発行済)、及びValancius及びSmithies, Mol. Cell. Biol. 11:1402, 1991に記載されている。
【0071】
マーカータンパク質がベクター組込み時に安定的に発現されるようにするために、マーカー・コード配列がベクター組込み時に内生的α2/δ遺伝子プロモーターと作用連関するように、標的ベクターを設計することができる。次いで、通常の場合α2/δ遺伝子を発現させる細胞中のα2/δ遺伝子プロモーターによって、マーカーの発現を推進する。或いは、ベクターの標的構造における各マーカーが、それ自体のプロモーターを含有し、そのプロモーターがα2/δ遺伝子プロモーターとは独立して発現を推進することもできる。この後者のスキームの利点は、典型的にはα2/δ遺伝子を発現させない細胞中でのマーカーの発現を可能にすることである(Smith及びBerg, Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 49: 171, 1984; Sedivy及びSharp, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA)86: 227, 1989; Thomas及びCapecchi, Cell 51:503, 1987)。
【0072】
マーカー遺伝子発現を推進するために使用することができる外生的プロモーターは、細胞特異的又は発生段階特異的プロモーター、構成的プロモーター、及び誘発可能且つ調節可能なプロモーターを含む。これらのプロモーターの一例としては、単純ヘルペス・チミジンキナーゼ・プロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター/エンハンサー、SV40プロモーター、PGKプロモーター、PMC1-ネオ、メタロチオネイン・プロモーター、アデノウィルス後期プロモーター、ワクシニア・ウィルス7.5Kプロモーター、トリ・ベータグロブリン・プロモーター、ヒストン・プロモーター(例えばマウス・ヒストンH3-614)、ベータアクチン・プロモーター、ニューロン特異的エノラーゼ、筋アクチン・プロモーター、及びカリフラワー・モザイクウィルス35Sプロモーター(一般的にSambrook他、Molecular Cloning, 第1-III巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989、及びCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiely & Sons, New York, NY, 2000; Stratagene, La Jolla, CA参照)が挙げられる。
【0073】
本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出す間に、細胞が、ベクター配列を標的α2/δ遺伝子座内に組込んだかどうかを確認するために、所望のベクター組込み事象に対して特異的なプライマー又はゲノム・プローブを、PCR又はサザン・ブロット分析と組み合わせて使用することにより、α2/δ1遺伝子座内への所望のベクター組込みを同定することができる(Erlich他、Science 252: 1643-51, 1991; Zimmer及びGruss, Nature 338: 150, 1989; Mouellic他、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)87: 4712, 1990;及びShesely他、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 88:4294, 1991)。
【0074】
3. 遺伝子トラッピング
この説明に基づいて、α2/δ遺伝子座内に外来核酸配列を挿入することによりα2/δ遺伝子を破壊するための利用可能な別の方法は、遺伝子トラッピングである。この方法は、遺伝子内に遺伝子トラップ・ベクターをコードする配列を挿入するために、エクソンをスプライスしてmRNAにする、全ての哺乳動物細胞内に存在する細胞機構を利用する。遺伝子トラップ・ベクターは挿入されると、トラップされたα2/δ遺伝子を破壊することができる突然変異形を形成する。相同的組換えと異なり、この突然変異生成系は、概ねランダムな突然変異を形成する。こうして、突然変異型α2/δ遺伝子を含有する遺伝子改変型細胞を得るために、この特定の突然変異を含有する細胞は、種々の遺伝子におけるランダムな突然変異を含有する細胞のプールから同定して選択しなければならない。
【0075】
マウス細胞及びその他の細胞タイプを遺伝子改変する際に使用するために、遺伝子トラッピング系及びベクターが記載されている(例えばAllen他、Nature 333: 852-55, 1988; Bellen他、Genes Dev. 3: 1288-1300, 1989; Bier他、Genes Dev. 3:1273-1287, 1989; Bonnerot他、J. Virol. 66: 4982-91, 1992; Brenner他、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:5517-21, 1989; Chang他、Virology 193: 737-47, 1993; Friedrich及びSoriano, Methods Enzymol. 225: 681-701, 1993; Friedrich及びSoriano, Genes Dev. 5: 1513-23, 1991; Goff, Methods Enzymol. 152: 469-81, 1987; Gossler他、Science 244: 463-65, 1989; Hope, Develop. 113: 399-408, 1991; Kerr他、Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 2: 767-776, 1989; Reddy他、J. Virol. 65: 1507-1515, 1991; Reddy他、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 6721-25, 1992; Skarnes他、Genes Dev. 6: 903-918, 1992; von Melchner及びRuley, J. Virol. 63: 3227-3233, 1989;及びYoshida他、Trangen. Res.4: 277-87, 1995参照)。
【0076】
プロモーター・トラップ・ベクター(又は5'ベクター)は、5'から3'への順で、スプライス受容体配列に続いてエクソンを含有する。エクソンは典型的には、翻訳開始コドン、及びオープン・リーディング・フレーム及び/又は内部リボソーム侵入部位によって特徴付けられる。一般には、これらのプロモーター・トラップ・ベクターは、プロモーター又は作用連関されたスプライス・ドナー配列を含有しない。結果として、宿主細胞の細胞ゲノム内への組込み後、プロモーター・トラップ・ベクター配列は、上流の遺伝子の正常なスプライシングを妨害し、末端エクソンとして作用する。ベクター・コーティング配列の発現は、適正なリーディング・フレーム内の突然変異型遺伝子のイントロン内へのベクター組込みに依存する。このような場合、細胞スプライシング機構は、ベクター・コーティング配列の上流側のトラップ遺伝子からエキソンをスプライスする(Zambrowicz他、国際公開第99/50426号パンフレット、及び米国特許第6,080,576号明細書)。上述のプロモーター・トラップ・ベクターと同様の効果をもたらす別の方法は、プロモーター・トラップ・ベクターのスプライス受容体と、翻訳開始コドン又はポリアデニル化配列との間の領域内に存在する、又はこの領域内にその他の形式で作り出された入れ子式ストップ・コドン集合を組込むベクターである。コーディング配列は、独立したリボソーム侵入部位(IRES)を含有するように遺伝子工学的に形成することもでき、これにより、コーティング配列は、宿主細胞ゲノム内部の組込み部位とは概ね無関係に発現される。必ずしも必要ではないが、典型的には、IRESは、入れ子式のストップコドン集合と関連して使用される。
【0077】
別のタイプの遺伝子トラッピング・スキームは3'遺伝子トラップ・ベクターを使用する。このタイプのベクターは、作用上の組み合わせにおいて、プロモーター領域を含有する。このプロモーター領域は、隣接コーディング配列、コーディング配列、及びコーディング配列エクソンの3'末端を定義するスプライス供与体配列の発現を媒介する。宿主細胞ゲノム内への組込み後、ベクター・プロモーターによって発現された転写物は、組込まれた遺伝子トラップ・ベクター配列の下流に配置されたトラップ遺伝子から、スプライス受容体配列にスプライスされる。こうして、ベクターの組込みの結果、3'遺伝子トラップ・カセットのコーディング配列と、末端エクソン及びそのポリアデニル化シグナルを含む任意の下流細胞エクソンとを含む融合転写物が発現される。このようなベクターが遺伝子内に組込まれると、細胞スプライシング機構は、トラップ遺伝子の3'エクソンの上流のベクター・コーディング配列をスプライスする。このようなベクターの1つの利点は、3'遺伝子トラップ・ベクターの発現が、遺伝子トラップ・カセット内のプロモーターによって推進され、そして宿主細胞内に通常発現される遺伝子内への組込みを必要としないことである(Zambrowicz他、国際公開第99/50426号パンフレット及び米国特許第6,080,576号明細書)。3'遺伝子トラップ・ベクター内に組込むことができる転写プロモーター及びエンハンサーの例は、標的ベクターに関して上述したものを含む。
【0078】
プロモーター又は3'遺伝子トラップ・ベクターのための構造成分として使用されるウィルス・ベクター・バックボーンは、標的細胞のゲノム内に挿入することができる広範囲のベクターから選択することができる。好適なバックボーン・ベクターの一例としては、単純ヘルペス・ウィルス・ベクター、アデノウィルス・ベクター、アデノ随伴ウィルス・ベクター、レトロウィルス・ベクター、仮性狂犬病ウィルス、アルファ-ヘルペス・ウィルス・ベクターなどが挙げられる。ウィルス・ベクター、特に、非複製性細胞を改変するのに適したウィルス・ベクター、及びこのようなベクターを外生的なポリヌクレオチド配列の発現とともにいかにして使用するかに関する詳細な概説は、Viral Vectors; Gene Therapy and Neuroscienece Application, Caplitt及びLoewy編、Academic Press, San Diego, 1995に見いだすことができる。
【0079】
1実施態様の場合、遺伝子トラッピングのためにレトロウィルス・ウィルスが使用される。これらのベクターは、米国特許第5,449,614号明細書に記載されているようなレトロウィルス・パッケージング細胞系とともに使用することができる。遺伝子改変のための標的細胞としてマウス以外の哺乳動物細胞を使用する場合、両種性又は汎親和性パッケージング細胞系を使用して、好適なベクターをパッケージングすることができる(Ory他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11400-11406, 1996)。上記3'遺伝子トラップ・ベクターを形成するために適合することができる代表的なレトロウィルス・ベクターは、例えば米国特許第5,521,076号明細書に記載されている。
【0080】
遺伝子トラッピング・ベクターは、相同的組換えのために使用される標的ベクターに関して上述した正のマーカー遺伝子のうちの1つ又は2つ以上を含有することができる。標的ベクターにおける使用と同様に、これらの正のマーカーは、細胞ゲノム内にベクターを組込んだ細胞を同定して選択するために、遺伝子トラッピング・ベクター内で使用される。マーカー遺伝子は、独立したリボソーム侵入部位(IRES)を含有するように遺伝子工学的に作り出すことができるので、マーカーは、ベクターが標的細胞ゲノム内に組込まれた箇所とは概ね無関係に発現されることになる。
【0081】
遺伝子トラップ・ベクターが極めてランダムに感染済宿主細胞のゲノム内に組込まれるとすると、突然変異型α2/δ遺伝子を有する遺伝子改変型細胞を、ランダムにベクターを組込まれた細胞の個体群から同定しなければならない。好ましくは、細胞個体群における遺伝子改変形は十分なランダム性と頻度とを有しているので、この個体群は、事実上細胞のゲノム内に見いだされる遺伝子毎に突然変異を示し、突然変異型α2/δ遺伝子を有する細胞が個体群から同定されやすくする(Zambrowicz他、国際公開第99/50426号パンフレット;Sands他、国際公開第98/14614号パンフレット、及び米国特許第6,080,576号明細書参照)。
【0082】
突然変異型α2/δ遺伝子を含有する個々の突然変異型細胞系を、例えば逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、突然変異型細胞個体群内で同定することにより、α2/δ1遺伝子配列内の突然変異を同定する。このプロセスは、クローンをプールすることにより能率化することができる。例えば、突然変異型α2/δ遺伝子を含有する個々のクローンを見いだすために、遺伝子トラップ・ベクター内に固定された一方のプライマーと、α2/δ1遺伝子配列内に配置された他方のプライマーとを使用して、RT-PCRを実施する。正のRT-PCR結果は、ベクター配列がα2/δ1遺伝子転写物内にコードされていることを示し、α2/δ遺伝子が遺伝子トラップ組込み事象によって突然変異されていることを示す(Sands他、国際公開第98/14614号パンフレット、及び米国特許第6,080,576号明細書参照)。
【0083】
4. 時間的、空間的及び誘発可能なα2/δ遺伝子破壊
本発明の或る実施態様の場合、内生的α2/δ遺伝子の機能破壊は、特定の発育段階又は細胞周期段階(時間的破壊)、又は特定の細胞タイプ(空間的破壊)で発生する。他の実施態様の場合、或る特定の条件が存在する場合、α2/δ1遺伝子破壊が誘発可能である。リコンビナーゼ切除系、例えばCre-Lox系を使用することにより、特定の発育段階で、又は特定の組織又は細胞タイプにおいて、又は特定の環境条件下でα2/δ遺伝子を活性化又は不活性化することができる。一般に、Cre-Lox技術を利用した方法は、Torres及びKuhn, Laboratory Protocols for Conditional Gene Targeting, Oxford University Press, 1997によって記載されているように実施される。Cre-Lox系に関して記載されたものと類似の方法を、FLP-FRT系を利用して採用することもできる。相同的組換え又はウィルス挿入によって遺伝子を条件付きで破壊するためのリコンビナーゼ切除系の使用に関する更なる指針が、例えば米国特許第5,626,159号明細書、同第5,527,695号明細書、同第5,434,066号明細書、国際公開第98/29533号パンフレット、米国特許第6,228,639号明細書、Orban他、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 89:6861-65, 1992; O'Gorman他、Science 251:1351-55, 1991; Sauer他、Nucleic Acids Research 17: 147-61, 1989; Barinaga, Scinece 265:26-28, 1994; 及びAkagi他、Nucleic Acids Res. 25: 1766-73, 1997に提供されている。2つ以上の系を使用することにより、本発明の非ヒト哺乳動物、又は動物細胞を遺伝子改変することができる。
【0084】
リコンビナーゼ系、例えばCre-Lox系を使用して、時間的、空間的及び誘発可能にα2/δ1遺伝子を破壊するために、相同的組換えを用いる場合、α2/δ遺伝子コーディング領域の一部が、loxP部位によってフランキングされたα2/δ遺伝子コーディング領域を含む標的構造によって置換される。この遺伝子改変を担持する非ヒト哺乳動物、及び動物細胞は、loxP部位によってフランキングされた機能性α2/δ遺伝子を含有する。α2/δ遺伝子破壊の時間的、空間的及び誘発可能な特徴は、付加的なトランス遺伝子、Creリコンビナーゼ・トランス遺伝子の発現パターンによってもたらされる。このトランス遺伝子は、それぞれ所望の空間的に調節されたプロモーター、時間的に調節されたプロモーター、又は誘発可能なプロモーターの制御下で、非ヒト哺乳動物、又は動物細胞中に発現される。Creリコンビナーゼは、組換えのためにloxP部位を標的とする。従って、Cre発現が活性化されると、loxP部位は組換えられることにより、サンドイッチされたα2/δ遺伝子コーディング配列を切除し、その結果、α2/δ1遺伝子を機能破壊する(Rajewski他、J. Clin. Invest. 98: 600-03, 1996; St.-Onge他、Nucleic Acids Res. 24: 3875-77, 1996; Agah他、J. Clin. Invest. 100: 169-79, 1997; Brocard他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 14559-63, 1997; Feil他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 10887-90, 1996;及びKuehn他、Science 269: 1427-29, 1995)。Creリコンビナーゼ・トランス遺伝子と、loxP部位でフランキングされたα2/δ1遺伝子との両方を含有する細胞は、標準的なトランスジェニック技術によって発生させることができ、或いは、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物の場合、一方の親がloxP部位でフランキングされたα2/δ1遺伝子を含有し、また他方の親が所望のプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼ・トランス遺伝子を含有する、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を交雑させることにより、発生させることができる。時間的、空間的に又は条件付きでα2/δ1遺伝子を破壊するために、リコンビナーゼ系及び特異的プロモーターを使用することに関する更なる指針は、例えば、Sauer, Meth. Enz. 225: 890-900, 1993, Gu他、Science 265: 103-06, 1994, Araki他、J. Biochem. 122: 977-82, 1997, Dymecki, Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 6191-96, 1996、及びMeyers他、Nature Genetics 18: 136-41, 1998に見いだされる。
【0085】
テトラサイクリン応答2進法(Gossen及びBujard, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 5547-51, 1992)を使用することにより、α2/δ遺伝子の誘発性破壊を達成することもできる。この系は、細胞を遺伝子改変することにより、内生的α2/δ1遺伝子調節要素、及び、テトラサイクリンで制御可能なリプレッサー(TetR)を発現させるトランス遺伝子内に、Tetプロモーターを導入することに関与する。このような細胞において、テトラサイクリンの投与はTetRを活性化し、TetRは、α2/δ1遺伝子発現を阻害し、ひいてはα2/δ遺伝子を破壊する(St.-Onge他、Nucleic Acid Res. 24: 3875-77, 1996, 米国特許第5,922,927号明細書)。
【0086】
α2/δ遺伝子の時間的、空間的及び誘発可能な破壊のための上記系は、本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞を作り出すために、例えば国際公開第98/29533号パンフレット及び米国特許第6,288,639号明細書に記載されているように、遺伝子改変法として遺伝子トラッピングを用いる場合に、採用することもできる。
【0087】
5. 遺伝子改変型動物細胞の調製
上記の遺伝子改変方法を用いて、動物に由来する事実上任意のタイプの体細胞又は幹細胞におけるα2/δ遺伝子を破壊することにより、本発明の遺伝子改変型動物細胞を作り出すことができる。本発明の遺伝子改変型動物細胞の一例として、ヒト細胞を含む哺乳動物細胞、及びトリ細胞が挙げられる。これらの細胞は、任意の動物細胞系、例えば培養適合型、発癌性細胞系、又は形質転換型の細胞系から誘導することができ、或いは、所望のα2/δ遺伝子改変形を担持する遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物から分離することができる。細胞は、突然変異型α2/δ遺伝子に関してヘテロ接合性又はホモ接合性であってよい。α2/δ遺伝子破壊に関してホモ接合性の細胞(-/-)を得るために、両対立遺伝子の直接的な連続したターゲッティングを実施することができる。このプロセスは、正の選択可能マーカーを再利用することにより容易にすることができる。このスキームに従って、Cre-Lox P系を使用して1つの対立遺伝子を破壊するのに続いて、正の選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列を除去する。こうして、同じベクターを連続したターゲッティング・ラウンドに使用することにより、第2のα2/δ遺伝子対立遺伝子を破壊することができる(Abuin及びBradley, Mol. Cell. Biol. 16: 1851-56, 1996; Sedivy他、T.I.G. 15: 88-90, 1999; Cruz他、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 88: 7170-74, 1991; Mortensen他、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 88: 7036-40, 1991; te Riele他、Nature (London) 348: 649-651, 1990)。
【0088】
α2/δであるES細胞を得るための別の方法は、特定のα2/δ遺伝子破壊に関してヘテロ接合性である細胞(例えばα2/δ1 +/-, α2/δ2 +/-)の個体群から、細胞をホモゲノート化することである。この方法が用いるスキームにおいて、選択可能な薬物耐性マーカーを発現させる特定のα2/δ+/-標的クローンが、極めて高い薬物濃度に対して選択される。この選択は、薬物耐性マーカーをコードする配列の2つのコピーを発現させる細胞を優先し、従って、α2/δ遺伝子破壊に関してホモ接合性である(Mortensen他、Mol. Cell. Biol. 12: 2391-51, 1992)。加えて、遺伝子改変型動物細胞は、さらに下で論じるように、生殖系列細胞においてα2/δ1 +/-, α2/δ2 +/-であるそれぞれの非ヒト哺乳動物を交配させることにより作り出された遺伝子改変型のα2/δ1 -/-又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物から得ることができる。
【0089】
所望の細胞又は細胞系の遺伝子改変に続いて、α2/δ遺伝子座は、当業者に知られた標準PCR又はサザン・ブロット法に従って、PCR分析によって改変部位として確認することができる(例えば米国特許第4,683,202号明細書;及びErlich他、Science 252: 1643, 1991)。特定のα2/δ遺伝子メッセンジャーRNA(mRNA)レベル及び/又はポリペプチド・レベルが、通常の場合には特定のα2/δ遺伝子を発現させる細胞中で低減される場合、α2/δ遺伝子の機能破壊をさらに検証することもできる。逆転写酵素で媒介されるポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ノーザン・ブロット分析、又はin situハイブリッド形成を用いて、α2/δ遺伝子mRNAレベルの尺度を得ることができる。細胞により生成されたα2/δポリペプチド・レベルは、例えば当業者に知られた標準的な免疫検定法によって量化することができる。このような免疫検定の一例としては、特に限定されないがRIA(放射免疫検定)、ELISA(酵素免疫測定)、「サンドイッチ」免疫検定、免疫放射線検定、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散検定、in situ 免疫検定(例えばコロイド金、酵素標識又は放射線同位体標識を使用する)、ウェスタン・ブロット、二次元ゲル分析、沈降反応、免疫蛍光検査、プロテインA検定、及び免疫電気泳動検定を用いた、競合的及び非競合的検定システムが挙げられる。
【0090】
1実施態様の場合、本発明の遺伝子改変型動物細胞は、胚幹(ES)細胞及びES様細胞である。これらの細胞は、様々の種、例えばマウス(Evans他、Nature 129: 154-156, 1981; Martin, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 78: 7834-7638, 1981)、ブタ及びヒツジ(Notanianni他、J. Reprod. Fert. Suppl., 43:255-260, 1991; Campbell他、Nature 380: 64-68, 1996)、及びヒトを含む霊長類(Thomson他、米国特許第5,843,780号明細書、Thomson他、Science 282; 1145-1147, 1995;及びThomson他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 7844-7848, 1995)の着床前の胚及びの胚盤胞に由来する。
【0091】
これらのタイプの細胞は多能性である。すなわち適切な条件下で、これらの細胞は、3つ全ての胚細胞層:外胚葉、中胚葉、及び内胚葉に由来する多種多様な細胞タイプに分化する。培養条件に応じて、ES細胞試料は、幹細胞として無限に培養し、単一の試料内部で種々様々な異なる細胞タイプに分化させておくか、或いは、特異的な細胞タイプ、例えばマクロファージ様細胞、神経細胞、心筋細胞、軟骨細胞、含脂肪細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、骨格筋細胞、角化細胞、及び造血性細胞、例えば好酸球、肥満細胞、赤血球前駆細胞、又は巨核球に分化するように指向させることができる。例えばKeller他、Curr. Opin. Cell Biol. 7:862-69, 1995, Li他、Curr. Biol. 8: 971, 1998, Klug他、J. Clin. Invest. 98:216-24, 1996, Lieschke他、Exp. Hematol. 23: 328-34, 1995, Yamane他、Blood 90: 3516-23, 1997、及びHirashima他、Blood 93: 1253-63, 1999に記載されているように、培養条件に特異的成長因子又はマトリックス成分を含むことにより、指向性の分化が達成される。
【0092】
遺伝子改変のためにどのような具体的なES細胞系を使用するかは、さほど重大ではない。例えば、マウスES細胞系が使用される本発明の実施態様の場合、このような細胞は、AB-1(McMahon及びBradley, Cell 62: 1073-85, 1990)、E14(Hooper他、Nature 326: 292-95, 1987)、D3(Doetschman他、J. Embryol. Exp. Morph. 87:27-45, 1985)、CCE(Robertson他、Nature 323:445-48, 1986)、RW4(Genome Systems, St. Lousis, MO)、及びDBA/1lacJ(Roach他、Exp. Cell Res. 221: 520-25, 1995)を含むことができる。
【0093】
6. 遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物の調製
本発明の遺伝子改変型動物細胞を用いることにより、本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を調製することができる。1実施態様の場合、本発明の遺伝子改変型ES細胞を使用することにより、公表された手段(Robertson, 1987, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson編、Oxford: IRL Press 第71-112頁, 1987; Zjilstra他、Nature 342:435-438, 1989;及びSchwartberg他、Science 246: 799-803, 1989)に従って、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物を作り出すことができる。
【0094】
好ましい実施態様の場合、前記ES細胞はマウスES細胞(例えば129S6/SvEV)であり、そして前記遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物はマウスである。例えば、このような遺伝子改変型マウスの調製において、α2/δ遺伝子の所望の機能破壊形を含有するマウスES細胞が使用される。使用されるべきマウスES細胞は先ず、上述のように、α2/δ遺伝子の所望の機能破壊形を含有することが確認される。
【0095】
次いで、α2/δ1及び/又はα2/δ2突然変異型ES細胞を使用して、当業者に知られた方法に従ってキメラ・マウスを作り出すことができる(Capecchi, Trends Genet. 5: 70, 1989)。例えば、特定のα2/δ突然変異型ES細胞を、好適な胚盤胞宿主内に注入することができる。本発明の実施においてどのような具体的なマウス胚盤胞を採用するかは、さほど重大ではない。このような胚盤胞の一例は、この説明に照らして当業者には明らかであり、B57BL6マウス、C57BL6アルビノマウス、Swiss異系交配マウス、CFLPマウス、及びMFIマウスに由来する胚盤胞を含む。或いは、ES細胞は、凝集ウェル内で4倍体胚の間にサンドイッチすることができる(Nagy他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA90: 8424-8428, 1993)。
【0096】
遺伝子改変型のES細胞を含有する胚盤胞又は胚を、次いで偽妊娠した雌マウス中に移植し、そして子宮内で発育させておく(Hogan他、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, NY 1988;及びTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson編、IRL Press、Washington, D.C., 1987)。養母に生まれた子孫をスクリーニングすることにより、α2/δ遺伝子破壊に関してキメラであるものを同定することができる。一般に、このような子孫は、遺伝子改変型の供与体ES細胞に由来するいくつかの細胞、並びに元の胚盤胞に由来するその他の細胞を含有する。このような環境において、子孫を最初にモザイク・コート・カラーに関してスクリーニングすることができる。この場合、供与体ES細胞由来の細胞を胚盤胞の他の細胞と区別するために、コート・カラー選択法が採用されている。或いは、子孫の尾部組織に由来するDNAを使用して、遺伝子改変型細胞を含有するマウスを同定することができる。
【0097】
生殖系列細胞内にα2/δ遺伝子破壊形を含有するキメラマウスを交配させると、全ての生殖系列細胞及び体細胞内にα2/δ遺伝子破壊形を有する子孫が生み出される。次いで、α2/δ遺伝子破壊に関してヘテロ接合性のマウスを交雑させることにより、ホモ接合体を作り出すことができる(例えば米国特許第5,557,032号明細書、及び同第5,532,158号明細書を参照)。
【0098】
細胞から動物全身へ遺伝子改変形を転移させるための上述のES細胞技術とは別に、核転移を用いる技術がある。この方法はその他の遺伝子改変型の、マウスの他の非ヒト哺乳動物、例えばヒツジ(McCreath他、Nature 29: 1099-69, 2000; Campbell他、Nature 389:64-66, 1996;及びSchnieke他、Science 278: 2130-33, 1997)及び子ウシ(Cibelli他、Science 280: 1256-58, 1998)を作り出すために採用することができる。手短に云えば、体細胞(例えば線維芽細胞)又は多能性幹細胞(例えばES様細胞)を核供与体として選択し、そしてα2/δ1遺伝子の機能破壊形を含有するように遺伝子改変する。DNAベクターを体細胞内に挿入してα2/δ1遺伝子を突然変異させる場合、ベクター内にプロモーター無しのマーカーを使用することにより、α2/δ遺伝子内にベクターを組込む結果、α2/δ遺伝子プロモーターの制御下でマーカーが発現されるようになっていることが好ましい(Sedivy及びDutriaux, T.I.G. 15: 88-90, 1999; McCreath他、Nature 29: 1066-69, 2000)。次いで、適切なα2/δ遺伝子破壊形を有する供与体細胞から得られた核を、除核された受精卵母細胞又は単為生殖卵母細胞内に移す(Campbell他、Nature 380: 64, 1996; Wilmut他、Nature 385: 810, 1997)。胚を再構成し、培養して桑実胚期/胚盤胞期に発育させ、そして養母に移すことにより、出産時期まで子宮内で発育させる。
【0099】
本発明はまた、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物、及び遺伝子改変型動物細胞の子孫を含む。子孫は、α2/δ遺伝子を破壊する遺伝子改変に関してヘテロ接合性又はホモ接合性であるが、これらは、後世において発生し得る、元のα2/δ遺伝子破壊以外の突然変異又は環境の影響に基づいて、非ヒト親哺乳動物、及び親動物細胞とは遺伝学的に同一ではない場合がある。
【0100】
遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物の細胞は、当業者に知られた技術を用いて、組織又は器官から分離することができる。1実施態様の場合、本発明の遺伝子改変型細胞は不死化される。この実施態様によれば、テロメラーゼ遺伝子、腫瘍遺伝子、例えばmos又はv-src、又はアポトーシス阻害遺伝子、例えばbcl-2を細胞中に遺伝子工学により作り出すことにより、これらの細胞を不死化することができる。或いは、当業者に知られた技術を用いて、ハイブリッド形成パートナーと融合させることによって、細胞を不死化することもできる。
【0101】
7. 「ヒト化」された非ヒト哺乳動物及び動物細胞
突然変異型の内生的なα2/δ遺伝子を含有する本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物及び動物細胞(ヒト以外)をさらに改変することにより、対応するヒトα2/δ配列を発現させることができる(本明細書では「ヒト化」と呼ぶ)。細胞をヒト化させる好ましい方法は、相同的組換えにより、内生的α2/δ1及び/又はα2/δ2配列を、それぞれのヒトα2/δ配列(Jackobsson他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:7220-25, 1999)をコードする核酸配列と置換することに関与する。ベクターは、5'及び3'の相同アーム及び正/負の選択スキームに関して、標的ベクターとして伝統的に使用されるものと同様である。しかしベクターは、組換え後に内生的配列をヒトα2/δ1コーティング配列と置換する配列、又は、ヒトα2/δをコードするように内生的配列を改変する塩基対変化、エクソン置換、又はコドン置換をもたらす配列をも含む。相同的組換え体を同定したら、Cre又はFlpによって媒介される部位特異的組換えを用いて、選択に基づく任意の配列(例えばneo)を切除することが可能である(Dymecki, Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 6191-96, 1996)。
【0102】
内生的配列をヒトα2/δ配列と置換するときには、内生的翻訳開始部位のすぐ下流側にこれらの変化を導入することが好ましい。この位置は、α2/δ遺伝子の内生的な時間的及び空間的な発現パターンを保存する。ヒト配列は、適切な処理のために3'末端にpoly A尾部が結合された完全長cDNA配列、又はゲノム配列全体であってよい(Shiao他、Transgenic Res. 8:295-302, 1999)。内生的遺伝子の発現をそのヒト対応部分と置換するために、細胞及び非ヒト哺乳動物を遺伝子改変するこれらの方法に関する更なる指針が、Sullivan他、J. Biol. Chem. 272: 17972-80, 1997, Reaume他、J. Biol. Chem. 271: 23380-88, 1996、及びScott他、米国特許第5,777,194号明細書に見いだされる。
【0103】
このような「ヒト化」生物を作り出す別の方法は、内生的遺伝子を破壊し、これに続いて、ノックアウト胚内への前核マイクロインジェクションにより、ヒト配列をコードするトランス遺伝子を導入することに関与する2工程プロセスである。
【0104】
本発明のα2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物及び動物細胞の表現型を調査することにより、α2/δ1及び/又はα2/δ2の機能及び治療妥当性をさらに明らかにすることができる。例えば、遺伝子改変型のα2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物及び動物細胞を使用して、特定のα2/δが、或る特定の疾患モデル、例えばてんかん、不安、鬱、統合失調症及び双極性疾患などを含む中枢神経系疾患;神経障害性疼痛などを含む疼痛;及び不整脈及び高血圧などを含む心臓血管疾患において、症状又は表現型を発現させる上で、又はその発現を予防する上で、所定の役割を果たすかどうかを決定することができる。症状又は表現型が非ヒト哺乳動物又は動物細胞において、野生型(α2/δ1 +/+及び/又はα2/δ2 +/+)又はヘテロ接合体(α2/δ1 +/-及び/又はα2/δ2 +/-)の非ヒト哺乳動物又は動物細胞とは異なる場合には、特定のα2/δポリペプチドは、症状又は表現型と関連する機能を調節する上で所定の役割を演じる。α2/δ機能を評価するために使用することができる試験の例は、ギャバペンチン及びその他のα2/δリガンド結合に関して、α2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-マウスと、それぞれの対応野生型マウスとを比較すること;鎮静作用を評価するための尾部吊り下げ試験(TST);ホルマリン誘発型痛覚過敏の起こしやすさを評価するためのホルマリン足裏処置、神経障害性疼痛の慢性収縮損傷(CCI)誘発型静的異痛モデル;不安を評価するためのフォーゲル(Vogel)処置;及び抗けいれん活性を評価するための最大電気ショック処置を含む。Hain HS, Kinsora JJ, Baron SP, Meltzer LT(2000) Society for Neuroscience Annual Meeting Abs. 336.12; Lotarski SM, Kinsora JJ, Taylor CP, Baron SP(2002) Society for Neuroscience Annual Meeting Abs. 396.8; Krall他(1978) Epilepsia, 8月; 19(4): 409-28を参照されたい。
【0105】
加えて、物質がα2/δ1及び/又はα2/δ2アゴニスト又はアンタゴニストとして同定されている環境下で(例えばこの物質は、α2/δ1 +/+又はα2/δ1 +/-、及び/又はα2/δ2 +/+又はα2/δ2 +/-の非ヒト動物、又は動物細胞に投与されると、特定のα2/δポリペプチドの活性のうちの1つ又は2つ以上を著しく改変する)、本発明の遺伝子改変型α2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物、及び動物細胞は、特定のα2/δのアゴニズム又はアンタゴニズムから生じることが知られているもの以外の物質によって引き起こされる任意の他の効果を特徴付けるのに有用である(すなわち非ヒト哺乳動物及び動物細胞を負の対照として使用することができる)。例えば、物質の投与が、α2/δ1ポリペプチド活性と関連していることが知られていないα2/δ1 +/+の非ヒト哺乳動物又は動物細胞に効果を及ぼす場合、対応するα2/δ1 -/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞にこの物質を投与することにより、物質が専らα2/δ1の改変によってだけこの効果をもたらすのか、或いは主としてα2/δ1の改変によってこの効果をもたらすのかを決定することができる。α2/δ1 -/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞においてこの効果が存在しない場合、又は著しく低減される場合には、この効果は少なくとも部分的にα2/δ1によって媒介される。しかし、α2/δ1 -/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞が、α2/δ1 +/+又はα2/δ1 +/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞と匹敵する程度まで効果を示す場合には、この効果は、α2/δ1シグナル形成に関与しない経路によって媒介される。同じ論理的根拠に従って、効果がα2/δ1によって媒介されるかどうかを見極められることになる。
【0106】
さらに、物質が主に特定のα2/δ1及び/又はα2/δ2経路を介して効果を及ぼすかもしれないと疑われる場合には、α2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物及び動物細胞は、この仮説を試験するための負の対照として有用である。この物質が実際にα2/δ1及び/又はα2/δ2を通して作用している場合には、α2/δ1 -/-及び/又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物及び動物細胞は、この物質の投与時に、α2/δ1 +/+又はα2/δ2 +/+の非ヒト哺乳動物又は動物細胞において観察されたのと同じ効果を示さないことになる。
【0107】
本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物及び動物細胞を使用することにより、α2/δ1 +/-、α2/δ1 -/-、α2/δ2 +/-又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞において、それぞれの野生型対照に対して異なった形で発現が調節される遺伝子を同定することもできる。当業者に知られた技術を用いて、本発明の説明に基づいてこのような遺伝子を同定することができる。例えば、α2/δ1 +/-、α2/δ1 -/-、α2/δ2 +/-又はα2/δ2 -/-マウスにおいて異なった形で発現が調節される遺伝子を同定するためにDNAアレイを使用し、これにより、特定のα2/δ発現の欠如を補償することができる。DNAアレイは当業者に知られている(例えばAigner他、Arthritis及びRheumatism 44: 2777-89, 2001; 米国特許第5,965,352号明細書;Schena他、Sceince 270: 467-470, 1995; DeRisi他、Nature Genetics 14: 457-460, 1996; Shalon他、Genome Res. 6:639-645, 1996;及びSchena他、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 93: 10539-11286, 1995参照)。
【0108】
加えて、本発明の遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物及び動物細胞を使用することにより、α2/δ1 +/-、α2/δ1 -/-、α2/δ2 +/-又はα2/δ2 -/-の非ヒト哺乳動物又は動物細胞において、それぞれの野生型対照に対して発現プロフィール又は翻訳後改変形が変化させられたタンパク質を同定することもできる。当業者に知られた技術を用いて、本発明の説明に基づいて、このようなタンパク質を同定することができる。例えば、α2/δ1 +/-、α2/δ1 -/-、α2/δ2 +/-又はα2/δ2 -/-マウスにおいて発現プロフィール又は翻訳後改変形が変化させられたタンパク質を同定するためにDNAアレイを使用し、これにより、特定のα2/δ発現の欠如を補償することができる。プロテオミック・アッセイが当業者には知られている(例えばConrads他、Biochem. Biophys. Res. Commun. 290: 896-890, 2002; Dongre他、Bioplymers 60: 206-211, 2001; Van Eyk Curr Opin Mol Ther 3: 546-553, 2001; Cole他、Electrophoresis 21: 1772-1781, 2000; Araki他、Electrophoresis 21: 180-1889, 2000参照)。
【0109】
下記の実施例は本発明の一例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0110】
実施例1. 標的ベクター構造
マウスα2/δ1タンパク質の残基217(リーダー配列の切断前の残基241に相当)において、突然変異を有するα2/δ1サブユニットを遍在的に発現させるマウスを作り出すために、ゲノム・ライブラリをスクリーニングし、そして、基本的にWattler S, Kelly M、及びNehls M (1999) BioTechniques 26:1150-1160に記載され、以下にさらに説明するような技術を用いて、置換タイプの標的ベクターを構成した。
【0111】
マウス・ゲノムDNAを鋳型として用いて、配列番号1及び2に示された配列をPCR反応に使用することにより、α2/δ1座に由来するゲノム配列を含有するPCR断片を生成した。このPCR断片の配列は配列番号3で示されている。この断片を、ウラシルに対する栄養マーカーを含有する酵母選択カセットにライゲートした(配列番号10)。マウス・ゲノムDNA及び酵母マーカーを含有するライゲーション生成物を、マウス・ゲノム・ライブラリを担持する酵母の菌株内に形質転換した。ライブラリ内に担持されたPCR断片とゲノム配列との間に、相同的組換えが発生する。このことは、α2/δ1座に対して相同のゲノムクローンの分離を可能にする。いくつかのクローンを分離して配列決定し、そしてエクソン8を含有するα2/δ1座のために、contig(整列群)を生成した。このcontigは配列番号4で提供される。この配列は、α2/δ1ゲノムDNAの一部を含有する、約14kbのゲノムDNAを含有する。分離されたクローンのうちの1つ(pKOS20)は、エクソン8を含有するマウス・ゲノム配列の一部を含有した。このゲノム配列は配列番号5で提供される。エクソン8をフランキングする位置でこの配列内に、neoカセット、loxP部位及びFRT部位を挿入した。図1を参照されたい。
【0112】
図1は、α2/δ1ゲノム領域内のゲノム・クローンの編成を示す(76=配列番号15; 77=配列番号16; 74=配列番号13; 75=配列番号14; Neo3A=配列番号11。pKOS86, pKOS88, pKOS39, pKOS55, pKOS20-TV, pKOS16は、α2/δ1座のエクソン8領域に及ぶゲノム・クローンを意味する。これらの配列番号に示された配列を配列番号4に集めることにより、図1で上側バンドとして示される14kbのゲノムα2/δ1座に及ぶcontigを生成した。
【0113】
ゲノム配列番号5を含有する標的ベクターを意味するPKOS20-TVを突然変異誘発させることにより、標的ベクターを生成した。この標的ベクターにおいて、位置217におけるアルギニンのコドン(ポリペプチド内の唯一のRRRモチーフにおけるC末端アルギニン)を、上述のものと同様の技術を用いてアラニンに変換する。この変化をコードするエクソン8の改変を含有するオリゴヌクレオチドを利用して、PCR反応を実施した。この突然変異性プライマーは配列番号7で示されている。エクソン8の野生型配列は配列番号6で示されている。突然変異性プライマーは2種のPCR反応のために使用した。5'末端において、配列番号7及び8で示されたプライマーを利用して、PCR反応を実施した。3'末端では、配列番号7及び9で示されたプライマーを利用して、PCR反応を実施した。これらの2つのPCR反応の生成物を、酵母選択カセット上にライゲートし(配列番号10)、そして標的ベクターを担持する酵母内に形質転換した。配列を酵母内で組換え、そして、アルギニン217をコードする残基(AGA)がアラニン・コドン(GCA)に変換されていることを除けば配列番号6と同一の配列を生成した。アラニン217をコードする残基を含むこの配列は、配列番号20で示される。この標的ベクターをES細胞中にエレクトロポレーションにより導入した。標的ベクターは、ネオマイシン耐性に対するマーカーを含有するので、トランスフェクトされている細胞を、G418中で成長させることにより選択した。G418に対して耐性のES細胞を分離し、そして、DNAを細胞から分離した。次いで、配列番号11及び12のプライマーを使用して、DNAにPCR分析を施した。DNAの組込みに対して正であるES細胞を、このPCR反応における900塩基対のバンドの存在に関して試験した。標的ベクターが相同的組換えされており、且つα2/δ1座内に挿入されていることを確認するために、正のES細胞に由来するDNAにサザン分析を施した。プライマー対配列番号13〜配列番号14及び配列番号15〜配列番号16を使用して、マウスゲノムDNAからプローブを生成した。これらは、組込まれたDNAをフランキングする領域に存在するプローブを生成する。図2は、15〜16プローブを使用したサザン・ブロットを示す。相同的組換えが発生した、標的となったES細胞は、プローブとハイブリッド形成する約15KBのバンドを有することになる。これに対して、野生型は13.2KBのバンドを有することになる。
【0114】
相同的組換えを施されたES細胞を、C57B1/6マウスに由来する胚盤胞内に移植した。次いで、これらの改変型胚盤胞を、偽妊娠したC57B1/6母中に移植した。キメラ子マウスが生まれた。これらのキメラ子マウスをC57B1/6マウスと交配させ、次いで概略を上述したPCRアプローチを用いて、子孫の遺伝子型を特定した。生殖系列伝達が発生する動物が、このPCRアッセイにおいて正であった。
【0115】
生殖系列伝達が発生した動物を交配させることにより、共通遺伝子系統を生成し、そして試験のために使用することができるマウスを作り出した。
【0116】
実施例2. α2/δ1ノックイン・マウスの表現型特徴付け
2(A):ギャバペンチン結合:
基本的にWang, M; Offord, J; Oxender DL; 及びSU T-Z(1999), Biochem. J. 342: 313-320に記載されているように、膜調製及びギャバペンチン結合を行った。マウス全脳から膜を調製した。次いで、これらの膜を3Hギャバペンチンの結合のために使用した。微量レベルの3Hギャバペンチンを結合に使用した。競合体の不存在において結合全体を見極めた。10μM無標識プレギャバリンの存在において、非特異的結合を決定した。図2は、ES細胞から分離されてHind IIIで消化された総ゲノムDNAのサザン・ブロット分析を示す(M=マーカーDNA; A=ES細胞A; B=ES細胞B; C=ES細胞C; D=ES細胞D; E=ES細胞E; F=ES細胞F; G=Hind IIIで消化された、標的にされていない対照ES細胞DNA)。DNAをHind IIIで消化し、アガロースゲル上で分離し、次いでニトロセルロースに移した。プライマー対配列番号13及び配列番号14を使用してゲノムDNAから生成されたPCR断片から成る3'プローブで、ニトロセルロース・フィルターをプローブした。
【0117】
図3に示された結果は、R217A突然変異型マウスに由来する脳膜とのギャバペンチン結合が、野生型マウスに由来するものと比較して低減されるか、又は大幅に廃されていることを示している。ウェスタン・ブロットは、図6に示されているように、α2/δ1及びα2/δ2のポリペプチドのレベルが著しくは変化しないことを示した。ウェスタン・ブロットを生成するために、マウスの脳から膜画分を調製した。ポリアクリルアミド・ゲルのウェル1つ当たり10μgのタンパク質をローディングし、これに電気泳動を施し、そしてこれをPVDF膜上にブロットした。ブロットを、α2/δ1又はα2/δ2に対して特異的な抗体でプローブした。こうして、3つの異なる野生型及び3つの異なる突然変異型動物に由来する脳膜をプローブした。
【0118】
2(B):ヘテロ接合性及び野生型のマウスと比較した、R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏/ホルマリン足裏処置:
雄のα2/δ1 R217A野生型、ヘテロ接合性、及びホモ接合性の体重19〜40グラムのマウスを試験のために使用した。食餌及び水を任意に利用可能にした状態で、12時間の明/暗サイクルで動物を飼育した。試験前日は一晩にわたって動物に食餌を与えなかった。試験当日に、動物を約60分間にわたって観察チャンバに順応させた。観察チャンバは、床と3方の壁が硬質アクリル・プラスチック・ミラーから成る8インチ四方のボックスであった。第4の壁は、観察を可能にする透明アクリルであった。試験の120分前に投与容積10mL/kgでビヒクル又はプレギャバリンを、動物にPO投与した。試験時に、動物の左後足の裏面に、5%ホルマリン水溶液25μLを注射した。ホルマリン注射の直後に、注射された足を舐めること又は噛むことに関して、45分間にわたって動物を観察した。手持ち式ストップウォッチを使用してこれらの挙動を計時し、5分のインターバルで記録した。2つの区別可能な応答期によって、データを分析した。早期応答は0〜10分目を含み、晩期応答は11〜45分目を含んだ。それぞれの応答期において薬物処理済動物が足を舐めるのに費やした総時間を、ビヒクル処理済動物が足を舐めるのに費やした総時間と比較した。
【0119】
図4は、ヘテロ接合性マウス及び野生型マウスと比較して、R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏を示す。その結果が示すところによれば、位置217におけるargがアラニンに変えられたマウスは、このアッセイにおいてプレギャバリンの効力の低下を示す。
【0120】
2(C):R217Aの突然変異型マウス及び野生型マウスにおける尾部吊り下げ試験(TST)におけるプレギャバリンの効果
雄のα2/δ1 R217Aの野生型及びホモ接合性の体重22〜35グラムのマウスを試験のために使用した。食餌及び水を任意に利用可能にした状態で、12時間の明/暗サイクルで動物を飼育した。試験前日は一晩にわたって動物に食餌を与えなかった。試験当日に、投与前の60分間にわたって、8匹から成る動物群を保持ケージ内に入れて順応させた。試験の120分前に、投与容積10mL/kgでビヒクル又はプレギャバリンを投与した。試験時には、尾部の遠位部分に透明テープ片を巻いた。次いで、電気機械的装置に結合されたフックに、このテープを取り付けた。この装置によって、マウスが動いた時間量及び運動中に用いられた力量を記録した。フックは、24 x 18 cmの試験チャンバの頂部に配置した。6分間にわたって、チャンバの床から約5cm離した状態で、動物を完全に宙づりにした。次いで、もがいている平均時間及び運動力を8匹から成る各群に関して計算した。
【0121】
投与前の30〜60分間にわたって、8匹から成る動物群を保持ケージ内に入れて順応させた。特定の化合物に応じて変化するものの、試験の60〜120分前に処理薬を全身投与する。試験時には、尾部の遠位部分にスコッチ・テープ片を巻いた。次いで、電気機械的装置に結合されたフックに、このテープを取り付けた。この装置によって、マウスが動いた時間量及び運動中に用いられた力量を記録する。フックは、24 x 18 cmの試験チャンバの頂部に配置した。6分間にわたって、チャンバの床から約5cm離した状態で、全ての動物を完全に宙づりにした。装置はこの時間の終了時に記録を自動的に停止した。そして動物をフックから外した。図5は、R217A突然変異型及び野生型のマウスの尾部吊り下げ試験(TST)におけるプレギャバリンの効果を示す。
【0122】
これらの結果が示すように、プレギャバリンはα2/δ1ポリペプチドを介して、TSTにおいてその鎮静効果及び/又は抗不安効果を及ぼす。これら結果はさらに、プレギャバリンのこのような沈痛効果が、少なくとも部分的に、野生型マウスα2/δ1のRRR(R217)のC末端フランキング・アルギニンを介して与えられることを示す。
【0123】
2(D):異痛
慢性収縮損傷(CCI)モデル:
動物を麻酔チャンバ内に入れ、2%イソフルオランO2混合物で麻酔した。右後大腿部を剃毛し、1%ヨウ素で綿棒を用いて消毒した。次いで動物を、処置期間中にわたって恒温性ブランケットに移し、そして手術中、ノーズコーンを介して麻酔を維持した。大腿骨の線に沿って、皮膚を切開した。大腿二頭筋を通って鈍的切開することにより、大腿部の中央で共通座骨神経を暴露した。座骨三分枝に対して近位側で、神経の下に鉗子を挿入することにより、約5mmの神経を取り外し、神経を大腿部から静かに持ち上げた。鉗子を数回開閉することにより神経から筋膜を除去するのを助けた。鉗子を用いて神経の下方に縫合糸を引き入れ、そしてわずかな抵抗を感じるまで一重結びで結紮し、次いで二重に結んだ。3本の結紮糸(4-0絹)が約1mmの間隔を置いて神経の周りにゆるく結び付けられるまで、この処置を繰り返した。切開部を層状に閉じ、そして創傷を局所用抗生物質で処理した。
【0124】
静的異痛の測定:
異痛の評価前に、動物をワイヤ製の試験ケージに慣らした。フォン・フライ刺激毛(Stoelting, Wood Dale, Illinois, U.S.A.)を力の大きくなる順に(0.008, 0.02, 0.04, 0.07, 0.016, 0.4, 0.6, 1.0, 1.5及び2.0g)、後足の裏面に当てがうことにより、静的異痛を評価した。それぞれのフォン・フライ刺激毛を最大6秒間にわたって、又は引込め応答が生じるまで足にあてがった。フォン・フライ刺激毛に対する引込め応答が確立されたら、足を再び試験した。この場合再試験は、引込めを生じさせたフィラメントの下位にあるフィラメントで始めて、続いて残りのフィラメントを力が小さくなる順に、引込めが生じなくなるまで行った。このように、各動物の両後足を試験した。応答を引き起こすのに必要な力の最低量を、足引込め閾値(PWT)としてグラムで記録した。正常なマウスにおいて無刺激性である0.04g以下の刺激に対して動物が応答した場合に存在するものとして、静的異痛を定義した。この研究に使用されるフォン・フライ刺激毛は、対数スケールで当てがい力を与える。こうして、この研究で得られたデータを、対数スケールを用いて、中央値及び四分位数(値の範囲を表す)として表した。
【0125】
R217A及び野生型マウスにおける慢性収縮損傷(CCI)誘発型点状異痛の発生:
神経損傷モデルを使用して、R217A及び野生型マウスの疼痛表現型をさらに特徴付けた。CCIモデルが十分に特徴付けられた神経障害性疼痛モデルであるため、CCIモデルをこれらの研究に使用した。CCI損傷前に、ノックイン動物及び野生型動物は、フォン・フライ刺激毛を使用して測定したところ、点状刺激に対する類似のベースライン応答を示した。CCI損傷に続いて、フォン・フライ刺激毛の当てがいに対して、両マウス群において過敏症が増大した。この過敏症は損傷から7日後にピークに達し、そして3週間以上にわたって維持された。疼痛挙動の類似の開始が、ノックイン・マウス及び野性型マウスの両方に見られた。結果を図7に示した。
【0126】
フォン・フライ刺激毛に対するベースライン(BL)足引込め閾値(PWT)を評価した。薬物投与に続いて、PWTを最大4時間にわたって再評価した。静的異痛データを、1群当たり6〜7匹の動物に足引込めを誘発するのに必要な中央値力(g)として表す(垂直方向のバーは第1及び第3の四分位数を表す)。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005(マンホイットニー U試験)が、各時点においてビヒクル処理群から得られた。
【0127】
ノックイン・マウス及び野性型マウスにおけるCCI誘発型静的異痛に対するプレギャバリンの効果:
プレギャバリンが、ノックイン・マウス及び野性型マウスの両方における抗異痛作用を生み出すかどうかを試験した。この研究において、ノックイン・マウス及び野性型マウスの両方が、CCI手術に続く点状刺激の付与に対して典型的な疼痛応答を示した。プレギャバリン(30〜100mg/kg)の皮下投与は、野性型マウスにおけるCCI誘発型点状異痛の有意な遮断をもたらす。しかし、プレギャバリンの同様の処理は、ビヒクル処理対象と同様の疼痛挙動を有するノックイン・マウスには効果をもたらさなかった。これらの結果を図8に示す。
【0128】
フォン・フライ刺激毛に対するベースライン(BL)足引込め閾値(PWT)を評価した。薬物投与に続いて、PWTを最大4時間にわたって再評価した。静的異痛データを、1群当たり6〜7匹の動物に足引込めを誘発するのに必要な中央値力(g)として表す(垂直方向のバーは第1及び第3の四分位数を表す)。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.005(マンホイットニー U試験)が、各時点においてビヒクル処理群から得られた。
【0129】
ノック-インR217Aマウス及び野性型マウスは、慢性収縮誘発型神経損傷に続いて、慢性疼痛における類似の疼痛表現型を示す。プレギャバリン(30-100mg/kg, p.o.)は、野性型マウスのCCI誘発型異痛において典型的な効力を示したが、ノックイン動物においては同様の投与に続いて効力を示すことはなかった。これらのデータは、プレギャバリンの鎮痛作用が電圧ゲートチャネルのα2-δ-1サブユニットとの相互作用によって媒介されることを示す。
【0130】
2(E):マウスに対するプレギャバリンの抗不安様効果及び抗けいれん効果におけるカルシウム・チャネルのα2/δ1サブユニットの役割:遺伝子改変型マウスにおけるR217A点突然変異の使用
【0131】
遺伝子改変型マウスにおけるR217A点突然変異を用いて、α2/δ1カルシウム・チャネル補助タンパク質の役割を試験することにより、プレギャバリンの作用メカニズムを明らかにするように、ここに報告された研究を実施した。プレギャバリンの抗不安効果を評価するのに際して、フォーゲル処置を用いる一方、プレギャバリンの抗けいれん効果を評価するのに際して、最大電気ショック処置(MES)を用いた。2種の系統のC57BL/6J、129S6/SvEVを使用して、上述の方法に従ってR217-Aノックイン・マウスを作り出した。また、対応する3種の異なるバックグラウンド系統と比較して、データを生成した。加えて、3種の異なるマウス系統を維持し、-/-(突然変異なし);+/-(R217A突然変異に関してヘテロ接合体);及び+/+(R217A突然変異に関してホモ接合体)と表す。
【0132】
R217A突然変異に関してホモ接合性のノックインマウスの場合、抗不安効果及び抗けいれん効果が大幅に低減される。マウスのフォーゲル水舐め葛藤アッセイにおいて、プレギャバリンは、野生型系統、ヘテロ接合性系統、又はバックグラウンド系統と比較して、罰が付随した舐め動作を統計的に有意に増大させることはない。マウス抗けいれんアッセイにおいて、プレギャバリンは、野生型系統、ヘテロ接合性系統、又はバックグラウンド系統の発作に対するよりも、突然変異型マウスの発作に対する保護力が強くない。これらのデータは、プレギャバリンの作用メカニズム、及びプレギャバリンによって影響される臨床上該当する挙動におけるα2/δ1結合の有意な役割を支持する。これらのデータ及び当該方法を以下に説明する。
【0133】
フォーゲル水舐め葛藤
動物:雄の野生型(WT)マウス、R217-A突然変異に関してヘテロ接合性(HET)マウス、及びノックイン(KI, R217-A突然変異に関してヘテロ接合性)マウスを、週齢6〜8週で受け取り、試験の2週間前に収容した。必要な場合には実験をプールすることになる試験のために、32匹のWT、HET及びKIマウスをそれぞれの出荷元から入手することができた。突然変異型マウス、C57BL/6J(Jackson Laboratories)、及び129S6/SvEV(Taconic Farms)も評価した。比較目的の実験にはアルビノ又はC57BL/6J-Tyrも含まれた。雄のC57BL/6J(Jackson Laboratories)及び129S6/ SvEV(Taconic Farms)を週齢8週で、それぞれの研究が1つの実験で完了するのに十分な量で受け取った。親系統を試験の1週間前に収容した。全ての動物を、温度及び湿度が制御された室内に、12L:12Dのスケジュール(06時00分に点灯)下で収容した。ワイヤ・ラックに収容されたC57BL/6Jマウス(12匹/ケージ)を除いて、全てのマウスをインシュレーター内に収容した(3〜5匹/ケージ)。
【0134】
フォーゲル装置:試験装置は、7 W x 7 L x 12 Hインチの12個のモジュール式オペラント・チャンバ(Coulbourn Instruments)から成った。各チャンバの側方(床上1.5インチ)には、モジュール光リコメーター(舐め動作計測器)を取り付けた。リコメーターを使用することにより、チャンバ外部に取り付けられた水の瓶に接続された水飲みチューブから水を舐める動作を測定した。水飲みチューブの端部に、ガラス棒を介してギャップを横切るように光ビームを配管した。被験者がチューブから水を飲むと、被験者の舌はビームを遮断し、舐める毎にそれが自動的に記録された。加えて、それぞれの標準試験チャンバを改変して、3.5 D x 6.75 w x 1.5Hインチの透明プレキシガラスから成る内部チャンバを設けた。チャンバのスペースを低減することにより、動物の活性を制限し、10分間のセッション中、挙動を水飲みチューブに向かわせた。試験チャンバの正面及び背面は透明プレキシガラスから形成した。正面ドアをカバーすることにより、試験室内部から気をそらせるのを軽減した。試験チャンバの背面は、試験室内の通行の流れから離れて壁に面するようにし、カバーしないままで観察の機会を提供する。(Coulbourn)プログラム可能なユニバーサル・ショッカーを使用して、1秒の継続時間にわたって、格子床と水飲みチューブとの間にショックを送るが、しかし、動物と水飲みチューブとの接触が中断されたらすぐにこれを終了させた。それぞれの系統及び突然変異遺伝子型に関して、並行する無ショック対照群と比較して80%よりも高く飲水を一貫して抑制する強度として、ショック強度を試験から決定した。
【0135】
処置:1日目に、24時間水を与えないでおいた後、被験者を試験チャンバ内にいれ、10分間のトレーニング・セッションにわたって、罰を与えずに水を飲ませておいた。マウスは、トレーニング・セッション全体にわたって100〜150回の舐め動作基準を完了することが必要とされた。10分間のセッション終了前にこのトレーニング基準を完了した被験者を取り除き、全ての被験者において飲水が、一日総摂取量の〜25%に制限されるようにした。水を100〜150回舐めなかったマウスを研究から排除した。1日目のセッション直後に、マウスをホーム・ケージに戻し、さらに24時間にわたって、水と食餌とを与えないでおいた。試験2日目に、ビヒクル又は試験化合物を、腹腔内(IP)注射によりマウスに投与した。60分又は120分の吸収時間後、マウスを10分間のトレーニング・セッションのために、試験チャンバ内に置いた。試験中、固定比(FR)10のスケジュールで、ショックを送った。従って、10回の舐め動作の後ごとに、被験者は弱いショックを受けた。従って、葛藤状態が存在し、マウスは水を飲むように動機付けされているが、しかしショックによって応答することが阻害された。受け入れられた少数のショック・エピソードが、不安関連挙動を反映する。標準的な抗不安薬は、マウスが挙動阻害を克服し、ショックが与えられるにもかかわらず水を飲むことを可能にする効果をもたらす。並行する対照よりもショック・エピソードの数を著しく増やす化合物が、抗不安様効果を生み出すと推定された。一元配置分散分析ANOVA/Dunn法を用いて、全てのデータを分析した。
【0136】
薬物:全ての試験に関して、プレギャバリンを生理食塩水中に溶解した。正の対照であるジアゼパムを、生理食塩水中の2%クレモフォル中に懸濁させた。全ての薬物を10 mL/kgの容積で投与した。
【0137】
試験の設計
親系統におけるジアゼパム及びプレギャバリンの試験:
各系統に対して使用されるショック強度を、飲水を80%よりも多く一貫して抑制する強度として、試験から予め決定した(データは示さず)。各系統における約80%の同様の抑制は、薬物を評価するための一貫したベースラインを提供した。ジアゼパム及びプレギャバリンに対する投与量-応答研究を、C57BL/6J、C57BL/6J-Tyr及び129S6/SvEVマウス系統において試験することにより、各系統における各薬物の最小有効投与量(MED)を決定した。C57BL/6Jマウスを0.4 mAで試験し、C57BL/6J-Tyrマウスを0.1 mAで試験し、そして129S6/SvEVマウスを0.6 mAで試験した。各投与量-応答研究は、無ショック・ビヒクル対照群を含んだ。この対照群は、飲水抑制を評価するために、並行したビヒクル罰応答群と直接的に比較された。
【0138】
ジアゼパム(全ての系統に関して-1時間、IP)を、C57BL/6Jマウスにおいて、1, 3.2, 10及び32 mg/kgの投与量で試験し、そしてプレギャバリン(全ての系統に関して-2時間、IP)を、3.2, 10, 32及び100mg/kgの投与量で試験した。ジアゼパムを、C57BL/6J-Tyrマウスにおいて0.32, 1及び3.2 mg/kgの投与量で試験し、そしてプレギャバリンを、3.2, 10, 32及び100 mg/kgの投与量で試験した。ジアゼパムを、129S6/SvEVマウスにおいて0.32, 1及び3.2 mg/kgの投与量で試験し、そしてプレギャバリンを、3.2, 10及び32 mg/kgの投与量で試験した。全ての試験において、運動失調(不安定歩行)及び手で触れることに対する応答の低減の両症状が投与後に観察されると、鎮静が注目され、この鎮静は、軽度、中度又は重度として記述された。
【0139】
突然変異型マウスにおけるジアゼパム及びプレギャバリンの試験:
各遺伝子型に対して使用されるショック強度を、一貫して飲水を80%以上抑制する強度として、試験から予め決定した(データは示さず)。各遺伝子型における約80%の同様の抑制は、薬物を評価するための一貫したベースラインを提供した。ジアゼパム(1, 3.2及び10 mg/kg、-1時間、IP)及びプレギャバリン(10, 32及び100 mg/kg、-2時間、IP)をWT, HET及びKIマウスにおいて試験することにより、各遺伝子型における各薬物のMEDを決定した。WTマウスを0.1 mAで試験し、HETマウスを0.4 mAで試験し、そしてKIマウスを0.7 mAで試験した。各試験は、無ショック・ビヒクル対照群を含んだ。この対照群は、飲水抑制率パーセントを決定するために、並行するビヒクル罰応答群と直接的に比較された。多数の研究をプールすることによって混乱することのある投与量応答試験において注目された有意でない増加に基づいて、ジアゼパム(3.2 mg/kg)及びプレギャバリン(100 mg/kg)の単回投与量をも選択した。これらの増加をさらに評価し、そして多数の研究のプールに関連するばらつきを低減しようとするために、単回投与量試験を3つの遺伝子型全てにおいて実施した。前述のように、観察者によって鎮静が注目された。
【0140】
MES:
別の箇所[White他、1995]に記載されたような電気けいれん発作モデルを用いて、抗けいれん効果を決定した。マウスを薬物投与前に、食餌及び水に自由に接近させ、そして温度及び光が制御された環境(12時間オン/12時間オフ)内に収容した。電気ショック強度を変化させながら、角膜電極を使用して、マウスに電気ショックを送った。定電流刺激装置(Wahlquist Instruments, Salt Lake City, UT)を使用して、電流を供給した(60 Hz正弦波電流、11:17mAのベースライン:ピーク対0.2秒間にわたる50 mA)。マウスの全てにおけるそれぞれのマウス系統及び突然変異系列に対して強直性伸筋発作を生み出すのに必要な電流強度を決定した。次いで、マウスをプレギャバリンでさらに試験するために、これらの電流を使用した。予め決められた薬物効果ピーク時に、全ての薬物-応答試験を実施した。それぞれ10匹のマウスから成る群に、0.9%生理食塩水中に溶解された種々の腹腔内投与量のプレギャバリン、ジアゼパム(veh)、又はフェニトインを与え、また10 ml/kg体重の容積でこれを与えた。ED50値(最大電気ショック発作の後肢強直性伸筋成分を被験動物の50%において阻害するのに必要とされる算出投与量)を、プロビット解析[Litchfield, Wilcoxon]によって決定し、そして化合物間の相対力を比較するのに、これらの値を使用した。4つ以上のマウス群、及びそれぞれの動物を一度採用した。種々異なる投与量の被験薬物で前処理された動物を、予め決定された薬物効果ピーク時(プレギャバリン:120分;ジアゼパム:60分;フェニトイン;60分)に、1電気ショックで攻撃した。
【0141】
【表1】

【0142】
結果/MES
MES処理結果は図9に示されている。さらに図9に関して、全てのバックグラウンド系統、並びに突然変異体、ヘテロ接合性突然変異体、及び野生型(全ての系列)が、フェニトイン及びジアゼパムの抗けいれん効果に対して十分に応答した。-/-マウスは、+/+マウスよりもプレギャバリンの効果に対して感受性が低かった。プレギャバリンの抗けいれん効果は、+/+マウスと比較して、-/-マウスにおいて低減された。
【0143】
実施例3:α2/δ2トランスジェニック・マウス、及びα2/δ1トランスジェニック・マウスとの交雑
129-系統マウスからゲノムDNAを分離し、そしてこれを、2つのPCR断片を生成するための鋳型として使用した。これらの断片の配列は、配列番号37及び38、及び配列番号Cで示される。配列番号38はエクソン9〜15を含有し、配列番号37はエクソン6〜8を含有する。
【0144】
ホスホグリセリン酸キナーゼIプロモーターによって発現するように推進されたネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有するカセットとともに、2つのPCR断片を集成することにより、配列番号42で示された標的ベクターを生成した。このクローニング中、AvaI部位を除去して構成を容易にした。
【0145】
標準的な技術を用いて、標的ベクター内の挿入体に突然変異を誘発した。手短かに言うと、突然変異を含有するオリゴ(配列番号41)を標的ベクターにアニールした。次いで、オリゴをin vitroのDNA合成によって延長した。突然変異誘発されたプラスミドを配列決定して、突然変異が導入されたこと、及び他の突然変異が加えられていないことを確認した。
【0146】
突然変異型α2/δ2を含有する標的ベクターをエレクトロポレーションにより、R1 ES細胞系内に導入した。この系は2つの129/SVJ変異体に由来する。ES細胞をG418内で選択することにより、ネオマイシン・カセットを含有する標的ベクターを組換えた細胞を同定した。正の細胞を核型決定することにより、再編成又は欠失が生じていないことを確信した。染色体異常を有していない細胞の表現型を特定することにより、これらの細胞のゲノムに突然変異体α2/δ2構造が組入れられていることを確信した。
【0147】
挿入部位のフランキング領域と相同のPCRプライマーを生成した。ネオマイシン耐性配列内部に由来するPCRプライマーも設計した。フランキング・プライマーとneoプライマーとの間のPCRは、適切な組込みが生じている細胞の同定を可能にする。
【0148】
ゲノム中に突然変異型α2/δ2構造が組入れられたES細胞を使用して、α2/δ2突然変異を含有するトランスジェニック・マウスを生成する。相同的組換えを施されたES細胞を、C57B1/6マウスに由来する胚盤胞内に移植する。これらの改変型胚盤胞を、次いで偽妊娠したC57B1/6母中に移植する。キメラ子マウスが生まれる。これらのキメラ子マウスをC57B1/6マウスと交配させ、次いで概略を上述したPCRアプローチを用いて、子孫の遺伝子型を特定する。生殖系列伝達が発生する動物が、このPCRアッセイにおいて正である。これらの創始者系統の生成後、突然変異に関してヘテロ接合性であったマウスを、アクチン・プロモーターの制御下で、flpリコンビナーゼを発現させるマウスと交雑させた。その結果、neoカセットを含有し、ゲノムから欠失させられるfrt部位によりフランキングされた標的ベクター部分をもたらす。
【0149】
生殖系列伝達が発生した動物、及びneoカセットが除去された動物を交配することにより、共通遺伝子系統を生成し、そして、上述のような表現型特徴付けのために使用できるマウスを作り出す。
【0150】
R279A突然変異に関してホモ接合性である動物を、a2dサブユニット遺伝子内のR217A突然変異に関してホモ接合性である動物と交雑させる。これらの交雑の結果、両突然変異に関してホモ接合性であるマウスが生み出されることになる。
【0151】
実施例4: 配列データの特徴
配列番号17
は、エクソン8によってコードされ、そして、野生型と比較してArgからAlaへの突然変異を有するマウス・ポリペプチドを示し、この突然変異は残基22として示される。
【0152】
配列番号18
は、エクソン8及び9によってコードされ、そして、野生型と比較して、エクソン8においてArgからAlaへの突然変異を有するマウス・ポリペプチドを示し、この突然変異は残基22として示される。
【0153】
配列番号19
は、エクソン8、9及び10によってコードされ、そして、野生型と比較して、エクソン8においてArgからAlaへの突然変異を有するマウス・ポリペプチドを示し、この突然変異は残基22として示される。
【0154】
配列番号20
は、配列番号17に示されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を示す。
【0155】
配列番号21
は、配列番号18に示されたポリペプチドをコードする配列を含むマウス・ゲノムDNA配列を示す。
【0156】
配列番号22
は、配列番号18に示されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を示す。
【0157】
配列番号23
は、配列番号19に示されたポリペプチドをコードする配列を含むマウス・ゲノムDNA配列を示す。
【0158】
配列番号24
は、配列番号19に示されたマウス・ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を示す。
【0159】
配列番号42
は、上述のようなR290A突然変異型マウスを生み出すための標的ベクターを示す。frt部位は酵母に由来し、flpリコンビナーゼ系の一部である。マウス由来の挿入体に加えて、このベクターは、マウスPGKプロモーター、E.coli neo耐性マーカー(ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼ)、及び2つのfrt部位を含有する。第1のfrt部位は、標的ベクター内の11567〜11602にある。第2のfrt部位は、標的ベクター内の13454〜13488にある。PGK neoカセットは、標的ベクター内の11653〜13452にある。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は、α2/δ1遺伝子標的ベクター、内生的マウスα2/δ1遺伝子におけるベクターの相同的組換えのための位置、及び遺伝子ターゲッティングを検証するのに用いられるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を概略的に示す図である。
【図2】図2は、ES細胞のサザン・ブロット分析を示す図である。
【図3】図3は、R217A突然変異型マウス脳膜内のギャバペンチン結合を、野生型マウスと比較して示す図である。
【図4A】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図4B】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図4C】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図4D】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図4E】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図4F】R217A突然変異型ホモ接合性マウスにおけるホルマリン誘発型痛覚過敏に対するプレギャバリンの効果を、ヘテロ接合性及び野生型マウスと比較して示す図である。
【図5】図5は、R217Aホモ接合性の突然変異型及び野生型マウスにおける尾部吊り下げ試験時のプレギャバリンの効果を示す図である。
【図6】図6は、突然変異型(R217A)マウス及び野生型マウスから分離された膜のウェスタン・ブロットを示す図である。
【図7A】R217Aマウス及び野生型マウスにおける慢性収縮損傷(CCI)誘発型点状異痛の発生を示す図である。
【図7B】R217Aマウス及び野生型マウスにおける慢性収縮損傷(CCI)誘発型点状異痛の発生を示す図である。
【図8A】R217Aマウス及び野生型マウスにおけるCCI誘発型静的異痛に対するプレギャバリンの効果を示す図である。
【図8B】R217Aマウス及び野生型マウスにおけるCCI誘発型静的異痛に対するプレギャバリンの効果を示す図である。
【図9】図9は、R217Aマウス及び野生型マウスにおける最大電気ショック処置(MES)時のプレギャバリンの効果を示す図である(「KI」は、R217A突然変異に関してホモ接合性であるノックインを意味する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
R290様突然変異を含むα2/δ2遺伝子を含む遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物。
【請求項2】
a) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含むα2/δ2ポリペプチド;
b) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換を含むα2/δ2ポリペプチド;
c) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンからアラニンへの置換を含むα2/δ2ポリペプチド;
d) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失を含むα2/δ2ポリペプチド;
e) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含むα2/δ2ポリペプチド;
f) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含むα2/δ2ポリペプチド;
g) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5個の残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含む、α2/δ2ポリペプチド;及び
h) 前記RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン以外の位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、a)〜g)に従うα2/δ2ポリペプチド
から成る群から選択されるポリペプチドをコードする突然変異型α2/δ2遺伝子をもたらす、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物。
【請求項3】
a) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含むことを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
b) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換を含むことを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
c) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンからアラニンへの置換を含むことを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
d) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失を有することを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
e) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを有することを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
f) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを有することを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
g) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5個の残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを有することを除いて、野生型α2/δ1ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;及び
h) 前記RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン以外の位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、a)〜g)に従うα2/δ2ポリペプチド
から成る群から選択されるポリペプチドをコードする突然変異型α2/δ1遺伝子をもたらす、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物。
【請求項4】
a) 位置288、290又はその両方にアルギニン以外のアミノ酸を有することを除いて、野生型α2/δ2ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
b) 位置288、290又はその両方に脂肪族アミノ酸を有することを除いて、野生型α2/δ2ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
c) 位置288、290又はその両方にアラニンを有することを除いて、野生型α2/δ2ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;
d) 位置288、290又はその両方にリシンを有することを除いて、野生型α2/δ2ポリペプチドと同一のα2/δ2ポリペプチド;及び
e) 位置288及び290以外の位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、a)〜d)に従う野生型哺乳動物α2/δ2ポリペプチド
から成る群から選択されるポリペプチドをコードする突然変異型α2/δ2遺伝子をもたらす、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物。
【請求項5】
前記哺乳動物が:
a) 前記哺乳動物の中枢神経系とのα2/δリガンド結合が低減するという表現型特徴;
b) 前記哺乳動物の中枢神経系とのギャバペンチン結合が低減するという表現型特徴;
c) 前記哺乳動物中のα2/δリガンドの鎮静効果が低減するという表現型特徴;
d) 前記哺乳動物中のプレギャバリンの鎮静効果が低減するという表現型特徴;
e) 鎮静試験を施されている前記哺乳動物中のα2/δリガンドの鎮静効果が低減するという表現型特徴;
f) 鎮静試験を施されている前記哺乳動物中のα2/δリガンドの抗けいれん効果が低減するという表現型特徴;及び
g) 鎮静試験を施されている前記哺乳動物中のα2/δリガンドの抗不安効果が低減するという表現型特徴
から成る群から選択される1つ以上の表現型特性を示す、請求項2又は15に記載の哺乳動物。
【請求項6】
前記哺乳動物が、
a) 齧歯動物;
b) マウス;
c) 前記改変に関してホモ接合性の、請求項2に記載の非ヒト哺乳動物;
d) 前記野生型α2/δ2ポリペプチドが、配列番号32, 33, 34, 35及び36に示されている、請求項3に記載の非ヒト哺乳動物;
e) 請求項7に記載の核酸配列を含む、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物
から選択される、請求項1又は2に記載の哺乳動物。
【請求項7】
a) 配列番号39に示されたポリペプチド配列を含むポリペプチドをコードする配列を有する核酸分子;及び
b) 配列番号40に示されたヌクレオチド配列を含む分離された核酸分子
から選択される、単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項2に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含む、トランスジェニック動物を生産するための標的ベクター。
【請求項9】
a) 請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞;
b) 当該改変形が、請求項2に記載のポリペプチドをコードする突然変異型遺伝子を含む、遺伝子改変型動物細胞;
c) 胚幹(ES)細胞又はES様細胞である、b)の動物細胞;
d) 結果として突然変異型遺伝子をもたらす改変形を含有する、遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物から分離された、b)の動物細胞;
e) 胚線維芽細胞、幹細胞、ニューロン、骨格筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、褐色又は白色脂肪細胞、肝細胞、又は膵臓β細胞である、d)の動物細胞;
f) マウスである、b)の動物細胞;
g) ヒトである、b)の動物細胞;及び
h) 前記改変に関してホモ接合性である、b)の動物細胞
から選択される、細胞。
【請求項10】
a) 請求項2又は15に記載の第1哺乳動物群と、対応する野生型の第2哺乳動物群とを準備し、
b) それぞれの前記群の第1サブセットを、α2/δリガンドで処理し、
c) それぞれの前記群の第2サブセットを、試験化合物で処理し、
d) α2/δ1又はα2/δ2と関連する活性又は障害に関して、それぞれのサブセットを試験し、そして、
e) 前記群及びサブセットのそれぞれの応答を比較する
ことを含む、障害又は活性に対する化合物の生理学的効果が、α2/δリガンドの生理学的効果を媒介するα2/δ2サブユニット・ポリペプチド残基に関与するかどうかを決定する方法。
【請求項11】
a) 請求項2又は15に記載の第1哺乳動物群と、対応する野生型の第2哺乳動物群とを準備し、
b) それぞれの前記群を、試験化合物で処理し、
c) α2/δ1又はα2/δ2と関連する活性又は障害に関して、それぞれの群を試験し、そして、
d) 前記群のそれぞれの応答を比較する
ことを含む、α2/δ2サブユニット・ポリペプチドを介して障害又は活性に生理学的効果を及ぼす化合物を同定する方法。
【請求項12】
e) 請求項2又は15に記載の第1哺乳動物群と、対応する野生型の第2哺乳動物群とを準備し、
f) それぞれの前記群の第1サブセットを、α2/δサブユニット・ポリペプチドと結合するリガンドで処理し、
g) それぞれの前記群の第2サブセットを、試験化合物で処理し、
h) α2/δ1又はα2/δ2と関連する活性又は障害に関して、それぞれのサブセットを試験し、そして、
i) 前記群及びサブセットのそれぞれの応答を比較する
ことを含む、α2/δ2サブユニット・ポリペプチドを介して障害又は活性に生理学的効果を及ぼす化合物を同定する方法。
【請求項13】
前記リガンドがギャバペンチン又はプレギャバリンである、請求項10又は12に記載の方法。
【請求項14】
j) 請求項2又は15に記載の第1哺乳動物群と、対応する野生型の第2哺乳動物群とを準備し、
k) それぞれの前記群に、活性又は障害を示す処置を施し、そして
l) それぞれの前記群の応答を比較する
を含む、活性又は障害におけるα2/δ2ポリペプチドの役割の決定方法。
【請求項15】
m) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから非アルギニンへの置換を含むα2/δ1ポリペプチド;
n) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンから脂肪族アミノ酸への置換を含むα2/δ1ポリペプチド;
o) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内の2つのフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方に、アルギニンからアラニンへの置換を含むα2/δ1ポリペプチド;
p) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失を含むα2/δ1ポリペプチド;
q) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含む、α2/δ1ポリペプチド;
r) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐN末端側の最大9つの残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含む、α2/δ1ポリペプチド;
s) 当該ポリペプチド固有のRRRモチーフに対してすぐC末端側の最大5個の残基の欠失と、前記ポリペプチド固有のRRRモチーフ内のフランキング・アルギニンのうちの少なくとも一方の欠失とを含む、α2/δ1ポリペプチド;及び
t) 前記RRRモチーフ内のフランキング・アルギニン以外の位置に1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する、a)〜g)に従うα2/δ1ポリペプチド
から成る群から選択されたポリペプチドをコードする突然変異型α2/δ1遺伝子をもたらす、請求項2に記載の哺乳動物、及び遺伝子改変型の非ヒト哺乳動物の子孫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−522599(P2006−522599A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506459(P2006−506459)
【出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001110
【国際公開番号】WO2004/089071
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】