説明

突起物切断装置

【課題】構造物の表面に備えた突起物を、上記表面とほぼ同一平面に切断することのできる突起物切断装置を提供する。
【解決手段】構造物5の表面に突設して備えた突起物3を、上記構造物5の表面に沿って切断するための突起物切断装置であって、前記構造物5の表面に固定可能な支持フレーム7に、帯鋸刃25を回転自在に備えた鋸刃ハウジング13を、前記構造物5の表面に沿って移動自在に備え、前記突起物3の両側方において前記帯鋸刃25の胴部の内周面を案内支持する鋸刃案内部材33を備え、この鋸刃案内部材33に近接した位置において前記帯鋸刃の背部を支持する背部支持部材35を、前記構造物5の表面に接触して備え、前記背部支持部材35は、前記構造物5の表面に対して接近離反する方向へ移動自在に備えられ、かつ前記表面側へ付勢して備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の構造物鋼板などに溶接によって取付けられた吊りピースなどの突起物を切断するための突起物切断装置に係り、さらに詳細には、前記構造物の表面に沿って前記突起物を切断するとき、上記表面とほぼ同一面でもって突起物の切断を行うことのできる突起物切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば造船、橋梁に使用される大型の構造物鋼板などの構造物をクレーンで吊って運搬するために、前記構造物の表面に吊りピースを溶接によって一体に取付けることが行われている。上記吊りピースは、構造物を所望の位置に搬送位置決めした後に、ガス切断などによって除去されている。吊りピースをガス切断する場合、構造物に対する熱影響が大きく、また後処理も厄介であるために、前記吊りピースを帯鋸刃によって切断することが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−63227号公報
【特許文献2】特開2004−345044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成においては、帯鋸刃によって吊りピースの切断を行うものであるから、熱影響を抑制することができるものの、前記吊りピースの切断後には、僅かな突出部が残るので、グラインダやカッターなどによって切削するという後処理を必要とするものである([0034]参照)。
【0005】
前記特許文献2に記載の構成においても、帯鋸刃によって吊りピースを切断する構成であるから、熱影響が少ないものの、帯鋸刃は、鋸刃インサートの係合溝に係合して案内されるものであるから、上記鋸刃インサートにおける係合溝の一側の厚さ寸法に等しい僅かな突出部が残ることとなり、この僅かな突出部を除去するための後処理が必要であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、構造物の表面に突設して備えた突起物を、上記構造物の表面に沿って切断するための突起物切断装置であって、前記構造物の表面に固定可能な支持フレームに、帯鋸刃を回転自在に備えた鋸刃ハウジングを、前記構造物の表面に沿って移動自在に備え、前記突起物の両側方において前記帯鋸刃の胴部の内周面を案内支持する鋸刃案内部材を備え、この鋸刃案内部材に近接した位置において前記帯鋸刃の背部を支持する背部支持部材を、前記構造物の表面に接触して備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記突起物切断装置において、前記背部支持部材は、前記構造物の表面に対して接近離反する方向へ移動自在に備えられ、かつ前記表面側へ付勢して備えられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、帯鋸刃の背部を支持する背部支持部材を構造物の表面に接触して備えているもので、帯鋸刃の外周面が構造物の表面に接触した状態において吊りピース等の突起物を切断するとき、帯鋸刃が背部支持部材と構造物の表面との間に入り込むことを防止して帯鋸刃の背部を支持することができるものである。すなわち、帯鋸刃の外周面を構造物の表面に接触した状態において吊りピースを切断することができるものであり、構造物の表面とほぼ同一平面において突起物を切断することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る突起物切断装置を概念的、概略的に示した正面説明図である。
【図2】主要部分の断面説明図である。
【図3】主要部分の他の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る突起物切断装置1は、例えば前記特許文献1に記載の構成と同様に、例えば吊りピースなどのごとき突起物3を表面に備えた構造物5の前記表面に固定可能な支持フレーム7を備えている。この支持フレーム7は枠体構成であって前後方向(図1において紙面に垂直な方向)に長く構成してあり、この支持フレーム7における前後左右の4隅部には、例えばマグネットなどのごとき適宜の固定手段を介して構造物5の表面に固定自在な脚部9が備えられている。
【0011】
前記支持フレーム7の上部には前後方向のガイド部材11が備えられており、このガイド部材11には鋸刃ハウジング13が前後動自在に支持されている。より詳細には、前記鋸刃ハウジング13は左右方向に長いビーム部材15が備えられており、このビーム部材15の左右両側にはホイールハウジング17,19が備えられている。上記一方のホイールハウジング17内にはモータ(図示省略)によって回転される駆動ホイール21が回転自在に備えられており、他方のホイールハウジング19内には従動ホイール23が回転自在に備えられている。そして、上記駆動ホイール21,従動ホイール23にはエンドレス状の帯鋸刃25が掛回してある。
【0012】
前記ガイド部材11に沿って前記鋸刃ハウジング13を前後動自在に支持するために、前記鋸刃ハウジング13には前記ガイド部材11に前後動自在に支持された前後スライダ27が一体的に取付けてある。さらに、前記支持フレーム7には、前記鋸刃ハウジング13を前後動するための前後動手段29が備えられている。上記前後動手段29としては、例えば油圧シリンダのごとき往復作動装置を用いて鋸刃ハウジング13を前後動することや、前記特許文献1,2に示されているように、ボールネジ機構やラック・ピニオン機構などの適宜の構成を採用することができるものである。
【0013】
前記帯鋸刃25は、前記ホイールハウジング17,19にそれぞれ備えた鋸刃ガイド機構31によって、前記突起物3を、前記構造物5の表面とほぼ同一面において切断するように案内されている。より詳細には、前記ホイールハウジング17,19に備えた前記鋸刃ガイド機構31には、前記構造物5の表面に近接した位置において帯鋸刃25における胴部25Aの内周面を案内支持する鋸刃案内部材としてのブレードガイド33(図2参照)が備えられている。
【0014】
換言すれば、前記ブレードガイド33は帯鋸刃25の胴部25Aの内周面のみを案内支持するものであって、胴部25Aの外周面は案内されることなく開放された状態にある。そして、前記帯鋸刃25における歯部25Bは前記ブレードガイド33から突起物3の方向(前方向:図2において右方向)へ突出した状態にあり、帯鋸刃25の背部25Cは、前記ブレードガイド33に近接した位置においてホイールハウジング17,19に備えた背部支持部材35に支持されている。この背部支持部材35は、内装した例えばコイルスプリングなどのごとき弾性部材37によって常に突出する方向へ付勢されており、前記帯鋸刃25によって突起物3を切断するときには、前記構造物5の表面に移動可能に接触した状態に保持されている。
【0015】
前記ブレードガイド33は、帯鋸刃25によって吊りピースなどのごとき突起物3を構造物5の表面に沿って切断するとき、構造物5の表面とほぼ同一平面でもって突起物3の切断が行い得るように、前記ホイールハウジング17,19に予め備えられているものである。
【0016】
以上のごとき構成において、構造物5の表面に備えられている突起物3を切断するために、前記突起物3が支持フレーム7の領域内に位置するように、構造物5の表面に前記支持フレーム7を設置する。その後、駆動ホイール21を回転して帯鋸刃25を回転し、かつ前後動手段29によって鋸刃ハウジング13を構造物5の表面に沿って前方向へ移動すると、帯鋸刃25が突起物3を切断することになる。
【0017】
上述のごとく、帯鋸刃25によって突起物3を切断するとき、帯鋸刃25は、構造物5の表面とほぼ同一平面において突起物3を切断するように、ブレードガイド33によって帯鋸刃25における胴部25Aの内周面が案内されており、かつ帯鋸刃25の背部は、前記構造物5における表面に先端部が常に接触するように、弾性部材37によって押圧付勢されている背部支持部材35によって支持されているので、切断作用時の帯鋸刃25の振動や、突起物3の周囲における構造物5の表面の凹凸によりホイールハウジング17,19と構造物5の表面との間の距離に変化が生じたような場合であっても、帯鋸刃25が背部支持部材35と構造物5の表面との間に入り込むことを防止でき、突起物3の切断を能率よく行うことができるものである。
【0018】
既に理解されるように、突起物3を切断するとき、構造物5における表面とほぼ同一平面でもって切断することができるので、僅かな突出部を除去するための後処理が不要となり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0019】
ところで、本発明は、前述のごとき実施形態に限ることなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能である。例えば、図3に示すように、ブレードガイド33と背部支持部材35とを一体的に備えた支持ブロック39を、ホイールハウジング17,19に上下動自在に備えると共に弾性部材37によって上記支持ブロック39を構造物5方向へ付勢する構成とすることも可能である。上記構成により、前述した実施形態と同様の効果を奏し得ると共に、構造物5における表面の僅かなうねり等に対する追従性が向上するものである。
【0020】
また、図1に想像線で示すように、ビーム部材15に、一般的な横型帯鋸盤における鋸刃ガイドアームと同様のガイドアーム41を左右方向に位置調節可能に備え、このガイドアーム41の下端部(先端部)に、前記鋸刃ガイド機構31を備えた構成とすることも可能である。上記構成とすることにより、突起物3を帯鋸刃25によって切断するとき、帯鋸刃25が構造物5の表面に接触する長さを短くすることができる。
【0021】
すなわち、帯鋸刃25によって突起物3を切断するときに、構造物5の表面を損傷する面積を小さく抑制することができるものである。したがって、突起物3を切断した後の、例えば塗装などの表面処理面積が小さくなり、後処理としての表面処理が容易になるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 突起物切断装置
3 突起物
5 構造物
7 支持フレーム
13 鋸刃ハウジング
15 ビーム部材
17,19 ホイールハウジング
25 帯鋸刃
29 前後動手段
31 鋸刃ガイド機構
33 ブレードガイド(鋸刃案内部材)
35 背部支持部材
30 支持ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に突設して備えた突起物を、上記構造物の表面に沿って切断するための突起物切断装置であって、前記構造物の表面に固定可能な支持フレームに、帯鋸刃を回転自在に備えた鋸刃ハウジングを、前記構造物の表面に沿って移動自在に備え、前記突起物の両側方において前記帯鋸刃の胴部の内周面を案内支持する鋸刃案内部材を備え、この鋸刃案内部材に近接した位置において前記帯鋸刃の背部を支持する背部支持部材を、前記構造物の表面に接触して備えていることを特徴とする突起物切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の突起物切断装置において、前記背部支持部材は、前記構造物の表面に対して接近離反する方向へ移動自在に備えられ、かつ前記表面側へ付勢して備えられていることを特徴とする突起物切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−36952(P2011−36952A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186397(P2009−186397)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダマシンツール (65)
【Fターム(参考)】