説明

窓構造

【課題】既存の建築物に簡易に施工できる耐震性の高い窓構造を提供する。
【解決手段】窓構造1は、建築物の窓用開口部に合致する四角形状の窓枠20を有する窓部材2に、所望の剛性を有する隅部補強部材3が、窓枠20の四隅にそれぞれ取り付けられたものである。窓部材2自体の剛性を高めることにより、窓用開口部が形成された壁の壁量が増大したのと同様の作用を生じさせ、建築物の重心と剛心とを近接させることが容易になる。また、水平力に対抗して窓枠20の四角形状が維持されるので、地震の際の住宅からの出口が確保される。特に、既存の住宅に対して、窓の周囲の壁材の大部分を剥がす等の大掛かりな工事が不要であり、既存の窓用開口部に対する納まりもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の窓用開口部に窓部材が固定されてなる窓構造であって、特に耐震等に適した窓構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の大地震による住宅崩壊などを目の当たりにして、住宅などの建築物において耐震対策を施すことが注目されている。例えば、戸建住宅において一般的である木造建築物では、建築物の総壁量の最低値が建築基準法で定められている。したがって、住宅の窓や出入口などの開口部は、総壁量の最低値を満足する範囲内で設計される。
【0003】
住宅の窓に着目すれば、住宅内への採光のために、住宅の南側の壁に掃き出し窓のような開口面積の大きな窓をとることが多い。一方、住宅の北側の壁では、総壁量の確保や住宅の熱損失を防止する観点から、小窓のような開口面積の小さな窓をとることが多い。
【0004】
住宅の耐震性について着目すれば、住宅の重心と剛心とが一致していることが好ましい。ここで、重心とは、建築物の平面形状の中心であり、剛心とは、水平力に対抗する力の中心である。地震力は、住宅の重心に作用し、住宅は水平方向に変形するほか、剛心周りに回転する。したがって、重心と剛心とが離れすぎていれば、住宅に部分的に過大な変形が生じて構造部材が損傷され、その結果、住宅の耐力が低下するとともに、他の部分に地震力の負荷が集中し、最悪の場合には住宅の倒壊を引き起こすおそれがある。
【0005】
建築物の重心と剛心との不一致は偏心率で定義される。偏心率とは、重心と剛心との隔たりのねじり抵抗に対する割合である。建築基準法では、木造住宅の偏心率は0.3以下であることが定められており、一般的には、偏心率が0.15以下の住宅が特に好ましいと言われている。
【0006】
前述したように、住宅の南側の壁に大きな開口を設け、一方、北側の壁には小さな開口を設けると、南北の壁で開口割合に大きな差が生じる。その結果、住宅の重心と剛心とが離れて偏心率が大きくなり、住宅の耐震性能が劣化する。
【0007】
このような建築物の偏心率に対する基準は近年になって設けられたものであり、それ以前に建築された木造住宅では、必ずしも、現在の建築基準法に規定された基準を満足するとは限らない。これに対し、既存の木造住宅などの耐震性能を向上させるために、耐震補強工事を伴うリフォームが行われている。一般に、耐震補強工事は、住宅の土台や柱、梁などの構造部材の接続部分に補強金物を取り付けるものが多い(例えば特許文献1〜3)。
【0008】
【特許文献1】特開平8−226174号公報
【特許文献2】特開平6−288146号公報
【特許文献3】特開2004−285817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されているように、筋違板と係止片とを有する補強金具を、窓台や窓まぐさに取り付けることとすれば、窓用開口部の周囲の壁材を剥がして、柱、窓台、窓まぐさの交差部分を露出させる必要があり、また、柱、窓台、窓まぐさの交差部分のすべてに補強金具を取り付ける必要があるので、工事が大掛かりとなりコストが高くなるという問題がある。
【0010】
特許文献2に記載されているように、窓用開口部を囲む柱、窓台、窓まぐさに鋼材をそれぞれ取り付け、鋼材部分をフレーム状に形成するとすれば、該鋼材のために窓用開口部の納まり寸法が変わり、既存の窓或いは同寸法の窓を取り付けることが難しくなるという問題がある。また、鋼材を通じて熱伝達が生じるので、窓用開口部の断熱を確保することが難しくなるという問題がある。
【0011】
特許文献3は、本発明者により考案された木造躯体に組み込まれる木質耐震開口フレームである。この木質耐震開口フレームが既存又は新築の木造建築物の開口部に取り付けられることより、耐力壁のアンバランスの解消と建物全体の耐震性の向上が図られる。この木質耐震開口フレームが既存の窓に取り付けられることにより、従来と同様に採光が確保され、且つ窓を構成する軸組が補強される。しかしながら、前述と同様に、木質耐震開口フレームを窓用開口部に取り付けると、窓用開口部の納まり寸法が変わり、既存の窓或いは同寸法の窓を取り付けることが難しくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、既存の建築物に簡易に施工できる耐震性の高い窓構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、既に考案された特許文献3の利点及び問題点を詳細に検討して鋭意研究した結果、以下に示される本発明を完成するに至った。
【0014】
(1)本発明に係る窓構造は、建築物の窓用開口部に合致する多角環状の窓枠を有する窓部材に、所望の剛性を有する隅部補強部材が、上記窓枠の多角環状の各隅部にそれぞれ取り付けられたものである。
【0015】
多角環状の窓枠の各隅部に隅部補強部材が取り付けられることにより、窓枠の各辺を構成する枠材同士の接合部の剛性が高められる。多角環状とは、環状の窓枠の平面視が例えば四角形等の多角形であることをいう。この窓枠を有する窓部材が、建築物の窓用開口部に取り付けられる。地震による水平力は、柱や窓台、窓まぐさから窓枠に伝達される。窓枠の剛性が高められることにより、窓部材自体が地震による水平力に対抗することができ、窓用開口部が形成された壁の耐震性能が向上される。
【0016】
(2)上記隅部補強部材は、上記窓部材を窓用開口部に固定具を用いて固定するための第1固定部を有するものが好適である。
【0017】
(3)上記隅部補強部材は、上記窓枠の外周面に固定されるための第2固定部を有し、上記第1固定部と第2固定部とが略直交する断面視がL字形状のものが好適である。
【0018】
(4)上記窓枠は、多角環状の各辺を構成する枠材を有し、該枠材に、所望の剛性を有する枠材補強部材が設けられたものであってもよい。
【0019】
枠材補強部材により窓枠の枠材が補強され、地震による水平力が伝達された際に枠材が挫屈等することが防止される。これにより、窓枠の枠材として、合成樹脂からなる部材等の多様な部材を用いることができる。特に窓枠を合成樹脂製とすることにより、軽量、且つ気密性及び断熱性の高い窓を実現することができる。
【0020】
(5)上記枠材は、略中空形状のものであり、その中空部分に上記枠材補強部材が設けられたものが好適である。
【0021】
(6)上記枠材補強部材は、上記枠材の中空部分に合致する形状の管体が好適である。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明に係る窓構造によれば、窓部材自体の剛性を高めることにより、窓用開口部が形成された壁の壁量が増大したのと同様の作用を生じさせ、建築物の重心と剛心とを近接させることが容易になる。また、水平力に対抗して窓枠の多角環状が維持されるので、地震の際の住宅からの出口が確保される。特に、既存の住宅に対して、窓の周囲の壁材の大部分を剥がす等の大掛かりな工事が不要であり、既存の窓用開口部に対する納まりもよいという効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る窓構造1の外観構成を示している。窓構造1は、窓部材2と、窓部材2の四隅に取り付けられた隅部補強部材3とが、2本の柱4間に窓台5及び窓まぐさ6が横架材として架設されることにより四角形に形成された窓用開口部に取り付けられてなる。なお、本実施の形態は、木造住宅の窓用開口部を例に説明され、柱4、窓台5及び窓まぐさ6は、ともに角柱の木材から形成されている。しかしながら、本発明に係る窓用開口部は、木材を四角に組み合わせたものに限定されず、建築物の窓用開口部を構成するものであれは、例えば、壁面材を多角形に穿って形成されたものであってもよい。
【0025】
図2は、窓部材2に隅部補強部材3が取り付けられた状態を示す斜視図であり、図3は、隅部補強部材3の外観構成を示す斜視図である。また、図4は、図2のII−II断面図であり、図5は、図1のI−I断面図である。なお、図4においては、窓台5及び窓21L等が省略されている。
【0026】
窓部材2は、建築物の窓として窓用開口部に取り付けられるものであり、窓枠20と、窓21L,21Rとを有する。窓枠20は、正面視が四角形の枠体であり、四角形の各辺を構成する4つの枠材22が四角形に組み合わせれて固着されてなる。枠材22は、塩化ビニル樹脂製のものであり、異形押出成形により得られる。枠材22の端部同士が接続された四隅は、溶接により接着されている。このように形成された窓枠20が、窓用開口部に納められる。なお、本実施形態では、窓21L,21Rが嵌め込まれる枠を窓枠と呼ぶ。また、本実施形態では、窓枠20を合成樹脂製の所謂樹脂サッシとしたが、本発明に係る窓枠は合成樹脂製のものに限定されず、所謂アルミサッシなどのその他の素材であってもよい。
【0027】
窓21L,21Rは、ガラス等の透明部材の周囲に支持枠が設けられてなる。窓21Lは、はめ殺し窓であり、窓枠20に対して開閉することができない。一方、窓21Rは、外開き窓であり、窓枠20の縦方向の枠材21に蝶番により枢支されて、外開きに開閉可能である。なお、本発明において、窓の構造は周知且つ任意の構成が採用される。したがって、本実施形態に示されるようなはめ殺し窓と外開き窓の組み合わせの他、引き違い窓、外開き窓、内開き窓、ドレーキップ窓、はめ殺し窓、両開き窓、縦すべり出し窓、横すべり出し窓、出窓、上下スライド窓や、これらの任意の組み合わせによる連窓等が採用され得る。また、透明部材はガラスや合成樹脂、ガラスと樹脂フィルムとの複合体、2重ガラス等が採用され得る。
【0028】
図3に示すように、隅部補強部材3は、四角形の窓枠20の四隅に合致するように、正面視がL字形状のものである。隅部補強部材3は、窓部材2を窓用開口部に固定するための第1固定部30と、窓枠20の外周面に固定されるための第2固定部31とを有する。第1固定部30は、正面視がL字形状の平板であり、そのL字形状に沿って、ビスや釘等の固定具を挿通するための貫通孔32が所定間隔で穿たれている。貫通孔32は、2列をなしており、正面視L字形状の外側の貫通孔32にビス等が挿通され、該ビスが、柱4、窓台5又は窓まぐさ6に貫入されることにより、隅部補強部材3が窓用開口部に固定される。また、正面視L字形状の内側の貫通孔32には、枠材22と連通するようにビス等が挿通され、該ビスが、柱4、窓台5又は窓まぐさ6に貫入されることにより、隅部補強部材3が窓枠20及び窓用開口部に固定される。
【0029】
第2固定部31は、第1固定部30のL字形状の内縁から、第1固定部30と略直交する背面方向に延出されたものである。したがって、第1固定部30と第2固定部31とは、断面視においてL字形状をなしている。第2固定部31には、その長手方向に沿ってビス等の固定具を挿通するための貫通孔33が所定間隔で穿たれている。図2に示すように、隅部補強部材3の正面視L字形状の隅部を、窓枠20の四隅の外側に合致するように嵌め合わされ、図5に示すように、上記貫通孔33にビス等が挿通され、該ビスが、窓枠20の外周面に貫入されることにより、隅部補強部材3が窓部材2の四隅に固定される。
【0030】
隅部補強部材3は、窓部材2の四隅の剛性を高めるためのものであり、所望の剛性を有する。そのために、隅部補強部材3は、鉄、鋳鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、工具鋼、鋳造鋼などの鋼材や、強化プラスチックなどの剛性及び靭性の高い素材が用いられることが好適である。隅部補強部材3の素材として、これらのいずれを用いるかは、窓部材2に所望の剛性を付与するために隅部補強部材3に要求される強度やコストなどを考慮して決定される。
【0031】
例えば、隅部補強部材3の素材として鉄を用いた場合には、隅部補強部材3を35000〜40000N程度の強度とするためには、その厚みを約3.2〜6mm程度とすることが好適である。また、窓枠20を10000〜20000N程度の強度とするためには、隅部補強部材3の正面視L字形状の各辺の長さを、窓枠20の枠材22の長手方向の長さの約1/10〜1/4程度とすることが好適である。枠材22の両端(隅部)に固定された2つの隅部補強部材3の1つの枠材22の長手方向の長さに対する合計長さは、該枠材22の長手方向の長さの約1/5〜1/2程度とすることが好適である。また、隅部補強部材3の正面視L字形状の各辺の長さは、約20〜80mm程度が好適である。これらは、最終的に窓部材2に要求される耐震性を考慮して定められる。
【0032】
図4に示すように、上記窓枠20の枠材22には、枠材補強部材7が設けられている。詳細に説明するに、図に示すように、窓台5上に載置される枠材22は、窓台5の上面に載置される基部23と、屋内側に向けて露出される屋内面部24と、屋外側に向けて露出される屋外面部25と、窓21L,21Rを支持する窓支持部26と、屋内面部24の下端に連結された窓框部27とを有する。
【0033】
上記基部23、屋内面部24、屋外面部25及び窓支持部26により、図に示すような中空部28が形成されている。なお、中空部28の形状は特に限定されず、完全に周囲が枠材22で囲繞された中空部でなく、一部が開放されたC字形状やこコの字形状であってもよい。また、窓框部27には、隅部補強部材3の第1固定部30の内側の貫通孔32に対応して貫通孔29(図2参照)が適宜穿設されている。
【0034】
枠材補強部材7は、上記中空部28に合致する管体である。つまり、図に示すように、枠材補強部材7は、断面視が四角形の管体であり、その1辺が上記基部23の幅、すなわち屋内面部24と屋外面部25との間の距離と略同等のものである。また。枠材補強部材7の長手方向の長さは、枠材22の長手方向の長さと略同等である。つまり、枠材22の長手方向に渡って枠材補強部材7が設けられている。この枠材補強部材7により、枠材22の長手方向の強度が高められ、枠材22が圧縮力により挫屈等することが防止される。これにより、窓枠20の枠材22自体に高い剛性が要求されず、枠材22に合成樹脂等の多様な素材を用いることができる。特に窓枠20を合成樹脂製とすることにより、軽量、且つ気密性及び断熱性の高い窓を実現することができるので好適である。
【0035】
窓枠22の左右側及び上側を構成する枠材22についても、図4と同様にして、その中空部28に合致する枠材補強部材7が枠材22の長手方向に渡って設けられている。つまり、四角形の窓枠22を形成する4つの枠材22のそれぞれに4本の枠材補強部材7が設けられている。枠材補強部材7の素材としては、隅部補強部材3と同様に、鉄、鋳鉄、ステンレス鋼、炭素鋼、工具鋼、鋳造鋼などの鋼材や、強化プラスチックなどの剛性及び靭性の高い素材が用いられることが好適である。また、結露等に対する防錆性を考慮すれば、ステンレス鋼が好適である。
【0036】
隅部補強部材3は、図2に示すように、正面視L字形状の隅部を、窓枠20の四隅の外側に合致するように嵌め合わされ、図5に示すように、第2固定部31の貫通孔33に挿通されたビス8が、枠材22の外周面に貫入されることにより、窓部材2の四隅に固定される。枠材22に貫入されたビス8の先端は、中空部28に突出して枠材補強部材7にも貫入される。これにより、隅部補強部材3が枠材22に強固に固定される。また、正面視四角形の窓枠20の各辺をなす枠材22にそれぞれ設けられた4つの枠材補強部材7と、窓枠20の四隅に固定された隅部補強部材3とが剛接合されて、窓枠20においていわばラーメン構造を形成する。これにより、窓枠20の剛性が向上される。
【0037】
このように隅部補強部材3及び枠材補強部材7により剛性が高められた窓部材2が、図1に示すように、柱4、窓台5及び窓まぐさ6で形成された窓用開口部に嵌め込まれる。そして、図5に示すように、隅部補強部材3の第1固定部30の外側(図5下側)の貫通孔32に挿通されたビス9が窓台5に貫入されることにより、隅部補強部材3が窓台5に固定される。また、枠材22の窓框部27の貫通孔29から隅部補強部材3の第1固定部30の内側(図5上側)の貫通孔32に挿通されたビス9が窓台5に貫入されることにより、枠材22と隅部補強部材3とが固定されるとともに、該隅部補強部材3が窓台5に固定される。なお、窓部材2のその他の隅部に固定された隅部補強部材3についても、図5と同様にして、柱4、窓台5及び窓まぐさ6にそれぞれ固定される。これにより、窓用開口部に窓部材2が固定される。
【0038】
地震が生じると、地震による水平力は、柱4、窓台5及び窓まぐさ6から窓部材2の窓枠20に伝達される。前述したように、隅部補強部材3及び枠材補強部材7により窓枠20の剛性が高められるているので、窓部材2自体が地震による水平力に対抗することができる。これにより、窓用開口部が形成された壁の耐震性能が向上される。
【0039】
このように、本実施形態に係る窓構造1によれば、窓部材2自体の剛性を高めることにより、窓用開口部が形成された壁の壁量が増大したのと同様の作用を生じさせることができ、建築物の重心と剛心とを近接させることが容易になる。これにより、偏心率の小さな建築物を実現することができる。
【0040】
また、地震による水平力に対抗して窓枠20の正面視四角形が維持されるので、地震の際の住宅からの出口が確保される。
【0041】
また、本窓構造1を施工する際には、既存の住宅に対して、窓の周囲の壁材の大部分を剥がす等の大掛かりな工事が不要である。したがって、施工工事の工数を少なくして、短期間且つ低コストで、住宅の耐震性を向上させることができる。また、断熱施工を併せて行うことも容易である。
【0042】
さらには、本窓構造1は、耐震性のない従来の窓とほぼ同様の外観であるので、従来の窓を使用していた住宅の居住者に対して違和感がない。また、既存の窓用開口部に対する納まりがよいので、既存住宅の耐震補強工事に好適である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明する。窓枠20の縦横寸法を1870mm×1695mmとし、塩化ビニル樹脂を異形押出成形して窓枠20を作製した。窓枠20の各枠材22の中空部には、鉄製の肉厚3.2mmの管体からなる枠材補強部材7を配設した。この窓枠20を用いて、はめ殺し窓と外開き窓とからなる連窓である窓部材2を作製した。さらに、窓部材2の四隅には、600mm×600mm、厚み3.2mmの鉄製の隅部補強部材3を固定し、図6に示すように、木材からなる窓用開口部に隅部補強部材3を介して窓部材2を取り付けて窓構造1を作製した。
【0044】
図6に示すように、この窓構造1に対して、建築基準法施行令第46条第4項表1(ハ)に基づいて、木造軸組耐力壁の試験方法及び評価方法により評価される面内せん断試験を実施した。これにより、窓構造1において、壁倍率0.5以上を得た。壁倍率は、耐力壁の水平方向に対するせん断性能を表すものであり、窓用開口部が形成された壁の壁倍率が、約0.2〜0.3程度であるから、本窓構造1により窓用開口部が形成された壁の水平方向に対するせん断性能が大幅に向上されたことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る窓構造1の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、窓部材2に隅部補強部材3が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、隅部補強部材3の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2のII−II断面図である。
【図5】図5は、図1のI−I断面図である。
【図6】図6は、木造軸組耐力壁の試験状態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・窓構造
2・・・窓部材
3・・・隅部補強部材
7・・・枠材補強部材
8,9・・・ビス(固定具)
20・・・窓枠
22・・・枠材
30・・・第1固定部
31・・・第2固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の窓用開口部に合致する多角環状の窓枠を有する窓部材に、所望の剛性を有する隅部補強部材が、上記窓枠の多角環状の各隅部にそれぞれ取り付けられたものである窓構造。
【請求項2】
上記隅部補強部材は、上記窓部材を、窓用開口部を構成する部材に固定具を用いて固定するための第1固定部を有するものである請求項1に記載の窓構造。
【請求項3】
上記隅部補強部材は、上記窓枠の外周面に固定されるための第2固定部を有し、上記第1固定部と第2固定部とが略直交する断面視がL字形状のものである請求項2に記載の窓構造。
【請求項4】
上記窓枠は、多角環状の各辺を構成する枠材を有し、該枠材に、所望の剛性を有する枠材補強部材が設けられたものである請求項1から3のいずれかの記載の窓構造。
【請求項5】
上記枠材は、略中空形状のものであり、その中空部分に上記枠材補強部材が設けられたものである請求項4に記載の窓構造。
【請求項6】
上記枠材補強部材は、上記枠材の中空部分に合致する形状の管体である請求項5に記載の窓構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−277939(P2007−277939A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105895(P2006−105895)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(593053977)ジェイ建築システム株式会社 (13)
【Fターム(参考)】