説明

立体上着成形仕上機および加工後の上着の成形能力のパワーアップ方法

【課題】 加工後の衣類をより立体的に仕上ることができるように改良された立体上着成形仕上機を提供することを主要な目的とする。
【解決手段】 立体上着成形仕上機1は、加工後の上着2を人体の型に沿うように仕上げ成形する成形処理室3と、吸気口5が設けられ、該吸気口5から吸入された空気を成形処理室3に送り込むファン6を有する送風室4とを備える。立体上着成形仕上機1には、管8を備え、該管8の先端を吸気口5にあてがい、該管8を通して送風室4に空気をブローする電動送風機9が外付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体上着成形仕上機に関するものであり、より特定的には、加工後の上着をより立体的に仕上ることができるように改良された立体上着成形仕上機に関する。この発明はまた、加工後の上着をより立体的に仕上ることができるように改良された上着の成形能力のパワーアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(A)は、従来の立体上着成形仕上機の平面図であり、図5(B)は従来の立体上着成形仕上機の構成要素の配置関係を示す概略的な斜視図である。
【0003】
これらの図を参照して、立体上着成形仕上機1は、加工後の上着2を人体の型に沿うように仕上げ成形する成形処理室3と、送風室4を備える。成形処理室3の上面には穴20が設けられ、穴20には、送風室4内に送られてくる空気を上着2の内部に送り込むための、ポリエステル製の風体21が取り付けられている。送風室4には、吸気口5が設けられる。吸気口5には金網5aが設けられている。送風室4は、吸気口5から吸入された空気を成形処理室3に送り込むファン6を有する。ファン6は、羽根車とモータを備える。成形処理室3と送風室4は台7の上に固定される。上着2は、台7に固定されたショルダー(上着かけ部分)13に掛けられて、成形処理室3の上方に、風体21に覆いかぶさるように配置される。ショルダー13は、上下に動くようになっている。なお、図示しないが、ショルダー13の軸は下方に延びて穴20を通って台7に固定されている。また、図示しないが、上着2の前後には上着2を挟むように押える1対の押さえ部材が設けられている。
【0004】
次に、上着2の成形の動作について説明する。ファン6を駆動すると、吸気口5から空気は矢印で示すように送風室4内に吸入され、この空気は、送風室4から成形処理室3内に送られ、風体21を通って、空気の流れの束10になって上方に上がり上着2を内部から膨らます。上着2を膨らました状態で上着2に水蒸気を送る(水蒸気を形成し、上着2に送り込む蒸気形成機の図示は省略されている)。上着2を膨らました状態で、水蒸気の熱により、上着につけられている生地のり(例えば、ポリ酢酸ビニールの鹸化物等)を固定することにより、上着2は人体の形に立体的に成形される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の立体上着成形仕上機では、ファン6の出力をいくら上げても、上着2はうまく立体的に仕上がらないという課題があった。この理由は、図6を参照して、矢印で示す空気が送風室4から成形処理室3へ送られる時に、成形処理室3に入る手前で、空気の流れが乱れ、風力が弱まり、上着2が十分に膨らんでいないためであると考えられた。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、加工後の衣類をより立体的に仕上ることができるように改良された立体上着成形仕上機を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、加工後の衣類をより立体的に仕上ることができるように改良された上着の成形能力のパワーアップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる立体上着成形仕上機は、加工後の衣類を人体の型に沿うように仕上げ成形する成形処理室と、吸気口が設けられ、該吸気口から吸入された空気を上記成形処理室に送り込むファンを有する送風室とを備えている。そして、管を備え、該管の先端を上記吸気口にあてがい、該管を通して上記送風室に空気をブローする空気ブロー手段を外付けしたことを特徴とする。
【0009】
管の先端を上記吸気口にあてがい、該管を通して上記送風室に空気をブローする空気ブロー手段を外付けすることにより、加工後の衣類がより立体的に仕上ることが見出された。これは、吸気口から送風室に入ってくる空気の流れの束の中を、菅からブローされた強い空気の束が縦貫するので、空気が送風室から成形処理室へ送られる時に、成形処理室に入る手前で、空気の流れが乱れなくなり、強い方向性を持った空気の束で衣類が膨らまされたことによるものと考えられる。
【0010】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記管の先端の外径は、上記吸気口の内径より小さくされており、径方向に対して垂直な方向への投影において、上記菅の先端の外壁と上記吸気口の内壁との隙間の間隔dは、0<d≦55mmを満たす。間隔dをゼロにすると効果が抑制されることが見出された。
【0011】
より好ましくは、上記吸気口の内壁と上記管の先端の外壁との隙間の間隔dは、0<d≦30mmである。このように構成することにより、吸気口から送風室に入ってくる空気の流れの束の中を、菅からブローされた強い空気の束が縦貫するような空気の流れが効果的に形成され、上着がより立体的に仕上がることが見出された。
【0012】
上記加工後の衣類は、洗濯後の衣類または縫製後の衣類を含む。本発明によれば、洗濯後または縫製後の衣類がより立体的に仕上がるので、顧客の十分な満足を得ることができる。
【0013】
この発明の他の局面に従う発明は、送風室から送られてくる空気の流れの束により、加工後の衣類を人体の型に沿うように膨らませた状態で、その型を固定する衣類の成形能力のパワーアップ方法にかかり、上記送風室内に上記空気の流れの束の基になる空気を吸入させながら、該吸入空気の流れの束の中を縦貫するように、上記送風室内に外から空気をブローすることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、吸気口から送風室に入ってくる空気の流れの束の中を、菅からブローされた強い方向性を持った空気の束が縦貫するので、空気が送風室から成形処理室へ送られる時に、成形処理室に入る手前で、空気の流れは乱れず、強い方向性を持った空気の束で衣類が膨らまされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強い方向性を持った空気の束で衣類を膨らますことができるので、加工後の衣類がより立体的に仕上るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
(実施の形態1)
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる立体上着成形仕上機の平面図である。なお、図1に示す立体上着成形仕上機において、図5に示す立体上着成形仕上機と同一部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0019】
本発明にかかる立体上着成形仕上機1は、成形処理室3と送風室4とを備える。成形処理室3は平面形状において、例えば50cm四角の大きさである。送風室4には吸気口5が設けられている。吸気口5には金網5aが設けられている。送風室4は、吸気口5から吸入された空気を成形処理室3に送り込むファン6を有する。ファン6の馬力は例えば0.25馬力〜0.75馬力である。
【0020】
立体上着成形仕上機1には、管8を備え、該管8の先端を吸気口5にあてがい、該管8を通して送風室4に空気をブローする空気ブロー手段である電動送風機9が外付けで設けられている。電動送風機9の馬力は例えば、0.75馬力である。菅8は、例えば塩化ビニールパイプで形成されるが、これに限られるものでない。図1中、点線でしめす矢印は、吸気口5から送風室4内に吸い込まれる空気を表しており、実線で示す矢印は、電動送風機9から送風室4内にブローされる空気を表している。
【0021】
図2(A)は、管8の先端を吸気口5にあてがった箇所における、径方向に対して垂直な方向への投影図である。送風室4に設けられた吸気口5の正面形状と菅8の断面を用いて表されている。なお、図2(A)中、金網の図示は省略している。吸気口5と管8の断面形状は、ほぼ同心円である。管8の外径は、吸気口5の内径より小さくされている。菅8の径方向に対して垂直な方向への投影において、菅8の外壁と吸気口5の内壁との隙間の間隔dは、0<d≦55mm、より好ましくは0<d≦30mmにされる。
【0022】
図2(B)を参照して、このように構成することにより、吸気口5から送風室に入ってくる空気の流れの束10の中を、菅8からブローされた強い空気の流れの束11が縦貫するような空気の流れが形成される。d=0にすると、好ましい効果は得られなかった。
【0023】
このように電動送風機9から延びる菅8の先端を吸気口5にあてがうことにより、加工後の上着2がより立体的に仕上ることが見出された。これは、図2(B)と図3を参照して、吸気口5から送風室4に入ってくる空気の流れの束10の中を、菅8からブローされた強い方向性を持った空気の束11が縦貫するので、空気が送風室4から成形処理室3へ送られる時に、成形処理室3に入る手前で、空気の流れは乱れず、強い方向性を持った空気の束12で上着2が十分に膨らまされるためと考えられる。電動送風機を外付けしない従来の立体上着成形仕上機に比べて、1.5〜2倍の膨らみが認められた。この膨らみの増大は、図5の従来の成形仕上機のファンの出力をいくら上げても得られなかったものである。
【0024】
こうして、上着2を十分膨らました状態で、水蒸気の熱により、上着につけられている生地のりを固定することにより、上着2は人体の形に沿って立体的に成形される。
【0025】
なお、図3中、点線でしめす矢印は、吸気口5から送風室4内に吸い込まれた空気を表しており、実線で示す矢印は、電動送風機9から送風室4内にブローされた空気を表している。
【0026】
(実施の形態2)
【0027】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる成形仕上機の平面図である。図4に示す立体上着成形仕上機において、図1に示す立体上着成形仕上機と同一部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0028】
実施の形態1では、吸気口5に金網が設けられ、金網越しに管8から空気をブローする場合を例示したが、図4に示すように、金網を取り外し、菅8の先端を吸気口5内に内挿するようにしてもよい。
【0029】
なお、上記実施の形態では、上着を例示して説明したが、衣類一般に本発明は適用できる。
【0030】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明はクリーニング業、縫製業において加工後の衣類をより立体的に仕上ることができるので、見栄えのよい製品を顧客に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる立体上着成形仕上機の平面図である。
【図2】(A)は、管の先端を吸気口にあてがった箇所における、径方向に対して垂直な方向への投影図である。 (B)は、吸気口から送風室に入ってくる空気の流れの束と、菅からブローされた強い空気の流れの束との関係を示す図である。
【図3】本発明によって得られる空気の流れを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる立体上着成形仕上機の平面図である。
【図5】(A) 従来の立体上着成形仕上機の平面図である。 (B) 従来の立体上着成形仕上機の構成要素の配置関係を示す概略的な斜視図である。
【図6】従来の立体上着成形仕上機において、成形処理室に入る手前における、空気の流れの状態を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0033】
1 立体上着成形仕上機
2 上着
3 成形処理室
4 送風室
5 吸気口
6 ファン
7 台
8 管
9 電動送風機
13 ショルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工後の衣類を人体の型に沿うように仕上げ成形する成形処理室と、
吸気口が設けられ、該吸気口から吸入された空気を前記成形処理室に送り込むファンを有する送風室とを備えた立体上着成形仕上機において、
管を備え、該管の先端を前記吸気口にあてがい、該管を通して前記送風室に空気をブローする空気ブロー手段を外付けしたことを特徴とする立体上着成形仕上機。
【請求項2】
前記管の先端の外径は、前記吸気口の内径より小さくされており、径方向に対して垂直な方向への投影において、前記菅の先端の外壁と前記吸気口の内壁との隙間の間隔dは、0<d≦55mmを満たす請求項1に記載の立体上着成形仕上機。
【請求項3】
送風室から送られてくる空気の流れの束により、加工後の衣類を人体の型に沿うように膨らませた状態で、その型を固定する衣類の成形において、
前記送風室内に前記空気の流れの束の基になる空気を吸入させながら、該吸入空気の流れの束の中を縦貫するように、前記送風室内に外から空気をブローすることを特徴とする、加工後の上着の成形能力のパワーアップ方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−193859(P2006−193859A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6653(P2005−6653)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505016654)
【Fターム(参考)】