説明

立体回路部品及びその製造方法

【課題】ネガ型電着レジストを採用して製造可能な、立体回路部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に、特定の方向へ傾斜した開口部を設けた。特定の方向は、単数あるいは複数ある。傾斜の角度は、平面より約60°以内とすると良い。開口部の幅L1と回路の幅L2との関係を、L1=L2±30%とすると良い。このような立体回路部品によれば、ネガ型の電着レジストを採用してめっき回路を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、立体形状の樹脂成形体の表面に回路を有する、立体回路部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】立体回路部品;立体形状の樹脂成形体の表面に回路を有する部品において、従来では、スルーホールを回路の形成する平面部に対してほぼ垂直に形成していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来技術の立体回路部品によれば、その製造方法;所定形状に仕上げられた樹脂成形体の全表面に無電解めっきを形成し、次に、電着レジストを塗布し、然る後に、露光、レジスト現像、エッチング、レジスト剥離を行う方法において、スルーホールを形成するためには、ポジ型の電着レジストを採用しなければならない制約がある。その理由は、ネガ型の電着レジストを用いると、スルーホールの内部を露光することが極めて困難となるためである。
【0004】スルーホールが歳計となる場合やアスペクト比が大きくなる場合には、上記のスルーホール内部の露光がさらに困難となる。
【0005】従って、ネガ型電着レジスト塗布装置を保有しているが、ポジ型電着レジスト塗布装置を保有していないものにとって、スルーホールの形成が不可能となっていた。
【0006】そこで、本発明の解決すべき課題(目的)は、ネガ型電着レジストを採用して製造可能な、立体回路部品及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明により提供する立体回路部品は、回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に、特定の方向へ傾斜した開口部を有してなるものである。
【0008】前記の特定の方向は、単数あるいは複数存在させてなるものである。また、前記の傾斜の角度は、平面より約60°以内としてなると良い。この傾斜の角度を約60°以内とするのは、傾斜部を露光させるためである。
【0009】前記の開口部の幅L1と回路の幅L2との関係を、L1=L2±30%としてなると良い。これは、成形品全体の形状に与える影響を少なくさせるためである。
【0010】本発明により提供する立体回路部品の製造方法は、回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に、特定の方向へ傾斜した開口部を有せしめてなる樹脂成形体を形成し、この樹脂成形体の全表面に無電解めっきを形成した後にネガ型レジストを塗布し、引き続き、露光、レジスト現像、エッチング、レジスト剥離を行う方法からなる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の第一実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0012】この第一実施例は、立体形状をなす樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、180°の方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を形成し、この傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。めっき回路の幅は、開口部の幅に対して±30%程度とかなり一致させてある。
【0013】上記のように、めっき回路を形成するところにのみ傾斜を付けたので、成形品全体形状に与える影響を少なくしている。
【0014】製造工程は、つぎのようにして行うことができる。立体回路本体の成形→表面粗面化→めっき触媒塗布→無電解銅めっき→ネガ型電着レジスト塗布→露光→レジスト現像→銅エッチング→レジスト剥離→保護めっき。このように、特定の方向へ平面に対して60°以内で傾斜した開口部を有することで、傾斜部を露光してネガ型電着レジスト塗布を行えるようになる。
【0015】図2は、本発明の第二実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0016】この第二実施例は、立体形状をなす樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、180°方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を形成し、また、スルーホール部1の下部において、円周に傾斜を設け、これら傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。傾斜した開口部2,2による利点は、第一実施例と同様である。
【0017】図3は、本発明の第三実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0018】この第三実施例は、立体形状をなす樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、180°方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を形成し、また、スルーホール部の下部において、円周に逆方向に傾斜部を設け、これらの傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。傾斜した開口部2,2による利点は、第一実施例と同様である。
【0019】図4は、本発明の第四実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0020】この第四実施例は、立体形状を成す樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、90°方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を設け、これらの傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。傾斜した開口部による利点は、第一実施例と同様である。
【0021】図5は、本発明の第五実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0022】この第五実施例は、立体形状を成す樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、90°方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を設け、また、スルーホール部の下部において、円周に傾斜部を設け、これらの傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。傾斜した開口部による利点は、第一実施例と同様である。
【0023】図6は、本発明の第六実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体つまり立体回路部品のスルーホール部形状について示し、(ロ)はそのスルーホール部に対してのめっき回路形成後の状態を示している。
【0024】この第六実施例は、立体形状を成す樹脂成形体;平面に対して垂直に形成されるスルーホール部1の内面に、90°方向へそれぞれ約60°以内で傾斜した開口部2,2を設け、また、スルーホール部の下部において、円周に逆方向に傾斜部を設け、これらの傾斜の付いたところへめっき回路3を形成してなるものである。傾斜した開口部による利点は、第一実施例と同様である。
【0025】
【発明の効果】以上説明したような本発明によれば、回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に特定の方向へ傾斜した開口部を有せしめてあるので、ネガ型電着レジストを採用して製造可能な、立体回路部品及びその製造方法を提供するという所期の課題(目的)を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【図2】本発明の第二実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【図3】本発明の第三実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【図4】本発明の第四実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【図5】本発明の第五実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【図6】本発明の第六実施例にして、(イ)は立体形状の樹脂成形体;立体回路部品のスルーホール部形状を示す平面及び正面説明図、(ロ)は同上のスルーホール部形状に対してめっき回路を形成した後の立体回路部品を示す平面及び正面説明図。
【符号の説明】
1 立体形状の樹脂成形体;スルーホール部
2 開口部
3 めっき回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に、特定の方向へ傾斜した開口部を有してなる立体回路部品。
【請求項2】前記の特定の方向は、単数あるいは複数存在させてなる、請求項1記載の立体回路部品。
【請求項3】前記の傾斜の角度は、平面より約60°以内としてなる、請求項1記載の立体回路部品。
【請求項4】前記の開口部の幅L1と回路の幅L2との関係を、L1=L2±30%としてなる、請求項1記載の立体回路部品。
【請求項5】回路を形成する平面に対して垂直に形成されるスルーホールの内面に、特定の方向へ傾斜した開口部を有せしめてなる樹脂成形体を形成し、この樹脂成形体の全表面に無電解めっきを形成した後にネガ型レジストを塗布し、引き続き、露光、レジスト現像、エッチング、レジスト剥離を行うことからなる、立体回路部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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