説明

立体空間解析装置およびプログラム

【課題】立体地図空間上での空間解析に基づく情報提供により、地域状況把握を実現する立体空間解析システムを提供する。
【解決手段】立体地図の各構成ポリゴンを複数の平面に分割してセルを構築し該構成ポリゴンと関連付けて管理する手段と、解析対象となる該立体地図の該構成ポリゴンを特定してインデキシングした検索テーブルを構築する手段と、該セルについて該検索テーブルを用いて立体空間解析を実行する手段と、複数の該立体空間解析の結果を該セルに関連付けて統合管理する手段と、描画パラメータに基づき該複数の立体空間解析結果を合成し、上記立体地図を合成して表示させる手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体地図空間上での空間解析に基づく情報提供により、地域状況把握を実現する装置およびプログラムに関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、立体地図データの整備が進み、一般にも市販されるなど広く利用可能となってきた。これらは大別して、家屋やビルなどの立体形状をあらわす地物データと、地表面の起伏などをあらわす地形データなどからなる。測量技術の活用により位置精度および形状精度の高い3Dポリゴンデータと、それらの表面状態を詳細に表すテクスチャ画像データを含むなど、実世界を高精度にモデル化したデータとなっている。これらデータをCADソフトなどで表示するだけで、実世界を計算機上に仮想的に再現でき、特定の視点から特定の視線方向を見るとどのように見えるか、といった簡易的な景観シミュレーションが可能となる。
【0003】
さらに、地理情報システムなど、空間解析機能を用いた各種解析シミュレーションなどにより、地域状況の詳細把握が実現できる。例えば、地形データを解析してその結果を表示し、地域状況を把握する従来技術として、指定位置からの可視・不可視(または見通しの有無)を評価する可視領域解析がある(例えば特許文献1)。また、地物や地形などの注目物に関する周囲からの”見られやすさ”を評価する被視頻度解析がある(例えば非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−027676号公報
【0005】
【非特許文献1】奥敬一 他、「森林景観管理のための重要区域の選定と類型区分手法の開発」、森林総合研究所 平成8年度 研究成果選集http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/kouho/seika/1996/96-17.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、地形や地物といったデータ種別毎に立体空間解析機能が提供される場合が多く、それら異種データを統合利用して立体空間解析に供することは難しかった。また、立体空間解析の単位を詳細領域(立体地図データの各構成ポリゴンの部分領域)とし、各詳細領域に関する複数種類の空間解析結果を任意の組み合わせで合成し、さらに立体地図データと合成して出力することは検討されていなかった。本発明では、これらの課題を解決する立体空間解析装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願で開示する発明の概要を説明すれば以下の通りである。立体地図の各構成ポリゴンを複数の平面に分割してセルを構築し該構成ポリゴンと関連付けて管理する手段と、ユーザーからの解析指示に基づき解析指定位置を含む立体空間解析の解析パラメータを生成する手段と、該解析パラメータに基づき解析対象となる該立体地図の該構成ポリゴンを特定してインデキシングした検索テーブルを構築する手段と、該セルについて該検索テーブルを用いて立体空間解析を実行する手段と、複数の該立体空間解析の結果を該セルに関連付けて統合管理する手段と、複数の立体空間解析結果を組み合わせて合成するための描画パラメータを管理する手段と、該描画パラメータに基づき該複数の立体空間解析結果を合成し、さらに該解析結果の合成出力と上記立体地図データを合成して出力する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セルを活用して立体空間解析を行うことにより、複数種別の立体地図データを統合利用でき、さらに各構成ポリゴン内の部分領域などを対象とした詳細な空間解析も可能となる。また、ユーザー要求に応じて、複数の解析結果を任意の組み合わせでオンザフライで合成して表示でき、それらの総合評価などが可能となる。以上の構成により、複数の見通し解析結果などを任意の組み合わせにより合成情報として提供でき、被視頻度解析や可視領域解析など高度な空間解析が可能となる。
【0009】
これらの効果により、複雑な立体地図空間を詳細かつ高速に空間解析でき、ユーザーの多様な要求に応じた即時性および視認性の高い情報提供が可能となり、ユーザーの意思決定を効果的に支援できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本願では主に見通し解析を用いた可視領域解析と被視頻度解析の実施例について説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、放物運動などの物理シミュレーションや、それら複数解析方法の組み合わせとしても良い。また、組み合わせる解析方法や結果の数は実施例で提示するものに限られない。また、以下で説明する実施例は、コンピュータに読み込まれて実行されるプログラムで規定されるものであっても良いし、ハードウェア、または両者の協調処理によって実現されるもの(システムやネットワークサービスなど)であっても良い。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態における機能構成の例を示す図である。立体空間解析機能100は以下の手段と接続され、全体システムを構成する。すなわち、ユーザーからの解析指示や描画パラメータ設定などの入力を受け付けるマウスやキーボードなどの入力手段101と、各種解析結果および立体地図データを合成した結果を出力してユーザーに情報提供するモニタなどの出力手段102と、複雑な空間状況をモデル化した地物や地形などの3D形状データなどからなる立体地図データベース103である。ここで、立体地図データベース103はODBCインタフェースなどによる外部接続や、ネットワーク経由の接続、または立体空間解析機能100の内部に保持しても良い。また、様々な種類の立体地図データを統合利用するため、複数の立体地図データベースを併用しても良い。
【0012】
また、立体空間解析機能100は以下の手段により構成される。セル構築手段110は、立体地図データを読み込み、立体空間解析および解析結果管理の基盤要素・最小構成単位となる「セル」を構築する。解析パラメータ生成手段111は、立体空間データ上におけるユーザーからの指示操作に応じて、解析パラメータを生成する。ここで解析パラメータとは、解析指定位置や該解析指定位置における解析高度、該位置に存在する地図オブジェクトの種類やその構成ポリゴンの法線ベクトルから算出した解析方向など、解析処理の内容を特定するパラメータをいう。検索テーブル構築手段112は、該解析パラメータ(解析指定位置など)に応じて、空間解析対象となる地図オブジェクトの構成ポリゴンを特定し、それらを構造化して登録・インデキシングした検索テーブルを構築する。立体空間解析手段113は、該検索テーブルを用いて見通し解析や物理シミュレーションなど様々な手法により上記立体地図データを空間解析する。解析結果管理手段114は、該立体空間解析手段による複数の解析結果を、上記セルに関連付けて統合管理する。これにより、複数の指定位置からの立体空間解析結果や、さらには異なる解析手法により求められた解析結果などを纏めて管理でき、様々な組み合わせ利用を可能とする。描画パラメータ管理手段115は、該複数の解析結果を統合して描画出力する際に用いる描画パラメータを管理する。ここで描画パラメータとは、複数解析結果の組み合わせ演算手法やその表現手法など、描画処理の内容を特定するパラメータをいう。合成出力生成手段116は、該描画パラメータに応じて該複数の解析結果を組み合わせ、それらを合成した情報を生成し、さらに必要に応じて立体地図データと合成して出力手段102に出力する。以上の構成により、立体空間解析や描画パラメータ設定などユーザー操作(アクション)に応じて、複数の解析結果の組み合わせなどをオンザフライで切り換え、その合成結果を出力できる。
【0013】
図2は、本発明の一実施形態における立体空間解析機能の全体処理フローの例を示す図である。まず最初に立体地図データベースから立体地図データを読み込み、それを部分領域に分割して立体空間解析用のセルを構築する200。地形や地物、さらには図22で後述する仮想図形など、多様な種別の立体地図データを同様のセルに分割するため、以降の解析では該セルを対象とすることで、それら立体地図データを区別することなく統一的に扱う統合解析が可能となる。その後、ユーザーからの指示有無を判定し、ユーザーからの指示があるまで待ち状態となり、ユーザーからの指示があれば、その内容に応じて処理分岐する201。ユーザーから解析指示を受けた場合には、まず最初に、指示に応じて立体地図中で指定された解析指定位置や、該位置における解析高度や解析方向など、立体空間解析手法に関する各種解析パラメータを生成する202。続いて該解析パラメータに基づき、地図オブジェクトの構成ポリゴンを構造化してインデキシングし、空間解析処理における高速検索を可能とする検索テーブルを構築する203。それら該解析パラメータおよび該検索テーブルを用いて立体空間解析を実行する204。また、ユーザーから描画設定の指示を受けた場合には、描画パラメータ設定を実行する205。いずれの指示の場合とも、該描画パラメータに応じて複数の解析結果を纏めて合成出力データを生成し206、画面描画出力にて出力手段に結果を出力して207、ユーザーからの指示待ち状態に戻る。また、ユーザーから視点変更等の指示を受けた場合には、単なる再描画として画面描画出力を直接呼び出す207。
【0014】
以下、セル構築について、図3でフローを示し、図7から図9で詳述する。
図3は、本発明の一実施形態におけるセル構築処理フロー(200)の例を示す図である。まず最初に立体地図データを読み込み300、取り扱うデータ量の削減のため、メモリ容量や処理性能要求などに応じて解析対象範囲を限定する301。続いて、全ての地図オブジェクトについて302、さらに全てのポリゴンについてループをまわし303、セルを構築していく。すなわち、各ポリゴン上に等間隔の構成点を配置し、それらを用いて三角形を構成する304。ポリゴン外にはみ出た一部の構成点について、ポリゴン内に引き込み処理を行うなどして305、ポリゴン全体を隈なくセルで埋める。生成されたセル群は、該ポリゴンと対応付けて図8で後述するテーブル管理形式にて格納する306。以上の手順を全ポリゴンについて繰り返し307、さらに全地図オブジェクトについて繰り返すことで308、セル構築処理を実現する。最後に、生成されたセル総数に応じてメモリ確保し、解析結果を格納・管理するためのセル解析結果テーブルを構築する309。
【0015】
ここで、セルのサイズについては、システム初期設定値などあらかじめ設定された値を用いたり、ユーザーから設定入力を受け付けたり、あるいは解析精度に関するユーザー要求に応じて動的に変更しても良い。例えば、詳細な解析が必要な場合はセルサイズを小さく設定し、高速な解析が必要な場合はセルサイズを大きく設定する。その他、各種のメッシュ分割手法などを適用しても良い。また、解析対象範囲については、システム初期設定値などあらかじめ設定された値を用いたり、ユーザーから設定入力を受け付けたり、立体地図データの特定の図葉またはメッシュを選択したり、あるいはメモリ容量など解析処理を実行するコンピュータの環境条件に応じて動的に変更しても良い。また、図22で後述するように、セル構築対象の立体地図データは地物や地形に限定せず、仮想的な図形などを含めても良い。また、地形データについても、ポリゴン以外のDEM(Digital Elevation Model)などでも、DEM上の隣接する標高点3点から面を構成するなどしてポリゴン変換し、それを用いてセル構築しても良い。
【0016】
図7は、本発明の一実施形態におけるデータ階層管理の例を示す図である。データはツリー状に階層管理され、ツリーのルートにあたる全体状況を示すデータはシーン700である。該シーンには、解析対象のシーン701と解析対象外のシーン702が含まれる。該解析対象シーンには、解析対象となる地物や地形など多数の地図オブジェクト703が含まれ、各地図オブジェクトには複数のポリゴン704が含まれ、各ポリゴンには複数のセル705が含まれる(フロー306)。また、該解析対象シーン701については、空間配置に応じて各地図オブジェクトを解析に適した空間単位であるゾーン706毎にまとめ、図10で後述する検索テーブルとして空間インデキシング管理する。以上の構成により、解析対象セルを適切に限定でき、複雑な立体空間解析処理の高速化が可能となる。すなわち、全てのセルについて複雑な立体空間解析を実行する代わりに、まずゾーンに着目して解析範囲を限定することで、処理対象を削減できる。さらに、複数のセルを含む親要素であるポリゴンに着目し、必要に応じて該ポリゴンを代表図形(またはCG分野におけるバウンディング・ボリューム)として立体空間解析を実行できる。該ポリゴンにおける解析結果に応じて、子要素である各セルについて立体空間解析(詳細解析)を実行すべきか否かを選択できる。
【0017】
図8は、本発明の一実施形態におけるデータ管理形式の例を示す図である。図8(a)はポリゴン形状800の管理形式であり、各地図オブジェクトの各構成面(ポリゴン)について構成点リストを管理する。図8(b)はポリゴンおよびセル間の対応801の管理形式であり、各ポリゴンについてセルIDリストを管理する。図8(c)はセル形状802の管理形式であり、各セルについて構成点リストを管理する。図8(d)はセル解析結果803の管理形式であり、各セルについて複数の解析結果を統合管理する。複数の解析結果をセルに関連付けて統合管理することにより、図16にて後述するように、それらを組み合わせて様々な内容の統合解析結果を生成することができる。ここで、見通し解析などでは見通しの有無をON/OFFの2値データとしてセル管理するが、解析内容に応じて様々な種別のデータをセルに管理しても良い。例えば、解析対象位置からの距離などの連続値データなどである。セル描画の際に階調表現を用いれば、距離が近い場所は高彩度、距離が遠い場所は低彩度などとしてユーザーに情報提供できる。これにより、単なる見通しの有無だけでなく、見え易いまたは見え難い、といった大気の影響を考慮した状況把握も可能となる。
【0018】
図9は、本発明の一実施形態におけるセル構築の例を示す図である。図9(a)は解析対象の地物データ900であり、図9(b)は当該地物を構成するポリゴン901の例である。図9(c)は当該ポリゴンを隈なく詳細領域に分割して、セル902を構築した例である。セルの形状としては、面図形の最小構成単位である三角形を採用することで、高速かつ安定した解析および描画処理を実現できる。もちろん、任意数の構成点による多角形や矩形、円などを用いても良い。上記のようなセル構成により、セルを基本単位とし、各セル毎に空間解析を実行することで、地物全体または各構成ポリゴン全体の空間解析ではなく、ポリゴンの部分領域のみを対象とする詳細な空間解析が可能となる。
【0019】
図9(d)は、図9(c)の各セルについて空間解析した結果を格納し、それを描画出力した例である。例えば、地物正面からの見通し解析において、右側手前に障害物などが存在し、左側の一部範囲のみ見通しがあった空間解析結果910に相当する。同様に図9(e)は、地物左側手前に障害物などが存在し、右側の一部範囲のみ見通しがあった空間解析結果911に相当する。図9(f)は、図9(d)と図9(e)の空間解析結果を合成出力912した例である。複数の空間解析結果を加算(SUM演算)などの各種演算により合成して出力すれば、複数解析結果を総合した情報提供が可能となる。
【0020】
図9(g)は、セル枠を非表示化して地物を出力し、かつ図9(f)の加算(SUM演算)による空間解析結果を半透明で合成出力920した例である。これにより、テクスチャや微細構造などを含む地物の詳細状況を把握しつつ、空間解析結果を同時に把握できる。地物上の特定の窓など、地物上の特定位置と空間解析結果との空間関係を視覚的に直接把握できるため、詳細都市解析などに有効な情報を提供できる。また、複数の空間解析結果の相互作用などに着目し、必要に応じて描画パラメータを変更することもできる。例えば、図9(g)は加算(SUM演算)を、図9(h)は論理積演算(AND演算)921を、図9(i)は論理和演算(OR演算)922を用いて合成出力した結果である。以上の構成により、複雑な都市域において、様々な視点から空間解析した状況などを、周辺地物上に合成出力して状況把握できる。地物上の特定位置(窓や広告スペースなど)における詳細解析結果の評価も可能となり、不動産価値の評価や、屋外広告の効果的な設置位置の検討など、様々な応用が可能となる。
【0021】
以上、図3および図7から図9で述べた構成のセルを構築することで、以降の解析および描画の処理は全て該セルのみを対象とできる。また、様々な条件の複数の空間解析結果を同一構造のセルにて統合管理できる。これにより、複数種別の地図オブジェクト(地物や地形、仮想図形など)が混在するデータ環境であっても、一貫したシンプルな機能構成およびマンマシン・インタフェースにより統合処理が可能となる。また、異なる種類の立体地図データを統合的に扱いつつ、立体空間解析の単位を詳細領域(立体地図データの各構成ポリゴンの部分領域)とすることができる。さらに、空間解析の手法と解析結果の管理手法とを切り分けられることから、同一の空間解析手法による複数の解析結果(異なる位置からの見通し解析結果など)だけでなく、異なる空間解析手法(見通し解析と物理シミュレーションなど)による結果なども共通のセル管理体系にて統合管理できる。これにより、飛翔体からの見通し解析範囲と、物理シミュレーションによる飛翔体の飛行経路からの液体散布範囲を重畳表示するなど、異なる種類の空間解析手法の総合に基づく高度な応用が可能となる。
【0022】
以下、検索テーブル構築について、図4でフローを示し、図10から図11で詳述する。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態における検索テーブル構築処理フロー(203)の例を示す図である。ここで、検索テーブルの詳細については図7および図10でも詳述するが、解析指定位置からみた立体地図データの方向(方位角)に応じて、ゾーン毎(単位方向毎、例えば30度毎)に空間インデクスを構築して該立体地図データ(および各構成ポリゴン)を距離昇順などで登録することで、特定方向に存在する該立体地図データの高速検索を可能とするものである。
【0024】
構築処理の流れとしては、まず最初に解析パラメータ(検索テーブルの中心点となる解析指定位置など)を取得する400。続いて、該解析パラメータに基づき、解析対象範囲に含まれる立体地図データを取得し401、全地図オブジェクトについて402、該地図オブジェクトに含まれる全ポリゴンについて403、さらに該ポリゴンの全構成点についてループをまわす404。該構成点について解析指定位置からみた方位角および距離を算出し、最も右側および左側(および必要に応じて上側および下側)の方位角を取得し405、さらに解析指定位置に最も近い構成点の距離を取得する406。以上の手順を全構成点について繰り返し407、得られた方位角から包含ゾーンを特定する408。状況によっては複数ゾーンにまたがるポリゴンもあるが、全ての包含ゾーンに対して距離昇順となるようインデキシング登録する410。ここで、必要に応じて図11で後述する陰面消去を行い、解析に影響しないポリゴンをあらかじめテーブルから除外しておいても良い409。以上の手順を全ポリゴンについて繰り返し411、全地図オブジェクトについて繰り返し412、検索テーブルを構築する。以上述べた検索テーブルの活用により、詳細なセルを対象とした立体空間解析であっても高速処理が可能となる。
【0025】
図10は、本発明の一実施形態における空間分割法による検索テーブル構築の例を示す図である。最初の解析時に、立体空間解析の前処理として、広域の立体地図データ1000から、解析対象範囲1003に含まれる立体地図データ1001を読み込む。図10(a)は、手動により明示的に解析指定位置1002を指定し、所与または任意のサイズの領域内を解析対象範囲1003とした例である(フロー401)。クアドツリー(四分木)などにより構造化した高速検索テーブルを用いることで、立体地図の検索または取得の処理を高速化しても良い。また、当該解析対象範囲のサイズについては、あらかじめ決められた値を用いたり、手動でパラメータ設定したり、メモリ容量などの条件により自動で設定しても良い。また、当該解析対象範囲の形状については、計算処理が容易な正方形や円、立体地図データのメッシュ境界に合わせた矩形などとしても良い。これらにより、以降の検索テーブル構築および立体空間解析では、当該範囲の立体地図データのみを解析対象とすることで、広域かつ大容量の立体地図データを用いた場合であっても、解析に用いるデータ量を適切に削減できる。これにより、計算処理量を削減でき、複雑な都市空間の詳細な解析などでも、高速な解析処理を実現できる。ここで、本機能は検索テーブル構築の一環として位置付けたが、解析指定位置を指定する度に毎回解析対象範囲を変更する必要はなく、システム起動時にあらかじめ与えられたシステム初期設定位置などを用いたり、空間検索機能などにより自動で指定しても良い。また、一般に立体地図データベースは大容量のため、本機能により注目領域の低容量の立体地図データを切り出して、ノートPCなどにあらかじめ格納してモバイル利用しても良い。
【0026】
さらに、当該解析対象範囲の立体地図データについて、それらを構造化して空間解析しやすい形式で管理することで、以降の解析における処理高速化を実現できる。図10(b)に示した例では、上記解析指定位置1002を中心とした離散極座標系1011の検索テーブル1010を構成し、上記解析対象範囲の立体地図データの各構成ポリゴンを方向別(離散的なゾーン)にインデキシングして登録する(フロー408)。また、複数のゾーンにまたがる立体地図データは、各ゾーンに重複登録する。これにより、該解析指定位置を中心とした特定方向への空間解析において、該方向のゾーン1012に存在する地図オブジェクト1020のみを特定でき、効率的かつ高速な空間解析処理が可能となる。また、当該地物のインデキシングは、距離順にソートしてインデキシングしても良い(フロー410)。これにより、注目地物より解析指定位置(中心)に距離が近い地物群のみなどに限定的にアクセスでき、解析指定位置と注目地物との間の見通し解析など、高度な空間解析を高速に実現できる。
【0027】
図11は、本発明の一実施形態におけるポリゴン登録における陰面消去(フロー409)の例を示す図である。図11(a)および図11(b)は、一つの地図オブジェクト内における背面除去の例である。解析対象となる地図オブジェクトが平面のポリゴンにより構成され、かつ閉じた立体図形である場合、解析指定位置から視線ベクトル1100方向を見た際に、オブジェクトの表側になるポリゴン1101と裏側になるポリゴン1102が存在する。見通し解析などの直線的な立体空間解析を行う場合、上記検索テーブルの構築時に該裏側ポリゴンを登録対象から除外しても良い。これにより、後段の空間解析における計算対象のポリゴン数を半数近く削減でき、処理高速化が可能となる。具体的には、各地図オブジェクトの各ポリゴンについて法線ベクトルを算出し、視線ベクトル1100との成す角が90度より大きい法線ベクトル1103を持つポリゴン1101は検索テーブルに登録し、視線ベクトルとの成す角が90度以下の法線ベクトル1104を持つポリゴン1102は背面であるとして除去すれば良い。ここで、上記計算は、ベクトルの内積を計算し、その正負を判定することで容易に実現できる。
【0028】
また、図11(c)および図11(d)は、複数の地図オブジェクト間における陰面消去の例である。奥側ポリゴン1111が手前ポリゴン1110に完全に隠されてしまう場合には検索テーブルに登録せず、少なくとも一部が見えるポリゴン1112のみ検索テーブルに登録する、などの方法である。ここで、手前にあるポリゴンが凹部や穴などを含まない矩形などの凸図形である場合、以下の判定処理によりポリゴン同士の重畳を簡易に判定できる。すなわち、あらかじめ解析指定位置1120に対する手前ポリゴンの最も右側の方位角1121および左側の方位角1122、また必要に応じて上側の方位角および下側の方位角を算出しておく。奥側ポリゴン1111の全構成点について、解析指定位置1120からの方位角1124を求め、それらが全て上記手前ポリゴンの弧1123に(上下、左右とも)包含されている場合、奥側ポリゴンは完全に隠されているものとして検索テーブルに登録しない。なお、手前ポリゴンが凹部や穴などを含む場合、後段の空間解析処理と同様の詳細な判定処理が必要となるため、ここでは無条件に検索テーブルに登録するものとする。また、放物運動など物理シミュレーションによる立体空間解析を行う場合、直接見通しが無いポリゴンも解析対象となる場合があるため、これも同様に検索テーブルに登録するものとする。以上の構成により、ポリゴンが矩形形状からなる場合が多い都市立体地図などにおいて、空間解析に影響しない地図オブジェクトを解析対象から除外でき、立体空間解析処理を高速化できる。
【0029】
以下、立体空間解析について、図5でフローを示し、図12から図13で詳述する。
【0030】
図5は、本発明の一実施形態における立体空間解析処理フロー(205)の例を示す図である。まず最初に解析パラメータ(解析指示に応じて生成された解析位置や解析高度、解析方向など)を取得し500、以降の解析に用いる。続いて、上記解析指定位置を中心として構築された高速図形検索テーブルを取得する501。該検索テーブルの全方向について502、さらに該方向の全ポリゴンについて503、さらに該ポリゴンの全セルについてループをまわし504、解析対象となるセルを選択して、該セルと解析指定位置とを結ぶ視線ベクトルを生成する505。該検索テーブルを用いて、注目セルと解析指定位置との間(手前)に存在するポリゴンについて距離昇順にループをまわし506、該手前ポリゴンと視線ベクトルとの交差判定を行う507。交差判定については、図12で後述する手法などを用いれば良い。交差が無い場合、全ての手前ポリゴンについて交差判定を繰り返し508、ループを抜けた時点で見通しが有る(遮蔽物となるポリゴンがない)ものとして、解析結果をセルに関連付けて格納する509。また、交差が有る場合、当該セルは指定解析位置から見通しが無いものとしてループ処理を打ち切り、次のセルについて計算を開始する510。以上の手順を全ポリゴンについて繰り返し511、さらに検索テーブルの全方向について繰り返すことで512、立体空間解析処理を実現する。
【0031】
ここで、解析パラメータの取得については、画面上でユーザーが指定した位置が地物か地形かなどを判定し、地形であった場合には解析内容に応じて解析高度(人の視点や飛翔体の飛行高度など)を特定し、地物であった場合には該地物の構成ポリゴンの法線ベクトルから解析方向を特定するなどしても良い。また、特に飛翔体については、あらかじめ飛行高度を設定しておいたり、あるいはその場でパラメータ入力を受け付けても良い。以上述べたように、解析パラメータに応じて立体空間解析の処理内容を動的に切り換えることで、明示的な処理切り換え指示なしに、該解析指定位置または該周辺情報などに適した処理内容を選択的に実行できる。これにより、ユーザーからの操作指示は簡易な内容とし、かつ少ない操作手順で、複雑な立体空間解析を実現できる。
【0032】
また、解析指示については、点入力以外にも、マウスドラッグなどによる領域入力や、既存の地図図形(点、線、面、立体)の選択入力などにより、広がりを持つ範囲を指定しても良い。その場合には、該範囲内に複数の解析指定位置を均等配置(または所定のルールに従い配置)してグループ管理し、全ての解析指定位置について立体空間解析を実行しても良い。線や面、立体などからの複雑な空間解析についても、複数の点からの高速な空間解析とそれら複数の解析結果の合成表示出力として代用でき、容易に実現できる。これにより、線からの空間解析の例としては、道路や鉄道、飛翔体の空中移動経路などからの可視範囲や、逆に電線やパイプラインなどインフラ設備の被視範囲などを計算できる。
【0033】
図12は、本発明の一実施形態における階層的ポリゴン解析およびセル解析の例を示す図である。見通し解析では、フロー505にて生成される解析指定位置からの視線ベクトル1200と、注目地図オブジェクト1201などとの交差判定が頻繁に行われる(フロー507)。その処理効率化のため、図7にて上述したように、処理レベルに応じて、地図オブジェクト・ポリゴン・セルを階層的に使い分けて処理を行う。例えば、注目セルの手前にある地図オブジェクトについて、交差判定により交差の有無を特定したい場合、セルではなく地図オブジェクトを構成する各ポリゴン1202を代表図形として用いれば、ポリゴン数<<セル数の関係があるため、交差有無を高速判定できる。また、交差するポリゴン1203が見つかった時点で交差有無を特定でき、同一地図オブジェクトに属する他ポリゴンに対する処理打ち切りも可能となる。また、解析指定位置から地図オブジェクトに対し見通し解析を行う場合、該地図オブジェクトに属する各ポリゴンに属する各セル1204について、注目セルより手前側で視線ベクトル1200と交差するポリゴン1203が見つかった時点で、見通しが無いことを特定できる(フロー507)。ここで、実際の交差判定処理としては、ポリゴン1203を含む平面と視線ベクトル1200との交点1205を算出し、該交点が該ポリゴンの内部に含まれるか包含判定すれば良い。
【0034】
図13は、本発明の一実施形態におけるセル解析方法の例を示す図である。セルを用いた立体空間解析においては、理想的には、セルおよび解析指定位置から構成される三角柱(立体ポリゴン)と、他ポリゴンとの交差判定を行う必要がある。しかしながら、立体ポリゴンと平面ポリゴンの交差判定は処理負荷が大きく、全セルについて該処理を実行するのは非効率的である。そこで、セルを仮想的に点とみなし(以降、解析点と呼ぶ)、セル内の解析点と解析指定位置を結んだ視線ベクトルを生成し(フロー505)、該視線ベクトルと他ポリゴンとの交差判定により立体空間解析を実現する(フロー507)。ここで、セル内の解析点の配置には以下の方法等が考えられる。図13(a)は、セル1300の代表点(重心など)1301に着目して、見通し解析などの空間解析を行う例である。セルを一点近似して処理単純化するため、(セル数の多い)都市域など複雑な立体地図データを用いた立体空間解析でも、高速な処理が可能となる。ただし、セルが十分小さくない場合、セル端などで処理結果に矛盾が生じるなど、解析精度が低くなる場合がある。また、図13(b)は、セル1300の各構成点1302に着目して、見通し解析などの空間解析を行う例である。セルが十分小さい場合、上記三角柱を用いた場合とほぼ同等の演算となり、詳細な演算により高精度の空間解析が可能となる。ただし、一点近似の場合に比べ3倍の処理を要するという問題がある。その他、所定のルールに従いセル構成点1302の一点を選択して代表点1301としたり、さらには解析点をセル内でランダム配置しても良い。これらは、ニーズや利用シーンに応じて、ユーザーが自由に方式選択できるようにしても良い。
【0035】
以下、合成出力について、図6でフローを示し、図14から図16で詳述する。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態における合成出力処理フロー(206)の例を示す図である。まず最初にセル解析結果テーブルを取得し600、さらに描画パラメータを取得する601。全てのセルについて602、該セル解析結果テーブルに格納された複数の解析結果を該描画パラメータに基づき合成出力とする演算を実行して603、結果を描画用バッファに格納し604、これを繰り返す605。最後に、必要に応じて描画用バッファの全要素をチェックして最大値などを取得して輝度正規化などを実施し606、合成出力データとして生成完了する607。
【0037】
図14は、本発明の一実施形態におけるセル描画方法の例を示す図である。図14(a)は、フラット・シェーディングなどによりセルを単一色で描画1400する例である。高速な描画処理が可能となり、また処理能力の低いグラフィック・ボードを搭載した計算機(ノートPCなど)であっても、ユーザー指示に対し応答性能の良いシステムを実現できる。図13(a)に示した代表点解析方式等により得られた一つの解析結果を描画色としたり、図13(b)に示した複数解析結果を描画パラメータなどに従い総合して描画色としても良い。また、図14(b)は、スムース・シェーディングなどによりセルをグラデュエーションで描画1401する例である。図13(b)に示した構成点解析方式と組み合わせ、各構成点における解析結果を用いた色指定等により、セルサイズが大きい場合であっても、連続階調にて滑らかで自然な解析結果描画が可能となる。これらは、図13にて上述したセル解析方法と同様に、ニーズや利用シーンに応じて、ユーザーが自由に方式選択できるようにしても良い。
【0038】
図15は、本発明の一実施形態における描画パラメータ設定の例を示す図である。個別機能毎に複数のシンプルなインタフェースを用いることで、描画パラメータを簡潔に設定できる。図15(a)は、解析結果の表示ON/OFFを設定するインタフェース1500の例である。図15(b)は、複数解析結果をまとめた解析結果グループ毎の表示ON/OFFを設定するインタフェース1501の例である。複数点からの解析結果をまとめてグループ化し、線や面、立体からの解析結果とする場合などに、グループ単位でまとめて設定操作できる。図15(c)は、色合成演算方法を設定するインタフェース1502の例である。算術演算(加算SUM)、論理演算(論理和OR、論理積AND)などの各種演算方法を選択利用でき、ユーザーが解析結果の表現方法を変えて、様々な観点から地域状況を把握することが可能となる。例えば、道路上の複数点からの見通し解析結果について、加算SUM演算を指定することで被視頻度解析を実現でき、論理和OR演算を指定することで可視領域解析を実現できる。また、論理積AND演算では、道路全域から見通しがある範囲のみを特定でき、屋外看板などの設置計画に有用な情報を提供できる。これらにより、単一のシステムまたはインタフェースにおいて、様々な観点からの総合的な景観評価を実現できる。図15(d)は、配色テーブルを設定するインタフェース1503の例である。濃淡色表現や輝度温度表現など、任意の色情報を選択して出力できる。図15(e)は、空間解析手法を設定するインタフェース1504の例である。見通し解析や空間シミュレーションなどの空間解析手法を選択できると共に、各解析手法に対応するデフォルト配色などの関連情報についても同時に設定できるようにしても良い。あらかじめ手法毎に異なる配色を設定しておくことで、複数種類の解析手法を統合した結果などにおいても、視認性の高い情報提供が可能となる。このように、解析手法など解析パラメータの一部についても描画パラメータ設定と同じ手順またはインタフェースにて統一的に設定可能とすることで、解析結果の描画ON/OFFや色設定と同感覚で解析手法を簡易に切り換えられ、直感的かつ操作性の高いシステムを実現できる。また、空間解析手法を選択するだけでなく、プラグイン形式などの解析機能を追加可能なインタフェース構成としても良い。
【0039】
図16は、本発明の一実施形態における合成出力処理の例を示す図である。これまで述べた手順により、各セル毎に複数の解析結果を関連付けてセル解析結果803として登録管理しておき、それを描画パラメータ1600により合成演算し(フロー603)、その結果を描画用バッファ1601に格納する(フロー604)。以上の構成により、複数の解析結果から任意の解析結果を自由に選択してその場で組み合わせ、その組み合わせ結果を即座に反映した統合解析結果をオンザフライで合成出力できる。また、それら複数解析結果の色合成演算方法およびその表現に適した配色テーブルなどの描画パラメータにより、視認性の高い情報提供が可能となる。
【0040】
以下、図17から図21にて、都市立体地図空間における見通し解析を例に、画面上での解析指示から解析結果の合成出力まで、具体的な画面イメージに基づき説明する。
【0041】
図17は、本発明の一実施形態における立体地図上での解析指示の例を示す図である。出力手段の画面1700をユーザーからの操作および解析指示を受け付けるマンマシン・インタフェースとして利用することで、該画面上でのマウスのダブルクリック入力などにより直感的な解析指示操作1701が可能となり、歩道上の特定位置からの見通し解析や、地物上の特定窓からの見通し解析など、複雑な立体空間解析を簡易に実行できる。具体的には、該解析指示の入力を受けた画像座標系から立体地図空間座標系への座標変換を実行し、立体地図データ上での解析指定位置を特定する。次に該解析指定位置またはその周辺情報など解析パラメータを取得し、以降の立体空間解析に用いる。
【0042】
ここで、キーボードなどポインティング・デバイス以外の入力手段を用いても良い。例えば、住所や特定地物名称、視点位置や視線方向などの情報をキー入力し、それらを位置情報に変換することで、間接的に位置指定しても良い。また、直接指示操作を受けるだけでなく、解析記録ログ情報やスクリプトなどを通じて機械的に位置指定し解析実行しても良い。また、必要に応じて平面地図インタフェース1710も併せて利用可能とし、いずれのインタフェースからも解析指示操作を可能としても良い。これは、立体空間解析に用いる立体地図空間をインタフェース間で共有し、正射影などにより平面地図的に表現することで実現できる。
【0043】
図18は、本発明の一実施形態における地形指定解析の例を示す図である。図17にて上述した解析操作指示1701による解析指定位置が立体空間地図データにおける地形データであった場合、該地形データの属性等に応じた解析パラメータを生成して立体空間解析を実行する。例えば、解析内容に応じて解析高度を地表面高度+αとし、解析指定位置を鉛直上向きに移動した解析パラメータを生成する。すなわち、人の視点からの解析である場合、(解析指定位置=地表面高度+平均身長−頭頂部から目までの位置)などとすれば良い。また、車両からの解析である場合、設計上の視点高度を考慮した解析パラメータを生成する。また、飛翔体からの解析である場合、あらかじめ設定した飛行高度を用いたり、あるいはその場でパラメータを入力受け付けしても良い。また、解析指示または解析パラメータの内容に合わせた地形用シンボル情報1800の表示により、解析対象が地形であることや、解析指定位置および解析高度などの解析パラメータの内容をユーザーに提示しても良い。解析結果は立体地図データ上に合成出力することで、指定地形位置からの見通しがある範囲1801と見通しがない範囲1802を明瞭に把握できる。また、平面地図インタフェース1710上でも、同じシンボル情報および解析結果を出力し、多面的な状況把握を実現しても良い。
【0044】
図19は、本発明の一実施形態における地物指定解析の例を示す図である。図17にて上述した解析操作指示1701による解析指定位置が立体空間地図データにおける地物データであった場合、該地物データの属性等に応じた解析パラメータを生成して立体空間解析を実行する。例えば、注目地物の注目ポリゴンについて法線ベクトルを取得し、該法線ベクトルから解析方向などの解析パラメータを生成する。すなわち、地物側面にある窓からの見通し解析であるとした場合、立体空間解析の処理対象方向を360度全方向でなく、壁面から外向き180度の半球方向に限定する、などである。また、解析指示または解析パラメータの内容に合わせた地物用シンボル情報1900の表示により、解析対象が地物であることや、解析指定位置および解析方向(地物側面の法線ベクトル方向)などの解析パラメータの内容をユーザーに提示しても良い。ここで、現在出力されている立体空間解析結果のシンボル1900を強調するため、それ以外の過去実施分の立体空間解析に関連付けられたシンボルを非強調表示シンボル情報1903に切り換えて表示しても良い。解析結果は立体地図データ上に合成出力することで、指定地物位置からの見通しがある範囲1901と見通しがない範囲1902を明瞭に把握できる。
【0045】
図20は、本発明の一実施形態における算術演算による組み合わせ解析の例を示す図である。本技術によれば、図18で示したような地上(地形)からの解析結果1801と、図19で示したような地物からの解析結果1901など、異なる解析手法または位置からの解析結果をセルに関連付けて統合管理しているため、それらを組み合わせて利用することができる。その際、算術演算(加算SUM)および濃淡色表現などにより合成出力することで、複数の解析結果のオーバーラップが有る領域(複数箇所からの見通しが有る領域)2000は明るい色、オーバーラップが無い領域(複数箇所からの見通しがない領域)2001は暗い色、などとして表現できる。これにより、複数の見通し解析結果を組み合わせて合成出力することで、景観分析における被視頻度解析を容易に実現できる。
【0046】
図21は、本発明の一実施形態における論理演算による組み合わせ解析の例を示す図である。図20では複数の解析結果を組み合わせに算術演算を用いたが、論理演算(論理積AND)を利用すれば、複数の解析結果がオーバーラップする部分のみについて合成出力表現できる。これにより、図20と同じ解析結果を用いながら、複数解析結果のオーバーラップが有る領域2100とオーバーラップが無い領域2101を明瞭に区別して確認でき、複数箇所からの可視領域解析を容易に実現できる。
【0047】
図22は、本発明の一実施形態における仮想図形を用いた解析の例を示す図である。図22(a)に示すように、通常の地形データ2200や地物データ2201に加え、仮想図形2202を含めてセルを構築することで、様々な応用が可能となる。例えば、特定高度を飛行する飛翔体の行動計画立案などの応用例では、該特定高度に仮想平面を作成し、該仮想平面上のセルについても地上からの見通し解析などを実行することで、図22(b)に示すように、地上目標への見通し有無(空間解析結果)2210などを含む支援情報を提供できる。これより、複数解析結果のオーバーラップがある領域(重心など)と注目位置とを結ぶ最短経路を生成し、移動経路2211などとしても良い。その他、特定形状の平面ポリゴンや、特定空間の立体ポリゴン、特定位置から特定半径の距離上に構成される球面などの仮想図形を用いることで、任意形状の建造物などに関する景観シミュレーション(被視頻度解析)なども可能となる。
【0048】
図23は、本発明の一実施形態における立体シンボルの例を示す図である。3D図形を用いて、解析指示の内容または生成された解析パラメータの内容などに応じてシンボルの形状や向き、色などを動的に切り換えることで、上記内容を一目で理解可能なシンボルとできる。例えば、解析パラメータの一部は内部処理により自動で生成されるため、特にそれらの内容をユーザーに示しても良い。また、解析対象が複雑な立体地図データである場合、ユーザーは該立体地図データ上でのマウス操作などにおいて意図通りの指示入力が行えているか分からないことがあるため、入力された指示のフィードバックをユーザーに示しても良い。図23(a)は、地形データからの見通し解析におけるシンボル2300の例であり、シンボルの高さにより解析高度などを示しても良い。図23(b)は、地物データからの見通し解析におけるシンボル2301の例であり、シンボルの向きにより解析方向などを示しても良い。図23(c)は、飛翔体からの見通し解析におけるシンボル2302の例であり、シンボルの向きにより解析方向などを示しても良い。もちろん、テキストや2D図形など、解析指示(解析位置)などの内容を示すのみのシンプルな構成のシンボルや、それらを組み合わせて用いても良い。また、シンボルは単に表示するだけでなく、それを操作インタフェースとして用いても良い。例えば、見通し解析結果においてシンボルをダブルクリックするなどの操作により、描画位置を立体地図空間上の解析指定位置に移動し、描画視線を解析方向に移して再描画するなどしても良い。これにより、様々な視点から解析結果を多面的に評価検証できる。以上の構成により、システムの視認性および操作応答性を高めることができる。
【0049】
図24は、本発明の一実施形態における立体空間解析サービスの例を示す図である。これまで述べた立体空間解析方法は、単体システムに関する一例であった。しかしながら、本技術を応用すれば、クライアント・サーバやWebアプリなど、ネットワーク経由での情報提供も可能である。例えば、クライアント2401からネットワーク2400経由で、サーバとなる立体空間解析機能100に解析指示2410を送信する。サーバ側には立体地図データベース103が接続されており、該立体地図データを用いて立体空間解析を実行し、その解析結果2411を返送する。ここで、立体空間解析機能をプログラムとしてクライアント側に配信し、クライアント側の立体地図データベースを用いる構成としても良い。また、ネットワーク経由だけでなく、媒体経由で立体空間解析結果を配布する構成としても良い。以上の構成により、立体空間解析サービスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態における機能構成の例。
【図2】本発明の一実施形態における立体空間解析機能の全体処理フローの例。
【図3】本発明の一実施形態におけるセル構築処理フローの例。
【図4】本発明の一実施形態における検索テーブル構築処理フローの例。
【図5】本発明の一実施形態における立体空間解析処理フローの例。
【図6】本発明の一実施形態における合成出力処理フローの例。。
【図7】本発明の一実施形態におけるデータ階層管理の例。
【図8】本発明の一実施形態におけるデータ管理形式の例。
【図9】本発明の一実施形態におけるセル構築の例。
【図10】本発明の一実施形態における空間分割法による検索テーブル構築の例。
【図11】本発明の一実施形態におけるポリゴン登録における陰面消去の例。
【図12】本発明の一実施形態における階層的ポリゴン解析およびセル解析の例。
【図13】本発明の一実施形態におけるセル解析方法の例。
【図14】本発明の一実施形態におけるセル描画方法の例。
【図15】本発明の一実施形態における描画パラメータ設定の例。
【図16】本発明の一実施形態における合成出力処理の例。
【図17】本発明の一実施形態における立体地図上での解析指示の例。
【図18】本発明の一実施形態における地形指定解析の例。
【図19】本発明の一実施形態における地物指定解析の例。
【図20】本発明の一実施形態における算術演算による組み合わせ解析の例。
【図21】本発明の一実施形態における論理演算による組み合わせ解析の例。
【図22】本発明の一実施形態における仮想図形を用いた解析の例。
【図23】本発明の一実施形態における立体シンボルの例。
【図24】本発明の一実施形態における立体空間解析サービスの例。
【符号の説明】
【0051】
100…立体空間解析機能、101…入力手段、102…出力手段、103…立体地図データベース、110…セル構築手段、111…解析パラメータ生成手段、112…検索テーブル構築手段、113…立体空間解析手段、114…解析結果管理手段、115…描画パラメータ管理手段、116…合成出力生成手段、200…セル構築、201…ユーザー指示有無判定、202…解析パラメータ生成、203…検索テーブル構築、204…立体空間解析、205…描画パラメータ設定、206…合成出力生成、207…画面描画出力、300…立体地図データ読み込み、301…解析対象範囲設定、302…ループ1全地図オブジェクトについて、303…ループ2該地図オブジェクトの全ポリゴンについて、304…等間隔三角形配置、305…ポリゴン外構成点引き込み、306…生成セルとポリゴンを対応付け格納、307…ループ2終端、308…ループ1終端、309…セル解析結果テーブル構築、400…解析パラメータ取得、401…解析対象範囲立体地図データ取得、402…ループ1全地図オブジェクトについて、403…ループ2該地図オブジェクトの全ポリゴンについて、404…ループ3該ポリゴンの全構成点について、405…最右/左/上/下方位角取得、406…最短距離取得、407…ループ3終端、408…包含ゾーン(群)特定、409…陰面消去判定、410…距離昇順テーブル登録、411…ループ2終端、412…ループ1終端、500…解析パラメータ取得、501…検索テーブル取得、502…ループ1全方向について、503…ループ2該方向の全ポリゴンについて、504…ループ3該ポリゴンの全セルについて、505…指定位置とセルを結ぶ視線ベクトルを生成、506…ループ4指定位置から手前のポリゴンについて距離昇順に、507…手前ポリゴンと視線ベクトルとの交差判定、508…ループ4終端、509…セル解析結果格納、510…ループ3終端、511…ループ2終端、512…ループ1終端、600…セル解析結果取得、601…描画パラメータ取得、602…ループ1全セルについて、603…合成出力演算、604…描画用バッファ格納、605…ループ1終端、606…輝度正規化、607…合成出力データ生成、700…シーン、701…解析対象シーン、702…解析対象外シーン、703…地図オブジェクト、704…ポリゴン、705…セル、706…ゾーン、800…ポリゴン形状、801…ポリゴン・セル対応、802…セル形状、803…セル解析結果、900…地物データ、901…ポリゴン、902…セル、910…空間解析結果、911…空間解析結果、912…SUM演算合成出力、920…SUM演算地物半透明合成出力、921…AND演算地物半透明合成出力、922…OR演算地物半透明合成出力、1000…立体地図データ、1001…解析対象範囲立体地図データ、1002…解析指定位置、1003…解析対象範囲、1010…検索テーブル、1011…離散極座標系、1012…ゾーン、1020…地図オブジェクト、1100…視線ベクトル、1101…表側ポリゴン、1102…裏側ポリゴン、1103…成す角が90度以上の法線ベクトル、1104…成す角が90度以下の法線ベクトル、1110…手前ポリゴン、1111…奥側ポリゴン、1112…一部見えるポリゴン、1120…解析指定位置、1121…右側方位角、1122…左側方位角、1123…弧、1124…方位角、1200…視線ベクトル、1201…地図オブジェクト、1202…ポリゴン、1203…交差ポリゴン、1204…セル、1205…交点、1300…セル、1301…セル代表点、1302…セル構成点、1400…セル単一色描画、1401…セルグラデュエーション描画、1500…解析結果表示ON/OFF設定インタフェース、1501…解析結果グループ毎表示ON/OFF設定インタフェース、1502…色合成演算方法設定インタフェース、1503…配色テーブル設定インタフェース、1504…空間解析手法設定インタフェース、1600…描画パラメータ、1601…描画用バッファ、1700…画面、1701…解析指示操作、1710…平面地図インタフェース、1800…地形用シンボル情報、1801…見通しがある範囲、1802…見通しがない範囲、1810…平面地図インタフェース、1900…地物用シンボル情報、1901…見通しがある範囲、1902…見通しがない範囲、1903…非強調表示シンボル情報、1910…平面地図インタフェース、2000…複数解析結果オーバーラップが有る領域、2001…複数解析結果オーバーラップが無い領域、2010…平面地図インタフェース、2100…複数解析結果オーバーラップが有る領域、2101…複数解析結果オーバーラップが無い領域、2110…平面地図インタフェース、2200…地形データ、2201…地物データ、2202…仮想図形、2203…解析指定位置、2210…空間解析結果、2211…移動経路、2300…地形からのシンボル、2301…地物からのシンボル、2302…飛翔体からのシンボル、2400…ネットワーク、2401…クライアント、2410…解析指示、2411…解析結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体地図の各構成ポリゴンを複数の平面に分割してセルを構築し該構成ポリゴンと関連付けて管理する手段と、
ユーザーからの解析指示に基づき解析指定位置を含む立体空間解析の解析パラメータを生成する手段と、
該解析パラメータに基づき解析対象となる該立体地図の該構成ポリゴンを特定してインデキシングした検索テーブルを構築する手段と、
上記検索テーブルに含まれる上記構成ポリゴンに関連付けられる該セルについて該検索テーブルを用いて立体空間解析を実行する手段と、
複数の該立体空間解析の結果を該セルに関連付けて統合管理する手段と、
複数の立体空間解析結果を組み合わせて合成するための描画パラメータを管理する手段と、該描画パラメータに基づき該複数の立体空間解析結果を合成し、上記立体地図を合成して表示させる手段とを備えることを特徴とする立体空間解析装置。
【請求項2】
立体地図の各構成ポリゴンを複数の平面に分割してセルを構築し該構成ポリゴンと関連付けて管理し、ユーザーからの解析指示に基づき解析指定位置を含む立体空間解析の解析パラメータを生成し、該解析パラメータに基づき解析対象となる該立体地図の該構成ポリゴンを特定してインデキシングした検索テーブルを構築し、上記検索テーブルに含まれる上記構成ポリゴンに関連付けられる該セルについて該検索テーブルを用いて立体空間解析を実行し、複数の該立体空間解析の結果を該セルに関連付けて統合管理し、複数の立体空間解析結果を組み合わせて合成するための描画パラメータを管理し、該描画パラメータに基づき該複数の立体空間解析結果を合成し、さらに該解析結果の合成出力と上記立体地図を合成して表示させる立体空間解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項3】
上記指定位置および上記解析パラメータの内容を示すシンボル情報を、上記立体地図上に合成表示させることを特徴とする請求項2記載のプログラム。
【請求項4】
上記表示させる複数の立体空間解析結果に応じて、対応する上記シンボル情報を切り換えることを特徴とする請求項2又は3の何れかに記載のプログラム。
【請求項5】
上記立体地図に仮想的な図形を含み、該仮想図形についても上記セルを構築することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のプログラム。
【請求項6】
立体地図又は平面地図を表示手段に表示させ、上記ユーザーからの解析指示は上記表示される立体地図又は平面地図を介して受け付け、上記立体地図又は平面地図上に該立体空間解析結果を出力することを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載のプログラム。
【請求項7】
上記解析指示は点データまたは線データまたは面データまたは立体データの入力、または既存地図データの指定により指示されることを特徴とする請求項2乃至6の何れかに記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−72227(P2007−72227A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260048(P2005−260048)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】