説明

立体視ルーペ

【課題】簡単に焦点を合わせられると共に煽り角度も調整でき、且つ軽量でシンプルな構造の立体視ルーペを提供すること。
【解決手段】本発明は、一対のレンズ1と、それらを連結する弾性細線5とからなる立体視ルーペ10であって、弾性細線5がV字状であり、一対のレンズ1が互いの内側の内側部3でそれぞれ弾性細線5に固定されている立体視ルーペ10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体視ルーペに関し、更に詳しくは、簡単に焦点を合わせられると共に煽り角度も調整でき、且つ軽量でシンプルな構造の立体視ルーペに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、双眼視で目標物を拡大して見るための2枚のレンズを備えた立体視ルーペが知られている。
一般の立体視ルーペは、2枚のレンズが重なって配置されており、一方を水平移動させ開いた状態で用いられる。
【0003】
ところが、この場合、一方側のレンズと他方側のレンズとでは、段差を有するため、目標物に対する距離感が相違し、レンズの焦点位置が一致しないという欠点がある。
これに対し、焦点距離補正ガラスを一方側のレンズに配置して、焦点位置を延ばし、左右のレンズの焦点位置を一致させるルーペが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−69722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のルーペは、2枚のレンズの他に、焦点距離補正ガラスを必要とするため構造が複雑となりコストも高い。
また、焦点距離補正ガラスを引き出して調整し焦点を合わせる手間が必要となる。
また、レンズが固定されているので、煽り角度を調整できない欠点がある。
さらに、焦点距離補正ガラスを備えるので、重量も大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単に焦点を合わせられると共に煽り角度も調整でき、且つ軽量でシンプルな構造の立体視ルーペを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、一対のレンズを互いの内側部で弾性細線に固定することにより、意外にも、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、(1)一対のレンズと、それらを連結する弾性細線とからなる立体視ルーペであって、弾性細線がV字状であり、一対のレンズが互いの内側の内側部でそれぞれ弾性細線に固定されている立体視ルーペに存する。
【0009】
本発明は、(2)弾性細線が当接部を有し、該当接部が、レンズの内側部に形成された直線状の側壁部に圧接されている上記(1)記載の立体視ルーペに存する。
【0010】
本発明は、(3)弾性細線が当接部の先に屈曲した屈曲部を有し、該屈曲部がレンズに形成された小穴に嵌入されている上記(2)記載の立体視ルーペに存する。
【0011】
本発明は、(4)レンズ間の距離を調整する幅調整具が弾性細線に取り付けられている上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の立体視ルーペに存する。
【0012】
本発明は、(5)幅調整具が、弾性細線をスライド可能となっており、弾性細線には、幅調整具を仮固定するための止め溝が設けられている上記(4)記載の立体視ルーペに存する。
【0013】
本発明は(6)幅調整具が、弾性細線をスライド可能となっており、該幅調整具がスライドする弾性細線のスライド部が弾性細線の他の部位よりも太径になっている上記(4)又は(5)に記載の立体視ルーペに存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の立体視ルーペにおいては、レンズを、該レンズの内側部で弾性細線に固定された構造とすることにより、一対のレンズ間に段差が生じず、目標物と両レンズとの距離が同じになる。このため、焦点を合わせる作業が不要となり、操作が極めて簡単となる。
また、一対のレンズと、弾性細線とからなるので、軽量であり、構造も極めてシンプルなものとなる。
さらに、弾性細線の先にレンズが固定されているので、弾性細線を捻ることにより、レンズの煽り角度を容易に調整することができる。
さらにまた、弾性細線がV字状であるので、左右の弾性細線を指で摘むことにより、レンズ間の距離を調整し、使用者の双眼の瞳孔の位置に容易に合わせることができる。
【0015】
本発明の立体視ルーペにおいては、弾性細線の当接部が、レンズの内側部に形成された側壁部に圧接されている場合、弾性細線とレンズとの連結性がより向上し、レンズ固定力がより安定する。
また、弾性細線が当接部の先に屈曲した屈曲部を有し、該屈曲部がレンズに形成された小穴に嵌入されている場合、煽り角度を調整するためにレンズを捻った場合であっても、レンズが弾性細線から外れることを抑制できる。
【0016】
本発明の立体視ルーペにおいては、一対のレンズ間の距離を調整する幅調整具が弾性細線に取り付けられている場合、左右の弾性細線を指で摘んで、使用者の双眼の瞳孔の位置に合わせ、その位置でレンズ間の距離を仮固定することができる。
これにより、使用者の双眼の瞳孔の位置に合わせた状態で、双眼視で目標物を拡大して見ることができる。
このとき、幅調整具が、弾性細線をスライド可能となっており、弾性細線には、幅調整具を仮固定するための止め溝が設けられていることが好ましい。
この場合、段階的に、レンズ間の距離を調整でき、且つその位置で仮固定することができる。
また、幅調整具がスライドする弾性細線のスライド部が弾性細線の他の部位よりも太径になっている場合、スライドさせた位置で幅調整具を仮固定させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1の(a)は、本発明に係る立体視ルーペの一実施形態を示す正面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図2】図2の(a)は、本実施形態に係る立体視ルーペの弾性細線を示す正面図であり、(b)は、その側面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る立体視ルーペの弾性細線とレンズとの連結部分を示す拡大図である。
【図4】図4の(a)及び(c)は、本実施形態に係る立体視ルーペにおいて、レンズを弾性細線に取り付ける際の煽り角度の調整状態を示す概略図であり、(b)は、(a)のレンズを取り外した屈曲部を示す拡大概略図であり、(d)は、(c)のレンズを取り外した屈曲部を示す拡大概略図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る立体視ルーペの幅調整具を示す側面図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る立体視ルーペにおいて、幅調整具をスライドさせた状態を示す正面図である。
【図7】図7の(a)は、本実施形態に係る立体視ルーペを示す部分側面図であり、(b)及び(c)は、他の実施形態に係る立体視ルーペを示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0019】
図1の(a)は、本発明に係る立体視ルーペの一実施形態を示す正面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係る立体視ルーペ10は、一対のレンズ1と、それらを連結する弾性細線5とを有する。
また、弾性細線5には、一対のレンズ1間の距離H1を調整する幅調整具7が取り付けられている。
すなわち、立体視ルーペ10は、一対のレンズ1と、弾性細線5と、幅調整具7とからなる。
このため、立体視ルーペ10は、軽量であり、構造も極めてシンプルなものとなる。
【0020】
一対のレンズ1は、左側の左レンズ1aと、右側の右レンズ1bとからなり、左レンズ1aと右レンズ1bとは左右対称となっている。
左レンズ1a又は右レンズ1bは、凸レンズからなる本体部2と、該本体部2の内側に正面視で三角形状の内側部3とからなる。
すなわち、左レンズ1aは、本体部2の右レンズ1b側に内側部3が形成されており、右レンズ1bは、本体部2の左レンズ1a側に内側部3が形成されている。
なお、内側部3は、レンズ1としての機能を有しない。
また、内側部3には、側壁が直線状になった側壁部3aと、小穴3bとが形成されている。
【0021】
図1の(b)に示すように、立体視ルーペ10においては、左レンズ1aが内側部3で弾性細線5に固定された構造とし、右レンズ1bも同様な構造とすることにより、左レンズ1a及び右レンズ1b間に段差が生じず、目標物と左レンズ1a及び右レンズ1bとの距離が同じになる。
このため、焦点を合わせる作業が不要となり、操作が極めて簡単となる。
【0022】
図2の(a)は、本実施形態に係る立体視ルーペの弾性細線を示す正面図であり、(b)は、その側面図である。
図2の(a)及び(b)に示すように、弾性細線5は、正面視でV字状であり、取っ手部6aと、該取っ手部6aから二股状に延びる左側の左脚部5aと、右側の右脚部5bとからなる。
なお、左脚部5aと右脚部5bとは左右対称となっている。
左脚部5a又は右脚部5bは、スライド部6bと、スライド部6bに連続する当接部6cと、当接部6cの先に形成された屈曲した屈曲部6dとからなる。
【0023】
弾性細線5は、V字状であるので、左右の弾性細線5の脚部(左脚部5a及び右脚部5b)を指で摘むことにより、レンズ1間の距離を調整し、双眼の瞳孔の位置に容易に合わせることができる。
【0024】
取っ手部6aは、馬蹄状となっている。このため、摘み易く、左脚部5a及び右脚部5bを前後左右に動かしても、取っ手部6aの変形が極力、抑制され、摘み安定性がある。
【0025】
スライド部6bは、後述する幅調整具7がスライドする部位である。
スライド部6bは、取っ手部6a、当接部6c及び屈曲部6dからなる弾性細線5の他の部位よりも太径になっている。
このため、スライド部6bは剛性が高まり曲がりにくく、且つ幅調整具7をスライドさせた位置で仮固定させ易くなっている。
また、スライド部6bには、幅調整具7を仮固定するための止め溝7aが設けられている。
例えば、間隔を開けて複数の止め溝7aを設け、幅調整具7をそれらの止め溝7aに係止させることにより、段階的に、レンズ間の距離を調整でき、且つその位置で仮固定することができるようになっている。
【0026】
図3は、本実施形態に係る立体視ルーペの弾性細線とレンズとの連結部分を示す拡大図である。
図3に示すように、弾性細線5の当接部6cは、直線状であり、レンズ1の内側部3に形成された直線状の側壁部3aに部分的に圧接されるようになっている。
これに加え、屈曲部6dも、レンズ1の内側部3に形成された直線状の側壁部3aに圧接されるようになっている。
さらに、屈曲部6dの先は、レンズ1に形成された小穴3bに嵌入されるようになっている。
すなわち、立体視ルーペ10においては、当接部6c及び屈曲部6dを側壁部3aに圧接し、屈曲部6dの先を小穴3bに嵌入することにより、3点で弾性細線5とレンズ1とが連結性されている。
このため、仮に、屈曲部6dの先と小穴3bとの嵌入部分が上下方向にずれたとしても、他の2点が連結されているので、連結性が維持される。
【0027】
立体視ルーペ10においては、弾性細線5の先にレンズ1が固定されているので、使用時、弾性細線5を捻ることにより、レンズ1の煽り角度を容易に調整することができる。
【0028】
図4の(a)及び(c)は、本実施形態に係る立体視ルーペにおいて、レンズを弾性細線に取り付ける際の煽り角度の調整状態を示す概略図であり、(b)は、(a)のレンズを取り外した屈曲部を示す拡大概略図であり、(d)は、(c)のレンズを取り外した屈曲部を示す拡大概略図である。
図4の(a)〜(d)に示すように、立体視ルーペ10においては、弾性細線5に対して、レンズ1の煽り角度を上下に調整することができる。
すなわち、弾性細線5の屈曲部6dの屈曲させる角度を変えることにより、レンズ1の煽り角度を調整することができる。
これにより、各個人に適した煽り角度を設定提供することができる。その結果、目標物Aを光軸上に捉えることができるので、ぼやけずに正確に見ることが可能となる。
なお、上述したように、弾性細線5の当接部6cが、レンズ1の内側部3の側壁部3aに圧接されており、弾性細線5の先端の屈曲部6dが、レンズ1の内側部3の側壁部3aに圧接されており、屈曲部6dの先が、レンズ1の内側部3の小穴3bに嵌入されているので、煽り角度を調整した状態でレンズ1が弾性細線5に確実に固定されることになる。
【0029】
図5は、本実施形態に係る立体視ルーペの幅調整具を示す側面図である。
図5に示すように、幅調整具7は、側面視でC字状となっている。
幅調整具7は、着脱自在であり、弾性細線5の取っ手部6aから挿入可能となっている。
また、上述したように、弾性細線5のスライド部6bをスライドすると共に、止め溝7aで仮固定されるようになっている。
【0030】
図6は、本実施形態に係る立体視ルーペにおいて、幅調整具をスライドさせた状態を示す正面図である。
図6に示すように、立体視ルーペ10においては、幅調整具7をスライドさせることにより、左レンズ1aと右レンズ1bとの間の距離H2を縮めることができる。
これにより、図1に示す初めの状態の左レンズ1aと右レンズ1bとの間の距離H1よりも、図6に示す左レンズ1aと右レンズ1bとの間の距離H2が小さくなる。
したがって、幅調整具7を単にスライドさせることにより、使用者の双眼の瞳孔の位置に適宜合致させることができ、且つ、その位置で仮固定することができる。
すなわち、使用者が変わった場合であっても、その人の双眼の瞳孔の位置に合わせた状態で、双眼視で目標物を拡大して見ることができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0032】
例えば、本実施形態に係る立体視ルーペ10は、幅調整具7を備えているが、必ずしも備えていなくてもよい。
例えば、左右の弾性細線を指で摘むことにより、双眼の瞳孔の位置に合わせることができる。
【0033】
本実施形態に係る立体視ルーペ10は、弾性細線5の当接部6cが、レンズ1の内側部3に形成された直線状の側壁部3aに部分的に圧接されているが、弾性細線とレンズとを直線状に配置し、当接部を、レンズの内側部に形成された直線状の側壁部に全体的に圧接してもよい。
【0034】
図7の(a)は、本実施形態に係る立体視ルーペを示す部分側面図であり、(b)及び(c)は、他の実施形態に係る立体視ルーペを示す部分側面図である。
図7の(a)に示す立体視ルーペ10は、当接部6cに対して屈曲部6dが鋭角に設けられているのに対し、図7の(b)に示す立体視ルーペ11は、当接部6cに対して屈曲部6dが直角に設けられている。
このことにより、上述したように、弾性細線5とレンズ1とが直線状に配置されるので、当接部6cの全体を側壁部に圧接することができる。
その結果、弾性細線5とレンズ1との圧接強度がより向上する。
【0035】
また、図7の(c)に示す立体視ルーペ12は、当接部6cに対して屈曲部6dが直角に設けられ、当接部6cとスライド部6bとの間が屈曲している。
この場合、弾性細線5とレンズ1との圧接強度がより向上すると共に、取っ手部6aが手前にくるので、の立体視ルーペ12を持ち易く、目標物に対する焦点も合わせ易い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、双眼視で目標物を拡大して見るための2枚のレンズを備えた立体視ルーペとして用いられる。
本発明よれば、簡単に焦点を合わせられると共に煽り角度も調整でき、且つ軽量でシンプルな構造の立体視ルーペを提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・レンズ
1a・・・左レンズ
1b・・・右レンズ
2・・・本体部
3・・・内側部
3a・・・側壁部
3b・・・小穴
5・・・弾性細線
5a・・・左脚部
5b・・・右脚部
6a・・・取っ手部
6b・・・スライド部
6c・・・当接部
6d・・・屈曲部
7・・・幅調整具
7a・・・止め溝
10,11,12・・・立体視ルーペ
A・・・目標物
H1,H2・・・距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のレンズと、それらを連結する弾性細線とからなる立体視ルーペであって、
前記弾性細線がV字状であり、
前記一対のレンズが互いの内側の内側部でそれぞれ前記弾性細線に固定されている立体視ルーペ。
【請求項2】
前記弾性細線が当接部を有し、
該当接部が、前記レンズの前記内側部に形成された直線状の側壁部に圧接されている請求項1記載の立体視ルーペ。
【請求項3】
前記弾性細線が前記当接部の先に屈曲した屈曲部を有し、
該屈曲部が前記レンズに形成された小穴に嵌入されている請求項2記載の立体視ルーペ。
【請求項4】
前記レンズ間の距離を調整する幅調整具が前記弾性細線に取り付けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体視ルーペ。
【請求項5】
前記幅調整具が、前記弾性細線をスライド可能となっており、
前記弾性細線には、前記幅調整具を仮固定するための止め溝が設けられている請求項4記載の立体視ルーペ。
【請求項6】
前記幅調整具が、前記弾性細線をスライド可能となっており、
該幅調整具がスライドする前記弾性細線のスライド部が前記弾性細線の他の部位よりも太径になっている請求項4又は5に記載の立体視ルーペ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97213(P2013−97213A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240700(P2011−240700)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(502259300)株式会社21 (6)
【Fターム(参考)】