立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法
【課題】立体駐車場鉄骨を足場の支持に利用することにより、立体駐車場の鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができて、大幅な工期短縮が可能となる躯体構築方法を提供する。
【解決手段】立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bの躯体2を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体2に対向して構築された立体駐車場鉄骨1の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージ3とステージ上に組み立てられた建物所定階層分の枠組足場4とから成るユニット足場付き仮設ステージCを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体2の上部に建物の所定階層分の躯体2を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨用の鉄骨ユニット12を継ぎ足す工程を繰り返す。
【解決手段】立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bの躯体2を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体2に対向して構築された立体駐車場鉄骨1の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージ3とステージ上に組み立てられた建物所定階層分の枠組足場4とから成るユニット足場付き仮設ステージCを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体2の上部に建物の所定階層分の躯体2を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨用の鉄骨ユニット12を継ぎ足す工程を繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部に立体駐車場を設置する場合の立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都心部では超高層集合住宅の建設が増加しており、これらの超高層集合住宅においては、タワー式の立体駐車場が建物の内部に取り込まれる計画が多い。この場合、立体駐車場の設置部分は吹抜け状となる。従来では、この立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体を構築するにあたって、次の方法が採用されていた。
(1)図14に示すように、立体駐車場の構築予定位置に積み上げた枠組足場4を使用して、吹抜け周囲の躯体を構築する方法。
(2)特許文献1,2に記載されているようなジャンピング足場やセルフクライミング足場等を使用して、吹抜け周囲の躯体を構築する方法。
【0003】
前者の構築方法による場合は、膨大な数量の枠組足場4とその組立手間が必要であるばかりでなく、枠組足場4の解体撤去が完了した後でないと、枠組足場4が障害物になって立体駐車場の鉄骨工事を開始できないので、工期が長くなるという問題点があった。
【0004】
後者の方法では、ジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具(例えば、躯体側面から跳ね出した状態に設けられるブラケットや壁つなぎ、躯体に埋設されるアンカー類などである。)を設置することが必要であり、これらの金具の設置や上層階への盛り替えに多大の手間が掛かる上、ジャンピング足場やセルフクライミング足場が障害物になって、吹抜け部への鉄骨の吊り込みが行えないので、躯体の構築後でないと、立体駐車場の鉄骨工事を開始できず、工期が長くなる点では、前者の構築方法と大同小異である。
【0005】
【特許文献1】特許第3077559号
【特許文献1】特開2006−299559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたものであって、その目的とするところは、立体駐車場鉄骨を足場の支持に利用することにより、立体駐車場の鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができて、大幅な工期短縮が可能となる躯体構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術手段は次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法は、立体駐車場が内部に取り込まれた建物の躯体を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージとステージ上に組み立てられた建物の所定階層分の足場とから成るユニット足場付き仮設ステージを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足す工程を繰り返すことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法であって、建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨が先組みされた鉄骨ユニットであることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法であって、ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、ユニット足場付き仮設ステージを設置することにより、当該ユニット足場付き仮設ステージの重量を立体駐車場鉄骨に支持させ、この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築し、しかる後、前記ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去した状態で、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足し、これらの工程の繰返しによって、立体駐車場の周囲の躯体を構築するので、立体駐車場の鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができ、大幅な工期短縮が可能である。
【0011】
また、立体駐車場鉄骨でユニット足場付き仮設ステージを支持するので、従来方法のようなジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具やその設置・盛り替え作業が不要であり、しかも、立体駐車場鉄骨の構築が進行するにつれてユニット足場付き仮設ステージを上層階へと転用して行くので、仮設資材も少なくて済む。
【0012】
請求項1に記載の発明において、立体駐車場鉄骨としては、鋼材を単体の状態、若しくは、幾つかの鋼材を連結した状態で、構築位置に搬入し、現場で組み立てるようにしてもよいが、ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去した状態で、先行する立体駐車場鉄骨の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足すので、請求項2に記載の発明のように、所定階層分の立体駐車場鉄骨を先組みされた鉄骨ユニットとして、吊り込むことが可能となる。そして、請求項2に記載の発明によれば、ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去し、先組みされた鉄骨ユニットを吊り込んで、先行して構築された立体駐車場鉄骨の上に継ぎ足すことになるので、鋼材の揚重回数が低減されることになり、立体駐車場鉄骨の構築を能率よく行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されているので、嵌合部を立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合させることによって、ユニット足場付き仮設ステージの位置決めを行え、立体駐車場鉄骨に対するユニット足場付き仮設ステージの設置作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図10は、本発明に係る立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法の一例を示し、図11は、立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bの一例を示す。1は立体駐車場鉄骨、2は立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体であり、内部耐震壁を構成している。図1に示すCはユニット足場付き仮設ステージである。
【0015】
ユニット足場付き仮設ステージCは、タワークレーン等の揚重機によって吊下げ可能なステージ3と、ステージ3上に組み立てられた建物所定階層分(例えば2層分)の足場(図示の例では枠組足場4である。)とから構成されている。前記ステージ3は、図2に示すように、枠組足場4を設置する作業床となる鋼板5と、それを支持する鋼製の根太6及び大曳き7と、大曳き7上に設けた吊り金具8、吊下げ用ワイヤーロープ9、トラバーサ
ー10等で構成されている。
【0016】
ユニット足場付き仮設ステージCの隅角部下面には、立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aと嵌合する嵌合部11が設けられている。具体的には、図2に示すように、大曳き7を構成するH形鋼の両端部下面に角筒状の鋼管を溶接して、嵌合部11を構成してある。嵌合部11の下端開口部は下広がりのテーパー面に形成されており、ユニット足場付き仮設ステージCを揚重機によって吊り込む際、テーパー面の案内によって、嵌合部11を立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに容易に嵌合し得るように配慮されている。そして、嵌合部11が立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aと嵌合することにより、ユニット足場付き仮設ステージCが位置決めされ、且つ、立体駐車場鉄骨1で支持されるように構成されている。
【0017】
尚、嵌合部11を立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに嵌合した状態では、ユニット足場付き仮設ステージCの重量が立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに加わるので、嵌合部11と本設柱鉄骨1aをボルト連結しなくとも、ユニット足場付き仮設ステージCは安定に保たれるが、図示の例では、安全性向上のため、図3〜図5に示すように、嵌合部11の側面にボルト孔aを設けて、当該ボルト孔aと本設柱鉄骨1aのフランジに設けられた本設柱鉄骨接合用のボルト孔bとにわたって長ボルトcを挿入し、ナットdで抜け止めするように構成してある。
【0018】
立体駐車場鉄骨1を利用した躯体構築方法の施工手順を図面に基づいて説明すると、次の通りである。即ち、図11で示したような立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bにおける立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築するにあたり、先ず、図6の(A)に示すように、地上に設置した枠組足場4を使用して、建物Bの所定階層分(例えば、2層分)の躯体2を構築する。
【0019】
そして、枠組足場4を解体撤去した後、図6の(B)に示すように、予め、別の場所で先組みされた鉄骨ユニット12をタワークレーン等の揚重機で吊り込み、図7の(A)に示すように、建物Bの所定階層分の躯体2に対向する立体駐車場鉄骨1を構築する。
【0020】
しかる後、図7の(B)に示すように、ユニット足場付き仮設ステージCを揚重機によって吊り込み、図8の(A)に示すように、立体駐車場鉄骨1の上に、ユニット足場付き仮設ステージCを設置して、当該ユニット足場付き仮設ステージCの重量を立体駐車場鉄骨1に支持させる。
【0021】
この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージCを使用して、図8の(B)に示すように、前記躯体2の上部に建物Bの所定階層分(例えば、2層分)の躯体2を構築する。
【0022】
次に、図9の(A)に示すように、タワークレーン等の揚重機を使用して、前記ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去する。そして、図9の(B)に示すように、ユニット足場付き仮設ステージCが撤去された吹抜け状部分に、予め別の場所で先組みされた次の鉄骨ユニット12をタワークレーン等の揚重機で吊り込み、先行して構築された立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分(例えば、2層分)の立体駐車場鉄骨1を継ぎ足す。以下、図10に示すように、図8〜図9の工程を繰り返すことによって、図11で示したような立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bにおける立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築することができる。
【0023】
尚、上下の鉄骨ユニット12,12同士の接合は、下側の鉄骨ユニット12における最上段の梁鉄骨1bに取り付けたコラムステージ(図示せず)を使用して行われる。ユニット足場付き仮設ステージCの嵌合部11と本設柱鉄骨1aとのボルト連結も前記コラムス
テージを作業床として行うことができる。この場合、図1に示したように、ステージ3の一部に開閉可能な開口部3aを設けておけば、立体駐車場Aの周囲の躯体2に作業者の出入りする開口部がなくても、また、ユニット足場付き仮設ステージCと躯体2の隙間が狭くても、コラムステージとユニット足場付き仮設ステージC間の作業者の移動を容易に行うことができる。
【0024】
上記の構成によれば、建物Bの所定階層分の躯体2に対向して構築された立体駐車場鉄骨1の上に、ユニット足場付き仮設ステージCを設置することにより、当該ユニット足場付き仮設ステージCの重量を立体駐車場鉄骨1に支持させ、この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージCを使用して前記躯体2の上部に建物Bの所定階層分の躯体2を構築し、しかる後、前記ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去した状態で、前記立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨1を継ぎ足し、これらの工程の繰返しによって、立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築するので、立体駐車場Aの鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができ、大幅な工期短縮が可能である。
【0025】
また、立体駐車場鉄骨1でユニット足場付き仮設ステージCを支持するので、従来方法のようなジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具やその設置・盛り替え作業が不要であり、しかも、立体駐車場鉄骨1の構築が進行するにつれてユニット足場付き仮設ステージCを上層階へと転用して行くので、仮設資材も少なくて済む。
【0026】
殊に、上記の構成によれば、立体駐車場鉄骨1として先組みされた鉄骨ユニット12を作製しておき、ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去した状態で、当該鉄骨ユニット12を吊り込み、先行して構築された立体駐車場鉄骨1の上に継ぎ足すようにしたので、鋼材の揚重回数が低減されることになり、立体駐車場鉄骨1の構築を能率よく行うことができる。
【0027】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用できることは勿論である。例えば、本発明は、図11に示したように、立体駐車場Aの周囲4面が躯体2で囲まれた建物の他、図12に示すように、立体駐車場Aの周囲3面が躯体2で囲まれた建物や、図13に示すように、立体駐車場Aの周囲2面が躯体2で囲まれた建物おいて、立体駐車場Aの周囲3面又は周囲2面の躯体2を構築する場合にも適用可能である。また、上記の実施形態では、図6の(A)の工程において、枠組足場4を地上に設置したが、この枠組足場4に代えて、ユニット足場付き仮設ステージCを用いることも可能である。図示しないが、前述した嵌合部11に代えて、ユニット足場付き仮設ステージCの隅角部下面に本設柱鉄骨1aと同一断面のH形鋼を設け、上下の本設柱鉄骨1a同士の接合と同様に、当該H形鋼と本設柱鉄骨1aを、スプライスプレートを介してボルト連結するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】要部の側面図である。
【図3】要部の側面図である。
【図4】要部の正面図である。
【図5】要部の横断平面図である。
【図6】施工手順の説明図である。
【図7】図6に続く施工手順の説明図である。
【図8】図7に続く施工手順の説明図である。
【図9】図8に続く施工手順の説明図である。
【図10】図9に続く施工手順の説明図である。
【図11】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の一例を示す概略平面図である。
【図12】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の他の例を示す概略平面図である。
【図13】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の他の例を示す概略平面図である。
【図14】従来例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 立体駐車場
B 建物
C ユニット足場付き仮設ステージ
1 立体駐車場鉄骨
a,b ボルト孔
c 長ボルト
d ナット
1a 本設柱鉄骨
1b 梁鉄骨
2 躯体
3 ステージ
4 枠組足場
5 鋼板
6 根太
7 大曳き
8 吊り金具
9 吊下げ用ワイヤーロープ
10 トラバーサー
11 嵌合部
12 鉄骨ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内部に立体駐車場を設置する場合の立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都心部では超高層集合住宅の建設が増加しており、これらの超高層集合住宅においては、タワー式の立体駐車場が建物の内部に取り込まれる計画が多い。この場合、立体駐車場の設置部分は吹抜け状となる。従来では、この立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体を構築するにあたって、次の方法が採用されていた。
(1)図14に示すように、立体駐車場の構築予定位置に積み上げた枠組足場4を使用して、吹抜け周囲の躯体を構築する方法。
(2)特許文献1,2に記載されているようなジャンピング足場やセルフクライミング足場等を使用して、吹抜け周囲の躯体を構築する方法。
【0003】
前者の構築方法による場合は、膨大な数量の枠組足場4とその組立手間が必要であるばかりでなく、枠組足場4の解体撤去が完了した後でないと、枠組足場4が障害物になって立体駐車場の鉄骨工事を開始できないので、工期が長くなるという問題点があった。
【0004】
後者の方法では、ジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具(例えば、躯体側面から跳ね出した状態に設けられるブラケットや壁つなぎ、躯体に埋設されるアンカー類などである。)を設置することが必要であり、これらの金具の設置や上層階への盛り替えに多大の手間が掛かる上、ジャンピング足場やセルフクライミング足場が障害物になって、吹抜け部への鉄骨の吊り込みが行えないので、躯体の構築後でないと、立体駐車場の鉄骨工事を開始できず、工期が長くなる点では、前者の構築方法と大同小異である。
【0005】
【特許文献1】特許第3077559号
【特許文献1】特開2006−299559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を踏まえてなされたものであって、その目的とするところは、立体駐車場鉄骨を足場の支持に利用することにより、立体駐車場の鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができて、大幅な工期短縮が可能となる躯体構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明が講じた技術手段は次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法は、立体駐車場が内部に取り込まれた建物の躯体を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージとステージ上に組み立てられた建物の所定階層分の足場とから成るユニット足場付き仮設ステージを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足す工程を繰り返すことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法であって、建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨が先組みされた鉄骨ユニットであることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法であって、ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、ユニット足場付き仮設ステージを設置することにより、当該ユニット足場付き仮設ステージの重量を立体駐車場鉄骨に支持させ、この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築し、しかる後、前記ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去した状態で、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足し、これらの工程の繰返しによって、立体駐車場の周囲の躯体を構築するので、立体駐車場の鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができ、大幅な工期短縮が可能である。
【0011】
また、立体駐車場鉄骨でユニット足場付き仮設ステージを支持するので、従来方法のようなジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具やその設置・盛り替え作業が不要であり、しかも、立体駐車場鉄骨の構築が進行するにつれてユニット足場付き仮設ステージを上層階へと転用して行くので、仮設資材も少なくて済む。
【0012】
請求項1に記載の発明において、立体駐車場鉄骨としては、鋼材を単体の状態、若しくは、幾つかの鋼材を連結した状態で、構築位置に搬入し、現場で組み立てるようにしてもよいが、ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去した状態で、先行する立体駐車場鉄骨の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足すので、請求項2に記載の発明のように、所定階層分の立体駐車場鉄骨を先組みされた鉄骨ユニットとして、吊り込むことが可能となる。そして、請求項2に記載の発明によれば、ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去し、先組みされた鉄骨ユニットを吊り込んで、先行して構築された立体駐車場鉄骨の上に継ぎ足すことになるので、鋼材の揚重回数が低減されることになり、立体駐車場鉄骨の構築を能率よく行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されているので、嵌合部を立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合させることによって、ユニット足場付き仮設ステージの位置決めを行え、立体駐車場鉄骨に対するユニット足場付き仮設ステージの設置作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図10は、本発明に係る立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法の一例を示し、図11は、立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bの一例を示す。1は立体駐車場鉄骨、2は立体駐車場周囲の吹抜け状となる躯体であり、内部耐震壁を構成している。図1に示すCはユニット足場付き仮設ステージである。
【0015】
ユニット足場付き仮設ステージCは、タワークレーン等の揚重機によって吊下げ可能なステージ3と、ステージ3上に組み立てられた建物所定階層分(例えば2層分)の足場(図示の例では枠組足場4である。)とから構成されている。前記ステージ3は、図2に示すように、枠組足場4を設置する作業床となる鋼板5と、それを支持する鋼製の根太6及び大曳き7と、大曳き7上に設けた吊り金具8、吊下げ用ワイヤーロープ9、トラバーサ
ー10等で構成されている。
【0016】
ユニット足場付き仮設ステージCの隅角部下面には、立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aと嵌合する嵌合部11が設けられている。具体的には、図2に示すように、大曳き7を構成するH形鋼の両端部下面に角筒状の鋼管を溶接して、嵌合部11を構成してある。嵌合部11の下端開口部は下広がりのテーパー面に形成されており、ユニット足場付き仮設ステージCを揚重機によって吊り込む際、テーパー面の案内によって、嵌合部11を立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに容易に嵌合し得るように配慮されている。そして、嵌合部11が立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aと嵌合することにより、ユニット足場付き仮設ステージCが位置決めされ、且つ、立体駐車場鉄骨1で支持されるように構成されている。
【0017】
尚、嵌合部11を立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに嵌合した状態では、ユニット足場付き仮設ステージCの重量が立体駐車場鉄骨1の本設柱鉄骨1aに加わるので、嵌合部11と本設柱鉄骨1aをボルト連結しなくとも、ユニット足場付き仮設ステージCは安定に保たれるが、図示の例では、安全性向上のため、図3〜図5に示すように、嵌合部11の側面にボルト孔aを設けて、当該ボルト孔aと本設柱鉄骨1aのフランジに設けられた本設柱鉄骨接合用のボルト孔bとにわたって長ボルトcを挿入し、ナットdで抜け止めするように構成してある。
【0018】
立体駐車場鉄骨1を利用した躯体構築方法の施工手順を図面に基づいて説明すると、次の通りである。即ち、図11で示したような立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bにおける立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築するにあたり、先ず、図6の(A)に示すように、地上に設置した枠組足場4を使用して、建物Bの所定階層分(例えば、2層分)の躯体2を構築する。
【0019】
そして、枠組足場4を解体撤去した後、図6の(B)に示すように、予め、別の場所で先組みされた鉄骨ユニット12をタワークレーン等の揚重機で吊り込み、図7の(A)に示すように、建物Bの所定階層分の躯体2に対向する立体駐車場鉄骨1を構築する。
【0020】
しかる後、図7の(B)に示すように、ユニット足場付き仮設ステージCを揚重機によって吊り込み、図8の(A)に示すように、立体駐車場鉄骨1の上に、ユニット足場付き仮設ステージCを設置して、当該ユニット足場付き仮設ステージCの重量を立体駐車場鉄骨1に支持させる。
【0021】
この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージCを使用して、図8の(B)に示すように、前記躯体2の上部に建物Bの所定階層分(例えば、2層分)の躯体2を構築する。
【0022】
次に、図9の(A)に示すように、タワークレーン等の揚重機を使用して、前記ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去する。そして、図9の(B)に示すように、ユニット足場付き仮設ステージCが撤去された吹抜け状部分に、予め別の場所で先組みされた次の鉄骨ユニット12をタワークレーン等の揚重機で吊り込み、先行して構築された立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分(例えば、2層分)の立体駐車場鉄骨1を継ぎ足す。以下、図10に示すように、図8〜図9の工程を繰り返すことによって、図11で示したような立体駐車場Aが内部に取り込まれた建物Bにおける立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築することができる。
【0023】
尚、上下の鉄骨ユニット12,12同士の接合は、下側の鉄骨ユニット12における最上段の梁鉄骨1bに取り付けたコラムステージ(図示せず)を使用して行われる。ユニット足場付き仮設ステージCの嵌合部11と本設柱鉄骨1aとのボルト連結も前記コラムス
テージを作業床として行うことができる。この場合、図1に示したように、ステージ3の一部に開閉可能な開口部3aを設けておけば、立体駐車場Aの周囲の躯体2に作業者の出入りする開口部がなくても、また、ユニット足場付き仮設ステージCと躯体2の隙間が狭くても、コラムステージとユニット足場付き仮設ステージC間の作業者の移動を容易に行うことができる。
【0024】
上記の構成によれば、建物Bの所定階層分の躯体2に対向して構築された立体駐車場鉄骨1の上に、ユニット足場付き仮設ステージCを設置することにより、当該ユニット足場付き仮設ステージCの重量を立体駐車場鉄骨1に支持させ、この状態で、当該ユニット足場付き仮設ステージCを使用して前記躯体2の上部に建物Bの所定階層分の躯体2を構築し、しかる後、前記ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去した状態で、前記立体駐車場鉄骨1の上部に建物所定階層分の立体駐車場鉄骨1を継ぎ足し、これらの工程の繰返しによって、立体駐車場Aの周囲の躯体2を構築するので、立体駐車場Aの鉄骨工事と立体駐車場周囲の躯体工事とを並行して行うことができ、大幅な工期短縮が可能である。
【0025】
また、立体駐車場鉄骨1でユニット足場付き仮設ステージCを支持するので、従来方法のようなジャンピング足場やセルフクライミング足場を躯体に支持させるための金具やその設置・盛り替え作業が不要であり、しかも、立体駐車場鉄骨1の構築が進行するにつれてユニット足場付き仮設ステージCを上層階へと転用して行くので、仮設資材も少なくて済む。
【0026】
殊に、上記の構成によれば、立体駐車場鉄骨1として先組みされた鉄骨ユニット12を作製しておき、ユニット足場付き仮設ステージCを一時的に撤去した状態で、当該鉄骨ユニット12を吊り込み、先行して構築された立体駐車場鉄骨1の上に継ぎ足すようにしたので、鋼材の揚重回数が低減されることになり、立体駐車場鉄骨1の構築を能率よく行うことができる。
【0027】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用できることは勿論である。例えば、本発明は、図11に示したように、立体駐車場Aの周囲4面が躯体2で囲まれた建物の他、図12に示すように、立体駐車場Aの周囲3面が躯体2で囲まれた建物や、図13に示すように、立体駐車場Aの周囲2面が躯体2で囲まれた建物おいて、立体駐車場Aの周囲3面又は周囲2面の躯体2を構築する場合にも適用可能である。また、上記の実施形態では、図6の(A)の工程において、枠組足場4を地上に設置したが、この枠組足場4に代えて、ユニット足場付き仮設ステージCを用いることも可能である。図示しないが、前述した嵌合部11に代えて、ユニット足場付き仮設ステージCの隅角部下面に本設柱鉄骨1aと同一断面のH形鋼を設け、上下の本設柱鉄骨1a同士の接合と同様に、当該H形鋼と本設柱鉄骨1aを、スプライスプレートを介してボルト連結するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】要部の側面図である。
【図3】要部の側面図である。
【図4】要部の正面図である。
【図5】要部の横断平面図である。
【図6】施工手順の説明図である。
【図7】図6に続く施工手順の説明図である。
【図8】図7に続く施工手順の説明図である。
【図9】図8に続く施工手順の説明図である。
【図10】図9に続く施工手順の説明図である。
【図11】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の一例を示す概略平面図である。
【図12】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の他の例を示す概略平面図である。
【図13】立体駐車場が内部に取り込まれた建物の他の例を示す概略平面図である。
【図14】従来例を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 立体駐車場
B 建物
C ユニット足場付き仮設ステージ
1 立体駐車場鉄骨
a,b ボルト孔
c 長ボルト
d ナット
1a 本設柱鉄骨
1b 梁鉄骨
2 躯体
3 ステージ
4 枠組足場
5 鋼板
6 根太
7 大曳き
8 吊り金具
9 吊下げ用ワイヤーロープ
10 トラバーサー
11 嵌合部
12 鉄骨ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体駐車場が内部に取り込まれた建物の躯体を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージとステージ上に組み立てられた建物の所定階層分の足場とから成るユニット足場付き仮設ステージを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足す工程を繰り返すことを特徴とする立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【請求項2】
建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨が先組みされた鉄骨ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【請求項3】
ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【請求項1】
立体駐車場が内部に取り込まれた建物の躯体を構築するにあたり、建物の所定階層分の躯体に対向して構築された立体駐車場鉄骨の上に、揚重機によって吊下げ可能なステージとステージ上に組み立てられた建物の所定階層分の足場とから成るユニット足場付き仮設ステージを設置する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを使用して前記躯体の上部に建物の所定階層分の躯体を構築する工程と、当該ユニット足場付き仮設ステージを一時的に撤去する工程と、前記立体駐車場鉄骨の上部に建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨を継ぎ足す工程を繰り返すことを特徴とする立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【請求項2】
建物の所定階層分の立体駐車場鉄骨が先組みされた鉄骨ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【請求項3】
ユニット足場付き仮設ステージの下面に立体駐車場鉄骨の本設柱鉄骨と嵌合する嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体駐車場鉄骨を利用した躯体構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−30259(P2009−30259A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192998(P2007−192998)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
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