説明

立体駐車装置の稼動停止構造及び稼動停止方法

【課題】稼動及び停止を簡単に切り替えることが可能な立体駐車装置の稼動停止構造及び稼動停止方法を提供する。
【解決手段】立体駐車装置1の稼動停止構造では、支柱4の上端部に設けられた支持部材41によって上段パレット9を支持することにより、上段パレット9がそのまま地上面Gとなるので、ピットPを埋め戻した場合と遜色ない状態で装置の稼動を停止できる。地上面Gとしての上段パレット9は、支持部材41を介して支柱4に支持されるので強度も十分に担保される。装置の稼動を再開する場合には、支持部材41を支柱4から取り外すだけでよく、稼動及び停止を簡単に切り替えることができる。また、上段パレット9は、当接部材42を介して支持部材41に支持されている。これにより、立体駐車装置1の既存構成を保持しつつ、上述した稼動停止を行うことが可能となり、稼動停止構造の汎用性が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピット式の立体駐車装置の稼動停止構造及び稼動停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のピット式の立体駐車装置は、車両の地上面から所定の深さで形成されたピット内に、上下方向に配された複数段のパレットからなるパレット昇降体を備えている。また、ピット内には、駆動軸等が取付けられる複数の支柱がパレット昇降体の周囲に設置され、パレット昇降体の下部には、駆動軸に巻き回された前後一対の吊りチェーンが架け渡されている。そして、駆動軸による吊りチェーンの繰り出し及び巻き取りによってパレット昇降体が昇降し、指定されたパレットが地上面の位置に移動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303072号公報
【特許文献2】特開2007−146543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような立体駐車装置では、限られた敷地に多くの車両を収容できる一方で、種々の要因で利用率が低下する場合がある。この場合、維持費削減のために装置の一部又は全部を撤廃し、ピットの埋め戻し等を行うことが通常であるが、多額の費用が発生するほか、ピットとしての資産価値が失われてしまうデメリットが生じる。また、一旦装置を撤廃してしまうと、利用率が再び上昇した場合に装置を元の状態に復帰させることは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、稼動及び停止を簡単に切り替えることが可能な立体駐車装置の稼動停止構造及び稼動停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る立体駐車装置の稼動停止構造は、地上面から所定の深さで形成されたピット内に左右一対の前部支柱及び後部支柱を立設してなる枠体と、枠体の内側に配置され、上下方向に配された複数段のパレットからなるパレット昇降体と、を備えた立体駐車装置の稼動停止構造であって、支柱の上端部にパレットの少なくとも幅方向の端部を支持可能な支持部材が設けられ、最上段のパレットが地上面に位置するようにパレット昇降体がピット内に収容された状態で、最上段のパレットが支持部材で支持されていることを特徴としている。
【0007】
この立体駐車装置の稼動停止構造では、支柱の上端部に設けられた支持部材によって最上段のパレットを支持することにより、最上段のパレットがそのまま地上面となるので、ピットを埋め戻した場合と遜色ない状態で装置の稼動を停止させることができる。地上面としての最上段のパレットは、支持部材を介して支柱に支持されるので強度も十分に担保される。装置の稼動を再開する場合には、支持部材を支柱から取り外すだけでよく、稼動及び停止を簡単に切り替えることができる。
【0008】
また、支持部材は、左右一対の支柱の上端部間に延在する梁部材であることが好ましい。この場合、最上段のパレットの支持強度を一層確保できる。
【0009】
また、最上段のパレットにおける幅方向の端部には、支持部材に当接する当接部材が設けられ、当接部材が支持部材に当接した状態で当該支持部材に固定されることにより、当接部材を介して最上段のパレットが支持部材に支持されていることが好ましい。この場合、立体駐車装置の既存構成を保持しつつ、上述した稼動停止を行うことが可能となる。したがって、稼動停止構造の汎用性が高められる。
【0010】
また、本発明に係る立体駐車装置の稼動停止方法は、地上面から所定の深さで形成されたピット内に左右一対の前部支柱及び後部支柱を立設してなる枠体と、枠体の内側に配置され、上下方向に配された複数段のパレットからなるパレット昇降体と、を備えた立体駐車装置の稼動停止方法であって、支柱の上端部にパレットの少なくとも幅方向の端部を支持可能な支持部材を設ける工程と、最上段のパレットが地上面に位置するようにパレット昇降体をピット内に収容し、最上段のパレットを支持部材によって支持する工程とを備えたことを特徴としている。
【0011】
この立体駐車装置の稼動停止方法では、支柱の上端部に設けられた支持部材によって最上段のパレットを支持することにより、最上段のパレットがそのまま地上面となるので、ピットを埋め戻した場合と遜色ない状態で装置の稼動を停止させることができる。地上面としての最上段のパレットは、支持部材を介して支柱に支持されるので強度も十分に担保される。装置の稼動を再開する場合には、支持部材を支柱から取り外すだけでよく、稼動及び停止を簡単に切り替えることができる。
【0012】
また、支持部材として、左右一対の支柱の上端部間に延在する梁部材を用いることが好ましい。この場合、最上段のパレットの支持強度を一層確保できる。
【0013】
また、最上段のパレットにおける幅方向の端部に、支持部材に当接する当接部材を設ける工程を更に備え、当接部材を支持部材に当接させた状態で当該支持部材に固定することにより、当接部材を介して最上段のパレットを支持部材に支持させることが好ましい。この場合、立体駐車装置の既存構成を保持しつつ、上述した稼動停止を行うことが可能となる。したがって、稼動停止構造の汎用性が高められる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、稼動及び停止を簡単に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る稼動停止構造が適用された立体駐車装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示した立体駐車装置の側面図である。
【図3】図1に示した立体駐車装置の稼動停止構造を示す側面図である。
【図4】図3の要部拡大斜視図である。
【図5】本発明に係る立体駐車装置の稼動停止方法の一実施形態を示す図である。
【図6】図5の後続の工程を示す図である。
【図7】支持部材の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る立体駐車装置の稼動停止構造及び稼動停止方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る稼動停止構造が適用された立体駐車装置の一実施形態を示す正面図である。また、図2は、その側面図である。図1に示すように、立体駐車装置Fは、車両Kが出入りする地上面Gから所定の深さで形成されたピットP内に設けられ、地上1層・地下1層の立体駐車装置1(1a〜1c)が並設されて構成されている。同図に示す例では、立体駐車装置1a,1bが稼動中であり、立体駐車装置1cが稼動停止中となっている。
【0018】
始めに、稼動中の立体駐車装置1の構成について説明する。図1及び図2に示すように、立体駐車装置1は、枠体3を有している。枠体3は、ピットPの前部及び後部において左右一対に立設された支柱4によって構成されている。支柱4は、例えばH型鋼によって形成され、前後の支柱4,4の頂部の間には、通行用の道板が設けられている。
【0019】
枠体3に取り囲まれた空間には、パレット昇降体6が配置されている。パレット昇降体6は、車両が載置される上下のパレット7と、前後のパレット支柱8とによって構成されている。すなわち、パレット昇降体6は、上段パレット9、下段パレット10を有しており、これらの各パレット9,10が左右一対のパレット支柱8によって2段に連結されている。
【0020】
パレット7は、面板を有している。面板の上面は、車両が駐車可能な駐車面となっており、車両の進入位置を規制するための車止め等が設置されている。面板の成形には、例えば亜鉛めっき鋼板などの高い防錆能力を有する鋼板が用いられる。また、パレット7の幅方向の端部は、プレス等によって上方に折り曲げられており、折り曲げ部分の先端にはフランジが形成されている。下段パレット10における幅方向の端部10aには、吊りチェーン用ブラケット12,12が固定されている。各吊りチェーン用ブラケット12,12には、吊りチェーン用スプロケット13,13がそれぞれ軸支されている。
【0021】
パレット昇降体6の下部には、吊りチェーン用スプロケット13,13を介して前後一対の吊りチェーン14が架け渡されている。この吊りチェーン14により、パレット昇降体6は、ピットPの底面から所定の高さに吊り上げられた状態となっている。なお、図示していないが、パレット昇降体6には、吊りチェーン14のほかに、左右一対のバランスチェーンが架け渡されている。このようなバランスチェーンにより、パレット昇降体6が昇降する際の水平バランスが維持されるようになっている。
【0022】
次に、パレット昇降体6の昇降機構について説明する。この昇降機構に関し、立体駐車装置1は、図2に示すように、駆動モータ21と、駆動軸22と、上述した吊りチェーン14,14とを備えている。駆動モータ21は、駆動スプロケット33を有しており、駆動モータ21の本体部分は、枠体3における後部の支柱4に固定されている。
【0023】
また、駆動軸22は、パレット昇降体6の片側で、前後の支柱4,4の上端部間に回転可能に軸支され、吊りチェーン14の位置に対応して吊りチェーン用スプロケット34が固定されている。駆動軸22の後端部には、連動スプロケット35が固定され、駆動モータ21の駆動スプロケット33と連動スプロケット35との間には、エンドレスチェーン36が架け渡されている。
【0024】
以上のような立体駐車装置1の構成によれば、駆動モータ21によって駆動スプロケット33が回転すると、その回転力がエンドレスチェーン36を介して駆動軸22に伝達し、駆動軸22の回転に伴う吊りチェーン14,14の繰り出し及び巻き取りによって、パレット昇降体6が昇降する。パレット昇降体6の昇降によって所望するパレット7を入出庫位置(すなわち、地上面Gの位置)に移動させることで、パレット7への車両の入出庫が可能となる。
【0025】
次に、稼動停止中の立体駐車装置1の構成について説明する。図3は、図1に示した立体駐車装置の稼動停止構造を示す側面図である。また、図4は、図3の要部拡大斜視図である。図3に示すように、稼動停止中の立体駐車装置1cでは、上段パレット9が地上面Gに位置するようにパレット昇降体6がピットP内に収容された状態となっている。また、各支柱4の上端部には、それぞれ支持部材41が設けられ、上段パレット9の幅方向の端部9aには、支持部材41の位置に対応する当接部材42が設けられている。
【0026】
図4に示すように、支持部材41は、支柱4の内側面4aに接する取付面41aと、取付面41aの上端からパレット7側に向かって直角に突出する支持面41bと、取付面41aの下端と支持面41bの先端とを結ぶ補強面41cとによって中空の三角柱状をなしている。取付面41a及び支柱4の内側面4aには、例えば4箇所のボルト締結孔が設けられており、これらのボルト締結孔にボルトが螺入されることにより、支持部材41は支柱4に対して強固に固定されている。また、支持面41bには、例えば2箇所のボルト締結孔が設けられている。
【0027】
一方、当接部材42は、上段パレット9の幅方向の端部9aに接する取付面42aと、取付面42aの下端から支柱4側に向かって直角に突出する当接面42bと、当接面42bの先端から起立する起立面42cとを有している。取付面42aには、例えば緩衝性に優れるポリウレタン系接着剤といった構造用接着剤が付与されており、これにより、当接部材42は、上段パレット9の幅方向の端部9aに強固に固定されている。
【0028】
また、当接面42bには、支持部材41の支持面41bに設けられたボルト締結孔に対応する2箇所のボルト締結孔が設けられている。当接部材42は、これらのボルト締結孔にボルトが螺入されることにより、当接面42bが支持面41bに当接した状態で支持部材41に強固に固定されている。以上の構成により、立体駐車装置1cでは、上段パレット9が支持部材41を介して支柱4に支えられ、上段パレット9をそのまま地上面として残した状態で稼動が停止した状態となっている。
【0029】
図5及び図6は、本発明に係る立体駐車装置の稼動停止方法の一実施形態を示す図である。稼動状態の立体駐車装置1を稼動停止状態に移行する場合、まず、図5に示すように、上段パレット9が地上面Gよりも上方に位置するようにパレット昇降体6を昇降させる。次に、パレット昇降体6を囲む各支柱4の上端部に支持部材41をそれぞれ固定する。また、上段パレット9の幅方向の端部9aに、支持部材41に対応する当接部材42をそれぞれ固定する。
【0030】
支持部材41及び当接部材42を固定した後、図6に示すように、上段パレット9が地上面Gに位置するようにパレット昇降体6を下降させる。これにより、支持部材41の支持面41bに当接部材42の当接面42bが当接する。この後、支持部材41と当接部材42とをボルト固定することにより、上述した稼動停止構造が完成する。なお、駆動モータ21、吊りチェーン14,14といった昇降機構及びその他の部品を撤去するか否かは、例えば稼動を停止させる立体駐車装置の位置や稼動停止期間等の条件に基づいて決定すればよい。
【0031】
以上説明したように、この立体駐車装置1の稼動停止構造では、支柱4の上端部に設けられた支持部材41によって上段パレット9を支持することにより、上段パレット9がそのまま地上面Gとなるので、ピットPを埋め戻した場合と遜色ない状態で装置の稼動を停止させることができる。地上面Gとしての上段パレット9は、支持部材41を介して支柱4に支持されるので強度も十分に担保される。装置の稼動を再開する場合には、支持部材41を支柱4から取り外すだけでよく、稼動及び停止を簡単に切り替えることができる。このとき、劣化している部品等については適宜交換すればよい。
【0032】
また、この立体駐車装置1の稼動停止構造では、上段パレット9における幅方向の端部9aには、支持部材41に当接する当接部材42が設けられている。そして、当接部材42の当接面42bを支持部材41の支持面41bに当接させた状態で当接部材42を支持部材41に固定することにより、当接部材42を介して上段パレット9が支持部材41に支持されている。このような構成によれば、稼動中の上段パレット9にはボルト締結孔の形成といった加工を行わずに済むので、立体駐車装置1の既存構成を保持しつつ、上述した稼動停止を行うことが可能となる。したがって、稼動停止構造の汎用性が高められる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、稼動停止状態において、支持部材41によって上段パレット9における幅方向の端部9aが主として支持されるようになっているが、例えば図7に示すように、左右一対の支柱4,4の上端部間に延在する梁部材51を支持部材として用いてもよい。この場合、梁部材51によって上段パレット9を幅方向の全体にわたって支持できるので、稼動停止状態における上段パレット9の支持強度を一層確保できる。
【0034】
また、上段パレット9には、点検口を設けておくことが好ましい。上記実施形態では、稼動停止後もピットP内に支柱4やパレット昇降体6の構成が保存される。したがって、地上面Gとなる上段パレット9に点検口を設けておくことで、メンテナンス等の目的で作業員がピットP内に立ち入ることが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1(1a〜1c)…立体駐車装置、3…枠体、4…支柱、6…パレット昇降体、7…パレット、9…上段パレット、9a…端部、41…支持部材、42…当接部材、51…梁部材(支持部材)、G…地上面、P…ピット。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上面から所定の深さで形成されたピット内に左右一対の前部支柱及び後部支柱を立設してなる枠体と、
前記枠体の内側に配置され、上下方向に配された複数段のパレットからなるパレット昇降体と、を備えた立体駐車装置の稼動停止構造であって、
前記支柱の上端部に前記パレットの少なくとも幅方向の端部を支持可能な支持部材が設けられ、
最上段のパレットが前記地上面に位置するように前記パレット昇降体が前記ピット内に収容された状態で、前記最上段のパレットが前記支持部材で支持されていることを特徴とする立体駐車装置の稼動停止構造。
【請求項2】
前記支持部材は、左右一対の前記支柱の上端部間に延在する梁部材であることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置の稼動停止構造。
【請求項3】
前記最上段のパレットにおける幅方向の端部には、前記支持部材に当接する当接部材が設けられ、
前記当接部材が前記支持部材に当接した状態で当該支持部材に固定されることにより、前記当接部材を介して前記最上段のパレットが前記支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の立体駐車装置の稼動停止構造。
【請求項4】
地上面から所定の深さで形成されたピット内に左右一対の前部支柱及び後部支柱を立設してなる枠体と、
前記枠体の内側に配置され、上下方向に配された複数段のパレットからなるパレット昇降体と、を備えた立体駐車装置の稼動停止方法であって、
前記支柱の上端部に前記パレットの少なくとも幅方向の端部を支持可能な支持部材を設ける工程と、
最上段のパレットが前記地上面に位置するように前記パレット昇降体を前記ピット内に収容し、前記最上段のパレットを前記支持部材によって支持する工程とを備えたことを特徴とする立体駐車装置の稼動停止方法。
【請求項5】
前記支持部材として、左右一対の前記支柱の上端部間に延在する梁部材を用いることを特徴とする請求項4記載の立体駐車装置の稼動停止方法。
【請求項6】
前記最上段のパレットにおける幅方向の端部に、前記支持部材に当接する当接部材を設ける工程を更に備え、
前記当接部材を前記支持部材に当接させた状態で当該支持部材に固定することにより、前記当接部材を介して前記最上段のパレットを前記支持部材に支持させることを特徴とする請求項4又は5記載の立体駐車装置の稼動停止方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275833(P2010−275833A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132168(P2009−132168)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)