説明

立体駐車装置

【課題】傾斜地に適応可能で、基礎レベルの調整工事が不要であり、合理的に荷重を分散できる構成で、これにより安全装置を省くことができ、全体を軽快かつ簡便なものとして使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成の立体駐車装置を開発する。
【解決手段】パレットを昇降させる前後2本の昇降梁の4箇所の端部が夫々1組のチェーンとスプロケットの組み合わせにより個別に昇降運動を行うように構成され、前後2本の昇降梁の水平バランスを保持するためのバランスチェーンを有する4柱2段式の立体駐車装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置に関するものであり、さらに詳しくは、4本の柱を有する2段式の立体駐車装置において、車両が載置されるパレットを昇降させる前後2本の昇降梁のうち、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されていることを特徴とする立体駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の4本の柱を有する2段式の立体駐車装置paの代表的な構成を、図19に示す。p1は前部左方の柱、p2は前部右方の柱、p3は後部左方の柱、p4は後部右方の柱である。また、fbは左端が柱p1に格納され、右端が柱p2に格納された前部の昇降梁であり、rbは左端が柱p3に格納され、右端が柱p4に格納された後部の昇降梁である。昇降梁fb、rbの上面には自動車の車輪が載置される1組のパレットが長手方向を前後にして固着されるが、図19にては、パレットは省略している。この際、昇降梁fb、rbの昇降が可能なように、当然柱p1の右側面、柱p2の左側面、柱p3の右側面、柱p4の左側面は切欠されている。なお、符号FRは前方を、REは後方を、LEは左方を、RIは右方を示している。
【0003】
mは柱p3に固着されたモータで、モータmの駆動軸maにはスプロケットsmが枢着されており、スプロケットsmは駆動軸maと同期して回転する。スプロケットsmにはチェーンcmが係回されており、チェーンcmの一端は昇降梁rbの上面に公知技術のチェーンボルトcbを用いて固着され、チェーンcmの他端は自由端となっていて死重としてバランスウェイトwが吊設されている。なお、バランスウェイトwは構成上必要不可欠の要素ではなく、チェーンcmがスプロケットsmに確実に係回される構造になっていれば、バランスウェイトwを有せず、完全な自由端となっていても良い。
【0004】
昇降梁fbの左端にはスプロケットs1が回動自在に内設され、右端にはスプロケットs2が回動自在に内設されている。また、昇降梁rbの左端にはスプロケットs3が回動自在に内設され、右端にはスプロケットs4が回動自在に内設されている。
【0005】
スプロケットs1、s3には、図19に示すような状態でチェーンc1が係回されている。すなわち、チェーンc1は、上端部が柱p1の上面p1tにチェーンボルトcbにより固着され、上面p1tから垂下されてスプロケットs1の前部から下部に係回され、スプロケットs1の下部からスプロケットs3の上部に至るまで略水平に係回され、スプロケットs3の上部から後部に係回され、スプロケットs3の後部から垂下されて下端部がベースBCにチェーンボルトcbにより固着されている。チェーンc1は、柱p1の上面p1tに固着された上端部からスプロケットs1、s3を介してベースBCに固着された下端部に至るまで、緊張状態で係回されている。
【0006】
スプロケットs2、s4には、図19に示すような状態でチェーンc2が係回されている。すなわち、チェーンc2は、上端部が柱p2の上面p2tにチェーンボルトcbにより固着され、上面p2tから垂下されてスプロケットs2の前部から下部に係回され、スプロケットs2の下部からスプロケットs4の上部に至るまで略水平に係回され、スプロケットs4の上部から後部に係回され、スプロケットs4の後部から垂下されて下端部がベースBCにチェーンボルトcbにより固着されている。チェーンc2は、柱p2の上面p2tに固着された上端部からスプロケットs2、s4を介してベースBCに固着された下端部に至るまで、緊張状態で係回されている。
【0007】
上記構成の状態にて、駆動軸maを図19のβ方向に回転させると、スプロケットsmもβ方向に回転し、チェーンcmはスプロケットsmの前面にて巻き上げられ、チェーンcmの下端部がチェーンボルトcbにて固着されている昇降梁rbも上昇する。その結果として、昇降梁rbに内設されたスプロケットs3、s4も同期して上昇する。スプロケットs3、s4が上昇すれば、スプロケットs3からチェーンc1の下端部までの距離及びスプロケットs4からチェーンc2の下端部までの距離は長くなるが、チェーンc1あるいはチェーンc2の全長は不変であり、且つスプロケットs1からスプロケットs3までの距離及びスプロケットs2からスプロケットs4までの距離も不変であるので、その結果として、チェーンc1においてはスプロケットs1から上端部までの距離が、チェーンc2においてはスプロケットs2から上端部までの距離が、夫々短くなる。したがって、スプロケットs1、s2を内設した昇降梁fbは上昇する。
【0008】
前述のようにチェーンc1、チェーンc2の全長は不変なので、スプロケットs1、s2、s3、s4の径と歯数をすべて同一としておけば、結果として昇降梁fb、rbの上昇速度は等しくなり、昇降梁fb、rbの上面に固着されたパレット(図示せず)は水平状態を保持したまま上昇する。すなわち、チェーンc1においては、柱p3内にて長くなった分だけ柱p1内にて短くなり、チェーンc2においては、柱p4内にて長くなった分だけ柱p2内にて短くなるので、結果として昇降梁fb、rbの上昇速度は等しくなる。下降の場合は、全てのプロセスがこの逆となる。すなわち、駆動軸maを図19のγ方向に回転させることにより、スプロケットsmとチェーンcmを介して昇降梁rbが下降する。同時に、スプロケットs1、s3とチェーンc1及びスプロケットs2、s4とチェーンc2の作用によって昇降梁fbも同期して下降し、パレット(図示せず)も水平状態を保持したまま下降する。
【0009】
従来の4柱2段式の立体駐車装置は、略上記構成を基本としているが、この構成には、いくつかの問題点も指摘される。まず、基本的にチェーンc1とチェーンc2の長さが同じであるために、このような立体駐車装置の設置にあたっては、必ず4本の柱p1〜p4のベースBCを同一平面上に配置しなければならない。すなわち、設置面を完全に水平に造成する必要がある。しかるに、この基礎造成の作業がなかなかやっかいであり、特に凹凸に富む地形においては多大な労力を要することとなる。このような基礎造りの作業は、通常専門家に依頼しなければならないため、その分の費用も余分にかかることとなる。
【0010】
また、上記のようなバランスチェーンを用いて前後の昇降梁fb、rbを昇降させる方式においては、結局、駆動力の働く場所は前後の昇降梁fb、rbのどちらかの1点のみである。図19の立体駐車装置においては、後部の昇降梁rbの上面にチェーンcmの一端がチェーンボルトcbにて固着された1点が、駆動力の働く点となる。したがって、チェーンc1には昇降梁fb、rbの夫々半分の荷重がかかり、チェーンc2にも昇降梁fb、rbの夫々半分の荷重がかかることとなる。すなわち、チェーンc1にもチェーンc2にも、昇降梁1本分の荷重がまるまるかかることとなる。このように、2本のチェーンc1、c2のみで昇降梁fb、rbを昇降させる構成になっている点から、モータmの出力も相当程度大きなものが必要であり、チェーンcm、c1、c2も強度的に丈夫なものを使用しなければならないという構成からくる必然的な要請が存した。
【0011】
さらに、上記のように昇降梁fb、rbを支えているのは3本のチェーンcm、c1、c2のみであるから、このうち1本が切れると昇降梁fbあるいはrbの一端が急激に落下することとなり、すこぶる危険である。したがって、従来の立体駐車装置においては、必要以上に強度の高いチェーンを使用しなければならず、また万が一チェーンが切れた場合にも安全を確保できるように、チェーンが切れた瞬間にそのことを検知して昇降梁fb、rbを固定させる構成の安全装置を必ず取り付ける必要があった。
【0012】
上記のような従来の構成の立体駐車装置の有する問題点を改良せんとしていくつかの発明、考案がなされているが、下記特許文献1に記載の「傾斜地用立体駐車装置」もその一つであり、この考案においては、傾斜地に基礎を水平にすることなく設置可能であるという点が主な目的とされている。この考案においては、請求項1にて、「車両載置用パレットの四隅に接続された互いに等ピッチのチェーンが、互いに等速度で回転する互いに等ピッチの駆動スプロケットにそれぞれ巻き掛けられ、前記各チェーンが前記各駆動スプロケットで巻き取り又は巻き解きされることによって前記パレットが地表面設置位置とその上方の駐車位置との間を昇降せしめられる機構を具備した立体駐車装置を傾斜地の上に設け、前記パレットが前記上方駐車位置で水平となるとともに前期傾斜地上における地表面設置位置で前記傾斜地の傾斜と等しく傾斜した状態となるように前記各駆動スプロケットの径を異ならしめてなることを特徴とする傾斜地用立体駐車装置」と記されているが、要するに、2本の昇降梁の4つの端部を夫々独立したチェーンを用いて昇降させ、かつ、駆動スプロケットの径を変化させることによって2本の昇降梁の4つの端部の昇降速度を変化させて傾斜地に対応させようというものである。
【0013】
確かに、特許文献1のような構成を採ることにより、パレットが最上部位にては水平を保ち、設置状態では地面の傾斜に沿った傾斜状態となることは納得される。しかしながら、傾斜地の状態に合わせて駆動スプロケットの径を変化させるということは、実際上は、設置場所に合わせた完全なオーダーメイドの製品を造るということであり、まず、設置場所の測量を行って、その計測結果に合わせて夫々の駆動スプロケットの径を計算し、その計算に基づいて夫々の駆動スプロケットをオーダーメイドで製造するということになるが、この方法には多大な労力と時間を要し、結果として製造費用も従来の立体駐車装置とは比較にならない莫大なものとなることは明らかである。また、スプロケットの歯数は当然整数でなくてはならないから、駆動スプロケットの径も連続的に変化させることはできず、したがって傾斜地の状況に完全に対応させることは不可能といわねばならない。したがって、いくらオーダーメイドで造ったとしても、やはり設置場所の多少のレベル調整工事はどうしても必要とならざるを得ない。
【特許文献1】実用新案登録第2586974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記より、本発明の課題を、以下のとおりに設定した。
<課題1>
傾斜地に適応可能な4柱2段式の立体駐車装置を開発する。その際、夫々の傾斜地の状況に合わせたオーダーメイドの製品ではなく、製品そのものは汎用性が高い一般的なものとして製造され、夫々の傾斜地の状況に合わせた4柱2段式の立体駐車装置として組み立てられるような構成とする。また、設置場所のレベル調整工事は一切不要で、キットとして購入した使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成のものとする。
<課題2>
従来の立体駐車装置のように、1本のチェーンに昇降梁1本分の荷重がかかる構成ではなく、合理的に荷重を分散できる構成とする。これにより、強度的に過大な部材を用いることなく、全体を軽快かつ簡便に構成できるので、キットとして購入した使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成が実現される。
<課題3>
従来の立体駐車装置のように、昇降梁の各端部が1本のチェーンに支承されるという構成では、チェーンの切断に備えた安全装置の取付けが不可避であり、結果としてシステム全体が過大なものとならざるを得ない。したがって、安全装置を省いた状態で、1本のチェーンが切れても昇降梁の端部が落下しないような構成のものとしたい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を実現するためになされたものであり、以下の解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
4本の柱を有する2段式の立体駐車装置において、車両が載置されるパレットを昇降させる前後2本の昇降梁のうち、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されていることを特徴とする立体駐車装置。
<解決手段2>
前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が、1基の動力源から分配される駆動力によって夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されていることを特徴とする解決手段1に記載の立体駐車装置。
<解決手段3>
動力源から供給される駆動力を1本の駆動軸によって前部と後部に分配し、さらに前部において前部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び前部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有し、後部において後部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び後部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有していることを特徴とする解決手段2に記載の立体駐車装置。
<解決手段4>
前部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、前部の昇降梁の左端と右端の水平を確保するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有し、後部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、後部の昇降梁の左端と右端の水平を保持するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有していることを特徴とする解決手段1あるいは解決手段2あるいは解決手段3に記載の立体駐車装置。
<解決手段5>
4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸が貫設される軸孔が縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされ、駆動軸の軸受けを螺着するボルトが貫設されるボルト孔も縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされていることを特徴とする解決手段3あるいは解決手段4に記載の立体駐車装置。
<解決手段6>
4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸の端部を支持する軸受けが、柱本体に対してその上下位置を調整できる位置調節機構付きの軸受けであることを特徴とする解決手段3あるいは解決手段4あるいは解決手段5に記載の立体駐車装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の解決手段1の発明によれば、4本の柱を有する2段式の立体駐車装置において、車両が載置されるパレットを昇降させる前後2本の昇降梁のうち、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されているので、設置場所が傾斜地であっても、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部を夫々設置場所のレベルに合わせて下降させることが可能となった。すなわち、基礎レベルに関する工事は一切不要となった。また、上記4箇所の端部が夫々独立して上昇運動あるいは下降運動を行うように構成されている点から、荷重が分散されるので、従来の立体駐車装置のようにチェーンやスプロケットに過大な強度を求める必要がなくなり、簡単な構成の装置とすることができた。さらに上記の結果として、キットとして購入した使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成のものとすることができた。
【0017】
本発明の解決手段2の発明によれば、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が、1基の動力源から分配される駆動力によって夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されているので、動力源は1基で済み、この点も全体の構成を簡単なものとする上で大きな効果を奏するものである。
【0018】
本発明の解決手段3の発明によれば、動力源から供給される駆動力を1本の駆動軸によって前部と後部に分配し、さらに前部において前部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び前部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有し、後部において後部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び後部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有しているので、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々独立した1組のチェーンとスプロケットの組み合わせにより昇降せしめられることとなり、1組のチェーンとスプロケットの組み合わせにかかる荷重は昇降梁の半分、すなわち従来の立体駐車装置における1組のチェーンとスプロケットの組み合わせにかかる荷重の半分となった。したがって、従来の立体駐車装置のようにチェーンやスプロケットに過大な強度を求める必要がなくなり、簡単な構成の装置とすることができ、さらにその結果として、キットとして購入した使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成のものとすることができた。
【0019】
本発明の解決手段4の発明によれば、上記解決手段1〜3の構成に加えて、前部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、前部の昇降梁の左端と右端の水平を確保するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有し、後部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、後部の昇降梁の左端と右端の水平を保持するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有しているので、昇降中の昇降梁の水平状態の保持がより完全に行えるようになった。また、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々独立した2組以上のチェーンとスプロケットの組み合わせにより昇降せしめられることとなり、各端部において1本のチェーンが切れても該端部の落下が防止される。2本以上のチェーンが同時に切断されることはまずありえないので、その結果、チェーンやスプロケットに強度的に過大な部材を用いる必要がなくなり、また、システム全体の規模を大きなものとする安全装置を用いる必要もなくなったので、全体をより軽快かつ簡単な構成のものとすることが可能となった。したがって、キットとして購入した使用者が自分で組み立てられる程度の簡単な構成のものとすることができた。
【0020】
本発明の解決手段5の発明によれば、4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸が貫設される軸孔が縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされ、駆動軸の軸受けを螺着するボルトが貫設されるボルト孔も縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされているので、駆動軸を水平に保ったままで、駆動軸の前後の柱を設置場所の傾斜に合わせて設置することが可能となり、設置場所における一切のレベル調整が不要となった。すなわち、基礎のレベル調整工事が不要ということで、専門の工事業者の手を借りることなく、キットとして購入した使用者が自分で組み立てを行えるという効果を有する。また、駆動軸側ではない2本の柱に補助梁が架設される場合には、どちらかの柱に補助梁を固定するためのボルト孔を縦方向に長い長孔あるいはU字溝とすることにより、駆動軸側ではない2本の柱の側にても基礎のレベル調整工事が不要となる。また、上記長孔あるいはU字溝をある程度の余裕を持った長さとすることにより、1仕様の部材のキットによって各種の傾斜地に自在に適応可能な、汎用性の高い構成とすることが可能である。
【0021】
本発明の解決手段6の発明によれば、4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸の端部を支持する軸受けが、柱本体に対してその上下位置を調整できる位置調節機構付きの軸受けであるので、駆動軸を水平に保ったままで駆動軸の前後の柱を設置場所の傾斜に合わせて設置することが可能となり、設置場所における一切のレベル調整が不要となった。すなわち、基礎のレベル調整工事が不要ということで、専門の工事業者の手を借りることなく、キットとして購入した使用者が自分で組み立てを行えるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
<実施例1の構成>
図1、図2は本発明の実施例1の立体駐車装置Pの左側面図、図3は平面図、図4は正面図である。実施例1の立体駐車装置Pは基盤面(地面)Gに4本の柱1、2、3、4が垂設され、前部の柱1,2間に昇降梁5が昇降自在に渡設され、後部の柱3,4間に昇降梁6が昇降自在に渡設され、昇降梁5,6の上面に、昇降梁5,6の長手方向に直交して車C2の車輪が載置されるパレットPa、Pbが固着されて構成されている。7は前部の柱1に添接されたモータMからの駆動力を後部に伝達する駆動軸、8は柱1、3間に渡設固着された補助梁、9は柱2、4間に渡設固着された補助梁である。柱1〜4はベースBa、Bbにより基盤面Gに固着垂設されている。図1〜図4では、基盤面Gが前方に低く後方に高い状態の傾斜地の場合を示している。すなわち、柱1、2のベースBaと柱3,4のベースBbの間が角度αで傾斜している状態である。図1にては、パレットPa,Pbが最上位置にある状態を示し、パレットPa,Pbは水平状態で、その上には車C2が載置され、パレットPa,Pbの下部の空間Sには車C1が格納されている。車C1は直接基盤面G上に載置された状態である。なお、CBは柱1に付設された制御装置で、モータMの動作を制御し、それにより昇降梁5、6の昇降を制御する。すなわち、上昇スイッチSW1を押せば昇降梁5、6は上昇し、下降スイッチSW2を押せば昇降梁5、6は下降する。ARは制御装置CBのアームである。なお、符号FRは前方を、REは後方を、LEは左方を、RIは右方を、夫々表している。
【0024】
柱1の上部の構成の詳細を図5、図12に示す。柱1は4角柱で、右側面の上端部を除く大部分には長方形状の開口部11が穿設されている。12は柱1の背面上端部に刻設されたU字溝であり、13はU字溝12の下方に穿設された長円形のモータ軸孔である。14は柱1の背面上端部に溶着された長方形状の補強板であり、柱1の背面上端部に刻設されたU字溝12と同形同大のU字溝14aが穿設されている。図12から明らかなように、U字溝12とU字溝14aはぴったり重なる位置に穿設されている。U字溝12の周囲には合計8個の円孔hrが穿設され、U字溝14aの周囲にも合計8個の円孔hrが穿設されている。U字溝12の周囲の8個の円孔hrとU字溝14aの周囲の8個の円孔hrは夫々がぴったりと重なるように構成されている。また、15は補強版14と同大の長方形状の補強板で、柱1の正面上端部に溶着されており、上部に制御装置CB(図1参照)のアームARが取付けられ、下部には図示しない円孔が4個穿設されている。さらに、16は柱1の上端に嵌着される上板で、略正方形状の上面と一体となった左右両側面を有し、4組のボルトBナットNにより左右両側面が柱1の上端に螺着固定される。上板16の上面には円孔h11が穿設されている。
【0025】
柱1の背面のモータ軸孔13の下方にはモータ架台MBが固着されており、モータ架台MBにはモータMが螺着固定されている。モータMの回転軸MXはモータ軸孔13から柱1の内部に挿入されている。また、駆動軸7は軸受けB1、B2に支承され、U字溝14a、12に挿入されて柱1の内部に貫入されている。軸受けB1は柱1の上部正面内側に4組のボルトBナットNにより螺着固定され、軸受けB2は柱1の上部背面に補強版14を介して4組のボルトBナットNにより螺着固定されている。また、8は補助梁であり、その前端部が補強版14を介して柱1の上端部に4組のボルトBナットNにより螺着固定されている。
【0026】
軸受けB1、B2は同一の構成であるので、軸受けB1の詳細な構成を図15aに示す。軸受けB1は正方形の平板状の本体B1aの背面中央に円筒状の凸部B1bが突設され、凸部B1b内部にはベアリングB1cが内装され、さらにベアリングB1cの内側に、円筒形状の軸支部B1dが回動自在に設けられており、軸支部B1dの内部の円孔B1eは軸受けB1の正面から背面にかけて貫通している。駆動軸7はこの軸支部B1dの内部の円孔B1eに貫設され、駆動軸7と軸支部B1dは固着されるので、駆動軸7は軸受けB1の本体B1aに対してベアリングB1cの作用により回動自在に貫設されていることとなる。なお、hbは螺着用の円孔で、ボルトB(図12参照)が挿通される。
【0027】
柱2の上部の構成の詳細を図14aに示す。柱2は4角柱で、左側面の上端部を除く大部分には長方形状の開口部21が穿設されている。22は柱2の上端に嵌着される上板で、長方形状の上面と一体となった左右両側面を有し、この左右料側面にて4組のボルトBナットNにより柱2の上端に螺着固定される。上板22の上面には円孔h21、h22が穿設されている。9は補助梁であり、補助梁9の前端部が柱2の上端部に2組のボルトBナットNによって螺着固定されている。
【0028】
柱3の上部の構成の詳細を図5、図13に示す。柱3は4角柱で、右側面の上端部を除く大部分には長方形状の開口部31が穿設されている。32は柱3の正面上端部に刻設されたU字溝であり、U字溝32は柱1のU字溝12より長く構成されている。33は柱3の正面上端部に固着された長方形状の補強板であり、その縦方向の長さは柱1の補強版14の縦方向の長さより長く構成され、柱3の正面上端部に刻設されたU字溝32と同形同大のU字溝34が穿設されている。U字溝32の周囲には合計4個の長孔hoが穿設され、U字溝34の周囲にも、合計4個の長孔hoが穿設されている。補強版33は、U字溝32U字溝34がぴったりと重なり、補強版33の4個の長孔hoと柱3の4個の長孔hoがぴったりと重なる位置にて柱3の正面に溶着されるものであるが、図13にては、柱3のU字溝32と長孔hoの状態が良くわかるように柱3から分離して表示している。また、35は柱3の上端に嵌着される上板で、略正方形状の上面と一体となった左右両側面を有し、この左右両側面が4組のボルトBナットNにより柱3の上端に螺着固定される。上板35には円孔h31と、円孔31より大きい円孔h32が穿設されている。
【0029】
駆動軸7の後端部は軸受けB4、B5(図5参照)に支承され、U字溝34、32に挿入されて柱3の内部に貫入されている。軸受けB4は柱3の上部正面に補強版33を介して4組のボルトBナットNにて螺着固定され、軸受けB5は柱3の上部背面内側にて、上板35からボルトBBにより上下移動可能に吊設されている(図5参照)。軸受けB4は軸受けB1、B2と同一の構成であるが(前後対称に使用)、軸受けB5は固定位置を調節可能な位置調節機構付きの軸受けとなっており、その詳細な構成を図15b、図15cに示す。
【0030】
軸受けB5は正方形の平板状の下部B5aの上面に略直方体ブロック状の上部B5bが一体として突設されて構成されている。下部B5aの中央にはベアリングB5cが内装され、さらにベアリングB5cの内側に、円筒形状の軸支部B5dが回動自在に設けられており、軸支部B5dの内部の円孔B5eは軸受けB5の正面から背面にかけて貫通している。駆動軸7はこの軸支部B5dの内部の円孔B5eに貫設され、かつ軸支部B5dに固着されるので、駆動軸7は軸受けB5の下部B5aに対してベアリングB5cの作用により回動自在に貫設されていることとなる。
【0031】
軸受けB5の上部B5bの正面から背面にかけては、正面視が長方形状のナット孔B5fが穿設されている。また、上部B5bの上面には、円孔B5gが穿設されている。円孔B5gには、図15cに見るようにボルトBBが挿通され、ボルトBBの下端はナット孔B5fに配置されたナットN3によって円孔B5gから脱落しないように固定される。また、ボルトBBの上端部は、柱3の上端部に覆設された上板35に穿設された円孔h32に挿通されて上板35の上面より上方に突出され、2重のナットN1、N2によって固定される。軸受けB5は、ナットN1、N2の位置を調節することによって、柱3内部での上下の位置を調節することが可能なように構成されている。なお、下部B5aの左側面に刻設された溝B5h、右側面に刻設された溝B5iは図10に見るように柱3内部に固着されたレールR1、R2を受けるための構成で、軸受けB5は、レールR1、R2に沿って柱3内部を上下移動できるように構成されている。なお、図10において、R1aはレールR1を柱3に固定するための支持板であり、R2aはレールR2を柱3に固定するための支持板である。
【0032】
上記のように、軸受けB4(図13参照)は、柱3の正面の4箇所の長孔ho及び補強版の4箇所の長孔hoによって、柱3に対して相対的に上下の位置調節が可能であり、また、軸受けB5もボルトBBとナットN1、N2、N3の作用により柱3に対して相対的に上下の位置調節が可能であるから、図1のように柱1のベースBaと柱3のベースBbの高さが異なった敷地においても、駆動軸7は常に水平を保った状態にて柱1と柱3の間に渡設することが可能となる。なお、柱3のU字溝32と長孔hoの縦方向の長さ、補強版33のU字溝34と長孔hoの縦方向の長さ、補強版33の縦方向の長さ、そしてボルトBBの長さは、図5、図13に表示した長さに限定されるものでは無論なく、適宜決定し得るものであることは当然のことである。
【0033】
図13に戻って8は補助梁であり、その後端部が補強版33を介して、4組のボルトBナットNによって柱3の上端部に螺着固定されている。補助梁8も、柱3の正面の4箇所の長孔hoと補強版33の4箇所の長孔hoによって、柱3に対して相対的に上下の位置調節が可能であり、柱1のベースBaと柱3のベースBbの高さが異なった敷地においても、水平を保った状態にて柱1と柱3の間に渡設することが可能である。なお、補助梁8の中間部には、図5、図13に見るように下向きのU字溝81aが穿設された支持板81が下方に突設固着されていて、支持板81には軸受けB3が4組のボルトBナットNにて固着され、駆動軸7は軸受けB3に回動自在に支承され、支持板81のU字溝81aに遊貫されている。軸受けB3は軸受けB4と同一の構成であり、軸受けB3と支持板81は、駆動軸7を中間部分で支承するための構成である。
【0034】
柱4の上部の構成の詳細を図14bに示す。柱4は4角柱で、左側面の上端部を除く大部分には長方形状の開口部41が穿設されている。42は柱4の上端に嵌着される上板で、長方形状の上面と一体となった左右両側面を有し、この左右両側面にて4組のボルトBナットNにより柱4の上端に螺着固定される。上板42の上面には円孔h41、42が穿設されている。9は補助梁であり、補助梁9の後端部が柱4の上端部に2組のボルトBナットNによって螺着固定されている。柱4の上端部の補助梁9を固着するためのボルトBが挿通される2箇所のボルト孔は長孔hoとなっているので、補助梁9の後端部は柱4に対して相対的に上下位置の調節可能な構成となっており、これにより、柱2のベースBaと柱4のベースBbの高さが異なった敷地においても、補助梁9を水平を保った状態にて柱2と柱4の間に渡設することが可能である。なお、柱4の2箇所の長孔hoは、図14bに表示の長さに限定されるものでは無論なく、適宜決定し得るものである。
【0035】
図6〜図8に、柱1、柱2と昇降梁5の関係の詳細を示す。図8に見るように、昇降梁5は、その左端部を柱1の右側面の開口部11に、その右端部を柱2の左側面の開口部21に、夫々挿入されて渡設されている。昇降梁5は、図17、図18に見るように、実際は左端部にて2本のチェーンCh1、Ch2に吊設され、右端部にて2本のチェーンCh2、Ch3に吊設されて渡設されているが、図6〜図8にては、構成を見やすくするために、チェーンCh1、Ch2、Ch3の表示は、チェーンボルトCB1a、CB1b、CB2a、CB2bを除いて省略して示している。
【0036】
前述のように、柱1の背面に固着されたモータ架台MB(図12参照)に固着されたモータMの回転軸MXはモータ軸孔13から柱1の内部に挿通され(図6、図7参照)、回転軸MXの前端部にはスプロケットMSが固着されている。スプロケットMSには、図17に見るようにチェーンCMが係回され、チェーンCMは、駆動軸7に固着されたスプロケットSSに係回されている。したがって、モータMの駆動力は、回転軸MX、スプロケットMS、チェーンCM、スプロケットSSにより伝達されて、駆動軸7を回転させる。この際、図17に見るように、モータMが正面視で反時計回りに回転すれば駆動軸7も反時計回りに回転し、図18に見るように、モータMが正面視で時計回りに回転すれば駆動軸7も時計回りに回転する。なお、以後、時計回り、反時計回りという言葉は、常に正面視にて用いることとする。
【0037】
駆動軸7には、図7、図17に見るように柱1内部にて、互いに径も歯数も等しいスプロケットS1、S2が固着されている。スプロケットS1、S2は駆動軸7に固着されているので、駆動軸7と同期して回転を行う。スプロケットS1にはチェーンCh1が係回され、スプロケットS2にはチェーンCh2が係回されている。駆動軸7の前端部は図7に見るように軸受けB1に、回動自在に支承されている。なお、スプロケットS1、S2は単独のスプロケットを連装しても良いし、2重スプロケットとして構成しても良い。
【0038】
昇降梁5は、図16a、図16bに見るように断面が略正方形状の角パイプで、その左端部においては、図16aに見るように上板51の左端の一部が長方形状に切欠されて凹部51aとなり、凹部51aからやや右方に略正方形状の角孔51bが穿設されている。また、下板52の左端前部は略正方形状に切欠されて凹部52aとなっている。さらに、前板53の左端近傍には円形の軸孔53aが、また、後板54の左端近傍には円形の軸孔54aが、夫々穿設されている。さらに、昇降梁5の右端部においては、図16bに見るように上板51の右端の一部が長方形状に切欠されて凹部51cとなっている。また、前板53の右端近傍には円形の軸孔53bが穿設され、さらに、後板54の右端近傍内側には円孔54cを有する軸受け54bが固着されている。また、昇降梁5の下板52の上面には、昇降梁5の長手方向に沿ってチェーンレールCR2が固着され、さらに左端には短いチェーンレールCR1が、右端には短いチェーンレールCR3が夫々固着されている。
【0039】
昇降梁5の左端部分においては、軸孔53a、54aに軸SX1(図7、図17参照)が固着され、軸SX1には互いに径も歯数も等しいスプロケットS3、S4、S5が、軸SX1に対して回動自在に環装されている。すなわち、スプロケットS3、S4、S5はベアリング(図示せず)を内装したスプロケットで、軸SX1に支承されて軸SX1に対して回動自在の状態にて環装されている。図17に見るように、スプロケットS3にはチェーンCh1が係回され、スプロケットS4にはチェーンCh2が係回され、スプロケットS5にはチェーンCh3が係回されている。なお、図17、18に見るようにスプロケットS3、S4は駆動軸7の回転方向と逆方向に回転するが、スプロケットS5は駆動軸7の回転方向と同一方向に回転する。したがって、スプロケットS3、S4は2重スプロケットとすることも可能であるが、スプロケットS5は常に単独のスプロケットとして構成される。
【0040】
昇降梁5の右端部分においては、軸孔53bと軸受け54bの円孔54cに軸SX2(図7、図17参照)が固着され、軸SX2には径も歯数もスプロケットS3、S4、S5に等しいスプロケットS6、S7が、軸SX2に対して回動自在に環装されている。すなわち、スプロケットS6、S7はベアリング(図示せず)を内装したスプロケットで、軸SX2に支承されて軸SX2に対して回動自在の状態にて環装されている。図17に見るように、スプロケットS6にはチェーンCh2が係回され、スプロケットS7にはチェーンCh3が係回されている。なお、図17、18に見るようにスプロケットS6、S7は同一方向に回転するので、夫々単独のスプロケットとして構成しても良いし、2重スプロケットとして構成しても良い。
【0041】
チェーンCh1の上端部は、図6、図17に見るように、チェーンボルトCB1aとして柱1の上板16の円孔h11に挿通固着される。チェーンボルトは、チェーンの先端にボルトの軸を装着したもので、公知の構成である。チェーンCh1は、チェーンボルトCB1aから垂下されて昇降梁5の上板51の左端部の角孔51b(図16a参照)に挿通され、スプロケットS3に右から下、左と係回され、昇降梁5の上板51の左端部の凹部51aに挿通され、上昇してスプロケットS1に右から上、左と係回され、再び垂下されて下端部は自由端となる。また、スプロケットS3の下部においては、チェーンCh1はスプロケットS3とチェーンレールCR1に挾まれ、スプロケットS3から外れないように構成されている。
【0042】
チェーンCh2の上端部は、図6、図17に見るように、チェーンボルトCB2aとして柱2の上板22の円孔h21に挿通に固着される。チェーンCh2は、チェーンボルトCB2aから垂下されて昇降梁5の上板51の右端部の凹部51c(図16b参照)に挿通され、スプロケットS6に右から下と係回され、昇降梁5の内部にて右端から左端へと張架され、昇降梁5の左端部にてスプロケットS4に下から左と係回され、昇降梁5の上板51の左端部の凹部51aに挿通され、上昇してスプロケットS2に右から上、左と係回され、再び垂下されて下端部は自由端となる。また、昇降梁5の左端にては、チェーンCh2はスプロケットS4とチェーンレールCR2に挾まれ、昇降梁5の右端にては、チェーンCh2はスプロケットS6とチェーンレールCR2に挾まれ、スプロケットS4、S6から外れないように構成されている。
【0043】
チェーンCh3の上端部は、図6、図17に見るように、チェーンボルトCB2bとして柱2の上板22の円孔22に挿通固着される。チェーンCh3は、チェーンボルトCB2bから垂下されて昇降梁5の上板51の右端部の凹部51c(図16b参照)に挿通され、スプロケットS7に右から下と係回され、昇降梁5の内部にて右端から左端へと張架され、昇降梁5の左端部にてスプロケットS5に上から左と係回され、昇降梁5の下板52の左端部の凹部52aに挿通され、垂下されて下端部がチェーンボルトCB1bによりベースBaに固着される。なお、チェーンCh3は、昇降梁5の右端部にてスプロケットS7とチェーンレールCR3に挾まれ、スプロケットS7から外れないように構成されている。昇降梁5の左端部にては、チェーンCh3はスプロケットS5の上から左に係回されるので、この部分にてはチェーンレールは省かれている。
【0044】
図9〜図11に、柱3、柱4と昇降梁6の関係の詳細を示す。図11に見るように、昇降梁6は、その左端部を柱3の右側面の開口部31に、その右端部を柱4の左側面の開口部41に、夫々挿入されて渡設されている。昇降梁6は、図17、図18に見るように、実際は左端部にて2本のチェーンCh4、Ch5に吊設され、右端部にて2本のチェーンCh5、Ch6に吊設されて渡設されているが、図9〜図11にては、構成を見やすくするために、チェーンCh4、Ch5、Ch6の表示はチェーンボルトCB3a、CB3b、CB4a、CB4bを除いて省略して示している。
【0045】
駆動軸7には、図10、図17に見るように柱3内部にて、径も歯数も柱1のスプロケットS1、S2に等しいスプロケットS8、S9が固着されている。スプロケットS8、S9は駆動軸7に固着されているので、駆動軸7と同期して回転を行う。スプロケットS8にはチェーンCh4が係回され、スプロケットS9にはチェーンCh5が係回されている。駆動軸7の後端部は図10に見るように軸受けB5に、回動自在に支承されている。なお、スプロケットS8、S9は単独のスプロケットを連装しても良いし、2重スプロケットとして構成しても良い。
【0046】
昇降梁6は、図16c、図16dに見るように断面が略正方形状の角パイプで、その左端部においては、図16cに見るように上板61の左端の一部が長方形状に切欠されて凹部61aとなり、凹部61aからやや右方に略正方形状の角孔61bが穿設されている。また、下板62の左端後部は略正方形状に切欠されて凹部62aとなっている。さらに、前板63の左端近傍には円形の軸孔63aが、また、後板64の左端近傍には円形の軸孔64aが、夫々穿設されている。さらに、昇降梁6の右端部においては、図16dに見るように上板61の右端の一部が長方形状に切欠されて凹部61cとなっている。また、前板63の右端近傍内側には円孔63cを有する軸受け63bが固着され、さらに、後板64の右端近傍には円形の軸孔64bが穿設されている。また、昇降梁6の下板62の上面には、昇降梁6の長手方向に沿ってチェーンレールCR5が固着され、さらに左端には短いチェーンレールCR4が、右端には短いチェーンレールCR5が、夫々固着されている。
【0047】
昇降梁6の左端部分においては、軸孔63a、64aに軸SX3(図10、図17参照)が固着され、軸SX3には径も歯数も昇降梁5のスプロケットS3、S4、S5に等しいスプロケットS10、S11、S12が、軸SX3に対して回動自在に環装されている。すなわち、スプロケットS10、S11、S12はベアリング(図示せず)を内装したスプロケットで、軸SX3に支承されて軸SX3に対して回動自在の状態にて環装されている。図17に見るように、スプロケットS10にはチェーンCh4が係回され、スプロケットS11にはチェーンCh5が係回され、スプロケットS12にはチェーンCh6が係回されている。なお、図17、18に見るようにスプロケットS10、S11は駆動軸7の回転方向と逆方向に回転するが、スプロケットS12は駆動軸7の回転方向と同一方向に回転する。したがって、スプロケットS10、S11は2重スプロケットとすることも可能であるが、スプロケットS12は常に単独のスプロケットとして構成される。
【0048】
昇降梁6の右端部分においては、軸孔64bと軸受け63bの円孔63cに軸SX4(図10、図17参照)が固着され、軸SX4には径も歯数もスプロケットS10、S11、S12に等しいスプロケットS13、S14が、軸SX4に対して回動自在に環装されている。すなわち、スプロケットS13、S14はベアリング(図示せず)を内装したスプロケットで、軸SX4に支承されて軸SX4に対して回動自在の状態にて環装されている。図17に見るように、スプロケットS13にはチェーンCh5が係回され、スプロケットS14にはチェーンCh6が係回されている。なお、図17、18に見るようにスプロケットS13、S14は同一方向に回転するので、夫々単独のスプロケットとして構成しても良いし、2重スプロケットとして構成しても良い。
【0049】
チェーンCh4の上端部は、図9、図17に見るように、チェーンボルトCB3aとして柱3の上板35の円孔h31に挿通固着される。チェーンCh4は、チェーンボルトCB3aから垂下されて昇降梁6の上板61の左端部の角孔61b(図16c参照)に挿通され、スプロケットS10に右から下、左と係回され、昇降梁6の上板61の左端部の凹部61aに挿通され、上昇してスプロケットS8に右から上、左と係回され、再び垂下されて下端部は自由端となる。また、スプロケットS10の下部においては、チェーンCh4はスプロケットS10とチェーンレールCR4に挾まれ、スプロケットS10から外れないように構成されている。
【0050】
チェーンCh5の上端部は、図9、図17に見るように、チェーンボルトCB4aとして柱4の上板42の円孔h41に挿通に固着される。チェーンCh5は、チェーンボルトCB4aから垂下されて昇降梁6の上板61の右端部の凹部61c(図16d参照)に挿通され、スプロケットS13に右から下と係回され、昇降梁6の内部にて右端から左端へと張架され、昇降梁6の左端部にてスプロケットS11に下から左と係回され、昇降梁6の上板61の左端部の凹部61aに挿通され、上昇してスプロケットS9に右から上、左と係回され、再び垂下されて下端部は自由端となる。また、昇降梁6の左端にては、チェーンCh5はスプロケットS11とチェーンレールCR5に挾まれ、昇降梁6の右端にては、チェーンCh5はスプロケットS13とチェーンレールCR5に挾まれ、スプロケットS11、S13から外れないように構成されている。
【0051】
チェーンCh6の上端部は、図9、図17に見るように、チェーンボルトCB4bとして柱4の上板42の円孔h42に挿通固着される。チェーンCh6は、チェーンボルトCB4bから垂下されて昇降梁6の上板61の右端部の凹部61c(図16d参照)に挿通され、スプロケットS14に右から下と係回され、昇降梁6の内部にて右端から左端へと張架され、昇降梁6の左端部にてスプロケット12に上から左と係回され、昇降梁6の下板62の左端部の凹部62a(図16c参照)に挿通され、垂下されて下端部がチェーンボルトCB3bによりベースBbに固着される。
【0052】
柱1におけるLS1、LS2(図7、図17参照)はリミットスイッチである。LS1は昇降梁5、6の上昇を停止させるリミットスイッチで、実施例1にてはモータM近傍に設置され、昇降梁5の最高位置にて昇降梁5の上板51の左端部に接触することにより、モータMの作動を停止させる。LS2は昇降梁5、6の下降を停止させるリミットスイッチで、実施例1にては柱1のベースBa近傍に設置され、昇降梁5の最低位置にて昇降梁5の下板52の左端部に接触することにより、モータMの作動を停止させる。リミットスイッチLS1は理論的には柱1〜4のいずれに内装させても良いが、リミットスイッチLS2は、柱1〜4のうち、そのベースが最も低位置にある柱に内装する。実施例1にては、柱1、2は同一レベル、柱3、4も同一レベルで、柱1、2のベースBaの方が柱3,4のベースBbよりも低くなっているので、柱1、2のいずれに内装しても良いが、モータMにより近い柱1に内装した。なお、リミットスイッチLS1、LS2からモータMに至るコードは省略して図示している。また、同じく制御装置CBのアームAR(図1、図7参照)からモータMに至るコード、モータMの電源コードも省略して図示している。
【0053】
<実施例1の作用>
以下に、図面を参照しながら、実施例1の作用に関して詳細に説明する。図1の状態は、昇降梁5、6が共に最高位置にあって昇降梁5、6の高さは等しく、従って昇降梁5、6の上面に固着されたパネルPa、Pbも最高位置にあって水平を保っている状態である。パネルPa、Pbには車C2が載置され、パネルPa、Pbの下方の空間Sにはもう1台の車C1が格納されている。
【0054】
この状態にて、車C1を発進させて空間Sを空にしてから、制御装置CBの下降スイッチSW2を押すと、モータMは図18に見るように時計回りに回転を始め、回転軸MX、スプロケットMS,チェーンCM、スプロケットSSを介して駆動軸7も時計回りに回転を始める。これにより、柱1内部では駆動軸7に固着されたスプロケットS1、S2が時計回りに回転を始め、柱3内部では駆動軸7に固着されたスプロケットS8、S9が時計回りに回転を始める。
【0055】
スプロケットS1、S2が時計回りに回転を始めると、スプロケットS1に係回されているチェーンCh1はスプロケットS1の右端にて下降し、スプロケットS2に係回されているチェーンCh2もスプロケットS2の右端にて下降する。チェーンCh1の動きは昇降梁5の左端部にて軸SX1に回動自在に環装されているスプロケットS3を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁5の左端部を下降させる。また、チェーンCh2の動きは昇降梁5の左端部にて軸SX1に回動自在に環装されているスプロケットS4を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁5の左端部を下降させ、さらにチェーンCh2を通じて昇降梁5の右端部にて軸SX2に回動自在に環装されているスプロケットS6を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁5の右端部も下降させる。スプロケットS1、S2は互いに径も歯数も等しく、また、スプロケットS3〜S7は相互に径も歯数も等しく構成されているので、結果としてチェーンCh1とチェーンCh2の移動量は全く等しくなり、昇降梁5は左端の下降量も右端の下降量も常に等しい状態にて下降するので、昇降梁5は水平を保持したままで下降する。
【0056】
チェーンCh3はバランスチェーンで、上端部のチェーンボルトCB2bから下端部のチェーンボルトCB1bまでの長さは常に一定である。昇降梁5が下降すると、昇降梁5に内装され、チェーンCh3が係回されているスプロケットS5、S7は回転速度は等しく、回転方向は逆に回転する。すなわち、昇降梁5の左端部においてはスプロケットS5は時計回りに回転し、昇降梁5の右端部においてはスプロケットS7は反時計回りに回転する。
【0057】
チェーンCh3は、実施例1において必須不可欠の構成とまではいえない。すなわち、チェーンCh3を欠いても昇降梁5の下降に本質的な支障は生じないが、実験においては、チェーンCh3とスプロケットS5、S7を追加することにより、昇降梁5の水平を保持した下降が非常に円滑に行われるようになった。すなわち、チェーンCh3をはずした状態にては、下降中わずかに引っ掛かりながら昇降梁5が下降する現象も稀に見られたが、チェーンCh3をスプロケットS5、S7に係回することにより、該現象は消失し、完全に円滑な下降が実現されることが判明した。
【0058】
また、チェーンCh3を追加することにより、昇降梁5の左端がチェーンCh1、Ch2の2本のチェーンにて吊設されるのに加えて昇降梁5の右端もチェーンCh2、Ch3の2本のチェーンにて吊設されることになり、安全性が飛躍的に向上した。すなわち、昇降梁5は両端において夫々2本ずつのチェーンにて吊設されているので、万が一、1本のチェーンが切れても、昇降梁5の端部が落下するという心配はなく、システム全体を大規模にする安全装置を付加する必要がなくなった。
【0059】
なお、バランスチェーンであるチェーンCh3を追加する場合には、チェーンCh3の下端部をベースBaに固着するチェーンボルトCB1bは、必ず柱1、2のいずれか低い方のベースBaに設けなければならない。もし、チェーンボルトCB1bを高い方のベースBaに設けてしまうと、チェーンCh3の全長が上端部のチェーンボルトCB2bから高い方のベースBaに設けられたチェーンボルトCB1bの距離で固定されてしまうので、昇降梁5が高い方のベースBaに接地した段階で昇降梁5全体の降下が停止されてしまうからである。すなわち、昇降梁5の片側が低い方のベースBaに降りきっていない状態で昇降梁5の下降が停止されてしまう。このような状態を防止するために、チェーンボルトCB1bは、必ず柱1、2のいずれか低い方のベースBaに設けることが必要となる。実施例1にては、柱1、2のベースBaのレベルは等しいので、チェーンボルトCB1bは柱1、2のいずれに設けても良い。
【0060】
次に、スプロケットS1、S2と同時にスプロケットS8、S9が時計回りに回転を始めると、スプロケットS8に係回されているチェーンCh4はスプロケットS8の右端にて下降し、スプロケットS9に係回されているチェーンCh5もスプロケットS9の右端にて下降する。チェーンCh4の動きは昇降梁6の左端部にて軸SX3に回動自在に環装されているスプロケットS10を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁6の左端部を下降させる。また、チェーンCh5の動きは昇降梁6の左端部にて軸SX3に回動自在に環装されているスプロケットS11を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁6の左端部を下降させ、さらにチェーンCh5を通じて昇降梁6の右端部にて軸SX4に回動自在に環装されているスプロケットS13を反時計回りに回転させ、結果として昇降梁6の右端部も下降させる。スプロケットS8、S9は互いに径も歯数も等しく、また、スプロケットS10〜S14は相互に径も歯数も等しく構成されているので、結果としてチェーンCh4とチェーンCh5の移動量は全く等しくなり、昇降梁6は左端の下降量も右端の下降量も常に等しい状態にて下降するので、昇降梁6は水平を保持したままで下降する。
【0061】
この際、スプロケットS8、S9は柱1のスプロケットS1、S2に径も歯数も等しく、また、スプロケットS10〜S14は柱1、2のスプロケットS3〜S7に径も歯数も等しいので、結果としてチェーンCh1、チェーンCh2、チェーンCh4、チェーンCh5の移動量は全く等しくなり、昇降梁6は昇降梁5と等速度で下降する。したがって、昇降梁5、6の上面に固着されているパレットPa、Pb(図1参照)は水平状態を保持したままで下降する。
【0062】
チェーンCh6はバランスチェーンで、上端部のチェーンボルトCB4bから下端部のチェーンボルトCB3bまでの長さは常に一定である。昇降梁6が下降すると、昇降梁6に内装され、チェーンCh6が係回されているスプロケットS12、S14は回転速度は等しく、回転方向は逆に回転する。すなわち、昇降梁6の左端部においてはスプロケットS12は時計回りに回転し、昇降梁6の右端部においてはスプロケットS14は反時計回りに回転する。チェーンCh6の効果はチェーンCh3と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、チェーンCh6を追加する場合には、チェーンCh6の下端部をベースBbに固着するチェーンボルトCB3bは、必ず柱3、4のいずれか低い方のベースBbに設けなければならない点もチェーンCh3と同様である。
【0063】
以上のような過程にて昇降梁5、6の下降が行われると、パレットPa、Pb(図1参照)の下降に伴い、載置された車C2も下降する。このようにして図2aの状態になると、ベースBaよりベースBbの方が高いので、まず昇降梁6が先にベースBbに接地する。昇降梁6がベースBbに接触した時点において、チェーンCh6とスプロケット12、14の動きは停止される。駆動軸7はまだ回転を続けているので、スプロケットS8、S9は時計周りの回転を続行し、チェーンCh4、Ch5は柱3の内部で弛緩状態となる。すなわち、チェーンCh4、Ch5に昇降梁6の荷重がかかっている間は、該荷重がチェーンCh4、Ch5を緊張させるので、チェーンCh4、Ch5の下降がスプロケットS10、S11、S13を回転させるが、チェーンCh4、Ch5に昇降梁6の荷重がかからなくなると、チェーンCh4はスプロケットS10とチェーンレールCR4に挟まれた部分で摩擦力により動きが停止するので、この部分からスプロケットS8に至る部分にて弛緩状態となる。また、チェーンCh5はスプロケットS11とチェーンレールCR5に挟まれた部分で摩擦力により動きが停止するので、この部分からスプロケットS9に至る部分にて弛緩状態となる。この際、スプロケットS10、S11、S13の回転も当然停止される。
【0064】
しかるに、昇降梁5はさらに下降を続け、パレットPa、Pbは前方に傾く。そして、昇降梁5の下板52(図16a参照)がリミットスイッチLS2に接触するとモータMの回転が停止され、昇降梁5の下降も停止される。この状態は図2bに示すとおりで、パレットPa、Pbの前端が基盤面Gに接触しているので、車C2は円滑に空間Sから脱出することができる。この状態で、後部のチェーンCh4、Ch5の上記部分は柱3の内部で弛緩状態にあるが、チェーンレールCR4、CR5の作用により、スプロケットS10、S11、S13から外れることはない。なお、上記説明の範囲内にては後部が高く前部が低い敷地に設置した場合であるので、チェーンレールCR4、CR5が上記のような効果を発揮するが、前部が高く後部が低い敷地に設置した場合にはチェーンレールCR1、CR2が同様の効果を発揮する。すなわち、実施例1の立体駐車装置Pは、前部が高く後部が低い敷地にも、後部が高く前部が低い敷地にも、同一構成の部材にて適用可能とされているものである。
【0065】
次に、車C2を再びパレットPa、Pbに載置してパレットPa、Pbを上昇させる場合には、上記と全く逆の行程となる。まず、制御装置CBの上昇スイッチSW1を押すと、モータMは図17に見るように反時計回りに回転を始め、回転軸MX、スプロケットMS,チェーンCM、スプロケットSSを介して駆動軸7も反時計回りに回転を始める。これにより、柱1内部では駆動軸7に固着されたスプロケットS1、S2が反時計回りに回転を始め、柱3内部では駆動軸7に固着されたスプロケットS8、S9が反時計回りに回転を始める。
【0066】
これにより、前部の柱1、2においては、スプロケットS3、S4、S6、S7が時計回りに回転し、スプロケットS5は反時計回りに回転し、昇降梁5は上昇する。しかし、後部の柱3、4においては、チェーンCh4、Ch5が柱3の内部の前記部分において弛緩状態にあるので、昇降梁6の上昇はすぐには起こらない。スプロケットS8、S9は反時計周りに回転するが、その回転は弛緩したチェーンCh4、Ch5の弛緩を解消するために消費され、スプロケットS10、S11、S13は停止状態にある。また、昇降梁6の上昇がないので、チェーン6とスプロケットS12、S14には動きが見られない。
【0067】
この状態でさらに昇降梁5が上昇し、図2aの状態、すなわち、昇降梁5、6の高さが等しく、パレットPa、Pbが水平の状態となった瞬間にチェーンCh4、Ch5の弛緩は完全に解消され、昇降梁6の荷重がチェーンCh4、Ch5にかかり始めるので、スプロケットS10、S11、S13、の回転が始まり、昇降梁6の上昇が始まる。また、スプロケットS12、S14においても回転が始まり、バランスチェーンであるチェーンCh6の作用も開始される。そして、後は、昇降梁5、6の下降の行程と完全に逆の行程を辿って昇降梁5、6は水平を保ったままで上昇し、故にパレットPa、Pbも水平を保持したままで上昇する。そして、昇降梁5の上面51(図16a参照)の一部がリミットスイッチLS1に接触するとモータMの回転が停止され、全体は図1に示す状態となるので、空間Sに車C1を格納する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
実施例1にては、前部の2本の柱のベースが等しく、後部に2本の柱のベースも等しい場合を取り上げて説明したが、無論4本の柱のベースが夫々異なる高さであっても、本発明は円滑に作動を行うものである。なぜならば、本発明の要点は、前部の昇降梁の左端、右端、後部の昇降梁の左端、右端の4箇所の端部について、夫々1組のスプロケットとチェーンの組み合わせをもってその上昇あるいは下降を行うという点にあるので、4箇所の端部のうち、最も早くベースに接地した端部から順次下降動作が停止され、当該端部のスプロケットの運動量は係回するチェーンを弛緩させるために用いられるという構成になっているからである。すなわち、端部の下降が停止されて後は、スプロケットの回転数はチェーンの弛緩において保存される形となり、次に上昇運動の際には保存された回転数がまず弛緩されたチェーンを緊張させるために消費され、チェーンが完全に緊張した後に、はじめて端部の上昇が開始される。
【0069】
このようにすることにより、4本の柱のベースが夫々異なる高さであっても、最高位置のベースに前後の昇降梁の4箇所の端部のうちいずれかが接触するまでは前後の昇降梁は完全に水平を保持して下降し、その後は順次端部の下降が停止され、最後に最も低い端部の下降が停止された時点で全体の動作が停止される。また、上昇の場合は全く逆で、最も低い端部から上昇が開始され、順次端部の上昇が始まり、前後の昇降梁が水平になった時点で4箇所の端部の全てが水平を保ったままで上昇する。このように、本発明においては、工場生産が可能な均一の構成の部材を現場の状況に応じて組み立てるだけで、4本の柱のベースがばらばらの傾斜地にも充分に適応可能であり、現場の状況に応じた部品のオーダーメイドや調整が必要ないので、キットとして販売して使用者自身が自分で組み立てることも可能である。
【0070】
また、上記からすれば、理論的には4本の柱のベースの最高点と最低点を結ぶ線が水平線となす角度(例えば図1の角度α)が何度であっても本発明の立体駐車装置はその効果を発揮することができる。しかしながら、パレット自体の傾斜が余りに強くなると車をパレットに載置させることが困難になるので、その点からの制約は自ずから発生する。実際上はそこまで傾斜の強い敷地に立体駐車装置を設置するということは余り考えられないので、本発明は、常識的に車を困難なく駐車できる程度の傾斜地であれば、水平レベルを確保するための基礎工事を行うことなく、専門の業者の手を借りなくても、購入者自身が自分で組立てを行えるという点において、まさに画期的な効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1の立体駐車装置の左側面図である。
【図2】(a)本発明の実施例1の立体駐車装置の左側面図である。(b)本発明の実施例1の立体駐車装置の左側面図である。
【図3】本発明の実施例1の立体駐車装置の平面図である。
【図4】本発明の実施例1の立体駐車装置の正面図である。
【図5】本発明の実施例1の立体駐車装置の要部の一部を切欠し、一部を省略した左側面図である。
【図6】本発明の実施例1の立体駐車装置の前部の左右の柱の一部を省略した平面図である。
【図7】図5のA−A線断面図である。
【図8】図5のB−B線断面図である。
【図9】本発明の実施例1の立体駐車装置の後部の左右の柱の一部を省略した平面図である。
【図10】図5のC−C線断面図である。
【図11】図5のD−D線断面図である。
【図12】本発明の実施例1の立体駐車装置の前部左方の柱の要部の組付構成を説明するための説明図である。
【図13】本発明の実施例1の立体駐車装置の後部左方の柱の要部の組付構成を説明するための説明図である。
【図14】(a)本発明の実施例1の立体駐車装置の前部右方の柱の要部の組付構成を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の立体駐車装置の後部左方の柱の要部の組付構成を説明するための説明図である。
【図15】(a)本発明の実施例1の立体駐車装置の駆動軸の軸受けの外観斜視図である。 (b)本発明の実施例1の立体駐車装置の駆動軸の最後端の軸受けの外観斜視図である。 (c)本発明の実施例1の立体駐車装置の駆動軸の最後端の軸受けをボルトで吊設した場合の一部を省略した外観斜視図である。
【図16】(a)本発明の実施例1の立体駐車装置の前部の昇降梁の左端の構成を説明するための説明図である。 (b)本発明の実施例1の立体駐車装置の前部の昇降梁の右端の構成を説明するための説明図である。 (c)本発明の実施例1の立体駐車装置の後部の昇降梁の左端の構成を説明するための説明図である。 (d)本発明の実施例1の立体駐車装置の後部の昇降梁の右端の構成を説明するための説明図である。
【図17】本発明の実施例1の立体駐車装置の作用を説明するための説明図である。
【図18】本発明の実施例1の立体駐車装置の作用を説明するための説明図である。
【図19】従来の立体駐車装置の1例の作用を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 柱
11 開口部
12 U字溝
13 モータ軸孔
14 補強板
14a U字溝
15 補強板
16 上板
2 柱
21 開口部
22 上板
3 柱
31 開口部
32 U字溝
33 補強板
34 U字溝
35 上板
4 柱
41 開口部
42 上板
5 昇降梁
51 上板
51a 凹部
51b 角孔
51c 凹部
52 下板
52a 凹部
53 前板
53a 軸孔
53b 軸孔
54 後板
54a 軸孔
54b 軸受け
54c 円孔
6 昇降梁
61 上板
61a 凹部
61b 角孔
61c 凹部
62 下板
62a 凹部
63 前板
63a 軸孔
63b 軸受け
63c 円孔
64 後板
64a 軸孔
64b 軸孔
7 駆動軸
8 補助梁
81 支持板
81a U字溝
9 補助梁
AR アーム
B ボルト
B1 軸受け
B1a 本体
B1b 凸部
B1c ベアリング
B1d 軸支部
B1e 円孔
B2 軸受け
B3 軸受け
B4 軸受け
B5 軸受け
B5a 下部
B5b 上部
B5c ベアリング
B5d 軸支部
B5e 円孔
B5f ナット孔
B5g 円孔
B5h 溝
B5i 溝
BB ボルト
BC ベース
Ba ベース
Bb ベース
C1 車
C2 車
CB 制御装置
CB1a チェーンボルト
CB1b チェーンボルト
CB2a チェーンボルト
CB2b チェーンボルト
CB3a チェーンボルト
CB3b チェーンボルト
CB4a チェーンボルト
CB4b チェーンボルト
CM チェーン
CR1 チェーンレール
CR2 チェーンレール
CR3 チェーンレール
CR4 チェーンレール
CR5 チェーンレール
CR6 チェーンレール
Ch1 チェーン
Ch2 チェーン
Ch3 チェーン
Ch4 チェーン
Ch5 チェーン
Ch6 チェーン
FR 前方
G 基盤面
LE 左方
LS1 リミットスイッチ
LS2 リミットスイッチ
M モータ
MB モータ架台
MS スプロケット
MX 回転軸
N ナット
N1 ナット
N2 ナット
N3 ナット
P 立体駐車装置
Pa パレット
Pb パレット
R1 レール
R1a 支持板
R2 レール
R2a 支持板
RE 後方
RI 右方
S 空間
SS スプロケット
S1 スプロケット
S2 スプロケット
S3 スプロケット
S4 スプロケット
S5 スプロケット
S6 スプロケット
S7 スプロケット
S8 スプロケット
S9 スプロケット
S10 スプロケット
S11 スプロケット
S12 スプロケット
S13 スプロケット
S14 スプロケット
SW1 上昇スイッチ
SW2 下降スイッチ
SX1 軸
SX2 軸
SX3 軸
SX4 軸
c1 チェーン
c2 チェーン
cb チェーンボルト
cm チェーン
fb 昇降梁
h11 円孔
h21 円孔
h22 円孔
h31 円孔
h32 円孔
h41 円孔
h42 円孔
hb 円孔
ho 長孔
hr 円孔
m モータ
ma 駆動軸
p1 柱
p1t 上面
p2 柱
p2t 上面
p3 柱
p4 柱
pa 立体駐車装置
rb 昇降梁
sm スプロケット
s1 スプロケット
s2 スプロケット
s3 スプロケット
s4 スプロケット
w バランスウェイト
α 角度
β 方向
γ 方向












【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の柱を有する2段式の立体駐車装置において、車両が載置されるパレットを昇降させる前後2本の昇降梁のうち、前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されていることを特徴とする立体駐車装置。
【請求項2】
前部の昇降梁の左端、前部の昇降梁の右端、後部の昇降梁の左端、後部の昇降梁の右端の4箇所の端部が、1基の動力源から分配される駆動力によって夫々個別の機構にて上昇運動を行い、あるいは夫々個別の機構にて下降運動を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の立体駐車装置。
【請求項3】
動力源から供給される駆動力を1本の駆動軸によって前部と後部に分配し、さらに前部において前部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び前部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有し、後部において後部の昇降梁の左端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせ及び後部の昇降梁の右端を昇降させる1組のチェーンとスプロケットの組み合わせを有していることを特徴とする請求項2に記載の立体駐車装置。
【請求項4】
前部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、前部の昇降梁の左端と右端の水平を確保するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有し、後部の昇降梁の左端と右端が同時に上昇あるいは下降している状態において、後部の昇降梁の左端と右端の水平を保持するための1組のチェーンとスプロケットの組み合わせからなるバランスチェーンを有していることを特徴とする請求項1あるいは請求項2あるいは請求項3に記載の立体駐車装置。
【請求項5】
4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸が貫設される軸孔が縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされ、駆動軸の軸受けを螺着するボルトが貫設されるボルト孔も縦方向に長い長孔あるいはU字溝とされていることを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載の立体駐車装置。
【請求項6】
4本の柱のうち、駆動軸が貫設される柱の少なくとも1本の柱において、駆動軸の端部を支持する軸受けが、柱本体に対してその上下位置を調整できる位置調節機構付きの軸受けであることを特徴とする請求項3あるいは請求項4あるいは請求項5に記載の立体駐車装置。






















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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