説明

立体駐車装置

【課題】ピットの深さを深くすることなく、道板を地上面に対して低くすることができる立体駐車装置を提供する。
【解決手段】立体駐車装置1では、吊りチェーン用スプロケット10がパレット昇降体5の昇降方向から見て吊用スプロケット22と重ならない位置に配置されている。これにより、下段パレット6bを昇降駆動軸18の高さ位置付近まで上昇させた場合であっても、各吊りチェーン用スプロケット10と各吊用スプロケット22とが干渉しない。そのため、昇降駆動軸18の地上面Gに対する高さ位置を低くすることができる。また、スプロケット同士の干渉を回避できるので、高さ方向において吊りチェーン用スプロケット10と吊用スプロケット22との間に一定の間隔を確保する必要がなく、ピットを深くしなくてもよい。従って、ピットの深さを深くすることなく、道板Mを地上面Gに対して低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のピット式の立体駐車装置の一例として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この従来の立体駐車装置は、車両の地上面から所定の深さで形成されたピット内に、上下方向に配置された複数段のパレットからなる多段パレット昇降体が複数列配置されている。この立体駐車装置では、パレット昇降体の下部に設けられたチェーン用スプロケットを介して昇降用のチェーンが駆動部により繰り出し及び巻き取られることで、パレット昇降体が上下に移動するようになっている。
【0003】
ところで、近年では、運転が容易で且つ駐車幅を減少できるいわゆるコンパクトカーが増加している。このコンパクトカーでは、全長や全幅を減少させる代わりに天井高さを高くして室内容積を確保しており、その車高は従来の車両の車高に比べて高くなっている。そのため、コンパクトカー等の車高の高い車両に対応するためには、パレット間の間隔に余裕が必要となり、装置全体の高さが増大する。
【0004】
一方、立体駐車装置の高さを増大させていくと、装置の設置面からの高さが例えば8mを超える場合には法令で建築物又は指定工作物として取り扱われることになり、構造の変更か用途の制限等を伴うものとなってしまうため、比較的浅いピット内に立体駐車装置を収めることが求められている。従って、パレット間の間隔を十分に確保しつつ、立体駐車装置全体の高さ方向の省スペース化を図らなければならないといった課題がある。
【0005】
これに関して、例えば特許文献2に記載の立体駐車装置では、支柱の下端部に設けられてバランスチェーンの端部を固定する固定部を、バランスチェーンブラケットの昇降領域外となる支柱の前面又は後面に配置することで、バランスチェーンをピットの底面付近まで下降させている。これにより、パレット昇降体の下降位置におけるバランスチェーンブラケット及び下段パレットの位置を従来よりも低い位置に設定することで、既存のピットに格納しつつ上段パレットと下段パレットと間隔を増大させて上記課題の解決を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−83645号公報
【特許文献2】特開2007−146543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のような従来のピット式の立体駐車装置では、吊りチェーンによる吊り上げ方式の構造上、駆動部に連動する昇降駆動軸の位置を地上面よりも高く設定しておく必要がある。そのため、昇降駆動軸等が取り付けられる複数の支柱に設けられる道板の高さは、昇降駆動軸を地上面から高くする分だけ地上面よりも高くされている。しかし、最近では、道板が地上面に対して出っ張るため、乗降や歩行がしにくいことなどといったことから、道板の出っ張りを地上面に対して極力低くすることが要求されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2の立体駐車装置において昇降駆動軸をより低い位置に設けた場合には、昇降駆動軸とチェーン用スプロケットとが下段パレットの上限位置で非常に接近又は干渉するため、何らかの原因で下段パレットがオーバーランした場合には、昇降駆動軸とチェーン用スプロケットとが干渉することになる。従って、昇降駆動軸を低い位置に設ける場合には、高さ方向において昇降駆動軸とチェーン用スプロケットとの間に一定の間隔を確保しなければならず、より深いピットが必要となる。従って、既存のピットを造成し直さねばならないといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題解決のためになされたものであり、ピットの深さを深くすることなく、道板を地上面に対して低くすることができる立体駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る立体駐車装置は、車両の乗り込み面から所定の深さで形成されたピット内に設けられた立体駐車装置であって、車両が載置されるパレットをパレット支柱によって多段に連結してなるパレット昇降体と、パレット昇降体の前後左右でピットに立設されたピット支柱と、パレット昇降体の下部に架け渡され、パレット昇降体を吊り上げる吊りチェーンと、パレット昇降体の一側に位置する前後のピット支柱の上部間に回転可能に軸支されると共に、吊りチェーンの一端側が巻き掛けられる吊り上げ用スプロケットが固定された昇降駆動軸とを備え、パレット昇降体における下段パレットの両側には、吊り上げ用スプロケットの固定位置に対応して吊りチェーンが噛合する一対のチェーン用スプロケットが固定され、チェーン用スプロケットは、パレット昇降体の昇降方向から見て吊り上げ用スプロケットと重ならない位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この立体駐車装置では、チェーン用スプロケットがパレット昇降体の昇降方向から見て吊り上げ用スプロケットと重ならない位置に配置されている。これにより、パレット昇降体を上昇させて下段パレットを昇降駆動軸が設置された高さ位置付近まで上昇させた場合であっても、チェーン用スプロケットと吊上用スプロケットとが干渉しない。そのため、下段パレットが上昇した分だけ昇降駆動軸の取り付け位置を低くすることができるので、昇降駆動軸の高さ位置を低く設定することが可能となる。これにより、昇降駆動軸を地上面に対して低くした分だけ、道板の高さを地上面に対して低くすることができる。また、チェーン用スプロケットと吊り上げ用スプロケットとの干渉を避けることができるので、高さ方向においてチェーン用スプロケットと吊り上げ用スプロケットとの間に一定の間隔を確保しなくてもよく、ピットを深くする必要がない。従って、ピットの深さを深くすることなく、道板を地上面に対して低くすることができる。
【0012】
また、吊り上げ用スプロケットの固定位置と吊りチェーンの他端側の固定位置との間隔は、一対のチェーン用スプロケットの固定位置の間隔よりも大きくなっており、パレット昇降体が吊りチェーンの他端側に偏在することによって、吊り上げ用スプロケットとチェーン用スプロケットとの間に、所定の間隔が設けられているが好ましい。このように、パレット昇降体をピット内において偏在させて所定の間隔を設けることにより、吊り上げ用スプロケットとチェーンスプロケットとの間に所定の間隔を確保できるので、吊り上げ用スプロケットとチェーン用スプロケットとが確実に重ならないように構成することができる。
【0013】
また、吊りチェーンは、吊りチェーンの他端側の固定位置とチェーン用スプロケットのチェーン立ち上がり位置との間においてピット支柱に沿って略垂直に張設されていると共に、吊り上げ用スプロケットのチェーン架け渡し位置とチェーン用スプロケットのチェーン立ち上がり位置との間においてピット支柱に対して傾斜して張設されており、パレット昇降体が吊りチェーンの他端側に偏在することによって、吊り上げ用スプロケットとチェーン用スプロケットとの間に、所定の間隔が設けられていることが好ましい。このように吊りチェーンが張設され、パレット昇降体をピット内において偏在させて所定の間隔を設けることにより、吊り上げ用スプロケットとチェーンスプロケットとの間に所定の間隔を確保できるので、吊り上げ用スプロケットとチェーン用スプロケットとが確実に重ならないように構成することができる。
【0014】
また、所定の間隔は、チェーン用スプロケットの歯の総高さよりも大きいことが好ましい。これにより、吊り上げ用スプロケットとチェーン用スプロケットとの干渉(歯先の接触)を確実に防止することができる。
【0015】
また、所定の間隔が保持されるようにパレット昇降体の昇降をガイドするガイド手段を更に備えたことが好ましい。パレット昇降体には、昇降時に一定方向に横荷重が加わるため、横方向への移動及び横揺れが発生する場合がある。そこで、ガイド手段を設けることにより、昇降時において所定の距離が保持されるので、パレット昇降体を安定的に昇降させることができ、パレット昇降体の横揺れを防止することができる。
【0016】
また、ガイド手段は、下段パレットに設けられ、昇降駆動軸が軸支されたピット支柱の側面に当接するガイドローラであることが好ましい。パレット昇降体は、吊りチェーンによって吊り上げられる構造上、下部に配置された下段パレットの揺れ幅が大きい。そこで、ガイドローラを下段パレットに設けることにより、より安定的にパレット昇降体を昇降させることができる。また、ガイドローラを支柱に当接させるので、ガイドレールを新たに設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0017】
また、一側の前後のピット支柱には、昇降駆動軸の軸受が固定されており、ガイドローラは、軸受の固定位置に対応してピット支柱の側面に当接していることが好ましい。吊りチェーンによる張力は、昇降駆動軸を軸支する軸受を介してピット支柱が受けることになる。そして、軸受及びガイドローラがピット支柱の側面に加える負荷は、その方向が互いに反対方向となっている。そこで、ガイドローラと軸受とが同一線上となる位置にガイドローラをピット支柱の側面に当接させることにより、ピット支柱に加わる負担を最小限に抑えることができる。
【0018】
また、ガイドローラの高さは、チェーン用スプロケットの高さ以下となっていることが好ましい。この場合には、例えばガイドローラの高さをチェーン用スプロケットと同じ高さとすることで、吊りチェーンの水平成分の張力をガイドローラが同一位置で負担することになるため、パレット昇降体のバランス(転覆防止性)に影響を与えない。また、ガイドローラをチェーン用スプロケットの高さよりも低い位置とした場合でも、ガイドローラの反力がパレット昇降体のバランスに悪影響を与えない。従って、パレット昇降体の昇降に安定性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ピットの深さを深くすることなく、道板を地上面に対して低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体駐車装置示す正面図である。
【図2】図1に示した立体駐車装置の側面図である。
【図3】図1に示した立体駐車装置の上面図である。
【図4】昇降駆動軸と吊りチェーン用スプロケットとの位置関係を示す図である。
【図5】地上面と道板との関係を示す図である。
【図6】下段パレットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る立体駐車装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る立体駐車装置示す正面図である。また、図2は、その側面図、図3は、その上面図である。図1〜図3に示すように、立体駐車装置1は、車両Kが走行する地上面G(車両Kの乗り込み面)のから所定の深さを掘削して形成されたピットP内に設けられている。以下、車両Kの入出庫側を前側として説明する。
【0023】
ピットP内において、立体駐車装置1は、枠体2を有している。枠体2は、ピットPの前側及び後側において左右一対に立設された前側支柱3及び後側支柱4によって構成されている。この前側及び後側支柱3,4は、H形鋼から成っている。枠体2に囲まれた空間には、パレット昇降体5が配置されている。
【0024】
パレット昇降体5は、車両Kが載置される複数(本実施形態では2枚)のパレット6と、パレット6の両側に配置された前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8とによって構成されている。すなわち、パレット昇降体5は、上段パレット6a及び下段パレット6bを有しており、各パレット6a,6bが前後一対の前側パレット支柱7及び後側パレット支柱8によって2段に連結されている。
【0025】
また、パレット昇降体5の前側及び後側の下部には、下段パレット6bの両側に設けられた前側及び後側吊りチェーン用スプロケット10,11を介して、前側吊りチェーン12及び後側吊りチェーン13の2つの吊りチェーンが架け渡されている。前側吊りチェーン12及び後側吊りチェーン13により、パレット昇降体5は、ピットPの底面から所定の高さに吊り上げられた状態となっている。
【0026】
また、図2に示すように、パレット昇降体5の前側には、下段パレット6bに設けられたバランスチェーン用スプロケット14を介して、バランスチェーン15が架け渡されている。このバランスチェーン15は、前側支柱3の上端部に固定されたチェーンホルダ(図示しない)に一端部が連結され、バランスチェーン用スプロケット14を介し、他端部がチェーン固定部16に固定されている。すなわち、バランスチェーン15は、バランスチェーン用スプロケット14を経由して、前側支柱3の上端部と前側支柱3の下部とに張設されている。
【0027】
一方、前側支柱3の頂部と後側支柱4の頂部との間には、道板Mが設けられている。道板Mは、前側及び後側支柱3,4の頂部を覆うように地上面Gから上方に突出してパレット6の前後方向に延在しており、パレット昇降体5の昇降によって地上面Gに移動したパレット6との協働によって通路を形成するようになっている。
【0028】
続いて、上述したパレット昇降体5の昇降機構について説明する。パレット昇降体5の昇降機構は、上述した前側吊りチェーン12、後側吊りチェーン13及びバランスチェーン15のほか、図2に示すように、駆動モータ17と、昇降駆動軸18とによって構成されている。
【0029】
駆動モータ17は、駆動スプロケット19を有しており、駆動モータ17の本体部分は、枠体2における片側の後側支柱4にブラケット(図示しない)を介して固定されている。また、昇降駆動軸18は、前側支柱3の上部と後側支柱4の上部との間に軸受30a,30b(図3参照)により回転可能に軸支されている。昇降駆動軸18の後端部分には、連動スプロケット20が固定され、この連動スプロケット20と駆動スプロケット19との間にエンドレスチェーン21が架け渡されている。
【0030】
昇降駆動軸18の前側及び後側には、前側吊りチェーン用スプロケット10及び後側吊りチェーン用スプロケット11の位置に対応させて、前側吊用スプロケット22及び後側吊用スプロケット23がそれぞれ固定されている。各吊用スプロケット22,23には、それぞれ前側吊りチェーン12及び後側吊りチェーン13の一端側が巻き掛けられている。なお、各吊りチェーン12,13の一端部は、図示しない固定部に固定されている。
【0031】
前側吊りチェーン12及び後側吊りチェーン13は、前側吊りチェーン用スプロケット10及び後側吊りチェーン用スプロケット11を介して下段パレット6bの下部で幅方向に架け渡され、各吊りチェーン12,13の他端側は、前側支柱3の上部に固定部24を介して固定されている(図1参照)。
【0032】
ここで、図1に示すように、各吊用スプロケット22,23の固定位置と固定部24の固定位置との間隔は、一対の吊りチェーン用スプロケット10,11の固定位置の間隔よりも大きくなっている。そして、パレット昇降体5は、ピットP内において、各吊りチェーン12,13の他端側が固定される固定部24側に偏在している。このような構成により、前側吊りチェーン用スプロケット10及び後側吊りチェーン用スプロケット11と、前側吊用スプロケット22及び後側吊用スプロケット23との間には、間隔Wが設けられている。これにより、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23とは、パレット昇降体5の昇降方向(図7参照)から見て、重ならない位置に配置されている。
【0033】
具体的には、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との間の幅方向の間隔Wは、少なくとも各吊りチェーン用スプロケット10,11の歯の総高さ(吊りチェーン用スプロケット10又は吊りチェーン用スプロケット11の(外径−歯底円直径)/2)よりも大きくなっており、例えば90〜100mm程度となっている。すなわち、各吊りチェーン12,13は、各吊りチェーン用スプロケット10,11(図1左側)のチェーン立ち上がり位置におけるチェーン中心と各吊用スプロケット22,23のチェーン架け渡し位置におけるチェーン中心との間において、支柱3,4に対して傾斜して張設されている。なお、チェーン立ち上がり位置とは、各吊りチェーン用スプロケット10,11のピッチ円直径の各吊用スプロケット22,23側である。また、チェーン架け渡し位置とは、各吊用スプロケット22,23のピッチ円直径の各吊りチェーン用スプロケット10,11側である。
【0034】
一方、固定部24側の各吊りチェーン用スプロケット10,11は、固定部24の真下に配置されており、各吊りチェーン用スプロケット10,11と固定部24との間の間隔は、間隔Wを確保するために狭くなっている。すなわち、各吊りチェーン12,13は、固定部24の固定位置と各吊りチェーン用スプロケット10,11(図1右側)のチェーン立ち上がり位置におけるチェーン中心との間において、支柱3,4に沿って略垂直に張設されている。
【0035】
また、下段パレット6bには、ガイドローラ27が設けられている。このガイドローラ27は、各吊用スプロケット22,23と各吊りチェーン用スプロケット10,11との間の間隔Wが保持されるようにパレット昇降体5の昇降ガイドするものであり、支持部28と、当接部29とを備えている。支持部28は、L字状を成し、下段パレット6bから前側及び後側支柱3,4側(図示左側)に向かって斜め下方に突出するように下段パレット6bの下部に取り付けられている。また、当接部29は、円形状を成すと共に支持部28に対して回動自在に設けられており、その高さは、各吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも低くなっている。
【0036】
このような構成を有するガイドローラ27において、当接部29は、前側及び後側支柱3,4の一側面3a,4aに当接する。具体的には、図3に示すように、前側及び後側支柱3,4には、昇降駆動軸18を軸支するピロー型ユニットの軸受30a,30bが設けられており、ガイドローラ27は、下段パレット6bにおいて、前側及び後側支柱3,4における軸受30a,30bの固定位置と同一線上となる位置で前側及び後側支柱3,4と当接部29が当接するように取り付けられている。前側及び後側支柱3,4の一側面3a,4aは、ガイドローラ27に対応するガイドレールとして機能している。
【0037】
次に、以上のような構成を有する立体駐車装置1の作用効果について説明する。
【0038】
図4(a)は、従来の立体駐車装置における昇降駆動軸と吊りチェーン用スプロケットとの位置関係を示す図である。図4(a)に示すように、従来の立体駐車装置1Aでは、各吊りチェーン用スプロケット10aと各吊用スプロケット22aとの間の幅方向の間隔W1が確保されていないため、下段パレット6Aを上昇させ過ぎると各吊りチェーン用スプロケット10aと各吊用スプロケット22aとが干渉するおそれがある。そのため、各吊りチェーン用スプロケット10aと各吊用スプロケット22aとの上下方向の間隔Aを小さくすることができない。従って、昇降駆動軸の位置を低く設定する場合には、ピットをより深くする必要が生じ、既存のピットを造成し直さねばならない。
【0039】
これに対して、図4(b)に示すように、本発明の立体駐車装置1では、上述のように各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との間に間隔Wが確保されているため、下段パレット6bを昇降駆動軸18付近まで上昇させた場合であっても、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との歯先が衝突することがない。従って、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との上下方向の間隔Bを従来の立体駐車装置1Aにおける間隔Aよりも小さく(B≪A)することができる。本発明の立体駐車装置1では、従来の立体駐車装置1Aに比べて、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との上下方向の間隔Bを例えば50mm程度小さくすることができる。
【0040】
これにより、図5(a)に示すように、従来の立体駐車装置1Aでは、高さ方向の省スペース化を図りつつ昇降駆動軸の位置を低くすることが困難であるため、道板M1が地上面Gに対して高さCだけ出っ張るのに対し、立体駐車装置1では、図5(b)に示すように、昇降駆動軸18を低くすることができるので、道板Mを地上面Gに対して高さD(C≫D)とすることができる。すなわち、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との上下方向の間隔Bを従来の間隔Aよりも小さくできた分(A―B)だけ、道板Mの高さDを道板M1の高さCよりも小さく(A―B=C―D)することが可能となる。従って、ピットPを深く形成することなく、道板Mを地上面Gに対して低くすることができる。
【0041】
以上説明したように、立体駐車装置1では、各吊りチェーン用スプロケット10,11がパレット昇降体5の昇降方向から見て各吊用スプロケット22,23と重ならない位置に配置されている。これにより、下段パレット6bを昇降駆動軸18が設置された高さ位置付近まで上昇させた場合であっても、前側及び後側吊りチェーン用スプロケット10,11と前側及び後側吊用スプロケット22,23とが干渉(歯先が衝突)しない。そのため、下段パレット6bが上昇した分だけ昇降駆動軸18の取り付け位置を低くすることができるので、昇降駆動軸18の地上面Gに対する高さ位置を低く設定することが可能となる。これにより、昇降駆動軸18を地上面Gに対して低くした分だけ、道板Mの高さを地上面Gに対して低くすることができる。また、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との干渉を避けることができるので、高さ方向において各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との間に一定の間隔を確保する必要がなく、ピットを深く形成しなくてもよい。従って、立体駐車装置1では、ピットPの深さを深くすることなく、道板Mの地上面Gに対する高さを低くすることができる。
【0042】
また、各吊用スプロケット22,23の固定位置と各吊りチェーン12,13が固定される固定部24の位置との間隔は、一対の吊りチェーン用スプロケット10,11の固定位置の間隔よりも大きくなっており、パレット昇降体5が固定部24に偏在することによって、各吊用スプロケット22,23と各吊りチェーン用スプロケット10,11との間に、間隔Wが設けられている。このように、各吊りチェーン12,13が張設される幅方向の間隔よりも一対の吊りチェーン用スプロケット10,11の間の間隔を小さくすることで、パレット昇降体5をピットP内において偏在させることができる。そして、パレット昇降体5を偏在させた分だけ、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との間の間隔Wを確保できるので、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23とが確実に重ならないように構成することができる。
【0043】
なお、上記の間隔Wは、各吊りチェーン用スプロケット10,11の歯の総高さよりも大きいので、各吊用スプロケット22,23と各吊りチェーン用スプロケット10,11との干渉(歯先の接触)を確実に防止することができる。
【0044】
また、立体駐車装置1には、間隔Wが保持されるようにパレット昇降体5の昇降をガイドするガイドローラ27が設けられている。パレット昇降体5には、昇降時に一定方向に横荷重が加わるため、横方向への移動及び横揺れが発生する場合がある。そこで、ガイドローラ27を設けることにより、昇降時において距離Wが保持されるので、パレット昇降体5を安定的に昇降させることができ、パレット昇降体5の横揺れを防止することができる。その結果、昇降駆動軸18側の前側及び後側吊りチェーン用スプロケット10,11と前側及び後側吊用スプロケット22,23との間の間隔Wを確実に保つことができる。
【0045】
また、ガイドローラ27は、下段パレット6bに設けられ、昇降駆動軸が18軸支された支柱3,4の一側面3a,4aに当接部29が当接する。そして、ガイドローラ27の当接部29の高さは、各吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも低くなっている。パレット昇降体5は、各吊りチェーン12,13によって吊り上げられる構造上、下部に配置された下段パレット6bの揺れ幅が大きい。そこで、ガイドローラ27を下段パレット6bに設けると共に、その高さを各吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも低くすることにより、より安定的にパレット昇降体5を昇降させることができる。また、ガイドローラ27を支柱3,4の一側面3a,4aに当接させるので、ガイドレールを新たに設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0046】
また、支柱3,4には、昇降駆動軸18の軸受30a,30bが固定されており、ガイドローラ27の当接部29は、軸受30a,30bの固定位置に対応して支柱3,4の一側面3a,3bに当接している。各吊りチェーン12,13による張力は、昇降駆動軸18を軸支する軸受30a,30bを介して支柱3,4が受けることになる。そこで、ガイドローラ27と軸受30a,30bの支柱3,4における固定位置とが同一線上となる位置にガイドローラ27を設けることにより、軸受30a,30bがパレット6側に引っ張られる力と、ガイドローラ27が昇降駆動軸18側に突っ張る力とが互いに対向する方向から同一線上に加わるため、前側及び後側支柱3,4に加わる負担を最小限に抑えることができる。
【0047】
ここで、例えば、ガイドローラ27を各吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも高い位置に設けた場合、ガイドローラ27の当接部29を支点として各吊りチェーン12,13の水平荷重がパレット昇降体5を転覆させようとする力に変質する。これに対し、本実施形態では、ガイドローラ27の当接部29を各吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも低い位置に設けているので、ガイドローラ27の反力がパレット昇降体5のバランス(パレット昇降体5の転覆防止性)に悪影響を与えない。従って、ガイドローラ27がパレット昇降体5を好適にガイドすることができる。
【0048】
また、上述の立体駐車装置1では、昇降駆動軸18の前側及び後側吊用スプロケット22,23と前側及び後側吊チェーン用スプロケット10,11との間に間隔Wを設け、スプロケット同士の歯先の衝突を避けることで昇降駆動軸18の取り付け位置を低くし、道板Mを地上面Gに対して極力低く設定しているが、上記の間隔Wを設ける構成とすることで、その他に以下のような作用効果を得ることができる。具体的には、図6を参照しながら説明する。図6は、下段パレットの構成を示す図であり、(a)は従来の下段パレット、(b)は本発明に係る立体駐車装置の下段パレットを示している。
【0049】
図6(a)に示すように、従来の立体駐車装置1A(図4(a)参照)に設けられる下段パレット6Aは、昇降駆動軸の吊用スプロケット22aとチェーン用スプロケット10aとの干渉を避けるために、吊りチェーンの架け渡し位置を下げる必要があるため、構造に厚みEが生じてしまう。これにより、下段パレット6Aの厚みEの分だけ装置の高さ方向のスペースを必要とするため、ピットの深さを削減することが困難であった。
【0050】
これに対し、本発明の立体駐車装置1では、昇降駆動軸18の前側及び後側吊用スプロケット22,23と前側及び後側吊チェーン用スプロケット10,11との間に間隔Wが確保されているので歯先同士の衝突を避けることができる。これにより、吊りチェーン12,13の架け渡し位置を下げる必要がないので、図6(b)に示すように、従来の下段パレット6Aの構造に比べて、下段パレット6bの厚みFを薄く(F≪E)することができる。この厚みの差(E−F)は、図4に示す従来の各吊りチェーン用スプロケット10aと各吊用スプロケット22aとの上下方向の間隔Aと、各吊りチェーン用スプロケット10,11と各吊用スプロケット22,23との上下方向の間隔Bとの差と同等(E−F=B−A)となっている。
【0051】
従って、図6(c)に示すように、昇降駆動軸18の前側及び後側吊用スプロケット22,23と前側及び後側吊チェーン用スプロケット10,11との間に間隔Wを設けて歯先同士の衝突を避けることにより、下段パレット6bの厚みを従来の下段パレット6Aよりも小さくすることができるので、縮小した厚み分だけ装置の高さ方向の省スペース化を図ることができる。その結果、道板Mの地上面Gに対する高さを下げる代わりに、縮小した厚み分(E−F)だけピットPの深さを削減することができる。すなわち、本発明の立体駐車装置1では、ピットPの深さを変更することなく昇降駆動軸18の高さを低く設定でき、道板Mの地上面Gに対する高さを低くすることができる他に、昇降駆動軸18の高さを変更しない構成の場合には、ピットPの深さを削減することができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ガイドローラ27の当接部29の高さが前側及び後側吊りチェーン用スプロケット10,11の高さよりも低い高さとなっているが、前側及び後側吊りチェーン用スプロケット10,11の高さと同じ高さにガイドローラ27が設けられてもよい。この場合にも、各吊りチェーン12,13の水平成分の張力をガイドローラ27が同一位置で負担するため、パレット昇降体5のバランスに影響を与えることがない。
【0053】
また、上記実施形態に加えて、パレット6の行き過ぎを防止する行過制限装置による制御的な停止操作が行われてもよい。また、パレット6の昇降の上限を超えるオーバーランが発生した場合に、吊金具とフレーム構造との当接により機械的に行き過ぎを阻止する構造が設けられていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、昇降駆動軸18の高さ位置を低く設定することで道板Mの地上面Gに対する高さ位置を低くする構成と、昇降駆動軸18の高さ位置を変更せずに下段パレット6bの厚さを小さくすることでピットPの深さの低減を図る構成とを示したが、もちろん両構成を合わせることにより、昇降駆動軸18の高さ位置を低くし、且つ下段パレット6bの厚さを低減することで、道板Mの地上面Gに対する高さを低くしつつ、ピットPの深さの削減を図ることもできる。
【符号の説明】
【0055】
1,40…立体駐車装置、3,4…支柱(ピット支柱)、5…パレット昇降体、6(6a,6b)…パレット、6a…下段パレット、7,8…パレット支柱、10,11…吊りチェーン用スプロケット(チェーン用スプロケット)、12,13…吊りチェーン、18…昇降駆動軸、22,23…吊用スプロケット(吊り上げ用スプロケット)、27…ガイドローラ(ガイド手段)、30a,30b…軸受、G…地上面(乗り込み面)、K…車両、P…ピット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗り込み面から所定の深さで形成されたピット内に設けられた立体駐車装置であって、
前記車両が載置されるパレットをパレット支柱によって多段に連結してなるパレット昇降体と、
前記パレット昇降体の前後左右で前記ピットに立設されたピット支柱と、
前記パレット昇降体の下部に架け渡され、前記パレット昇降体を吊り上げる吊りチェーンと、
前記パレット昇降体の一側に位置する前後の前記ピット支柱の上部間に回転可能に軸支されると共に、前記吊りチェーンの一端側が巻き掛けられる吊り上げ用スプロケットが固定された昇降駆動軸とを備え、
前記パレット昇降体における下段パレットの両側には、前記吊り上げ用スプロケットの固定位置に対応して前記吊りチェーンが噛合する一対のチェーン用スプロケットが固定され、
前記チェーン用スプロケットは、前記パレット昇降体の昇降方向から見て前記吊り上げ用スプロケットと重ならない位置に配置されていることを特徴とする立体駐車装置。
【請求項2】
前記吊り上げ用スプロケットの固定位置と前記吊りチェーンの他端側の固定位置との間隔は、前記一対のチェーン用スプロケットの固定位置の間隔よりも大きくなっており、
前記パレット昇降体が前記吊りチェーンの他端側に偏在することによって、前記吊り上げ用スプロケットと前記チェーン用スプロケットとの間に、所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置。
【請求項3】
前記吊りチェーンは、当該吊りチェーンの他端側の固定位置と前記チェーン用スプロケットのチェーン立ち上がり位置との間において前記ピット支柱に沿って略垂直に張設されていると共に、前記吊り上げ用スプロケットのチェーン架け渡し位置と前記チェーン用スプロケットのチェーン立ち上がり位置との間において前記ピット支柱に対して傾斜して張設されており、
前記パレット昇降体が前記吊りチェーンの他端側に偏在することによって、前記吊り上げ用スプロケットと前記チェーン用スプロケットとの間に、所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の立体駐車装置。
【請求項4】
前記所定の間隔は、前記チェーン用スプロケットの歯の総高さよりも大きいことを特徴とする請求項2又は3記載の立体駐車装置。
【請求項5】
前記所定の間隔が保持されるように前記パレット昇降体の昇降をガイドするガイド手段を更に備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の立体駐車装置。
【請求項6】
前記ガイド手段は、前記下段パレットに設けられ、前記昇降駆動軸が軸支された前記ピット支柱の側面に当接するガイドローラであることを特徴とする請求項5記載の立体駐車装置。
【請求項7】
前記一側の前後のピット支柱には、前記昇降駆動軸の軸受が固定されており、
前記ガイドローラは、前記軸受の固定位置に対応して前記ピット支柱の側面に当接していることを特徴とする請求項6記載の立体駐車装置。
【請求項8】
前記ガイドローラの高さは、前記チェーン用スプロケットの高さ以下となっていることを特徴とする請求項6又は7記載の立体駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−43019(P2011−43019A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193122(P2009−193122)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)