説明

立坑又は斜坑の長孔発破掘削法

【課題】本発明は200m程度の高さの導坑内に長孔発破により非発破物を横向に拂い出し、これを閉塞させることなく水平坑道に下向きに自重落下又は自重下降させ、水平坑道から坑外に搬出して立坑又は斜坑を掘削することを目的とする。
【解決手段】水平坑道1から掘削表面2に向う直立又は傾斜中心線cに沿う導坑3の周囲に該中心線cからほぼ等距離に複数の内側長孔4を上記中心線cと平行に上記掘削表面2から水平坑道1まで穿設し、1個の上記長孔4のほぼ全長に亘る1発の長孔発破による被破砕物の発破後の体積よりも上記導坑3の容積が大であって、複数の上記長孔発破を1発宛順次行って心抜坑5を形成し、該心抜坑5の周囲に上記中心線cからほぼ等距離に穿孔した複数の外側長孔6による長孔発破を順次行い、被破砕物を水平坑道から搬出することを特徴とする立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベンチカット式採掘法における貯鉱用の立坑又は斜坑の長孔発破による掘削法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石灰岩鉱床は該鉱床内に掘進した水平坑道の先端部に鉱床上面に至る立坑又は45度以上の勾配を有する斜坑を掘削し、採掘した石灰岩を立坑又は斜坑から自重により上記水平坑道を経て鉱床外に搬出する所謂ベンチカット式採掘法が採用されている。
【0003】
上記立坑又は斜坑を水平坑道から発破による掘削掘上り工法として図6(イ)(ロ)図に示すクライマー工法が施工され、或は図7(イ)(ロ)図及び図8(イ)(ロ)図に示すステージ発破工法が施工されている。
【0004】
ステージ発破工法の1パターンに直立又は傾斜導坑の周囲に複数の長孔を鉱床表面から水平坑道に穿孔し、バーンカット形式で2〜8mを水平坑道に向って下向きに階段式(ステージ式)に発破し、掘上る工法が知られている(例えば非特許文献1)
【0005】
しかし、上記長孔に火薬を充填し上記導坑に向って直角方向に発破すると発破前に対応する導孔の容積が発破後の被破砕物の膨張体積よりも小さいため導孔が閉塞し、下方に拂い落とされないという危険性があった。
【0006】
従って導坑の最適発破長は2〜3mであり、数段これを繰返して掘上る方法が用いられるため、発破工数が掛っていた。
【非特許文献1】新しい発破技術 1981年10月26日 第1版第2刷発行R・グスタファソン原著 監訳者 和田満穂 第12章 206頁〜212頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は200m程度の高さの導坑内に長孔発破により非発破物を横向きに拂い出し、これを閉塞させることなく水平坑道に下向きに自重落下又は自重下降させ、水平坑道から坑外に搬出して立坑又は斜坑を掘削することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は
第1に水平坑道から掘削表面に向う直立又は傾斜中心線に沿う導坑の周囲に複数の内側長孔を上記中心線と平行に上記掘削表面から水平坑道まで穿設し、1個の上記長孔のほぼ全長に亘る1発の長孔発破による被破砕物の発破後の体積よりも上記導坑の容積が大であって、複数の上記長孔発破を1発宛順次行って心抜坑を形成し、該心抜坑の周囲に穿孔した外側長孔による長孔発破を順次行い、被破砕物を水平坑道から搬出することを特徴とする立坑又は斜坑の長孔発破掘削法、
第2に上記導坑及び心抜坑及び上記内外側孔がほぼ200mである上記第1発明記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法、
第3に長孔発破による被破砕物が石灰岩であり、発破後の体積が発破前の体積の1.7倍である上記第1又は第2発明記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法、
第4に被破砕物が上記導坑及び上記心抜坑を自重で落下又は下降する上記第1〜第3発明のいずれかに記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法、
第5に上記外側長孔による長孔発破を上記心抜坑の下段と上段とに分割して行う上記第1〜第4発明のいずれかに記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法、
によって構成される。
【0009】
従って上記1発の長孔発破によって破砕される被破砕物は体積が膨張するけれども上記導坑内に詰まることなく収容され破砕石は導坑に案内されて落下又は下降し水平坑道内に拂い出されるから、ローダーによりトラック又はベルトコンベアに積み込まれ坑外に搬出され、上記導坑内は空となる。
【0010】
その後上記作業を複数の長孔毎に行って心抜坑を形成することができる。
【0011】
上記心抜坑の周囲には上記中心線からほぼ等距離に穿孔されている複数の既穿設外側長孔を2発宛又は3発宛同時に長孔発破することによって破砕石を心抜坑内に拂い出し、これを水平坑道においてローダーによってトラック又はベルトコンベアに積み込み坑外に搬出し心抜坑を空にしては次の長孔発破を繰返して大径の立坑又は斜坑を形成することができる。
【0012】
上記鉱床は石灰岩鉱床であり、長孔発砕による破砕石の見掛け体積は破砕前の石灰岩の体積の1、7倍であり、上記大径の立坑又は斜坑は心抜坑の下段で行い、その後上段で行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述のように構成したので比較的深度大な大径立坑又は大径斜坑を長孔発破の回数を少なくかつ短時間に施工し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
石灰岩の地表7上に露出した鉱床8の地表水準から鉱床8の中心部に向って水平坑道1が掘進され、該坑道1の終端部と鉱床8の頂部の掘削表面2まで直径約2mの導坑3が直立又は45度以上の傾斜方向にクライマー発破法により開削されている(図6(イ)図)。
【0015】
上記導坑3の高さHは図2に示すように約50mであるが約200mとすることができ、直径φは約2mである。この導坑3の周囲には図1及び図5(ロ)図に示すように導坑3の中心線cからほぼ等距離(約2m)位置に4個の内側長孔4,4,4,4を該中心線cと平行に鉱床8の頂面(掘削表面2)から水平坑道1までボーリング機によって約50m〜200m掘削する。
【0016】
又上記中心線cを中心とする半径約3〜4mの円周に沿って該中心線cと平行に上記導坑3と同一高さH(50m〜200m)の長孔6を鉱床8の掘削表面2から水平坑道1までボーリング機で8〜9個掘削して外側長孔6,6・・・・とする(図1及び図4(ロ)図にその平面を示す。)内外側長孔4,6は石灰岩のボーリング孔の推進弯曲の少ない深さが約200mであることによる。
【0017】
この状態において上記内側長孔4の1個に水平坑道1から高さh(44m〜194m)に火薬9を装填し、上下端部をタンピング9’,9’して固定し、複数個所一度に点火して全長に亘って1度に長孔発破を1発行う。
【0018】
上記1発による被破砕物は図1に示す導坑3内に拂い出されるが導坑内に詰まることなく導坑3に沿って落下又は下降して水平坑道1の終端部に拂い落される。
【0019】
その状態で水平坑道1内のローダー(図示していない)によって水平坑道1内に待機しているトラック又はベルトコンベアに積込まれ、該トラック又はベルトコンベアによって坑外に搬出する動作により導坑3内を空となす。
【0020】
その後第2の内側長孔4に火薬を装填9して第2の長孔発破を行い、破砕石を水平坑道1から上述のように搬出する動作を行い、これを4回繰返すことによって高さ44m〜194mの心抜坑5を掘削形成することができる。
【0021】
次に図(イ)図に示す外側長孔6,6の2〜3個の下段(高さ25m)に火薬9を装填しタンピング9’,9’して一斉に長孔発破を行い、発破後の石を上記心抜坑5に拂い出し、これを心抜坑5から1度に落下又は下降させて、上記水平坑道1に拂い出すことができ、ローダーによりトラック又はベルトコンベアに積込んで坑外に搬出し、心抜坑5を拡大して空にする(図4(ロ)図、図5(イ)図)。
【0022】
上記下段の外側長孔6,6の他の2〜3孔を1度に上述のように長孔発破によって拂い落し、これを全外側長孔6・・・に亘って施工し、心抜坑5の下段(高さ25m)を直径約6mに拡径する(図5(イ)図)。
【0023】
その後上記上段の外側長孔6(8〜9個、高さ19m)を上述同様に複数発毎に1度に長孔発破により払い出して上記下段と同様に直径約6mに拡径して全長(高さ)44mの立坑又は斜坑10を形成し、坑壁を調整して作業を終了する。又上下段を100m毎に長孔発破し、或は上中下段を50m毎に長孔発破で払い出すことができる。内外長孔4,6の発破順は、自由面から近い孔から順次発破を行う。
【0024】
鉱床8の頂面(掘削表面2)から水平坑道1までの高さHが50m〜200mであり、上記長孔発破を図3、図4(ロ)図に示すように高さ44m〜194m施工し、頂面(掘削表面2)から6mの未開削部分11を残留することができる(但し図4(ロ)図、図5(イ)図に示すように導坑3の上部にも未開削部分11を残すことができる)。
【0025】
上記未開削部分11については図5(イ)図に示すように内外側の長孔4,6の上端部に装薬9及びダンピング9’,9’して一度に発破して拂い落し、立坑又は斜坑10を頂面(掘削表面2)に開口し作業を終了する。
【0026】
外側長孔6は図1(ロ)図に示すように4角線に沿って穿設し、立坑又は斜坑の横断面を4角形とすることができる。
【0027】
尚図6(イ)(ロ)図中12は人員運搬用昇降ケージ、図6(イ)図中13はクライマー発破における上向発破孔、(ロ)図中14は横向発破孔、図7(イ)図15はステージ発破長孔、(ロ)図中の数字はステージ発破順序、図8(ロ)図中16はステージ発破状態の縦断正面図である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は石灰岩の鉱床(山)の地上部分の露天掘り採掘に際し、鉱床の頂部(掘削表面2)からベンチカット等で採掘搬出するものではなく、鉱床(山)8の麓の水準から水平坑道1を鉱床(山)の内部に掘進し、水平坑道1の終端部と鉱床(山)の頂部(掘削表面2)とを立坑又は45度以上の斜坑10で接続し、該立坑又は斜坑10から水平坑道1を経て破砕鉱石粒子を坑外に搬出する石灰石採掘法に利用する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(イ)図は本発明の導坑及び内外側長孔の配置を示す平面図、(ロ)図は4角形立坑の内外側長孔の配置を示す平面図である。
【図2】図1の直径方向縦断面図である。
【図3】心抜坑形成状態の直径方向縦断面図である。
【図4】(イ)図は本発明の他の実施例の横断平面図、(ロ)図は(イ)図の直径方向の縦断面図である。
【図5】(イ)図は本発明の作業工程図、(ロ)図は導坑及び内外側長孔の配置図である。
【図6】(イ)図は従来のクライマー工法による導坑掘削状態図、(ロ)図は横孔によるバーンカット発破状態の縦断面図である。
【図7】(イ)図は従来のステージ発破における長孔掘削位置を示す平面図、(ロ)図は発破順序の説明縦断面図である。
【図8】(イ)図はステージ発破法における長孔掘削状態図、(ロ)図はステージ発破による拂出し状態図である。
【符号の説明】
【0030】
1 水平坑道
2 掘削表面
c 直立又は傾斜中心線
3 導坑
4 内側長孔
5 心抜坑
6 外側長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平坑道から掘削表面に向う直立又は傾斜中心線に沿う導坑の周囲に複数の内側長孔を上記中心線と平行に上記掘削表面から水平坑道まで穿設し、
1個の上記長孔のほぼ全長に亘る1発の長孔発破による被破砕物の発破後の体積よりも上記導坑の容積が大であって、
複数の上記長孔発破を1発宛順次行って心抜坑を形成し、
該心抜坑の周囲に穿孔した外側長孔による長孔発破を順次行い、
被破砕物を水平坑道から搬出することを特徴とする立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。
【請求項2】
上記導坑及び心抜坑及び上記内外側孔がほぼ200mである請求項1記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。
【請求項3】
長孔発破による被破砕物が石灰岩であり、発破後の体積が発破前の体積の1.7倍である請求項1又は2記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。
【請求項4】
被破砕物が上記導坑及び上記心抜坑を自重で落下又は下降する請求項1〜3のいずれかに記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。
【請求項5】
上記外側長孔による長孔発破を上記心抜坑の下段と上段とに分割して行う請求項1〜4のいずれかに記載の立坑又は斜坑の長孔発破掘削法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−309019(P2007−309019A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140668(P2006−140668)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(397006793)古手川産業株式会社 (7)