説明

立坑掘削設備

【課題】 コンクリートの供給を効率的に行い待ち時間を生じることなく打設できるようにした立坑掘削設備を提供する。
【解決手段】 掘削ズリを坑外に搬出するズリバケットとコンクリートCを坑外から搬入するコンクリートバケット10を立坑T内で昇降可能に備え、スカフォード1の各床にズリバケットが上下に通過できる通過穴1aを形成し、同通過穴1aに脱着自在に取り付けできるコンクリートホッパー9を備え、掘削時はズリバケットをスカフォード1の通過穴1aに通過させて掘削ズリを坑外へ搬出し、コンクリート打設時はスカフォード1の通過穴1aにコンクリートホッパー9を取り付け後コンクリートバケット10で搬入したコンクリートCを移送して立坑Tの側壁に打設できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑掘削設備に関し、詳しくはコンクリートを効率良く供給して打設できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削機を備えたスカフォードを立坑内に吊下して地盤を掘削し、掘削ズリを坑外に搬出して掘削後の立坑の側壁にコンクリートを打設する立坑掘削設備がある。掘削ズリは立坑内をワイヤーロープで吊下して昇降するズリバケットで搬出し、コンクリートは立坑内をワイヤーロープで吊下して昇降する移動コンクリートホッパーで搬入して供給している。
【0003】
ところで、コンクリートは一度に使用できる量を予め調整して搬入させる必要がある。打設中にコンクリートが不足すると打設を中断し、コンクリートホッパーを坑外へ搬出してコンクリートを補充して坑内へ再度搬入しなければならず、コンクリートホッパーの搬入出時は打設することができず待機となり、時間のロスが生じる問題があった。
【0004】
また、コンクリートホッパーは通過穴とは別位置のスカフォード上に配置して打設作業するから、小径の立坑を構築する場合はスカフォード上にコンクリートホッパーの占有スペースを十分に確保できない問題もあった。
【特許文献1】特開2003−106084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、コンクリートの供給を効率的に行い待ち時間を生じることなく打設できるようにした立坑掘削設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 掘削機を備えたスカフォードを立坑内に吊下して地盤を掘削し、掘削ズリを坑外に搬出して掘削後の立坑の側壁にコンクリートを打設する立坑掘削設備において、掘削ズリを坑外に搬出するズリバケットとコンクリートを坑外から搬入するコンクリートバケットを立坑内にワイヤーロープで吊下して昇降可能とし、スカフォードにズリバケットが上下に通過できる通過穴を形成し、下部に排出シュートを備えた通過穴を通過できる大きさのコンクリートホッパーを通過穴に脱着自在に取り付け、掘削時はコンクリートホッパーを通過穴から取り外した後ズリバケットをスカフォードの通過穴から通過させて掘削ズリを坑外へ搬出し、コンクリート打設時はスカフォードの通過穴にコンクリートホッパーを取り付けた後コンクリートバケットで搬入したコンクリートをコンクリートホッパーに移送して排出シュートから立坑の側壁にコンクリートを供給して打設できるようにしたことを特徴とする、立坑掘削設備
2) スカフォードが複床式で、各床にズリバケット・コンクリートホッパー及びコンクリートバケットが通過できる通過穴をそれぞれ同じ位置に形成した、前記1)記載の立坑掘削設備
3) コンクリートホッパーの上部に複数のアームを放射状に展開可能に設け、コンクリートホッパーをスカフォードの通過穴に落とし込んで展開させたアームを通過穴の周部に掛止して取り付けるようにした、前記1)又は2)記載の立坑掘削設備
4) 立坑の坑口に扉を設け、坑口と坑口から離れた位置との間にコンクリートバケットの運搬台車を走行させる軌道を設け、坑口から離れた位置の軌道上にコンクリートをコンクリートバケットに供給する供給コンベヤを配設した、前記1)〜3)いずれか記載の立坑掘削設備
にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、打設中もコンクリートバケットでコンクリートの補充が並行して行え、打設を中断させることなく効率的且つ短時間に供給できるようになる。また、コンクリートホッパーはズリバケットの通過穴に配置するようにしたから、従来の占有スペースを省略して小径の立坑でも打設作業が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、スカフォードは2床や3床等の複床式にして小径の立坑構築における作業領域やバケット置き場を確保し、複数のズリバケットを交代させながら効率的に掘削ズリを排出できるようにしてもよい。また、立坑の坑口に扉を設け、コンクリートバケットへのコンクリート補充は坑口から離れた位置で行うようにして、補充時におけるコンクリートの立坑内への落下を防止するのが望ましい。以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1,2は実施例の立坑掘削設備の説明図、図3は実施例のコンクリート供給設備の平面図、図4は実施例のコンクリートホッパーの説明図、図5は実施例のコンクリートバケットの説明図、図6は実施例のコンクリートの打設を示す一部断面説明図、図7は実施例のスカフォードにコンクリートホッパーを配置した状態を示す平面図である。
【0010】
図中、1はスカフォード、1aは通過穴、1bは油圧ジャッキ、1cは支柱、1dは吊シーブ、2は掘削機、3は掘削やぐら、3aはズリシュート、4は吊ワイヤー、5はスカフォード巻上機、6はズリバケット、7は吊ワイヤー、8はズリバケット巻上機、9はコンクリートホッパー、9aはシュート、9bはアーム、9cは切換弁、9dは型枠、9eはホース、10はコンクリートバケット、10aは吊具、11は扉、12は軌道、13は供給コンベヤ、14は運搬台車、15はミキサー車、16はズリ置き場、17はコンクリートバケット置き場、18はズリバケット置き場、Cはコンクリート、Gは地盤、Hは作業者、Tは立坑である。
【0011】
本実施例の立坑掘削設備は、図1,2に示すように支柱1cで上下に連設した3床式のスカフォード1の最下床に掘削機2を旋回自在に備え、各床の周部には立坑Tの側壁に圧接して保持する油圧ジャッキ1bを備え、各床にズリバケット6・コンクリートホッパー9・コンクリートバケット10が通過できる径の通過穴1aがそれぞれ同じ位置に形成され、スカフォード巻上機5の吊ワイヤー4を掘削やぐら3の頂部を介して最上床に備えた吊シーブ1dに巻回して昇降自在に吊下している。
【0012】
立坑Tの坑口には図3に示すように扉11を備え、扉11と扉11から離れた位置との間にコンクリートバケット10の運搬台車14を走行させる軌道12を設け、軌道12の途中の上方位置に運搬台車14で移動するコンクリートバケット10にコンクリートCを供給する供給コンベヤ13を配設している。
【0013】
コンクリートホッパー9は、図4に示すように下部にシュート9aを備え、上部には下向きから水平へ回動する4体のアーム9bを放射状に展開自在に取り付けている。コンクリートホッパー9はスカフォード1の通過穴1aを通過できる大きさで、アーム9bを水平に展開した状態の各アーム9b端間距離は通過穴1aの内径より大きく形成される。コンクリートバケット10は図5に示すように上部に吊具10aを備えており、ズリバケット巻上機8と吊ワイヤー7を兼用して昇降させる。
【0014】
本実施例では、コンクリートホッパー9をスカフォード1上に搭載してスカフォード1を立坑T内で吊下し、掘削機2で地盤Gを掘削する。ズリバケット6は吊ワイヤー7でスカフォード1の通過穴1aを通過させて坑底に配置して掘削ズリを投入し、満杯となったズリバケット6を通過穴1aに通過させて上昇させ、扉11を開放して坑外へ搬出して掘削ズリをズリ置き場16に排出する。
【0015】
所定深さに掘削すると掘削を一旦中断し、ズリバケット6を坑外又はスカフォード1上の空きスペースに仮置き、コンクリートホッパー9を吊ワイヤー7で持ち上げてスカフォード1の最下床の通過穴1aに途中まで落とし込み、アーム9bを水平位置に展開させて通過穴1aの周縁に掛止して吊設する。シュート9aにはホース9eを接続し、打設すべき側壁に型枠9dを配置する。
【0016】
コンクリートバケット10は運搬台車14に載せて供給コンベヤ13の下方まで移動し、供給コンベヤ13を作動する。供給コンベヤ13の隣接位置にはコンクリートCを運搬したミキサー車15が横付けされており、供給コンベヤ13の始端にコンクリートCを投下してコンクリートバケット10に投入する。所定量となったコンクリートバケット10は扉11の位置まで移動して吊ワイヤー7で吊り上げ、扉11を開放して立坑Tを降下させる。降下中は扉11を閉塞する。
【0017】
コンクリートバケット10はスカフォード1の通過穴1aを通過させて図6に示すようにコンクリートホッパー9の上部に載せ、コンクリートCをコンクリートホッパー9に移送してホース9eで型枠9d内に流し込んで打設する。コンクリートホッパー9内のコンクリートCが不足するようだと、無くなる前に打設作業と並行してコンクリートバケット10を坑外へ搬出して前記と同様にコンクリートCを投入し、再度坑内へ搬入してコンクリートホッパー9に補充する。
【0018】
このように、本実施例では打設中もコンクリートバケット10は並行してコンクリートCの補充が行え、打設を中断させることなく効率的且つ短時間に供給できるようになった。また、コンクリートホッパー9はズリバケット6の通過穴1aに配置するようにしたから、従来の占有スペースを省略して小径の立坑でも打設作業が行えるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の立坑掘削設備は、大深度の立坑の構築に好ましく利用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の立坑掘削設備の説明図である。
【図2】実施例の立坑掘削設備の説明図である。
【図3】実施例のコンクリート供給設備の平面図である。
【図4】実施例のコンクリートホッパーの説明図である。
【図5】実施例のコンクリートバケットの説明図である。
【図6】実施例のコンクリートの打設を示す一部断面説明図である。
【図7】実施例のスカフォードにコンクリートホッパーを配置した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 スカフォード
1a 通過穴
1b 油圧ジャッキ
1c 支柱
1d 吊シーブ
2 掘削機
3 掘削やぐら
3a ズリシュート
4 吊ワイヤー
5 スカフォード巻上機
6 ズリバケット
7 吊ワイヤー
8 ズリバケット巻上機
9 コンクリートホッパー
9a シュート
9b アーム
9c 切換弁
9d 型枠
9e ホース
10 コンクリートバケット
10a 吊具
11 扉
12 軌道
13 供給コンベヤ
14 運搬台車
15 ミキサー車
16 ズリ置き場
17 コンクリートバケット置き場
18 ズリバケット置き場
C コンクリート
G 地盤
H 作業者
T 立坑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機を備えたスカフォードを立坑内に吊下して地盤を掘削し、掘削ズリを坑外に搬出して掘削後の立坑の側壁にコンクリートを打設する立坑掘削設備において、掘削ズリを坑外に搬出するズリバケットとコンクリートを坑外から搬入するコンクリートバケットを立坑内にワイヤーロープで吊下して昇降可能とし、スカフォードにズリバケットが上下に通過できる通過穴を形成し、下部に排出シュートを備えた通過穴を通過できる大きさのコンクリートホッパーを通過穴に脱着自在に取り付け、掘削時はコンクリートホッパーを通過穴から取り外した後ズリバケットをスカフォードの通過穴から通過させて掘削ズリを坑外へ搬出し、コンクリート打設時はスカフォードの通過穴にコンクリートホッパーを取り付けた後コンクリートバケットで搬入したコンクリートをコンクリートホッパーに移送して排出シュートから立坑の側壁にコンクリートを供給して打設できるようにしたことを特徴とする、立坑掘削設備。
【請求項2】
スカフォードが複床式で、各床にズリバケット・コンクリートホッパー及びコンクリートバケットが通過できる通過穴をそれぞれ同じ位置に形成した、請求項1記載の立坑掘削設備。
【請求項3】
コンクリートホッパーの上部に複数のアームを放射状に展開可能に設け、コンクリートホッパーをスカフォードの通過穴に落とし込んで展開させたアームを通過穴の周部に掛止して取り付けるようにした、請求項1又は2記載の立坑掘削設備。
【請求項4】
立坑の坑口に扉を設け、坑口と坑口から離れた位置との間にコンクリートバケットの運搬台車を走行させる軌道を設け、坑口から離れた位置の軌道上にコンクリートをコンクリートバケットに供給する供給コンベヤを配設した、請求項1〜3いずれか記載の立坑掘削設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−113340(P2007−113340A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308226(P2005−308226)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(594145297)タグチ工業株式会社 (8)