説明

竪型帯鋸盤及び当該竪型帯鋸盤によるワークの切断方法

【課題】ワークを帯鋸刃で切断した後、帯鋸刃を元の位置へ相対的に戻すとき、ワーク及び切断片と干渉することなく帯鋸刃を相対的に戻すことのできる竪型帯鋸盤及びそのワーク切断方法を提供する。
【解決手段】竪型の帯鋸盤5に備えた帯鋸刃3に対してワークWをX軸,Y軸方向へ相対的に移動するためのワーククランプ装置を備えている竪型帯鋸盤であって、X軸,Y軸方向へ移動自在なクランプキャリッジ15に、複数の前記ワーククランプ装置17をX軸方向へ位置調節自在かつ位置調節位置においてX軸方向へ移動可能に備えている。また、前記ワーククランプ装置17は、前記クランプキャリッジ15に対してX軸方向へ位置調節自在かつ前記クランプキャリッジ15に固定自在のクランプベース19と、このクランプベース19に対してX軸方向へ移動可能なクランプジョー31とを備えている。そして、前記クランプジョー31は、前記クランプベース19に上下動自在かつ上方向及び下方向に付勢して支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば厚板状のワークをX,Y軸方向に切断することのできる竪型帯鋸盤及び当該竪型帯鋸盤によるワークの切断方法に係り、さらに詳細には、竪型の帯鋸盤に備えた帯鋸刃に対してワークを相対的にX軸方向又はY軸方向へ移動して、ワークから切断片を切断分離した後、ワークを相対的に元の位置へ戻すとき、ワークと帯鋸刃との干渉を回避して戻すことのできる竪型帯鋸盤及び当該竪型帯鋸盤によるワークの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、竪型の帯鋸盤における帯鋸刃に対してワークを相対的にX軸,Y軸方向へ移動して切断することが行われている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−108938号公報
【特許文献2】特開2001−150227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1,2に記載のごとく、ワークテーブルに保持されたワークの切断は、竪型の帯鋸盤における帯鋸刃に対してワークをX軸,Y軸方向へ相対的に移動して行われている。ところで、竪型帯鋸盤には、X軸方向に長いクランプキャリッジに複数のワーククランプをX軸方向に適宜間隔に備え、この複数のワーククランプでもって厚板状のワークのY軸方向の一端縁側をクランプし、竪型の帯鋸盤に備えた帯鋸刃に対して前記クランプキャリッジをX軸,Y軸方向へ相対的に移動して、前記ワークをX軸,Y軸方向に切断する構成のものも開発されている。
【0005】
上記構成において、前記クランプキャリッジをX軸方向に移動して、ワークのY軸方向の他端縁側をY軸方向に切断分離した後、前記クランプキャリッジをX軸方向の元の位置に戻すとき、帯鋸刃は、ワークと切断分離された切断片との間の間隙内を相対的に戻ることになる。この際、ワークの内部応力が解放されたり、切曲りを生じていると、ワーク及び切断片と帯鋸刃とが干渉することとなり、鋸刃が機械から外れてしまったり、鋸刃寿命の向上を図る上においても望ましいものではない。
【0006】
そこで、ワークから切断片を切断分離した直後(帯鋸刃が相対的にワークを切断して通過した直後)に、前記クランプキャリッジをY軸方向へ移動して、ワークの切断端面でもって前記切断片をY軸方向へ僅かに押進した後、前記クランプキャリッジをY軸方向に戻すことによりワークと切断片との間のY軸方向の間隙寸法を拡大することができ、前述したごとき問題を解消することができる。
【0007】
しかし、回転体を有した鋸刃ガイドが回転し、前記クランプキャリッジをY軸方向に移動して、前記各ワーククランプに把持された部分をX軸方向に切断分離した場合には、各ワーククランプはクランプキャリッジに固定した状態にあるので、ワークと切断片との間の間隙寸法をX軸方向に拡大することができず、帯鋸刃に対してワークをY軸方向へ相対的に戻すとき、ワークと帯鋸刃とが干渉するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述のごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、竪型の帯鋸盤に備えた帯鋸刃に対してワークをX軸,Y軸方向へ相対的に移動するためのワーククランプ装置を備えている竪型帯鋸盤であって、X軸,Y軸方向へ移動自在なクランプキャリッジに、複数の前記ワーククランプ装置をX軸方向へ位置調節自在かつ位置調節位置においてX軸方向へ移動可能に備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記竪型帯鋸盤において、前記ワーククランプ装置は、前記クランプキャリッジに対してX軸方向へ位置調節自在かつ前記クランプキャリッジに固定自在のクランプベースと、このクランプベースに対してX軸方向へ移動可能なクランプジョーとを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記竪型帯鋸盤において、前記クランプジョーは、前記クランプベースに上下動自在かつ上方向及び下方向に付勢して支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記竪型帯鋸盤によるワークの切断方法であって、前記帯鋸刃に対してクランプキャリッジ及びワークをY軸方向へ移動してワークにY軸方向の切断を行った後、前記クランプキャリッジ及びワークをY軸方向の元の位置に戻す際、ワーク又はワークから切断分離された切断片の少なくとも一方をX軸方向に移動して、前記帯鋸刃によってワークを切断した際に生じた間隙の幅寸法をX軸方向に拡大することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワーククランプ装置は、クランプキャリッジに対してX軸方向へ位置調節した位置において、前記クランプキャリッジに対してX軸方向へ移動可能であるから、ワーククランプ装置に把持された状態においてX軸方向に切断分離された切断片をX軸方向に移動できる。したがって、ワークと切断片との間の間隔の幅寸法をX軸方向に拡大することができ、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る竪型帯鋸盤の全体的構成を概念的、概略的に示した平面説明図である。
【図2】ワーククランプ装置の側断面説明図である。
【図3】ワーククランプ装置の主要部の構成を示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に平面図でもって概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る竪型帯鋸盤1は、エンドレス状の帯鋸刃3が上下方向に走行する竪型の帯鋸盤(帯鋸機)5を備えている。この帯鋸機(帯鋸盤)5における前記帯鋸刃3においてワークWの切断(切削)作用を行う部分は、歯先がX軸方向又はY軸方向を指向自在であるように、帯鋸刃3を挟持案内するガイド部材は水平に回動可能に備えられている。なお、帯鋸刃3を水平に回動自在に備える帯鋸盤5は、例えば特許文献1に記載されているように、公知の構成であるから、帯鋸盤5についてのより詳細な説明は省略する。
【0015】
前記帯鋸盤5におけるX軸方向(左右方向)の一側(図1において左側)には、前記帯鋸盤5に対してX軸方向,Y軸方向へワークWを送材するときに、ワークWを移動自在に支持するワークテーブル7Aが備えられている。そして、前記帯鋸盤5におけるX軸方向の他側(図1において右側)には、前記ワークWから切断分離された切断片WAをX,Y方向へ移動可能に支持するワークテーブル7Bが備えられている。
【0016】
前記帯鋸盤5におけるY軸方向(前後方向)の一側(図1において下側)には、X軸方向に長いガイドレール9が水平に敷設されており、このガイドレール9上には、X軸スライダ11がX軸方向へ移動自在に支承(支持)されている。なお、上記X軸スライダ11は、例えばボールネジ機構やリニアモータなどのごとき適宜の往復作動手段(図示省略)によってX軸方向に往復動されるものである。
【0017】
前記X軸スライダ11上には、Y軸方向のガイドレール13が備えられており、このガイドレール13には、X軸方向に長いクランプキャリッジ15がY軸方向へ移動自在に支持されている。なお、上記クランプキャリッジ15のY軸方向への往復動は、例えばボールネジ機構やリニアモータなどのごとき適宜の往復作動手段(図示省略)によって行われるものである。前記クランプキャリッジ15には、厚板状の前記ワークWのY軸方向の一端縁をクランプ自在な複数のワーククランプ装置17がX軸方向へ位置調節自在に備えられている。上記ワーククランプ装置17は、位置調節位置においてワークW又はX軸方向に切断分離された切断片WB(図示は省略)を、X軸方向へ移動可能である。
【0018】
前記構成より明らかなように、前記X軸スライダ11及び前記クランプキャリッジ15は前記ワーククランプ装置17に保持されたワークWを、前記帯鋸刃3に対して相対的にX,Y軸方向に移動するものであって、一種のワーク支持テーブルを構成するものである。
【0019】
前記ワーククランプ装置17は、図1,2に示すように、前記クランプキャリッジ15に対してX軸方向へ位置調節自在かつ位置調節位置において前記クランプキャリッジ15に固定自在のクランプベース19を備えている。すなわち、前記クランプベース19は、図2に示すように、上下方向延伸部19Aと水平方向延伸部19Bとを備えてほぼL字形状に形成してあり、前記上下方向延伸部19Aは、前記クランプキャリッジ15に備えたX軸方向のガイド部材21にX軸方向へ移動自在に支持されている。そして、前記クランプベース19における水平方向延伸部19Bは、前記クランプキャリッジ15の上面に対向するように、クランプキャリッジ15の上面に重なるように突出してあり、この水平方向延伸部19Bには、クランプベース19をクランプキャリッジ15に固定自在の固定手段23が備えられている。
【0020】
すなわち、前記クランプキャリッジ15の上面には複数の位置決め孔25がX軸方向に適宜間隔に備えられており、前記水平方向延伸部19Bには、前記位置決め孔25に対して下端部が係合、離脱自在のショットピン27が上下動可能に備えられている。したがって、前記位置決め孔25からショットピン27を離脱した状態において、クランプベース19はガイド部材21に沿ってX軸方向へ移動自在であり、クランプベース19をX軸方向へ位置調節し、この位置調節した位置において前記ショットピン27を位置決め孔25に係合することにより、クランプベース19を不動状態に固定することができるものである。
【0021】
なお、前記固定手段23の構成としては、前記クランプキャリッジ15に、X軸方向に長いレールなどのごとき突条部を備え、前記クランプベース19に、前記突条部をクランプ自在なクランプを備えた構成とすることも可能である。固定手段23を上述のように構成することにより、前記クランプベース19を、X軸方向に無段階に位置決め固定することができるものである。
【0022】
前記クランプベース19には、フローティング機構29を介して、ワークWをクランプ自在(把持自在)なクランプジョー31が上下動自在かつX軸方向へ移動可能に支持されている。より詳細には、前記クランプベース19における上下方向延伸部19Aに設けた上下方向のガイド部材33に昇降部材35が上下動自在に案内支持されており、このガイド部材33に設けたX軸方向のガイド部37に前記クランプジョー31がX軸方向へ移動可能に案内支持されている。
【0023】
前記フローティング機構29は、前記クランプベース19に対して前記昇降部材35を常に上下動自在に支持し、上下方向の振動を吸収する機能を奏するもので、前記昇降部材35に上下に離隔して備えた上下の突出部39U,39Lの間に、前記クランプベース19に備えた突出部19Pを配置した構成であって、上記突出部19Pと上側の前記突出部39Uとの間には、前記昇降部材35を上方向へ付勢するコイルスプリングなどのごとき弾性部材41Uが弾装してある。そして、前記突出部19Pと下側の前記突出部39Lとの間には、前記昇降部材35を下方向へ付勢する弾性部材41Lが弾装してある。
【0024】
上記構成により、前記昇降部材35は、上側の弾性部材41Uによる上方向への付勢力と、下側の弾性部材41Lによる下方向への付勢力と前記昇降部材35等の重量との和とが均衡した状態の中立位置に支持されている。そして、ワークWをX軸,Y軸方向に移動する際の上下方向の振動を吸収するものである。
【0025】
前記クランプジョー31を前記ガイド部材37に沿ってX軸方向に移動するために、前記昇降部材35には流体圧シリンダなどのごとき往復作動手段43(図3参照)が備えられており、この往復作動手段43にX軸方向へ往復動自在に備えたピストンロッドなどのごとき往復作動部材45と前記クランプジョー31とが一体的に連結してある。前記クランプジョー31は、図2に示すように、ワークWを下側からクランプする下部ジョー31Lと、当該下部ジョー31Lと対向した上部ジョー31Uを備えたコ字形状に構成してあり、前記上部ジョー31Uには、ワークWの上面を下方向へ押圧するピストンロッドなどのごとき押圧部材47を上下動自在に備えた流体圧シリンダ等のごときクランプ用アクチュエータ49が備えられている。
【0026】
上記構成により、前記クランプジョー31によってワークWを把持(保持)した状態において、前記往復作動手段43を作動することにより、前記クランプベース19に対してワークWをX軸方向に移動することができるものである。
【0027】
前記クランプキャリッジ15をY軸方向に移動することにより、複数のワーククランプ装置17に保持されたワークWは同方向に移動されるものである。前記複数のワーククランプ装置17に保持されてY軸方向に移動される前記ワークWを移動自在に支持するワーク支持手段51(図1参照)が前記X軸スライダ11の上面に備えられている。
【0028】
より詳細には、前記X軸スライダ11の上面にはX軸方向に長いガイド部材53が備えられており、このガイド部材53には、Y軸方向に長い複数の支持ベース55がX軸方向に位置調節自在に備えられている。そして、上記各支持ベース55には、ワークWを下側から支持する支持ローラなどのごときワーク支持部材57を上下動自在に備えた流体圧シリンダなどのごとき複数の上下動部材59が備えられている。各支持ベース55に備えた複数のワーク支持部材57は、X軸方向に直線状に整列して備えられている。
【0029】
上記各支持ベース55は、手動的にX軸方向へ移動し所望の位置に位置決めする構成であっても、各支持ベース55を個別にX軸方向に移動するための例えば流体圧シリンダなどのごときアクチュエータを備え、各アクチュエータの動作範囲において各支持ベース55を個別にX軸方向へ移動して、所望の位置に位置決めする構成であってもよいものである。
【0030】
すなわち、前記帯鋸刃3に対してワークWをY軸方向に移動してワークWをX軸方向に切断分離するとき、X軸方向に切断分離された切断片WBにおけるX軸方向の幅寸法に対応した位置へ前記ワーク支持部材57を位置決め可能であればよいものである。換言すれば、X軸方向に切断分離された各切断片WBをワーク支持部材57でもって支持し得る構成である。
【0031】
前記クランプキャリッジ15をY軸方向に移動するとき、クランプキャリッジ15に備えた各クランプ装置17と前記ワーク支持部材57との干渉を回避するために、各ワーク支持部材57に各クランプ装置17がY軸方向に近接したときに、各ワーク支持部材57は下降するように構成してある。すなわち、各ワーク支持部材57がX軸方向に整列した各列に対応したリミットスイッチ又は光電スイッチなどのごとき適宜の複数のセンサ61A〜61Dが、前記スライダ11のX軸方向の一側にY軸方向に整列して備えられている。そして、前記クランプキャリッジ15の一側には、前記各センサ61A〜61Dを作動するドグ63が備えられている。
【0032】
上記構成により、クランプ装置17によってワークWのY軸方向の一端縁を保持した状態にあるとき、クランプキャリッジ15をY軸方向に移動し、当該クランプキャリッジ15に備えた前記クランプ装置17がワーク支持部材57のX軸方向の列に近接すると、当該列に対応したセンサ61A〜61Dがドグ63によって作動される。したがって、ドグ63によって作動されたセンサ、例えばセンサ61Aに対応した列における上下動部材59が下降動作し、ワーク支持部材57が下降される。よって、ワーククランプ装置17とワーク支持部材57の干渉が回避されるものである。
【0033】
なお、前記ドグ63がY軸方向に移動してセンサ61A〜61Dの作動を解除すると、対応した上下動部材59が上昇作動され、ワーク支持部材57でもってワークWを再び支持することとなるものである。
【0034】
以上のごとき構成において、前記ワーク支持手段51に支持されたワークWのY軸方向の一端縁側を複数のワーククランプ装置17によって保持した後、クランプキャリッジ15をガイドレール13に沿ってY軸方向であってワークテーブル7Aに接近する方向へ移動すると、ワークWのY軸方向の他端縁側はワークテーブル7A上に突出し、ワークテーブル7Aによって支持される。
【0035】
したがって、帯鋸刃3に対してワークWの位置決めを行った後、X軸スライダ11をガイドレール9に沿ってX軸方向に移動すると、ワークWのY軸方向の他端縁側は帯鋸刃3によって切断され、Y軸方向に切断分離される。この際、ワークWから切断分離された切断片WAは、他方のワークテーブル7B上に載置されることになるので、手動的に又は適宜の搬出手段によって帯鋸刃3に近接した位置から離れた位置へ移動される。そして、前記X軸スライダ11をX軸方向の元の位置に戻すとき、帯鋸刃3からワークWを僅かに離すようにクランプキャリッジ15をY軸方向(図1において下方向)へ移動し、帯鋸刃3とワークWとの干渉を回避する。
【0036】
すなわち、X軸スライダ11をX軸方向に移動してワークWをY軸方向に切断分離することを繰り返す場合には、帯鋸刃3とワークWとの干渉を回避して、X軸スライダ11をX軸方向の元の位置に戻すことができるものである。
【0037】
次に、帯鋸刃3の歯先がY軸方向を指向するように、帯鋸刃3を90°旋回した状態において、X軸スライダ11をX軸方向へ移動位置決めした後、クランプキャリッジ15をY軸方向であって、前記帯鋸刃3に近接する方向へ移動して、ワークWの切断を行い、ワークWをX軸方向に切断分離する場合には、ワークWのX軸方向への切断分離位置に対応して各ワーククランプ装置17を、クランプキャリッジ15に対してX軸方向に予め位置決めする。すなわち、X軸方向に切断分離される各切断片WBを、各ワーククランプ装置17によって保持するように、各ワーククランプ装置17のX軸方向の位置決めを行う。また、X軸方向に切断分離される各切断片WBをワーク支持手段51における各ワーク支持部材57によって支持するように、各支持ベース55を各切断片WBに対応する位置に予め位置決めする。
【0038】
次に、X軸スライダ11をX軸方向に移動し、ワークWの切断位置を帯鋸刃3に対して位置決めする。そして、クランプキャリッジ15を前記帯鋸刃3に近接するY軸方向へ移動すると、ワークWにY軸方向の切断が行われる。上述のごとくクランプキャリッジ15をY軸方向に移動し、ワーククランプ装置17がワーク支持部材57に近接すると、この近接したワーク支持部材57のX軸方向の列に対応したセンサ61A〜61Dが作動し、前述したように、ワーク支持部材57が下降される。また、ワークWの他端縁側はワークテーブル7A,7B上へ移動されて支持される。
【0039】
そして、ワークWのY軸方向への切断が次第に進行し、帯鋸刃3がワークWのY軸方向の一端縁側を切断すると、ワークWはX軸方向に切断分離される。上述のようにワークWをX軸方向に切断分離した後、往復作動手段43を作動して、X軸方向に切断分離された切断片WBを保持したクランプジョー31を、図3において右方向(X軸方向であってワークW及び帯鋸刃3から離れる方向)へ移動すると、切断片WBは帯鋸刃3からX軸方向に離反される。そして、上記切断片WBが前記帯鋸刃3に接触しない程度に、X軸スライダ11を、図3において左方向(X軸方向であってワークWが帯鋸刃3から離れる方向)へ僅かに移動すると、ワークW及び前記切断片WBは共に帯鋸刃3から離れた状態にある。
【0040】
したがって、上述のように、ワークW及び切断片WBが帯鋸刃3から共に離れた状態においてクランプキャリッジ15をY軸方向の元の位置に戻すことにより、ワークW及び切断片WBと帯鋸刃3とを干渉なく戻すことができるものであり、前述したごとき従来の問題を解消し得るものである。
【0041】
前記説明より理解されるように、前記帯鋸刃3に対してクランプキャリッジ15及びワークWをY軸方向へ移動してワークWにY軸方向の切断を行った後、前記クランプキャリッジ15及びワークWをY軸方向の元の位置に戻す際、ワークW又はワークWから切断分離された切断片の少なくとも一方をX軸方向に移動して、前記帯鋸刃3によってワークを切断した際に生じた間隙の幅寸法をX軸方向に拡大するものであるから、ワークW、切断片WBと帯鋸刃とを干渉することなく、帯鋸刃3に対してワークWを元の位置へ相対的に戻すことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 竪型帯鋸盤
3 帯鋸刃
5 帯鋸盤(帯鋸機)
7A,7B ワークテーブル
9 ガイドレール
11 X軸スライダ
13 ガイドレール
15 クランプキャリッジ
17 ワーククランプ装置
19 クランプベース
23 固定手段
25 位置決め孔
27 ショットピン
29 フローティング機構
31 クランプジョー
35 昇降部材
41U,41L 弾性部材
43 往復作動手段
45 往復作動部材
47 ワーク押圧部材
49 クランプ用アクチュエータ
51 ワーク支持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型の帯鋸盤に備えた帯鋸刃に対してワークをX軸,Y軸方向へ相対的に移動するためのワーククランプ装置を備えている竪型帯鋸盤であって、X軸,Y軸方向へ移動自在なクランプキャリッジに、複数の前記ワーククランプ装置をX軸方向へ位置調節自在かつ位置調節位置においてX軸方向へ移動可能に備えていることを特徴とする竪型帯鋸盤。
【請求項2】
請求項1に記載の竪型帯鋸盤において、前記ワーククランプ装置は、前記クランプキャリッジに対してX軸方向へ位置調節自在かつ前記クランプキャリッジに固定自在のクランプベースと、このクランプベースに対してX軸方向へ移動可能なクランプジョーとを備えていることを特徴とする竪型帯鋸盤。
【請求項3】
請求項2に記載の竪型帯鋸盤において、前記クランプジョーは、前記クランプベースに上下動自在かつ上方向及び下方向に付勢して支持されていることを特徴とする竪型帯鋸盤。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の竪型帯鋸盤によるワークの切断方法であって、前記帯鋸刃に対してクランプキャリッジ及びワークをY軸方向へ移動してワークにY軸方向の切断を行った後、前記クランプキャリッジ及びワークをY軸方向の元の位置に戻す際、ワーク又はワークから切断分離された切断片の少なくとも一方をX軸方向に移動して、前記帯鋸刃によってワークを切断した際に生じた間隙の幅寸法をX軸方向に拡大することを特徴とする竪型帯鋸盤によるワークの切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−79091(P2011−79091A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233223(P2009−233223)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダマシンツール (65)
【Fターム(参考)】