説明

竪型炉の操業方法及びこれに用いる竪型炉装入用コークスの粉化促進装置

【課題】いかなる種類のコークスを用いる際にも適用可能であり、高炉等の竪型炉装入用コークスの粉化を十分に抑制し、円滑、且つ安定した竪型炉の操業を可能とする、竪型炉の操業方法、及びこれに用いる竪型炉装入用コークスの粉化促進装置を提供すること。
【解決手段】回転ドラム内でコークスを回転処理することでコークスを塊状部と粉状部とに分離する際に、回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を回転ドラム内から除去しながら分離を行い、分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用する。このためには回転ドラム2の回転軸方向の一端にコークス供給口3を、他端にコークス排出口4を有し、3と4との間にコークスの粉状部を2内から除去する中間排出口5を有し、4から排出されたコークスを塊状部と粉状部とに分離する篩い分け装置10を有することを特徴とする竪型炉装入用コークスの粉化促進装置1を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型炉の操業方法に関し、特に高炉等で使用する竪型炉装入用コークスの炉内粉化防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑を製造する高炉には、原料として、炉頂から焼結鉱、塊鉱石等の鉄鉱石類及び、熱源、還元材源となる塊状のコークスが交互に装入され、炉内の上部(シャフト部)に、これらの原料が互いに層状に堆積している。そして、炉下部の羽口から炉内へ吹込まれる高温の空気が炉内に堆積している前記コークスを燃焼させて高温ガスが発生し、該高温ガスが前記鉄鉱石類やコークス粒子間の隙間を炉頂へ向けて流れ、これら鉄鉱石類やコークスを昇温すると同時に、鉄鉱石類の還元及び溶融を行なう。したがって、前記粒子間の隙間が適正に確保されていないと、炉内のガス流れの分布が操業にとって不適正となって、炉内状況が悪くなり、安定、且つ円滑な操業が行なわれなくなるばかりか、高炉の生産性が低下する。すなわち、高炉操業には、原料層の通気性の確保が非常に重要である。炉頂から装入される原料に粉が混入すると通気性が阻害されるため、粉の混入は、できる限り防止する必要がある。
【0003】
原料に混入して炉内に装入される粉以外に、炉内で発生する粉の問題もある。コークスは、炉頂から装入された後に炉下部で羽口から供給される酸素によって燃焼されるまでの間は塊状で存在するが、他の原料との物理的な接触により、脆弱部分が欠けることによりコークス粉が発生する。この粉は、原料粒子間に目詰まりし、炉内のガス流れの安定性、制御性を悪化させる原因となる。このため、炉内でコークスが降下する間の粉化を抑制することは重要である。
【0004】
脆弱部分の欠けの発生を防止するために、コークス強度を高く保持するための工夫が従来より多々なされている。例えば、原料炭にコークス強度を低下させる原因となる非粘結炭を多量に配合しても、該コークス強度が低下しない工夫として、軽質分を低減した室炉タール(コークス製造時に発生)を非粘結炭へ添加してからコークス炉へ装入、乾留することで、得られるコークスの強度低下を防ぐ方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、原料炭の配合時に気孔形成剤及び粘結剤を添加してから、コークス炉へ装入、乾留することで、気孔率が高く、且つ一定レベル以上の強度を有するコークスを製造する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−8047号公報
【特許文献2】特開平11−236573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2に記載の方法は、いずれも原料炭に添加剤を配合することで、製造されるコークスの平均的な基質強度を向上させて、コークス強度を向上させる技術である。
【0006】
しかしながら、このような添加剤の配合でコークスの平均的な基質強度の向上を達成しても、コークス炉へ装入された原料には局所的な配合のばらつき(偏析)が生じている。したがって、部分的には基質の脆弱なコークスが製造されており、コークスが高炉に装入されると、脆弱なコークスは炉内で粉化してしまう。
【0007】
強度の高いコークスを製造できる石炭だけをコークス原料として用いることも考えられるが、そのような石炭は高価であり、またそのような品種の石炭だけを用いてコークスを製造することは現実的ではない。製造されるコークスの強度が低い場合であっても、コークスの粉化を防止できることが望ましい。
【0008】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、いかなる種類のコークスを用いる際にも適用可能であり、高炉等の竪型炉装入用コークスの粉化を十分に抑制し、円滑、且つ安定した竪型炉の操業を可能とする、竪型炉の操業方法、及びこれに用いる竪型炉装入用コークスの粉化促進装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)回転ドラム内でコークスに摩擦力と落下衝撃とを付与することで前記コークスを塊状部と粉状部とに分離する際に、前記回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を前記回転ドラム内から除去しながら前記分離を行い、該分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用することを特徴とする竪型炉の操業方法。
(2)回転ドラム内でコークスを回転処理することにより前記コークスを塊状部と粉状部とに分離し、前記回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を前記回転ドラム内から除去しながら前記分離を行い、該分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用することを特徴とする竪型炉の操業方法。
(3)粒径6mm以上のコークスをコークスの塊状部として竪型炉に装入して使用することを特徴とする(1)または(2)に記載の竪型炉の操業方法。
(4)回転ドラム内でコークスの乾燥を行なうことを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の竪型炉の操業方法。
(5)回転ドラム内でコークスを塊状部と粉状部とに分離する装置であって、回転ドラムの回転軸方向の一端にコークス供給口を、他端にコークス排出口を有し、前記コークス供給口と前記コークス排出口との間にコークスの粉状部を前記回転ドラム内から除去する中間排出口を有し、該コークス排出口から排出されたコークスを塊状部と粉状部とに分離する篩い分け装置を有することを特徴とする竪型炉装入用コークスの粉化促進装置。
(6)回転ドラムの側壁の一部を、コークスの粉状部を通過させて前記回転ドラム外に前記粉状部を排出可能とする金網とすることで中間排出口を形成することを特徴とする(5)に記載の竪型炉装入用コークスの粉化促進装置。
(7)回転ドラム内でコークスに摩擦力と落下衝撃とを付与することで前記コークスを塊状部と粉状部とに分離する際に、前記回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を前記回転ドラム内から除去しながら前記分離を行い、該分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用することを特徴とする竪型炉装入用コークスの炉内粉化防止方法。
(8)粒径6mm以上のコークスをコークスの塊状部として竪型炉に装入して使用することを特徴とする(7)に記載の竪型炉装入用コークスの炉内粉化防止方法。
(9)回転ドラム内でコークスの乾燥を行なうことを特徴とする(7)または(8)に記載の竪型炉装入用コークスの炉内粉化防止方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高炉等の竪型炉に装入するコークスの炉内での粉化を、使用するコークスの強度にかかわらず抑制することができる。これにより、円滑、且つ安定した炉操業が可能になると共に、炉の生産性も向上する。また本発明のコークスの粉化促進装置を用いることで、本発明方法を効率的に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
従来の竪型炉装入用コークスの取り扱いは、コークスに与える衝撃をできるだけ小さくするような扱いを心がけ、コークスの粉化を防止するものであった。すなわち、コークスを竪型炉に搬送する過程でコークスに力が加わり破損することがないような取り扱いを良しとしていた。しかし、コークスが脆弱部分を有する場合には、竪型炉装入前にコークスに与える衝撃をどんなに小さくしても、炉内で粉化が発生する。そこで本発明者らは、竪型炉装入前にコークスに与える衝撃を逆に大きくすることで、コークスの表面の脆弱部分を予め粉化させ、この粉状部を除去した後に竪型炉に装入することで、炉内でのコークスの粉化を抑制できると考え、コークス同士を擦り合わせ、コークスの表面に摩擦力を加えることで、コークスを塊状部と粉状部とに分離し、分離した塊状部を竪型炉に装入して使用することで炉内粉化を防止できることを見出した。そして摩擦力に加えて、落下衝撃を加えることで、コークス表面の脆弱部分だけでなく、コークス内部に存在する亀裂原因によるコークスの破壊を促進させて、より多量の粉状部を発生させて、これを分離することができることを見出した。このためには、回転ドラムを用いてコークスの粉化を促進することが効果的である。回転ドラム内でコークスを回転処理することで、コークス表面の脆弱部分だけでなく、コークス内部に存在する亀裂原因によるコークスの破壊を促進させて、より多量の粉状部を発生させて、これを分離することができる。
【0012】
回転ドラムを用いることで、回転ドラムの内側でコークスの表面に摩擦力を付与する、またコークスに落下衝撃を付与することができるが、必要な摩擦力、落下衝撃力を確保するためには一定のドラム全長が必要となる。この全長が長くなるほど設備建設費が増大する。
【0013】
一方で、回転ドラムでは、コークスをドラム内に投入直後から、磨耗、落下衝撃により順次コークスの粉状部が発生し、回転ドラム全長方向下流でのコークスの粉状部の堆積量が徐々に増加するため、この部分に上流から落下する塊状のコークスが受ける衝撃が、堆積したコークスの粉状部により緩和され落下衝撃力が小さくなってしまう。このため、期待する落下衝撃力を確保するためには、コークスが長時間衝撃を受ける必要があり、設備の全長をある程度長くせざるをえないという問題がある。
【0014】
そこで本発明者らは、回転ドラム内でコークスに摩擦力と落下衝撃とを付与することでコークスを塊状部と粉状部とに分離する際に、回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を回転ドラム内から除去しながら分離を行うことで、コークスの粉状部の堆積を防止して、コークスに与える落下衝撃力を所定以上に維持可能であることを見出した。
【0015】
回転ドラム内で塊状部と粉状部とに分離されたコークスのうち、粒径6mm以上のコークスをコークスの塊状部として竪型炉に装入して使用することが好ましい。
【0016】
塊状部と粉状部との分離は、篩いを用いて行なうことが好ましい。炉に装入する塊状部としては、粒径6mm以上程度が好ましい。この場合の粒径6mm以上とは、篩目を6mm以上とすることを言う。
【0017】
コークスの水分含有量が高いと、篩い分け効率が低下し、塊状部と粉状部との分離が十分でない場合があるので、乾燥処理を施したコークスを、塊状部と粉状部とに分離することが好ましい。コークスの乾燥は、回転ドラム内で摩擦力と落下衝撃の付与とともに行なうことが効率的である。
【0018】
なお、粉状部を分離除去することで、コークスの歩留が低下し、コークスのコストが上昇するようにも考えられるが、粉状コークスは製鉄所その他において付加価値の高い製品として多様な用途に使用できるため、コークス全体としては有効利用が可能であり、コスト上昇が問題になることはない。
【0019】
また、本発明で用いる竪型炉とは、高炉、シャフト炉、ガス化溶融炉等であり、塊状コークスを炉の上部から装入して使用するものである。
【0020】
回転ドラム内でコークスに摩擦力と落下衝撃とを付与することでコークスを塊状部と粉状部とに分離し、回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を回転ドラム内から除去しながら分離を行うためには、回転ドラムの回転軸方向の一端にコークス供給口を、他端にコークス排出口を有し、コークス供給口とコークス排出口との間にコークスの粉状部を回転ドラム内から除去する中間排出口を有し、コークス排出口から排出されたコークスを塊状部と粉状部とに分離する篩い分け装置を有する竪型炉装入用コークスの粉化促進装置を用いることができる。回転ドラムにおいてコークスに摩擦力と落下衝撃力を付与することによって発生するコークスの粉状部を、回転ドラムのコークス投入口とコークス排出口の間に、コークスの粉状部のみを排出できる中間排出口を設けることにより、回転ドラム内面に堆積するコークスの粉状部を回転ドラム最後尾の排出口到達以前に順次排出し、塊コークスと回転ドラム内面との落下衝撃力を常に最大に保つことができる設備構造である。これにより回転ドラムによる処理時間の短縮や、小型の回転ドラムを用いて同様の効果を得ることが可能となる。回転ドラムは、ドラムの内部に、コークスを持ち上げ、落下させるための攪拌翼を有することが好ましい。
【0021】
回転ドラムの側壁の一部を、コークスの粉状部を通過させて回転ドラム外に粉状部を排出可能とする金網とすることで中間排出口を形成することが好ましい。中間排出口は円周方向全面に金網による開口部を設定することもできるが、間隔をおいた穴部の連続とすることもできる。また、コークスの粉状部を随時排出させるために、中間排出口を回転ドラムの軸方向で複数箇所に設置することが効果的である。
【0022】
上記のような本発明の回転ドラム式の粉化促進装置の一実施形態を図面を用いて説明する。図1において、粉化促進装置1は回転ドラム2にコークス投入口3とコークス排出口4を有し、コークス投入口3とコークス排出口4との間に、コークスの粉状部のみを排出できる中間排出口5を有している。中間排出口5としては、例えば回転ドラムの円周方向に所定の幅で篩目としての金網を設置することで、篩目以下の粒径の粉コークスを回転ドラム外に除去することができる。本実施形態においては、コークスは供給コンベア6介してスクリューフィーダーを有するコークス投入口3から回転ドラム2内に供給される。7は回転ドラム2内に加熱ガスを供給する加熱ガス供給ダクトである。8は回転ドラム2の回転駆動装置である。コークス排出口4から排出されるコークスは排出コンベア9で篩い10に運ばれて篩い分けされ、粗粒の塊状部は竪型炉向けコンベア11により高炉16等に供給される。コークスの粉状部は粉抜出コンベア12により、中間排出口5から排出された粉状部とともに運ばれる。コークス排出口4から排出される排ガスは、集塵バグフィルタ13、集塵ファン14を介して排ガス煙突15から排出される。
【0023】
コークスの粉状部を随時排出させるために、中間排出口5は複数個設けることが望ましい。
【0024】
次に、図1のコークスの粉化促進装置を用いて、本発明を高炉に用いる際の実施形態を説明する。
【0025】
コークス炉より押し出された赤熱コークスは、散水消火後にワーフと称するベルトコンベアへの払い出し用置場に降ろす。その後、該ワーフより切り出し、大塊はコークス・カッタ(ロール・クラッシャの一種)で破砕してから、高炉のホッパー(貯骸槽)下の篩いを介して所望サイズのもののみ高炉で使用される。なお、近年は、省エネ、環境対策に鑑み、「乾式消火」と称して赤熱コークスを気体で冷却した後、同様の経路で高炉に送られるケースもある。
【0026】
まず、本発明者らは、このような従来のコークス処理では、コークスの脆弱部分が完全に除去されないまま高炉に装入されていると考え、コークス同士に十分な摩擦力を加えた後に篩い分けを行うことで、脆弱部分が除去できると考えた。そして、図1に示すように、コークス工場から、あるいはコークス製品ヤードから貯骸槽へ送る経路内に、さらに回転ドラム2を設け、そこで脆弱部を分離して粉砕してから篩い10に通し、所定の粒度(例えば、6〜75mm)に調整した後、高炉の貯骸槽へ送ることにした。その際、回転ドラム2と篩い10との間でコークス試料を採取し、該コークス試料の強度試験を行ない、その強度データを前記回転ドラム2にフィードバックして回転ドラム2の回転数を調整しながら、強度及び粒径に関する装入基準(例えば、社内規格等)を満足するコークスとなして高炉16へ装入するようにした。
【0027】
ここで、回転ドラム2は、円筒形の回転ドラム2であり、その一方の端部2aへコークスを供給し、回転ドラム2の円筒軸を中心に回転させ、内部のコークスを円周方向に転動させながら、摩擦及び落下によりコークスに衝撃を与える。この回転ドラム2は、コークスを供給する一端2aから他端2bへ向けて5〜10°程度下向きに傾斜して配設され、コークスは転動しながら他方の端部2bへ移動する。他端側には、コークスの排出口4があり、そこを出たコークスは全量が排出コンベア9によって後工程の篩い10へ送られる。ドラム内を移動中に発生したコークスの粉状部の少なくとも一部は中間排出口5から回転ドラム2外に排出される。これにより回転ドラム2内の粉状部の量が減少し、コークスに与えられる衝撃の低下を緩和できる。
【0028】
回転ドラム2の寸法は、処理するコークスの量に応じて、適宜決定すれば良い。例えば、通常のコークス工場では、150t/H(トン/時間)から250t/H程度のコークス処理量であり、その場合、回転ドラム2の内径は、3〜4mで、その長さは25〜30m程度が適当である。中間排出口は、長さ方向の中間位置付近や、例えば長さ方向に5m間隔で設置することができる。また、回転ドラム2の内面には、コークスを持ち上げ、落下させることで、前記脆弱部分の破壊を促進させるよう、円周方向に一定の間隔をおいて複数枚の攪拌翼が取り付けられる。例えば、円周方向に180°の間隔で50mmの高さの鋼板をドラム軸に沿って設けることができ、円筒の回転に応じてコークスはこの攪拌翼によってある程度の角度まで上昇した所から落下するという転動を繰り返す。
【0029】
このような転動を繰り返すと、コークスの組織中の脆弱部分はほとんど破壊されて粉になり、塊状で残る部分は、脆弱部がほとんど無い状態となる。
【0030】
また、本実施形態では、前記したように、回転ドラム2から排出されたコークスは、篩い10へ送られて高炉で使用される粒径に揃えられ、篩い10へ送る前にコークスの一部をサンプリングして強度試験を行なうが、この強度試験法は、各高炉において個別に適宜定めた試験法を用いれば良い。一例として、JIS K 2151(「コークス類 試験方法」の第9章、9.2:ドラム法)に規定されたドラム強度が挙げられる。もちろん、同規格に記載されているタンブラー法等、一般にコークス強度の試験法として使用されるものを用いても良い。
【0031】
この強度試験の結果が、コークスを供給する高炉における目標強度の管理値の上限よりも高い場合には、回転ドラム2の回転速度を低下させる。また、目標強度の管理値の下限よりも低い場合には、回転ドラム2の回転速度を上昇させる。
【0032】
このようにして回転ドラム2でのコークスの脆弱部を破壊する程度を調整すれば、コークスの製造時に原料炭の配合等を変更せずに、コークスの強度を一定値以上に調整して円滑で、且つ安定した高炉操業ができるのである。なお、本発明では、回転ドラム2の回転速度を低下させてもコークス強度が目標強度の上限よりも高い場合には、コークス炉へ供給する石炭の配合を変えて、より安価な配合としても良い。また、積極的に回転速度を上昇させて、目標以上の強度が得られた場合、該目標の強度まで強度が下がるような安価な配合とすることもできる。
【0033】
なお、本発明のように、脆弱部分をあらかじめ除去すると、篩い10下の、高炉では使用できない粉コークス量が増加するが、一般に製鉄所では、粉コークスを焼結原料の燃料等、その他で有効に利用できるので、無駄にはならない。
【0034】
次に、乾燥処理を施したコークスを、塊状部と粉状部とに分離することについて説明する。
【0035】
コークスの表面に摩擦力を付与する際に、またコークスに落下衝撃を付与する際に発生するコークスの粉状部は、使用するコークスが水分を多量に含有する場合、発生するコークス粉状部がコークス塊状部に付着しやすく、分離のために篩いを用いる場合、この篩いで粉状部が十分に分離除去できない問題や、または篩い自体が目詰りしコークスの粉状部を除去できない問題がある。コークス塊状部に付着し篩いによって分離除去できなかった粉状部は、コークス塊状部に付着したまま竪型炉炉頂へ運ばれて炉内に装入されると、炉内の熱により乾燥されてコークス塊状部の表面から離脱するので、炉内に粉状コークスを多量に装入することになり、粉状部が炉内の原料の間隙を流れ、原料同士の間隙に詰まって炉内での安定したガス流れを阻害する等の現象を引き起こし、水分含有量の高いコークスに対して本発明を用いた場合、炉内での粉化防止どころか、粉化を促進する懸念すらある。
【0036】
コークスの塊状部に粉状部が付着し、その分離が困難になる現象は、コークスの含有水分量に比例して増大することが知られている。したがって、コークスを乾燥状態で篩い分けすることが好ましく、コークスの含有する水分量は少ないほど好ましい。そのためには、コークスの表面に摩擦力や落下衝撃を付与する際に、予め、または同時に、または付与後に、コークスに一定の熱を加えコークス含有水分量を低減することが、その下流側に配置する篩いによりコークス粉状部の分離を十分行うことに有効であると考えられるため、篩い分けを行う前にコークスの乾燥を行なうことが好ましい。
【0037】
コークスを乾燥させるための加熱方法としては、コークスを入れた回転ドラム内に加熱ガスを導入することで行なうことが好ましく、工場で発生する各種の加熱ガスを利用することが好ましい。コークスの含有水分を除去するためには、酸素濃度の低い、熱風炉燃焼排ガスや、加熱炉排ガス等の利用が望ましいが、燃焼炉、電気炉等を設置して専用の熱風発生源として加熱ガスを発生させることもできる。また酸素濃度を制御する窒素を導入する前提であれば、焼結機のクーラ排熱など空気が加熱されたものも加熱ガスとして利用できる。
【0038】
加熱ガスの温度は、コークスの乾燥が可能であれば良く、またコークスを乾燥することから60℃以上あれば十分であり、200℃以下とすることが望ましい。炭材であるコークスに含まれている水分を乾燥するので、加熱ガスの温度が高すぎると、火災、爆発の防止対策が困難になるためである。
【0039】
図1においては、供給コンベア6、コークス供給口3のスクリューフィーダーを介して回転ドラム2内に供給されたコークスは、加熱ガス供給ダクト7から回転ドラム2内に送られた加熱ガスにより乾燥されながら攪拌されて、摩擦及び落下衝撃により脆弱部が粉状化する。コークス排出口4から排出されたコークスは、排出コンベア9により篩い10に搬送されて篩い分けにより塊状部と粉状部とに分離される。篩い上である塊状部は、竪型炉向けコンベア11により搬送されて竪型炉16の上部から装入される。中間排出口から排出された粉状部と、篩い下である粉状部は、粉抜出コンベア12により搬送されて、別途利用する。
【実施例1】
【0040】
図1に示すものと同様であるが、中間排出口を形成していない設備を用い、190〜250t/Hのコークス処理して高炉へ搬送する試験を行なった。回転ドラム2として内径:3.5m、コークスの装入端から排出端までの有効ドラム長さ:27.7mのものを用いた。また、回転ドラム2をバイパスするベルトコンベアを設けて、一定時間の間隔で篩い2の上流側でサンプリングを行ない、コークス強度だけを測定する比較例の試験も行なった。コークスの強度は、JIS K 2151に規定された「ドラム強度」で測定し、強度測定にあたってのコークス試料の粒径を15mm、試験用ドラムの回転数を150rpmとして、所謂「ドラム強度(記号DI15015)」を求めた。篩い10の篩目は6mmとした。
【0041】
回転ドラム2による処理を行なわない比較例の場合には、篩い10の上流側でサンプリングしたコークス強度は平均して84.3であったが、回転ドラム2により、回転数5rpmで20分間コークスを処理した参考例では、コークスのドラム強度が85.1に高まった。すなわち、コークスの脆弱部が回転ドラムでの処理により除去されたことで、高炉へ装入されるコークスの強度を0.8ポイント上昇させることができた。
【0042】
回転ドラムによる処理を行なわずに、篩い2の篩い上を高炉に装入する通常の操業に比較して、回転ドラムによる処理後に、篩い2の篩い上を高炉に装入する本発明の操業試験の場合には、高炉の炉内でのコークス粉化が抑制できたため、高炉の通気性が良好になり、炉内のガス流れ分布が適正に維持でき、炉況が安定すると共に、円滑な操業が行なえ、溶銑の出銑量が同一操業条件下で5%も向上した。
【0043】
次に、回転ドラム2の軸方向の中央部にスリットに篩目6mmの金網を設置した中間排出口5を形成して、上記と同様にしてコークスを処理し、ドラム強度を測定した。回転ドラム2内のコークス供給口3から中間排出口5の間で形成されたコークスの粉状部は、ほぼ全量が中間排出口5から排出された。図2に、粉コークスを中間排出口から排出しない設備を用いた参考例と、中間排出口を供えた設備を用いた本発明例の、回転ドラムによる処理後のコークスドラム強度(DI15015)試験結果による強度値の比較を示す。図2において、回転ドラムの回転数と回転ドラム処理後のコークスのドラム強度は、相対値で示している。中間排出口からの途中排出を実施した本発明例の場合は、排出を実施しない参考例の3/4の回転数の回転処理で、同様のドラム強度を確保することが可能であった。この結果より、中間排出口を設けることで、回転ドラムの全長を3/4の長さに短縮しても同様の衝撃力をコークスに加えることが可能であることが分かった。
【実施例2】
【0044】
図1に示すものと同様の設備を用い、回転ドラムにより、コークスの表面に摩擦力と、落下衝撃とを付与する際に、回転ドラム内に加熱ガスを導入し、コークスに150℃の加熱ガス(燃焼排ガス)により一定の熱を加えコークス含有水分量を低下させた乾燥を行なう場合と、乾燥を行なわない場合について、それぞれ処理を行ない、篩い分けを行なった。回転ドラム出側でのコークスの含有水分量を2mass%以下にした場合と、熱を加えず含有水分量が高いままについて、篩い分け後の塊状部と粉状部コークスの分離状況を比較した。
【0045】
乾燥を行なわない場合の水分含有量が4mass%強のコークスを、乾燥により水分量0mass%まで低減させた場合、分離状況が大きく異なり、篩目6mmの篩いを用いる場合、その粒径6mm以下のコークス(−6mm)の混入率は3mass%台から0.5mass%程度にまで低減した。コークスの含有水分量の低減は、コークスの粉状部の分離に大きく影響し、水分含有量の高いコークスについては乾燥処理が炉内粉化防止に非常に有効であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】竪型炉装入用コークスの粉化促進装置の一実施形態を示す概略図。
【図2】参考例と、中間排出口を供えた設備を用いた本発明例の、回転ドラムによる処理後のコークスドラム強度(DI15015)の比較を示すグラフ。
【符号の説明】
【0047】
1 竪型炉装入用コークスの粉化促進装置
2 回転ドラム
2a、2b 端部
3 コークス供給口
4 コークス排出口
5 中間排出口
6 供給コンベア
7 加熱ガス供給ダクト
8 回転駆動装置
9 排出コンベア
10 篩い
11 竪型炉向けコンベア
12 粉抜出コンベア
13 集塵バグフィルタ
14 集塵ファン
15 排ガス煙突
16 竪型炉(高炉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラム内でコークスに摩擦力と落下衝撃とを付与することで前記コークスを塊状部と粉状部とに分離する際に、前記回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を前記回転ドラム内から除去しながら前記分離を行い、該分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用することを特徴とする竪型炉の操業方法。
【請求項2】
回転ドラム内でコークスを回転処理することにより前記コークスを塊状部と粉状部とに分離し、前記回転ドラム内で発生したコークスの粉状部の少なくとも一部を前記回転ドラム内から除去しながら前記分離を行い、該分離したコークスの塊状部を竪型炉に装入して使用することを特徴とする竪型炉の操業方法。
【請求項3】
粒径6mm以上のコークスをコークスの塊状部として竪型炉に装入して使用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の竪型炉の操業方法。
【請求項4】
回転ドラム内でコークスの乾燥を行なうことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の竪型炉の操業方法。
【請求項5】
回転ドラム内でコークスを塊状部と粉状部とに分離する装置であって、回転ドラムの回転軸方向の一端にコークス供給口を、他端にコークス排出口を有し、前記コークス供給口と前記コークス排出口との間にコークスの粉状部を前記回転ドラム内から除去する中間排出口を有し、該コークス排出口から排出されたコークスを塊状部と粉状部とに分離する篩い分け装置を有することを特徴とする竪型炉装入用コークスの粉化促進装置。
【請求項6】
回転ドラムの側壁の一部を、コークスの粉状部を通過させて前記回転ドラム外に前記粉状部を排出可能とする金網とすることで中間排出口を形成することを特徴とする請求項5に記載の竪型炉装入用コークスの粉化促進装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−291353(P2008−291353A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114720(P2008−114720)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】