説明

竪型研削式精穀機の抵抗体調節装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、精穀されるべき穀粒が精穀室内の鉛直方向の端から該精白室内に導入され、精穀された穀粒がその端から排出される、いわゆる下式の竪型精穀機に係、より詳しくは、鉛直方向に延びた主軸研削式精穀ロールを取り付け、該ロールの周りに筒状の精穀室を形成すべく、該ロールから間隔をおいて鉛直に延在し、かつ、精穀室内で生じた糠(ぬか)の放出を許容する孔を多数有する多孔性筒状体を設け、該多孔性筒状体に突出量が調整可能な抵抗体を備えてなる竪型研削式精穀機の抵抗体調節機構に関する。
【0002】精穀されるべき穀粒は、米粒のみならず、小麦粒又はコーヒー豆といった他の穀粒でもよい。
【0003】
【従来の技術】特公昭54−3098号公報及びこれに対応する米国特許3960068号には、「ナイフの穀物に対する接近作用を規制することにより、穀物のきりもみ作用を非連続的にし、………所望の精白程度に応じてこれらの作用の時間を制御する」ため、多孔性筒状体の本体としてのドラムスクリーンの壁部の間隙から精穀室内に半径方向に突出されナイフと、このナイフの突出量を調整する調整機構としてのハンドル操作式のリンク機構とを備えた竪型精穀機が開示されている。より詳しくいえば、この精穀機は二つのナイフを有しており、この二つのナイフは、ドラムスクリーンの壁部に設けた間隙を貫通するように各々配置されている。
【0004】なお、この先行技術に開示された精穀機は、いわゆる上昇式の竪型摩擦式精穀機である。
【0005】この先行技術の精穀機では、精穀されるべき米粒等の穀粒は、スクリューフィーダーによって精白室内の下端から該精白室内に導入され、精白室内で摩擦式精白ロールによって周方向に強制回転されつつ自重に抗して鉛直方向上方に送られる際、米粒が相互に擦れってその外表面が削り取られて精白される。この米粒相互の擦れ合いは、抵抗体としてのナイフの突出量が大きくなり、米粒の周方向移動に対する抵抗が高められることにより激しくなり、精白作用がより強力に行われる。
【0006】しかしながら、米粒の精白の進行に伴って米粒のサイズが小さくなるので、例えば米粒が一定流量で供給される定常作動状態では、精白室の上流側(下方)領域と比較して下流側(上方)領域では米粒の移動乃至流れに対する抵抗が小さくなる。したがって、抵抗体としてのナイフの突出量に依存して、上流領域に比して下流側領域で米粒相互の擦れ合いが弱くて十分な精白作用が得られなくなる虞(おそ)れがある。特に、研削式精穀機の場合この傾向が顕著である。また、研削式精穀機においてこのような機構を用いると精白作用の途中段階でに困難を来たす虞れがある。
【0007】一方、前記特公昭54−3098号と同一発明者にかかる特公昭61−50653号公報には、多孔性筒状体(スクリーン)10に設けた抵抗体としてのナイフ13に対向して精穀ロール(回転子)20の外周にナイフ12を設け、該ロール外周ナイフ12と多孔性筒状体側ナイフ13との間隔を調整すべくロール20とその外周ナイフ12との間に所望の厚さのシム14を配設する技術が開示されている。
【0008】上記した観点から見る限り、この特公昭61−50653号公報に開示の技術にも、前述の特公昭54−3098号公報の技術と同様な虞れがある。
【0009】さらに、水平な主軸の延在方向に間隔をおいて主軸に取り付けられた複数の研削式ロール素体からなる研削式精穀機において、ロール素体相互の間隔及び複数のロール素体の水平方向の厚さが穀粒の流動方向の上流側領域と下流側領域とで異なるようにして、上流側領域及び下流側領域における精穀条件の差及び除糠条件の差に対処し得るようにした技術が、特公昭32−3020号公報に開示されている。しかし、このものは、精白室内部に抵抗体を備えたものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記諸点にかんがみなされたものであり、その目的とするところは、精穀室内での穀粒の流動に対する抵抗を、精穀室の上流側領域及び下流側領域のそれぞれにおいて独立に調整し得る竪型研削式精穀機の抵抗体調節機構を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、前記した目的は、多孔性筒状体は、互いに円周方向に隔てられて鉛直方向に延在する複数の支柱と、円周方向に隣接した前記支柱間に配置されてそれぞれが前記筒状体の筒の一部を形成する多孔性湾曲板状体とを有し、さらに、前記支柱に担持され、前記精白室へ半径方向に突出して前記ロールの円周方向への穀粒の移動に抵抗を付与すべく、長さを異にする複数の垂直配置された抵抗体を設け、鉛直方向の異なる位置にある前記複数個の抵抗体の前記半径方向への突出量を独立に調整する突出量調整手段を設けたことを特徴とする竪型研削式精穀機の抵抗体調節装置によって達成される。
【0012】
【作用及び効果】本発明の竪型研削式精穀機の抵抗体調節装置では、前記多孔性筒状体は、互いに円周方向に隔てられて鉛直方向に延在する複数の支柱と、円周方向に隣接した前記支柱間に配置されてそれぞれが前記筒状体の筒の一部を形成する多孔性湾曲板状体とを有し、さらに、前記支柱に担持され、前記精白室へ半径方向に突出して前記ロールの円周方向への穀粒の移動に抵抗を付与すべく、長さを異にする複数の垂直配置された抵抗体を設け、鉛直方向の異なる位置にある前記複数個の抵抗体の前記半径方向への突出量を独立に調整する突出量調整手段を設けたので、精穀室の上流側領域及び下流側領域のそれぞれにおいて抵抗体と研削ロール外周面との間隔を独立に調整し得るので、精穀室内での穀粒の流動に対する抵抗を精穀室の上流側領域及び下流側領域のそれぞにおいて独立に調整し得る。
【0013】また、垂直配置された複数の抵抗体の長さが異なるので、原料の性状や製品として求める形状などに応じて、鉛直方向に沿った位置での米粒の流れに対する抵抗状態を細かく調整・変更できる。
【0014】
【実施例】次に、穀粒として米粒を精白する場合を例にとって、本発明による好ましい一実施例の研削式竪型精穀機を、主として図1から図4に基づいて説明する。
【0015】研削式竪型精米機1の全体的な横断面図を示す図1において、符号2は基台であり、基台2の中央部には鉛直方向に延在する中空軸からなる主軸3が上側及び下側軸受4,5により回転自在に支持されている。基台2の側方部にはモーター6が取り付けられており、モーター6の出力軸7の回転がプーリー8、ウエッジベルト乃至Vベルト9及びプーリー10を介して主軸3に伝達され、主軸3が適宜の回転速度(一般的には後述の研削式ロール16の外周面の速度が600m/min程度となるような速度)で回転される。
【0016】主軸3には、上側軸受4の上部に、断面がキャップ状の下側回転底体11が固定されており、この下側回転底板11には精米を排出するための拌翼12を備えた上側回転底体13が固定されている。
【0017】上側回転底体13は、多数の研削式ロール素体14をロール素体間スペーサ15を介して積み重ねてなる研削式ロール16の底部を、その径方向外側のフランジ部17で支持している。
【0018】各ロール素体14は、主軸3に嵌(かん)着されたボス部21、このボス部21と一体的で、かつ、このボス部21から放射状に延設された複数本のアーム部22及びアーム部22の延設端と一体的な円筒状部23からなる剛性の研削筒支持体24と、この支持体24に固着され研削砥石によって形成された研削筒26とからなる。
【0019】なお、研削筒26のうちの最上部の研削筒、すなわち精米されるべき米粒の流動方向の最上流側に位置する研削筒26aは、米粒の流動を案内すべく、円錐(すい)台状になっている。
【0020】また、中空主軸3の研削式ロール嵌装部には、多数の通風孔29が形成されており、ロール素体14の研削筒支持体24のボス部21にも複数の通風孔30が形成されている。したがって、ロール素体14の研削筒支持体24を中空主軸3に嵌装した際、ボス部21の通風孔30は主軸3の通風孔29と連通され、空気が、中空主軸3の内部31から通風孔29,30を通って研削筒26の内側に流され得る。
【0021】一方、ロール素体間スペーサ15の各々は、図3に示すように、中空主軸3よりも大径のボス部32と、このボス部32と一体的で、かつ、このボス部32からほぼ放射状に延設された複数本のアーム部33とからなる。各アーム部33は、放射方向に直線状の基部側アーム部34と、スペーサ15の回転方向とは逆方向に逸(のが)れながら基部側アーム部34の先端から半径方向外方に延びた先細の先端側アーム部35とからなる。
【0022】したがって、中空主軸3の内部31から通風孔29,30を通って研削筒26の内側に流出した空気は、各ロール素体間スペーサ15の隣接アーム部33,33の間のスペース36を通って隣接ロール素体14,14の間から流出し得る。すなわち、スペース36が研削式ロール16の空気噴出口になる。
【0023】研削式ロール16の外周には、該ロール16の外周面と協働して該ロール16の周りに筒状の精穀室すなわち精白室40を形成すべく、該ロール16から間隔をおいて鉛直に延在し、精白室40内で生じる糠の放出を許容する孔41を多数有する多孔性筒状体42が配設されている。多孔性筒状体42の外周には、該多孔性筒状体42と協働して糠を捕集・排出するための除糠室43を規定する円筒状カバー44が配設されている。
【0024】なお、多孔性筒状体42及び円筒状カバー44は、基台2に固定された二重円筒状支持体2a上に、載置・固定されている。この二重円筒状支持体2aは、基台2に底部フランジで固定された外側円筒状支持体部2bと、円周方向の四箇所で外側円筒状支持体部2bの内側に突出したリブ2cと、このリブ2cを介して外側円筒状支持体部2bと一体化されている内側円筒状支持体部2dとからなる。
【0025】多孔性筒状体42は、図に示すように、筒状体42によって規定される円筒を四分割する円周方向位置に配設された四つの抵抗付与・調整機構45と、隣接する抵抗付与・調整機構45,45の間の円筒状面部分を規定する金属製の多孔性湾曲板状体46とからなる。抵抗付与・調整機構45の数は、3つ以下でも5つ以上でもよい。複数の抵抗付与・調整機構45は、筒状体42の円周方向に、例えば、図3に示すとおり等間隔に配置される。なお、図1及び2からわかるとおり、流動抵抗付与・調整機構45及び多孔性湾曲板状体46のそれぞれは、精白室40の鉛直方向の全長にわたって延びている。多孔性板状体46の内周面と研削ロール素体14の外周面との間隔Hは、例えば10〜15mm程度である。この間隔Hは、精穀されるべき穀粒の種類、並びに研削ロール素体の粒度、回転速度等に応じて決める。
【0026】各流動抵抗付与・調整機構45は、鉛直方向に延び、かつ底板50を介してリブ2cの上端に載置・固定された横断面がほぼU字型の支柱51と、支柱51の『U』の鉛直に延び内側に開口した凹部52に対して出入自在にほぼ直列に嵌(は)め込まれた例えばゴム製の角柱状の上側及び下側抵抗体としての抵抗爪53a,53b(上側及び下側の抵抗爪を総称する場合符号53で表わす)と、各抵抗爪53の支柱51に対する半径方向位置換言すれば、上側及び下側抵抗爪53a,53bと研削ロール素体14との間隔J1,J2(総称する場合符号Jで表わす)を調整すべく、各抵抗爪53の上下のネジ孔54,55に雄ネジ部56で螺(ら)合されている調整部材としてのノブボルト57と、抵抗爪53の位置調整後、抵抗爪53の外側端面58に先端で当接して抵抗爪53を支柱51に対して固定すべく支柱51のネジ孔に螺合したセットボルト59とを有する(以下において、ノブボルト57及びセットボルト59等上下の抵抗爪に対して同様に設けられる部材又はその一部についても、上側抵抗爪に係わる場合には符号aを、下側抵抗爪に係わる場合は符号bを、必要に応じて付加して示す)。抵抗爪53は、ゴムの代わりに適当な強度及び固さのプラスチック又は金属などでできていてもよい。
【0027】より詳しくは、支柱51の内周端で、か凹部52の両側には、焼き入れにより耐磨耗性が高められた柱状の補強片62,62が支柱51に螺着されて全体として支柱組立体63を構成している。なお、この補強片62は、円弧状に湾曲した多孔性湾曲板状体46よりも若干内側に、例えば2mm程度突出している。一方、各多孔性湾曲板状体46の周方向の端縁部46a,46bは、対応する支柱組立体63の側壁に当て板64で押さえ付けられ固定されている。
【0028】符号66は中空の植え込みボルトでありボルト66の小径の雄ネジ部66aが支柱51のネジ孔に螺着され、大径の雄ネジ部66bにはカバー67を固定するナット68が螺着されている。一方、中空ボルト66の孔69の小径部69aにはノブボルト57の雄ネジ部56が遊嵌され、孔69の大径部69bにはノブボルト57の大径部57Aが回転可能に嵌入されている。なお、ノブボルト57の大径部57Aの端面57Bが孔69の壁の段差部69cに当接した状態で、止め輪70をノブボルト57の環状溝57cに嵌めボルト66の端部をカシメることによって、ボルト66に対する、したがって支柱51に対する、ノブボルト57の軸方向変位を禁止している。
【0029】抵抗爪53のロール素体14に対する距離Jを調整する場合、まず、セットボルト59を緩めて、次に支柱51のネジ孔54と螺合したノブボルト57をして抵抗爪53の上方部分及び下方部分をロール素体14に対して所定長だけ近接・離間させる。そして、最後にセットボルト59を、再度締める。
【0030】通常は、抵抗爪53をちょうど鉛直方向に延在させるべく、ネジ孔54に対応するノブボルト57の調整回転角は同一にする。ただし、所望ならば、抵抗爪53と研削ロール16との距離Jが、例えば、下方ほど小さくなるように又は下方ほど大きくなるように、抵抗爪53をわずかに傾斜させるべく、ネジ孔54に対応するノブボルト57の調整回転角を異ならせてもよい。なお、この場合、抵抗爪53の長さと比較して、上下のズレは少ない(傾斜の角度は小さい)。
【0031】上記の抵抗爪位置調整操作は、上側及び下側の抵抗爪53a,53bのそれぞれに対して、対応するノブボルト57a,57b及びセットボルト59a,59bを操作することによって、独立に行われる。例えば、精白室40からの除糠が十分に行われやすく米粒の表面の精白に伴い精白室40の下方ほど米粒の押圧度が低下する虞れがある場合、上側の抵抗爪53aと研削ロール16との距離J1を、下側の抵抗爪53bと研削ロール16との距離J2よりも大きくする(図4参照)。一方、除糠が十分には行われ難く、精白室の下方に糠が溜まりやすい場合、上側の抵抗爪53aと研削ロール16との距離J1を、下側の抵抗爪53bと研削ロール16との距離J2よりも小さくする。なお、上下の抵抗爪53a,53bと研削ロール16との距離J1,J2の選択設定には、所望に応じて、他の種々の理由を考慮する。
【0032】なお、図1から図4に示した例の場合、上側抵抗爪53aの方が下側抵抗爪53bよりも長さが短いけれども、図5に示すように上側抵抗爪53a長さを下側抵抗爪53bの長さよりも長くしてもよい。また、図4において想像線80で示すように、噴風口36近傍に米粒が詰まるのを避けるべく、噴風口36と対面する抵抗体53の部分に溝を設けてもよい。
【0033】また、図1及び図2に示した例では、上側抵抗爪53aの下端と下側抵抗爪53bの上端との小間隙72は、ちょうどロール素体14,14の間の噴風口36と対面する高さ位置にあるけれども、図4に想像線72aで示すように、間隙72aが複数のロール素体14のうちの一つのロール素体14の外周面に対面する位置になるように上下の抵抗爪53a,53bの長さを選択してもよい。なお、抵抗爪53が精白室40の全長ではなくその一部、例えば図4において想像線79で示す部位以下にあってもよい。
【0034】さらに、間隔72は、米粒などが引っ掛かったり入り込んだりして、精白すべき米粒の流れを阻害する虞れがない範囲の大きさに選択される。また、図4において、想像線72bで示すように、上側抵抗爪53aの下端及び下側抵抗爪53bの上端のうちの少なくとも一方にテーパー又は丸みを付けてもよい。
【0035】そして、一つの支柱組み立て体63によって実質上直列に支持され対応するノブボルト57及びセットボルト59により独立に位置調整される抵抗爪53の数は、本の代わりに図6に示すように3本でも、それより多くてもよい。
【0036】また、以上においては、箇所の内、例えばつの抵抗爪53a,53bは、それぞれ同じ長さ及び形状であると想定したけれども、箇所のうちの少なくとも箇所、例えば全ての箇所の抵抗爪53が、図7に示すように、異なる組み合わせの抵抗爪53a,53bなどからなっていてもよい。
【0037】このように、図6及び図7の例の場合、直配置された複数の抵抗体の長さ及び形状を各々異にするので、鉛直方向に沿った位置での米粒の流れに対する抵抗状態を細かく調整・変更し得る。
【0038】除糠室43の外側周壁となっている円筒状カバー44は、図3に詳細に示すように、ノブボルト57に対応するところに嵌入部74を有し、この嵌入部74のまわりの折曲げ部75にノブボルト57の外側カバー76が嵌入している。このカバー76の外表面76aには、ノブボルト57の調整回転角に対応する抵抗爪53の調整間隔Jの目盛が付されている。そして、カバー44の折曲げ部75は更に延設されて除糠室43内でノブボルト57の可動部分のまわりを覆っている。この延設部77は、さらに、支柱51の固定座78に着脱自在に装着されている。
【0039】符号81は外周面にフィードスクリューが形成された(図1参照)、中空で底のない送り込みロールであり、この送り込みロール81は、ボス部81aが主軸3に嵌装されて最上位のロール素体14上に載置され、主軸3の上端のネジ孔に螺着されたボルト82で研削ロール16と共に主軸3に嵌着されている。なお、符号83は、送り込みロール81と共に精米されるべき米粒の供給室84を形成している供給筒で、供給筒83の下端のフランジ部83aは、精米機1のフレームの一部として、支柱51及び円筒状カバー44の上端に載置・固定されている。
【0040】また、符号86は精米されるべき米粒が投入されるホッパー、符号87は米粒の上部案内体、そして、符号88は供給量調整ゲートである。ゲート88では、ハンドル89により手動で又はモーター90により自動的に、開口91a付き可動板91の位置がホッパー86の底部開口86aに対して調整され、ホッパー86から供給室84への米粒の供給量が調整される。符号92は、ゲート88から導入された米粒を分散させつつ供給室84に送る下部案内体である。
【0041】符号95は精白室40で精白された米粒が排出される排出口96に設けられた抵抗板であり、抵抗板95による精白室40内の米粒への押圧力は、ピボット軸97で枢支されたてこ体98の一方の腕98aに螺合された分銅99の位置をハンドル(つまみ)100で調整することにより規定される。符号101は引張バネである。
【0042】符号103は、除糠室43の底部に形成された集糠室104に集められる糠を排風管105を介して放出する集糠用ファンである。前記集糠室104の内側周壁を規定している底部円筒状体106は下側回転底体11に固定されており、この底部円筒状体106には下側回転底体11と共に底部円筒状体106が回転された際、集糠室104からの糠の排出を助ける掃出し羽根107が取り付けられている。
【0043】次に、以上のように構成された本発明による好ましい一実施例の竪型研削式精穀機のていこう操作および動作を図1から図4に基づいて説明する。
【0062】まず、竪型研削式精米機1の精米条件を、精白されるべき米粒の特性に応じて設定・調整する。
【0044】具体的には、精白されるべき米粒の精白前の長軸方向および短軸方向の平均サイズ並びに米粒の精白後の長軸方向および短軸方向のサイズで決定される粒形、精米機1で除去すべき米粒表層の厚さ硬さ等に応じて、研削ロール16の径および回転速度、研削ロール素体14の研削特性、並びに排風機103等の除糠系の除糠特性等を考慮しつつノブボルト57及びセットボルト59を操作して、抵抗爪53a,53bの位置調整する。上側抵抗爪53aと研削ロール素体14との間隔J1は、主として精白されるべき米粒の精白前の長軸方向および短軸方向のサイズと精白後のそれらの所望とされるサイズとの関係に応じて調整・設定され、すなわち、下側抵抗爪53bと研削ロール素体14との間隔J2、換言すれば、下側抵抗爪53bと上側抵抗爪53aとの半径位置の差J1−J2が、米粒の精白後の長軸方向および短軸方向の所望なサイズ(全体的には形状)となるように応じて調整・設定される。
【0045】なお、一般的には、下側抵抗爪53bと研削ロール素体14との間隔J2は、精米機1で除去すべき表層の硬さが小さいほど、大きめに設定される。上記の間隔J1,J2の調整を、さらに、精白動作の途中で研削ロール16の回転を止めて(場合によっては、ロール16を回転させたままで)行ってもよい。
【0046】一方、つまみ100を回して分銅99のレバー98a上での位置を調整することによって、抵抗板95による押圧力、換言すれば抵抗板95によって精白室40内の米粒に加えられる圧力を調整する。なお、この圧力調整も、精白中に行ってもよい。
【0047】以上の初期設定の後、ゲート88を閉じた状態で蓋86bを開けてホッパー86に精白されるべき米粒を投入するとともに、モーター6を始動させて主軸を介して研削ロール16及び送り込みロール81を回転させ、排風機103を始動させて除糠用の送風を開始させる。
【0048】次に、ハンドル89又はモーター90により供給量調整ゲート88を開いてホッパー86から供給室84に精穀されるべき米粒の導入を開始する。このとき、米粒は、上部および下部案内体87,92によって周方向に一様に分散されながら供給室に連続的に供給される。供給室84内に入った米粒は、送り込みロール81によって精白室30の上端40cに連続的に送られる。
【0049】精米機1の精白動作の定常状態においては、精白室40に入った米粒は、静置された多孔性筒状体42と回転している研削ロール16との間で、比較的低い押圧力の下で、自転及び公転(主軸の周りでの円運動)を間欠的にくり返しながら徐々に下方に落ちていく際、その表面が研削ロール16のロール素体14の研削筒26と接触して、研削筒26によって削り取られる。より詳しくは、米粒は、抵抗爪53aのところで該抵抗爪53aと研削ロール16との間にはさまれるので、ブレーキ作用を受けて公転速度が弱められ、研削ロール16の回転速度との間に大きな差を生じ、米粒の表面がロール16の研削筒26の砥粒により強く擦られ削り採られる。また、抵抗爪53aの存在は精白室40内の米粒の全体的流動に対する間欠的なブレーキ作用となるから、精白室40内での米粒の自転速度と公転速度とを間欠的に変化させ精白が徐々に進行する。また、抵抗爪53aの調節によって米粒の自転速度と公転速度との関係を微妙に変化し得るので、この関係を利用して精白されて排出される米粒の形状を変えることができる。
【0050】精白室40の上部40aで部分的に精白されサイズが若干小さくなった米粒が精白室40の下部40bに至ると、ロール素体16との間隔Jが適当に設定された抵抗爪53bによって、従前の説明から明らかなように、抵抗爪53aとは異なる設定状態にあれば異なる精白作用を受けるので、下部の精白室40aと40bとによって所望の精白が行われ得る。
【0051】なお、分銅99の力を受けた抵抗板95によって所定の出口圧力が精白室40に加えられているので、米粒が連続的に流れている状態では、上記精白動作の際、米粒は適度の密度に充填された状態で研削・精白される。
【0052】精白の終わった米粒は、精白室40の下端40dの下方の溜め部108に溜まる。この溜め部108の米は、下側回転底板11に取り付けられた回転攪拌翼12によって撹拌されつつ分銅99の押圧力に抗して抵抗板95を開いて排出され、シュート111を介してスタッカー112に集められる。
【0053】この際、排風機103を起動すると、排風管105を介して空気が排気されるので、主軸3の内部通路31、通風孔29,30、噴風口36、精白室40、多孔性筒状体42の孔41及び除糠室43を通る空気の流れが生じる。この空気流によって精白室40において精白の際生じた糠等の粉粒体が多孔性筒状体42の孔41を通って除糠室43に排出される。この精白室40内の空気流は、更精白室40内の米粒の温度上昇を抑制する。加えて、噴風口36からの空気流は、抵抗爪53a,53bの間隔72等からも糠などを除去する。除糠室43に入った糠は、集糠室104に集められ、掃出し羽根107によって掃き出される。このと、ホッパー86にも通風路(図示せず)が設けられており、この通風路を通ってホッパー86内に入った空気も精白室40からの糠の排出を助ける。なお、噴風口36の奥に入ろうとする糠はアーム33の回転による遠心力によっても精白室内40内にはじき戻される。
【0054】
【0055】既述したように、精穀されるべき穀粒は、米粒の代わりに、小麦粒など他の穀粒でもよく、この場合、穀粒サイズ、並びに除去されるべき表面層の厚さ及び固さなどに応じて、精穀機の精穀条件が変更されるのはいうまでもない
【0056】なお、抵抗爪の位置調整機構は、図示するノブボルトなどの代わりに、例えば、ピストン・シリンダー組立体等の他のものでもよい。また、これらが、電気的は流体圧力で駆動されるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例を示す竪型研削式精穀機の縦断面説明図(図3のI−I線断面)である。
【図2】図1の精穀機における一部拡大断面図説明図である。
【図3】図1の精穀機におけるIII−III線断面説明図である。
【図4】図1の精穀機における抵抗爪と研削ロールとの関係(距離関係)を誇張して示した説明図である。
【図5】図4の抵抗爪の配置における変形例の説明図である。
【図6】図4の抵抗爪の配置における別の変形例の説明図である。
【図7】図4の抵抗爪の配置における更に別の変形例の説明図である。
【符号の説明】
竪型研削式精米機(精穀機)
3 中空主軸
14 ロール素体
16 研削式ロール
18 スペーサ
36 噴風孔
40 精白室(精穀室)
41 孔
42 多孔性筒状体
43 除糠室
45 流動抵抗付与・調整機構
46 多孔性湾曲板状体
51 支柱
53 抵抗爪(抵抗体)
53a 上側抵抗爪(抵抗体)
53b 下側抵抗爪(抵抗体)
53c 中間の抵抗爪(抵抗体)
57 ノブボルト(調整部材)
57a 上側抵爪用ノブボルト(調整部材)
57b 下側抵爪用ノブボルト(調整部材)
59 セットボルト
72 間隔
81 送り込みロール
96 排出口
104 集糠室

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉛直に延在する主軸に取り付けられた研削式精穀ロールと、該ロールの外周面と協働して該ロールの周りに筒状の精穀室を形成すべく該ロールの周りで該ロールから間隔をおいて鉛直に延在し、精穀室内で生じた糠の放出を許容する孔を多数有する多孔性筒状体とを備えており、精穀されるべき穀粒が精穀室内の鉛直方向の上端から該精白室内に導入され、精穀された穀粒がその端から排出される竪型研削式精穀機であって、前記多孔性筒状体は、互いに円周方向に隔てられて鉛直方向に延在する複数の支柱と、円周方向に隣接した前記支柱間に配置されてそれぞれが前記筒状体の筒の一部を形成する多孔性湾曲板状体とを有し、さらに、前記支柱に担持され、前記精白室へ半径方向に突出して前記ロールの円周方向への穀粒の移動に抵抗を付与すべく、長さを異にする複数の垂直配置された抵抗体を設け、鉛直方向の異なる位置にある前記複数個の抵抗体の前記半径方向への突出量を独立に調整する突出量調整手段を設けたことを特徴とする竪型研削式精穀機の抵抗体調節装置

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【特許番号】特許第3266167号(P3266167)
【登録日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【発行日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−215072
【出願日】平成5年8月6日(1993.8.6)
【公開番号】特開平7−47292
【公開日】平成7年2月21日(1995.2.21)
【審査請求日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−244342(JP,A)
【文献】特開 平4−118060(JP,A)
【文献】特開 昭51−91165(JP,A)