説明

端子および端子付き電線

【課題】電線の腐食を可及的に遅延させることができる端子および端子付き電線を提供する。
【解決手段】端子20のうちで、接続相手端子40と接続される端子接続部21と、電線10に圧着される芯線圧着部22とを一体に連結する連結部28に、沿面距離延長部26、たとえば凹部26を形成する。これによって、たとえば連結部28の端子接続部21側の端部に腐食が生じたときに、腐食が芯線圧着部22に到達するまでの時間を長くすることができる。したがって、素線11の先端部の腐食を可及的に遅延させることができ、ひいては電線12の腐食を可及的に遅延させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子および端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、搭載された電子部品および電装品を電気的に接続するために、ワイヤーハーネスが用いられる。ワイヤーハーネスとしては、銅電線を用いた銅ワイヤーハーネスが知られているが、重量削減のために、アルミニウム電線を用いたアルミニウムハーネスの開発が進められている。
【0003】
ワイヤーハーネスにおいて、電線は、末端に金属端子が取付けられた端子付き電線として組込まれる。この端子に、接続相手となる端子(以下「接続相手端子」という場合がある)が接続される。電線は、複数本の素線から成る芯線が絶縁被覆材で覆われた構造である。電線の末端に端子を取付けるときには、電線の末端の被覆材が剥がされて素線が露出され、この露出された素線に端子が取付けられて圧着される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
圧着後に素線を露出したままにしておくと、素線から水分が伝わって浸透し、電線の被覆材で覆われた部分にまで浸入するおそれがある。この水分の浸透を防ぐための防水処理として、特許文献1に開示される技術では、素線と端子との圧着部を樹脂で被覆して保護している。
【0005】
また前述のアルミニウムハーネスでは、電線の素線はアルミニウムで形成されるが、端子としては、銅で形成される端子が用いられる。このように電線の素線と端子とが異種金属によって形成される場合に、素線と端子との接触部分に塩水などの電解質水溶液が付着すると、電気化学反応によって腐食が進行する電食が発生する。具体的には、金属同士の標準電極電位差によって、標準電極電位が低い金属、ここではアルミニウムに腐食が発生し、電線が腐食するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−167821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される技術は、防水に関するものであり、特許文献1に開示される技術では、電食については考慮されていない。
【0008】
仮に、特許文献1に開示される技術のように、電線の素線が露出している部分(以下「素線露出部」という場合がある)を、樹脂で被覆したとしても、塩水などの電解質水溶液の付着によって端子の腐食が進行すると、樹脂で被覆された部分の内部まで電解質水溶液が入り込み、素線露出部に到達してしまう。これによって、素線露出部の素線の先端付近から腐食が発生し、電線が腐食するという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、電線の腐食を可及的に遅延させることができる端子および端子付き電線を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の端子は、電線に圧着される端子であって、接続相手となる接続相手端子に電気的に接続される端子接続部と、前記電線の一端部で露出する素線に圧着されて、前記素線に電気的に接続される電線圧着部と、前記端子接続部と前記電線圧着部とを一体に連結する連結部とを備え、前記連結部には、前記端子接続部と前記電線圧着部との間の端面に沿った距離を延長する沿面距離延長部が形成されることを特徴とする。
【0011】
また本発明の端子は、前記沿面距離延長部は、凹部を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明の端子は、前記沿面距離延長部は、凸部を含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明の端子付き電線は、一端部で素線が露出する電線と、前記の端子であって、前記電線圧着部が前記素線に圧着されて、前記素線に電気的に接続される端子と、前記電線の一端部で露出する素線を覆い、前記素線を防食する防食部とを備え、前記端子の沿面距離延長部は、前記防食部内に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の端子によれば、接続相手端子に電気的に接続される端子接続部と、電線の一端部で露出する素線に圧着されて電気的に接続される電線圧着部とは、連結部によって一体に連結される。連結部には、端子接続部と電線圧着部との間の端面に沿った距離である沿面距離を延長する沿面距離延長部が形成されている。これによって、沿面距離延長部が形成されていない場合に比べて、沿面距離を延長することができるので、たとえば連結部の端子接続部側の端部に腐食が生じたときに、腐食が連結部を通過して電線圧着部に到達するまでの時間を長くすることができる。したがって、電線圧着部で圧着される素線の先端部の腐食を可及的に遅延させることができ、ひいては電線の腐食を可及的に遅延させることができる。
【0015】
また本発明の端子によれば、沿面距離延長部は凹部を含むので、端子接続部と電線圧着部との間の沿面距離を延長可能な沿面距離延長部を容易に実現することができる。また凹部によって、素線の飛び出し具合を判断することができる。
【0016】
また本発明の端子によれば、沿面距離延長部は凸部を含むので、端子接続部と電線圧着部との間の沿面距離を延長可能な沿面距離延長部を容易に実現することができる。
【0017】
本発明の端子付き電線によれば、電線の一端部で露出する素線は防食部で覆われ、防食部内の端子の連結部には、沿面距離延長部が形成される。これによって、沿面距離延長部が形成されていない場合に比べて、たとえば連結部の端子接続部側の端部に腐食が生じたときに、腐食が連結部を通過して電線圧着部に到達するまでの時間を長くすることができる。したがって、素線の先端部の腐食を可及的に遅延させることができ、ひいては電線の腐食を可及的に遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の一形態である端子付き電線1を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の一形態である端子付き電線1を示す平面図である。
【図3】図1に示す端子付き電線1を構成する端子20を示す斜視図である。
【図4】電食の発生機構を説明するための図である。
【図5】腐食の進行状況を説明するための図である。
【図6】腐食の進行状況を説明するための図である。
【図7】沿面距離延長部の他の例を示す図である。
【図8】沿面距離延長部の他の例を示す図である。
【図9】沿面距離延長部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の一形態である端子付き電線1を示す側面図である。図2は、本発明の実施の一形態である端子付き電線1を示す平面図である。図3は、図1に示す端子付き電線1を構成する端子20を示す斜視図である。図2は、図1に示す端子付き電線1を、図1の紙面上側から見た図に相当する。
【0020】
端子付き電線1は、電線10と、端子20と、防食部30とを備える。電線10には、端子20が圧着されている。図1および図2では、理解を容易にするために、防食部30を仮想的に示している。また図3では、電線10に圧着される前の段階の端子20の状態を示す。
【0021】
電線10は、複数の素線11で構成される芯線12と、芯線12を被覆する被覆部13とを備えて構成される。電線10は、芯線12が、その外周を被覆部13によって被覆されて構成される。本実施の形態では、芯線12は、複数の素線11を撚って構成されている。電線10の素線11と端子20とは、異種金属で構成されている。
【0022】
素線11は、本実施の形態では、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成り、アルミニウム線またはアルミニウム合金線によって実現される。被覆部13は、樹脂などで形成される。電線10の一端部は、被覆部13が剥がされて芯線12が露出するように加工されている。以下の説明では、電線10のうち、被覆部13が剥がされた一端部を「芯線端部」という場合がある。電線10は、芯線端部14と、被覆部13の芯線端部14側の端部(以下「被覆端部」という場合がある)15とにおいて、端子20と圧着される。
【0023】
端子20は、一方向に延びて長尺状に形成される。具体的には、端子20は、電線10に圧着されている状態において、電線10の延在方向に延びて長尺状に形成される。本実施の形態では、端子20の長手方向において、電線10に圧着される側を他方側といい、その反対側を一方側という。
【0024】
端子20は、その長手方向一方側から他方側に向けて順に、端子接続部21、連結部28、芯線圧着部22および被覆圧着部23を備える。芯線圧着部22は、電線圧着部に相当する。端子接続部21、芯線圧着部22および被覆圧着部23は、それぞれ離隔して形成されている。連結部28は、端子接続部21と芯線圧着部22とを一体に連結する。
【0025】
端子20は、平板状の、導電性を有する金属板(以下「導電性金属板」という場合がある)を打ち抜いた後、屈曲するなどして、一体に形成されている。導電性金属板としては、たとえば、銅板もしくは黄銅などの銅合金板、またはこれらの錫めっき板が用いられる。本実施の形態では、端子20が雌端子である場合について説明する。本発明の他の実施の形態では、端子20は雄端子であってもよい。
【0026】
端子接続部21は、接続相手となる端子である接続相手端子40と電気的に接続される部分である。本実施の形態では、接続相手端子40は雄端子(以下「雄端子40」という場合がある)であり、端子接続部21には、雄端子40が嵌合状に挿入されて接続される。すなわち端子接続部21は、接続相手端子40と嵌合して電気的に接続される端子嵌合部として機能する。端子接続部21は、本実施の形態では、端子20の長手方向に沿って貫通する筒状、具体的には四角筒状に形成されている。
【0027】
端子接続部21の内部には、接続相手端子40に接触する接触片24が備えられている。接触片24は、底部25から長手方向一方に延びる板材を端子接続部21の内方に折返すとともに、先端および折り返した先端部分をU字状に屈曲させて底部25に当接するように折返して形成されている。したがって接触片24は、折返しの曲折部位を支点として弾性変形可能になっている。
【0028】
端子接続部21の底部25に対向する天井部27は、2枚の天蓋、すなわち第1天蓋27aに第2天蓋27bが重ね合わされて形成されている。第1天蓋27aには係止爪51が形成され、第2天蓋27bには係止孔50が形成されている。係止爪51は係止孔50に係止される。これによって、端子接続部21の変形を防止し、機械的な強度を高めることができる。
【0029】
2枚の天蓋27a,27bのうち、底部25側、すなわち図1の紙面に向かって下側の第1天蓋27aは、端子接続部21の開口から所定の距離だけ内側の部分が、底部25に向かって突出する凸部27cとして形成されている。この第1天蓋27aの凸部27cと接触片24とが協働して、雄端子40を所定の接触圧をもって弾性的に狭圧する。これによって、雄端子40と端子20との嵌合力が高められている。
【0030】
芯線圧着部22は、端子接続部21に連なる底部25と、底部25とともに電線10の芯線端部14に圧着される一対の圧着片22a,22bとを備えて構成される。芯線圧着部22は、芯線端部14に圧着される前の段階では、オープンバレル状に形成されており、長手方向に垂直な断面形状は、U字形状になっている。換言すれば、芯線圧着部22の一対の圧着片22a,22bは、互いに対向し、底部25から一方向に向けて突出するように立ち上げられた状態になっている。本実施の形態では、圧着片22a,22bは、底部25に垂直な方向である高さ方向Aの一方に向けて突出するように立ち上げられている。
【0031】
同様に、被覆圧着部23は、連結部28を介して芯線圧着部22に連なる底部25と、底部25とともに電線10の被覆端部15に圧着される一対の圧着片23a,23bとを備えて構成される。被覆圧着部23は、被覆端部15に圧着される前の段階では、オープンバレル状に形成されており、長手方向に垂直な断面形状は、U字形状になっている。換言すれば、被覆圧着部23の一対の圧着片23a,23bは、互いに対向し、底部25から一方向に向けて突出するように立ち上げられた状態になっている。
【0032】
電線10の芯線端部14は、芯線圧着部22の対向する一対の圧着片22a,22b間に配設される。この状態で、芯線圧着部22が、芯線端部14の長手方向の一部分に、その外周を覆うように圧着される。電線10の被覆端部15は、被覆圧着部23の対向する一対の圧着片23a,23b間に配設される。この状態で、被覆圧着部23が、被覆端部15の長手方向の一部分に、その外周を覆うように圧着される。
【0033】
本実施の形態では、電線10の芯線端部14のうち、長手方向両端部間の中間部が芯線圧着部22と圧着される。芯線端部14の長手方向一端部および長手方向他端部を構成する素線11は、高さ方向Aの一方側で、端子20の芯線圧着部22の長手方向両側から外方に露出された状態となっている。以下、芯線端部14を構成する素線11のうち、端子20から露出している部分を「素線露出部16」という。本実施の形態では、素線露出部116は、芯線端部14を構成する素線11のうち、芯線圧着部22の長手方向両側から露出する部分である。
【0034】
以下の説明では、素線露出部16のうち、芯線圧着部22よりも端子接続部21側から露出する部分を「接続部側露出部16a」といい、芯線圧着部22よりも被覆圧着部23側から露出する部分を「被覆側露出部16b」という。端子20において、芯線圧着部22よりも端子接続部21側の部分は、連結部28である。したがって接続部側露出部16aは、素線11のうち、端子20の連結部28で露出する部分であり、素線先端部に相当する。端子20が電線10に圧着されている状態において、端子20の端子接続部21と、電線10の接続部側露出部16aとは、接しておらず、端子20の長手方向に離隔して配設されている。
【0035】
連結部28は、端子接続部21および芯線圧着部22に連なる底部25と、底部25から一方向、具体的には高さ方向Aに延びる一対の壁部28aとを備えて構成される。壁部28aには、沿面距離延長部26が形成されている。本実施の形態では、沿面距離延長部26は、凹部によって実現される。以下では、「沿面距離延長部26」を「凹部26」という場合がある。
【0036】
前述のように本実施の形態では、電線10の素線11と、端子20とは、異種金属で構成されている。具体的には、電線10の素線11は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成され、端子20は、銅板もしくは黄銅などの銅合金板、またはこれらの錫めっき板で構成されている。電線10の素線11を構成する金属材料と、端子20を構成する金属材料とを比較すると、端子20を構成する金属材料よりも、素線11を構成する金属材料の方が、標準電極電位が低い関係にある。この関係下で、端子20の芯線圧着部22と、電線10の芯線端部14との接触部分に水分、たとえば塩水などの電解質水溶液が付着すると、素線露出部16に電食が発生し、電線10が腐食するおそれがある。
【0037】
端子付き電線1では、素線露出部16への電食の発生を防ぐために、防食剤31が塗布されて、防食部30が形成されている。防食剤31は、素線露出部16を覆うように塗布される。本実施の形態では、防食剤31は、電線10の素線露出部16と、素線露出部16に隣接する端子20の芯線圧着部22、被覆圧着部23および底部25と、電線10の被覆端部15とにわたって、塗布される。防食部30は、電線12の一端部で露出する素線11である素線露出部16を覆い、素線11を防食する。
【0038】
防食剤31としては、熱可塑性樹脂が用いられる。防食剤31の具体例としては、ポリアミド樹脂およびエポキシ樹脂が挙げられる。これらのうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。防食剤31は、たとえば、加熱されて溶融して液体となった状態で塗布される。塗布された防食剤31が凝固すると、防食部30が完成する。
【0039】
図4は、電食の発生機構を説明するための図である。前述のように本実施の形態では、防食部30を設けているが、防食部30と、素線露出部16の先端、すなわち接続部側露出部16aとの間の距離dは短いので、塩水などの電解質水溶液の付着によって端子20の腐食が進行すると、防食部30の内部まで電解質水溶液が入り込み、素線露出部16に到達してしまう。
【0040】
たとえば、端子20が、銅または黄銅などの銅合金から成る母材に錫(Sn)めっきを施した板材を打ち抜いて成形される場合、板材の厚み方向両側の表面(以下「Snめっき面」という場合がある)60は、Snめっきが施された状態になっているが、打ち抜かれて露出した端子20の端面(以下「端子端面」という場合がある)20aでは、母材である銅または黄銅などの銅合金が露出している。
【0041】
この状態の端子20に、塩水などの電解質水溶液が付着すると、端子端面20aとSnめっき面60との界面61で電食が発生し、Snめっきが腐食する。さらに端子端面20aとSnめっき面60と防食部30との境界部62からSnめっきが腐食し、境界部62から防食部30の内部に腐食が進行する。Snめっきの腐食が進行すると、塩水などの電解質溶液が防食部30の内部に入り込み、素線露出部16に到達する。これによって、素線露出部16の先端付近63から、素線11を構成するアルミニウムの腐食が発生し、電線が腐食するという問題が生じる。
【0042】
そこで本実施の形態では、前述の図1〜図3に示すように、連結部28の壁部28aに、沿面距離延長部26として、凹部26を形成している。沿面距離延長部26は、図3に示すように、端子端面20aに沿った距離である沿面距離を延長可能に形成される。
【0043】
図5および図6は、腐食の進行状況を説明するための図である。図5は、沿面距離延長部26が形成されていない場合を示し、図6は、沿面距離延長部26が形成されている場合を示す。前述の図4に示す端子端面20aとSnめっき面60と防食部30との境界部62で生じた腐食は、図5および図6に矢符で示すように、端子端面20aに沿って進行する。
【0044】
図6に示すように、連結部28の壁部28aに沿面距離延長部26が形成されている場合、腐食は、矢符で示すように、沿面距離延長部26の表面部に沿って進行するので、図5に示す沿面距離延長部26が形成されていない場合に比べて、連結部28の通過に要する時間が長くなる。換言すれば、素線先端部である素線露出部16aに腐食が到達するまでの時間を長くすることができる。したがって、素線11の先端部の腐食を可及的に遅延させることができ、ひいては電線12の腐食を可及的に遅延させることができる。
【0045】
このような本実施の形態の端子付き電線1は、自動車用ワイヤーハーネスの電線として好適である。自動車では、外部から水分、たとえば塩水などの電解質水溶液が侵入しやすく、侵入した水分が、端子20と電線10の素線11との接触部分に付着する可能性がある。本実施の形態の端子付き電線1では、端子20と素線11との接触部分である素線露出部16が防食部30で覆われており、かつ防食部30内の連結部28の壁部28aに沿面距離延長部26が形成されている。したがって、外部から水分が侵入してきても、素線11の先端部の腐食を可及的に遅延させることができ、ひいては電線12の腐食を可及的に遅延させることができる。
【0046】
本実施の形態における端子20は、端子20となる導電性金属板の板材を、所望の形状の沿面距離延長部26が形成されるように打ち抜いた後、プレス加工および曲げ加工などを施して組み立てることによって製造される。得られた端子20を電線12に圧着した後、端子20の沿面距離延長部26および素線11の素線露出部16を覆うように防食剤31を塗布して凝固させて防食層30を形成することによって、前述の図1および図2に示す端子付き電線1を製造することができる。
【0047】
以上に述べた本実施の形態では、沿面距離延長部26は、凹部26によって実現されるが、これに限定されず、端子端面20aに沿った沿面距離を延長させる形状であればよい。図7〜図9は、沿面距離延長部の他の例を示す図である。
【0048】
本実施の形態では、沿面距離延長部26は、前述の図6に示すように、側面が底部25に対して垂直に形成される凹部で実現されるが、図7に示す沿面距離延長部26Aのように、側面が底部25に対して傾斜して形成される凹部で実現されてもよい。この場合、凹部は、図7に示すように延在方向の一方に向かうにつれて、具体的には底部25から離隔するにつれて、開口面積が大きく形成されてもよく、逆に、延在方向の一方に向かうにつれて、具体的には底部25から離隔するにつれて、開口面積が小さく形成されてもよい。この場合、腐食は、図7に矢符で示すように、沿面距離延長部26Aの表面部に沿って進行する。
【0049】
また沿面距離延長部を構成する凹部は、図8に示す沿面距離延長部26Bのように、底部25の近傍に形成される平坦部と、平坦部から高さ方向Aの一方に上昇する斜面部とによって構成されてもよい。この場合、腐食は、図8に矢符で示すように、沿面距離延長部26Bの表面部に沿って、平坦部、斜面部の順に進行していく。
【0050】
また沿面距離延長部は、凹部に限定されるものではなく、たとえば図9に示す沿面距離延長部26Cのように凸部によって実現されてもよい。この場合、腐食は、図9に矢符で示すように、沿面距離延長部26Cの表面部に沿って進行する。沿面距離延長部を構成する凹部および凸部は、複数であってもよい。また沿面距離延長部は、凹部と凸部とを含んで、凹凸形状に形成されてもよい。
【0051】
沿面距離延長部を構成する凹部、たとえば前述の図6〜図8に示す凹部26,26A,26Bの底面は、底部25を基準としたときの高さが、芯線圧着部22の高さ方向Aの上面よりも低いことが好適である。換言すれば、底部25を基準として、凹部26,26A,26Bの底面の高さは、芯線圧着部22の高さ方向Aの上面の高さよりも低いことが好適である。
【0052】
また沿面距離延長部を構成する凸部、たとえば前述の図9に示す凸部26Cの上面は、底部25を基準としたときの高さが、芯線圧着部22の高さ方向Aの上面よりも高いことが好適である。換言すれば、底部25を基準として、凸部26Cの上面の高さは、芯線圧着部22の高さ方向Aの上面の高さよりも高いことが好適である。
【0053】
以上のように沿面距離延長部は、種々の形状によって実現可能であるが、前述の図6〜図8に示す凹部によって実現されることが好ましい。凹部によって、素線11の飛び出し具合を判断することができる。
【0054】
その中でも、前述の図6に示す本実施の形態の沿面距離延長部26のように、側面が底部25に対して垂直に形成される凹部で実現されることが好ましい。側面が底部25に対して垂直に形成される凹部で沿面距離延長部26を構成することによって、芯線圧着部22からの素線11の飛び出しを管理することができる。たとえば製造段階において、凹部26を見て、素線11が凹部26まで出ていれば、飛び出し過ぎとして、不良品と判断することができる。
【0055】
また本実施の形態では、芯線圧着部22は、互いに対向する一対の圧着片22a,22bで電線10の芯線端部14に圧着される場合を説明したが、これに限られるものではない。芯線圧着部22は、たとえば、互いに対向する一対の圧着片を2組有し、これらが長手方向に離隔して設けられる構成であってもよい。この場合、圧着片同士の間から露出する素線11の部分も素線露出部16となる。このように素線露出部16の位置は、芯線圧着部22による端部14の圧着態様によって異なる。
【0056】
また本実施の形態では、電線10の芯線12を構成する素線11は、アルミニウム線またはアルミニウム合金線であるが、これに限定されず、他の金属材料で形成されたものであってもよい。また端子20を構成する導電性金属板は、銅板もしくは銅合金板、またはこれらの錫めっき板であるが、これに限定されず、他の金属材料で形成されたものであってもよい。本発明の端子20および端子付き電線1は、端子20を構成する金属材料よりも、素線11を構成する金属材料の方が、標準電極電位が低い関係にある場合に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1 端子付き電線
10 電線
11 素線
12 芯線
13 被覆部
14 芯線端部
15 被覆端部
16 素線露出部
20 端子
21 端子接続部
22 芯線圧着部
23 被覆圧着部
24 接触片
26 沿面距離延長部(凹部)
28 連結部
30 防食部
31 防食剤
40 接続相手端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に圧着される端子であって、
接続相手となる接続相手端子に電気的に接続される端子接続部と、
前記電線の一端部で露出する素線に圧着されて、前記素線に電気的に接続される電線圧着部と、
前記端子接続部と前記電線圧着部とを一体に連結する連結部とを備え、
前記連結部には、前記端子接続部と前記電線圧着部との間の端面に沿った距離を延長する沿面距離延長部が形成されることを特徴とする端子。
【請求項2】
前記沿面距離延長部は、凹部を含むことを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記沿面距離延長部は、凸部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の端子。
【請求項4】
一端部で素線が露出する電線と、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の端子であって、前記電線圧着部が前記素線に圧着されて、前記素線に電気的に接続される端子と、
前記電線の一端部で露出する素線を覆い、前記素線を防食する防食部とを備え、
前記端子の沿面距離延長部は、前記防食部内に形成されることを特徴とする端子付き電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−238475(P2011−238475A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109192(P2010−109192)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)