説明

端子ボックスの端子穴に電極線を挿入する方法、組立装置、および太陽電池パネルの製造方法

【課題】端子ボックスに設けられた端子の端子穴にバスバーなどの電極線を自動的に挿入し、組立工数または組立時間などの増大を抑制すること。
【解決手段】端子ボックス70に設けられた端子72の端子穴73に電極線BBを挿入する方法であって、曲げ型31を備えた曲げ装置12を端子ボックス70に対して特定の位置に位置決めし、電極線がその先端部の側から端子ボックス内に挿入されるように、電極線と曲げ装置および端子ボックスとを相対的に移動させ、これによって、端子ボックス内に挿入された電極線の先端部を曲げ型31に当接させた後当該曲げ型31に沿って曲げ、電極線の先端部を端子ボックス内に挿入した方向と反対側の方向から端子穴73に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子ボックスの端子穴に電極線を挿入する方法、組立装置、および太陽電池パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、クリーンな太陽エネルギを直接に電力に変換する住宅用太陽光発電システムが注目されている。それに用いられる太陽電池パネルは、金属からなる薄い帯状のバスバー(電極線)が設けられた太陽電池本体に、外部接続のための端子ボックスが組み付けられて構成される(特許文献1〜2)。
【0003】
端子ボックスを太陽電池本体に組み付けるに際しては、端子ボックスを太陽電池本体に対して所定の位置に配置し、端子ボックスに設けられた端子の端子穴にバスバーを挿入する必要がある。従来において、これらの組み付け作業は手作業で行われていた。
【0004】
すなわち、従来において、作業者は、端子ボックスを手で掴んで太陽電池本体の表面の所定の位置に持っていき、バスバーを指で挟んで折り曲げて、その先端を端子穴に挿入する。その後、挿入したバスバーと端子とが半田付けによって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−236206号
【特許文献2】特開2009−302595号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に述べたように、従来において、端子ボックスを太陽電池本体に組み付ける作業は手作業で行われており、自動化は行われていなかった。
【0007】
そのため、組立工数が増大してコスト的な問題または組立工程における所要時間の増大などの問題があった。
【0008】
特に、太陽電池パネルの高性能化によって、1つの太陽電池本体に多数のバスバーが設けられることがあり、その場合には、それら多数のバスバーを対応する端子穴にそれぞれ挿入するために多くの時間を要することとなっていた。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、端子ボックスに設けられた端子の端子穴にバスバーなどの電極線を自動的に挿入し、組立工数または組立時間などの増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る方法は、端子ボックスに設けられた端子の端子穴に電極線を挿入する方法であって、曲げ型を備えた曲げ装置を前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めし、前記電極線がその先端部の側から前記端子ボックス内に挿入されるように、前記電極線と前記曲げ装置および前記端子ボックスとを相対的に移動させ、これによって、前記端子ボックス内に挿入された前記電極線の先端部を前記曲げ型に当接させた後当該曲げ型に沿って曲げ、前記電極線の先端部を前記端子ボックス内に挿入した方向と反対側の方向から前記端子穴に挿入する。
【0011】
好ましくは、前記曲げ型は、前記電極線の先端部を案内する断面略U字形の曲げ曲面を有しており、前記曲げ装置を前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めするときに、前記曲げ曲面の終端部を前記端子穴に挿入する。
【0012】
また、前記曲げ型は、前記曲げ型は、前記端子ボックスに対してスライド可能に支持することができ、その場合に、前記曲げ装置を前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めするときに、前記曲げ曲面の終端部を前記端子穴における前記電極線の先端部が挿入される側とは反対側に偏位させるようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る装置は、端子ボックスに設けられた端子の端子穴に電極線を挿入するための組立装置であって、前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めすることが可能な曲げ装置と、前記曲げ装置に設けられた曲げ型と、を備え、前記曲げ型は、前記電極線の先端部を案内する断面略U字形の曲げ曲面を有し、前記曲げ曲面の終端部は前記端子穴に挿入可能となっており、前記曲げ装置が前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めされた状態において、前記電極線がその先端部の側から前記端子ボックス内に挿入されることにより、前記電極線の先端部が前記曲げ型に当接した後当該曲げ型に沿って曲げられて前記端子ボックス内に挿入された方向とは反対側の方向から前記端子穴に挿入されるようになっている。
【0014】
前記端子ボックスを把持するための把持装置を備えてもよい。その場合に、前記曲げ装置は前記把持装置に連結され、前記把持装置が前記端子ボックスを把持することによって前記曲げ装置が前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めされるようにすることができる。
【0015】
前記把持装置を空間内で移動させるための移動装置を備えてもよい。その場合に、前記移動装置により前記把持装置を移動させることによって、前記把持装置により把持された状態の前記端子ボックス内に前記電極線の先端部を挿入することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、端子ボックスに設けられた端子の端子穴に電極線を自動的に挿入し、組立工数または組立時間などの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の組立装置の正面図である。
【図2】組立装置の左側面図である。
【図3】組立装置の平面図である。
【図4】組立装置の爪部材を除去した状態の正面図である。
【図5】フローティング装置を拡大して示す拡大平面図である。
【図6】曲げ型の近辺を拡大して示す正面図である。
【図7】組立装置の動作を示す図である。
【図8】組立装置の動作を示す図である。
【図9】太陽電池パネルの製造工程を示す図である。
【図10】バスバーの形状の例を示す図である。
【図11】端子ボックスの平面図である。
【図12】組立装置の概略の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態では、太陽電池本体に端子ボックスを取り付けることにより太陽電池パネルを製造する例について説明する。
【0019】
図9には太陽電池パネルTPの製造工程が示されており、図9(A)には太陽電池本体TDの側面図が示されている。
【0020】
太陽電池本体TDは、正面視が長方形の薄板状のものである。太陽電池本体TDの一方の表面H1は太陽光の受光面であり、他方の表面H2には発電された電力を取り出すための複数のバスバーBBが取り付けられている。
【0021】
バスバーBBは、銅などの金属からなる薄い帯状の電極線であり、折り曲げが可能であり、また半田付けが可能である。
【0022】
図9(B)に示すように、太陽電池本体TDの表面H2において、バスバーBBを覆うように端子ボックス70を取り付けることによって太陽電池パネルTPが完成する。
【0023】
図10にはバスバーBBの側面形状の例が示されている。
【0024】
図10(A)では、バスバーBB1は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直に立ち上がった状態である。
【0025】
図10(B)では、バスバーBB2は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直よりも小さい角度で斜めに立ち上がった状態である。
【0026】
図10(C)では、バスバーBB3は、太陽電池本体TDの表面H2に対して垂直に立ち上がり、先端部において斜めに折れて曲がっている状態である。
【0027】
バスバーBBは、これら以外に、緩い円弧を描いた形状、くの字形に曲がった形状など、他の種々の形状とすることが可能である。
【0028】
なお、バスバーBBは、当初は太陽電池本体TDの表面H2に沿った状態で設けられるが、本実施形態における工程の前の工程において、図10などに示すようにほぼ直角に起立された状態となる。
【0029】
また、バスバーBBには、その保護などのために、その根元の近辺において、それぞれのバスバーBBごとにまたは複数のバスバーBBに渡って、合成樹脂などからなるフィルム材が張り付けられることがある。
【0030】
図11には、端子ボックス70の平面図が示されている。
【0031】
図11に示すように、端子ボックス70は、合成樹脂などからなる略直方体形状のハウジング71を有する。ハウジング71における長方形の長辺を構成する2つの外周面71a,71bが、後で述べる把持装置11によって把持される。
【0032】
ハウジング71には、銅などからなる4つの端子72a〜dが設けられ、端子72a〜dのそれぞれには端子穴73a〜dが設けられている。端子穴73a〜dは、長方形状または直線スリット状のものであり、バスバーBBの先端部が挿入可能である。
【0033】
ハウジング71の端子72a〜dが設けられた部分には、開口部74が設けられ、開口部74によってハウジング71の表裏が貫通している。つまり、バスバーBBは、端子72a〜dに接続するために開口部74から挿入可能である。
【0034】
これら4つの端子72a〜dは、図示しないハウジング71内における電極線による配線によって同軸ケーブル75a,75bに接続されている。同軸ケーブル75a,75bは、外部の機器との接続のために引き出されている。
【0035】
なお、端子ボックス70の底面(図11における紙面の裏側面)には、太陽電池本体TDとの接着のための接着層が設けられている。そのような接着層は、例えば、接着剤を塗布することにより、または両面粘着テープを貼り付けることにより、容易に形成することができる。
【0036】
図1〜図4には、端子ボックス70に設けられた端子72の端子穴73にバスバーBBを挿入するための組立装置1が示されている。図5には曲げ装置12の支持構造が拡大されて示されている。図6には曲げ型31によってバスバーBBが曲げられて端子穴73に挿入される様子が示されている。
【0037】
なお、図1には太陽電池本体TDおよびバスバーBBが示されているが、図2〜4にはそれが示されていない。
【0038】
図1〜図4において、組立装置1は、端子ボックス70を把持する把持装置11、把持装置11に連結された曲げ装置12、および把持装置11を空間内で移動させるための移動装置13を備える。
【0039】
把持装置11は、端子ボックス70を把持することによって曲げ装置12を端子ボックス70に対して特定の位置に位置決めする。つまり、把持装置11と曲げ装置12とは一体的に連結されているので、把持装置11が端子ボックス70の特定の位置を把持すると、これによって曲げ装置12は端子ボックス70に対して特定の位置に位置決めされ、これらは互いに固定的な関係となる。つまり、把持装置11が端子ボックス70を把持することによって、曲げ装置12と端子ボックス70とが互いに固定的な位置関係になる。これで、曲げ装置12が端子ボックス70に対して特定の位置に位置決めされたことになる。
【0040】
曲げ装置12には、後述する曲げ曲面32を有した曲げ型31が備えられている。把持装置11により端子ボックス70が把持され、これにより曲げ装置12が端子ボックス70に対して特定の位置に位置決めされると、曲げ曲面32の終端部が端子穴73に挿入される。
【0041】
また、曲げ型31は、把持装置11に対してスライド可能となっており、したがって把持装置11が端子ボックス70を把持したときには曲げ型31は端子ボックス70に対してスライド可能な状態となる。以下、詳しく説明する。
【0042】
把持装置11は、互いに平行に配置された2つの爪部材21a,21b、および、2つの爪部材21a,21bを開閉駆動するチャックユニット22を備える。
【0043】
爪部材21a,21bは、それぞれ、連結部材211a,211b、爪バー212a,212b、および押当部材213a,213bを備える。
【0044】
爪バー212a,212bは、端子ボックス70のハウジング71の外周面71a,71bの長さ方向に沿って延びるように配置された、金属材料などからなる断面矩形の棒状のものである。押当部材213a,213bは、外周面71a,71bに直接に当接して把持するために、表面が滑りにくく可撓性を有した材料、例えば合成樹脂または合成ゴムなどからなる帯状のものである。押当部材213a,213bは、爪バー212a,212bの表面に接着剤などによって貼り付けられている。
【0045】
チャックユニット22は、空気圧シリンダ221、動力変換機構222、および取り付け部223a,223bを備える。
【0046】
空気圧シリンダ221は、外形が断面矩形のシリンダチューブ、シリンダチューブ内を摺動するピストン、および、ピストンに連結されて下方へ延びるピストンロッドなどを備える公知の構造のものである。本実施形態では、図には示されていない2つのポートに選択的に空気圧を供給することにより、ピストンロッドが図1の上下方向に往復移動する。
【0047】
動力変換機構222は、空気圧シリンダ221のピストンロッドの上下方向の往復移動を左右方向の開閉移動(往復移動)に変換するものであり、本実施形態では、取り付け部223a,223bが図2の左右方向に開閉移動する。このような動力変換機構222それ自体は、リンク機構またはカム機構などを利用して構成することが可能である。
【0048】
取り付け部223a,223bには、上に述べた爪部材21a,21bが取り付けられているので、空気圧シリンダ221への空気圧の選択的な供給によって、爪部材21a,21bが開閉駆動される。
【0049】
次に、曲げ装置12には、4つのバスバーBBに対応して、4つの曲げ型31a〜dが設けられる。4つの曲げ型31a〜dによって、4つのバスバーBBが曲げられ、バスバーBBのそれぞれの先端部が開口部74に挿入された方向と反対側の方向から端子穴73a〜dに挿入される。
【0050】
なお、4つの曲げ型31a〜dおよび4つの端子穴73a〜dは、それぞれ互いに同様な構造であるので、それらの1つについて説明する。なお、曲げ型31a〜dの全部または一部を指して「曲げ型31」と、端子穴73a〜dの全部または一部を指して「端子穴73」と、それぞれ記載することがある。他の要素についても同様である。
【0051】
図2および図6に示すように、曲げ型31は、バスバーBBの先端部を案内するための断面略U字形の曲げ曲面32を有する。つまり、曲げ曲面32は、その始端部32aから終端部32bの間の全部の表面が滑らかな曲面に仕上げられ、かつ硬質クロムメッキ処理などが施される。これにより、曲げ曲面32をバスバーBBが摺動し易く、かつ曲げ曲面32が摩耗し難くなっている。
【0052】
終端部32bの外側の側面は、鉛直方向(図6の上下方向)に対して傾斜する傾斜面32cとなっている。これにより、終端部32bは、傾斜面32cと曲げ曲面32とにより挟まれ、下方に向かって鋭角となって突出した形状である。終端部32bは、端子ボックス70の端子穴73に挿入可能となっている。
【0053】
また、終端部32bは、端子穴73に挿入された状態で、曲げ曲面32と端子72の内周面との間に間隙が設けられた状態となることが可能である。このような状態となるためには、例えば、曲げ型31を端子ボックス70に対して接近させる際に、終端部32bの先端(下端)の頂点が端子穴73の中央付近に入り込むように接近させ、終端部32bが端子穴73に入り込んだ後で、曲げ型31の全体を図6の左方向(矢印M1方向)に移動させればよい。
【0054】
曲げ曲面32と端子72の内周面との間に間隙が設けられることにより、バスバーBBがその間隙を通って端子穴73に容易に入り込むことができる。
【0055】
なお、曲げ曲面32と端子72の内周面との間に間隙を設けるために、曲げ型31は、把持装置11に対して、フローティング装置FSによりスライド可能にかつ位置調整可能に支持されている。そして、把持装置11によって端子ボックス70を把持したときに、曲げ曲面32の終端部32bが端子穴73におけるバスバーBBの先端部が挿入される側とは反対側の位置に偏位(偏倚)するようになっている。これについては後で詳しく説明する。
【0056】
なお、曲げ曲面32の幅は、バスバーBBの幅寸法よりも若干広く、端子穴73の幅よりも狭い。曲げ曲面32の形状は、図6に示した形状とは異なっていてもよく、バスバーBBの材質、寸法などに応じて種々変更することができる。例えば、図6に示した形状よりも曲率半径が小さくなって深く曲がっていてもよい。また、円弧状、楕円状、放物線状、双曲線状、これらを組み合わせた曲線状、または任意の曲線状であってもよい。
【0057】
図1に示されるように、曲げ型31の両側には、バスバーBBが曲げ曲面32からはみ出ないようにガイド部材33が設けられている。
【0058】
2つのガイド部材33は、図1に示されるように、その対向面が、曲げ曲面32の始端部32aの近い部分において外向きに拡がっており、バスバーBBの位置がずれたり歪んでいた場合でも曲げ曲面32に向かって案内できるようになっている。
【0059】
これら4つの曲げ型31は、後で述べる支持バー35の下面にそれぞれ取り付けられている。
【0060】
一方、空気圧シリンダ221のシリンダチューブの外周面には、金属材料などからなる縦板部材41,41が、ボルトで固定されている。縦板部材41,41の下端面には、金属材料などからなる横部材42が、ボルトで固定されている。
【0061】
また、横部材42と間隔をあけて平行に配置された横支持部材43が、金属材料などからなるブロック部材を介して横部材42に対して一体的に取り付けられている。
【0062】
支持バー35の上面の両端部に、それぞれブシュ36a,36a(図5参照)が内蔵されたブロック36,36が取り付けられている。各ブロック36,36の外側の面には、基準ブロック37,37がそれぞれ取り付けられている。
【0063】
横部材42の上面には、ブロック36および基準ブロック37に対応する位置に、調整ブロック44、44が取り付けられている。
【0064】
各調整ブロック44と横支持部材43との間には、スライド支軸45,45が取り付けられている。スライド支軸45,45は、その両端部において軸方向の外方からネジ込まれたボルト45a,45aとワシャとによって抜け止めがなされ、かつ、調整ブロック44にネジ込まれたボルト44aによって、軸方向に移動しないように固定されている。
【0065】
スライド支軸45,45は、各ブロック36に内蔵されたブシュ36aを摺動可能に貫通する。したがって、支持バー35は、横部材42および横支持部材43に対して、スライド支軸45に沿ってスライド可能(摺動可能)に支持されている。
【0066】
また、各調整ブロック44および横支持部材43には、互いに対向する位置に調整ボルト46、47がネジ込まれ、それぞれの調整ボルト46、47はナット46a,47aによってロックされる。
【0067】
各調整ボルト46、47には、先端の側に穴が設けられており、その穴の中に、圧縮バネ48が装着され、ピン49が挿入されている。それぞれのピン49は、それぞれの圧縮バネ48によって外方に向かって付勢される。これら2つのピン49の先端は、基準ブロック37の側面37a,37bに互いに反対側から当接する。
【0068】
このように、基準ブロック37は2つのピン49によって外側から押されており、したがって、基準ブロック37および支持バー35は、スライド支軸45に沿ってスライド可能であるとともに、両側の圧縮バネ48およびピン49によってセンタリングがなされ、圧縮バネ48の応力がバランスした位置に位置決めされる。
【0069】
したがって、調整ボルト46、47を回転させてその軸方向位置を調整することにより、支持バー35つまり曲げ型31の水平前後方向(図5の矢印M2方向)の位置を調整することができる。
【0070】
これら、ブロック36、基準ブロック37、スライド支軸45、調整ボルト46、47、圧縮バネ48、ピン49などによって、フローティング装置FSが構成されている。
【0071】
移動装置13は、把持装置11を曲げ装置12とともに空間内で移動させるものである。つまり、移動装置13は、把持装置11を、端子ボックス70が供給される位置、および太陽電池本体TDが供給される位置を含む三次元空間を移動させる。
【0072】
なお、図1においては、移動装置13をブロックで示してあるが、把持装置11を三次元空間内において移動させるものであれば、種々の構造、方式、形状のものを用いることができる。例えば、多関節ロボット、または複数のXYテーブルを組み合わせたXYZ位置決め装置などを移動装置13として用いることができる。
【0073】
次に、本実施形態の組立装置1によって太陽電池パネルTPを製造する工程について説明する。
【0074】
図7(A)に示すように、移動装置13によって、把持装置11を、その原点位置から、供給された端子ボックス70の真上に位置するように移動させる。このとき、曲げ型31の終端部32bが端子穴73のほぼ真上に位置するように位置決めする。
【0075】
図7(B)に示すように、移動装置13によって、把持装置11を下降させ(矢印M3方向に移動)、曲げ型31の終端部32bを端子穴73の中に入れる。このとき、左右の爪部材21a,21bは、端子ボックス70の一方の外周面71aとの間が他方の外周面71bとの間よりも広くあいた状態である。
【0076】
図7(C)に示すように、移動装置13によって、把持装置11を、図の矢印M4方向に僅かに移動させ、これによって曲げ曲面32の終端部32bを端子穴73におけるバスバーBBの先端部が挿入される側とは反対側に偏位させる。つまり、端子穴73の開口部における終端部32bの左右位置を、開口部74とは反対側に偏位させる。
【0077】
なお、このとき、端子穴73内において、終端部32bが端子72に接触してもよい。接触した場合には、フローティング装置FSが働くことによって曲げ型31が把持装置11に対してスライド移動し、これにより曲げ型31の位置が把持装置11に対して少しずれる。したがって、この場合には、曲げ型31の終端部32bは、フローティング装置FSの圧縮バネ48によって、端子72の内周面に軽く押しつけられた状態となる。
【0078】
そして、図8(D)に示すように、爪部材21を閉じ、爪バー212a,212bおよび押当部材213a,213bによって端子ボックス70を挟む。このとき、終端部32bと端子穴73との位置関係はほとんど変わらない。
【0079】
爪部材21で端子ボックス70を把持した状態で、移動装置13によって端子ボックス70を持ち上げ、供給された太陽電池本体TDのバスバーBBの真上に位置するように持っていく。このとき、各バスバーBBの先端部の位置は、各曲げ型31の曲げ曲面32の始端部32aに近い位置となる。
【0080】
そして、図8(E)に示すように、移動装置13によって把持装置11を下降させ、バスバーBBが開口部74に入るようにする。
【0081】
把持装置11が下降するにつれて、バスバーBBは、曲げ曲面32に当接した後、曲げ曲面32に沿って曲線を描くように折り曲げられる。
【0082】
図8(F)に示すように、把持装置11が最下位置まで下降すると、バスバーBBの先端部は端子穴73の中に挿入された状態となる。つまり、本実施形態において、バスバーBBは、端子ボックス70の開口部74に下側から挿入され、端子穴73にはその上側から中に挿入される。これと同時に、端子ボックス70は太陽電池本体TDの表面H2に押しつけられ、端子ボックス70の裏面に設けられた接着層によって太陽電池本体TDの表面H2に接着される。移動装置13は、端子ボックス70が太陽電池本体TDの表面H2に充分に接着するように、端子ボックス70を押しつけた状態を所定の時間だけ保持する。
【0083】
その後、爪部材21を開いて端子ボックス70の把持を解除し、移動装置13によって把持装置11を上昇させ、原点位置に戻す。
【0084】
そして、太陽電池本体TDと端子ボックス70との一体物は次のステーションに送られ、または同じ場所(ステーション)で、バスバーBBの先端部と端子72とが半田付けされ、電気的および機械的に強固に接続される。
【0085】
このようにして、太陽電池パネルTPが製造される。
【0086】
なお、上の説明では、太陽電池本体TDは固定され、移動装置13によって把持装置11および端子ボックス70を移動させたが、把持装置11および端子ボックス70を固定し、移動装置13または他の移動装置によって太陽電池本体TDを移動させてもよい。また、それら両方を移動させてもよい。
【0087】
次に、組立装置1によって太陽電池パネルTPを製造する概略の手順をフローチャートに沿って説明する。
【0088】
図12において、把持装置11によって端子ボックス70を把持する(#11)。このときに、曲げ型31の終端部32bが端子穴73に挿入され、かつ終端部32bがバスバーBBの先端部が挿入される側とは反対側に偏位するようにする。
【0089】
把持装置11を太陽電池本体TDおよびバスバーBBと相対的に移動させる(#12)。そして、曲げ曲面32によって、バスバーBBを曲げ、バスバーBBの先端部を端子穴73に挿入する(#13)。端子ボックス70を太陽電池本体TDの表面H2に押しつけ、接着させる(#14)。その後、バスバーBBの先端部と端子72とを半田付けする(#15)。
【0090】
上に述べたように、本実施形態の組立装置1によると、把持装置11と曲げ装置12とが一体的に設けられているため、端子ボックス70に設けられた端子72の端子穴73にバスバーBBなどの電極線を自動的に容易に挿入することができる。したがって、太陽電池パネルTPの組立工数または組立時間などの増大を抑制することができる。
【0091】
また、端子穴73へのバスバーBBの挿入とともに、端子ボックス70の太陽電池本体TDの表面H2への接着を同時に行うことができるので、太陽電池パネルTPの組立工数または組立時間などの縮減を図ることが可能である。
【0092】
また、曲げ型31の終端部32bが端子72の端子穴73に挿入されるので、これによって、曲げ曲面32に沿って案内されたバスバーBBの先端部が容易に端子穴73に挿入される。
【0093】
また、曲げ型31の終端部32bを端子72の端子穴73に挿入するに際し、終端部32bを端子穴73の中央付近において挿入するので、終端部32bの端子穴73への挿入が容易である。
【0094】
また、終端部32bを端子穴73の中央付近に挿入した後、曲げ型31を移動することによって終端部32bを端子穴73におけるバスバーBBの先端部が挿入される側とは反対側に偏位させるので、端子穴73のサイズが小さい場合であってもバスバーBBの端子穴73への挿入が容易である。
【0095】
なお、上に述べた実施形態においては、移動装置13によって終端部32bを端子穴73内で偏位させた後に爪部材21で把持したが、端子ボックス70が移動可能である場合には、移動装置13による終端部32bの偏位のための移動を行うことなく、そのまま把持装置11で端子ボックス70を把持することにより、端子ボックス70の把持と終端部32bの偏位とを同時に行うようにしてもよい。
【0096】
各曲げ型31にはガイド部材33が設けられているので、位置決めが少々ずれた場合であってもバスバーBBの先端部を曲げ曲面32に沿って正しく案内することができる。
【0097】
上に述べた実施形態において、4つのバスバーBBおよび端子72に対応して4つの曲げ型31が設けられたが、3つ以下または5つ以上の曲げ型31が設けられたものでもよい。フローティング装置FSの構造は上に述べた以外の種々の構造とすることができる。爪部材21およびチャックユニット22の構造、形状、または個数などは、端子ボックス70の形状などに応じて種々変更することができる。
【0098】
上に述べた実施形態において、端子穴73の形状、寸法などは、上に述べた以外の種々のものに適用することができる。上の例では、端子穴73はその周囲が端子72によって囲まれているが、端子穴73の周囲の一部が切断された状態の端子穴であってもよい。
【0099】
その他、把持装置11、曲げ装置12、移動装置13、または組立装置1の各部または全体の構成、構造、形状、材質、個数、配置などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 組立装置
11 把持装置
12 曲げ装置
13 移動装置
21 爪部材
22 チャックユニット
31 曲げ型
32 曲げ曲面
32b 終端部
33 ガイド部材
45 スライド支軸
70 端子ボックス
72 端子
73 端子穴
74 開口部
BB バスバー(電極線)
FS フローティング装置
TD 太陽電池本体
TP 太陽電池パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子ボックスに設けられた端子の端子穴に電極線を挿入する方法であって、
曲げ型を備えた曲げ装置を前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めし、
前記電極線がその先端部の側から前記端子ボックス内に挿入されるように、前記電極線と前記曲げ装置および前記端子ボックスとを相対的に移動させ、これによって、前記端子ボックス内に挿入された前記電極線の先端部を前記曲げ型に当接させた後当該曲げ型に沿って曲げ、前記電極線の先端部を前記端子ボックス内に挿入した方向と反対側の方向から前記端子穴に挿入する、
ことを特徴とする端子ボックスの端子穴に電極線を挿入する方法。
【請求項2】
前記曲げ型は、前記電極線の先端部を案内する断面略U字形の曲げ曲面を有しており、
前記曲げ装置を前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めするときに、前記曲げ曲面の終端部を前記端子穴に挿入する、
請求項1記載の端子ボックスの端子穴に電極線を挿入する方法。
【請求項3】
前記曲げ型は、前記端子ボックスに対してスライド可能となっており、
前記曲げ装置を前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めするときに、前記曲げ曲面の終端部を前記端子穴における前記電極線の先端部が挿入される側とは反対側に偏位させる、
請求項2記載の端子ボックスの端子穴に電極線を挿入する方法。
【請求項4】
端子ボックスに設けられた端子の端子穴に電極線を挿入するための組立装置であって、
前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めすることが可能な曲げ装置と、
前記曲げ装置に設けられた曲げ型と、
を備え、
前記曲げ型は、前記電極線の先端部を案内する断面略U字形の曲げ曲面を有し、前記曲げ曲面の終端部は前記端子穴に挿入可能となっており、
前記曲げ装置が前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めされた状態において、前記電極線がその先端部の側から前記端子ボックス内に挿入されることにより、前記電極線の先端部が前記曲げ型に当接した後当該曲げ型に沿って曲げられて前記端子ボックス内に挿入された方向とは反対側の方向から前記端子穴に挿入されるようになっている、
ことを特徴とする端子ボックスと電極線との組立装置。
【請求項5】
前記曲げ型は、前記端子ボックスに対してスライド移動が可能となっており、
前記曲げ装置が前記端子ボックスに対して前記特定の位置に位置決めされたときに、前記曲げ曲面の終端部が前記端子穴に挿入されかつ前記電極線の先端部が挿入される側とは反対側に偏位するようになっている、
請求項4記載の端子ボックスと電極線との組立装置。
【請求項6】
前記端子ボックスを把持するための把持装置を備えており、
前記曲げ装置は前記把持装置に連結されており、
前記把持装置が前記端子ボックスを把持することによって前記曲げ装置が前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めされる、
請求項4または5記載の端子ボックスと電極線との組立装置。
【請求項7】
前記把持装置を空間内で移動させるための移動装置を備えており、
前記移動装置により前記把持装置を移動させることによって、前記把持装置により把持された状態の前記端子ボックス内に前記電極線の先端部を挿入する、
請求項6記載の端子ボックスと電極線との組立装置。
【請求項8】
端子ボックスに設けられた端子の端子穴に太陽電池本体に設けられた電極線を挿入することにより前記端子と前記電極線とが接続される太陽電池パネルの製造方法であって、
曲げ型を備えた曲げ装置を前記端子ボックスに対して特定の位置に位置決めするステップと、
前記電極線がその先端部の側から前記端子ボックス内に挿入されるように、前記電極線と前記曲げ装置および前記端子ボックスとを相対的に移動させ、これによって、前記端子ボックス内に挿入された前記電極線の先端部を前記曲げ型に当接した後当該曲げ型に沿って曲げて前記端子ボックス内に挿入した方向と反対側の方向から前記端子穴に挿入するとともに、前記端子ボックスの裏面に設けられた接着層によって当該端子ボックスを前記太陽電池本体の表面に接着するステップと、
前記端子穴に挿入された前記電極線の先端部を前記端子に半田付けするステップと、
を有することを特徴とする太陽電池パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−169336(P2012−169336A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27077(P2011−27077)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000204240)株式会社TAIYO (63)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】