説明

端子台発熱検出方式

【課題】端子台に感熱素子を内蔵させずに端子台の接触導体間におけるアーク放電に拠る発熱を検出可能として当該端子台の製造コストを低減すること。
【解決手段】基板1上に実装された端子台3の発熱を検出する方式において、上記基板1上には端子台3から延びて当該端子台3の発熱を基板1へ伝達する熱伝達端子板21を設け、上記基板1上における熱伝達端子板21の近傍に感熱素子23を配置し、上記感熱素子23出力から上記端子台の発熱を検出部27で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線を直接あるいは配線先端の接続端子をネジにより締め付けて端子台に取付ける場合において、ネジ緩み等に起因して端子台内でアーク放電が発生し、このアーク放電により起きる端子台の発熱を検出する方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5を参照して、基板1上に端子台3が実装されている。この端子台3は平面視矩形をなす台座5を備える。この台座5上面には、長手方向複数の絶縁壁7間それぞれに端子接続部9が配置されている。各端子接続部9は、台座5側の受け端子板11と、この受け端子板11上方側の押さえ端子板13と、両端子板11,13それぞれが有する図示略のネジ挿入孔に挿入されて当該両端子板11,13を締め付けるネジ15とを具備している。端子台3に取り付けられる各配線17は先端に接続端子19を具備し、この接続端子19は上記受け端子板11と押さえ端子板13との間に介装されネジ15の締め付けにより両端子板11,13間に固定される。
【0003】
このような端子台3において端子板11,13、ネジ15、接続端子19には配線17側からあるいは端子台3側から電圧が印加されるが、ネジ15に何らかの原因で緩みが生じ、各端子接続部9の受け端子板11、押さえ端子板13、ネジ15および配線17側の接続端子19等、それら接触導体間で接触、非接触が繰り返されるような接触不良が起きている状態で上記電圧が印加されていると、かかる接触導体間にアーク放電が発生しやすくなる。
【0004】
このようなアーク放電は良く知られているように好ましくなく、特に、上記印加電圧が直流電圧であった場合には、発生したアーク放電が消えず継続されてしまう結果、端子台3での発熱が長期に継続し基板1の温度が異常に上昇してくるおそれがある。なお、上記接触不良によるアーク発生に関しては特許文献1や2等に多数開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−115778号公報
【特許文献2】特開平05−297480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記発熱の状態を検出するべく図6で示すように台座5内部の各端子接続部9それぞれに個別に対応した位置に温度ヒューズ23を樹脂モールドして配置すると共に、これらを電源33と共に直列接続し、いずれかの端子接続部9にアーク放電が発生し、そのアーク放電に起因して熱が発生したような場合には、その発熱でアーク放電が発生した端子接続部9に対応する温度ヒューズ23を溶断させ、そのことを検出部27で検出することが考えられている。
【0007】
しかしながら、上記検出方式では、各端子接続部9ごとに温度ヒューズ23を配置する必要があり、端子台3の製造コストが高くなる、という課題があった。
【0008】
なお、配線17の接続端子19、端子台3側の受け端子板11、押さえ端子板13、およびネジ15は名称に限定されず、これらはアーク放電を発生させる接触導体と称することができる。
【0009】
本発明においては、端子台に温度ヒューズ等の感熱素子を設けないことで端子台の製造コストを低減可能とする一方、端子台でアーク放電が発生し端子台が発熱した場合、端子台に温度ヒューズ等の感熱素子を設けていなくても、そのことを確実に検出できるようにすることで、警報等の所要の措置を確実に講じられるようにすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による端子台発熱検出方式は、基板上に実装された端子台の発熱を検出する方式において、一端側が上記端子台に他端側が上記基板に固定されて該端子台の発熱を上記基板へ伝達する熱伝達端子板と、該基板上における上記熱伝達端子板の他端側近傍に配置されて上記基板へ伝達された熱を検出してそれに対応した感熱出力を出力する感熱素子と、上記感熱素子出力から上記端子台の発熱を検出する検出部とを具備したことを特徴とするものであり、端子台が、それに備える接触導体の接触不良によりアーク放電が発生し、端子台が発熱した場合、その発熱は熱伝達端子板から基板へ伝達されると共に、その伝達された発熱の大きさに応じて感熱素子が出力すると、検出部はこの感熱素子出力から端子台の発熱を検出することができるようになっている。
【0011】
上記熱伝達端子板の「近傍」は、端子台の発熱を熱伝達端子板が基板に伝達した際に、感熱素子が感熱出力を出力し、それを検出部が検出することができる領域を含むことができる。
【0012】
以上から本発明では、端子台には従来のように複数の端子接続部個々に感熱素子を設けた構成ではないから、端子台の製造コストを大幅に低減することができる一方、端子台に感熱素子を設けていないが、基板に感熱素子を設け、この感熱素子出力を検出部で検出するようにしたので、端子台の温度上昇を確実に検出し、所要の措置を講じすることができる。
【0013】
なお、感熱素子には、温度ヒューズ、サーミスタ、PN接合を有する半導体、サーモスタット、その他として温度係数を持つ抵抗部品、等がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、端子台には感熱素子を設ける必要がないので、端子台の製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施形態にかかる端子台とそれを実装した基板とを示す図である。
【図2】図2は図1に示す複数の端子接続部のうちの1つを側面から見た断面構成を示す図である。
【図3】図3は図2に示す端子接続部を分解して示す図である。
【図4】図4は図1の端子台の発熱を検出する回路構成を示す図である。
【図5】図5は従来の端子台とそれを実装した基板とを示す図である。
【図6】図6は図5の端子台を正面から見た構成と端子台の発熱を検出する回路構成とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る端子台発熱検出方式を説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態にかかる端子台とそれを実装した基板とを示す図、図2は図1の要部の側面断面構成を示す図、図3はその要部を分解して示す図であり、これらの図において図5、図6と対応する部分には同一の符号を付している。図1ないし図3を参照して、基板1上に一方向に長手で平面視矩形形状となった端子台3が実装されている。この端子台3は上記形状に沿った台座5を備える。台座5上には、上記長手方向に複数の絶縁壁7が配列され、これら絶縁壁7間それぞれに端子接続部9が設けられている。各端子接続部9は、それぞれ、熱伝達端子板21、受け端子板11および押さえ端子板13を具備する。これら端子板21,11,13はこの順序で台座5上に配置されていると共に、これら端子板21,11,13それぞれに設けたネジ挿入孔21c,11a,13aにネジ15が挿入されている。
【0018】
各配線17はそれぞれ先端に接続端子19を具備し、これら接続端子19は受け端子板11と、押さえ端子板13との間に介装され、ネジ15の締め付けにより両端子板11,13間に固定される。
【0019】
なお、上記接続端子19の構造は一例であり、これに限定されるものではなく、配線17端部を直接、両端子板11,13間に固定してもよい。また、両端子板11,13の構造は一例であり、これに限定されるものではない。また、熱伝達端子板21の詳細は、後述する。
【0020】
この端子台3における上記端子台3側の各端子板21,11,13、配線17側の接続端子19を含む接触導体には配線17等から電圧が印加されるので、ネジ15になんらかの原因で緩みが発生してくると、それら端子板21,11,13、接続端子19等の接触導体間で接触や非接触が繰り返されるといった接触不良が起きるような状態で上記電圧印加が継続されると、接触導体間でアーク放電が発生しやすくなる状態となる。
【0021】
なお、この配線17のすべて、あるいはいずれかの配線に例えば太陽電池等の直流電圧を端子台3に入力する配線を含む場合、直流電圧であるので、上記したアーク放電が、一旦、発生してしまうと、上記接触不良状態が継続している限りはアーク放電は消弧しにくい状態となり、端子台3には発熱が蓄積して発熱温度が異常に上昇してくる可能性が高くなる。
【0022】
以上の構成は従来と同様であるが、本実施形態では、以下の構成により、端子台3側には温度ヒューズ23を設置せずに上記端子台3の発熱を速やかに検出し、その温度上昇を可及的かつ迅速に抑制可能として、端子台3のコストを大幅に低減可能としたことに特徴を備えている。
【0023】
以下説明すると、本実施形態では、端子台3の各端子接続部9のいずれにも温度ヒューズ23は設けず、それに代えて、各端子接続部9それぞれから、上記した熱伝達端子板21をアーク放電により発生する発熱を基板1へ速やかに伝達するための端子板として設けている。各熱伝達端子板21は、それぞれ、上記したように、その一端側21aが端子台3の台座5上面と受け端子板11下面との間でネジ15で締め付け固定され、他端側21bはL形状に折り曲げられて基板1上にネジの締め付けあるいは半田付けで固定されている。熱伝達端子板21は、熱伝達性に優れた金属材、例えばAl等で構成されることが好ましい。この場合、熱伝達端子板21は、ネジ15で締め付け固定するのではなく、台座5に直接固定することでもよい。このような場合、ネジ15が緩んでも熱伝達端子板21には他の部位から熱が効率よく伝達されるようにしてもよい。
【0024】
熱伝達端子板21は図3で示すように、一端側21aの形状を平面視矩形形状として端子台3側からの熱伝達を良好にできるよう面積を広くし、また、他端側21bの形状をL形状に折り曲げた細い端子状にして熱を基板1側に効率的に伝達できる形状としている。
【0025】
なお、熱伝達端子板21は、受け端子板11とは別体構成であったが、受け端子板11の一端側を基板1方向に延長して構成することもできる。
【0026】
そして、本実施形態では、以上の構成においてさらに、基板1上の各熱伝達端子板21それぞれの他端側21b近傍に感熱素子の一例である温度ヒューズ23を個別に配置したことを特徴とする。各温度ヒューズ23は、内部抵抗が非常に低く、電流による自己発熱は殆どなく、通常は周囲の温度上昇のみで可溶体が溶断して開路する。温度ヒューズ23は温度上昇により上記溶断してしまうと、それ以降は、温度がその後で下降してきても、復帰することはない。そして、基板1上にはさらにこれら温度ヒューズ23出力から以下で説明する検出、警報、遮断の各動作を行う部品25が実装されている。基板1上では温度ヒューズ23とこれら部品25との間の電気信号の出力のための配線が印刷形成されるが、この場合の図示は図解の都合で省略する。
【0027】
この部品25は、図4で示すように、温度ヒューズ23出力から端子台3の温度上昇を検出する検出部27と、検出部27出力からブザーを鳴動させたり警報ランプを点灯したりして警報動作を行う警報部29と、検出部27出力からブレーカ等の遮断動作を行うことで端子台3への通電を遮断する遮断部31とを含むものであり、温度ヒューズ23は電源33と直列になって検出部27に接続されている。
【0028】
検出部27は、温度ヒューズ23が溶断されず正常であるときは電源33出力を正常な検出入力とし、温度ヒューズ23が溶断されて電源33から出力が入力されなくなると異常な検出入力とする。
【0029】
検出部27は、例えばリレーコイルとリレー接点とで構成することができる。リレーコイルは温度ヒューズ23と電源33とで直列回路を構成し、温度ヒューズ23が溶断されない通常時は電源33電圧で励磁され、リレー接点をオフにし、温度ヒューズ23が溶断した異常時は励磁されなくなって、リレー接点がオフする。このリレー接点のオンオフ出力を検出出力とする。警報部29は、検出部27からの検出出力、例えば、上記リレー接点のオンオフ出力に応答して上記警報動作を行う。また、遮断部31は、ブレーカ等を遮断させる動作を行う。
【0030】
以上において、端子台3のネジ15に緩みがなくアーク放電が発生していないことで発熱が無い通常時では、端子台3から熱伝達端子板21を介して基板1に伝達されてくる熱も無く、基板1上の温度は通常温度である。このような通常時では、温度ヒューズ23の抵抗値が小さく、検出部27には電源33から高圧が入力され、これにより検出部27は温度ヒューズ23が断線していなくて、端子台3の温度は低く、端子台3を構成する部品等の接触導体間にアーク放電が発生していなくてアーク放電に起因した発熱が無いと検出する。そして検出部27からアーク放電が起きていないとする検出出力が出力されると、警報部29および遮断部31は動作しない。
【0031】
一方、端子台3のネジ15に緩みが発生し、これに伴いアーク放電が発生して端子台3の発熱温度が高くなると、その発熱は熱伝達端子板21を介して基板1側に熱伝達される。温度ヒューズ23は熱伝達端子板21の近傍に設けられているので、温度ヒューズ23は温度上昇し、最後には溶断する。
【0032】
その結果、検出部27には電源33から電圧が入力されなくなり、これにより、検出部27は温度ヒューズ23が溶断していて、端子台3を構成する部品等の接触導体間にアーク放電が発生して端子台3の温度が発熱で高くなっていると検出する。検出部27からアーク放電が発生しているとする検出出力が出力されると、警報部29は上記警報動作を行う一方、遮断部31は上記遮断動作を行う。
【0033】
以上説明したように本実施形態では、端子台3が、それに備える接触導体の接触不良によりアーク放電が発生して発熱したような場合、その発熱は熱伝達端子板21から基板1へ伝達されると共に、その伝達された発熱の大きさに応じて温度ヒューズ23が出力するので、温度ヒューズ23出力から端子台3の発熱を検出することができるようになる。
【0034】
以上からこの実施形態では、端子台3において接触導体間でアーク放電が発生して発熱するような場合でも、従来のように温度ヒューズ23を複数の端子接続部9ごとに設ける必要がなくなり、端子台3の製造コストを大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 基板
3 端子台
5 台座
7 絶縁壁
9 端子接続部
11 受け端子板
13 押さえ端子板
15 ネジ
17 配線
19 接続端子
21 熱伝達端子板
23 温度ヒューズ
25 部品
27 検出部
29 警報部
31 遮断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に実装された端子台の発熱を検出する方式において、
一端側が上記端子台に他端側が上記基板にそれぞれ固定されて該端子台の発熱を上記基板へ伝達する熱伝達端子板と、
該基板上における上記熱伝達端子板の他端側近傍に配置されて上記基板へ伝達された熱を検出してそれに対応した感熱出力を出力する感熱素子と、
上記感熱素子出力から上記端子台の発熱を検出する検出部と、
を具備したことを特徴とする端子台発熱検出方式。
【請求項2】
上記端子台の発熱は、端子台を構成する接触導体間で発生するアーク放電に拠る、請求項1に記載の方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−14848(P2012−14848A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147225(P2010−147225)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【Fターム(参考)】