説明

端末機器およびその端末機器を用いた火災報知設備

【課題】演算処理等の各種処理を行っていない状態の消費電流を低減することができる端末機器35およびその端末機器35を用いた火災報知設備を提供する。
【解決手段】火災受信機10からパルス間隔が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信する端末機器35において、低速クロックを発生する低速クロック発生部35fと、高速クロックを発生する高速クロック発生部35eと、タイマ35bと、火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では低速クロックで動作する制御部35cとを備え、制御部35cは、火災受信機10から受信したパルスによる通信割り込みが発生すると、高速クロックにより動作してタイマのタイマ値に基づいて前回受信したパルスとのパルス間隔を判断した後に、低速クロックでタイマを動作させて待機状態に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備用の端末機器およびその端末機器を用いた火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火災報知設備用の端末機器として、例えば、火災受信機と、火災感知器や中継器等の端末機器とを通信線を介して接続して、火災受信機からの制御命令信号を受信した端末機器が火災情報等の応答信号を返送するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような火災報知設備では、通常、火災受信機と端末機器の配線の本数を少なくするために通信線により端末機器に電源も供給している。通信線が電源線を兼ねる場合は、端末機器の消費電流が多くなると通信線の線路抵抗による電圧降下により通信の信号の電圧が低下してしまい通信ができなくなったり、端末機器へ供給される電圧が低下してしまい端末機器の動作が不安定になるという問題点があった。
【0004】
また、上記の問題点を解決するために端末機器の消費電流を低減する方法として、例えば、処理を行っていない状態では、外部からの命令を解読できるほどの低速で演算処理を行い、外部から正規の命令を受信したときには、高速で演算処理を行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−209867号公報
【特許文献2】特開2001−91032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の端末機器は、低速で外部からの命令を解読するとはいえ、外部からの命令を解読できる程度の速度では演算処理を行う必要があり、その演算処理分の消費電流を低減することができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、演算処理等の各種処理を行っていない状態の消費電流を低減することができる端末機器およびその端末機器を用いた火災報知設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の端末機器は、火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス間隔が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、低速クロックを発生する低速クロック発生部と、高速クロックを発生する高速クロック発生部と、タイマと、火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで動作する制御部とを備え、前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスによる通信割り込みが発生すると、前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値に基づいて前回受信したパルスとのパルス間隔を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻るものである。
【0009】
また、本発明の端末機器は、火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス間隔が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、低速クロックを発生する低速クロック発生部と、高速クロックを発生する高速クロック発生部と、タイマと、火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで前記タイマを動作させる制御部とを備え、前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスによる通信割り込みが発生するたびに前記高速クロックにより動作してタイマ値を記憶するとともに、現在のパルスを受信したときの前記タイマのタイマ値と前回パルスを受信したときのタイマ値とに基づいて受信した前記信号のパルス間隔を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻るものである。
【0010】
また、本発明の端末機器は、火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス幅が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、低速クロックを発生する低速クロック発生部と、高速クロックを発生する高速クロック発生部と、タイマと、火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで動作する制御部とを備え、前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスエッジによる通信割り込みが発生すると、前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値に基づいて受信した前記信号のパルス幅を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻るものである。
【0011】
また、本発明の端末機器は、火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス幅が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、低速クロックを発生する低速クロック発生部と、高速クロックを発生する高速クロック発生部と、タイマと、火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで前記タイマを動作させる制御部とを備え、前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスエッジによる通信割り込みが発生するたびに前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値を記憶するとともに、現在のパルスエッジを受信したときの前記タイマのタイマ値と前回パルスエッジを受信したときのタイマ値とに基づいて受信した前記信号のパルス幅を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻るものである。
【0012】
また、本発明の端末機器は、前記制御部が、前記制御命令が自分宛ではないと判断したときは、前記低速クロックで前記タイマを動作させて、受信中の前記制御命令が終了するタイマ値になるまで、前記通信割り込みが発生しても前記高速クロックによる動作を行わないものである。
【0013】
また、本発明の火災報知設備は、上記いずれかの端末機器を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明における端末機器は、制御命令の判断をするときに高速クロックを利用するが、待機状態においては低速クロックで動作している。そのため、通信の内容が判断できないほどの低速クロックで動作させることができるので、消費電流を低減することができる。
【0015】
また、本発明における端末機器は、制御命令が自分宛でないと判断したときには高速クロックによる動作をさせないため、消費電流をさらに低減することができる。
【0016】
また、本発明における火災報知設備は、上記の効果を有する端末機器を用いているので、消費電流を低減することができ、火災受信機に備える電池の容量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1および2における火災報知設備(R型)を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1および2における火災報知設備のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における火災報知設備の火災受信機と火災感知器との信号伝送の例を示す波形図および高速クロックと低速クロック動作の切り換えタイミングを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信動作の別の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2における火災報知設備の火災受信機と火災感知器との信号伝送の例を示す波形図および高速クロックと低速クロック動作の切り換えタイミングを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2における火災報知設備の通信動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態2における火災報知設備の通信動作の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の火災報知設備について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における火災報知設備(R型)を示す概略構成図である。
火災受信機10は、信号線2を介して、光電式アナログ感知器31、熱アナログ感知器32、アドレッサブル発信機33、感知器用中継器11、ベル用中継器12および防排煙制御用中継器13等(後述の端末機器35に相当)が接続されている。
【0020】
また、感知器用中継器11には、感知器用回線1を介して火災感知器30(後述の端末機器35に相当)が複数接続されている。また、ベル用中継器12にはベル40が接続されている。また、防排煙制御用中継器13には、防火戸50、排煙機51、シャッタ52およびたれ壁53が接続されている。なお、感知器用回線1及び信号線2が本発明における通信線に相当する。
また、火災受信機10は、図示しない電池を備えている。
【0021】
このような構成により、火災受信機10は、あらかじめ決められた様々な場所に設置されている種々の端末機器から情報を収集している。そして、火災受信機10は、例えばアドレッサブル発信機33の押し釦が押されている際に火災が発生したことを検知する。また、感知器用中継器11から、火災発報している火災感知器30が有るという状態情報を受信した場合にも火災が発生したことを判断する。
そして、火災受信機10は、火災と判断した場合、火災警報を行うとともに、例えばベル用中継器12に制御命令を送信してベル40を鳴動させる。また、防排煙制御用中継器13に制御命令を送信して、防火戸50等を作動させて延焼を防ぐ等の動作を行う。
火災受信機10は、通常は商用電源から電源を供給され動作するが、停電時においては、電池に切り換えて火災報知設備を動作させることができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1における火災報知設備のブロック図である。
図2における端末機器35は、図1に示した光電式アナログ感知器31等である。また、以下の説明において、火災受信機10を図1に示した感知器用中継器11に置き換えてもよく、その場合、端末機器35は、図1の火災感知器30に相当する。また、端末機器35は、火災報知設備に用いられ、火災受信機10等の上位の機器と通信を行うものであればよく、図1に示したものに限られない。
【0023】
図2に示すように、端末機器35は、火災受信機10および他の端末機器35と信号線2で接続する送受信部35aと、送受信部35aと接続した制御部35cを有している。また、端末機器35は、制御部35cに接続するタイマ35b、記憶部35d、高速クロック発生部35eおよび低速クロック発生部35fを有している。
【0024】
送受信部35aは、火災受信機10からの制御命令を受信して、自己の返送すべきスロットに状態情報を送信して通信を行う。送受信部35aは、送受信する際は、パルスの発生(パルスの立ち下がり)により火災受信機10を検出すると送受信部35aは割り込み信号を出力して制御部35cに通信割り込みをかける。なお、端末機器35と火災受信機10の通信方法について、詳しくは後述する。
【0025】
また、制御部35cは、例えばマイクロコンピュータ等から構成され、端末機器35全体の制御を行っている。制御部35cは、タイマ35b、高速クロック発生部35eおよび低速クロック発生部35f等を制御する。記憶部35dは、全体のプログラムが格納されていて、また、端末機器35が、例えば光電式アナログ感知器31であれば図示しない煙センサからの火災信号や煙センサの故障の情報、タイマ値およびタイマ値に基づくパルス間隔・幅などを一時的に記憶するものである。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の火災受信機10と端末機器35との信号伝送の一例を示す波形図および高速クロックと低速クロック動作の切り換えタイミングを示す図である。ここでは、(1)〜(15)が図3の丸数字にそれぞれ対応している。
端末機器35には、個別のアドレスが付与されており、火災受信機10は、そのアドレスに基づいて端末機器35をグループ化して、例えば15アドレス単位で火災感知器30のデータを収集する。火災受信機10は、端末機器35のデータ収集において、起動パルス、基準パルス(1)およびコマンドCM1(2)〜(5)を送出する。
【0027】
火災受信機10は、データ収集を開始する際、まず起動パルスを送出し、次に基準パルスを送出する。基準パルスは、伝送上のパルス間隔の基本長(例えば4ms)となるパルスであり、その間隔は立下りエッヂ間隔(ハイ(Hi)からロー(Lo)への変化タイミングと、次のハイからローへの変化タイミングの間)である。
【0028】
コマンドCM1は、端末機器35への制御コマンドであり、1つの立下りエッヂ間隔で2ビットのコードを示している。このエッヂ間隔とコードの組み合わせは、例えば4msが00b、6msが01b、8msが10b、10msが11bである。このように、8ビット(b7〜b0)のコードを4つのパルス間隔で示している。
【0029】
これらの組み合わせによって、様々なアドレスの端末機器35のデータを収集するポーリングにおける制御命令であるコマンドCM1を形成する。火災受信機10は、コマンドCM1を送信することで、複数接続されている端末機器35の状態情報を収集するため、何台かを1つのグループとして、端末機器35に問いかけを行う。端末機器35は、その問いかけに対して、端末機器35から火災受信機10への返信タイミングを定めるスロット0〜14のうちの自己のアドレスに応じたスロットの基準パルスに続いて状態情報を示す返送パルスを火災受信機10に返送する。
【0030】
端末機器35は、コマンドCM1を解析して制御命令を認識し、自分宛であれば、返信タイミングであるスロット0〜14においても通信割り込みにより高速クロックを動作する。端末機器35は、例えば図3に示すように火災受信機10の(7)〜(10)のパルス制御命令に対し、通信割り込みのたびに高速クロックを動作して自己のアドレスに応じた返信スロットを検出して(11)〜(14)のように応答を返す。ここで、スロット1に返信する端末機器35を例とすると、火災受信機10からの制御命令に対する状態情報である返送パルス(12)の返送中は(15)のように高速クロックで動作する。
なお、この制御命令の認識の方法は、パルス間隔をタイマ35bを用いて算出し、そのパルス間隔に応じて制御命令を判断するものである。この、パルス間隔の算出について、詳しくは後述する。
【0031】
ここで、「状態情報」とは、端末機器35が火災感知器30である場合は、検出した火災現象の物理量データまたは火災信号である。また、端末機器35が感知器用中継器11である場合は、オンオフ式火災感知器やガス漏れ検知器が接続されているときに、火災信号やガス漏れ信号の有無を示すデータである。また、防火戸や地区ベル等の被制御機器が接続されているときに、これらの機器の開閉状態や動作中か否かを示すデータあるいは鳴動中か否かを示すデータである。また、端末機器35が、感知器用中継器11のように自動試験機能を備えたものである場合、例えば異常状態を示す異常信号のデータである。
【0032】
一方で、端末機器35は、CM1の制御命令が自分宛でなかった場合は、受信中の制御命令が終了するタイマ値になるまで、通信割り込みが発生しても高速クロックによる動作を行わずに低速クロックでの動作を続ける(スロット0〜14の期間は、高速クロックによる動作を行わない。)。これにより、不要に高速クロックで動作させる必要がないため、消費電流を低減することができる。
なお、火災受信機10から端末機器35への通信、端末機器35から火災受信機10への通信は便宜的に分けて書いてあるが、同一配線を介して通信しているため、実際は重なっている。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信動作の一例を示すフローチャートである。
端末機器35は、火災受信機10との通信を行っていない待機状態においては、制御部35cが低速クロック発生部35fに指令を送り、低速クロックで動作している(ステップ1)。そして、ステップ2において、送受信部35aが火災受信機10からの通信により制御部35cに通信割り込みをかけた場合は、制御部35cは高速クロック発生部35eに指令を送り、高速クロックで動作させる(ステップ3)。そして、制御部35cは、ステップ4においてタイマ35bが既に動作中であれば、タイマ値を読み込み、タイマ値からパルス間隔を算出し(ステップ5−1)、タイマ35bをリセットする(ステップ6−1)。
【0034】
制御部35cは、ステップ6−1のタイマリセット後、またはステップ4においてタイマが動作中でなければ、タイマ35bを動作させ(ステップ7)、再び低速クロックで動作させる(ステップ8)。なお、通信処理における最初の通信割り込みにおいては、タイマ35bは動作していないのでステップ4の判定処理でタイマ35bが動作中でないと判定され、タイマ35bを動作させることとなる。また、制御部35cは、ステップ5−1でタイマ値から算出したパルス間隔に応じて火災受信機10からの制御命令の内容を認識する。
【0035】
図5は、本発明の実施の形態1における火災報知設備の通信動作の別の例を示すフローチャートである。
図5のフローチャートにおいて、ステップ1〜4および8は図4と同じであるため、説明を省略する。図5において、制御部35cは、ステップ4でタイマ35bが動作中であった場合、ステップ5−2においてタイマ値を読み込み、タイマ値を記憶部35dに記憶する。そして、制御部35cは、ステップ6−2において、タイマ値を読み込み、記憶部35dに記憶されている前回のタイマ値を用いて現在のタイマ値−前回のタイマ値を計算することによりパルス間隔を算出する。また、ステップ4において、タイマが動作中でないと判定した場合、ステップ7においてタイマを動作させる。このステップ7の処理は、通信処理における最初の通信割り込みのときのみ行われる。
【0036】
端末機器35は、通信において図4または図5に示した動作を行うため、火災受信機10と通信を行っている期間の全てにおいて高速クロックで動作するのではなく、通信中であっても火災受信機10からのパルスの発生(パルスの先頭)により通信割り込みがあったときのみ高速クロックで動作し、タイマの動作の始動処理およびパルス間隔の算出等の負荷の大きい処理(多くのクロック数を必要とする処理)を行う。また、待機状態においては低速クロックで動作し、既に動作しているタイマのカウントアップのみを行っており、送られた命令の解読等をする必要がない。そのため、端末機器35は、低速クロック動作において、タイマのカウントアップのみのために必要な速度で動作すればよいため、命令の解読等の処理を考慮した場合よりも低速で動作できる。これにより、消費電流を低減することができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態1における端末機器35は、通信割り込みにより制御命令の判断をするときに高速クロックを利用するが、それ以外の待機状態においては、通信の内容が判断できないほどの低速クロックで動作させることができるので、消費電流を低減することができる。
また、端末機器35は、制御命令が自分宛でないときには高速クロックによる動作をさせないため、消費電流をさらに低減することができる。
なお、端末機器35は、制御命令が自分宛であるときにおいても、自己のアドレスに応じた返送スロット以外の返送スロットの基準パルスおよび他の端末機器35の返送パルスの発生では高速クロックによる動作をさせないようにして、消費電流をさらに低減するようにすることもできる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1では、端末機器35がパルス間隔に応じて制御命令を判断する例について説明したが、本実施の形態2では、パルス幅に応じて制御命令を判断する例について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2における火災報知設備の火災受信機と火災感知器との信号伝送の例を示す波形図および高速クロックと低速クロック動作の切り換えタイミングを示す図である。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0039】
本実施の形態2において火災受信機10は、実施の形態1と同様に制御命令であるコマンドCM1を送信することで、複数接続されている端末機器35の状態情報を収集するため、何台かを1つのグループとして、端末機器35に問いかけを行う。端末機器35は、その問いかけに対して、自己のアドレスに応じてタイミングをはかり、状態情報を火災受信機10に返送する。
【0040】
図6においては、火災受信機10から端末機器35へのパルスエッジを検出すると送受信部35aは割り込み信号を出力して制御部35cに通信割り込みをかける。その割り込みにより端末機器35は、高速クロックの動作を行う。このパルスエッジとは、パルスの発生(パルスの立ち下がり)および終了(パルスの立ち上がり)の双方を意味している。そして、パルスの発生から終了までのタイマ値、つまりパルス幅によって、端末機器35は制御命令の内容を判断している。このパルス幅の算出の方法について、詳しくは以下に示す。
【0041】
図7は、本発明の実施の形態2における火災報知設備の通信動作の一例を示すフローチャートである。図7において、ステップ1〜4、7および8は実施の形態1の図4に示したものと同じであるため、説明を省略する。
【0042】
制御部35cは、ステップ4においてタイマが動作中であれば、通信割り込みがパルス発生かパルス終了かを判断する(ステップ9)。そして、制御部35cは、ステップ9において、パルスの発生であれば、タイマリセットを行う(ステップ6−1)。また、パルスの終了であれば、タイマ値を読み込み、タイマ値からパルス幅を算出した(ステップ5−1)後、タイマリセットを行う(ステップ6−1)。また、制御部35cは、上述したようにステップ5−1でタイマ値から算出したパルス幅に応じて火災受信機10からの制御命令の内容を判断する。
【0043】
図8は、本発明の実施の形態2における火災報知設備の通信動作の別の例を示すフローチャートである。なお、図8のフローチャートにおいて、ステップ1〜4および8は、実施の形態1で示した図5と同じであるため、説明を省略する。
【0044】
図8において、制御部35cは、ステップ4でタイマ動作中であった場合、通信割り込みがパルス発生かパルス終了かを判断する(ステップ9)。そして、制御部35cは、ステップ9において、パルスの発生であれば、タイマ値を読み込み、タイマ値を記憶部35dに記憶する(ステップ5−2)。また、パルスの終了であれば、タイマ値を読み込み、記憶部35dに記憶されている前回のタイマ値を用いて現在のタイマ値−前回のタイマ値を計算することによりパルス幅を算出する(ステップ6−2)。そして、制御部35cは、ステップ5−2またはステップ6−2の処理の後、低速クロックで動作させる。
【0045】
端末機器35は、通信において図7または図8に示した動作を行うため、火災受信機10と通信を行っている期間の全てにおいて高速クロックで動作するのではなく、通信中であっても火災受信機10からのパルスエッジにより通信割り込みがあったときのみ高速クロックで動作し、タイマの動作の始動処理およびパルス幅の算出等の負荷の大きい処理(多くのクロック数を必要とする処理)を行う。また、待機状態においては低速クロックで動作し、既に動作しているタイマのカウントアップのみを行っており、送られた命令の解読等をする必要がない。そのため、端末機器35は、低速クロック動作において、タイマのカウントアップのみのために必要な速度で動作すればよいため、命令の解読等の処理を考慮した場合よりも低速で動作できる。これにより、消費電流を低減することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態2における端末機器35は、通信割り込みにより制御命令の判断をするときに高速クロックを利用するが、待機状態においては、通信の内容が判断できないほどの低速クロックで動作させることができるので、消費電流を低減することができる。
また、端末機器35は、制御命令が自分宛でないときには高速クロックによる動作をさせないため、消費電流をさらに低減することができる。
また、本発明における火災報知設備は、上記の効果を有する端末機器を用いているので、消費電流を低減することができ、火災受信機に備える電池の容量を小さくすることができる。
なお、各実施の形態では、低速クロックと高速クロックとを切り換えて端末機器35を制御したが、低速クロックを継続して動作させて、通信割り込みがあったときのみ同時に高速クロックを動作させて、負荷の大きい処理を行う様にしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 感知器用回線、2 信号線、10 火災受信機、11 感知器用中継器、12 ベル用中継器、13 防排煙制御用中継器、30 火災感知器、31 光電式アナログ感知器、32 熱アナログ感知器、33 アドレッサブル発信機、35 端末機器、35a 送受信部、35b タイマ、35c 制御部、35d 記憶部、35e 高速クロック発生部、35f 低速クロック発生部、40 ベル、50 防火戸、51 排煙機、52 シャッタ、53 たれ壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス間隔が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、
低速クロックを発生する低速クロック発生部と、
高速クロックを発生する高速クロック発生部と、
タイマと、
火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで動作する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスによる通信割り込みが発生すると、前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値に基づいて前回受信したパルスとのパルス間隔を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて、待機状態に戻ることを特徴とする端末機器。
【請求項2】
火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス間隔が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、
低速クロックを発生する低速クロック発生部と、
高速クロックを発生する高速クロック発生部と、
タイマと、
火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで前記タイマを動作させる制御部と
を備え、
前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスによる通信割り込みが発生するたびに前記高速クロックにより動作してタイマ値を記憶するとともに、現在のパルスを受信したときの前記タイマのタイマ値と前回パルスを受信したときのタイマ値とに基づいて受信した前記信号のパルス間隔を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻ることを特徴とする端末機器。
【請求項3】
火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス幅が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、
低速クロックを発生する低速クロック発生部と、
高速クロックを発生する高速クロック発生部と、
タイマと、
火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで動作する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスエッジによる通信割り込みが発生すると、前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値に基づいて受信した前記信号のパルス幅を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻ることを特徴とする端末機器。
【請求項4】
火災受信機と通信線を介して接続され、前記火災受信機からパルス幅が異なる信号を組み合わせた制御命令を受信して、火災情報等の応答信号を返送する端末機器において、
低速クロックを発生する低速クロック発生部と、
高速クロックを発生する高速クロック発生部と、
タイマと、
火災の検出や故障の判断などの各種処理を行う場合には前記高速クロックで動作し、各種処理を行っていない待機状態では前記低速クロックで前記タイマを動作させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記火災受信機から受信したパルスエッジによる通信割り込みが発生するたびに前記高速クロックにより動作して前記タイマのタイマ値を記憶するとともに、現在のパルスエッジを受信したときの前記タイマのタイマ値と前回パルスエッジを受信したときのタイマ値とに基づいて受信した前記信号のパルス幅を判断した後に、前記低速クロックで前記タイマを動作させて待機状態に戻ることを特徴とする端末機器。
【請求項5】
前記制御部は、前記制御命令が自分宛ではないと判断したときは、前記低速クロックで前記タイマを動作させて、受信中の前記制御命令が終了するタイマ値になるまで、前記通信割り込みが発生しても前記高速クロックによる動作を行わないことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の端末機器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の前記端末機器を備えたことを特徴とする火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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