説明

竹材工芸品とその製造方法

【課題】
解決しようとする課題は、燻煙する際に、燻煙しない部分を意図的に作るために、竹材の表面の一部に覆い材を設け、該覆い材が高温で燻焼している間、竹の表面から剥がれる又は焼けてしまうことのない方法を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、燻煙する前の竹材の表面に貼り付ける覆い材に、和紙をシ−ル状にしたものを用いたことを特徴としている。和紙の片面に粘着材を塗布しシ−ル状とし、該和紙を文字又は図案として型取りし、燻煙前の竹材の表面に貼り付けた後に燻煙する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙による竹材工芸品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、竹を利用する機会が大幅に減少してしまい、車等で走行中に周辺を見渡すと、畑や山に向かって大きく広がりを見せている竹林の光景を良く見かけるが、その竹林も管理不十分により荒れ始めてきている。竹は繁殖力があり、整備したくても高齢化等の関係で、ままならない状況や生活習慣の違いから必要性も減り、ともすると竹が厄介者扱いされております。日本文化には馴染みの深い竹であるが、その利用範囲が限定される等の理由で、新たな利用の機会もなく放置されているのが実状である。
一方、美術品等においては、様々な作品が観賞用として収集され、自宅等で展示されているが、竹を素材とした作品は限られているのが実情である。
【0003】
竹は古来日本の伝統的な素材として、食器類をはじめとして様々な道具へ利用されてきているが、時代と共に竹から樹脂や木材等の他の素材へ移行され、竹を使用する機会が年々減少してきている。竹を利用した観賞用としての美術品においては、古来より竹細工等が多く製作され、流通している。しかしながら、花瓶等のような置物として利用する場合、年月の経過により竹の表面が劣化して変色する等の外観上観賞用としては不適なこともあり、特開2002−301705号において、竹材を燻煙して、表面に光沢のある黒色の燻し焼き処理をすることにより、竹材工芸品を製造する方法について記載されているが、本発明の特徴は、竹材を燻焼するだけでなく、燻煙する際に、燻煙する部分と燻煙しない部分を意図的に作ることで、竹材の表面に文字や図案等を形成することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−301705号(2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、燻煙する際に、燻煙しない部分を意図的に作るために、竹材の表面の一部に覆い材を設け、該覆い材が高温で燻煙している間、竹の表面から剥がれる又は焼けてしまうことのない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燻煙する前の竹材の表面に貼り付ける覆い材に、和紙をシ−ル状にしたものを用いたことを特徴としている。和紙の片面に粘着材を塗布しシ−ル状とし、該和紙を文字又は図案として型取りし、燻煙前の竹材の表面に貼り付けた後に燻煙する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燻煙された竹材の表面には、燻煙された黒く光沢のある部分と、燻煙されない部分に文字や図案等が白抜きに形成され、風合いと美観を備えた竹材の工芸品として観賞することが可能となる。さらに、和風の家屋の表札始めホテル・旅館等のル−ム名・料理店等のお品書き等と、アイディア次第であらゆる分野に使用可能となり、荒廃した竹林から有料で竹を購入し、商品化する事で、竹林の再生が可能となる。
【0008】
竹材の利用機会が増えることで、竹が大切な資源として売買されるようになり、その事によって荒れた竹林が本来あるべき姿へ復帰させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】覆い材の断面図
【図2】竹材に覆い材を貼り付けた状態の一例の斜視図
【図3】燻煙後の竹材の一例の斜視図
【図4】燻煙炉の一例の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の詳細について、図面を引用して説明する。
【実施例1】
【0011】
和紙の片面に粘着材を塗布してシール状とし、文字又は図案等に型取りをして覆い材4とする。竹材を工芸品となる形状に加工し、前記覆い材4を貼りつける。和紙はシールとなっているものを調達してもよい。文字や図案等は、コンピュータを用いて、型取りしてもよい。図1は覆い材4の一例の断面図、図2は竹材に覆い材4を貼り付けた状態の一例の斜視図である。
【0012】
燻煙炉5の燻煙室7に、覆い材4を貼り付けた竹材3を並べ、燃焼室8へは燃焼材9となる木材等を入れ着火する。燃焼室8からの熱や煙が燻煙室7に流入し竹材3を燻煙する。燻煙室7の温度は、90度〜120度の間で保持し、2日間燻煙する。その後、火を消し5日間放置することで自然冷却し、竹材3を燻煙室7から取り出す。燻煙後の竹材3から、覆い材4を剥離して、燻煙した際に竹の表面に付着した脂等を、綺麗にスポンジ等を用いて水で洗い流す。その後、手作業又は機械器具を用いて竹材3の表面を磨く事で、非常に味のある光沢が表れ品位も高まり、完成度の高い竹材工芸品が完成する。図3は燻煙後の竹材の一例の斜視図である。
【0013】
覆い材4の材質は、和紙が望ましい。数種類の素材を用いて覆い材4として試験を行った結果、和紙製の覆い材が熱に対する耐久力があり、文字や図案の再現に最適であることを究明した。一般的な木材パルプ製の紙では、熱により焼けてしまい輪郭の整った文字や図案が再現されず、樹脂製の場合は熱により収縮してしまい、文字や図案の形成ができない。金属製の場合は、竹の太さにより、覆い材4そのものが竹に密着しないため、空気が入って本来の文字や図案等を再現できない、また熱により竹材が焼けてしまい、均一な色彩が再現されない。
【実施例2】
【0014】
実施例1で竹材3に文字や図案を形成した場合は、覆い材4を貼り付けた部分は燻煙されずに竹材本来の表面が表れることになり、年月の経過により竹の表面が劣化する場合があるため、この文字や図案部分にも燻煙を施すことで、光沢のある表面を形成し長期間光沢を維持することができる。
【0015】
この場合、覆い材4を貼りつける前に、竹材3を一度燻煙し、その後に実施例1の工程を繰り返すことで、実現することが可能となる。燻煙を2度行うこととなるため、文字や図案部分以外の竹の表面の黒い光沢がやや濃く付き、更に文字や図案部分との輪郭の鮮明さを失う欠点はあるが、長期に渡り竹材3の光沢を維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
この文字や図案を形成した竹材の工芸品は工業生産が可能であり、供給者による製造、販売が可能である。さらに、和風の家屋の表札始めホテル・旅館等のル−ム名・料理店等のお品書き等と、アイディア次第であらゆる分野に使用可能となり、荒廃した竹林から有料で竹を購入し、商品化する事で、竹林の再生が可能となる。
【符号の説明】
【0017】
1 和紙 6 仕切り壁
2 粘着材 7 燻煙室
3 竹材 8 燃焼室
4 覆い材 9 燃焼材
5 燻煙炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹材を燻煙する前に、型取りした覆い材4を竹材の表面に貼り付け、燻煙後に覆い材4を剥離して文字や図案を形成することを特徴とする竹材工芸品。
【請求項2】
前記、覆い材4の素材に和紙を使用したことを特徴とする請求項1記載の竹材工芸品。
【請求項3】
竹材を燻煙する前に、型取りした覆い材4を竹材の表面に貼り付け、燻煙後に覆い材4を剥離して文字や図案を形成することを特徴とする竹材工芸品の製造方法。
【請求項4】
前記、覆い材4の素材に和紙を使用したことを特徴とする請求項1記載の竹材工芸品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−5639(P2011−5639A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148159(P2009−148159)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(309010070)
【Fターム(参考)】