説明

竹製埋設用部材の製造方法及びその製造装置

【課題】竹の細胞内腔が圧縮され密度が高められ、硬く機械的強度が高く強度ばらつきの小さな竹製埋設用部材を製造でき、また圧縮成形する金型の温度、圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れ、またバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れ、さらに耐腐朽性を向上させる竹製埋設用部材の製造方法及びその方法を実現するための竹製埋設用部材の製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の竹製埋設用部材の製造方法は、籤状或いは筮竹状の複数の竹片16乃至は竹繊維と接着剤を筒状収容部11内に収容する竹材収容工程と、竹片16乃至は竹繊維を筒状収容部11から押し出し筒状収容部11より小径の筒状金型4内に押入しながら圧縮する押入圧縮工程と、型締めした筒状金型4内で竹片16乃至は竹繊維を加熱又は部分的に加熱して接着し圧密材を形成する圧密材形成工程と、を備えた構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築の省力化、合理化等を目的として梁と軒桁、軒桁と柱、胴差しと通し柱、柱と柱等の構造部材の接合を目的として構造部材間に埋設して用いられる竹製接合具、コンクリート等の躯体の補強を目的として躯体内に埋設して用いられる竹筋等の竹製埋設用部材の製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建築の省力化、合理化等を目的として梁と軒桁、軒桁と柱、胴差しと通し柱、柱と柱等の構造部材の接合を目的として、接合部材間に埋設して用いる接合具が開発されている。このような接合具は、例えば特開平5−331919号公報に記載されたものが知られている。しかし、金属製や合成樹脂製等で形成されており硬いため、建物の解体時に鋸やチェンソーで切断するのが困難で、また分別が必要なため部材のリユースやリサイクルが困難であるという問題を有していた。
近年、竹で形成された棒状部材と、棒状部材の長手方向に形成され棒状部材の両端部で開口する接着剤流入用の中空部と、を備えた竹製接合具が開発されている。この竹製接合具は、構造部材の当接面に穿孔された一対の連通孔に挿着され、接着剤注入用の中空部に接着剤を注入して連通孔と棒状部材の間に溢れ出させて充填し、連通孔内の接着剤を硬化させて構造部材間を接合するものである。竹は剛性が大きく反発力が高く、強靭かつ低伸縮性で割裂性に優れた特性を有しているため、機械的特性の優れた接合具が製造でき、さらに建物の解体時に鋸やチェンソーで容易に切断でき、また分別が不要で部材のリユースやリサイクルが容易という特徴を有している。
また、従来、鋼材の節約を目的として、鉄筋コンクリートの鉄筋の代わりに竹材を用い補強した竹筋コンクリートが研究されていた。
【0003】
しかし、竹製接合具や竹筋等の構造部材内に埋設して用いられる竹製埋設用部材は、金属製の接合具や鉄筋と比較して、曲げ強さ等の機械的強度が著しく低いという問題があった。また、竹は外皮側に近い部分の繊維の密度が高く繊維の粗密のばらつきがあるので、竹製接合具や竹筋は、機械的強度のばらつきが生じ易いという問題があった。
これらの問題を解決するための従来の技術としては、(特許文献1)に「竹材を周方向に複数に分割した長尺の分割竹材に煮沸等の柔軟処理を施した後、圧搾して極細竹材を形成し、極細竹材に樹脂を加えて加圧し棒状に成形する竹を原材料とした加圧成形方法」が開示されている。
(特許文献2)に「裁断した単板を接着剤を介在して所定枚数積層して単板積層構体を構成し、この単板積層構体を高温高圧容器内で高温高圧スチームの雰囲気中に置いて高温高圧スチームにより加熱軟化した後、この状態で、単板積層構体に機械的な圧縮力を加えて当該単板積層構体の各単板を断面積比で1/2〜1/3程度に圧縮成形し、この後、単板積層構体の圧縮成形による変形を高温高圧スチームの雰囲気中で固定化する強化積層木材の製造方法」が開示されている。
【特許文献1】特開平7−285105号公報
【特許文献2】特開平5−77203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、極細竹材に樹脂を加えて加圧成形する際に加熱していないので竹材組織を軟化させ難いため、圧縮率が小さく繊維の密度を高めることができず、得られた成形体の機械的強度が低く、またばらつきも大きいという課題を有していた。
(2)(特許文献2)に開示の技術は、単板積層構体を高温高圧容器内で高温高圧スチームの雰囲気中に置いて加熱軟化し高温高圧容器内で圧縮成形するので、単板積層構体の各単板の内部に形成されている内腔部分が小さくなって機械的強度が高く硬い木質が得られるが、高温高圧容器が必要なので装置が大型化し莫大な設備投資が必要となり、また装置の操作が複雑化し、さらに高温高圧容器内の温度や圧力、圧縮成形する金型の温度等の品質管理に必要な条件数が多く煩雑であり、品質管理が困難になるという課題を有していた。
(3)単板積層構体を高温高圧容器内で高温高圧スチームにより加熱軟化した後、圧縮成形し、次いで圧縮させた単板積層構体の形状の固定化を行うので、高温高圧容器内のバッチ毎の処理時間が長く量産性に欠けるという課題を有していた。また、単板積層構体の中心部に蒸気が浸透し難く、単板積層構体の外周部と中心部で圧密度に差が生じ製品の斑が生じ易いという課題を有していた。
(4)一回のバッチ処理が終了したら、高温高圧容器を脱気して高温高圧スチームを抜き、高温高圧容器を開けて圧縮成形された単板積層構体を取り出し、次に新しい単板積層構体を高温高圧容器内に入れた後、温度が低下した高温高圧容器内を再び高温高圧スチームで満たさなければならないので、高温加圧容器の加熱・冷却に時間を要し量産性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、竹の細胞内腔が圧縮され密度が高められ、硬く機械的強度が高く強度ばらつきの小さな竹製埋設用部材を製造でき、また金型の温度、圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れ、またバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れ、さらに耐腐朽性を向上させる竹製埋設用部材の製造方法及びその方法を実現するための竹製埋設用部材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の竹製埋設用部材の製造方法及びその製造装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の竹製埋設用部材の製造方法は、横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する管状部材を備えた竹製埋設用部材の製造方法であって、籤状或いは筮竹状の複数の竹片乃至は竹繊維と接着剤を筒状収容部内に収容する竹材収容工程と、前記竹片乃至は前記竹繊維を前記筒状収容部から押し出し前記筒状収容部より小径の筒状金型内に押入しながら圧縮する押入圧縮工程と、型締めした前記筒状金型内で前記竹片乃至は前記竹繊維を加熱又は部分的に加熱して接着し圧密材を形成する圧密材形成工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)筒状収容部内に収容した竹片や竹繊維を押し出しながら筒状金型に押入し圧縮成形するので、筒状収容部への竹片や竹繊維の充填量を一定にするだけで筒状金型のキャビティの容積に応じた一定の圧縮密度で圧縮でき、寸法及び強度等の性能のばらつきを小さくできる。
(2)筒状金型を加熱してキャビティ内で加熱、加圧するため、大型の高温高圧容器が不要で、万能試験機や市販のプレス機で製造できるので設備投資を少なくでき、また筒状金型の温度、押し出し、押入のための押圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れる。
(3)容積の小さな筒状金型のキャビティ内で竹片や竹繊維を高温の水蒸気によって加熱軟化、圧縮するので、一回のバッチ処理が終了した後、わずかな時間でキャビティ内を高温の水蒸気雰囲気にすることができバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れる。
(4)籤状或いは筮竹状の竹片や竹繊維を用いているので、長手方向を揃えて収容するだけで竹材の繊維方向を容易に一定にでき、曲げ強さ等の機械的強度の大きな圧密材を得ることができる。
(5)密閉されたキャビティ内で竹片や竹繊維が高温高圧の水蒸気で満たされると、竹片や竹繊維に含まれるヘミセルローズとリグニンが部分的に解重合し、その結果、竹材腐朽菌の生育を阻害させる性質をもったフェノール化合物やフルフラール化合物等が生成され竹製埋設用部材の耐腐朽性を向上させる。
(6)筒状金型内において竹片乃至は竹繊維を誘導加熱等により部分的に加熱することにより、成形した圧密材の加熱した部分は成形後に加熱や加水、水蒸気を与えても復元せず、一方、加熱していない部分又は温度を調節して低温を維持した部分は成形後に加熱や加水、水蒸気を与えると復元するため、例えば建築構造部材の接合具等に用いた場合、施工時の加熱処理等により変形する特性を有する圧密材を得ることができる。したがって、束状の竹片乃至は竹繊維の両端部側は加熱せず中間部は加熱して圧密材を成形した場合、この圧密材を梁と軒桁、軒桁と柱、胴差しと通し柱、柱と柱等の構造部材の当接面に穿孔された一対の連通孔に挿着し、該連通孔内に加熱や加水、水蒸気を注入すれば、圧密材の両端部のみが膨らみ、略ハンマー状に変形するため接着材を用いなくても構造部材間を強固に接合できる。
【0007】
ここで、竹製埋設用部材の棒状部材(圧密材)としては、断面形状が略円形、略楕円形、又は略三角形,略四角形,略六角形等の略多角形等の棒状部材や、該棒状部材の略中央部に略円形断面や略多角形断面の中空部が形成されたものが用いられる。
【0008】
竹材としては、マダケ,ハチク,モウソウチク,クロチク,メダケ等の竹や、ネザサ,スズダケ,ヤダケ,クマザサ等の笹が用いられる。
竹片としては、円筒状の竹材を長さ方向に、目的とする竹製埋設用部材の棒状部材の長さよりやや短めに切断し、さらに縦方向に棒状又は籤状或いは筮竹状や線状の竹片に分割したもので表皮があるものはそれを除去したものが用いられる。さらに短く切断したものも用いることができる。竹材は、節を避けて用いてもよいし、節を抜いて節の突起を削ったものを用いることもできる。節の突起を削った竹材から製造された長尺の竹片を用いることで、長尺の連続した圧密材を製造することもできる。
【0009】
竹繊維としては、竹片を長さ方向に割裂状に細くしたもの、ローラ、プレス等の任意の加圧手段等を用いて繊維状に解したもの、高温高圧状態の竹材を急激に常圧の状態等にして爆砕して繊維状にしたもの、竹材を原料とするパルプ、竹材を原料とするセルロースレーヨン繊維糸,セルロース繊維糸等の繊維糸等が用いられる。
【0010】
竹片や竹繊維は、切り出して間もない竹材から製造した場合は水分を多く含んでいるため、筒状収容部に収容して又は筒状金型で型締めして高温下で竹片や竹繊維に含まれる水分が蒸発し、筒状収容部や筒状金型内が高温又は高温高圧の水蒸気で満たされるので、竹片等に筒状収容部や筒状金型の内壁の熱が良く伝わり軟化され易く容易に圧縮される。
なお、乾燥させた竹材を用いる等の場合は、筒状収容部内に収容する前に竹片や竹繊維を水に浸漬して適度な水分を補っておくのが好ましい。竹片等の軟化を促進させ圧縮成形時に圧密材が割れてしまうのを防止するためである。また、筒状収容部内に竹片や竹繊維を収容する際に、少量の水を一緒に収容部内に入れたり、筒状収容部や筒状金型のキャビティ等に連通する孔部を形成し、この孔部を利用して外部から水蒸気をキャビティ内に供給したりすることもできる。
【0011】
竹材の表皮(外皮及び内皮)は、サンダ等を用いて研削したりブラスト処理等によって除去したりすることができる。竹材を分割した後にこれらの表皮の処理を行うこともできるし、丸竹の状態で行うこともできる。表皮を除去することにより、竹片間や竹繊維間の接着接合性が高く機械的強度の大きな圧密材を得ることができる。竹材の表皮が付いたままでは、圧縮した際に表皮が割れて亀裂の入った圧密材が形成されたり、表皮の接着面で層状に剥離したりすることがあり、圧密材の機械的強度が低くなり信頼性に欠けるからである。なお、ブラスト処理を用いることで、サンダ等を用いて研削除去するのと比較して短時間で斑なく処理することができ生産性に優れ、また、ブラスト材の種類や処理時間を調整することによって、表皮だけを極薄く除去することができ、機械的強度の高い外皮近くの繊維を残して高い機械的強度が得られる。
【0012】
筒状金型内で竹片や竹繊維を接着する接着剤としては、イソシアネート系接着剤、フェノール系接着剤、タンニン、リグフェノール等を用いることができる。イソシアネート系接着剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであればよく、例えばTDI(トルエンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルイソシアネート)等が挙げられる。これらの接着剤は、刷毛塗り、噴霧、どぶ漬け等の任意の方法によって竹片等に付着することができる。
【0013】
筒状収容部としては、横断面が略円形、略楕円形又は略多角形の両端部が開口した中空部を有するものが用いられる。竹材収容工程においては、筒状収容部の下端部等の一方の開口部を開閉可能な受け台等で塞いで他方の開口部から、径が約1mm〜約5mmの籤状、筮竹状に割裂された竹片等を密に充填する。なお、収容加熱工程において、筒状収容部の両方の開口部を塞いで密閉することで、高温高圧の水蒸気で満たして竹片等の軟化を促進させることができる。
竹材収容工程において、筒状収容部に収容した竹片乃至は竹繊維を加熱する収容加熱工程を備えることができる。これにより、筒状収容部内で竹片乃至は竹繊維を接着剤と共に加熱するので、竹片や竹繊維等が有する水分が蒸発して水蒸気が発生し、加熱された水蒸気によって竹片や竹繊維の組織が軟化される。さらに軟化した竹片や竹繊維が筒状金型に押入されるので竹の細胞内腔が圧縮され密度が高められ、硬く機械的強度が高く強度ばらつきの小さな竹製埋設用部材を製造できる。
押入部材の横断面は筒状収容部の中空部と同一形状とするか、後述の挿入圧縮部材を用いる場合は挿入圧縮部材の中空部と同一形状とする。
筒状金型としては、筒状収容部側の先端開口部近傍の内壁に内部に向かって縮径したテーパ部を備えたものが用いられる。押入工程において押入される竹片等をテーパ部で断面方向に圧縮できるためである。
【0014】
また、筒状金型の内壁面と押入部材の先端面で形成されるキャビティとしては、竹製埋設用部材の棒状部材の外形と略同一かそれよりも大きく形成されたものが用いられる。キャビティを竹製埋設用部材の棒状部材の外形よりも大きく形成した場合は、形成した圧密材を筒状金型から取り出した後、目的とする棒状部材の外形に合わせて切削加工する。
なお、キャビティ形成面に凹凸が形成された金型を用いることによって、接着剤を注入して用いる竹製接合具やコンクリート補強用の竹筋として製造された竹製埋設用部材の表面に凹凸を形成することができ、接着剤やコンクリートの付着性やアンカー効果が向上するため好適に用いられる。
【0015】
筒状収容部や筒状金型の加熱手段としては、ジャケットを設け水蒸気で加熱したり、外周面に添設されるバンドヒータ等の板状ヒータや絶縁状態で筒状収容部や筒状金型の壁内に内蔵された電熱線等の発熱体、或いは誘導加熱によって筒状収容部や筒状金型に渦電流を発生させジュール熱を発生させて加熱する手段等が用いられる。特に、誘導加熱によれば、所望する温度に短時間で到達できるとともに、加熱温度を容易に精度よくコントロールでき、また、竹片等を部分的に加熱することが可能である。部分的に加熱する場合は、筒状収容部や筒状金型を部分的に異なる材質で形成する、例えば加熱する部分は電気抵抗の高い材質で形成し加熱しない部分は電気抵抗の低い材質で形成する方法、或いは筒状収容部や筒状金型を電気抵抗の高い材質で形成すると共に、竹片等の加熱しない部分をアルミニウム箔等の電気抵抗の小さい材料で被覆して、その部分のジュール熱の発生を抑止する方法等が用いられる。
【0016】
収容加熱工程における筒状収容部内の温度や筒状金型を型締めしたときのキャビティ内の温度としては、100〜180℃好ましくは130〜180℃が用いられる。温度が130℃より低くなるにつれ、水分の蒸発量が少なくキャビティ内の水蒸気圧が高まり難く竹片や竹繊維が軟化するまでに長時間を要し生産性が低下し、また蒸気の浸透に斑が生じ圧密材に強度斑やワレが生じ易くなる傾向がみられ、100℃より低くなるとこの傾向が著しいため好ましくない。180℃より高くなるにつれ、竹片や竹繊維に割れが生じたりセルロース等の分解が起こり褐色化や焦げ付いたりして機械的強度が低下する傾向がみられるため好ましくない。
【0017】
押入圧縮工程において、束ねた状態で軟化した竹片等を断面積比で1/2〜1/3程度に圧縮すると共に、筒状金型のキャビティ内で接着剤を熱硬化させ竹片等を接着する。この状態で1〜60分程度保持することにより圧密材の形状が固定化される。
なお、竹片等の圧縮比は、筒状収容部の中空部と筒状金型のキャビティの断面積比によって決まるため、筒状収容部への竹片等の充填量を一定にすることで圧縮比を常に一定することができ品質のばらつきが小さい竹製埋設用部材を大量に製造できる。
【0018】
また、型締めした際のキャビティ内の蒸気圧が120kPa〜2500kPaになるように、キャビティに空気抜き孔や隙間を設ける、キャビティに形成された空気抜き孔に安全弁を接続する等の手段を用いて金型を設計するのが好ましい。キャビティが複数形成されている場合は、キャビティを配管等で連結し、連結した配管等に安全弁を配設することで安全性を確保できる。
なお、キャビティ内の蒸気圧が120kPaより低くなるにつれ竹片や竹繊維に水蒸気が浸透し難く竹片等が軟化し難くなる傾向がみられ、2500kPaより高くても竹片等が軟化するまでの時間に変化はなく、キャビティ内を密閉するための構造等が複雑になる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0019】
圧密材の形状が固定化された後冷却し、筒状金型から取り出す。筒状金型を縦に分割可能な分割金型とすることで取り出しが容易になる。また、キャビティが曲線状又は折曲状に形成された筒状金型を用いて曲線状又は折曲状の中実の圧密材を形成する場合も分割金型とする。なお、曲線状又は折曲状の中空の圧密材を形成する場合は、中実のものを形成した後に中空部を切削により形成する。
筒状金型を外筒部と外筒部に挿着される内筒部で形成することができ、この場合、内筒部を取り出して冷却し、これとは別の内筒部を外筒部に挿着し製造を行うことができるので、冷却時のプレス機の占有時間を短縮して成形サイクルを短縮でき生産性に優れる。
【0020】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の竹製埋設用部材の製造方法であって、前記竹材収容工程の後に、前記筒状収容部と前記竹片乃至は前記竹繊維との間に前記筒状収容部より小径の内径を有する筒状圧縮部材を挿入しながら圧縮する挿入圧縮工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)筒状収容部内で前圧縮することで竹片や竹繊維の筒状金型への押入を円滑に行うことができ、無理な押入により竹片が曲がったり折れたり裂けたりするのを防止でき、均一な圧縮密度の圧密材を形成でき機械的強度を高くできる。
(2)筒状圧縮部材の挿入により竹片や竹繊維を横方向に圧縮することで竹片と竹片、或いは竹片と竹繊維の隙間を減少させ密度を略均一にすることができ、本圧縮時の圧密材の高密度化を図り密度のばらつきを確実に防止できる。また、竹片等を筒状収容部に収容する際に竹片等を手作業で均一に並べる手間を省略することができる。
【0021】
ここで、筒状圧縮部材としては、筒状収容部側の先端開口部近傍の内壁に内部に向かって縮径したテーパ部を備えたものが用いられる。先端開口部を筒状収容部と竹片等との間に円滑に挿入しながらテーパ部で竹片等を圧縮できるためである。なお、筒状圧縮部材の内径は、筒状金型の内径と略同一、又は筒状収容部の内径より小さく筒状金型の内径より大きいものが用いられる。筒状圧縮部材の内径を筒状金型の内径より大きくすることで、束状の竹片や竹繊維を互いに密に接着させ筒状圧縮部材で前圧縮した後、筒状金型に押入れて更に圧縮し、段階的に圧縮することができ、押入圧縮工程をさらに円滑に行うことができるためである。
【0022】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の竹製埋設用部材の製造方法であって、前記竹材収容工程において又はその後に、前記竹製埋設用部材の前記中空部を形成する中空部形成材を前記竹片乃至は前記竹繊維の略中心に配置又は挿入する中空部形成工程を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)竹片や竹繊維を中空部形成材と共に圧縮することで、中空部を有する竹製埋設用部材を一度の操作で製造でき生産性に優れる。
(2)竹製埋設用部材に中空部を形成することで、加熱圧縮成形後に中空部形成材を抜くだけで該部材内側の蒸気圧を開放することができ、部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等の変形を防止できる。
【0023】
中空部形成材としては、目的とする竹製埋設用部材の中空部の内周面の形状に対応させた中実の棒状、中空の管状等に形成されたものが用いられる。なお、竹製埋設用部材に形成される中空部は、用途等に応じて、該部材の一端部から他端部に貫通したものであってもよく、或いは他端部に貫通しない孔部状のものであってもよい。配置又は挿入する中空部形成材の長さを調整することで適宜設定することができる。
【0024】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の竹製埋設用部材の製造方法であって、前記竹材収容工程又は前記圧密材形成工程或いはその後の冷却工程において、周壁に複数の孔部を有する中空管で形成された前記中空部形成材の前記孔部から、水蒸気,冷却用流体の1種以上を流出させる、或いは、前記中空部形成材の前記孔部を介して前記中空部を減圧する構成を有している。
この構成により、請求項3で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)周壁に孔部が形成された中空管で中空部形成材が形成されているので、圧縮前に高温高圧の水蒸気を中空部形成材から竹片や竹繊維の中に流出することで、竹片や竹繊維を短時間で軟化させることができ生産性に優れる。
(2)中空圧密材を形成した後は、冷風や冷水、窒素ガス等の冷却用流体を中空部形成材から注入することで、中空圧密材の内部から冷却でき冷却時間を短縮できるとともに、中空部形成材を冷却して収縮させ中空圧密材から中空部形成材を抜き易くすることができ生産性に優れる。
(3)加熱圧縮成形後に該部材内側の蒸気圧を中空部形成材を介して迅速且つ円滑に放出することができ、該部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等を防止し、変形がなく且つ密度が均一な圧密材を形成できると共に、内部から確実に冷却することで筒状金型から取り出すための他の冷却工程を省略することができる。
【0025】
ここで、中空管で形成された中空部形成材は押入部材の先端面に固定され、中空部形成材に水蒸気や冷却用流体を供給する配管は押入部材の内部等を通って中空管部分に連通する。該配管には水蒸気や冷却用流体の供給装置及び切換弁を配設して、水蒸気と冷却用流体のいずれを中空部形成材に流すかを選択できるようにしておくのが好ましい。
圧密材の中空部を減圧する場合は、上記水蒸気や冷却用流体の供給装置に替えて、該配管に流量制御弁を設けると共にその端部を大気に開放し、流量制御弁を開くことで中空部形成材の孔部を介して成形した圧密材の中空部を減圧し、加熱蒸気を外部に放出する。
【0026】
本発明の請求項5に記載の竹製埋設用部材の製造装置は、横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する管状部材を備えた竹製埋設用部材の製造装置であって、プレス機の固定盤に保持された筒状金型と、前記筒状金型の上部に開閉自在に配設された開閉受け台と、前記開閉受け台の開閉部の上面に前記筒状金型と同軸に配設された筒状収容部と、前記筒状金型を加熱又は部分的に加熱する加熱手段と、前記プレス機の可動盤に保持され前記筒状金型及び前記筒状収容部と同軸に配設された押入部材と、を備え、前記筒状金型が、その上端開口部近傍の内周壁に形成され下方へ向かって縮径したテーパ部と、前記テーパ部に連設された前記筒状収容部の内径より小径のキャビティと、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)籤状或いは筮竹状の複数の竹片乃至は竹繊維と接着剤を筒状収容部内に収容した後、開閉受け台の開閉部を開き、竹片乃至は竹繊維を筒状収容部から押入部材で押し出し、筒状金型のキャビティ内に押入しながらテーパ部で圧縮し、高温の筒状金型内で竹片乃至は竹繊維を接着し圧密材を形成することができる。
(2)筒状収容部内に収容した竹片や竹繊維を押し出しながら筒状金型に押入し圧縮成形するので、筒状収容部への竹片や竹繊維の充填量を一定にするだけで筒状金型のキャビティの容積に応じた一定の圧縮密度で圧縮でき、寸法及び強度等の性能のばらつきを小さくできる。
(3)筒状金型を加熱してキャビティ内で加熱、加圧するため、大型の高温高圧容器が不要で、市販のプレス機で製造できるので設備投資を少なくでき、また筒状収容部や筒状金型の温度、押し出し、押入のための押圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れる。
(4)容積の小さな筒状金型のキャビティ内で竹片や竹繊維を高温の水蒸気によって加熱軟化、圧縮するので、一回のバッチ処理が終了した後、わずかな時間で収容部やキャビティ内を高温の水蒸気雰囲気にすることができバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れる。
(5)筒状金型内において竹片乃至は竹繊維を誘導加熱等により部分的に加熱することにより、成形した圧密材の加熱した部分は成形後に加熱や加水、水蒸気を与えても復元せず、一方、加熱していない部分又は温度を調節して低温を維持した部分は成形後に加熱や加水、水蒸気を与えると復元するため、例えば建築構造部材の接合具等に用いた場合、施工時の加熱処理等により変形する特性を有する圧密材を得ることができる。したがって、束状の竹片乃至は竹繊維の両端部側は加熱せず中間部は加熱して圧密材を成形した場合、この圧密材を梁と軒桁、軒桁と柱、胴差しと通し柱、柱と柱等の構造部材の当接面に穿孔された一対の連通孔に挿着し、該連通孔内に加熱や加水、水蒸気を注入すれば、圧密材の両端部のみが膨らみ、略ハンマー状に変形するため接着材を用いなくても構造部材間を強固に接合できる。
【0027】
ここで、筒状金型、筒状収容部、押入部材、加熱手段、筒状収容部内の温度及び型締めしたときの筒状金型内の温度、圧縮形成した際のキャビティ内の蒸気圧としては、請求項1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0028】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の竹製埋設用部材の製造装置であって、前記筒状金型が、前記固定盤に保持された外筒部と、前記外筒部に内設された前記テーパ部及び前記キャビティを有する内筒部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)筒状金型を外筒部と内筒部で形成しているので、圧密材の固定化後又は固定化前に内筒部を取り出して固定化及び冷却させることができ、これとは別の内筒部を外筒部に挿着し製造を行うことができるので、冷却時のプレス機の占有時間を短縮して成形サイクルを短縮でき生産性に優れる。
【0029】
本発明の請求項7に記載の竹製埋設用部材の製造装置は、横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する管状部材を備えた竹製埋設用部材の製造装置であって、プレス機の固定盤に保持された外筒部と前記外筒部に内設された内筒部とを備えた筒状金型と、前記外筒部の上部に連設された筒状収容部と、前記筒状金型を加熱又は部分的に加熱する加熱手段と、前記プレス機の可動盤に保持され前記筒状金型及び前記筒状収容部と同軸に配設された押入部材と、を備え、前記内筒部が、その上端開口部近傍の内周壁に形成され下方へ向かって縮径したテーパ部と、前記テーパ部に連設された前記筒状収容部の内径より小径のキャビティと、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5又は6で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)外筒部の上部に筒状収容部が連設されているので、筒状収容部と内筒部のキャビティと間の気密性を向上でき、確実に高温高圧に維持して竹片等の軟化や圧密材の固定化を促進させることができる。
(2)筒状収容部の保持部材等の部品点数を削減でき装置構成を簡略化できる。
【0030】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7の内いずれか1項に記載の竹製埋設用部材の製造装置であって、前記押入部材の先端部に装着された内径が前記筒状収容部の内径より小径の筒状圧縮部材を備え、前記筒状圧縮部材がその下端開口部近傍の内周壁に形成され上方へ向かって縮径した圧縮部材テーパ部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5乃至7の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)筒状収容部内で前圧縮することで竹片や竹繊維の筒状金型への押入を円滑に行うことができ、無理な押入により竹片が曲がったり折れたり裂けたりするのを防止でき、均一な圧縮密度の圧密材を形成でき機械的強度を高くできる。
(2)可動盤を固定盤に向かって降下させるだけで筒状圧縮部材による前圧縮、竹片等の押し出し、筒状金型への押入及び竹片等の圧縮を連続して行うことができ、システム化が容易で管理性及び生産性に優れる。
(3)筒状圧縮部材の挿入により竹片や竹繊維を横方向に圧縮することで竹片と竹片、或いは竹片と竹繊維の隙間を減少させ密度を略均一にすることができ、本圧縮時の圧密材の高密度化を図り密度のばらつきを確実に防止できる。
【0031】
ここで、筒状圧縮部材としては、請求項2で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0032】
本発明の請求項9に記載の発明は、請求項5乃至8の内いずれか1項に記載の竹製埋設用部材の製造装置であって、前記押入部材の先端面に固定された先鋭状の中空部形成材を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5乃至8の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)可動盤を降下させるだけで筒状収容部に収容された竹片や竹繊維の略中心部に中空部形成材を挿入することができ、竹片や竹繊維を中空部形成材と共に圧縮して中空部を備えた竹製埋設用部材を一度の操作で製造でき生産性に優れる。
(2)竹製埋設用部材に中空部を形成することで、加熱圧縮成形後に該部材内側の蒸気圧を円滑に開放することができ、該部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等の変形を防止できる。
【0033】
ここで、中空部形成材としては、請求項3で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0034】
本発明の請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の竹製埋設用部材の製造装置であって、前記中空部形成材が、周壁に孔部を有する中空管で形成された構成を有している。
この構成により、請求項9で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)周壁に孔部が形成された中空管で中空部形成材が形成されているので、圧縮前に高温高圧の水蒸気を中空部形成材から竹片や竹繊維の中に流出することで、竹片や竹繊維を短時間で軟化させることができ生産性に優れる。
(2)中空圧密材を形成した後は、冷風や冷水等の冷却用流体を中空部形成材から流出することで、中空圧密材の内部から冷却でき冷却時間を短縮できるとともに、中空部形成材を冷却して収縮させ中空圧密材から中空部形成材を抜き易くすることができ生産性に優れる。
(3)中空部形成材の孔部を介して成形した圧密材の中空部を減圧することができ、圧密材内側に残留した蒸気圧による圧密材の膨れ等を防止し、変形がなく且つ密度が均一な圧密材を形成できると共に、内部から確実に冷却することで筒状金型から取り出すための他の冷却工程を省略することができる。
【0035】
ここで、中空部形成材に水蒸気や冷却用流体を供給する或いは減圧するための配管は、請求項4で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明の竹製埋設用部材の製造方法及びその製造装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)筒状収容部への竹片や竹繊維の充填量を一定にするだけで筒状金型のキャビティの容積に応じた一定の圧縮密度で圧縮でき、寸法及び強度等の性能のばらつきが小さい竹製埋設用部材を製造できる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(2)大型の高温高圧容器が不要で、万能試験機や市販のプレス機で製造できるので設備投資を少なくでき、また筒状金型の温度、押し出し、押入のための押圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(3)一回のバッチ処理が終了した後、わずかな時間でキャビティ内を高温の水蒸気雰囲気にすることができバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(4)竹材の繊維方向を容易に一定にでき、曲げ強さ等の機械的強度の大きな圧密材を得ることができる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(5)竹材腐朽菌の生育を阻害させる性質をもったフェノール化合物やフルフラール化合物等が生成され竹製埋設用部材の耐腐朽性を向上させることができる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(6)筒状金型内で竹片乃至は竹繊維を部分的に加熱することにより、例えば建築構造部材の接合具等に用いた場合、施工時の加熱処理等により部分的に変形する特性を有する圧密材を得ることができ接合強度の向上を図り、また特殊な用途に用いることができる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)筒状収容部内で前圧縮することで竹片や竹繊維の筒状金型への押入を円滑に行うことができ、均一な圧縮密度の圧密材を形成でき機械的強度の高い竹製埋設用部材を製造できる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(2)竹片と竹片、或いは竹片と竹繊維の隙間を減少させ密度を略均一にすることができ、本圧縮時の圧密材の高密度化を図り密度のばらつきを確実に防止でき高品質、高強度の圧密材を得ることができ、また竹片等を手作業で均一に並べる手間を省略することができ省力性に優れた竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)中空部を有する竹製埋設用部材を一度の操作で製造でき生産性に優れる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(2)加熱圧縮成形後に中空部形成材を抜くだけで該部材内側の蒸気圧を開放することができ、該部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等の変形を防止できる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
【0039】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)圧縮前に高温高圧の水蒸気を中空部形成材から竹片や竹繊維の中に流出することで、竹片や竹繊維を短時間で軟化させることができ生産性に優れる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(2)中空圧密材の内部から冷却でき冷却時間を短縮できるとともに、中空部形成材を冷却して収縮させ中空圧密材から中空部形成材を抜き易くすることができ生産性に優れる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
(3)加熱圧縮成形後に中空部を減圧することで変形がなく且つ密度が均一な圧密材を形成できると共に、筒状金型から取り出すための他の冷却工程を省略することができ、工数の低減化を図ることができる竹製埋設用部材の製造方法を提供することができる。
【0040】
請求項5に記載の発明によれば、
(1)筒状収容部への竹片や竹繊維の充填量を一定にするだけで筒状金型のキャビティの容積に応じた一定の圧縮密度で圧縮でき、寸法及び強度等の性能のばらつきが小さい竹製埋設用部材を製造できる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(2)大型の高温高圧容器が不要で、市販のプレス機で製造できるので設備投資を少なくでき、また筒状収容部や筒状金型の温度、押し出し、押入のための押圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(3)一回のバッチ処理が終了した後、わずかな時間でキャビティ内を高温の水蒸気雰囲気にすることができバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(4)筒状金型内で竹片乃至は竹繊維を部分的に加熱することにより、例えば建築構造部材の接合具等に用いた場合、施工時の加熱処理等により部分的に変形する特性を有する圧密材を得ることができ接合強度の向上を図り、また特殊な用途に用いることができる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【0041】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、
(1)圧密材の固定化後又は固定化前に内筒部を取り出して固定化及び冷却させることができ、これとは別の内筒部を外筒部に挿着し製造を行うことができるので、冷却時のプレス機の占有時間を短縮して成形サイクルを短縮でき生産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5又は請求項6の効果に加え、
(1)外筒部の上部に筒状収容部が連設されているので、筒状収容部と内筒部のキャビティと間の気密性を向上でき、確実に高温高圧に維持して竹片等の軟化や圧密材の固定化を促進させることができる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(2)筒状収容部の保持部材等の部品点数を削減でき装置構成を簡略化できる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【0043】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5乃至7の内いずれか1の効果に加え、
(1)筒状収容部内で前圧縮することで竹片や竹繊維の筒状金型への押入を円滑に行うことができ、均一な圧縮密度の圧密材を形成でき機械的強度が高い竹製埋設用部材を製造できる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(2)可動盤を固定盤に向かって降下させるだけで筒状圧縮部材による前圧縮、竹片等の押し出し、筒状金型への押入及び竹片等の圧縮を連続して行うことができ、システム化が容易で管理性及び生産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(3)竹片と竹片、或いは竹片と竹繊維の隙間を減少させ密度を略均一にすることができ、本圧縮時の圧密材の高密度化を図り密度のばらつきを確実に防止でき高品質、高強度の圧密材を得ることができる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【0044】
請求項9に記載の発明によれば、請求項5乃至8の内いずれか1の効果に加え、
(1)竹片や竹繊維を中空部形成材と共に圧縮して中空部を備えた竹製埋設用部材を一度の操作で製造でき生産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(2)竹製埋設用部材に中空部を形成することで、加熱圧縮成形後に該部材内側の蒸気圧を円滑に開放することができ、該部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等の変形を防止できる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【0045】
請求項10に記載の発明によれば、請求項9の効果に加え、
(1)圧縮前に高温高圧の水蒸気を中空部形成材から竹片や竹繊維の中に流出することで、竹片や竹繊維を短時間で軟化させることができ生産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(2)中空圧密材の内部から冷却でき冷却時間を短縮できるとともに、中空部形成材を冷却して収縮させ中空圧密材から中空部形成材を抜き易くすることができ生産性に優れる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
(3)該部材内側に残留した蒸気圧による該部材の膨れ等を防止し、変形がなく且つ密度が均一な圧密材を形成できると共に、内部から確実に冷却することで筒状金型から取り出すための他の冷却工程を省略することができる竹製埋設用部材の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図である。なお、図1の(a)は筒状収容部内への竹材収容工程を示す断面模式図であり、(b)は前圧縮工程を示す断面模式図であり、(c)(d)は圧密材形成工程を示す断面模式図である。
図1において、1は本実施の形態1における竹製埋設用部材の製造装置、2は製造装置1を構成するプレス機の固定盤、3は固定盤2の上方に対向して配設されたプレス機の可動盤、4はプレス機の固定盤2に立設された円筒状の筒状金型、5は固定盤2に固定された筒状金型4の外筒部、5aは加熱手段の一つであり外筒部5に絶縁状態で内蔵された電熱線等の金型発熱部、6は外筒部5の中空部に脱着自在に挿着された内筒部、7は内筒部6の内壁に形成されたキャビティ形成面、8は内筒部6の上端開口部近傍の内周壁に形成され下方へ向かって縮径したテーパ部、9はテーパ部8に連設された筒状金型4の内筒部6のキャビティ、10は筒状金型4の上部に開閉自在に配設された左右一対の可動板からなる開閉受け台、11は開閉受け台10の横方向に開閉自在の開閉部10aの上部に筒状金型4と同軸に配設された筒状収容部であり、筒状収容部11は開閉受け台10上に立設され、或いは図示しない保持部材やアーム部材等により保持され筒状金型4の同軸上に配置されている。11aは加熱手段の一つであり筒状収容部11に絶縁状態で内蔵された電熱線等の収容部発熱部、12はプレス機の可動盤3に固定され筒状金型4及び筒状収容部11と同軸に配設された棒状の押入部材、12aは押入部材12の下端面(先端面)に形成されたキャビティ形成面、13は押入部材12の先端部に装着された筒状圧縮部材、14は筒状圧縮部材13の下端開口部近傍の内壁に形成され上方へ向かって縮径した圧縮部材テーパ部、15は可動盤3の降下により筒状圧縮部材13を筒状収容部11の内壁と竹片16の間に押し入れるために筒状圧縮部材13の上部と可動盤3の間に装着され分割して脱着可能な筒状圧縮補助部材、16は筒状収容部11に収容された籤状或いは筮竹状の複数の竹片乃至は竹繊維である。
【0047】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態1における竹製埋設用部材の製造装置及びそれを用いた竹製埋設用部材の製造方法について説明する。
始めに、丸竹の節を避けて円筒状の竹材をキャビティ9の長さと略同一の長さに切断し、さらに縦方向に1/8〜1/16程度に分割した後、表皮(外皮及び内皮)をブラスト処理によって除去すると共に、さらに細かく縦方向に割裂状に分割し径が1mm〜5mm程度の籤状或いは筮竹状の竹片16とする。この竹片16の内部に水が浸透するまで、竹片16を水に浸漬する。
製造装置1は、開閉受け台10の開閉部10aを閉じた状態で、その上部に筒状収容部11を筒状金型4及び押入部材12と同軸に(各中心軸が一致するように)配置する。
水中から取り出した竹片16の表面にイソシアネート系接着剤等の接着剤を塗布した後、図1(a)に示すように、複数の竹片16を束ねた状態で筒状収容部11内に密に充填する(竹材収容工程)。
次に、筒状収容部11を収容部発熱部11aを用いて100〜180℃好ましくは130〜180℃に加熱する。これにより、竹片16等に含まれる水分が過熱水や超過熱水となるため竹片16が高温で十分に軟化される。また、該水分の一部は蒸発して筒状収容部11内が高温の水蒸気で満たされ、竹片16に筒状収容部11の熱が良く伝わり竹片16が確実に軟化される。この状態を1〜10分間保持する(収容加熱工程)。なお、収容加熱工程においては、筒状収容部11の上端部を塞ぐ開閉自在の閉塞部(図示せず)を設け、筒状収容部11の上端部から水蒸気が漏出しないようにして行うのが好ましい。
また、この収容加熱工程と同時に、少なくとも後述の挿入圧縮工程の前に、筒状金型4の外筒部5に内蔵された金型発熱部5aによりキャビティ9内を所定の温度例えば100〜180℃に予熱しておく。ここで、本実施の形態1においては、筒状収容部11及び筒状金型4を電熱線等で加熱する場合について説明したが、誘導加熱によって筒状収容部11や筒状金型4に渦電流を発生させジュール熱を発生させて加熱する場合もある。これにより、所望する温度に短時間で到達できるとともに、温度コントロールが容易で加熱温度を精度よくコントロールできる。
次に、図1(b)に示すように、可動盤3を固定盤2に向かって降下させ、筒状圧縮部材13の先端部を筒状収容部11の内壁と竹片16の間に挿入し、圧縮部材テーパ部14で横方向(水平方向)に圧縮する。筒状圧縮部材13の先端部が開閉受け台10の上面に当接するまで可動盤3を降下させ、竹片16を圧縮する(挿入圧縮工程)。
次に、図1(c)に示すように、開閉受け台10を可動させ開閉部10aを開き、さらに可動盤3を降下させ、筒状圧縮部材13の先端部を筒状金型4の内筒部6の先端部に当接させる。当接したら筒状圧縮補助部材15を分割して取り外す。
次に、図1(d)に示すように、可動盤3を降下させ、押入部材12により竹片16を筒状収容部11及び筒状圧縮部材13の内部から押し出し、筒状金型4の内筒部6のテーパ部8で断面方向に圧縮しながらキャビティ9内に押入する。可動盤3には20〜50MPaの圧力を加え、可動盤3が筒状収容部11の上端部に当接するまで可動盤3を下降させ、竹片16を断面積比で1/2〜1/3程度になるように圧縮する。この状態で1〜60分程度保持すると、密閉されたキャビティ9内の高温高圧の水蒸気によって接着剤が熱硬化され、竹片16同士が接着されて形状が固定化され圧密材が製造される。さらに、気密なキャビティ9内で竹片16が高温高圧の水蒸気で満たされているので、竹片16に含まれるヘミセルローズとリグニンが部分的に解重合し、その結果、竹材腐朽菌の生育を阻害させる性質をもったフェノール化合物やフルフラール化合物等が生成され竹製埋設用部材の耐腐朽性を向上させる。(以上、圧密材形成工程)。
圧密材(棒状部材17)の形状が固定化されたら、外筒部5から内筒部6を取り出し、そのまま冷却する。圧密材が内筒部6から取り出せる程度の低温になったら、圧密材を取り出し、後述するように、その長手方向に両端で開口する中空部を所定の方法で穿設する。
【0048】
以上のようにして製造された竹製埋設用部材について、図面を用いて説明する。
図2(a)は筒状に製造された竹製埋設用部材の斜視図であり、図2(b)は接合具として製造された竹製埋設用部材の応用例を示す斜視図であり、図3(a)(b)(c)は製造された竹製埋設用部材の竹筋としての接合方法を示す断面図である。
図2(a)において、17は形成された竹製埋設用部材の中空棒状部材、18は中空棒状部材17の長手方向に形成された両端で開口する中空部である。中空棒状部材17の中空部18は中実の棒状部材を形成した後、切削して穿設してもよく、後述の実施の形態3で説明する中空部形成材を用いた方法で形成してもよい。
図2(b)において、20は竹製の中空棒状部材17の両端部に形成され中空部18と連通した接着剤案内溝、20aは中空棒状部材17の長手方向の略中間に穿設され中空部18と連通した螺子部を有する螺着孔、20bは一端が螺着孔20aに螺着され接着剤が注入される枝管、20cは枝管20bの両端で開口する接着剤注入用の中空部である。
図3(a)において、21,21は横断面が略円形,略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中空棒状部材、21a,21aは中空棒状部材21,21の長手方向に形成された中空部、21bは木製,竹製,合成樹脂製,金属製等で形成され中空部21a,21aに嵌挿若しくは螺挿された棒状の接続部材である。
図3(b)において、21cは中空棒状部材21,21の端部が嵌挿若しくは螺挿された筒状の接続部材である。
図3(c)において、22,22は横断面が略円形,略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材、22aは中実棒状部材22,22の端部が嵌挿若しくは螺挿された筒状の接続部材である。
【0049】
中空棒状部材17は、図2(b)に示すように、両端部に接着剤案内溝20、中間部に螺着孔20aを形成し、使用時に螺着孔20aに枝管20bを螺着する。この中空棒状部材17を、構造部材間の当接面に穿孔された一対の連通孔に挿着し、枝管20bの中空部20cから中空部18に接着剤を注入して、連通孔と中空棒状部材17の間に接着剤を溢れ出させて充填し、連通孔内の接着剤を硬化させて構造部材間を接合する接合具として用いることができる。
また、中空棒状部材17をコンクリート等に埋設して躯体を補強する竹筋として用いる場合は、図3(a)(b)に示すように、中空棒状部材21,21の端部同士を突き合わせ、中空部21a,21aに棒状の接続部材21bを嵌挿して、複数本を接続して長尺の竹筋を得ることができる。また中空部21a,21aに螺子部を形成すれば、接続部材21bを螺子状に形成し、接続部材21bを螺挿して、複数本を接続することができる。さらに図3(b)に示すように、筒状の接続部材21cを接続部材21bと併用して或いは単独で用いて接続することもできる。
【0050】
中空部18を形成せずに形成した圧密材を中実のままで使用することができ、この場合、コンクリート等の躯体の補強を目的として躯体内に埋設して用いられる竹筋等の中実の竹製埋設用部材を製造することができる。
中実棒状部材22をコンクリート等に埋設して躯体を補強する竹筋として用いる場合は、図3(c)に示すように、筒状の接続部材22aを用いて複数の中実棒状部材22,22を接続し長尺化することもできる。なお、図3(c)では筒状の接続部材22aとして直線状のものについて説明しているが、これに替えてL字状の接続部材(図示せず)を用いて一対の棒状部材22,22をL字状に接続して折曲状部材を形成することもできる。また、直線状の接続部材22aの一端に直線状の棒状部材22を嵌挿し、他端に折曲状の棒状部材(図示せず)を嵌挿して折曲状部材を形成することもできる。
なお、節の突起を削った竹材から製造された長尺の竹片を用いることで、長尺の連続した圧密材を製造することができるため、この場合は接続部材21b,21c,22cを用いなくてもよい。
また、中空や中実の棒状部材17,21,22の外周面に、螺子溝等のような凹凸を形成することもできる。これにより、接着剤やコンクリートの付着性やアンカー効果を向上させることができる。
【0051】
以上のような本発明の実施の形態1における竹製埋設用部材の製造装置1及びそれを用いた竹製埋設用部材の製造方法によれば、以下のような作用が得られる。
(1)籤状或いは筮竹状の複数の竹片16と接着剤を筒状収容部11内に収容し、収容した竹片16乃至は竹繊維を内蔵された電熱線等の収容部発熱部11aで加熱した後、開閉受け台10を開き、可動盤3を降下させて軟化した竹片16を筒状収容部11から押入部材12で押し出し、筒状金型4のキャビティ9内に押入しながらテーパ部8で圧縮し、金型発熱部5aで予熱された高温の筒状金型4内で竹片16を接着し圧密材を形成することができる。
(2)筒状収容部11に竹片16を収容した後、その下端部を開閉部10aで閉塞し上端部を図示しない閉塞部で閉塞し筒状収容部11内で竹片16を接着剤と共に加熱するので、竹片16等が有する水分が蒸発して水蒸気が発生し、加熱された水蒸気によって竹片16の組織が軟化される。さらに軟化した竹片16が筒状金型4のキャビティ9に押入されるので竹の細胞内腔が圧縮され密度が高められ、硬く機械的強度が高く強度ばらつきの小さな竹製埋設用部材を製造できる。
(3)筒状収容部11内に収容した竹片16を押入部材12で押し出しながら筒状金型4のキャビティ9内に押入し圧縮成形するので、筒状収容部11への竹片16等の充填量を一定にするだけでキャビティ9の容積に応じた一定の圧縮密度で圧縮でき、寸法及び強度等の性能のばらつきを小さくできる。
(4)筒状収容部11や筒状金型4を発熱部5a,11aで加熱して収容部11内やキャビティ9内で加熱、加圧するため、大型の高温高圧容器が不要で、市販のプレス機等で製造できるので設備投資を少なくでき、また筒状収容部11や筒状金型4の温度、押し出し、押入のための押圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れる。
(5)容積の小さな筒状収容部11や筒状金型4のキャビティ9内で竹片16を高温の水蒸気によって加熱軟化、圧縮するので、一回のバッチ処理が終了した後、わずかな時間で収容部11やキャビティ9内を高温の水蒸気雰囲気にすることができバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れる。
(6)筒状金型4を外筒部5と内筒部6で形成しているので、外筒部5から内筒部6と共に圧密材を取り出して固定化及び冷却させることができ、これとは別の内筒部6を外筒部5に挿着し製造を行うことができるので、冷却時のプレス機の占有時間を短縮して成形サイクルを短縮でき生産性に優れる。
(7)筒状圧縮部材13の挿入により竹片16を筒状収容部11内で前圧縮することで竹片16の筒状金型4への押入を円滑に行うことができ、無理な押入により竹片16が曲がったり折れたり裂けたりするのを防止でき、均一な圧縮密度の圧密材を形成でき機械的強度を高くできる。
(8)筒状圧縮部材13により竹片16を横方向(断面方向)に圧縮することで竹片16間の隙間を減少させ密度を略均一にすることができ、圧密材形成工程における本圧縮時の圧密材の高密度化を図り密度のばらつきを確実に防止できる。また、竹片16を筒状収容部11に収容する際に竹片16を手作業で均一に並べる手間を省略することができる。
(9)可動盤3を固定盤2に向かって降下させるだけで筒状収容部11における前加熱(軟化)、竹片16等の押し出し、筒状金型4への押入及び竹片16等の圧縮、固定化を連続して行うことができ、システム化が容易で管理性及び生産性に優れる。
【0052】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図である。なお、図4の(a)は筒体内への竹材収容工程を示す断面模式図であり、(b)は前圧縮工程を示す断面模式図であり、(c)(d)は圧密材形成工程を示す断面模式図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1aは実施の形態2における竹製埋設用部材の製造装置、25は外筒部5とその上部に筒状収容部とが一体に形成された筒体である。
本発明の実施の形態2における竹製埋設用部材の製造方法は、外筒部5と筒状収容部とが一体に形成された筒体25を用いた点、及び、竹材収容工程や挿入圧縮工程において開閉受け台10の開閉部10aに替えて保持部材(図示せず)により竹片16の下端部を保持する点以外は実施の形態1で説明したものと同様なので説明を省略する。なお、本実施の形態2においては、筒体25の高さ方向略中間部の周壁に貫通孔(図示せず)を形成しておき、棒状や板状の保持部材(図示せず)を該貫通孔に挿通させて先端側を筒体25の内部に配設することができる。この保持部材により、竹材収容工程や挿入圧縮工程において竹片16が下方に移動するのを防止できる。なお、該保持部材は圧密材形成工程の前に該貫通孔から取り外される。
【0053】
以上のように実施の形態2における竹製埋設用部材の製造装置1aによれば、実施の形態1に記載の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)外筒部5の上部に筒状収容部が連設された筒体25を備えているので、筒状収容部とキャビティ9と間の気密性を向上でき、確実に高温高圧に維持して竹片16等の軟化や圧密材の固定化を促進させることができる。
(2)筒状収容部の保持部材等の部品点数を削減でき装置構成を簡略化できる。
【0054】
(実施の形態3)
図5は実施の形態3における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図である。なお、図5の(a)は筒体内への竹材収容工程を示す断面模式図であり、(b)は前圧縮工程及び中空部形成工程を示す断面模式図であり、(c)(d)は圧密材形成工程を示す断面模式図である。なお、実施の形態1又は2と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、1bは実施の形態3における竹製埋設用部材の製造装置、27は押入部材12の先端面の中心に同軸に固定された先鋭状の中空部形成材である。
本発明の実施の形態3における竹製埋設用部材の製造方法は、挿入圧縮工程及び中空部形成工程以外は実施の形態1又は2で説明したものと同様なので、説明を省略する。
図5(a)(b)に示すように、可動盤3を固定盤2に向かって降下させ、筒状圧縮部材13の先端部を筒状収容部11と竹片16の間に挿入すると共に、中空部形成材27を竹片16の略中心部に挿入し、圧縮部材テーパ部14で横断面方向に圧縮すると共に、略中心部に中空部形成材27を配置する(挿入圧縮工程、中空部形成工程)。
【0055】
以上のように実施の形態3における竹製埋設用部材の製造装置1b及びそれを用いた竹製埋設用部材の製造方法によれば、実施の形態1又は2に記載の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)可動盤3を降下させるだけで筒状収容部11に収容された竹片16の略中心部に中空部形成材27を挿入することができ、竹片16を中空部形成材27と共に圧縮して中空部18を備えた竹製埋設用部材を一度の操作で製造でき生産性に優れる。
(2)中空部18を形成することで、加熱圧縮成形後に中空部形成材27を抜くだけで成形体内部の蒸気圧を開放することができ、成形体内部に残留した蒸気圧による成形体の膨れ等の変形を防止できる。
【0056】
(実施の形態4)
図6(a)は実施の形態4における竹製埋設用部材の製造方法の圧密材形成工程を示す要部断面模式図であり、図6(b)は中空部形成材の要部拡大図である。なお、実施の形態3と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図6において、1cは実施の形態4における竹製埋設用部材の製造装置、29は内部に中空部30を有する中空管で形成された中空部形成材、30aは中空部形成材29の周壁に形成された複数の孔部、31は可動盤3及び押入部材12の略中心部に貫設され中空部30に連通した連通部、32は連通部31に上端部に接続された配管、33は配管32に配設された三方切換弁、34は水蒸気や冷風等の冷却用流体等の供給部、35は一端部が供給部34に接続され他端部が三方切換弁33に接続された供給管、36は三方切換弁33に接続された排出管、37は排出管36に配設された絞り弁等の流量制御弁である。
本発明の実施の形態3における竹製埋設用部材の製造方法は、圧密材形成工程後にキャビティ9内の減圧を行う点や冷却用流体等の供給を行う点以外は実施の形態3で説明したものと同様なので、説明を省略する。
圧密材形成工程後において、キャビティ9内の圧密材(竹材)16の中空部を減圧する場合は、まず、三方切換弁33を操作して配管32と排出管36を連通させる。次に、流量制御弁37を徐々に開く。これにより、形成した圧密材16の内部の蒸気圧を中空部形成材29の孔部30aから連通部31、配管32、排出管36を介して外気に放出し、キャビティ9内を減圧することができる。冷却用流体等の供給を行う場合は、三方切換弁33を操作して配管32と供給管35を連通させ、供給部34から供給管35、配管32、連通部31、中空部30、孔部30aを介して圧密材16に冷風等の冷却用流体を流出する。冷却用流体の排出は、供給後或いは供給前に押圧部材12による加圧を解除するか中空部形成材29を僅かに抜き出すことにより、中空部形成材29と圧密材16の中空部の内壁との間に隙間を形成し、該隙間から冷却用流体をキャビティ9の外部に排出することができる。また、供給した冷却用流体をキャビティ9から回収して再供給できるような閉ループの循環路を形成してもよい。
なお、供給部34により高温高圧の水蒸気を供給できるようにすれば、圧縮前の収容加熱工程等において高温高圧の水蒸気を中空部形成材29から竹片16の中に注入することができ、竹片16を短時間で軟化させることができる。
【0057】
以上のように実施の形態4における竹製埋設用部材の製造装置1c及びそれを用いた竹製埋設用部材の製造方法によれば、実施の形態3に記載の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)周壁に孔部30aが形成された中空管で中空部形成材29が形成され、キャビティ9内を減圧することができるので、形成した圧密材16を内筒部6から取り出した後に内部に残留した蒸気圧による膨れ等を防止し、変形がなく且つ密度が均一な圧密材を形成できると共に、内部から確実に冷却することで内筒部6から取り出すための他の冷却工程を省略することができる。
(2)冷風や冷水等の冷却用流体を中空部形成材29の孔部30aから供給することで、中空圧密材の内部から冷却でき冷却時間を短縮できるとともに、中空部形成材29を冷却して収縮させ中空圧密材から中空部形成材29を抜き易くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、住宅等の建築の省力化、合理化等を目的として梁と軒桁、軒桁と柱、胴差しと通し柱、柱と柱等の構造部材の接合を目的として構造部材間に埋設して用いられる竹製接合具、コンクリート等の躯体の補強を目的として躯体内に埋設して用いられる竹筋等の竹製埋設用部材の製造方法及びそれを実現するための竹製埋設用部材の製造装置に関し、竹の細胞内腔が圧縮され密度が高められ、硬く機械的強度が高く強度ばらつきの小さな竹製埋設用部材を製造でき、また圧縮する金型の温度、圧力等の品質管理に必要な条件数が少なく管理が容易で品質の安定性に優れ、またバッチ毎の処理時間や切換時間が短く量産性に優れ、さらに耐腐朽性を向上させる竹製埋設用部材の製造方法及びその製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図
【図2】(a)製造された竹製埋設用部材の斜視図(b)製造された竹製埋設用部材の接合具としての応用例を示す斜視図
【図3】製造された竹製埋設用部材の竹筋としての接合方法を示す断面図
【図4】実施の形態2における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図
【図5】実施の形態3における竹製埋設用部材の製造方法を示す断面模式図
【図6】(a)実施の形態4における竹製埋設用部材の製造方法の圧密材形成工程を示す要部断面模式図(b)中空部形成材の要部拡大図
【符号の説明】
【0060】
1,1a,1b,1c 竹製埋設用部材の製造装置
2 固定盤
3 可動盤
4 筒状金型
5 外筒部
5a 金型発熱部
6 内筒部
7 キャビティ形成面
8 テーパ部
9 キャビティ
10 開閉受け台
10a 開閉部
11 筒状収容部
11a 収容部発熱部
12 押入部材
12a キャビティ形成面
13 筒状圧縮部材
14 圧縮部材テーパ部
15 筒状圧縮補助部材
16 竹片
17,21 中空棒状部材
18 中空部
20 接着剤案内溝
20a 螺着孔
20b 枝管
20c 中空部
21a 中空部
21b,21c,22a 接続部材
22 中実棒状部材
25 筒体
27,29 中空部形成材
30 中空部
30a 孔部
31 連通部
32 配管
33 三方切換弁
34 供給部
35 供給管
36 排出管
37 流量制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する棒状部材を備えた竹製埋設用部材の製造方法であって、
籤状或いは筮竹状の複数の竹片乃至は竹繊維と接着剤を筒状収容部内に収容する竹材収容工程と、
前記竹片乃至は前記竹繊維を前記筒状収容部から押し出し前記筒状収容部より小径の筒状金型内に押入しながら圧縮する押入圧縮工程と、
型締めした前記筒状金型内で前記竹片乃至は前記竹繊維を加熱又は部分的に加熱して接着し圧密材を形成する圧密材形成工程と、
を備えていることを特徴とする竹製埋設用部材の製造方法。
【請求項2】
前記竹材収容工程の後に、前記筒状収容部と前記竹片乃至は前記竹繊維との間に前記筒状収容部より小径の内径を有する筒状圧縮部材を挿入しながら圧縮する挿入圧縮工程を備えていることを特徴とする請求項1に記載の竹製埋設用部材の製造方法。
【請求項3】
前記竹材収容工程において又はその後に、前記竹製埋設用部材の前記中空部を形成する中空部形成材を前記竹片乃至は前記竹繊維の略中心に配置又は挿入する中空部形成工程を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の竹製埋設用部材の製造方法。
【請求項4】
前記竹材収容工程又は前記圧密材形成工程或いはその後の冷却工程において、周壁に複数の孔部を有する中空管で形成された前記中空部形成材の前記孔部から、水蒸気,冷却用流体の1種以上を流出させる、或いは、前記中空部形成材の前記孔部を介して前記中空部を減圧することを特徴とする請求項3に記載の竹製埋設用部材の製造方法。
【請求項5】
横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する管状部材を備えた竹製埋設用部材の製造装置であって、
プレス機の固定盤に保持された筒状金型と、
前記筒状金型の上部に開閉自在に配設された開閉受け台と、
前記開閉受け台の開閉部の上面に前記筒状金型と同軸に配設された筒状収容部と、
前記筒状金型を加熱又は部分的に加熱する加熱手段と、
前記プレス機の可動盤に保持され前記筒状金型及び前記筒状収容部と同軸に配設された押入部材と、
を備え、
前記筒状金型が、その上端開口部近傍の内周壁に形成され下方へ向かって縮径したテーパ部と、前記テーパ部に連設された前記筒状収容部の内径より小径のキャビティと、を備えていることを特徴とする竹製埋設用部材の製造装置。
【請求項6】
前記筒状金型が、前記固定盤に保持された外筒部と、前記外筒部に内設された前記テーパ部及び前記キャビティを有する内筒部と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の竹製埋設部材の製造装置。
【請求項7】
横断面が略円形、略楕円形又は略多角形のいずれかの直線状,曲線状又は折曲状に形成された竹製の中実棒状部材又は中空部を有する管状部材を備えた竹製埋設用部材の製造装置であって、
プレス機の固定盤に保持された外筒部と前記外筒部に内設された内筒部とを備えた筒状金型と、
前記外筒部の上部に連設された筒状収容部と、
前記筒状金型を加熱又は部分的に加熱する加熱手段と、
前記プレス機の可動盤に保持され前記筒状金型及び前記筒状収容部と同軸に配設された押入部材と、
を備え、前記内筒部が、その上端開口部近傍の内周壁に形成され下方へ向かって縮径したテーパ部と、前記テーパ部に連設された前記筒状収容部の内径より小径のキャビティと、を備えていることを特徴とする竹製埋設用部材の製造装置。
【請求項8】
前記押入部材の先端部に装着された内径が前記筒状収容部の内径より小径の筒状圧縮部材を備え、前記筒状圧縮部材がその下端開口部近傍の内周壁に形成され上方へ向かって縮径した圧縮部材テーパ部を備えていることを特徴とする請求項5乃至7の内いずれか1項に記載の竹製埋設用部材の製造装置。
【請求項9】
前記押入部材の先端面に固定された先鋭状の中空部形成材を備えていることを特徴とする請求項5乃至8の内いずれか1項に記載の竹製埋設用部材の製造装置。
【請求項10】
前記中空部形成材が、周壁に孔部を有する中空管で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の竹製埋設用部材の製造装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−168159(P2007−168159A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366153(P2005−366153)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(592135557)株式会社豊夢 (4)
【Fターム(参考)】