説明

第1と第2の光学可変性顔料を含むインキ組成物

【課題】視角依存性の色ずれを有する2種の異なったタイプの光学可変性顔料を含んだインキ組成物を提供すること。
【解決手段】完全に平行で平らな層のスタックを含んだ粉砕多層薄膜干渉構造物からなる第1の光学可変性二色性顔料フレークとポリマー樹脂バインダーとを含んだインキ組成物であって、前記の平行で平らな層の少なくとも1つが全反射性であり、互いに平行な第1と第2の平らな表面を有していて、少なくとも1つの透明誘電体層の平らな表面の少なくとも1つ上に付着されており、このとき前記インキ組成物が、少なくとも1つの透明誘電体層および/または半透明の金属層もしくは金属酸化物層によって反射コアー層が完全に取り囲まれているプレート状反射コアー層を含んだ第2の光学可変性多層薄膜二色性顔料をさらに含み、前記第1と第2の光学二色性顔料が、互いに拮抗的とならないように選択されるインキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、視角に依存した色ずれを示す第1と第2の多層薄膜干渉顔料(multi-layered thin-film interference pigment)を含んだ印刷用インキ組成物に関する。
【0002】
視角依存性の色ずれを示す多層薄膜干渉構造物からなる顔料は種々の文献(例えば、L. Schmid, M. Mronga, V. Radtke, O. Seegerによる「"Luster pigments with optically variable properties", European Coatings Journal, 7-8/1997」、ならびに米国特許第4,434,010; 5,059,245; 5,084,351;および5,281,480号等の特許)に記載されている。
【0003】
これらタイプの干渉顔料がもつ一般的な本質は、基本的には、部分反射物質および/または全反射物質と低屈折率物質とからなる、交互に存在する互いに平行な一連の薄層である。これら多層干渉顔料〔以後OVP(Optically Variable Pigments; 光学可変性顔料)と略記する〕の色相、色ずれ、および彩度は、層を形成している物質の種類、層の配列状態、層の数、および層の厚さの他に製造プロセスにも依存する。
OVPは以下の2つの異なるカテゴリーのプロセスによって製造されてもよい。
1. 物理蒸着(PVD)技術
簡単に説明すると、この方法では、ロール・コーター法やスパッタリング法などの最新のPVD手法を使用して、ある物質(所定の溶媒に溶解するのが好ましい)の柔軟性ウェブ上に多層の薄膜コーティングを形成させる。このウェブは通常、ポリビニルアルコールやポリエチレンテレフタレート等のポリマー物質である。ウェブと多層薄膜コーティングとを分離した後、多層薄膜コーティングを細かく裂くか又は破砕して所望の薄片サイズにすることによってフレークを生成させる。この分離は、多層コーティングをウェブから剥ぎ取ることによって行うことができる。したがって、他の複数層を付着させる前に、ストリッピング層をウェブ上に付着させるのが好ましい。熱および/または溶媒を使用してこの剥ぎ取りプロセスを容易にすることができる。これとは別に、剥ぎ取る代わりに、ウェブを適切な溶媒に溶解して分離を果たすこともできる。被覆されたウェブは、溶解工程の前に、所望によりカットしてもよいし、あるいは細かく裂いてもよい。多層薄膜コーティングをウェブから分離するとき、通常は破れて不規則な形状とサイズの小片になる。これらの小片は一般に、塗料組成物、特にインキ組成物における顔料フレークとして使用するのに適した所望の薄片サイズにするにはさらなるプロセシングを必要とする。これらのフレークは、それらの色特性を損なうことなく2〜5ミクロンの範囲のサイズにまで粉砕することができる。平均粒径は、5〜40ミクロンであって120ミクロン以下であるのが好ましい。フレークは、少なくとも2:1のアスペクト比を有するように生成される。アスペクト比は、層の平面に平行なフレークの表面の最大寸法とフレークに対する厚さ寸法(層の平面に対して垂直)との比をとることによって求められる。フレークは、当業界に公知のあらゆる主要なカテゴリーのプロセシング(例えば、所望により溶媒および/またはさらなる補助物質の存在下での磨砕、粉砕、または超音波攪拌)によって達成することができる。
【0004】
こうした製造プロセスによって得られるOVPは、顔料フレークが、互いに平行に存在する平面層のスタックからなっていて、外側顔料フレーク表面が各平面層に対して平行であることを特徴とする。破砕・粉砕プロセスにより、層の平面に対して垂直な顔料フレークの表面が、内側層が外側層で覆われない状態で不規則的に形成される。これらの特性を有するOVPを以後OVP−Aと呼ぶ。
2. 湿潤化学型反応(wet chemical type reactions)または化学蒸着(CVD)による−米国特許第4,328,042号
OVPを化学的に合成する上での原理は、市販のプレート状反射顔料(plate-like reflecting pigments)を低屈折率で半透明の所定数の薄膜によって被覆することにある。この種の典型的なプロセスを、特定の製造プロセスに関して以下に詳細に説明する。
【0005】
第1の工程においては、分散助剤を使用してプレート状顔料をアルコール中に懸濁させる。この懸濁液にテトラエトキシシランとアンモニア水溶液を連続的に加える。こうした条件下では、テトラエトキシシランが加水分解され、生じた加水分解生成物(すなわち仮定上のケイ酸 Si(OH)4)が縮合反応を起こし、この結果プレート状顔料の表面上にSiO2が平滑な皮膜として形成される。SiO2による被覆は、流動床反応器においても行うことができる。この場合、テトラエトキシシランの蒸気と水蒸気とが反応しなければならない。しかしながら、気相付着の好ましい温度(100〜300℃)において、テトラエトキシシランは満足できるような収率では反応しない。より反応性の高い特別の前駆体を使用しなければならない。適切な前駆体はSi(OR)2(OOCR)2タイプの前駆体である。これらの前駆体は150℃で気化し、200℃にて水により容易に分解する。
【0006】
引き続き、化学蒸着プロセスにおいては、酸化ケイ素で被覆した顔料を金属酸化物または金属皮膜で被覆する。被覆は流動床反応器にて行う。SiO2被覆顔料を、ガス状金属カルボニルを仕込んだ不活性ガスで流動化する。200℃においてカルボニルは分解する。鉄カルボニルを使用する場合、Fe23に酸化され、顔料表面上に平滑な薄膜が形成される。これとは別の方法として、酸化鉄の被覆は、従来のマイカから公知のゾル−ゲル法にて行うこともできる。
【0007】
クロムカルボニル、モリブデンカルボニル、またはタングステンカルボニルを不活性条件下で分解させると、金属皮膜を得ることができる。Mo皮膜は水の攻撃に対して不安定であり、硫化モリブデンに転化される。
【0008】
このプロセスによって得られるOVPは干渉性表面を1つだけ有する。外側コーティングが、内側コーティングおよび/または反射コアフレーク(reflective core flake)を取り囲んで包み込んでいる。このため、外側層は平面ではないが、実質的に互いに平行である。外側顔料表面は、プレート状反射顔料の第1と第2の表面に対して連続的に平行であるわけではない。こうした形状特性を示すOVPを以後OVP−Bと呼ぶ。
【0009】
タイプがOVP−AであるかOVP−Bであるかに関係なく、OVPは、ほとんどの場合において、金属(例えばアルミニウム、金、銅、または銀)、金属酸化物、あるいは非金属物質の全反射層を含んでいる。第1の反射層は50〜150nm(但し、最高300nmであってもよい)の範囲の適切な厚さを有する。全反射性の物質上に低屈折率の物質(このような物質は誘電体と呼ばれることが多い)を付着させる。この誘電体層は、屈折率が1.65以下あって透明でなければならない。SiO2やMgF2が好ましい誘電体である。これに続く半透明の層は、金属、金属酸化物、または硫化物(例えばアルミニウム、クロム、MoS2、またはFe23)である。金属の不透明性は層厚さの関数である。例えばアルミニウムは、約35〜40ナノメートルの厚さにて不透明になる。一般には、半透明層の厚さは5〜10ナノメートルである。誘電体層の厚さは所望する色に依存する。より長い波長が要求される場合は、誘電体層をより厚くする。OVP−Aは、全反射層に関しては対称多層構造であっても又は非対称多層構造であってもよい。
【0010】
比色分析特性の定量化は、CIELAB色空間図表により行うことができる。CIELAB色空間においては、L*は明度を示しており、a*とb*は色度座標である。色空間図表においては、+a*は赤色方向であり、−a*は緑色であり、+b*は黄色であり、そして−b*は青色である。彩度C*=sqrt(a*2+b*2)は、円の中心から外に向かって増大する。色相角度h=arctg(a*/b*)は、+a*−軸に沿って0°であり、+b*−軸に沿って90°であり、−a*−軸に沿って180℃であり、−b*−軸に沿って270℃であり、そして+a*−軸に沿って360℃(0℃と同じ)(Rompp Chemie Lexikon, "Lacke und Druckfarben", Ed. U. Zorll, Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York 1998 を参照)。
【0011】
OVP−Aのフレークは平らであることから、インク組成物に組み込まれ印刷されたときに、下側の支持体に対して及び互いに対して平行な配向が可能である。その結果、被覆された表面は、OVPの特徴的な波長にてほぼ理想的な反射状態をもたらす。PVD製造プロセスの結果であるフレーク特性(平らな平行層、個々の層の表面が完全に平らで且つ平滑である、予め定めた要求値と比べたときに層厚さのずれが極めて小さい)と組み合わせると、高度の彩度(color saturation)〔彩度(chroma)〕およびこうした構造をもつOVPを使用したときに可能な最大量の色ずれが達成される。
OVP−Aは、色ずれが多いために、セキュリティー文書(例えば紙幣、小切手、クレジットカード、パスポート、身分証明書、運転免許証、および郵便切手等)に対する複写防止用途に広く使用されている。
【0012】
偽造防止用途に対する好ましい特性にも関わらず、OVP−Aを含んだ被覆用組成物は幾つかの欠点を有する。
【0013】
OVP−Aは大きな面積の多層干渉フィルムを粉砕することによって得られ、こうして得られるフレークはオープンエッジを有し、このとき内側層は環境による化学的攻撃を受けやすい。このため、硬化インキ層中にフレークを導入したときでも、OVP−Aの化学的安定性は少しではあるがより低くなる。この点は、通貨(例えば紙幣)への用途に対しては特に大きな欠点となる。印刷の耐薬品性に対する要件は、1969年の通貨・偽造に関する第5回国際会議(the 5th International Conference on Currency and Counterfeiting in 1969)におけるインターポールによって、あるいは"BEP-88-214(TH)セクションM5"に記載の彫り込み・印刷局試験法(the Bureau of Engraving and Printing test method)によって確立された。
【0014】
明るい色調(bright shades)、強い色相、および高い彩度は、通貨デザインの美術的な面とは相容れないことが多い。一方、強い色ずれ特性は、OVP使用の根拠となる重要な(複写を防止する)特徴である。したがって、OVP−Aを含んだコーティングのドラマチックな外観(dramatic visual appearnce)を低下させようとする試みが既になされている。こうした目標および他の関連した目標を達成するために、OVP−Aを従来の有色顔料もしくは黒色顔料とブレンドすることができる(「"次世代通貨デザインのための偽造防止特徴", NMAB-472発行, ナショナル・アカデミー・プレス, ワシントン, 1993, pp55-58」および前記文献中に記載の文献を参照)。しかしながら、黒色顔料と混合すると鈍くて覆われたような色となる。EP07,36,073によれば、他の方法は、OVP−Aと適切なマイカ顔料とをブレンドすることからなり、これによってマイカ顔料の色調が、当該OVP−Aの通常の視野カラーまたはかすめ視野カラーと同等になるように選択される。しかしながら、このような混合物においてはOVPの第2の色(the second color)が強くかき乱され、色ずれは満足しえないわずかなものとなる(場合によっては、人間の目では知覚できないことがある)。したがって、こうした混合物は偽造防止用途に対して適切ではない。
【0015】
OVP−Aはさらに、製造装置とプロセスにコストがかかるために高価なものとなる。
【0016】
OVP−BはOVP−Aより安価であるが、OVP−Bを含んだ被覆用組成物の色ずれは弱く、ある色調(例えば赤色)内でシフトするとき、場合によっては人間の目で知覚できないことがある。したがって、OVP−Bを含んだ印刷用インキは、セキュリティー文書の複写防止用途には適していない。
【0017】
本発明の目的は従来技術の欠点を解消することにある。
【0018】
本発明の目的は特に、セキュリティー文書への適用に対して充分な色ずれを保持しつつ、OVP−Aを含んだインキ層の彩度を減少させることにある。
【0019】
本発明の他の目的は、OVP−Aを含んだ硬化層の耐薬品性を増大させることにある。
【0020】
本発明の目的は、完全に平行且つ平らな層を含む粉砕多層薄膜干渉構造物(少なくとも1つの層が全反射性であり、第1と第2の平らな表面が互いに平行であって、少なくとも1つの透明誘電体層の平らな表面の少なくとも1つ上に付着している)からなる第1の光学可変性二色性顔料フレークとポリマー樹脂バインダーとを含むインキ組成物によって達成された。前記インキ組成物はさらに、プレート状反射コアー層(少なくとも1つの透明誘電体層および/または半透明の金属層もしくは金属酸化物層で完全に取り囲まれている)を含んだ第2の光学可変多層薄膜二色性顔料を含む。第1と第2の光学可変二色性顔料は、互いに拮抗的にならないように選択される。CIELAB色測定システムにおける“拮抗的”とは、第1と第2の光学可変二色性顔料の直角視野(orthogonal view)とかすめ視野(grazing view)の両方についての色調(彩度+色相)が対称心(center of inversion)によって関係づけられている、ということを意味している。
【0021】
OVPのブレンディングは加法混色の法則にしたがう。すなわち、赤色のOVPと緑色のOVPをブレンドすると黄色が生成される。赤色と緑色の従来の顔料を使用して減法混色を行うと黒色が生成される。したがって、“拮抗的な”性質(すなわち、補色を有するか又は反対作用の色ずれを示す)をある程度有するOVP対を混合すると、極めて興味ある結果が得られる。
【0022】
OVP−AとOVP−Bとをブレンドすることによって、OVP−Aの彩度を減少させることができる。OVP−Aの彩度の減少のほかに、予想外のことに、これら2タイプのOVPのブレンド物は、ブレンド物中にてOVP−Bのほうが量的にかなり多い場合であっても、2つの識別可能な色調(人間の目で知覚できる)間で明確な色ずれ(例えば、緑色〜青色、マゼンタ色〜緑色)を保持することが見いだされた。このことにより、OVPブレンド物はセキュリティー用途に適したものとなる。
【0023】
第1の光学可変性二色性顔料の彩度C*(直角視野)は50以上であるのが好ましく、55以上であるのがさらに好ましく、そして60以上であるのがさらに好ましい。一方、第2の光学可変性顔料の彩度C*(直角視野)は50未満であり、40未満であるのが好ましく、そして30未満であるのがさらに好ましい。
【0024】
予想外の相乗効果は、OVP−A顔料の量がOVP−Bの量を超えたとしても、硬化インキ層の耐薬品性が向上することである。OVP−Aだけの代わりにOVP−AとOVP−Bとのブレンドを含んだ硬化インキ層の耐薬品性は、2%苛性ソーダ溶液、硫化ナトリウム、および工業用洗浄液(industrial laundry)に対して特に強められる。
【0025】
本発明の好ましい実施態様は、平行で平らな層のスタックを含んだ粉砕多層薄膜干渉構造物からなる第1の光学可変性薄膜二色性顔料フレークとポリマー樹脂バインダーとを含んだインキ組成物であって、このとき前記の平行で平らな層の少なくとも1つが、互いに平行な第1と第2の平らな表面を有していて少なくとも1つの透明誘電体層の平らな表面の少なくとも1つ上に配置されている反射物質であり、前記インキ組成物が、少なくとも1つの透明誘電体層および/または半透明の金属層もしくは金属酸化物層によって完全に取り囲まれているプレート状反射コアー層を含んだ第2の光学可変性薄膜二色性顔料をさらに含み、これによって第1と第2の光学可変性薄膜二色性顔料フレークの2つの二色性色相が実質的に同じになる、というインキ組成物である。第1の薄膜多層干渉構造物がOVP−Aに相当し、第2の多層干渉構造物がOVP−Bに相当する。
【0026】
色の知覚はかなり主観的であり、ある観察者が“赤”と呼ぶ色を別の観察者は“赤橙色(orange-red)”と呼ぶことがある。しかしながら、本明細書とクレームの全体にわたって使用している色の名称は以下のように定義する:赤色は、約610nm〜約700nmの波長の透過または反射した全ての色であり;オレンジ色は、約590nm〜約610nmの波長の透過および反射した全ての色であり;黄色は、約570nm〜約590nmの波長の透過または反射した全ての色であり;緑色は、約500nm〜約570nmの波長の透過および反射した全ての色であり;青色は、約460nm〜約500nmの波長の透過または反射した全ての色であり;そしてスミレ色もしくは紫色は、約400nm〜約460nmの波長の透過した全ての色である。別の定義によれば、“実質的に同じ色相”とは、CIELAB色測定システムにおいてa*とb*の値で表される色相が互いに60度より多くは異なっていない、ということを意味している。
【0027】
直角視野とかすめ視野との間の中点における色相値がOVP−AとOVP−Bの両方に対してほぼ等しいときに良好な結果が得られるのが好ましい。
【0028】
“ほぼ等しい”とは、中点間の差が30°以下であるということを意味している。
【0029】
第1の多層薄膜干渉構造物(OVP−A)が第1の反射層に関して対称構造を有しているときに特に良好な結果が得られる。この場合、反射層の前記第1と第2の表面上に、1.65以下の屈折率を有する少なくとも1つの透明誘電体層を、得られる誘電体層が平らであって、反射層の表面に対して平行であるように付着させる。
【0030】
第1の多層薄膜干渉構造物OVP−Aの視覚上の効果は、半透明の金属層もしくは金属酸化物層を誘電体層の少なくとも1つ上に付着させたときに高まる。誘電体層が半透明の金属層または金属酸化物層によって取り囲まれている場合には、同じことが第2の多層薄膜干渉物OVP−Bにも当てはまる。
【0031】
両方の多層干渉構造物に対する好ましい物質は、半透明層に対してはクロムであり、反射層に対してはアルミニウムである。
【0032】
本発明のインキ組成物においては、第1と第2の多層薄膜干渉構造物のブレンド比(OVP−A対OVP−B)は1:10〜10:1であるべきであり、好ましくは1:1.5〜1:0.6である。
【0033】
本発明のインキ組成物は非干渉顔料をさらに含んでもよい。
【0034】
OVP−AとOVP−Bのブレンドは、インキビヒクルがOVPの外観に悪影響を及ぼさない限り、いかなる適切なインキビヒクルにも導入することができる。インキビヒクルは特に、顔料の光学的効果を覆い隠すようなものであってはならず、また層物質に対して攻撃的であってはならない。インキビヒクルは一般に、少なくとも1種類の皮膜形成性ポリマーバインダー、溶媒、所望により水、体質顔料、および補助剤(例えば消泡剤、湿潤剤、レオロジー調節剤、および酸化防止剤など)を含む。
【0035】
インキ層は、公知の印刷法(特に凹版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、およびシルクスクリーン印刷)のいずれによっても下側支持体に施すことができる。
【0036】
第1と第2の多層干渉構造物を含んだインキ組成物は、セキュリティー文書(例えば紙幣、小切手、クレジットカードなど)を印刷するのに使用するのが好ましい。このようなインキ組成物を使用することによって印刷される画像の色ずれ特性は写真複写によって再現することができず、したがって文書に強いセキュリティー特性を付与する。本発明によって説明されている種類のインキは、セキュリティー文書における用途のほかに、こうした特殊な装飾的効果が求められるようないかなる商業的用途にも使用することができる。
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
3種の異なったOVP−A〔マゼンタ−to−グリーン(M/G)、グリーン−to−ブルー(G/B)、およびブルーto−レッド(B/R)〕(いずれも米国サンタローザのフレックス・プロダクツ社)を、2種の異なったOVP−BであるED1820およびED1821(BASF AG)と異なった比率でブレンドした。さらに、OVP−Aであるグリーン−to−ブルーをOVP−B ED1819(BASF)と混合した。いずれの場合もブレンドの彩度は効率的に低下し、ブレンドは驚くほど大きな光学的色ずれ特性を示すことがわかった。
【0038】
【表1】

【0039】
上記の色と色ずれは、ほぼ50:50のブレンドについて記載してある。9つの一連のブレンドについてCIELAB色空間での対応する図表を図1a〜1gに示す。
【0040】
表に示すように、2つの関連した視角において同等の色相(h値)を有するOVP−AとOVP−Bについては、ブレンドの有用な色ずれ特性が得られた。これらのケース(すなわち、ED1819とG/Bとのブレンド、ED1820とM/Gとのブレンド、およびED1821とM/Gとのブレンド)では、写真複写の防止に関して色ずれは極めて満足できるものであった。直角視野とかすめ視野との間の中点における色相値がOVP−AとOVP−Bの両方に関してほぼ等しいときに、極めて良好な結果が得られた。このことは、例えばED1821とM/Gとのブレンドにおいても言える。
【0041】
驚くべきことに、構成成分のある程度の拮抗的挙動を有する幾つかのOVPのブレンドは顕著な色ずれを示し、またED1821とG/Bとのブレンド(緑色から殆ど黒色へと変化)やED1821とB/Rとのブレンド(スミレ色から褐色へと変化)の場合もそうであった。
【0042】
種々のパーセントのOVP−Aおよび/またはOVP−Bを適切なインキマトリックス中に導入することによってシルクスクリーン印刷用インキを製造した。CIELAB色測定システムにしたがい、印刷・硬化したインキパッチ(ハンドコーターNo.3を使用して造ったシルクスクリーンプリント)に関して対応する彩度と色(色相)値hを測定した。測定は、直角視野に対しては22.5°/0°のイルミネーション/検出角度を、またかすめ視野に対しては45.0°/67.5°のイルミネーション/検出角度を使用して、PHYMA Penta Gonio PG−5機器により行った。測定値は、表1a〜1gおよび対応する図1a〜1gと図2においてブレンド組成の関数として記載されている。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
ブレンドに関して、2%苛性ソーダ水溶液に対する耐薬品性(30分、25℃)、硫酸ナトリウム飽和水溶液に対する耐薬品性(30分、25℃)、および工業用洗浄液に対する耐薬品性(30分、95℃)が大幅に向上した。100%OVP−Aによるインキを含んだインキ層は簡単に黒くなり、色ずれが完全に消失するが、ブレンドによるインキを含んだインキ層は、色が幾分黒っぽくなるものの、色と色ずれは保持している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1b】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1c】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1d】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1e】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1f】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図1g】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。
【図2】実施例で調製したブレンドの光学的色ずれ特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全に平行で平らな層のスタックを含んだ粉砕多層薄膜干渉構造物からなる第1の光学可変性二色性顔料フレークとポリマー樹脂バインダーとを含んだインキ組成物であって、前記の平行で平らな層の少なくとも1つが全反射性であり、互いに平行な第1と第2の平らな表面を有していて、少なくとも1つの透明誘電体層の平らな表面の少なくとも1つ上に付着されており、このとき前記インキ組成物が、少なくとも1つの透明誘電体層および/または半透明の金属層もしくは金属酸化物層によって反射コアー層が完全に取り囲まれているプレート状反射コアー層を含んだ第2の光学可変性多層薄膜二色性顔料をさらに含み、前記第1と第2の光学二色性顔料が、互いに拮抗的とならないように選択されるインキ組成物。
【請求項2】
第1の光学可変性二色性顔料の直角視野における彩度C*が50以上であり、第2の光学可変性二色性顔料の直角視野における彩度C*が50未満であることを特徴とする、請求項1記載のインキ組成物。
【請求項3】
前記第1と第2の光学可変性顔料の直角視野とかすめ視野との間の色相の中点が互いに30°より大きくは異ならないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のインキ組成物。
【請求項4】
完全に平行で平らな層のスタックを含んだ粉砕多層薄膜干渉構造物からなる第1の光学可変性二色性顔料フレークとポリマー樹脂バインダーとを含んだインキ組成物であって、前記の平行で平らな層の少なくとも1つが全反射性であり、互いに平行な第1と第2の平らな表面を有していて、少なくとも1つの透明誘電体層の平らな表面の少なくとも1つ上に付着されており、前記インキ組成物が、少なくとも1つの透明誘電体層および/または半透明の金属層もしくは金属酸化物層によって反射コアー層が完全に取り囲まれているプレート状反射コアー層を含んだ第2の光学可変性多層薄膜二色性顔料をさらに含み、このとき第1の光学可変性二色性顔料と第2の光学可変性二色性顔料の2つの二色性色相が実質的に同じであるインキ組成物。
【請求項5】
第1の多層薄膜干渉構造物が対称性であって、屈折率が1.65以下で反射層の表面に対して平行且つ平らな表面をもった少なくとも1つの透明誘電体層を反射層の表面の両方上に有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項6】
第1の多層薄膜干渉構造物が、前記誘電体層の少なくとも1つ上に配置された半透明の金属層または金属酸化物層をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項7】
第2の多層薄膜干渉構造物が、前記誘電体層上に配置された半透明の金属層または金属酸化物層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項8】
第1および/または第2の多層薄膜干渉構造物の反射層が金属または金属酸化物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項9】
第2の多層干渉構造物の少なくとも1つの層が化学蒸着によって生成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項10】
前記第1の光学可変性二色性顔料と前記第2の光学可変性二色性顔料との比が1:10〜10:1の範囲であり、好ましくは1:1.5〜1:0.6の範囲である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項11】
第1の干渉構造物と比較して第2の多層構造物のほうが、視角に対する色ずれがより少なく、または彩度がより弱い、請求項1〜10のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【請求項12】
第1と第2の表面を有していて、前記表面のうちの1つの面積の少なくとも一部が請求項1〜11のいずれか一項に記載のインキ組成物で被覆されているセキュリティー文書。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−50612(P2008−50612A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252853(P2007−252853)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願2000−575947(P2000−575947)の分割
【原出願日】平成11年10月8日(1999.10.8)
【出願人】(500269417)シクパ・ホールディング・ソシエテ・アノニム (23)
【Fターム(参考)】