説明

筆記具

【課題】ノック部材の首部やノック伝達腕部の強度を上げ、キャップの長手方向における中心軸線に対してノック部材に回転方向の力が作用した場合に、首部がねじれるように変形し、ノック部材が脱落してしまったり、首部からねじ切られてしまうようなことのない筆記具を提供する。
【解決手段】軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材15が配置された筆記具であって、押圧部材15を筒状部材から形成すると共に、押圧部材15の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材15の中間部で係合部の後方に縮径部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後端開口より少し前方位置の内周面に後面がテ−パ状のリブを突設したキャップに対し、外径が前記リブの内径より大きくてリブより後方のキャップ内部で軸方向に移動自在なノック頭部と、そのノック頭部の前面に一体的に突設されてリブを貫通する外径の小さい首部と、更に、その首部の前方に肩部を介して前記リブの内径より外径が大になるように一体的に連設されると共に、弾性変形によりその外径を縮小させながらリブを貫通することによってそのリブより前方のキャップ内部に配されるノック伝達腕部とから成るノック部材を組付けたノック式筆記具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−76790号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術にあっては、ノック部材の首部やノック伝達腕部が対向する2か所にしか形成されていないため、その首部やノック伝達腕部以外の側面部分は、空間部になってしまっている。即ち、首部やノック伝達腕部は、強度に欠けるものになってしまっている。
【0005】
その結果、ノック部材をキャップに挿着することは容易であるものの、キャップの長手方向における中心軸線に対してノック部材に回転方向の力が作用してしまうと、首部がねじれるように変形し、ノック部材が脱落してしまったり、ややもすると、首部からねじ切られてしまったりしてしまう危険性もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の後方に縮径部を形成したことを第1の要旨とし、軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の前方に縮径部を形成したことを第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の後方に縮径部を形成したことを第1の要旨とし、軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の前方に縮径部を形成したことを第2の要旨としているので、押圧部材の軸筒からの脱落を極力防止できると共に、仮に、押圧部材に回転方向の力が作用したとしても、ねじ切られてしまうようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1例を示す縦断面図(ボールペン収納状態)。
【図2】図1の側面縦断面図。
【図3】第1例を示す縦断面図(ボールペン突出状態)。
【図4】図2の側面縦断面図。
【図5】押圧部材の拡大縦断面図。
【図6】図5の側面縦断面図。
【図7】第2例を示す要部縦断面図。
【図8】第3例を示す要部縦断面図。
【図9】第4例を示す要部縦断面図。
【図10】第1例の射出形状態を示す要部縦断面図。
【図11】第4例の射出形状態を示す要部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜図6に本願発明における第1例を示し説明する。押圧部材の押圧操作によってボールペン体が出没する、所謂、ノック式ボールペンである。
軸本体1は、中軸2とその中軸2の前方に着脱自在に取り付けられた先部材3、並びに、中軸2の後方に固定された尾栓(本願発明の軸筒に相当。)4とから構成されている。前記中軸2の前方には、凹部5が形成されており、その凹部5には弾性材質からなるグリップ部材6が挿着されているが、そのグリップ部材6の前方部は、前記先部材3の後部を被覆している。
前記中軸2の後方には、貫通孔7が形成されており、その貫通孔7には前記尾栓4の係合突起8が係合している。この係合突起8の貫通孔7に対する係合によって尾栓4の中軸2に対する脱落が防止され、固定された状態になっている。尚、尾栓4の前方には、後述する回転子が係合するカム面9やカム溝10が形成されている。参照符号11は、尾栓4の外面に一体的に形成されたクリップでるが、そのクリップ11を別部材で構成し、その尾栓4、或いは、前記中軸2に圧入などの手段によって固定しても良い。
また、尾栓4の後部内面には、大径部12が形成されており、その大径部12の前方には小径部13が形成されている。そして、それら、大径部12と小径部13とは、円錐形部14によって連設されている。この尾栓4は、射出成型によって樹脂成形されるが、この時、前記大径部12は前端近傍に円錐縮径部(前記円錐形部14が成形される部分。)を有する第1コアピンによって成形されると共に、その第1コアピンAの前方に位置し、前記小径部13を成形する第2コアピンBとによって形成される。尚、尾栓4を成形する際、前記第1コアピンAの先端部と第2コアピンBの先端部が当接するが、その当接部分に極僅かながらのバリが発生してしまうこともある。
尚、前記尾栓4の大径部の長手方向における長さが、後述する押圧部材の大径筒部が前後動する移動距離になっているが、前記長手方向に長さは、大径部が移動する距離以上の長さを有している。寸法状のばらつきを考慮してのことであり、仮に、多少ではあるもの短く形成されたとしても、ボールペン体の出没動作が良好に行えるものとなっている。
【0010】
前記尾栓4の内部には、押圧部材15が摺動自在に配置されている。その押圧部材15の内側には、押圧管16の後部が挿入されており、その押圧管16の前端部は前記中軸2の前方部まで延設されている。そして、その押圧管16の前端部と、中軸2の内面に設けられた縦リブ17の後端部18との間には、コイルスプリングなどからなる弾発部材19が配置されている。つまり、押圧管16と、その押圧管16を介して前記押圧部材15とを後方に向けて付勢している。また、その押圧管16にはボールペン体20が圧入固定されているが、着脱自在に取り付けられている。具体的に説明すると、押圧管16の後部内面には、ボールペン体20の後部外径部よりも小さな小径部が形成されており、その小径部にボールペン体20の後部が着脱自在に取り付けられているのである。その結果、ボールペン体20も押圧管16を介して後方に向けて付勢されている。
尚、符号21は、前記押圧部材15の先端と押圧管16の中間部に配置された回転子であって、その回転子21は押圧管16の中間部に形成された段部22に当接している。
【0011】
次に、前記押圧部材15について、具体的に説明する。押圧部材15の中間部にはコの字型の切り欠き部23を形成することによって、弾性変形が可能な腕部24が対向した位置に形成されている。その腕部24の後部には、外側方向に向けて突部25が形成されている。そして、その突部25は前記尾栓14に形成された溝部10に対して摺動可能に係合している。
また、押圧部材15は、尾栓4の後端開口部から露出する大径筒部26と、前記腕部24が形成されている小径筒部27から構成されているが、その小径筒部27であって腕部24の後方には、更に小径な縮径部28が形成されている。その縮径部28の後端部は、前記大径筒部26の前端部まで達している。また、その縮径部28の表面には、凹部29が形成されており、その凹部29には、押圧部材15を成形する金型のキャビティー番号が成形されている。前記小径部の外径は尾栓4の小径部13の内径とほぼ同径をなしている。押圧部材15を押圧した際における、その押圧部材15と尾栓4との振れが防止されるようになっているのである。尚、ほぼ同径とは言っても、押圧部材15が尾栓4に対してスムーズに摺動し得るほんの僅かな隙間は有している。しかし、その小径部27の後方に位置する縮径部28の外径は尾栓4の小径部13の内径よりも小径に形成されており、小径部13との間に隙間30を形成している。前記大径部12と小径部13との連結部に、万が一、射出成型によるバリが発生したとしてしまっても、そのバリを隙間30が吸収することによって、押圧部材15の尾栓4に対する摺動が良好に維持されるのである。
尚、本例における縮径部28の前方には、円錐部31が形成されており、前方に向けて徐々に拡径している。徐々に拡径させることによって、射出成型時の成型性が向上されると共に、ボールペン体20の出没操作時に尾栓4の内面に傷などが付きにくくなる。
また、押圧部材15(大径筒部26)の頂部には、凹部32形成されており、その凹部32の中央部分が射出成形する際に樹脂が流入するゲート部33となっている。
【0012】
第2例を図7に示し説明する。本例における押圧部材34の縮径部35の後方には、後方に向けて拡径する円錐部36が形成されている。射出成型の際、樹脂が大径筒部37から容易に縮径部35へと導かれるようになっているのである。
第3例を図8に示し説明する。本例においても、前記第1例と同様に、押圧部材38の小径筒部39の中間部には、その小径筒部39の外径よりも小さな縮径部40が形成されている。小径部39の中間部に縮径部40を形成することによって、押圧部材38の尾栓に対する振れが防止されると共に、押圧部材38の折損強度が最も弱くなる大径部と小径部との接合部における肉厚を維持することができ強度が保たれる。
これら第2例や第3例においても、小径部よりも小さな縮径部35、40が、前記バリが発生してしまう危険性の高い円錐部14をほぼ中心にして、上下方向の範囲に渡って形成されている。その結果、万が一、円錐部14に成形上におけるバリが発せしたとしてしまっても、押圧部材の尾栓4に対する良好な摺動が得られるものとなっている。
【0013】
第4例を図9に示し説明する。尾栓41を射出成型によって成形する際、その尾栓41の内径を形成する第1コアピンCの先端部と第2コアピンDの先端部を、前記腕部24に形成した突部25近傍で当接させた例である。この当接位置によって、射出成形の際には、突部25の近傍にバリが発生しやすくなってしまう。
そこで、本例においては、押圧部材42の大径筒部43の前方に小径筒部44を形成すると共に、その小径筒部44の前方部であって、弾性変形が可能な腕部24の前方に小径筒部44の外径よりも小さな縮径部45を形成している。この縮径部45によって、万が一、突部25の近傍に成形上におけるバリが発せしたとしてしまっても、押圧部材42の尾栓4に対する良好な摺動が得られるものとなっている。
【符号の説明】
【0014】
1 軸本体
2 中軸
3 先部材
4 尾栓
5 凹部
6 グリップ部材
7 貫通孔
8 係合突起
9 カム面
10 カム溝
11 クリップ
12 大径部
13 小径部
14 円錐形部
15 押圧部材
16 押圧管
17 縦リブ
18 後端部
19 弾発部材
20 ボールペン体
21 回転子
22 段部
23 切り欠き部
24 腕部
25 突部
26 大径筒部
27 小径筒部
28 縮径部
29 凹部
30 隙間
31 円錐部
32 凹部
33 ゲート部
34 押圧部材
35 縮径部
36 円錐部
37 大径筒部
38 押圧部材
39 小径筒部
40 縮径部
41 尾栓
42 押圧部材
43 大径筒部
44 小径筒部
45 縮径部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の後方に縮径部を形成した筆記具。
【請求項2】
軸筒の内部に筆記体が前後動可能に配置され、また、軸筒の後部には前記筆記体を移動せしめる押圧部材が配置された筆記具であって、その押圧部材を筒状部材から形成すると共に、その押圧部材の周面に弾性変形が可能な係合部を形成する一方、前記軸体にはその係合部が係合する係合受部を形成し、また、押圧部材の中間部であって係合部の前方に縮径部を形成した筆記具。
【請求項3】
前記軸筒の中間部に段部を形成すると共に、その段部と対応する位置に前記縮径部を形成した請求項1、或いは、請求項2に記載の筆記具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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