説明

筆記具

【課題】
インク又は芯を搭載した筆記具において、筆記動作と消去動作を素早くかつ静かに切り替えできることができなかった。
【解決手段】
一つの筆記具本体の中に、熱変色性インク又は消しゴム消去性インク又は鉛筆芯を搭載し、ペン先がボールペン又はマーキングペン又はシャープペンシル等である筆記部1と筆記部1で筆記した描線を変色又は消去可能な消去具2を収容し、筆記部1と消去部2の先端部を同一側の端部に設けることを特徴とすることで、筆記と消去の迅速な切り替えを容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記した描線を消去することが可能な消去部を設けた筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記した描線を消去することが可能な筆記具、特に筆記した描線を擦過熱で消去可能な筆記具として、特許文献1のような技術が開示されている。特許文献1には、熱変色性インキによる筆跡を擦過熱で熱変色させるための摩擦部を、キャップの頂部に設ける構成や軸胴の後端に設ける構成が図示されている。また、特許文献2には、熱変色インクを収納した二本の筆記体のペン先が一つの共通の摩擦部と兼用されたキャップを設けられている技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−206432
【特許文献2】特開2009−107229
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、特許文献2共に筆記先端に対し描線を消去させる摩擦部が筆記ペン先部とは対称とした位置にあるため、ペン体を反転やキャップ取り外し動作等の持ち替えの動作が必要であり、筆記と変色又は消色を切り替えるのに時間が掛かってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、鋭意開発の末、上記課題を解決するために以下の発明を実現するに至った。
筆記部と筆記部によって筆記された描線を消去可能な消去部が同一側の端部に配置されたことを特徴とする筆記具である。
例えば、筆記部にインク収容管を取り付けインク収容管内に熱変色性インクを充填した筆記具の筆記部と熱変色性インクで筆記した描線を変色可能な消去部とを同一側の端部に配置させた筆記具、筆記部にインク収容管を取り付けインク収容管内に水と、平均粒子径1〜15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインキ組成物全量に対して、3〜30重量%と、0.1〜10重量%の非着色粒子とを少なくとも含有する消しゴム消去性インクを充填した筆記具の筆記部と消去部としての消しゴムとを同一側の端部に配置させた筆記具、シャープ芯を繰り出し可能な筆記部と消去部としての消しゴムとを同一側の端部に配置させた筆記具などが挙げられる。
【0006】
また筆記部と消去部の配置は各1つずつではなく、合計3種以上の配置も可能である。例えば、筆記部にインク収容管を取り付けインク収容管内に熱変色性インクを充填した異なるインク色である2種類の筆記具の筆記部と熱変色性インクで筆記した描線を変色可能な消去部とを同一側の端部に配置させた筆記具、筆記部にインク収容管を取り付けインク収容管内に熱変色性インクを充填した筆記具の筆記部と筆記部にインク収容管を取り付けインク収容管内に水と、平均粒子径1〜15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインキ組成物全量に対して、3〜30重量%と、0.1〜10重量%の非着色粒子とを少なくとも含有する消しゴム消去性インクを充填した筆記具の筆記部と2種類のインクで筆記した描線を変色又は消去できる1種類の消去部とを同一側の端部に配置するなどが挙げられる。
【0007】
さらに筆記部と消去部の各々先端部は略同じ位置に揃えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると筆記と消去の持ち替え動作が極めて少なくて済む。また、片手しか使用できない場合でも誤って筆記した文字や描線を迅速に消去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明における第1の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明における第1の実施形態を示す全体図である。
【図3】本発明における第2の実施形態を示す全体斜視図である。
【図4】本発明における第2の実施形態を示す全体図である。
【図5】本発明における第3の実施形態を示す全体斜視図である。
【図6】本発明における第3の実施形態を示す全体図である。
【図7】本発明における第4の実施形態を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明における各実施形態について図面を参照して説明する。
なお本明細書内において、前方とは筆記部側、後方とは筆記部側とは他端側のことをいう。また消去とは、熱変色性インクを用いた筆記具においては筆記した描線色を変色又は消色状態にすることが可能なこと、消しゴム消去性インクやシャープ芯を用いた筆記具において筆記した描線を消しゴム等で吸着又は削ぎ落とすことが可能なことをいう。
【0011】
第1の実施形態について図1から図2を用いて説明する。図1(a)は全体斜視図、図1(b)は図1(a)における断面斜視図、図2(a)はキャップを外した状態の左側面図、図2(b)はキャップを外した状態の平面図、図2(c)はキャップを外した状態の正面図、図2(d)は断面図である。
第1の実施形態の筆記具は、筆記部1と消去部2を同一側の前方に並列に配置しているので軸の回転動作だけで容易に筆記と消去を切り替えることができる。また、各々の先端部は軸体3から略同じ量が突出していることで、筆記時と消去時における使用感を低下させることがない。
筆記具の構成は、後方に尾栓5を嵌合し、平面部32と半円部31を組み合わせた軸体3に筆記部1と消去部2が前方の同一端部に配置し、先軸4を前方から被せて一体の筆記具となっている。また、前方からキャップ6を嵌合することもでき、未使用時の筆記部1と消去部2の保護をすることができる。キャップ6内部には、シールゴム61を嵌着しキャップ6を軸体3に取り付けた際には筆記部1を接触し、インク13の乾燥をより防止することができる。
筆記部1には、筆記部1の後方側に継手11、更に後方にインク収容管12を嵌着し、インク収容管12内にはインク13を充填し、インク13の後方側にはインク13の逆流や揮発を防止する逆流防止体14を設け、インク収容管12の後端にリフィール尾栓15を装着した構成となっている。
消去部2は、消去部2の後方側にインク収容管12を嵌着し、インク収容管12の後端にリフィール尾栓15を装着した筆記部1と略同様な構成となっている。
【0012】
本実施形態の筆記部1は、一般でいうボールペンチップとなっている。前記ボールペンチップは、チップ本体の先端に回転可能にボールが抱持された構成である。また、前記ボールペンチップは、ボールをチップ本体内から前方に弾発体により付勢し、ボールをチップ本体のカシメ部(先端縁部)内面に圧接させる構成がインクのカスレや揮発を防ぐことができるので有効である。筆記部1はボールペンチップでなく、他に多孔質ペン体(繊維加工体または多孔質気泡体)、軸方向の毛細管通路を有する合成樹脂の押出成形よりなるペン体、先端にスリットを有する金属製板状ペン体、毛筆ペン体等、いずれであってもよい。多孔質ペン先を筆記部にした場合は、例えば、繊維加工体または多孔質気泡体からなるペン体が挙げられる。前記多孔質ペン体は、先端部が、チゼル形状または砲弾形状に形成される。
【0013】
本実施形態のおけるインク13は熱変色性インクを用いている。熱変色性インクは、可逆熱変色性インクが好ましい。又は可逆変色性インクではなく復色しない不可逆変色性インクでもよい。前記可逆熱変色性インクは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。また可逆熱変色性インクに含有される色材は、(A)電子供与性呈色性有機化合物、(B)電子受容性化合物、及び(C)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、粒子径の平均値が0.5〜5.0μm、好ましくは1〜4μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が5.0μmを越える系では、ボールペンチップや多孔質ペン体の毛細間隙からの流出性が低下し、平均粒子径が0.5μm以下の系では高濃度の発色性を示し難くなる。可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、2〜50重量%(好ましくは3〜40重量%、更に好ましくは、4〜30重量%)配合することができる。2重量%未満では発色濃度が不充分であり、50重量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性が阻害される。
【0014】
消去部2は、軟質材料からなることが好ましい。軟質材料とは、ゴム弾性を有する樹脂(ゴム、エラストマー)が挙げられ、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
特にポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、または、ポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物からなり、その配合比率がそれぞれ重量比で1:1〜1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度Aが70°〜100°となる材質とすることが望ましい。
上記の構成する軟質材料は、筆記部1のインク13に熱変色性インク又は消しゴム消去性インクを用いた場合、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、低摩耗性の弾性材料からなるものが、消しカスが生じない点で有効である。
【0015】
可逆熱変色性インキにおける消去部2の擦過熱による変色温度は、好ましくは36℃〜95℃に設定される。即ち、本発明では、前記高温側変色点〔完全消色温度〕を、好ましくは、36℃〜90℃の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度〕を、好ましくは、−30℃〜+10℃の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる像または筆跡を消去部による擦過熱で容易に変色することができる。
【0016】
軸体3は平面部32を形成することでロゴの記入等の名入れスペースを広く確保することができ、宣伝効果を強くすることができる。
先軸4は筆記部1と消去部2の前方の先端側が突出できるよう2箇所の貫通孔を形成し、筆記部側の視認性を向上するために前方から後方にかけて拡径したテーパ形状となっている。テーパ形状にすることで筆記部1と消去部2の視認性を向上させることができる。
尾栓5と先軸4は使用時に筆記部1及び消去部2のガタツキを防ぐように軸体に固定されている。固定方法は、嵌合、接着等が用いられる。
【0017】
第2の実施形態について図3から図4を用いて説明する。図3(a)は全体斜視図、図3(b)は図3(a)における断面斜視図、図4(a)はキャップを外した状態の左側面図、図4(b)はキャップを外した状態の平面図、図4(c)はキャップを外した状態の正面図、図4(d)はキャップを外した状態の断面図である。
第2の実施形態の筆記具は、第1の実施形態と大きく異なる点として、軸体3の外形は平面部32が形成されていない円形状である。円形状にすることで筆記部1と消去部2が第1の実施形態より接近することができ先端の視認性が向上すること、また持ちやすく筆記部1と消去部2との切り替え時の回転動作がより容易となる。軸体3を円形状にするには、消去部2をインク収容管12等の筆記部1と共通した部材に接続せず先軸4に直接接続することで消去部2に占める断面積を減らすことができるので、筆記部1と消去部2との配置の自由度を向上させることができる。
【0018】
筆記部1に接続する継手11、インク収容管12、逆流防止体14、リフィール尾栓15等は第1の実施形態と同様であるが、インク収容管に充填するインク13を消しゴム消去性インクとした。
消しゴム消去性インクは、水と、平均粒子径1〜15μmの非熱可塑性着色樹脂粒子をインキ組成物全量に対して、3〜30重量%と、0.1〜10重量%の非着色粒子とを少なくとも含有することが必要である。本発明の水性インキに用いる着色樹脂粒子は、着色された樹脂粒子からなるものであり、非熱可塑性であり、かつ、平均粒子径が1〜15μmとなるものであり、例えば、樹脂粒子中に顔料からなる着色剤が分散された着色樹脂粒子、樹脂粒子の表面が顔料からなる着色剤で被覆された着色樹脂粒子、樹脂粒子に染料からなる着色剤が染着された着色樹脂粒子などが挙げられる。本実施形態では、着色樹脂粒子が非熱可塑性で上記平均粒子径を充足するものであれば、その構造〔中空構造あり、中空構造なし(密実)〕、形状(球状、多角形状、扁平状、繊維状)等は特に限定されるものでないが、好ましくは、優れた消しゴム消去性、筆記性、インキとしての経時安定性を発揮させる点から、ガラス転移点が150℃以上で熱分解温度に近く、更にはメルトフローインデックス値が0.1未満であるような分子内架橋を持つ粒子で粘着性を有せず、かつ、平均粒子径が1〜15μmとなる球状の着色樹脂微粒子の使用が望ましい。
【0019】
消去部2は従来からの可塑剤を含有する消しゴムでも良いが、第1実施形態と同様の材料を採用すると消し屑が発生しにくいので望ましい。
尾栓5は前方がリフィール尾栓15内に挿入できる形状となっており、筆記部1の軸体3内の位置決めとインク収容管12の変形防止の役割となっている。
【0020】
第3の実施形態について図5から図6を用いて説明する。図5(a)は全体斜視図、図5(b)は図5(a)における部分断面斜視図、図6(a)はキャップを外した状態の左側面図、図6(b)はキャップを外した状態の平面図、図6(c)はキャップを外した状態の正面図、図6(d)はキャップを外した状態の断面図である。
第3の実施形態の筆記具における筆記部の形態は、第2の実施形態と異なる点として、2種類の筆記部1と1つの消去部2の計3種類が同一端部側に配置されている。筆記部1と消去部2の先端の間隔は略等間隔に配置していると筆記の快適性や切り替えの容易性を確保することができる。2種類の筆記部1のインク13は黒色と赤色の異なる着色剤を充填した熱変色性インクが充填されているが、消しゴム消去性インクでもよく、また異なるペン先形状やボール径を異なるようにしてもよい。さらに一本の筆記具で筆記距離を増やすために同じインクであってもよい。その他の構成については、第2実施形態と略同様である。
【0021】
第4の実施形態について図7を用いて説明する。図7(a)は全体斜視図、図7(b)は図7(a)における断面斜視図である。
第4の実施形態の筆記具は、第2の実施形態と異なる点として、軸体3の形状を卵型にすることで切り替え時の回転動作と筆記と消去時の持つ手の位置決めを容易にしたことである。その他の構成については、第2実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、筆記部と消去部が同方向側の端部に備えられ、筆記動作と消去動作をスムーズに切り替えることが容易な産業上の利用可能性のある有益な発明である。
【符号の説明】
【0023】
1 筆記部
2 消去部
3 軸体
4 先軸
5 尾栓
6 キャップ
11 継手
12 インク収容管
13 インク
14 逆流防止体
15 リフィール尾栓
31 半円部
32 平面部
61 シールゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記部と筆記部によって筆記された描線を消去可能な消去部が同一側の端部に配置されたことを特徴とする筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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