説明

筆記具

【課題】シャープペンシルやボールペン等にカスタマイズ可能なノック式筆記具のリフィルの構造を簡素化してリフィルの交換をより安価でかつ容易に行えるようにする。
【解決手段】軸筒20内部に収容され先端から出退可能な筆記先端82を有する筆記部材70と、これを前方へ押圧するノック部材40、回転部材50及びカム機構60を備えたノック機構30を有し、ノック部材40の前方への押圧に伴い、回転部材50の摺動突条51がカム機構60のカム溝64内にてノック部材40の摺動突起41に前方へ押されることで回転部材50も前方へ移動し、摺動突条51の後端縁がカム機構60の係止突条61の係止縁62を乗り越え、係止縁62の傾斜に沿って摺動突条51が移動し、摺動突条51と係止縁62とが完全に係合することで筆記先端82は先端から突出し、さらにノック部材40を前方へ押圧しても摺動突条51が係止縁62とカム機構60の誘導縁63との段差を乗り越えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフィルとしてシャープペンシル並びにボールペン、マーカーペン及び修正ペン等の流動性を有するインク等が塗布されるもののいずれかを着脱可能とした、ノック機構を備えた軸筒を有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
ノック機構によって筆記先端が出退するような筆記具として、ボールペンやシャープペンシルが広く使用されている。これらはそれぞれ独立の単一の機能を持つ筆記具として提供されたり、また、これらを1本の軸の中に収容した多機能の筆記具として提供されることもある。また、最近は、ボールペンのみならずシャープペンシルの筆記機構部分をリフィル化して、軸筒を共用部材として、その中に、使用者が好みの色のボールペンリフィルを装着したり、またその代わりにシャープペンシルリフィルを装着したりしてカスタマイズが可能となっている筆記具も提供されている。そのような筆記具の一つとして、下記特許文献1に記載の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−50610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術におけるような、カスタマイズ可能なノック式の筆記具においては、ボールペンリフィルの場合もシャープペンシルリフィルの場合も、リフィルの側にノック機構を設ける必要があった。特にボールペンの場合、リフィルはインクが消耗すると交換される消費部材であるため、そこにノック機構を設けなければならないとなるとリフィルの構造が複雑化するとともにコスト面でも不利である。しかし、リフィルとして標準化する必要上、ボールペンリフィルとシャープペンシルリフィルとで構造をある程度共通化する必要もある。
そこで本発明は、使用者の好み又は選択によりシャープペンシルにもボールペンにも、あるいはその他の筆記具あるいは塗布具、たとえばマーカーペンや修正ペン等にもカスタマイズ可能なノック式筆記具において、リフィルの構造をできるだけ簡素化し、リフィルの交換をより安価でかつ容易に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明は、先端と後端とにそれぞれ開口部22,24を有する軸筒20と、
前記軸筒20内部に収容されるとともに前記先端の開口部22から出退可能な筆記先端82又は塗布先端93を有する筆記部材70と、
前記後端の開口部24から突出するノック部材40を備えたノック機構30を有する筆記具10であって、
前記ノック機構30は、
前記ノック部材40と、
前記ノック部材40の先端側に位置しノック部材40の押圧に伴い所定の周方向に回転可能な回転部材50と、
前記軸筒20後端付近の内周面に設けられるカム機構60と、
前記回転部材50を常に後方へ付勢する復帰スプリング26と、
を備えるとともに、
前記ノック部材40は、その外側面に突出して設けられる摺動突起41を有し、
前記回転部材50は、その外側面に突出しかつ軸方向に延伸して設けられるとともにその後端縁が前記回転方向の反対方向に傾斜している摺動突条51を有し、
前記カム機構60は、
前記軸筒20後端付近の内周面に内方に突出しかつ軸方向に延伸して複数組等配して設けられる係止突条61と、
前記各係止突条61間の溝として形成されるカム溝64と、
を有し、
前記カム溝64内では前記摺動突起41及び前記摺動突条51が軸方向に前後に摺動可能となっており、
前記係止突条61の先端縁のうち、前記カム溝64の前記回転方向側に位置する部分は、同回転方向に向かって後端方向へ傾斜することで、前記摺動突条51の後端縁が係止可能となっている係止縁62として形成され、
前記係止突条61の先端縁のうち、前記カム溝64の前記回転方向側に対し反対側に位置する部分は、同前記係止縁62よりも先端寄りに位置しかつ同回転方向に向かって後端方向へ傾斜することで前記摺動突条51を同カム溝64へ誘導する誘導縁63として形成され、
前記筆記部材70として、前記筆記先端82としての芯88を繰り出すチャック機構86を備えたシャープペンシルリフィル80、並びに、流動体92を収容する流動体収容管91及びこの流動体92による塗布がなされる前記塗布先端93を備えた塗布リフィル90のいずれかが択一的に前記軸筒20内に収容され、
前記塗布リフィル90の先端付近には前記塗布先端93の外径より大径でかつ前記軸筒20の先端の開口部22よりも大径な先端段部95が形成され、
前記係止縁62の後端から前記誘導縁63の先端までの距離をL、
前記シャープペンシルリフィル80のノックストロークをX及び
前記塗布先端93が前記軸筒20の先端の開口部22から露出した状態における前記先端段部95と前記軸筒20の先端の開口部22との距離をA
とそれぞれ定義したとき、
X<L<A
との関係を満たすことを特徴とする。
【0006】
本発明の「筆記具10」とは、「軸筒20」に「シャープペンシルリフィル80」あるいは「塗布リフィル90」のいずれかが「筆記部材70」として収容され、それらの「筆記先端82」あるいは「塗布先端93」がいずれも軸筒20側に設けられている「ノック機構30」によって操作し得るものである。なお、本発明における「先端」とは、筆記具10の筆記先端82が位置する側であって「前方」とはこの「先端」に向かう方向をいい、「後端」及び「後方」とはそれぞれこれらの反対である。
ここで、「塗布リフィル90」とは、「流動体92」の種類によって様々なものが可能である。たとえば、流動体92としてボールペン用インクが収容される場合には、塗布リフィル90は塗布先端93として筆記ボール93bを抱持したボールペンチップ93aを備えたボールペンリフィル90aとなる。また、流動体92としてマーカーペン用インクが収容される場合には、塗布リフィル90はたとえば繊維束体で塗布先端93が形成されたマーカーペンリフィルとなる。さらに、流動体92として誤字・誤記等の修正に用いられる修正液が収容される場合には、塗布リフィル90はたとえばボールペンチップ様の筆記ボールを塗布体として備えた塗布先端93を有する修正ペンリフィルとなる。なお、本発明においては「塗布」とは「筆記」をも包含する概念として使用している。
【0007】
「軸筒20」とは、筆記具10の外側を構成する部材であって、上記いずれかの筆記部材70が任意に装着可能に形成されている。たとえば、先端側と後端側との2部材が螺合する構造で、これらを分解して筆記部材70を装着ないし交換することが可能に構成されることが望ましい。この軸筒20の両端にはそれぞれ開口部22,24が設けられており、先端側の開口部22からは後述の「筆記先端82」あるいは「塗布先端93」が出退可能となっている。また、後端側の開口部24からは後述の「ノック機構30」の一部が出退可能となっている。
「ノック機構30」とは、筆記部材70の筆記先端82を操作するための機構である。具体的には、筆記部材70がボールペンリフィル90aの場合には、ノック機構30の操作でボールペンチップ93aが出退することになる。また、筆記部材70がシャープペンシルリフィル80の場合には、ノック機構30の操作で芯88が繰り出されることになる。
【0008】
このノック機構30とは、軸筒20側に設けられる構造としての「カム機構60」と、軸筒20とは別部材である「ノック部材40」、「回転部材50」及び「復帰スプリング26」とを構成として含む機構をいう。ここで、カム機構60については、軸筒20の内周面に一体に形成されるものであっても、また、別部材として形成しこれを軸筒20の内周面の当該位置に嵌挿して固定されるものであっても、いずれでもよい。
「カム機構60」は、軸筒20後端付近の内周面において内方に突出する突条としての「係止突条61」と、この係止突条61が形成されることで存在することとなる溝としての「カム溝64」とを有する。そして、この「係止突条61」の先端縁は、軸筒20の円周に対して、一定方向に傾斜しており、かつ、その「一定方向」に対して正方向側の部分が、逆方向側の部分より先端側に位置している。すなわち、係止突条61の先端縁はその「一定方向」に沿って見た場合、カム溝64の次に、より後方側に位置する部分(「係止縁62」)がまず来て、そして次により前方側に位置する部分(「誘導縁63」)が来て、そしてまた次のカム溝64が来る、というように形成されている。
【0009】
「ノック部材40」とは、通常その最後端部を構成する「ノックボタン42」などと称される構造を使用者が押圧することによって前記軸筒20の後端の開口部24から出退動作を繰り返すものであって、この動作を通じて筆記先端82や塗布先端93の出退が操作されることとなっている。このノック部材40の外周面には前記カム溝64に沿って摺動する「摺動突起41」が設けられている。この機能については後述する。
「回転部材50」とは、上記ノック部材40の押圧により押圧されることで、前記カム溝64の説明における「一定方向」に回転するようになっている部材である。この回転部材50には、前記カム溝64に沿って摺動するとともに、該カム溝64を脱して前記係止縁62と係止可能な「摺動突条51」が設けられている。さらに、この回転部材50の先端部分には、前記筆記部材70が装着されることが望ましい。ここでその装着の方法としては、たとえば「リフィル装着孔52」を回転部材50の軸心部分に設けて、そこに筆記部材70の後端を圧入して装着することとしてもよいし、回転部材50の軸心に突出構造を設けて、これを筆記部材70の後端に設けた開口ないし孔に圧入して装着することとしてもよい。なお、「リフィル装着孔52」を設ける場合の方が、リフィルの有効長をより長くできるので収容できるインク等の流動体量をより多くすることができる。さらに、筆記部材70が直接この回転部材50に装着されなくとも、たとえばこれらの間のなんらかの部材を介して間接的に装着されるようなものであってもよい。
【0010】
すなわち、本発明は、交換可能な筆記部材70にノック機構30に関与する構造を一切設けないことで、筆記部材70の構造を単純化することが可能となっている。
ここで、筆記部材70が塗布リフィル90の場合、その先端付近には塗布先端93としての外径より大径でかつ前記軸筒20の先端の開口部22よりも大径な先端段部95が形成されている。したがって、塗布リフィル90が先端方向へ移動する際、この先端段部95が軸筒20の先端の開口部22へ当接するとそれ以上先端方向へ移動することができない。このとき、塗布先端93が軸筒20の先端の開口部22から露出した状態において、この先端段部95と軸筒20の先端の開口部22との距離が先述の「A」の定義となっている。たとえば、塗布リフィル90がボールペンチップ93aの場合は、塗布先端93としてのボールペンチップ93aが、流動体収容管91の先端に圧入固定されるか、又は流動体収容管91とボールペンチップ93aとを介する継手94の先端に圧入固定されることとなるが、この、流動体収容管91の先端なり、継手94の先端なりはボールペンチップ93aの外径より径が大きくなっており、この部分が先端から見て段を構成することとなる。この段が先端段部95となるのである。
【0011】
さて、前記カム機構60における、係止突条61の係止縁62の後端(すなわち、係止縁62のうち最も後端に位置するポイント)と、この誘導縁63の先端(すなわち、誘導縁63のうち最も先端に位置するポイント)との距離が「L」の定義となっている。すなわち、この「L」とは、筆記先端82又は塗布先端93が突出している状態から、後退する状態へ移行する際にカム機構60において後述の「摺動突条51」が乗り越えなければならない距離を意味する。
そして、筆記部材70としてのシャープペンシルリフィル80の場合、そのノックストローク、すなわち、芯88を繰り出すために要する1回のノックで前方に移動する距離が「X」で定義されている。この距離Xは、たとえば、芯88の繰り出し機構である「チャック機構86」の移動可能距離で定義することも可能である。また、リフィル先端の前記先端開口に当接する不動部81と、ノックにより前後方向に移動可能な可動部84と、これら不動部81と可動部84との間に介装され可動部84を常に後方へ付勢するノックスプリング85とを構成として備える場合、このノックスプリング85の、ノックがされないときの最大長とノックがされて押圧されたときの最短長との差として定義されるノックストロークがこの距離Xである、としてもよい。
【0012】
そして、本発明においては、上記距離A、L及びX間に、
X<L<A
との関係式が成立することとなっている。この関係式の意義について、以下で、筆記部材70としてシャープペンシルリフィル80を使用した場合と、塗布リフィル90を代表してボールペンリフィル90aを使用した場合とで説明する。
(1)シャープペンシルリフィル80の場合
軸筒20にシャープペンシルリフィル80を装着した場合、装着時の位置関係によっては、回転部材50の摺動突条51が、カム溝64に位置している場合と、係止突条61の係止縁62で係止している場合とのいずれかの状態を取ることとなる。
【0013】
まず、回転部材50の摺動突条51が、カム溝64に位置している場合は、装着直後は筆記先端82は軸筒20先端からは露出しない状態にある。この状態でノック部材40を押圧すると、カム溝64内に位置している摺動突起41が、カム溝64内でその直前に位置している摺動突条51を前方に押圧する。これによって、回転部材50も前方に押圧される。
そして、摺動突条51が係止突条61の先端を超えて押圧されると、係止突条61の係止縁62の傾斜に沿うようにして摺動突起41が係止縁62と係止することとなる。これに伴い、係止縁62が軸筒20内周の円周に占める弧の長さの分だけ、回転部材50が回転することとなる。この状態で、シャープペンシルリフィル80の筆記先端82が軸筒20先端の開口縁から突出した位置を取ることとなる。
【0014】
次に、軸筒20にシャープペンシルリフィル80を装着した時点で回転部材50の摺動突条51が係止縁62と係止している場合、又は、ノック動作により摺動突条51が係止縁62と係止した状態となった場合において、ノック部材40を押圧すると、回転部材50も再び前方へ押圧されることになる。このとき、摺動突条51が誘導縁63を乗り越えるためには、係止縁62と誘導縁63との段差に相当する距離Lを超えて押圧される必要があるが、その前にノックストロークが距離Xであって、前記関係式から距離Lは距離Xより大なのであるからその距離Xを超えてはノック部材40が押圧できないこととなっている。しかしその一方で、この距離Xのノック動作は確保できているので、芯88の繰り出しは十分可能となっている。すなわち、最初に軸筒20にシャープペンシルリフィル80を装着した時点で回転部材50の摺動突条51が係止縁62と係止している場合、又は、ノック動作により摺動突条51が係止縁62と係止した状態となった場合においては、係止縁62に位置している摺動突条51が誘導縁63を超えて再びカム溝64へ至ることがないため、常に筆記先端82が軸筒20先端の開口部22から突出した状態を保つこととなっている。
【0015】
(2)ボールペンリフィル90aの場合
軸筒20にボールペンリフィル90aを装着した場合、装着時の位置関係によっては、回転部材50の摺動突条51が、カム溝64に位置している場合と、係止突条61の係止縁62で係止している場合とのいずれかの状態を取ることとなる。
まず、回転部材50の摺動突条51が、カム溝64に位置している場合は、装着直後は塗布先端93としてのボールペンチップ93aは軸筒20先端からは露出しない状態にある。この状態でノック部材40を押圧すると、カム溝64内に位置している摺動突起41が、カム溝64内でその直前に位置している摺動突条51を前方に押圧する。これによって、回転部材50も前方に押圧される。
【0016】
そして、摺動突条51が係止突条61の先端を超えて押圧されると、係止突条61の係止縁62の傾斜に沿うようにして摺動突起41が係止縁62と係止することとなる。これに伴い、係止縁62が軸筒20内周の円周に占める弧の長さの分だけ、回転部材50が回転することとなる。この状態で、ボールペンリフィル90aの塗布先端93が軸筒20先端の開口縁から突出した位置を取ることとなる。
次に、軸筒20にボールペンリフィル90aを装着した時点で回転部材50の摺動突条51が係止縁62と係止している場合、又は、ノック動作により摺動突条51が係止縁62と係止した状態となった場合において、ノック部材40を押圧すると、回転部材50も再び前方へ押圧されることになる。このとき、摺動突条51が誘導縁63を乗り越えるためには、距離Lを超えて押圧される必要がある。しかし、塗布先端93が軸筒20先端の開口部22から突出している状態において、ボールペンリフィル90aは、先端段部95が軸筒20先端の開口部22に当接するまで移動可能である。この移動可能な距離がすなわち、前記の距離Aである。
【0017】
そして、この距離Aは係止縁62と誘導縁63との段差に相当する距離Lより大なのであるから、ノック部材40をこの距離Aだけ押圧する前に、摺動突条51はこの距離Lを超えて移動することとなる。そして摺動突条51は誘導縁63に至り、その傾斜に沿って次のカム溝64まで移動する。この際、回転部材50は、誘導縁63及びそれに隣接するカム溝64が軸筒20内周の円周に占める弧の長さの分だけ回転しつつ、復帰スプリング26の付勢力によりノック部材40を後方へ押圧し、かくして摺動突条51がカム溝64に位置する状態になる。
なお、塗布部材として、ボールペンリフィル90a以外、たとえばマーカーペンリフィルとか修正ペンリフィルとかが装着される場合の動作についてもボールペンリフィル90aの場合と同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記の通り構成されているので、たとえば筆記部材としてシャープペンシルリフィルが装着されている場合には、ノックストロークである距離Xの分だけノック部材を押圧しても回転部材の摺動突条は係止縁と誘導縁との段差に相当する距離Lを超えることができないので、筆記先端は突出した状態を保つことができる。一方、筆記部材として、ボールペンリフィルのような塗布リフィルが装着されている場合には、塗布リフィルが突出状態にあるときの先端段部と軸筒先端の開口部との距離Aの分だけノック部材を押圧する前に回転部材の摺動突条は係止縁と誘導縁との段差に相当する距離Lを超えてしまうので、塗布先端が軸筒内に後退することができる。
【0019】
このようにして、使用者の好み又は選択によりシャープペンシルにもボールペンにも、あるいはその他の筆記具あるいは塗布具、たとえばマーカーペンや修正ペン等にもカスタマイズ可能なノック式筆記具において、リフィルの構造をできるだけ簡素化し、リフィルの交換をより安価でかつ容易に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1の実施の形態に係る筆記具における軸筒を、正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
【図2】本発明の1の実施の形態に係る筆記具において、軸筒に、筆記部材としてシャープペンシルリフィルが装着された場合を正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
【図3】本発明の1の実施の形態に係る筆記具において、軸筒に、筆記部材としてボールペンリフィルが装着された場合を正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
【図4】本発明の1の実施の形態に係る筆記具における軸筒後端部分の正面断面図(A)及びカム機構の要部拡大図(B)である。
【図5】本発明の1の実施の形態に係る筆記具において、軸筒に筆記部材として装着されるシャープペンシルリフィルを正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
【図6】シャープペンシルリフィルが軸筒に装着された状態において、筆記先端部分を拡大して示した正面断面図である。
【図7】本発明の1の実施の形態に係る筆記具において、軸筒に筆記部材として装着されるボールペンチップを正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
【図8】ボールペンリフィルが軸筒に装着された状態において、筆記先端部分を拡大して示した正面断面図である。
【図9a】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9b】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9c】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9d】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9e】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9f】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9g】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9h】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【図9i】ノック機構の動作を部分斜視図で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の1の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、ノック部材40及び回転部材50を備えた状態の軸筒20を、正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。軸筒20は、後軸23に先軸21が螺着されて形成される。軸筒20後端の開口部24からはノックボタン42が外挿されたノック部材40が突出しており、この前方の軸筒20内部に回転部材50が位置している。この回転部材50の軸心にはリフィル装着孔52が設けられている。ノック部材40先端付近からは外方へ摺動突起41が3個等配されて突出している。回転部材50の後端側外側面には、軸心に沿った方向を長手方向として外方へ突出する摺動突条51がこれもまた3個等配されて突出している。これら摺動突起41と摺動突条51との位置関係及び動作の詳細については後述する。
【0022】
一方、後軸23において、先軸21のすぐ後方に当たる位置には、先端側からスプリング支持部材25が挿入されている。このスプリング支持部材25と回転部材50との間には、これらを離隔する方向へ付勢する復帰スプリング26が介装されることとなる。なお、軸筒20後端近傍の内側面に、カム機構60が設けられているが、その詳細は後述する。
図2は、本発明に係る筆記具10において、軸筒20に、筆記部材70としてシャープペンシルリフィル80が装着された場合を正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
ノック機構30として、ノック部材40、回転部材50、カム機構60及び復帰スプリング26が設けられている。
【0023】
軸筒20の内部には、芯88を内蔵し筆記先端82を備えたシャープペンシルリフィル80が装着されている。筆記先端82は、軸筒20先端の開口部22から突出している。回転部材50のリフィル装着孔52には、シャープペンシルリフィル80の後端が圧入され固定されている。
図3は、本発明に係る筆記具10において、軸筒20に、筆記部材70としての塗布リフィル90として、ボールペンリフィル90aが装着された場合を正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。
軸筒20の内部には、流動体92としてのインク92a及びその後方に位置するインク追従体92bを、流動体収容管91としてのインク収容管91aに内蔵し、塗布先端93としてのボールペンチップ93aを備えたボールペンリフィル90aが装着されている。筆記ボール93bを先端に抱持したボールペンチップ93aは、軸筒20先端の開口部22から突出している。回転部材50のリフィル装着孔52に、ボールペンリフィル90aの後端が圧入され固定されている。
【0024】
図4は、軸筒20後端部分の正面断面図(A)及びカム機構60の要部拡大図(B)である。軸筒20内側面から内方に3個等配されて突出しているように形成される係止突条61は、回転方向に沿って傾斜する先端面であって、回転方向の逆方向側で後端寄りの係止縁62と、正方向側で先端よりの誘導縁63とを有する。また、係止突条61間の溝状空間がカム溝64となっている。すなわちこのカム溝64も3個等配されていることになる。そして、図4(B)に示すように、係止縁62の最後端と誘導縁63の最先端との距離が距離Lとなっている。
図5は、軸筒20に筆記部材70として装着されるシャープペンシルリフィル80を正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものである。ノック動作によって動くことがない部分を構成する不動部81と、ノック動作で前後に移動する可動部84との間にノックスプリング85が介装されている。可動部84の後端からは芯収容管87が挿入される。また、芯収容管87の後端には尾栓89が圧入されており、この部分が回転部材50のリフィル装着孔52に圧入固定されることとなっている(図2参照)。なお、可動部84には、芯88を直接把持して、ノック動作に伴って芯88を前方へ繰り出すチャック機構86も含む。
【0025】
図6は、このシャープペンシルリフィル80が軸筒20に装着された状態において、筆記先端82部分を拡大して示した正面断面図である。不動部81内側面において、チャック機構86の前方に内径を減ずる縮径段部81aが形成されている。ノック動作の際には、チャック機構86の先端がこの縮径段部81aに当接することとなり、結果これ以上前方へは移動不能となっている。この図6はノック動作がなされていない状態を示すものであり、この状態において、チャック機構86の先端とこの縮径段部81aとの距離がノックストローク(距離X)となっている。この距離Xは前記距離Lより小である。また、筆記先端82において、軸筒20先端の開口部22から突出している部分の、該開口部22の直後の部分は該開口部22より大径となった先端段差83を形成しており、この部分より後方は該開口部22より前方には移動不能となっている。
【0026】
図7は、軸筒20に筆記部材70として装着されるボールペンリフィル90aを正面図(A)及び正面断面図(B)で示したものであり、また、図8はこのボールペンリフィル90aが軸筒20に装着された状態において、塗布先端93部分を拡大して示した正面断面図である。インク収容管91a(インク92a及びインク追従体92bは充填されてない状態)の先端には、継手94を介してボールペンチップ93aが装着されている。ボールペンチップ93a先端には筆記ボール93bが抱持されている。この筆記ボール93bは、ボールペンチップ93aの内部に収納されている直流防止スプリング93cにより常に先端方向に付勢されている。また、継手94の先端部分は、ボールペンチップ93aの外径より大径となっており、これらの境界部分において先端段部95を形成している。ここで、図8はノック動作がなされていない状態を示すものであるが、この状態において、軸筒20先端の開口部22とこの先端段部95との距離が、ノック動作において最大限前方へ移動可能な距離Aとなっている。この距離Aは前記距離Lより大である。
【0027】
次に、図9a〜図9iの部分斜視図を参照しつつ、ノック機構30の動作について説明する。なお、これらの図面においては、軸筒20のうち、係止突条61の肉厚相当部分以外の部分を省略して表現している。また、以下の記載において言及する「回転方向」とは図の先端側から後端側を見通す視点で表現されるものとする。
図9aは、筆記部材70としてボールペンチップ93aが装着されている場合には塗布先端93が軸筒20先端の開口部22から突出していない状態を表している。一方、筆記部材70としてシャープペンシルリフィル80が装着されている場合には装着時に偶々筆記先端82が軸筒20先端の開口部22から突出していない状態を取ったときを表している。いずれの場合においても、係止突条61間のカム溝64内には、ノック部材40の摺動突起41が後方側に、及び回転部材50の摺動突条51が前方側に、それぞれ位置している。
【0028】
図9aの状態から、ノック部材40が押圧されると、図9bに示すように、摺動突条51がカム溝64内にて摺動突起41に前方へ押されることで、回転部材50も前方へ移動する。このとき、ボールペンリフィル90aの場合におけるその先端段部95も、シャープペンシルリフィル80の場合におけるその先端段部95も、まだ軸筒20先端の開口部22には達していない。
図9bの状態からさらにノック部材40が押圧されると、摺動突条51の後端縁が係合突条の係止縁62を乗り越え(図9c)、この係止縁62の傾斜に沿って摺動突条51が、反時計回りに移動し(図9d)、そして摺動突条51と係止縁62とが完全に係合することとなる(図9e)。この摺動突条51が回転することにより回転部材50も同様に、係止縁62の円周方向のこの長さに相当するピッチ分だけ回転することとなる。ここで、ボールペンリフィル90aの場合における先端段部95も、及びシャープペンシルリフィル80の場合における先端段差83のいずれも、軸筒20先端の開口部22に当接するまでの間に、この図9eに示す、摺動突条51と係止縁62との係止状態が出現することとなり、このとき、塗布先端93及び筆記先端82はいずれも軸筒20先端の開口部22から突出する位置を取ることとなる(図8及び図6参照)。
【0029】
この図9eに示す状態から、ノック部材40が押圧されると、それに伴い回転部材50も前方へ押圧される。そして、摺動突条51が前方の誘導縁63方向へ移動し、係止縁62との係合が解かれつつある状態が、図9fに示す状態である。
ここで、筆記部材70としてシャープペンシルリフィル80が装着されている場合、図6に示す距離Xのノックストローク分しかノック部材40を押圧することができず、よって摺動突条51はこの距離Xより大きい距離Lの長さを有する係止縁62と誘導縁63との段差(図4参照)を乗り越えることができない。よってこの場合は、この図9fの状態から再び図9eの状態に戻り、以後ノック部材40の押圧によってこの両図の状態を繰り返すこととなり、図9aに示す状態に戻ることはない。
【0030】
一方、筆記部材70としてボールペンリフィル90aが装着されている場合、図8に示す距離Aだけ押圧する間に、摺動突条51はその距離Aより短い距離Lの長さを有する係止縁62と誘導縁63との段差(図4参照)を乗り越え(図9g)、誘導縁63に至り(図9h)。そしてその誘導縁63の傾斜に沿って再びカム溝64へ至り(図9i)、この段階で復帰スプリング26(図2及び図3参照)の付勢力で後方へ押し戻されて、図9aに示す状態に復帰することになり、ボールペンチップ93aは軸筒20内へ完全に退行することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、リフィルとしてボールペン、マーカーペン及び修正ペン等の流動性を有するインク等が塗布されるもの、並びにシャープペンシルのいずれかを着脱可能とした、ノック機構を備えた軸筒を有する筆記具に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 筆記具
20 軸筒 21 先軸 22 先端の開口部
23 後軸 24 後端の開口部 25 スプリング支持部材
26 復帰スプリング
30 ノック機構
40 ノック部材 41 摺動突起 42 ノックボタン
50 回転部材 51 摺動突条 52 リフィル装着孔
60 カム機構 61 係止突条 62 係止縁
63 誘導縁 64 カム溝
70 筆記部材
80 シャープペンシルリフィル
81 不動部 81a 縮径段部 82 筆記先端
83 先端段差 84 可動部 85 ノックスプリング
86 チャック機構 87 芯収容管 88 芯
89 尾栓
90 塗布リフィル 90a ボールペンリフィル 91 流動体収容管
91a インク収容管 92 流動体 92a インク
92b インク追従体 93 塗布先端 93a ボールペンチップ
93b 筆記ボール 93c 直流防止スプリング 94 継手
95 先端段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端と後端とにそれぞれ開口部を有する軸筒と、
前記軸筒内部に収容されるとともに前記先端の開口部から出退可能な筆記先端を有する筆記部材と、
前記軸筒後部にノック部材を備えたノック機構を有する筆記具であって、
前記ノック機構は、
前記ノック部材と、
前記ノック部材の先端側に位置しノック部材の前方への押圧に伴い所定の周方向に回転可能な回転部材と、
前記軸筒後端付近の内周面に設けられるカム機構と、
前記回転部材を常に後方へ付勢する復帰スプリングと、
を備えるとともに、
前記ノック部材は、その外側面に突出して設けられる摺動突起を有し、
前記回転部材は、その外側面に突出しかつ軸方向に延伸して設けられるとともにその後端縁が前記回転方向の反対方向に傾斜している摺動突条を有し、
前記カム機構は、
前記軸筒後端付近の内周面に内方に突出しかつ軸方向に延伸して複数組等配して設けられる係止突条と、
前記各係止突条間の溝として形成されるカム溝と、
を有し、
前記カム溝内では前記摺動突起及び前記摺動突条が軸方向に前後に摺動可能となっており、
前記係止突条の先端縁のうち、前記カム溝の前記回転方向側に位置する部分は、同回転方向に向かって後端方向へ傾斜することで、前記摺動突条の後端縁が係止可能となっている係止縁として形成され、
前記係止突条の先端縁のうち、前記カム溝の前記回転方向側に対し反対側に位置する部分は、同前記係止縁よりも先端寄りに位置しかつ同回転方向に向かって後端方向へ傾斜することで前記摺動突条を同カム溝へ誘導する誘導縁として形成され、
前記筆記部材として、前記筆記先端としての芯を繰り出すチャック機構を備えたシャープペンシルリフィルが前記軸筒内に収容され、
前記ノック部材の前方への押圧に伴い、前記摺動突条が前記カム溝内にて前記摺動突起に前方へ押されることで、前記回転部材も前方へ移動し、
前記摺動突条の後端縁が前記係止突条の係止縁を乗り越え、
前記係止縁の傾斜に沿って摺動突条が移動し、
前記摺動突条と係止縁とが完全に係合することで前記シャープペンシルリフィルの筆記先端は先端の開口部から突出し、
さらに前記ノック部材を前方へ押圧しても前記摺動突条が係止縁と誘導縁との段差を乗り越えることができないことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記筆記部材として、前記シャープペンシルリフィルに換えて、流動体を収容する流動体収容管及びこの流動体による塗布がなされる前記塗布先端を備えた塗布リフィルが前記軸筒内に収容可能であるとともに、
前記塗布リフィルが前記軸筒内に収容される場合には、
前記ノック部材の前方への押圧に伴い、前記摺動突条が前記カム溝内にて前記摺動突起に前方へ押されることで、前記回転部材も前方へ移動し、
前記摺動突条の後端縁が前記係止突条の係止縁を乗り越え、
前記係止縁の傾斜に沿って前記摺動突条が移動し、
前記摺動突条と係止縁とが完全に係合することで前記塗布リフィルの塗布先端は先端の開口部から突出し、
さらに前記ノック部材の前方への押圧により、前記係止縁と前記誘導縁との段差を乗り越え、前記誘導縁に至り前記誘導縁の傾斜に沿ってカム溝へ至り前記塗布先端が軸筒内へ完全に退行することを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】
前記軸筒の内部にはスプリング支持部材が設けられ、このスプリング支持部材と前記回転部材との間に、前記復帰スプリングが介装されていることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。

【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図9g】
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【図9h】
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【図9i】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99967(P2013−99967A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−38138(P2013−38138)
【出願日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【分割の表示】特願2008−202869(P2008−202869)の分割
【原出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】