説明

筆記板用消去性インキ組成物

【課題】表面が非吸収性、非浸透性の材質からなる筆記板上に筆記することができ、得られた筆跡が筆記板の素材に関わらず、筆記直後、長時間放置後、及び多様な環境下にて筆記されても容易に消去することができる筆記板用消去性インキ組成物に関する。更には、筆跡を消した後に筆記板上に残る剥離剤の跡が目立たない筆記板用消去性インキ組成物。
【解決手段】顔料と、低級アルコールとポリビニルブチラールを主成分とするインキ組成物において、ポリオキシエチレンアルキルエーテルと剥離剤として脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル及び無水シリカとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記板用消去性インキ組成物に関する。更に、詳細には表面が非吸収性、非浸透性の材質からなる筆記板上に筆記し、筆記直後、長時間放置後、及び低温環境下にて筆記されても容易に消去することができる筆記板用消去性インキ組成物に関する。更には筆跡を消した後に筆記板上に残る剥離剤の跡や、繰り返し消去後の筆記における筆跡の白化が目立たない筆記板用消去性インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記板用消去性インキ組成物には、顔料と、有機溶剤や水と、該有機溶剤に可溶な樹脂及び消去性付与のための剥離剤との組み合わせからなるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129086号公報
【特許文献2】特開平10−036744号公報
【特許文献3】特公平08−032845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載されている筆記板用消去性インキ組成物は、顔料、樹脂、溶剤及び顔料や樹脂を溶解しない添加剤からなっている。その中でも、筆記板表面に対し適度なぬれ性を備えた添加剤を含む為、筆跡を消去しても添加剤成分が拭きとられきれずに筆跡の形のまま残るゴースト現象が生じてしまい、筆記した内容が容易にわかってしまう問題点がある。更に、書き消しを繰り返すと筆記板表面に添加剤が多量に残るので、その上に書かれた筆跡は、顔料や樹脂を溶解しない添加剤とのバランスが崩れることにより、筆跡の表面が割れて隠ぺい性がなくなり白っぽく見えてしまう白化現象が生じてしまう。
引用文献2に記載されている筆記板用消去性インキ組成物は、有機溶剤、色材、溶剤可溶性樹脂とそれほど相溶性がなく、筆記後低沸点溶剤の拡散に伴ってインキから遊離し白板面に吸着し消去を容易にする効果を有する剥離剤と、色材の沈降抑制のための無水シリカからなっている。このインキ中に含まれる無水シリカにより板面に吸着した剥離剤を拭きとることは可能ではあるものの、溶剤可溶性樹脂とそれほど相溶性がない剥離剤のみで形成される筆跡は硬くなり、特に5℃程度の低温での影響を受けやすく、強い荷重でなければ消すことができない。
引用文献3に記載されている筆記板用消去性インキ組成物は、水を分散媒とし、着色材と、結合剤と、剥離剤と、非水溶性無機質粉末からなっている。しかしながら、水を分散媒としているので、筆跡形成までの時間がかかるので、筆記直後に消去しようとすると、板面を著しく汚し、消去しにくくなる。
本発明は、筆記板に筆記した筆跡の消去時のゴースト現象、繰り返し消去時の筆跡の白化現象、低温での消去性悪化、筆記直後の消去による汚れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、顔料、ポリビニルブチラール、低級アルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び剥離剤からなるインキにおいて、剥離剤として脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、及び無水シリカを配合したことを特徴とする筆記板用消去性インキ組成物を要旨とするものである。更には、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルがポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン合成アルキルエーテル、又はポリオキシエチレン2級アルキルエーテルの一種または二種以上、 前記脂肪族二塩基酸エステルが下記一般式(化1)で示される一種または二種以上、前記脂肪族一塩基酸エステルが下記一般式(化2)で示される一種または二種以上、及び前記無水シリカが疎水性無水シリカであることを特徴とする筆記板用消去性インキ組成物を要旨とするものである。
【化1】

【化2】

【発明の効果】
【0006】
本発明の筆記板用消去性インキ組成物は、表面が非吸収性、非浸透性の材質からなる筆記板上に筆記すると、低級アルコールが速やかに蒸発し、ポリビニルブチラールを溶解するポリオキシエチレンアルキルエーテルにより柔軟化した筆跡皮膜を形成すると同時にポリビニルブチラールを溶解しない脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル及び無水シリカは、筆跡皮膜形成時に分離して筆跡皮膜と筆記板表面の間に存在し消去性を付与するので、筆記直後でも筆記面を汚さずに消去できる。更には、本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルと剥離剤である脂肪族二塩基酸、及び脂肪族一塩基酸エステルは、例えば5℃程度の環境下でも液体の状態で維持されているので、容易に筆跡を消去できる。そして、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル及び無水シリカからなる剥離剤は、筆記板面へのなじみが良いので筆跡皮膜の消去後に筆記板面上に筆跡の形のまま残るものの、剥離剤中の無水シリカの擦過作用により消し具で均一に薄膜状に引き伸ばされるのでゴースト現象は生じない。更には、この均一に引き伸ばされた剥離剤の薄膜内に含まれる無水シリカの滲み防止作用により、再度筆記された筆跡が割れる白化現象を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用する顔料は、着色剤として使用するものであり、従来より公知のアゾ系顔料、縮合ポリアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、オインジゴ系顔料などの有機顔料やカーボンブラック、紺青、ベンガラ、酸化チタン等の無機顔料及びアルミニウム粉末、真鍮粉末などの金属粉顔料や、これらの顔料と樹脂粉体とを組み合わせた着色加工粉体、蛍光顔料及びパール顔料などの中から、筆記板用消去性インキ組成物中に微粒子として安定に分散し得るものを適宣選択して用いることができる。特に表面をポリビニルブチラールにて樹脂コーティングした加工顔料は、分散性、経時安定性、作業性及び筆記板用消去性インキ組成物中に他の樹脂を配合しなくとも良いなどの面から好ましく用いることができる。加工顔料の具体例として、フジASブラック810、同レッド575、同レッド568、同ブルー650、同グリーン710、同グリーン737、同オレンジ200、同オレンジ250、同イエロー458、同バイオレット945、同ホワイト165(以上、冨士色素(株)製)、マイクロピグモブラックAMBK−2、同レッドAMRD−2、同ブルーAMBE−2、同グリーンAMGN−2、同オレンジAMOE−2、同イエローAMYW−2、同ピンクAMPK−2、同バイオレットAMVT−2(以上、オリエント化学工業(株)製)などがある。その使用量は、顔料の種類や他のインキ成分により異なるものの、筆記板用消去性インキ組成物に対して1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。
【0008】
本発明に使用する低級アルコールは、一般に油性筆記板用消去性インキ組成物に用いられるものを使用することができる、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、第2ブチルアルコール、第3ブチルアルコール等のアルコール類溶剤の中から選ばれる一種または二種以上の混合溶剤が好適に用いられる。その使用量は、使用する他の成分との混和性を考慮して種々の混合比が決定されるが、筆記板用消去性インキ組成物全量に対して50〜90重量%、好ましくは55〜85重量%である。
【0009】
本発明に使用する、ポリビニルブチラールは、着色剤である顔料の分散を与えると共に、インキへの筆跡皮膜形成能を与える目的で使用する。また、被筆記面への付着性、インキの粘性付与の目的でも使用する。具体的にはエスレックBL−1、同BL−1H、同BL−2、同BL−2H、同BL−5、同BL−10、同BL−S、同BM−1、同BM−2、同BM−5、同BM−S、同BH−3、同BH−6、同BH−S(以上、積水化学工業(株)製)、デンカブチラール#2000−L、同#3000−1、同#3000−2、同#3000−4、同#3000−K、同#4000−1、同#4000−2、同#5000−A、同#6000−C(以上、電気化学工業(株)製)等が1種又は2種以上が使用可能である。その使用量は筆記板用消去性インキ組成物全量に対して1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%である。使用量が少ないと筆跡皮膜形成せず、顔料の分散安定性も不安定となる。また、使用量が多いと板面への定着が強くなり、インキも高粘度となりインキの吐出不良を生ずるため筆記板用消去性インキ組成物として好ましくない。なお、前記顔料が樹脂を用いた加工顔料の場合は、加工顔料中の樹脂にて代替することも可能である。
【0010】
本発明に使用するポリオキシエチレンアルキルエーテルは、上記ポリビニルアルコールを常温にて容易に溶解し、柔軟な筆跡皮膜を形成させる目的で使用する。具体的には、NIKKOL BL−2(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、NIKKOL BO−2(ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、NIKKOL BD−2(ポリオキシエチレン(2)(C12〜C15)アルキルエーテル)、NIKKOL BT−3(ポリオキシエチレン(3)二級アルキルエーテル)(以上、日光ケミカルズ(株)製)、エマルゲン103(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル)、エマルゲン104P(ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル)、エマルゲン105(ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル)、エマルゲン404(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル)等が1種叉は2種以上が使用可能である。その使用量は筆記板用消去性インキ組成物全量に対して0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。使用量が少ないと柔軟な筆跡皮膜が形成せず軽い荷重で消去することができない。また、使用量が多いと筆跡皮膜が乾燥せず消去時のボード面を汚してしまうため筆記板用消去性インキ組成物として好ましくない。
【0011】
本発明に使用する脂肪族二塩基酸エステルは、ジカルボン酸とアルコールのエステル化反応によりつくられるエステルであり、上記ポリビニルブチラールを溶解しないことより、顔料とポリビニルブチラールにより形成された筆跡皮膜と筆記板面の間に剥離剤の層を形成して筆跡皮膜を剥離させる目的で使用する。具体的には、DINA(アジピン酸ジイソノニル)、DOA(アジピン酸ジ−2エチルヘキシル)、DTDA(アジピン酸ジトリデシル)、DOS(セバシン酸ジ2−エチルヘキシル)、DOZ(アゼライン酸2−エチルヘキシル)、DODN(デカン酸ジ2−エチルヘキシル)(以上、田岡化学工業(株)製)等が挙げられる。その使用量は筆記板用消去性インキ組成物全量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。使用量が少ないと筆跡皮膜を消去することができない。また、使用量が多いと筆跡皮膜にひび割れを生じさせてしまい筆跡が薄く見えてしまう白化現象を生じさせてしまうため筆記板用消去性インキ組成物として好ましくない。
【0012】
本発明に使用する脂肪族一塩基酸エステルは、カルボン酸とアルコールのエステル化反応によりつくられるエステルであり、上記ポリビニルブチラールを溶解しないことより、顔料とポリビニルブチラールにより形成された筆跡皮膜と筆記板面の間に剥離剤の層を形成して筆跡皮膜を剥離させる目的で使用する。具体的には、CIO(イソオクタン酸セチル)、ICM−R(ミリスチン酸イソセチル)、ICIS(イソステアリン酸イソセチル)、ISP(パルミチン酸イソステアリル)、STO(ステアリン酸イソオクチル)(以上、日光ケミカルズ(株)製)が挙げられる。その使用量は筆記板用消去性インキ組成物全量に対して0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。使用量が少ないと筆跡皮膜を消去することができない。また、使用量が多いと筆跡皮膜にひび割れを生じさせてしまい筆跡が薄く見えてしまう白化現象を生じさせてしまうため筆記板用消去性インキ組成物として好ましくない。
【0013】
本発明に使用する無水シリカは、有機シラン化合物を反応させた疎水性無水シリカを使用することが好ましい。具体的には、AEROSIL R972(一次粒子の平均径約16nm)、同 R972V(一次粒子の平均径約16nm)、同 R972CF(一次粒子の平均径約16nm)、同 R974(一次粒子の平均径約12nm)(以上、日本アエロジル(株)製)、AEROSIL R202(一次粒子の平均径約14nm)、同 R805(一次粒子の平均径約12nm)、同 R812(一次粒子の平均径約7nm)、同 R812S(一次粒子の平均径約7nm)(以上、独国 デグサ社製)等が挙げられる。これら無水シリカは、前記脂肪肪族二塩基酸エステル及び脂肪族一塩基酸エステルに混合して、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速攪拌機にて攪拌して分散させて用いることができる。これらの無水シリカは、1種または2種以上が使用可能である。その使用量は、筆記板用消去性インキ組成物全量に対して0.01〜5.0重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%である。使用量が少ない場合は、剥離剤残りを引き伸ばすことが出来ず、且つ、再筆記時の白化現象を防ぐことができなくなる。使用量が多い場合は、筆跡皮膜を消去することが出来なくなるので筆記板用消去性インキ組成物として好ましくない。
【0014】
以上に示した成分以外に必要に応じて、防腐剤、防黴剤、湿潤剤、粘度調整剤、凍結防止剤、ペン先乾燥防止剤、消泡剤、可塑剤、各種活性剤、樹脂の溶解性を妨げない程度の有機溶剤など、種々の添加剤を適宣選択して使用することができる。
【0015】
本発明の筆記板用消去性インキ組成物の製造方法は、上記せる各成分を必要量混合し、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、ボールミル、サンドミルまたはビーズミル等の分散機にて混合・分散することにより容易に得ることができる。
【0016】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
フジ AS ブラック 810(ポリビニルブチラールで黒色顔料をコーティングした加工顔料、冨士色素(株)製) 8.0部
ソルミックスAP−4(エチルアルコール85.5%・イソプロピルアルコール13.4%・アセトン1.1%の混合溶液、日本アルコール販売(株)製)
50.0部
イソプロピルアルコール 32.9部
NIKKOL BL−2(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 2.0部
DODN(デカン酸2−エチルヘキシル、田岡化学工業(株)製)
2.0部
CIO(イソオクタン酸セチル、日光ケミカルズ(株)製) 5.0部
AEROSIL R972(一次粒子の平均径約16nmの疎水性無水シリカ、日本アエロジル(株)製) 0.1部
上記成分をホモミキサーにて5時間撹拌して、黒色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R972(前述)0.1部は、DIDN(前述)2.0部とCIO(前述)5.0部とともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0018】
(実施例2)
フジ AS レッド 568(ポリビニルブチラールで赤色顔料をコーティングした加工顔料、冨士色素(株)製) 6.5部
ソルミックスAP−4(前述) 55.0部
イソブチルアルコール 31.8部
BD−2(ポリオキシエチレン(2)合成アルキルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 1.5部
DOS(セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、田岡化学工業(株)) 2.5部
STO(ステアリン酸イソオクチル、日光ケミカルズ(株)製) 2.5部
AEROSIL R974(一次粒子の平均径約12nmの疎水性無水シリカ、日本アエロジル(株)製) 0.2部
上記成分をホモミキサーにて5時間撹拌して、赤色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R974(前述)0.2部はDOS(前述)2.5部とSTO(前述)2.5部とともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0019】
(実施例3)
フジ AS ブルー 650(ポリビニルブチラールで青色顔料をコーティングした加工顔料、冨士色素(株)製) 8.0部
ソルミックスAP−4(前述) 50.0部
イソプロピルアルコール 32.7部
BT−3(ポリオキシエチレン(2)2級アルキルエーテル、日光ケミカルズ(株)製) 2.0部
DINA(アジピン酸ジイソノニル、田岡化学工業(株)) 4.5部
IPIS(イソステアリン酸イソステアリル、日光ケミカルズ(株)製)
2.5部
AEROSIL R202(一次粒子の平均径約14nmの疎水性無水シリカ、独国 デグサ社製) 0.3部
上記成分をホモミキサーにて5時間撹拌して、青色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R202(前述)0.3部はDINA(前述)4.5部とIPIS(前述)2.5部ともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0020】
(実施例4)
フジ AS グリーン 737(ポリビニルブチラールで緑色顔料をコーティングした加工顔料、冨士色素(株)製) 7.0部
ソルミックスAP−4(前述) 50.0部
n−プロピルアルコール 35.5部
エマルゲン103(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、花王(株)製) 1.0部
DOZ(アゼライン酸2−エチルヘキシル、田岡化学工業(株)) 2.0部
ISP(パルミチン酸イソステアリル、日光ケミカルズ(株))製) 4.0部
AEROSIL R805(一次粒子の平均径約12nmの疎水性無水シリカ、独国 デグサ社製)) 0.5部
上記成分をホモミキサーにて5時間攪拌して、緑色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R805(前述)0.5部はDOZ(前述)4.5部とISP(前述)2.5部とともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0021】
(実施例5)
フジ AS オレンジ 250(ポリビニルブチラールで橙色顔料をコーティングした加工顔料、冨士色素(株)製) 7.0部
ソルミックスAP−4(前述) 50.0部
n−ブチルアルコール 32.0部
エマルゲン105(ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、HLB9.7、花王(株)製) 2.0部
DTDA(アジピン酸ジトリデシル、田岡化学工業(株)) 4.0部
ICM−R(ミリスチン酸2−エチルヘキシル、日光ケミカルズ(株)製) 3.0部
AEROSIL R812(一次粒子の平均径約7nmの疎水性無水シリカ、独国 デグサ社製)) 0.2部
上記成分をホモミキサーにて5時間撹拌して、橙色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R812(前述)0.2部はDTDA(前述)4.0部とICM−R(前述)3.0部とともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0022】
(比較例1)
実施例1のAEROSIL R972(前述)0.1部を除き、イソプロピルアルコールを33.0部に変えた以外は、実施例1と同様にして、黒色の筆記板用筆記板用消去性インキ組成物を得た。
【0023】
(比較例2)
実施例2のNIKKOL BD−2(前述)1.5部を除き、イソブチルアルコールを33.3部に変えた以外は、実施例2と同様にして、赤色の筆記板用筆記板用消去性インキ組成物を得た。
【0024】
(比較例3)
実施例3のBT−3(前述)2.0部を除き、フォスファノールLS−500(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業(株)製)2.5部に変えた以外は、実施例3と同様にして、青色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。
【0025】
(比較例4)
実施例1のCIO(前術)5.0部を除きBS(ステアリン酸ブチル、融点25℃(日光ケミカルズ(株)製)5.0部に変えた以外は、実施例1と同様にして、黒色の筆記板用消去性インキ組成物を得た。尚、AEROSIL R972(前述)0.1部は、DIDN(前述)2.0部とBS(前述)5.0部とともにホモミキサーにて1時間撹拌した混合物を用いた。
【0026】
実施例1〜5及び比較例1〜4にて作成したインキを用いて塗布具(EMWLM、ぺんてる製)に充填し、これをサンプルとして用いて試験1〜5を実施した。結果を表1に示す。
【0027】
試験1
筆跡の消去性1(初期消去性)
10回ノックしてインキ出し後、20℃60%の環境下で表面が平滑なホーロー板(品名FB−32WC、コクヨ(株)製)に各サンプルを用いて2×8cmの大きさで5丸筆記して1分後に、4つ折にした紙製のウエス(品名キムワイプ S−200、(株)クレシア製)を用い100gづつ重りを増やしていき、筆跡が1回の擦過で消去できるまでの重量を確認した。
【0028】
試験2
筆跡の消去性2(経時消去性)
10回ノックしてインキ出し後、表面が平滑なホーロー板(上記)に各サンプルを用いて2×8cmの大きさで5丸筆記して室温にて1ヶ月放置後に、4つ折にした紙製のウエス(前述)を用い100gづつ重りを増やしていき、筆跡が1回の擦過で消去できるまでの重量を確認した。
【0029】
試験3
筆跡の消去性3(低温消去性)
10回ノックしてインキ出し後、5℃20%の環境下で表面が平滑なホーロー板(上記)に各サンプルを用いて2×8cmの大きさで5丸筆記して1分後に、4つ折にした紙製のウエス(前述)を用い100gづつ重りを増やしていき、筆跡が1回の擦過で消去できるまでの重量を確認した。
【0030】
試験4
消し跡残り
10回ノックしてインキ出し後、表面が平滑なホーロー板(前述)に各サンプルを用いて2×8cmの大きさで面塗りして1分後に、4つ折にした紙製のウエス(前述)を用い1000gの重りをのせて往復させて筆跡を消した後、更に消し後残りの描線が判読できなくなるまでの回数を確認した。
【0031】
試験5
筆跡の白化
10回ノックしてインキ出し後、20℃60%の環境下で表面が平滑なホーロー板(品名FB−32WC、コクヨ(株)製)に各サンプルを用いて2×8cmの大きさで5丸筆記して1分後に、4つ折にした紙製のウエス(品名キムワイプ S−200、(株)クレシア製)を用い1000gの重りをのせて筆跡を消す操作を同じ場所で10回繰り返した後筆記した筆跡と試験前の筆跡の色差(ΔE)を分光色差計(NF777、日本電色(株)製)にて測定した。ここで、色差が3.0以内のものは目視で白化が目立たなかった。
【0032】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、ポリビニルブチラール、低級アルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び剥離剤からなるインキにおいて剥離剤として脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、及び、無水シリカを配合したことを特徴とする筆記板用消去性インキ組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルがポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン合成アルキルエーテル、又はポリオキシエチレン2級アルキルエーテルの一種または二種以上であることを特徴とする請求項1記載の筆記板用消去性インキ組成物。
【請求項3】
前記脂肪族二塩基酸エステルが下記一般式(化1)で示される一種または二種以上であることを特徴とする請求項1記載の筆記板用消去性インキ組成物。
【化1】

【請求項4】
前記脂肪族一塩基酸エステルが下記一般式(化2)で示される一種または二種以上であることを特徴とする請求項1記載の筆記板用消去性インキ組成物。
【化2】

【請求項5】
前記無水シリカが疎水性無水シリカである請求項1記載の筆記板用消去性インキ組成物。

【公開番号】特開2011−132280(P2011−132280A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290192(P2009−290192)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】