説明

等電点電気泳動ゲルチップ及びその使用方法

【課題】二次元目電気泳動ゲルカセットに再現よく、平易に設置可能な等電点電気泳動ゲル及びその使用方法を提供すること。
【解決手段】第一の接着層を介して矩形あるいは折り曲げ可能な基材の表面に等電点電気泳動ゲルを設けた等電点電気泳動ゲルチップであって、等電点電気泳動ゲルチップの前記基材の外形によって、二次元目電気泳動ゲルカセットへの設置位置が定められ、第一の接着層が設けられた前記基材の他方の面に設けられた第二の接着層により前記等電点電気泳動ゲルチップが二次元目電気泳動ゲルカセットに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質の等電点の違いを利用して分離し、目的タンパク質の等電点測定や分析を行う泳動手法に用いる、等電点電気泳動ゲルチップ、及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動植物の組織や細胞から抽出されたDNA、RNA、タンパク質等の生体高分子をサイズ、性状等の違いに基づいて、電気泳動ゲル中に分離する電気泳動技術は、ライフサイエンス分野において非常に重要な技術である。特にタンパク質を電気泳動によって分離する場合、タンパク質の分子量の違いに基づくSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法および等電点の違いに基づく等電点電気泳動法を組み合わせた二次元電気泳動法が広く用いられている。
【0003】
二次元電気泳動法は、上述のようにタンパク質を荷電並びに分子量に基づいて分離することが可能であるため、分子量のみの分離方法であるSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法では難しい同一の分子量で、かつ、等電点の異なるタンパク質の発現差異を比較することも可能である。
【0004】
そのため、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法よりも多くの情報を得ることができるため、いつどこでどのタンパク質がどれだけ発現しているかを系統的、網羅的に解析するプロテオミクス研究において有用である。例えば、健常者と疾患患者のある組織のタンパク質の発現比較を行い、その差異を検出することにより、病理診断への応用が可能になる。そのような研究は広く行われており、将来的には、基礎研究の用途にとどまらず、臨床の場でも利用されることも期待されている。
【0005】
上述の二次元電気泳動法で用いる等電点電気泳動ゲルとしては、作製後に長期保存が可能な固定化pH勾配ゲルが知られ、市販されており、広く用いられている。二次元電気泳動において、等電点電気泳動を実施し、平衡化処理を施した等電点電気泳動ゲルを、ピンセット等を用いて二次元目電気泳動ゲル上端部の濃縮ゲル先端部に設置、溶解したアガロース等を注ぎ込むことにより、等電点電気泳動ゲルを固定させてから二次元目の電気泳動が行われる。
【0006】
しかし、ピンセット等で保持した等電点電気泳動ゲルを、二次元目電気泳動ゲルに設置するためには慎重に行わなければならないこと、また、アガロースを注ぐ際に、気泡を混入させないよう注意を払わなければならず、操作が煩雑である。また、これらの工程において、等電点電気泳動ゲルの二次元目電気泳動ゲルへの設置位置は、必ずしも安定しているとは言えず、微小な位置のずれは生じうる。そのことにより、電気泳動の再現性にも課題が生じうる。
【0007】
そうした中、全自動での二次元電気泳動装置や、サンプル分離装置の提案がなされており、等電点電気泳動ゲルを二次元目電気泳動ゲルに設置する際の操作に対して改善が行われている。しかしながら、等電点電気泳動ゲルの二次元目電気泳動ゲルへの設置位置の精度は十分とは言えず、操作の簡便性の点においても不十分である。また上記装置を用いる場合、専用の等電点電気泳動ゲル並びに二次元目電気泳動ゲルカセットを使用しなければならず、使用範囲が限定されてしまっている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4441653号公報
【特許文献2】特開2010−286394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次元目電気泳動ゲルカセットに再現よく、平易に設置可能な、等電点電気泳動ゲル及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、第一の接着層を介して矩形あるいは折り曲げ可能な基材の表面に等電点電気泳動ゲルを設けた等電点電気泳動ゲルチップであって、等電点電気泳動ゲルチップの前記基材の外形によって、二次元目電気泳動ゲルカセットへの設置位置が定められ、第一の接着層が設けられた前記基材の他方の面に設けられた第二の接着層により前記等電点電気泳動ゲルチップが二次元目電気泳動ゲルカセットに固定されることを特徴とする等電点電気泳動ゲルチップである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記等電点電気泳動ゲルチップの基材に、二次元目電気泳動ゲルカセットの設置位置固定用に設けられた差込孔又は溝に、挿入又ははめ合わせる形状に加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動ゲルチップである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記基材及び接着層に、折り曲げるための切り込みを、接着層と基材にまたがり設けたことを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動ゲルチップである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の、等電点電気泳動ゲルチップの等電点電気泳動ゲルを、二次元目電気泳動カセットの二次元目電気泳動ゲルに密着させる工程、接着層を介して等電点電気泳動ゲルチップを二次元目電気泳動カセットに固定させる工程を備えることを特徴とする等電点電気泳動ゲルチップの使用方法である。
【発明の効果】
【0014】
矩形の支持構造、あるいは可変可能な支持フィルムを有する等電点電気泳動ゲルチップを用いることにより、接着層を介して容易に、且つ再現よく二次元目電気泳動ゲルカセットへ設置することが可能となる。またそのことにより、再現のよい電気泳動像を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップの構成を示す概念図である。
【図2】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップの構成を示す概念図である。
【図3】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップの、折り曲げるための、基材及び接着層への切り込みの形態を示した概念図である。
【図4】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップを、二次元目電気泳動ゲルカセットへの使用方法の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップを、二次元目電気泳動ゲルカセットへの使用方法の一例を示す概念図である。
【図6】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップを、二次元目電気泳動ゲルカセットへの使用方法の一例を示す概念図である。
【図7】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップを、二次元目電気泳動ゲルカセットへの使用方法の一例を示す概念図である。
【図8】本発明の支持構造を有する等電点電気泳動ゲルチップを、二次元目電気泳動ゲルカセットへの使用方法の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1a)に示した等電点電気泳動ゲルチップ1は、等電点電気泳動ゲル1aの背面に位置する支持フィルム1cと支持基材1eが、接着層1dを介して一体化した構造をなす。また支持基材1eにおいて、等電点電気泳動ゲル1aが接着されている部分の反対側端部に、移動時に運搬するための持ち手1hが一体形成されている。さらに、支持基材1eは凹部を形成しており、この凹部に二次元目電気泳動ゲルカセット基材を嵌め込む構造をとる。
【0017】
その際、支持基材1e内壁の一端面、等電点電気泳動ゲル1aに接着されている基材の対面に設置されている接着層1fを介して、二次元目電気泳動ゲルカセット基材に密着させる。なお、等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム1bは使用直前、すなわち、タンパク質試料導入及び等電点電気泳動ゲル膨潤の工程直前に、接着層保護フィルム1gは等電点電気泳動及び等電点電気泳動ゲルの平衡化処理後、二次元目電気泳動ゲルカセットに設置する直前に剥がす。
【0018】
また、凹部の深い支持基材2eを有する等電点電気泳動ゲルチップ2(図1b))を用いてもよい。なお、等電点電気泳動ゲルチップ1あるいは2を用いての二次元目電気泳動ゲルカセットへの設置方法については後で詳しく記載する。
【0019】
さらに、等電点電気泳動ゲルチップ1とほぼ同一形状の等電点電気泳動ゲルチップ3(図1c))のように、二次元目電気泳動ゲルカセット基材に固定させるための接着層3fが、支持基材3eがなす凹部の奥、即ち、二次元目電気泳動ゲルカセット基材の先端部が密着する位置に配置されていてもよい。
【0020】
加えて、図2a)に示すような形態の等電点電気泳動ゲルチップを用いてもよい。図2a)に示した等電点電気泳動ゲルチップ4では、支持基材4eは等電点電気泳動ゲル1aとほぼ同一の、平板状の構造をなす。平板状の支持基材4eの一端面には、垂直方向に可変可能な支持フィルム4fが設置されている。この支持フィルムを折り曲げて、支持フィルム4f上に設置されている接着層4gを介して二次元目電気泳動ゲルカセット基材に接着、等電点電気泳動ゲルチップを固定させる仕組みをとる。
【0021】
そして、図2b)に示すような、等電点電気泳動ゲルチップ4における支持基材4eと支持フィルム4fを一体化した形態の、支持フィルム(5e)を有する等電点電気泳動ゲルチップ5を用いてもよい。
【0022】
<等電点電気泳動ゲル>
本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップに用いる等電点電気泳動ゲルとしては、背面に支持基材と接着することが可能な支持フィルムを有する等電点電気泳動ゲルを用いることが可能で、広く市販されている固定化pH勾配ゲルを用いることができる。
【0023】
<支持基材>
本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップに備わる支持基材の材質としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル等の材
質のものを使用することが可能であり、特に限定されない。
【0024】
ここで、本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップを構成する支持基材及び接着層について説明する。図2に示した等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5を、二次元目電気泳動ゲルカセット基材に接着層を介して設置させる際、支持フィルムを折り曲げる必要があるが、設置後にフィルム素材の可塑性が働き、支持フィルムが撓むことにより、等電点電気泳動ゲルの設置位置がずれる、あるいは外れてしまう恐れがある。
【0025】
等電点電気泳動ゲルチップ4を構成する支持フィルム4f及び接着層4g(図3a))の拡大図をそれぞれ図3bに示す。支持フィルム4fの表面に、切り込み4jが設置されることにより(図3b))、支持フィルム4fの折り曲げが容易になるとともに、撓みの生じる可能性が低減する。あるいは、図3cに示すように、接着層と支持フィルムにわたり切り込み4kが設置されていてもよく、同様の効果が期待される。なお、等電点電気泳動ゲルチップ5を構成する支持フィルム5e及び接着層5fも同一の構造をなす。
【0026】
<支持フィルム>
本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップに備えられる支持フィルムは、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等の材質を適宣選択する。また、ラミネートされたものでもよく、ラミネートすることによりフィルム素材の耐久性も向上する。ただし、二次元目電気泳動ゲルカセットへの等電点電気泳動ゲルチップの固定時に、支持フィルムを折り曲げるため、その際に割れない素材であることが好ましい。
【0027】
<接着層>
本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップに用いられる接着層の材質は、公知の一般強粘または強粘の材質のもので差し支えないが、等電点電気泳動ゲル背面支持フィルムと基材との間の接着部分、及び等電点電気泳動ゲルチップの二次元目電気泳動ゲルカセット基材への接着部分いずれもが、二次元目の電気泳動において用いられる電気泳動バッファーにさらされるため、耐水性を有するものが好ましい。なお市販のものも含めて、作製した等電点電気泳動ゲルチップは−20℃の低温下で保管するため、低温耐性を備えているものがより好ましい。
【0028】
加えて、二次元目電気泳動ゲルカセットに固定させるための接着層に関しては、上述のものでも差し支えないが、設置位置の正確性並びに安定性を増すために張り直しが可能な、着脱可能な材質のものを用いてもよい。
【0029】
<二次元目電気泳動ゲルカセット>
本発明に用いる二次元目電気泳動用ゲルカセットとしては、市販されているプレキャストゲル、並びにガラス板あるいはアクリル板等で自作したゲルカセットを用いることが可能で、特に限定されない。また、特許文献1に記載の、電気泳動槽を備えた電気泳動用ゲルカセットにのみならず、特許文献2に記載の、等電点電気泳動ゲルチップを固定させるための差込孔又は溝構造が設置された二次元目電気泳動ゲルカセットを用いても差し支えない。
【0030】
以下、本発明に係る、支持基材ならびに接着層を有する等電点電気泳動ゲルチップを用いた一実施態様について説明する。
【0031】
本発明の等電点電気泳動ゲルチップを用いた一実施態様を図4に示す。等電点電気泳動ゲルチップ1を、二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(6b)に、等電点電気泳動ゲルチップ1の支持基材1eがなす凹部に嵌めこむ(図4a))。なお、この段階においては
、支持基材1e内壁に設置してある接着層1fが二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(6b)に接着しないよう注意する。支持基材1eがなす凹部の奥と、二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(6b)の先端部分が接触したら、二次元目電気泳動ゲルカセット平面に対して垂直方向に等電点電気泳動ゲルチップ1を押し込むことにより(図4b))、支持基材1e内壁に設置してある接着層1fを介して、等電点電気泳動ゲルチップ1と二次元目電気泳動ゲルカセット6が密着、固定される(図4c))。
【0032】
この操作により、等電点電気泳動ゲル1aの側端面と二次元目電気泳動ゲル(6a)が密着されるのと同時に、等電点電気泳動ゲル1aの表面と二次元目電気泳動ゲルカセット基材2(6d)が密着される。
【0033】
上述の図4a)〜c)においては、縦方向の長さが短い二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(6b)に等電点電気泳動ゲルチップ1を設置した態様を示したが、支持基材2eがなす凹部の深い等電点電気泳動ゲルチップ2を用いることにより、縦方向の長さが長い二次元目電気泳動ゲルカセット基材2(6c)に、上述の図4a)〜c)と同様の工程にて設置させることが可能である。(図4d)〜f))。
【0034】
上述のように、等電点電気泳動ゲルチップ1を二次元目電気泳動ゲルカセット6に設置した際に、等電点電気泳動ゲル1aの表面は二次元目電気泳動ゲルカセット基材2(6c)と密着した状態になる。それとは反対に、等電点電気泳動ゲルチップ1を、等電点電気泳動ゲル1aの接着されている基材側と二次元目電気泳動ゲルカセット基材1を接着、図4b)のような形態で固定させることも可能ではある。
【0035】
しかしながらそのような設置方法を行った場合、等電点電気泳動ゲル1aの表面が二次元目の電気泳動を実施する際、電気泳動バッファーにさらされるため、等電点電気泳動により分離されたタンパク質が溶出、結果的に電気泳動を行う際に、二次元目電気泳動ゲルに移動するタンパク質量や電気泳動像の再現性に影響を与える恐れがある。よって、図4a)〜c)の工程を行うことが好ましく、これ以降においてもそれに準じた形式で説明する。
【0036】
図5では、等電点電気泳動ゲルチップ3を用いた場合の一実施態様を示す。二次元目電気泳動用ゲルカセット基材1(6b)に、接着層3fにより密着しない位置まで等電点電気泳動ゲルチップ3を設置(図5a))、次に、等電点電気泳動ゲル3aを二次元目電気泳動用ゲルカセット基材3cにほぼ密着させる(図5b))。
【0037】
そして等電点電気泳動ゲルチップ3を二次元目電気泳動ゲル6cに向けて移動させることにより(図5c))、等電点電気泳動ゲル3aの側端面を二次元目電気泳動ゲル6cに密着させるのと同時に、支持基材3eを、接着層3fを介して、二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(6b)に固定させる(図5d))。
【0038】
図6及び図7は、等電点電気泳動ゲルチップ4又は5の使用方法について示したものである。図6は、等電点電気泳動ゲルチップ4あるいは5のいずれかを用いての一実施態様を示す。なお、等電点電気泳動ゲルチップ5を用いる場合には、予め支持フィルム5eを直角に折り曲げて等電点電気泳動ゲルチップ4と同様な形態にしておく。
【0039】
二次元目電気泳動用ゲルカセット基材1(6b)に、接着層4g又は5fにより密着しないように等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5を設置(図6a))、次に、等電点電気泳動ゲル4aないしは5aの表面を、二次元目電気泳動ゲルカセット基材6cに接するように、強く密着させないように配置させる(図6b))。
【0040】
そして、水平方向に向けて等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5を、等電点電気泳動ゲル4aないしは5aの側端面が二次元目電気泳動ゲル6aに接触するように二次元目電気泳動用ゲル6aに押し付け、同時に支持フィルム4fないしは5eと二次元目電気泳動用ゲルカセット基材1(6b)の先端部を接着層4g又は5fにより固定させる(図6c))。さらに、支持フィルム4fないしは5eを折り曲げて、二次元目電気泳動用ゲルカセット基材1(6b)表面に接着層4g又は5fにより密着させることで(図6d))、等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5の二次元目電気泳動用ゲルカセット6への設置を確実なものとする(図6e))。
【0041】
図7は、厚い基材を有する二次元目電気泳動ゲルカセット7に、等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5を用いて設置させる場合の一実施態様を示す。二次元目電気泳動ゲルカセット7は二次元目電気泳動ゲルカセット6と比較すると厚い基材を有するが、等電点電気泳動ゲルチップ4ないしは5は可変可能な支持フィルム4fないしは5eを有するため、上述した図6における工程と同様にして、等電点電気泳動ゲルチップ4あるいは5を二次元目電気泳動用ゲルカセット7に設置することが可能である。
【0042】
図8は、二次元目電気泳動ゲルカセット6あるいは7と比較して、二次元目電気泳動ゲルの縦方向の長さが短い二次元目電気泳動ゲルカセット8に、等電点電気泳動ゲルチップ5を用いて設置させる場合の一実施態様を示す。等電点電気泳動ゲルチップ5は、等電点電気泳動ゲル表面に対して水平に、かつ、全長にわたり可変可能な支持フィルム5eを備えているため、上述の二次元目電気泳動ゲルカセット8にも設置可能である。
【0043】
上述した図6ないしは図7における手順と同様にして、等電点電気泳動ゲルチップ5を二次元目電気泳動用ゲルカセット7に設置することが可能である。なお、二次元目電気泳動ゲルカセット基材1(8b)の先端部から二次元目電気泳動ゲル8aの先端部までの距離が明確であれば、図6ないしは図7に示したように、予め支持フィルム5eを直角に折り曲げておいても差し支えない。
【0044】
このように、本発明に係る等電点電気泳動ゲルチップを用いることにより、ピンセット等の器具を使用することなく、また、溶解したアガロース溶液により固定させることなく、容易に二次元目電気泳動ゲルカセットに設置させることが可能となる。また、等電点電気泳動ゲルチップに備える支持基材の矩形の形状、あるいは可変可能な支持フィルムにより、等電点電気泳動ゲルを二次元目電気泳動ゲルカセットに、安定して再現よく設置させることが可能となる。このことは、電気泳動像の再現性の向上に寄与しうる。
【0045】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明を用いれば、特にプロテオミクス等において、等電点電気泳動ゲルチップを二次元目電気泳動ゲルカセットへの設置を平易に、再現よく行うことが可能になり、その結果、再現のある電気泳動像を得ることが可能になる。さらに、DNA、RNA、タンパク質等の生体高分子の研究をより発展させることによって、特に医学、生物学、化学分野の産業の発展に貢献し得る。
【符号の説明】
【0047】
1・・・等電点電気泳動ゲルチップ
1a・・・等電点電気泳動ゲル
1b・・・等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム
1c・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム
1d・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム―支持基材間接着層
1e・・・支持基材
1f・・・接着層
1g・・・接着層保護フィルム
1h・・・持ち手
2・・・等電点電気泳動ゲルチップ
2a・・・等電点電気泳動ゲル
2b・・・等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム
2c・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム
2d・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム―支持基材間接着層
2e・・・支持基材
2f・・・接着層
2g・・・接着層保護フィルム
2h・・・持ち手
3・・・等電点電気泳動ゲルチップ
3a・・・等電点電気泳動ゲル
3b・・・等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム
3c・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム
3d・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム―支持基材間接着層
3e・・・支持基材
3f・・・接着層
3g・・・接着層保護フィルム
3h・・・持ち手
4・・・等電点電気泳動ゲルチップ
4a・・・等電点電気泳動ゲル
4b・・・等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム
4c・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム
4d・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム―支持基材間接着層
4e・・・支持基材
4f・・・支持フィルム
4g・・・接着層
4h・・・接着層保護フィルム
4i・・・持ち手
4j・・・支持フィルム切り込み
4k・・・接着層―支持フィルム切り込み
5・・・等電点電気泳動ゲルチップ
5a・・・等電点電気泳動ゲル
5b・・・等電点電気泳動ゲル表面保護フィルム
5c・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム
5d・・・等電点電気泳動ゲル背面支持フィルム―支持基材間接着層
5e・・・支持フィルム
5f・・・接着層
5g・・・接着層保護フィルム
5h・・・持ち手
5i・・・支持フィルム切り込み
5j・・・接着層―支持フィルム切り込み
6・・・二次元目電気泳動ゲルカセット
6a・・・二次元目電気泳動ゲル
6b・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材1
6c・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材2
7・・・二次元目電気泳動ゲルカセット
7a・・・二次元目電気泳動ゲル
7b・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材1
7c・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材2
8・・・二次元目電気泳動ゲルカセット
8a・・・二次元目電気泳動ゲル
8b・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材1
8c・・・二次元目電気泳動ゲルカセット基材2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の接着層を介して矩形あるいは折り曲げ可能な基材の表面に等電点電気泳動ゲルを設けた等電点電気泳動ゲルチップであって、等電点電気泳動ゲルチップの前記基材の外形によって、二次元目電気泳動ゲルカセットへの設置位置が定められ、第一の接着層が設けられた前記基材の他方の面に設けられた第二の接着層により前記等電点電気泳動ゲルチップが二次元目電気泳動ゲルカセットに固定されることを特徴とする等電点電気泳動ゲルチップ。
【請求項2】
前記等電点電気泳動ゲルチップの基材に、二次元目電気泳動ゲルカセットの設置位置固定用に設けられた差込孔又は溝に、挿入又ははめ合わせる形状に加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動ゲルチップ。
【請求項3】
前記基材及び接着層に、折り曲げるための切り込みを、接着層と基材にまたがり設けたことを特徴とする請求項1に記載の等電点電気泳動ゲルチップ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の、等電点電気泳動ゲルチップの等電点電気泳動ゲルを、二次元目電気泳動カセットの二次元目電気泳動ゲルに密着させる工程、接着層を介して等電点電気泳動ゲルチップを二次元目電気泳動カセットに固定させる工程を備えることを特徴とする等電点電気泳動ゲルチップの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202809(P2012−202809A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67489(P2011−67489)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)