説明

筋肉硬度測定装置及び該筋肉硬度測定装置を備えた着座用シート

【課題】被験者の皮下脂肪の厚さに応じた押込量を用いることで精度が高く誤差の少ない筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定装置及びこの筋肉硬度測定装置を備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】本発明は、被験者の筋肉を押圧して筋肉硬度を測定する筋肉硬度測定装置10において、前記被験者の皮下脂肪厚を算出するための所定の条件を設定する条件設定手段32と、前記条件設定手段32により設定される条件を用いて前記皮下脂肪厚を算出する皮下脂肪厚算出手段34と、前記皮下脂肪厚算出手段34により得られる前記皮下脂肪厚に応じて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する測定部位を押し込む押込量を算出する押込量算出手段36と、前記押込量算出手段36により得られる前記押込量を用いて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する対象部位に対して前記測定部位を押し込んだ後、前記筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定手段38とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の筋肉を押圧して筋肉硬度を測定する筋肉硬度測定装置及び該筋肉硬度測定装置を備えた着座用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被験者の身体表面に押圧子と接触子とを接触させ、一定の荷重を押圧子に加えた場合に生じる押圧子の接触子に対する相対的な変位を検出することで筋肉硬度を測定する筋硬度計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、被験者の身体に外力を与え、その外力に対する身体の変位量に基づいて身体の硬度を検出するように構成された硬度検出器を備えるマッサージ機が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−077314号公報
【特許文献2】特開2003−275265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、身体表面の筋肉組織である筋肉の上には、皮下組織である皮下脂肪があり、皮下脂肪の厚さは、例えば被験者の体型(痩せ型、肥満型等)や、被験者の筋肉硬度を測定する対象部位である腰部、肩部、太もも部等によっても異なる。この皮下脂肪が厚い場合、従来の上記特許文献1及び特許文献2に記載の、身体表面からの押圧により筋肉硬度を測定する方法では、筋硬度計の押圧子の押圧が皮下脂肪により筋肉に到達しない場合がある。
【0005】
図1は、皮下脂肪厚の違いによる筋硬度計の作用を説明するための図である。図1(A)は、筋硬度計の押圧子による押圧が筋肉に達するときの筋肉の状態を示し、図1(B)は、押圧子の押圧が皮下脂肪に吸収され、筋肉に到達していない状態を示す図である。なお、図1(A)及び図1(B)は、同一の押込量によって押圧されたものである。
【0006】
図1に示すように、例えば皮下脂肪等が厚い等の理由で筋硬度計の押圧子による押圧が筋肉に達しない場合、従来の押圧子に一定の荷重を加えた場合の押圧子の接触子に対する相対的な変位の検出で筋肉硬度を測定する方法では、筋肉硬度を正確に測定できないという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、被験者の皮下脂肪の厚さに応じた押込量を用いることで、精度が高く誤差の少ない筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定装置及びこの筋肉硬度測定装置を備えた車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る筋肉硬度測定装置は、被験者の筋肉を押圧して筋肉硬度を測定する筋肉硬度測定装置において、前記被験者の皮下脂肪厚を算出するための所定の条件を設定する条件設定手段と、前記条件設定手段により設定される条件を用いて前記皮下脂肪厚を算出する皮下脂肪厚算出手段と、前記皮下脂肪厚算出手段により得られる前記皮下脂肪厚に応じて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する測定部位を押し込む押込量を算出する押込量算出手段と、前記押込量算出手段により得られる前記押込量を用いて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する対象部位に対して前記測定部位を押し込んだ後、前記筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る筋肉硬度測定装置において、前記条件設定手段は、前記被験者の身長、体重を含む身体情報と、前記被験者の前記対象部位とを含む前記条件を設定することを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1の発明に係る筋肉硬度測定装置において、前記条件設定手段は、前記被験者の体脂肪率と、前記被験者の前記対象部位とを含む前記条件を設定することを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明に係る筋肉硬度測定装置において、前記押込量算出手段は、前記皮下脂肪厚算出手段により得られる前記皮下脂肪厚に略比例した前記押込量が算出されることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか一つの発明に係る筋肉硬度測定装置において、前記筋肉硬度測定手段により得られる測定結果を画面上に表示させる表示手段を有することを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか一つの発明に係る筋肉硬度測定装置において、前記被験者は、車両を運転する運転者であることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、着座用シートに関し、第1の発明に記載の筋肉硬度測定装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
第8の発明は、第7の発明に係る着座用シートにおいて、前記被験者の身長、体重を含む身体情報含む前記条件を設定することを特徴とする。
【0016】
第9の発明は、第7の発明に係る着座用シートにおいて、前記被験者の体脂肪率を含む前記条件を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被験者の皮下脂肪の厚さに応じた押込量を用いることで、精度が高く誤差の少ない筋肉硬度の測定を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0019】
<筋肉硬度測定装置の概略構成例>
図2は、本実施形態に係る筋肉硬度測定装置の概略構成例を示す図である。
【0020】
図2に示すように、筋肉硬度測定装置10は、筋硬度計20、マイクロコンピュータからなる制御ECU(Electrical Control Unit)30、計測結果等を表示するための表示装置40及び音声装置50とを備える。
【0021】
筋肉硬度測定装置10は、筋硬度計20を用いて、被験者の筋肉硬度を測定する。
【0022】
筋硬度計20は、筋硬度計20の中央に被験者の筋肉を押圧する押圧子(測定部位)と、押圧子の周囲で被験者に接触する接触子とを有する。筋硬度計20は、後述する制御ECU30により得られる押込量を加えた押圧子を、被験者の筋肉硬度を測定する対象部位に押し込んだ後、筋肉硬度の測定を行う。
【0023】
なお、筋硬度計20は、被験者の肌に直接接触して筋肉硬度の測定を行うことも可能であるが、例えば被験者の洋服を介して筋肉硬度の測定を行うことも可能である。この場合には、後述する制御ECU30に、洋服の素材を検知する機能を設け、検知した素材に応じた洋服の厚さに対応する押込量分を付加し、付加した押込量を押圧子に加えた後、筋肉硬度の測定を行う。
【0024】
筋肉硬度測定装置10は、制御ECU30を用いて、被験者の測定する対象部位の皮下脂肪厚を算出し、算出された皮下脂肪厚に応じて筋硬度計20の押圧子に加える押込量を算出し、算出された押込量を用いて筋硬度計20が測定した被験者の筋肉硬度の測定結果を取得する。
【0025】
制御ECU30は、マイクロコンピュータによって構成されており、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)を有する。また、制御ECU30は、演算結果等を格納する読み書き可能なRAM(Random Access Memory)、演算等の処理の回数等を計測するカウンタ、入力インタフェース、及び出力インタフェース等を有する。
【0026】
また、制御ECU30は、被験者の皮下脂肪厚を算出する条件を設定する条件設定手段32と、設定された条件に基づき皮下脂肪厚を算出する皮下脂肪算出手段34と、算出された皮下脂肪厚に応じた押込量を算出する押込量算出手段36と、算出された押込量を用いることで、筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定手段38とを備える。
【0027】
更に、制御ECU30は、条件設定手段32を用いて、被験者の筋肉硬度を測定する対象部位における皮下脂肪厚を算出する条件を設定する。この皮下脂肪厚を算出する条件とは、例えば被験者の身長、体重、性別、年齢等の身体情報と、被験者の筋肉硬度を測定する例えば肩、腰等の対象部位等である。
【0028】
予め、BMI(Body Mass Index)値を把握している場合には、BMI値を直接、条件に設定することができる。ここでBMI値とは、「体重/身長」にて算出される体重指標である。また、上記したBMI値に置き換えて、体脂肪計等によって測定される体脂肪率を直接条件に設定することもできる。
【0029】
更に、皮下脂肪キャリパーによって測定された皮下脂肪厚や、医療用の超音波エコー検査装置によって得られた皮下脂肪厚を予め把握している場合には、これらの皮下脂肪厚の値を予め設定しておくことができる。
【0030】
なお、被験者の筋肉硬度を測定する対象部位を、皮下脂肪厚を算出する条件として設定するのは、皮下脂肪厚が、被験者の腰部、肩部、太もも部等の部位によって異なるためである。被験者の筋肉硬度を測定する対象部位と皮下脂肪厚の関係については後述する。
【0031】
また、制御ECU30は、皮下脂肪厚算出手段34を用いて、条件設定手段32により設定された条件に基づいて被験者の筋肉硬度を測定する対象部位毎の皮下脂肪厚を算出する。皮下脂肪厚は、上記したBMI値に基づき算出することができる。BMI値と皮下脂肪厚の関係については後述する。
【0032】
また、制御ECU30は、押込量算出手段36を用いて、皮下脂肪厚算出手段34により算出された皮下脂肪厚に応じた押込量を算出する。ここで押込量とは、被験者の筋肉を押圧して筋肉硬度を測定する筋硬度計20の押圧子に加えられるストローク量のことを意味する。また、この押込量とは、筋硬度計20の押圧子による押圧が皮下脂肪に吸収されず筋肉に反応し、精度が高く、誤差の少ない筋肉硬度の測定を可能とするために押圧子に加えられる量のことを意味する。皮下脂肪厚と押込量との関係については後述する。
【0033】
また、制御ECU30は、筋肉硬度測定手段38を用いて、押込量算出手段36により算出された押込量に基づいて筋肉硬度の測定を行うよう筋硬度計20を制御する。筋硬度計20の押圧子は、算出された押込量で被験者の測定する対象部位に押し込まれることによって、押圧子の押圧が被験者の皮下脂肪の下にある筋肉に到達し、被験者の筋肉が押圧されるため、精度が高く、誤差の少ない筋肉硬度の測定を可能とする。
【0034】
また、制御ECU30は、筋肉硬度測定手段38を用いて、筋硬度計20による筋肉硬度の測定により得られた測定結果を取得し、取得した測定結果を表示装置40、及び音声装置50に対して出力する。
【0035】
また、制御ECU30は、筋肉硬度測定手段38を用いて、予め筋肉硬度のレベルと、筋肉の凝りのレベルや筋肉疲労のレベルとを対応付けて設定しておき、筋硬度計20により得られた測定結果に基づき、筋肉の凝りや筋肉疲労を定量化することも可能である。
【0036】
例えば、筋肉硬度測定手段38は、筋硬度計20により得られた測定結果に基づき、筋肉の凝りが予め設定されたある一定のレベルを超えている場合、例えば休憩を促す等の被験者に対するメッセージを画面表示や音声等により出力することもできる。更に、マッサージ機能と接続している場合には、対象部位に対し、凝りのレベルに応じてマッサージを行う等の制御も可能とする。
【0037】
なお、上記制御ECU30による制御は、予め対応する実行プログラムを生成し、生成されたプログラムをコンピュータ等にインストールすることによっても実行可能である。
【0038】
表示装置40又は音声装置50は、筋肉硬度測定手段38により出力された測定結果等を画像、文字等、又は音声等により表示する。表示装置40及び音声装置50は、例えば車両に搭載されたナビゲーション装置(車載用経路誘導機)を用いて構成されてもよい。また、上記した条件設定手段32による条件の設定は、表示装置40又は音声装置50を用いて、入力することができる。
【0039】
<BMI値と皮下脂肪厚との関係>
ここで、上記したBMI値と皮下脂肪厚との関係について説明する。図3は、BMI値と測定する対象部位毎の皮下脂肪厚との関係の一例を示す図である。
【0040】
なお、図3において、横軸は皮下脂肪厚[mm]を示し、縦軸は皮下脂肪厚に対するBMI値を示している。また、図3において、腰部の皮下脂肪厚は実線で示され、肩部の皮下脂肪厚は破線で示されている。
【0041】
図3に示すように、腰部の皮下脂肪厚と肩部の皮下脂肪厚は共にBMI値に対して比例していることがわかる。また、BMI値が同一であっても、腰部の皮下脂肪厚と肩部の皮下脂肪厚が異なるように、測定対象部位が異なれば、皮下脂肪厚も異なっていることがわかる。更に、BMI値と測定対象部位毎の皮下脂肪厚との関係から、被験者のBMI値及び測定対象部位に基づいて、測定対象部位の皮下脂肪厚を算出することが可能であることがわかる。
【0042】
<皮下脂肪厚と押込量との関係>
次に、皮下脂肪厚と筋硬度計の押込量との関係について説明する。図4は、腰部の皮下脂肪厚と筋硬度計の押込量との関係の一例を示す図である。
【0043】
図4において、横軸は腰部の皮下脂肪厚[mm]を示し、縦軸がこの皮下脂肪厚に対する筋硬度計の押込量[mm]を示している。図4に示すように、例えば腰部の皮下脂肪厚A1が約7.0mm〜8.5mmのときに、押込量B1は約3.0〜4.0mmと設定し、腰部の皮下脂肪厚A2が約19.0〜20.5mmのときに、押込量B2は約7.0〜8.0mmと設定する。この設定により、筋硬度計の押込量は、腰部の皮下脂肪厚に略比例した関係となる。
【0044】
このように、皮下脂肪厚を算出することで、皮下脂肪厚に対応した押込量を設定することができる。
【0045】
<筋肉硬度測定処理>
次に、上述した制御ECU30により実現される筋肉硬度測定処理の具体的な処理手順について説明する。図5は、筋肉硬度測定処理の一例を示すフローチャートである。
【0046】
図5に示す筋肉硬度測定処理では、制御ECU30の条件設定手段32は、被験者の皮下脂肪厚を算出するための条件を設定する(S10)。条件の入力は、例えば車両に搭載されたナビゲーション装置のタッチパネル等の表示装置40から入力される。また、他の例として、音声装置50にマイク等の音声入力手段を設け、被験者等が音声により条件を入力することも可能である。
【0047】
条件設定手段32により設定される条件は、被験者の身長、体重、性別、年齢等の身体情報と、被験者の筋肉硬度を測定する対象部位等である。筋肉硬度を測定する対象部位としては、例えば運転時において疲れがたまる腰部、肩部、首部、腕部等を設定することができる。
【0048】
なお、条件の設定には、予め把握している被験者のBMI値や、体脂肪率を入力することもできる。また、皮下脂肪キャリパーによって測定された皮下脂肪厚や、医療用の超音波エコー検査装置によって得られた皮下脂肪厚を入力しておくこともできる。
【0049】
更に、後述するように、例えば着座用シートに設けられ、予め測定する対象部位が肩部のみ等設定されている筋肉硬度測定装置10にて測定する場合には、被験者は測定する対象部位を入力せずに処理を進めることもできる。
【0050】
次に、制御ECU30の皮下脂肪厚算出手段34は、S10の処理にて設定された条件に基づいて、BMI値を算出する(S12)。BMI値の算出方法は、公知の方法とする。
【0051】
次に、皮下脂肪厚算出手段34は、S12の処理にて算出されたBMI値、及び、S10の処理にて設定された被験者の測定する対象部位に基づいて、皮下脂肪厚を算出する(S14)。
【0052】
また、皮下脂肪厚算出手段34は、S10の処理にて設定された被験者の体脂肪率、及び測定する対象部位に基づいて、皮下脂肪厚を算出することもできる。
【0053】
次に、制御ECU30の押込量算出手段36は、S14の処理にて算出された皮下脂肪厚に基づいて、筋硬度計20の押込量を算出する(S16)。また、押込量算出手段36は、S10の処理にて直接設定された被験者の皮下脂肪厚を用いて押込量を算出することもできる。なお、被験者が洋服を着用している場合には、押込量算出手段36は、洋服素材検知機能を備えて、検知した素材に応じた洋服の厚さに対応する押込量分を付加することができる。
【0054】
次に、制御ECU30筋肉硬度測定手段38は、S16の処理にて算出された押込量を用いて、筋硬度計20を制御し、被験者の筋肉硬度を測定する(S18)。
【0055】
具体的には、筋肉硬度測定手段38は、筋硬度計20の押圧子に対して、S16の処理にて算出された押込量を加える。これにより、被験者の測定対象部位の皮下脂肪厚の下にある筋肉に筋硬度計20の押圧子の押圧が達するため、筋肉は弾性的に凹む。一方、筋硬度計20の押圧子の周りの接触子は、被験者に接触したそのままの位置に維持される。
【0056】
筋肉硬度測定手段38は、弾性的に凹んだ筋肉上の筋硬度計20の押圧子と、そのままの位置に維持された接触子との間で生じる変位量から押込量を引き、その残りの変位量から被験者の筋肉硬度を測定する。これにより、被験者の皮下脂肪厚を考慮しつつ、精度が高く、誤差の少ない筋肉硬度の測定を可能とする。なお、筋肉硬度測定手段38は、上述の手法だけではなく、他の手法(筋電位の検出等)を用いて筋肉硬度を測定することもできる。
【0057】
次に、筋肉硬度測定手段38は、S18の処理にて測定された結果を、例えばナビゲーション装置等による表示装置40又は音声装置50を用いて画像表示又は音声出力する(S20)。具体的には、表示装置40は、測定された結果を画像又は文字等により表示し、音声装置50は音声により表示する。
【0058】
なお、筋肉硬度測定手段38は、被験者に対して、S18の処理により得られた測定結果をもとに、予め筋肉硬度に対応して設定された運転疲労度のレベルを判定し、判定による運転疲労度に応じたメッセージを表示する等の運転支援を行うことも可能である。
【0059】
次に、筋肉硬度測定手段38は、筋肉硬度測定処理を終了するか否か確認する(S22)。筋肉硬度測定手段38は、表示装置40又は音声装置50を用いて、例えば車両に搭載されたナビゲーション装置画面上のタッチパネル等により確認する。
【0060】
筋肉硬度測定手段38は、処理を終了すると確認した場合(S22において、yes)、処理を終了する。処理を終了しないと確認した場合(S22において、no)、S10の処理に戻り後続の処理を行う。なお、上記筋肉硬度測定処理は、例えば運転開始時、運転を開始してから一時間後等の所定時間毎に行い、運転者の筋肉疲労度をチェックすることが可能である。
【0061】
<筋肉硬度測定装置を備えた車両用シートの一例>
次に、筋肉硬度測定装置10を備えた着座用シートの一例として車両用シートについて一例を説明する。図6は、筋肉硬度測定装置を備えた車両用シートの一例を説明するための図である。
【0062】
図6に示す車両用シート60には、筋肉硬度測定部材80及び筋肉硬度測定部材84が備えられている。筋肉硬度測定部材80は、シートバックフレーム81が設けられているため、被験者70の腰部から肩甲骨部等の部位を対象に筋肉硬度を測定することが可能な構成となっている。
【0063】
筋肉硬度測定部材84は、フレーム85が設けられているため、車両用シート60のヘッドレストを取り外し、ヘッドレスト取り付け孔に取り付けることができる。これにより、被験者70の首部、肩部、腕部等の部位を対象に測定することが可能な構成となっている。
【0064】
また、筋肉硬度測定部材80は、押圧子82及び接触子83を備え、筋肉硬度測定部材84は、押圧子86及び接触子87を備え、被験者70の所定部位に対する筋肉硬度を測定する。このとき、押圧子82及び押圧子86の押込量を上述した本発明において算出した被験者70毎の押込量を用いることで、精度が高く、誤差の少ない筋肉硬度の測定を行うことができる。
【0065】
また、上記により測定された筋肉硬度の測定結果は、車両に搭載されたナビゲーション装置上で表示することができる。更に、被験者70の筋肉の凝りや筋肉疲労を、上記測定結果に予め対応づけて定量化することも可能である。したがって、例えば運転者である被験者70の筋肉の凝りが一定量を超えた場合には、ナビゲーション装置等を用いて被験者70に対して休憩を促し、運転休憩時、運転終了後にはマッサージ機能を付けた筋肉硬度測定部材80及び84により、マッサージを施す等の運転支援を行うことも可能である。
【0066】
<他の実施形態:マッサージチェアの一例>
次に、筋肉硬度測定装置を備えた着座用シートの他の実施形態について、例えば筋肉硬度測定装置10を備えたマッサージチェアについて一例を説明する。図7は、筋肉硬度測定装置を備えたマッサージチェアの一例を説明するための図である。
【0067】
図7に示すマッサージチェア90は、マッサージ等に使用される身体固定治具である。マッサージチェア90は、支柱100に、上下にスライド可能な取り付け具102と、水平方向にスライド可能なアーム104を具備した筋肉硬度測定部材110を有する。
【0068】
筋肉硬度測定部材110は、アーム104の先端部に取り付けられ、取り付け具102に接続されたケーブル106に接続された構成となっている。
【0069】
また、筋肉硬度測定部材110の押圧子112及び接触子113を用いて、マッサージチェア90に腰掛けた被験者72の腰部から肩部に対して自在に角度を調整しながら、筋肉硬度を測定することが可能である。
【0070】
このとき、被験者72の所定部位の筋肉硬度を測定するときの押圧子112の押込量を上述した本発明において算出した被験者72毎の押込量を用いることで、精度が高く、誤差の少ない筋肉硬度の測定を行うことができる。また、この場合、マッサージチェア90に表示手段等を設けて測定結果を画面表示させてもよく、音声出力手段を設けて測定結果を音声出力させてもよい。
【0071】
また、上述した本発明における筋肉硬度測定装置は、車両用シートやマッサージチェアだけでなく、他の椅子、ソファー又はベッド等の着座用シートに組み込んで適用することができる。
【0072】
上述したように、本発明の筋肉硬度測定装置によれば、被験者の皮下脂肪の厚さに応じた押込量を用いることで、筋硬度計の押圧子の被験者の筋肉への押圧を可能とし、精度が高く誤差の少ない筋肉硬度の測定を行うことを可能とする。また、筋肉硬度測定結果に基づき、筋肉疲労度を検出することも可能であるため、筋肉疲労度に応じた被験者に対する適切な支援を行うことも可能となる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】皮下脂肪厚の違いによる筋硬度計の作用を説明するための図である。
【図2】本実施形態に係る筋肉硬度測定装置の概略構成例を示す図である
【図3】BMI値と測定する対象部位毎の皮下脂肪厚との関係の一例を示す図である。
【図4】腰部の皮下脂肪厚と筋硬度計の押込量との関係の一例を示す図である。
【図5】筋肉硬度測定処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】筋肉硬度測定装置を備えた車両用シートの一例を説明するための図である。
【図7】筋肉硬度測定装置を備えたマッサージチェアの一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
10 筋肉硬度測定装置
20 筋硬度計
30 制御ECU
32 条件設定手段
34 皮下脂肪厚算出手段
36 押込量算出手段
38 筋肉硬度測定手段
40 表示装置
50 音声装置
60 車両用シート
70 被験者
80、84、110 筋肉硬度測定部材
82、86、112 押圧子
83、87、113 接触子
90 マッサージチェア
106 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の筋肉を押圧して筋肉硬度を測定する筋肉硬度測定装置において、
前記被験者の皮下脂肪厚を算出するための所定の条件を設定する条件設定手段と、
前記条件設定手段により設定される条件を用いて前記皮下脂肪厚を算出する皮下脂肪厚算出手段と、
前記皮下脂肪厚算出手段により得られる前記皮下脂肪厚に応じて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する測定部位を押し込む押込量を算出する押込量算出手段と、
前記押込量算出手段により得られる前記押込量を用いて、前記被験者の前記筋肉硬度を測定する対象部位に対して前記測定部位を押し込んだ後、前記筋肉硬度の測定を行う筋肉硬度測定手段とを備えることを特徴とする筋肉硬度測定装置。
【請求項2】
前記条件設定手段は、前記被験者の身長、体重を含む身体情報と、前記被験者の前記対象部位とを含む前記条件を設定することを特徴とする請求項1に記載の筋肉硬度測定装置。
【請求項3】
前記条件設定手段は、前記被験者の体脂肪率と、前記被験者の前記対象部位とを含む前記条件を設定することを特徴とする請求項1に記載の筋肉硬度測定装置。
【請求項4】
前記押込量算出手段は、前記皮下脂肪厚算出手段により得られる前記皮下脂肪厚に略比例した前記押込量が算出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の筋肉硬度測定装置。
【請求項5】
前記筋肉硬度測定手段により得られる測定結果を画面上に表示させる表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の筋肉硬度測定装置。
【請求項6】
前記被験者は、車両を運転する運転者であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の筋肉硬度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の筋肉硬度測定装置を備えたことを特徴とする着座用シート。
【請求項8】
前記条件設定手段は、前記被験者の身長、体重を含む身体情報含む前記条件を設定することを特徴とする請求項7に記載の着座用シート。
【請求項9】
前記条件設定手段は、前記被験者の体脂肪率を含む前記条件を設定することを特徴とする請求項7に記載の着座用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−291245(P2009−291245A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144911(P2008−144911)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】