説明

筐体構造

【課題】低コストで電磁波障害対策を施した筐体構造を提供する。
【解決手段】筐体構造20は、基本構造体21、表面板としての右側面板22、左側面板23および背面板24とから構成される。基本構造体21は、底板部2、右側板部25、左側板部26および棚板6とから構成されており、これらはリベット12により接合される。基本構造体21に対して右側面板22、左側面板23および背面板24が接着剤27により接着される。さらにリベット12により接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を搭載する筐体の構造に関し、とくに大型で堅牢化を必要とする筐体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器を搭載する大型の筐体構造としては、折曲板金加工した金属板を溶接、リベット、接着剤あるいは接着剤とリベットの併用等で接合する方法で組み立てられていた。図2乃至図8は従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【0003】
図2は組み立てられた状態の筐体構造を示す。図2において、従来の筐体構造1は、底板部2、右側板部3、左側板部4、背面板5および棚板6とから構成されている。これらの各部はそれぞれ複数の部材から構成されている。
図3は底板部を示す分解斜視図である。図3において、底板部2は、金属板を折曲板金加工した底板2aと、右補強板2b、左補強板2c、前補強板2dおよび後補強板2eとから成り、底板2aの下部にこれら4つの補強板2b、2c、2d、2eを電気抵抗溶接により接合して底板部2を形成する。右補強板2bおよび左補強板2cにはアジャスタプラパート7が取り付けられる。
【0004】
図4は右側板部を示す分解斜視図である。図4において、右側板部3は、右補強側板3a、右表面板3b、右上側板補強板3cおよび補強側梁3dから構成され、右表面板3b、右上側板補強板3cおよび補強側梁3dはそれぞれ右補強板3aに対して電気抵抗溶接により接合される。なお右補強板3aは、側面部3aaと背面部3abとを有する形状となっている。
【0005】
図5は左側板部を示す分解斜視図である。図5において、左側板部4は、右補強側板4a、左表面板4b、左上側板補強板4cおよび補強側梁4dから構成され、左表面板4b、左上側板補強板4cおよび補強側梁4dはそれぞれ左補強板4aに対して電気抵抗溶接により接合される。左補強板4aも同様に、側面部4aaと背面部4abとを有する形状となっている。
【0006】
図6は筐体構造全体を示す分解斜視図である。図6において、底板部2、右側板部3および左側板部4はそれぞれ接合されている。そして右下側板補強板8を底板部2および右側板部3に対してすみ肉溶接により強固に接合する。同様に、左下側板補強板9を底板部2および左側板部4に対してすみ肉溶接により強固に接合する。また棚板6は左右両端および後部が折曲加工されており、左右の側板部3、4の側面部3aa、4aaにすみ肉溶接により接合されるとともに、左右の側板部3、4の背面部3ab、4abにすみ肉溶接により接合される。背面板5は、底板部2および左右の側板部3、4の背面部3ab、4abにすみ肉溶接により接合される。以上の各部の接合により図2に示す筐体構造1が組み立てられる。
【0007】
筐体構造1の内部には電子機器が搭載されるが、筐体構造1の電子機器との接触面には、電磁波障害対策を目的として、図2に斜線で示すように、塗料が塗布されないようにマスキングテープ10が貼り付けられる。その後、筐体構造1の表面に塗装を施している。塗装は筐体構造1の外面部になされるが、塗料が筐体構造1の内部に飛び散ることがあるので、筐体構造1の内部に対してもマスキングをする必要がある。マスキングテープ10を貼り付けることにより、電子機器との接触面は電気的接触を強固に保てる。以上で筐体構造1の組み立てを終了する。
【0008】
上記のすみ肉溶接による組み立て方法のほかに接着剤とリベット等の締結具を併用して組み立てる方法がある。図7を使用して説明する。図7において、右補強板2b、左補強板2c、前補強板2dおよび後補強板2eの上面に接着剤(斜線部)11が塗布され、底板2の底面にこれら右補強板2b、左補強板2c、前補強板2dおよび後補強板2eが接着される。その後接着面を加圧するために、リベット12により結合される。
同様に、背面板5、棚板6、右下側板補強板8および左下側板補強板9を含めた各部の互いの接合面に接着剤11を塗布し、接合する。その後、接着面を加圧するために、リベット12で結合される。
【0009】
さらに他の方法として、すみ肉溶接の代わりに、リベットのみで組み立てる方法がある。図8はリベットのみで組み立てる場合を示す。図8において、底板部2はリベットのみで既に組み立てられている。また右表面板3b、右上側板補強板3cおよび補強側梁3dがそれぞれ右補強板3aに対してリベットにより接合されて右側板部3を構成しており、同様に、右表面板4b、左上側板補強板4cおよび補強側梁4dがそれぞれ右補強側板4aに対してリベットにより接合されて左側板部4を構成している。
【0010】
この状態から、右下側板補強板8をリベット12により底板部2および右側板部3に接合し、同様に、左下側板補強板9をリベット12により底板部2および左側板部4に接合する。また棚板6をリベット12により右側板部3、左側板部4および背面板5に接合する。リベットにより接合する場合は、筐体の外面にリベットの頭部が露出する。
【0011】
これ以外にも例えば、特開平11−98624号公報に開示されるものがある。これは板金を両面テープによる接着し、リベットで締結するもの、即ち、両面テープとリベットの併用である。
【特許文献1】特開平11−98624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら従来の筐体構造の組み立て方法においては次のような問題があった。即ち、最初に説明したすみ肉溶接により接合する方法はコストがかかる。また電磁波障害対策の目的から、塗装の際に電子機器を取り付ける面に対してマスキングテープを貼り付ける作業は、多大な時間を要す作業であり、装置のコストアップの要因となる。
【0013】
また接着剤とリベットの併用による接合方法は、すみ肉溶接方法より低コストではあるが、接着剤の硬化が早く、接着剤を塗布してから部材を接合するまでの時間が制約され、複雑な組み合わせ構造を要求される電子機器搭載筐体には採用できない。また上記文献1に記載の両面テープとリベットの併用については、両面テープを貼り付けた後の時間的制約はなくなるが、しかしながら一旦、両面テープで接着すると接着した部材同士のずれを修正できないので、やり直しがきかないという問題がある。
【0014】
組み立て時間に制約の無いリベットのみによる組み立て方法の場合、筐体の表面にリベットの頭部が露出する。したがって金銭を扱う電子機器を搭載した筐体等においては、リベット接合部の位置が外部から容易に認識できるという点で防犯上問題がある。
【0015】
さらに、従来においては筐体構造を組み立ててから表面板に塗装を施すことにより、装置の外観のデザインを施すようにしている。しかしながら、外観デザインが決定されないと筐体構造の組み立てができない。したがって多種のデザインの装置を短期間のうちに生産することが困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも底板部に電気的導通性を実現可能な締結具により側板部を締結して略箱状の基本構造体を構成し、該基本構造体に表面板を接着したことを特徴とする。基本構造体に接着する前の表面板に塗装処理を施すようにした。さらに基本構造体に接着する前の表面板に外観デザインを施すための表面処理加工を行なうようにした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気的導通性を実現可能な締結具を用いて基本構造体を形成するようにしているので、基本構造体における各部材間の電気的導通性が十分得られ、電磁波障害対策が十分な構造を得ることができる。また基本構造体に対して表面板を接着するようにしたので、締結具が表面に露出しないようになり、防犯上の安全性が高くなる。
【0018】
さらに背面板を塗装してから基本構造体に接着するようにしたので、電子機器を搭載する部分等へのマスキングテープの貼り付けをする必要がなくなり、低コスト化を実現できる効果が得られる。また、基本構造体は外観デザインに関係なく組み立て可能であり、外観デザインが未決定の場合においても、基本構造体を製造でき、外観デザインの変更は表面板のみの変更だけで対応でき、多種少量生産に対応可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明の第1の実施の形態の筐体構造を示す分解斜視図、図9乃至図11は第1の実施の形態の筐体構造の一部を示す分解斜視図である。
【0020】
図1において、第1の実施の形態の筐体構造20は、基本構造体21、表面板としての右側面板22、左側面板23および背面板24とから構成される。基本構造体21は、底板部2、右側板部25、左側板部26および棚板6とから構成されており、略箱状の形状を有している。基本構造体21の各部について説明する。
【0021】
底板部2は図3に示すものと同様である。即ち、図3において、底板部2は、少なくとも一辺が折曲板金加工された箱型構造の強度部品である金属板の底板2aと、強度を確保する補強部材で、筐体の質量を支えるアジャスタプラパート7の実装を可能とするプレスナットを有する右補強板2bおよび左補強板2cと、筐体全体が左右に撓まないように右補強板2bおよび左補強板2cを左右に繋ぐ補強部材としての前補強板2dおよび後補強板2eとから成り、底板2aの下部にこれら4つの補強板2b、2c、2d、2eを電気抵抗溶接により接合して底板部2を形成する。右補強板2bおよび左補強板2cにはアジャスタプラパート7が取り付けられる。
【0022】
図9は右側板部を示す分解斜視図である。図9において、右側板部25は、右補強側板3a、右上側板補強板3cおよび補強側梁3dから構成され、右上側板補強板3cおよび補強側梁3dはそれぞれ右補強板3aに対して電気抵抗溶接により接合される。なお右補強板3aは、側面部3aaと背面部3abとを有する形状となっている。
【0023】
図10は左側板部を示す分解斜視図である。図10において、左側板部26は、右補強側板4a、左上側板補強板4cおよび補強側梁4dから構成され、左上側板補強板4cおよび補強側梁4dはそれぞれ右補強板4aに対して電気抵抗溶接により接合される。左補強板4aも同様に、側面部4aaと背面部4abとを有する形状となっている。
【0024】
図11は基本構造体の分解斜視図である。図11において、底板部2、右側板部25および左側板部26はそれぞれ接合されている。そして右下側板補強板8を底板部2および右側板部25に対してリベット12により強固に接合する。同様に、左下側板補強板9を底板部2および左側板部26に対してリベット12により強固に接合する。また棚板6は左右両端6a、6bおよび後部が折曲加工されており、左右の側板部25、26の側面部3aa、4aaにリベット12により接合されるとともに、左右の側板部25、26の背面部3ab、4abにリベット12により接合される。以上により図1に示す基本構造体21が形成される。
【0025】
次に図1において、基本構造体21に対して、表面板としての右側面板22、左側面板23および背面板24が接着される。これら右側面板22、左側面板23および背面板24は、いずれも少なくとも一辺が折曲板金加工され、塗料による塗装等の表面処理加工を施されている。これら右側面板22、左側面板23および背面板24の内側に、それぞれ接着剤27を塗布し、基本構造体21に接着する。
【0026】
右側面板22および左側面板23の内側には接着剤27は格子状に塗布され、それぞれ右側板部25および左側板部26の外側面に接着される。背面板24の内側には接着剤27は横線状に塗布され、左右の側板部25、26の背面部3ab、4abに接着される。その後、接着面の加圧を目的として、リベット12により右側面板22および左側面板23をそれぞれ右側板部25および左側板部26に接合する。同様に接着面の加圧を目的として、リベット12により背面板24を背面部3ab、4abに接合する。ここでリベット12により右側面板22、左側面板23および背面板24を接合することにより、基本構造体21とこれらの表面板との電気的導通性が得られ、電磁波障害対策にさらに対応したものとなる。以上により筐体構造20が組み立てられる。
【0027】
以上のように第1の実施の形態によれば、底板部2、右側板部25および左側板部26を互いにリベット12により強固に接合して基本構造体21を形成したので、基本構造体21における各部材間の電気的導通性が十分得られ、電磁波障害対策が十分な構造を得ることができる。
【0028】
また基本構造体21を組み立てた後、表面板を接着するので、基本構造体21の組み立てに使用されるリベット12の頭部は表面に露出しないので、装置を破壊しようとする者はリベット12の位置がわからず、容易には破壊ができない。
【0029】
さらに基本構造体21に接着する表面板、即ち、右側面板22、左側面板23および背面板24を、塗装を施してから基本構造体21に接着するようにしたので、電子機器を搭載する部分等へのマスキングテープの貼り付けをする必要がなくなり、低コスト化を実現できる効果が得られる。
【0030】
なお上記第1の実施の形態においては、底板部を形成する方法として、底板2aの下部に4つの補強板2b、2c、2d、2eを電気抵抗溶接により接合して底板部2を形成するようにしているが、接合の手段としてリベットを用いてもよいことは無論である。また左右の側板部25、26も同様に、リベットにより接合するようにしてもよい。
【0031】
次に第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態は、基本構造体21の組み立ては第1の実施の形態と同様である。本実施の形態では、基本構造体21に接着する表面板に化粧シートもしくはシール等により表面処理および加工を施した後、接着するようにしたものである。図12は第2の実施の形態を示す分解斜視図である。
【0032】
図12において、基本構造体21は、第1の実施の形態と同様に形成されたものである。即ち、基本構造体21は、外観のデザインに関係なく組み立て可能である。右側面板32の外面には表面デザインを施した化粧シート35が貼付されている。他の表面板としての左側面板33および背面板34の外面にも同様に化粧シートが貼付されている。表面板に対する外観デザインの変更に対しては、化粧シートのほかにシール等を貼り付けるようにしてもよい。
【0033】
このように表面処理を施した右側面板32、左側面板33および背面板34の内側に、それぞれ接着剤27を塗布し、これらの表面板を基本構造体21に接着する。その後、接着面の加圧を目的として、リベット12により右側面板32、左側面板33および背面板34を基本構造体21に接合する。
【0034】
以上のように第2の実施の形態によれば、基本構造体21は外観のデザインに関係なく組み立て可能であり、外観デザインが未決定の場合、あるいは基本構造体21の製造中にデザインの変更があった場合においても、筐体構造全体を再塗装する必要がなく、表面板、即ち、左右の側面板32、33および背面板34のみの変更だけで対応でき、外観デザインの仕様の決定遅れが発生した場合でも装置の製造遅れを惹き起こすことはない。また多種少量生産に対応可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態の筐体構造を示す分解斜視図である。
【図2】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図3】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図4】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図5】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図6】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図7】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図8】従来の筐体構造組み立て方法を示す分解斜視図である。
【図9】第1の実施の形態の筐体構造の一部を示す分解斜視図である。
【図10】第1の実施の形態の筐体構造の一部を示す分解斜視図である。
【図11】第1の実施の形態の筐体構造の一部を示す分解斜視図である。
【図12】第2の実施の形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
2 底板部
12 リベット
20 筐体構造
21 基本構造体
22 右側面板
23 左側面板
24 背面板
25 右側板部
26 左側板部
27 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底板部に電気的導通性を実現可能な締結具により側板部を締結して略箱状の基本構造体を構成し、
前記基本構造体に表面板を接着したことを特徴とする筐体構造。
【請求項2】
前記表面板は電気的導通性を実現可能な締結具により前記基本構造体に接合される請求項1記載の筐体構造。
【請求項3】
前記基本構造体に接着する前の前記表面板に塗装処理を施す請求項1記載の筐体構造。
【請求項4】
前記基本構造体に接着する前の前記表面板に外観デザインを施すための表面処理加工を行なう請求項1記載の筐体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−41171(P2006−41171A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218715(P2004−218715)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】